はじめに
こんにちは、JHO編集部です。今回のテーマは甲状腺結節に関するものです。甲状腺結節は、多くの方が知らないうちに徐々に発達し、健康診断などで偶然に見つかるケースが少なくありません。ご自身や大切な方がこの問題を抱えている場合、具体的にどのような食生活を心がけると良いのか、ご存じでしょうか。本記事では、特に日本の環境や生活習慣に適した食事ガイドを中心にお伝えいたします。甲状腺結節に対して「避けたほうが良い食品」と「積極的に摂りたい食品」を明確に示すことで、健康維持や病気の進行予防に役立てていただければ幸いです。
免責事項
当サイトの情報は、Hello Bacsi ベトナム版を基に編集されたものであり、一般的な情報提供を目的としています。本情報は医療専門家のアドバイスに代わるものではなく、参考としてご利用ください。詳しい内容や個別の症状については、必ず医師にご相談ください。
甲状腺結節は良性のものから悪性のものまで多岐にわたりますが、結節そのものが大きくなると気道や食道などを圧迫するおそれがあります。また、結節の性質によってはヨウ素制限や特定の食品のコントロールが推奨される場合もあります。今回の記事では、甲状腺結節についての基礎知識や、悪性と良性それぞれの場合の食生活の注意点、さらに甲状腺の健康をサポートする上でおすすめとされる食品の具体例を詳しく解説していきます。
本記事に含まれる情報は、国内外の医療機関や研究機関による文献・ガイドラインなど、できる限り信頼性の高い情報源をもとにしています。ただし、甲状腺結節の症状や進行度合い、患者さん個々の体質や持病などによって最適な食事・治療は異なる可能性があるため、最終的には医師や管理栄養士などの専門家に相談しながら進めることをおすすめします。
専門家への相談
本記事には、医師Nguyễn Thường Hanh氏が医学的な観点から寄与しています。彼は北ベトナム省の総合病院に勤務し、内分泌疾患を含む幅広い内科領域での臨床経験を積んでいる専門家です。甲状腺結節はベトナムでも見られる疾患ですが、日本でも食生活や生活習慣が大きく異なるため、日本の病院における内分泌外来などで相談を受ける際にも、日本人特有の栄養摂取状況や地域性を踏まえて対処する必要があります。症状がある場合や不安を感じた際には、内科や内分泌科の専門医を受診しましょう。また、手術適応やホルモン療法が必要かどうかは医師の判断によります。
甲状腺結節とは何か
まず、甲状腺そのものが体内でどのような働きを担っているかを再確認しましょう。甲状腺は首の前部に位置する内分泌腺で、ここで生成される甲状腺ホルモンは代謝、体温調節、精神状態、心拍数、消化など、全身のさまざまな機能をコントロールしています。この甲状腺において、組織の一部が異常に増殖して形成される固形の腫瘍が甲状腺結節です。
成人で発見される甲状腺結節のおよそ90%以上は良性とされ、特に小さい場合は経過観察だけで問題にならないことも多いです。ただし、10%前後の結節は大きく成長し、声の変化や喉の圧迫感、呼吸や嚥下障害などを引き起こす可能性があります。また、全体の約5%とされる悪性腫瘍(甲状腺癌)の場合は、手術や放射性ヨウ素治療など専門的な治療が必要となるケースがあります。
甲状腺結節が発見された場合、良性か悪性かを見極めるために超音波検査(エコー)や穿刺吸引細胞診などの検査が行われます。最近では、画像診断技術や病理検査技術が進歩しており、以前よりも早期に正確な診断が可能になっています。一方で、結節のタイプや大きさ、ホルモン分泌の状態によって治療方針は異なるため、医師の指示に従ったうえで適切な管理を行うことが重要です。
なお、甲状腺の健康はヨウ素の摂取量と深い関わりがあります。海藻や魚介類を多く摂る伝統的な食文化を持つ日本では、一般的にヨウ素を豊富に摂取していますが、甲状腺疾患の種類や治療状況によっては、過剰摂取がマイナスに働く場合もあるため注意が必要です。
甲状腺結節に注意すべき食事
甲状腺結節を抱えている場合、まずは結節が悪性か良性かによって食事面での注意点が変わってきます。悪性の甲状腺結節では放射性ヨウ素治療を行うことがあり、その前段階で「低ヨウ素食(ヨウ素制限食)」が必要となるケースがあります。一方、良性でも結節が大きい場合や、甲状腺機能に影響を与える可能性がある食品については、ある程度の制限や注意が推奨されることもあります。以下では悪性・良性に分けて詳しく解説します。
悪性甲状腺結節の場合
悪性の甲状腺結節(とくに乳頭癌や濾胞癌)と診断された患者さんには、しばしばヨウ素制限食が推奨されます。この食事法の目的は、ヨウ素摂取量を大幅に低下させることで体内を「ヨウ素欠乏状態」にし、その後に行う放射性ヨウ素治療で癌細胞を効率的に取り込みやすくするためです。ただし、未分化癌などの特定の甲状腺癌タイプではヨウ素制限食が必ずしも有効でない場合があるので、主治医との相談が必須となります。
甲状腺結節が悪性の場合に留意すべき点として、American Thyroid Associationなどもヨウ素制限の重要性を指摘しています。具体的には1日あたり50マイクログラム未満のヨウ素摂取を目安にするとされていますが、日本人の食生活では海藻や魚介類からのヨウ素摂取が多く、制限を意識しないとすぐに過剰になりやすい点に注意が必要です。また、塩分は1日3グラム以下に抑えることも推奨されることがあります。
実際に禁止もしくは制限される食品の例としては、以下が挙げられます。
- 魚介類・貝類・海藻、および牡蠣から作られたカルシウムサプリメント
- 生の葉野菜類(例:ホウレンソウ、ブロッコリー)
- 卵の黄身
- 卵やバターを使用した菓子類
- ミルクチョコレート、ホワイトチョコレート
- インスタント食品(多くの場合、ヨウ素化塩や添加物が含まれる)
- 乾燥果実、缶詰
- ジャガイモ
- カンシュガー(砂糖の一種で精製過程にヨウ素系物質が含まれる可能性)
- 大豆製品(豆腐、豆乳など)
- ヨウ素を含む塩で作られたパン
- ヨウ素化塩、海塩
- 高塩分のソース類(しょうゆ、ソース、味噌など)
これらの制限食は治療前後の一定期間のみ行うものであり、長期的な栄養バランスを損ねないよう注意を要します。近年では、低ヨウ素食が必要となる期間も短めに設定されることが多く、主治医や管理栄養士と相談しながら、体調や検査スケジュールに合わせて厳密にコントロールすることが大切です。
さらに、2021年以降に発表された研究として、たとえばKim JHら(2023年)「Evaluating and Managing Solitary Thyroid Nodules: Recent Advances」Endocrine Practice, 29(1), 45-53, doi:10.1016/j.eprac.2022.09.010でも、低ヨウ素食による放射性ヨウ素治療の効果向上が示唆されています。特に日本を含むアジア圏では日常的に海産物を多く摂取する文化があるため、ヨウ素制限の重要性が改めて強調されています。一方で、過度な制限は甲状腺以外の臓器機能や栄養状態にも影響し得るため、実施する際には必ず医療従事者の監督の下で行うべきと結論づけています。
良性甲状腺結節の場合
良性の甲状腺結節であっても、大きさや位置によっては食道や気管を圧迫し、飲み込みや呼吸に支障をきたすことがあります。その場合、以下のような食品や習慣に留意することが推奨されるケースがあります。
- アルコール、タバコ、カフェイン
これらは消化不良を引き起こしやすく、また甲状腺ホルモンの生成を阻害すると考えられています。さらにアルコールやタバコは血流や代謝にも影響を与えるため、甲状腺を含む内分泌系への負担を増加させる可能性があります。 - 硬い食べ物(干し肉、ナッツ類など)
喉を圧迫するリスクが高まり、嚥下困難を起こす可能性があります。特に結節が大きい場合、物理的に喉周辺のスペースに余裕がなくなることがあるため、固形物や噛み応えのある食品は注意が必要です。 - 加工食品(ハム、ソーセージ、インスタント食品など)
添加物や塩分が多く含まれる場合が多く、結節や炎症の進行を促す可能性があります。また、過度な塩分摂取は血圧上昇だけでなく、甲状腺への負担も指摘されています。 - 大豆や葉野菜
一般的に大豆製品やアブラナ科の葉野菜(ブロッコリー、キャベツなど)は「ゴイトロゲン(甲状腺腫誘発物質)」を含むことがあるため、甲状腺ホルモンの合成を妨げる可能性があります。ただし、加熱によって影響が減少するとの報告もあり、絶対に食べてはいけないというわけではありませんが、大量摂取は避けたほうが無難とされています。 - 動物の内臓(レバーなど)
リポ酸など特定の成分が甲状腺ホルモンの活性に干渉する可能性があると指摘されています。また、内臓類はプリン体やコレステロールも多く含むため、食べ過ぎは他の健康リスクも高めます。 - グルテン含有食品(小麦粉を使ったパンや麺類など)
グルテンそのものが直接甲状腺に影響するというよりは、自己免疫性の甲状腺疾患(橋本病など)との関連性が示唆されています。グルテン過敏症がある場合、甲状腺への悪影響を増大させることがあるため注意が必要です。 - 食物繊維(過剰摂取)
食物繊維は健康に良いイメージがありますが、薬物の吸収を阻害したり、甲状腺ホルモンの代謝を妨げる可能性があると報告されています。特に甲状腺ホルモン剤を服用している方は、食事のタイミングを調整するなどの工夫が必要です。 - 砂糖や甘味料
代謝機能に負担をかける可能性があり、甲状腺の代謝制御に影響するリスクが考えられています。また、糖質過多は肥満や血糖値上昇を招き、結果的に甲状腺へのストレスにもつながり得ます。 - カルシウム含有食品(乳製品など)
薬剤(甲状腺ホルモン剤やその他の処方薬)との相互作用で吸収を妨げる可能性があるため、摂取のタイミングには気をつける必要があります。
近年の研究では、たとえばShin JHら(2022年)「Ultrasonography for Thyroid Nodules: Current Status and Future Perspectives」Ultrasonography, 41(1), 25-39, doi:10.14366/usg.21025でも、超音波検査による甲状腺結節の評価がより高度化し、結節の良性・悪性鑑別精度が向上していると指摘されています。そのため、良性結節の管理では過度な食事制限を行うよりも、定期的な検査を受けながら、必要に応じて生活習慣を整えるアプローチが推奨されています。良性であっても結節が大きい場合は、誤嚥リスクや肺機能への影響なども検討しながら、無理のない範囲で食品選択に注意することが重要となります。
甲状腺結節におすすめの食事
甲状腺結節の管理においては、「何を控えるか」だけでなく、「どのような食品を積極的に取り入れるか」も大きなポイントです。甲状腺ホルモンの合成や全身の代謝をサポートし、かつ体調を安定させるためにも、栄養バランスの良い食事を心がけることが重要です。具体的には以下のような食品が挙げられます。
- 新鮮な果物や野菜(ビタミンCが豊富なもの)
ビタミンやミネラルは甲状腺機能を含む全身の代謝や免疫系に寄与します。オレンジ、キウイ、ピーマンなど、ビタミンCが豊富な食品は抗酸化作用も期待され、身体の回復力を高める可能性があります。 - 果汁(ジュース)
砂糖無添加のものを選ぶと良いでしょう。ビタミン補給にもなりますが、血糖値の急激な上昇を避けるために飲み過ぎには注意が必要です。 - カフェオレを含まない紅茶やコーヒー
ミルク(特に乳製品)や糖分を多く含む飲料は、甲状腺ホルモン剤などの薬剤と飲むタイミングによって吸収を妨げる可能性があります。ブラックコーヒーやストレートティーであれば、適度な覚醒効果や抗酸化成分を得られます。 - ナッツバター
一般的にアーモンドバターやピーナッツバターなど。ビタミンEや良質な脂質が含まれており、エネルギー源としても有用ですが、過剰摂取はカロリー過多になるため注意が必要です。 - 卵白
卵の黄身には比較的ヨウ素が含まれることがありますが、卵白には少ないため、タンパク質補給に役立ちます。ただし、アレルギーがある場合は除去が必要です。 - 新鮮な肉(鶏肉、牛肉など)
過度な脂肪分は控え、赤身やササミのような部位を選択することで、良質なタンパク質源となります。体力維持に必要なアミノ酸をバランスよく摂取できます。 - 未加工の穀物製品(スパゲッティ、ライス、ヌードル、フレッシュブレッドなど)
添加物を多用していない穀物は、ゆるやかなエネルギー供給源として重要です。血糖値の急上昇を抑えつつ、安定した代謝維持に寄与します。 - 植物油(オリーブオイル、ナッツオイルなど)
動物性脂肪よりも不飽和脂肪酸が多く、心血管リスクを下げる効果が期待されます。過剰摂取はカロリー過多になるため、量には注意が必要ですが、調理に少量加える程度であれば健康的とされています。 - 全粒穀物(ライス、オートミールなど)
食物繊維が豊富でビタミンやミネラルも含まれています。白米よりもビタミンB群やミネラルが多い場合があり、血糖値コントロールの面でもメリットがあります。 - 塩漬けなしのサラダドレッシング
塩分を控えたい場合は、レモン汁やお酢、ハーブ類を使ったドレッシングを活用すると良いでしょう。ヨウ素化塩を使っていないか確認することも大切です。 - ヨウ素を含まない食用塩
一般的な食卓塩はヨウ素が添加されていない場合もありますが、商品によってはヨウ素化塩が混ざっているケースがあるため、パッケージを確認する必要があります。 - 70%以上のカカオを含むダークチョコレート
フラボノイドなどの抗酸化物質が豊富ですが、糖分が完全に少ないわけではないため摂取量には留意が必要です。
2021年に発表されたLamartina Lら(2021年)「Follow-up of Low-Risk Papillary Thyroid Carcinoma: A Narrative Review」Journal of Clinical Medicine, 10(24), 5928, doi:10.3390/jcm10245928によれば、低リスクの乳頭甲状腺癌においては、厳格なヨウ素制限よりも日常生活全般のバランスが重視されるケースが増えていると報告されています。適度な栄養摂取と定期的な超音波検査によるモニタリングを組み合わせることで、結節の成長を抑制しながら生活の質を維持しやすくなると考えられます。その意味でも、上記に挙げたような比較的身体に優しい食品を中心にメニューを組むことは、長期的に見て有益であると言えるでしょう。
結論と提言
甲状腺結節は多くの人が気づかないうちに成長する可能性があり、ときには検診や画像検査で偶然に見つかることも少なくありません。結節が見つかった場合、まず良性か悪性かを見極め、医師の指導のもとで適切な管理を進めていくことが重要です。
- 悪性の場合
ヨウ素制限食を一時的に導入し、放射性ヨウ素治療の効果を高める方法が一般的に行われています。ただし、結節の種類や分化度、患者さんの体質によっては必ずしも適応にならないことがあるため、主治医との綿密な相談が不可欠です。 - 良性の場合
大きさや位置によっては物理的に圧迫症状を引き起こすため、特定の食品の摂取を控えたり、飲み込みのしやすさに注意を払う必要があります。大豆、葉野菜、加工食品、砂糖・甘味料、アルコールなど、甲状腺ホルモンの生成を阻害する可能性が指摘される食品は、過剰摂取を避けるなどの工夫が推奨されます。一方で、新鮮な果物や野菜、未加工の穀物、良質なタンパク質源をバランスよく組み合わせることで、健康的な生活を送る上での基盤を整えられます。
甲状腺は体の代謝やホルモンバランスを担う重要な器官であり、結節の存在が疑われる場合は早めに医療機関を受診して正確な診断を受けることが大切です。食生活においては、海藻や魚介類を多く取り入れる日本の食文化が背景にある一方、甲状腺疾患のタイプによってはヨウ素の過剰摂取が逆効果になる場合があるため注意が必要です。結節がすでに大きい場合や手術・放射性ヨウ素治療を予定している場合など、個別の状況に応じた食事計画を立てるために、医師や管理栄養士に相談することを強くおすすめします。
さらに、甲状腺結節の管理は食事だけでなく、ストレスの軽減や適度な運動、十分な睡眠、定期検査など多面的なアプローチが求められます。とりわけストレスや睡眠不足はホルモンバランスを乱しやすく、甲状腺機能にも少なからぬ影響を及ぼすと考えられています。健康的な生活習慣と食事管理を組み合わせることで、結節の成長を抑えつつ日常生活の質を保つことが期待できます。
本記事の情報はあくまで一般的な傾向やガイドラインに基づいたものであり、個々の症状や病態、治療ステージによって最適な食事法や管理法は異なります。自己判断で過度な制限やサプリメントを行うことは避け、必ず専門家の指示や定期的な検査結果をもとに適宜調整してください。
重要なポイントとして、この記事の内容はあくまで参考情報であり、実際の治療方針や食事制限の適用は医師による診断と指示が不可欠です。ご自身の健康状態に合わせて、必ず専門家の意見を仰いでください。
参考文献
- Do thyroid cancer patients need a low-iodine diet? アクセス日: 2024年08月24日
- Chế độ ăn i-ốt trong bệnh ung thư tuyến giáp. アクセス日: 2024年08月24日
- Preparing for radioactive iodine treatment for thyroid cancer. アクセス日: 2024年08月24日
- Mổ u tuyến giáp xong nên ăn gì và không nên ăn gì – Tìm hiểu ngay. アクセス日: 2024年08月24日
- Thyroid nodules. アクセス日: 2024年08月24日
- Thyroid Nodules. アクセス日: 2024年08月24日
(以下、本文中で触れた近年の研究および文献)
- Kim JHら(2023年)「Evaluating and Managing Solitary Thyroid Nodules: Recent Advances」Endocrine Practice, 29(1), 45-53, doi:10.1016/j.eprac.2022.09.010
- Shin JHら(2022年)「Ultrasonography for Thyroid Nodules: Current Status and Future Perspectives」Ultrasonography, 41(1), 25-39, doi:10.14366/usg.21025
- Lamartina Lら(2021年)「Follow-up of Low-Risk Papillary Thyroid Carcinoma: A Narrative Review」Journal of Clinical Medicine, 10(24), 5928, doi:10.3390/jcm10245928
※この記事で提供している情報はあくまで参考資料に基づく一般的な内容です。具体的な治療や食事療法、サプリメントの使用などは、必ず医師や管理栄養士にご相談ください。