はじめに
「JHOの皆様、ぜひご注目ください!」という呼びかけにもあるとおり、女性の日常生活で深く関わる大切なテーマとして、生理(いわゆる月経) に着目してみましょう。特に生理期間中は、腹痛や体調変化、精神的ストレスなど、さまざまな負担がかかりやすい時期でもあります。こうした不快症状を少しでも和らげるためには、生活習慣の見直しだけでなく、日々口にする飲み物にも気を配ることが非常に大切です。
免責事項
当サイトの情報は、Hello Bacsi ベトナム版を基に編集されたものであり、一般的な情報提供を目的としています。本情報は医療専門家のアドバイスに代わるものではなく、参考としてご利用ください。詳しい内容や個別の症状については、必ず医師にご相談ください。
本記事では、「生理中におすすめしたい飲み物」と「生理中に避けるべき飲み物」を中心に、生理痛や不快感を軽減するうえで役立つ情報をまとめます。併せて、参考になる最新の研究や専門家の意見も織り交ぜつつ、なるべくわかりやすく解説していきます。なお、ここで取り上げる情報はあくまで一般的な内容ですので、具体的な治療やアドバイスを受ける場合には、必ず医師や薬剤師などの専門家に相談してください。
専門家への相談
本記事で紹介する情報は、複数の信頼できる医学論文や団体(American College of Obstetricians and Gynecologists(ACOG)など)の公開情報を元にまとめています。生理痛に対する具体的な対処法は個々人の体質や既往歴によって異なる場合があるため、もし強い痛みや生活に支障が出るような症状が続く場合は、専門家への受診が望ましいでしょう。また、生理痛以外にも体調に気がかりな点がある場合は、医療機関で検査や相談を行うことが大切です。
痛み止めを選ぶ際の注意点
Hiệp hội Sản Phụ khoa Hoa Kỳ-ACOG(アメリカ産科婦人科学会)によると、世界の女性の半数以上が生理開始から1〜2日の間に軽度から中度の腹痛を経験し、その痛みが日常生活に支障を来すほど深刻になる場合も少なくありません。生理痛は個人差が大きく、ズキズキとした痛みや鈍い重苦しい痛みが断続的に続くケースなど、人によって症状は多様です。こうした痛みが辛いとき、痛み止め(鎮痛薬)の使用を検討することもあるでしょう。
ただし、痛み止めを使うときにはいくつかの留意点があります。たとえば、
- 既往症がある場合、特定の鎮痛薬が合わないことがある
- 市販薬にも飲み合わせの制限がある場合がある
- 副作用リスクや長期使用による影響
これらを踏まえ、必ず用法用量を守り、わからないことがあれば専門家(医師や薬剤師)に相談するようにしましょう。とはいえ、痛み止めに頼りきりになるよりも、日々の食生活や水分補給を見直すことで症状が緩和するケースもあります。ここからは、生理中の痛みの軽減や不快感をやわらげる可能性のある「おすすめの飲み物」を具体的にみていきます。
生理中におすすめの飲み物
1. 温かい水を飲む
生理痛の緩和策として、まず基本となるのが温かい水です。温かい水がもたらす主な利点は、以下のとおりです。
- 血流の促進: 腹部が温まると、骨盤内の血行が良くなり、子宮の収縮による痛みが軽減しやすい
- 水分補給: 生理中は意外と水分が不足しやすく、脱水状態が痛みや倦怠感を増幅させることもあるため、こまめな水分補給が大切
1日の理想的な摂取量は個人差がありますが、およそ2〜2.5リットルを目安とするとよいでしょう。もちろん、激しい運動をする日や暑い日はさらに量を増やす必要があります。朝起きたときや就寝前など、少しずつこまめに摂取することで身体の水分バランスが保たれ、代謝も安定します。
2. ジンジャーティーとレモン
生姜(しょうが)は古くから身体を温める食材として知られており、体内を温めることで血行を促進し、痛みを和らげる効果が期待されます。米国国立医学図書館(National Library of Medicine)の文献でも、生姜には鎮痛効果が認められ、イブプロフェンと類似した作用を持つ可能性があると示唆されています。
さらに、2022年にBMC Complementary Medicine and Therapiesに掲載されたシステマティックレビューおよびメタアナリシス(Xu Q, Yang H, Shen X, Shi Z らによる研究、doi:10.1186/s12906-022-03785-9)では、生姜摂取が月経時の痛みの軽減に有意な効果を示すとの結果が報告されました。対象となった研究の多くはランダム化比較試験であり、信頼性のあるデータと考えられます。
ジンジャーティーを作る場合、すりおろした生姜をお湯で煮出し、レモン汁や少量のハチミツを加えると飲みやすくなります。レモンはビタミンCが豊富で、疲労回復を助ける役割もありますし、ハチミツはまろやかな甘みを与えるため、喉の刺激を抑えながら飲みやすさをアップさせます。
3. ココナッツウォーター
生理中は血液とともに鉄分やミネラルなどの栄養素も体外に排出されやすく、貧血や倦怠感を感じる方もいます。そこで、ココナッツウォーターに含まれる電解質(カリウムやナトリウムなど)やミネラル分が役に立つことがあります。自然のイオン飲料とも呼ばれるココナッツウォーターは、ほどよい甘味もあり、飲みやすさから人気を得ています。ただし、カロリーがゼロではありませんので、1日に飲む量は2個分(ココナッツ実1〜2個相当)までに留めるのが一般的な目安です。
4. シナモンハニーティー
シナモン(桂皮)には血管拡張作用や抗酸化作用があり、子宮周辺の血流を良くして生理痛を軽減すると考えられています。2014年に行われた研究(Preliminary evidence that cinnamon improves menstrual cyclicity in women with polycystic ovary syndrome)でも、シナモンの生理周期への効果が報告されました。これは多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の女性に関するトライアルですが、シナモンの摂取が生殖ホルモンのバランス調整に寄与する可能性を示唆しています。
生理痛緩和目的で飲む場合、シナモンをティーバッグに入れた紅茶に加え、甘味付けにハチミツを少量垂らすだけでも十分に香り豊かなドリンクになります。シナモンは身体を温める効果も期待できるので、寒い時期や冷えが気になる方には特におすすめです。
5. カモミールティー
カモミールティーはリラックス効果が高いことで広く知られていますが、実は生理中の痛み軽減にも一役買う可能性があります。カモミールに含まれる成分には鎮静作用や抗炎症作用があり、子宮の過度な収縮を和らげることで痛みの緩和につながるといわれています。また、寝る前にカモミールティーを飲むと安眠を促しやすいため、生理痛で睡眠が妨げられる方に向いています。
2014年の文献(Tea and Health: Studies in Humans – PMC)でも、ハーブティー全般がストレス軽減や疲労回復に有用であることが示唆されています。特にカモミールティーは、香りによる精神的リラックス効果と、抗炎症的な作用の二重メリットが期待できる飲み物です。
6. セロリジュース
セロリは食物繊維やビタミンK、ビタミンCなどの栄養素を多く含む野菜であり、生理期間中の栄養サポートに有用です。特にビタミンKは血液凝固にも関わるため、過度な出血やめまいを感じやすい方にはプラスに働く可能性があります。セロリの独特な風味が苦手な方は、リンゴやにんじんなど甘みのある食材と一緒にジュースにすると、飲みやすくなります。
7. 人参ジュース
人参にはビタミンAやK1が豊富に含まれています。ビタミンAは粘膜や皮膚の健康維持に、ビタミンK1は血液の凝固機能に関連します。さらに、鉄分も一定量含まれており、生理による貧血予防にも期待がかけられます。
米国の啓発サイトであるSip Smarterでは、人参ジュースがビタミンやミネラルの効率的な摂取源として紹介されています。食物繊維は搾りかすに多く残りがちですが、少量の果肉を混ぜ込むなど工夫すれば、より栄養価を高めることができます。
8. 柑橘類ジュース
オレンジやグレープフルーツ、みかんなどの柑橘類にはビタミンC、カリウム、葉酸などが多く含まれています。ビタミンCは抗酸化作用があり、免疫力をサポートするほか、体内での鉄分吸収を助ける働きもあります。生理中はどうしても倦怠感や疲労感が出やすいため、柑橘類ジュースを朝食やおやつに取り入れることで、気分のリフレッシュにもつながるでしょう。ただし、市販のジュースには糖分が多い製品もあるため、飲みすぎには注意が必要です。
9. ビートジュース
ビーツ(甜菜)はポリフェノールやベタレインと呼ばれる抗酸化物質を含み、鉄分や葉酸も豊富です。日本ではまだ普及度が高くありませんが、海外では「スーパーフード」としても注目されています。ビーツの赤い色素成分は血流促進や抗酸化作用を示唆する研究も報告されており、生理期間中の栄養補給に役立つと考えられます。クセが気になる場合は、りんごやオレンジジュースとブレンドすることでマイルドな味わいになります。
10. パイナップルジュース
パイナップルにはビタミンCやマンガンが豊富で、鉄分吸収の促進に役立つとされています。また、パイナップルに含まれるブロメラインという酵素には、タンパク質分解や消化を助ける働きがあるとも考えられています。生理中は消化機能が弱まりがちなので、パイナップルジュースを適量取り入れることで、栄養補給と消化サポートの両面にメリットがあるかもしれません。
11. ホウレンソウスムージー
ホウレンソウは鉄分や葉酸、ビタミンC、ビタミンKなどを多く含む緑色野菜の代表格です。特に女性にとっては不足しがちな鉄分の補給が重要であり、貧血気味の方には心強い食材です。スムージーにする際は、ホウレンソウだけでは青臭さが強く出る場合があるため、バナナや豆乳などを加えるとまろやかな味になります。
スムージーの利点は、食物繊維をまるごと摂取できる点です。忙しい朝でも手軽に作れてビタミンやミネラルをまとめて摂ることができるので、生理期間中の栄養バランスを整えるうえで便利な選択肢といえます。
12. ホットチョコレート
チョコレートは気分を上げる食品として人気がありますが、とくにカカオ含有量の高いダークチョコレートにはマグネシウムや鉄分が多く含まれています。マグネシウムは筋肉の緊張を和らげたり、神経の興奮を鎮めたりする働きがあるとされ、生理痛の一因である子宮の強い収縮をやわらげる可能性が指摘されています。
生理痛でリラックスしたいときは、カカオ70%以上のダークチョコレートを使ったホットチョコレートが良いでしょう。ただし、糖分やカロリー摂取のしすぎにも注意が必要です。甘味を抑えたダークチョコレートを適度に使用することで、ヘルシーに楽しむことができます。
生理中に避けるべき飲み物
続いて、生理期間中には極力控えたほうが良いとされる飲み物を挙げてみます。もともと体質や好みにもよりますが、次のような飲み物は、痛みの悪化や体調不良を引き起こす可能性があるため要注意です。
1. アルコール類
アルコールは血管拡張作用があり、一見すると血流が良くなるために生理痛が軽減されそうなイメージもあるかもしれません。しかし、実際はホルモンバランスを崩す原因となったり、出血量を増やす可能性があります。また、アルコール分解に必要な水分やミネラルが失われることで、むしろ脱水症状を引き起こしやすくなることも懸念されます。
2023年現在、アルコールと女性の健康に関する見解はいくつかの医療機関や研究で発表されていますが、特に生理期間中や妊娠可能な時期の女性には飲みすぎを強く控えるようにという指導が多くのガイドラインで示されています。たとえば、New Directions for Womenでは、アルコールが生理周期に与える影響や依存のリスクについて詳述しており、特に量や頻度をコントロールできない場合は大きな問題となり得ると指摘しています。
2. 炭酸飲料
炭酸飲料は刺激が強く、胃腸へ負担をかけることがあります。生理中はホルモンの変動により消化機能が乱れがちな方も多く、さらに炭酸飲料に含まれる糖分やカフェインが体に過度な刺激を与えることがあるのです。炭酸水自体には必ずしも大きな問題はありませんが、砂糖が多量に含まれた炭酸飲料を習慣的に摂取することは、血糖値の乱高下や胃の不調、倦怠感を引き起こしやすいため注意が必要です。
3. カフェイン飲料
コーヒーや濃い緑茶などカフェインを多く含む飲み物は、交感神経を刺激し、心拍数や血圧を上昇させることがあります。その結果、不安感やイライラ、睡眠障害などを増幅する要因になる可能性があります。生理中は心身がデリケートな状態になりやすいため、カフェインの摂取量を控えめにして、落ち着いた過ごし方を心がける方が無難です。
Mayo Clinicでは、1日に摂取するカフェイン量の目安を概ね400mgまでとしていますが、生理痛や不安感が強い方はさらに少ない量に抑えたほうが良い場合があります。
結論と提言
結論
ここまで紹介したように、生理中の痛みや不快感を軽減するためには、血行を促進し、身体を温めることが重要です。その助けとなる飲み物としては、以下のようなものが挙げられます。
- 温かい水
- ジンジャーティー
- カモミールティー
- ホウレンソウなどの野菜スムージー
- ダークチョコレートを使ったホットチョコレート
また、電解質やミネラル補給としてココナッツウォーターや野菜・果物ジュース(人参ジュース、柑橘類ジュース、ビートジュースなど)も役立ちます。一方で、痛みや不快感を増幅させる可能性のある飲み物として、アルコール類、炭酸飲料、カフェイン飲料などを控えることで、より快適な生理期間を過ごせる可能性があります。
提言
- 休息を十分に確保: 睡眠不足はホルモンバランスを乱し、痛みが増幅する原因になる場合があります。少なくとも6〜8時間程度の睡眠を目指し、身体を十分に休めましょう。
- バランスのとれた栄養摂取: 蛋白質、ビタミン、ミネラル、鉄分などを満遍なく摂ることで、全身の体調を整えやすくします。特に鉄分やカルシウム、マグネシウムなどは生理痛緩和に寄与すると考えられます。
- 適度な運動: ウォーキングやストレッチなど軽めの有酸素運動は、血流を促進し、筋肉の緊張を緩和させるのに有効です。過度な運動は逆効果になる可能性があるため、体調に合わせて行いましょう。
- ストレス軽減: 生理痛にはストレスも大きく影響するといわれています。リラックスできる時間を作ったり、趣味に没頭したりすることで精神的負担を軽くする工夫が大切です。
最後に、強い痛みや長引く体調不良がある場合は、自己判断で放置せず、できるだけ早めに医療機関を受診することをおすすめします。本記事で紹介した情報はあくまで一般的な参考であり、個人の症状や体質によって最適な対処法は異なります。ぜひ専門家の意見も踏まえながら、自分の身体に合った方法を見つけてください。
重要な注意点: この記事の内容は医療行為に関する助言の代わりとなるものではありません。あくまで一般的な情報提供を目的としています。実際に治療や薬の使用を検討する際には、医師や薬剤師などの専門家に相談してください。
参考文献
- Dysmenorrhea: Painful Periods | ACOG(アクセス日: 2023年11月22日)
- Effect of Ginger and Novafen on menstrual pain: A cross-over trial(アクセス日: 2023年11月22日)
- Preliminary evidence that cinnamon improves menstrual cyclicity in women with polycystic ovary syndrome: a randomized controlled trial(アクセス日: 2023年11月22日)
- Tea and Health: Studies in Humans – PMC(アクセス日: 2023年11月22日)
- Carrot Juice | Sip Smarter(アクセス日: 2023年11月22日)
- Nutrition as a Potential Factor of Primary Dysmenorrhea: A Systematic Review of Observational Studies(アクセス日: 2023年11月22日)
- 7 Drinks To Help Reduce Period Cramps(アクセス日: 2023年11月22日)
- How Does Alcohol Affect Your Period? – New Directions for Women(アクセス日: 2023年11月22日)
- Caffeine: How much is too much? – Mayo Clinic(アクセス日: 2023年11月22日)
- Xu Q, Yang H, Shen X, Shi Z ら (2022) “Efficacy and safety of ginger for pain relief in primary dysmenorrhea: A systematic review and meta-analysis” BMC Complementary Medicine and Therapies 22(1): 242, doi:10.1186/s12906-022-03785-9