はじめに
痔の手術は、多くの人が直面する一般的な健康上の問題です。日本においても、痔の症状に悩む方は少なくありません。軽度の症状では生活習慣の見直しや薬物治療などで改善が見込めるケースが多い一方、症状が進行すると手術が選択肢として検討されます。しかし「本当に手術が必要なのか」「どのような流れで行われるのか」「術後の経過や後遺症はどうなのか」など、手術に対する不安や疑問を抱く方は多いでしょう。そこで本記事では、痔の手術に関する基礎知識から手術法の種類、合併症や術後のケアまで、幅広い観点で解説します。読者の方々が手術を検討する際の参考情報となり、自分に適した治療法を見つける一助となれば幸いです。
免責事項
当サイトの情報は、Hello Bacsi ベトナム版を基に編集されたものであり、一般的な情報提供を目的としています。本情報は医療専門家のアドバイスに代わるものではなく、参考としてご利用ください。詳しい内容や個別の症状については、必ず医師にご相談ください。
専門家への相談
専門家の意見や知識を取り入れることは、適切な治療法を選択するうえで非常に重要です。本記事は、元の記事に基づき、医師 Nguyễn Thường Hanh（Nội khoa – Nội tổng quát · Bệnh Viện Đa Khoa Tỉnh Bắc Ninh所属）の意見を踏まえながら情報を整理しています。この医師の経験と深い専門知識から得られるアドバイスは、痔の症状に悩む方々にとって治療方針を検討する際の手がかりとなるでしょう。ただし、ここで紹介する情報はあくまでも参考とし、ご自身の症状や体調に合わせて医療機関での受診を行ってください。
痔の手術について
痔の手術とは何ですか？
痔の手術は、進行した痔核（いわゆる“いぼ痔”）や、それに伴う重度の症状を改善するために行われる外科的治療法です。とくに薬や坐剤などの内科的・保守的治療では改善が難しい段階にまで進行している場合、あるいは再発を繰り返す重症例などで手術が推奨されることがあります。手術の方法は多岐にわたり、患者の痔の種類（内痔核・外痔核）、部位、重症度、全身状態などを総合的に評価したうえで、最適な手法が選択されます。
一般的に、外科的に痔核を直接切除する「痔核切除術」は、高い有効性を示す一方で痛みや出血などの合併症リスクもあります。また、痔核を肛門内に縫合して固定する「痔核縫合術（Stapled hemorrhoidopexy）」は痛みが比較的少なく回復が早い一方で、再発率がやや高い傾向があると報告されています。どの手術を選ぶかは、症状の程度や患者のライフスタイル、医師と患者の相談内容などによって決定されます。
痔は手術が必要ですか？ いつ手術を考えるべきですか？
多くの場合、痔は薬や生活習慣の改善によってコントロールが可能ですが、以下のようなケースでは手術を検討する意義が大きいとされています。
- 外痔核の症状が重篤である場合（ステージIII、IV）
大きく腫れあがった外痔核が痛みや出血を繰り返している場合、手術により根治を図ることが望ましいケースがあります。 - 肛門波と直腸の病気を伴っている場合
痔以外の直腸・肛門疾患が合併しているときには、総合的な外科的治療が必要となることがあります。 - 内痔核が嵌頓している場合
内痔核が肛門外に脱出し戻りにくい状況（嵌頓）は血行障害や血栓形成を起こしやすく、早めの手術が検討される場合があります。 - 血栓性外痔核がある場合
強い痛みを伴う血栓性外痔核は、外科的に血栓を除去することで症状を改善させられることがあります。 - 最小限の侵襲的治療が効果を示さない場合や耐えられない場合
薬物治療や注射療法、ゴム輪結紮術などの低侵襲手技を行っても効果不十分、または症状の制御が困難な場合には手術が検討されます。
上記に当てはまる可能性がある方は、一度医師に相談し、個々の状況に合わせた最適な治療法を検討することが重要です。
注意すべき点
痔の手術の合併症と副作用
痔の手術は一般的には安全とされますが、体質や手術の種類によっては以下のような合併症や術後の不快症状が生じる可能性があります。
- 過度の出血
手術操作による創部の出血や血管の損傷が原因で、術直後や数日後に出血が続くことがあります。 - 排尿困難（尿閉）
麻酔や術後痛みによる恐怖心などで、排尿がしづらくなることがあります。 - 感染症
術後の創部に細菌が侵入し、感染を起こす可能性があります。 - 直腸括約筋の制御喪失
まれに、手術操作や炎症によって括約筋がダメージを受けると、一時的または持続的に便やガスのコントロールが難しくなることがあります。 - 肛門管の狭窄または損傷
縫合や瘢痕化によって肛門管の一部が狭窄し、排便が困難になるケースがあります。 - 直腸脱（直腸の一部が肛門から突出）
肛門付近の支持組織が弱くなると、直腸脱につながることがあります。 - 痔の再発リスク
手術をしても、生活習慣や個々の体質によっては再発する可能性があります。
これらの症状や痛みが増すような場合、あるいは術後に肛門部の異常が続く場合は、早急に医師へ連絡し適切な処置を受けることが大切です。
手術の流れ
手術前の準備
手術が予定されている場合、医師からの指示に従い、以下のような準備を行います。
- 飲食制限
全身麻酔や脊髄麻酔を行う際に、手術前数時間は飲食を控えるよう求められることがあります。これは麻酔による嘔吐リスクを下げるための措置です。 - 服薬調整
血液をサラサラにする薬を服用している場合、出血リスクを低減するため、手術の数日前から一時的に中止を指示されることがあります。 - 腸管の処置
視野を確保し手術を安全に行うため、腸を空にする目的で下剤や浣腸薬を使用することがあります。
痔の手術の流れ
手術は、局所麻酔・脊髄麻酔・全身麻酔のいずれかを用いて行われます。どの麻酔法を選ぶかは、患者の体力や病変部位の広がり、病院の方針などによって異なります。大まかな手術の種類は以下の通りです。
痔核切除術
大きな外痔核や嵌頓した内痔核など、重度の痔核を根本的に切除するための方法です。
- 手術中、外科医はメスや電気メス、レーザーなどを用いて痔核そのものを取り除きます。
- 必要に応じて痔核に血液を供給する動脈を縛り、痔核が縮小しやすくする処置を行うこともあります。
- 縫合には溶ける糸が用いられるのが一般的で、抜糸の手間を軽減します。
メリットとしては効果が高く、再発率が低いことが挙げられますが、デメリットとしては術後痛みが強い場合があることや、出血などの合併症リスクが高まることが挙げられます。
痔核縫合術
内痔核が脱出（肛門外に出てしまう）している場合に、肛門内へ押し戻し、専用のステープラーなどで縫合・固定する方法です。英語圏ではStapled hemorrhoidopexyとも呼ばれます。
- 肛門管内に落ちてきた痔核をクリップなどで元の位置に引き上げるように固定します。
- 痔核への血液供給をやや制限するような形になるため、出血や痛みを比較的抑えられる場合があります。
術後の痛みが軽減されやすく回復時間が短いメリットがある一方、直腸脱や再発などの合併症リスクが比較的高いといわれています。
手術後の生活
痔の手術は日帰りで対応可能な場合も多く、数日の安静や通院で回復できるケースが増えています。術後は痛み止めを処方されることが一般的で、痛みの程度には個人差があるため、医師と相談しながら適切な方法で痛みをコントロールしてください。また、入浴や座浴の方法など、医師の指示をしっかり守ることが早期回復のポイントとなります。
回復
痔の手術後の回復プロセス
手術後しばらくは、麻酔の影響で吐き気やだるさを感じることがあり、1～2週間程度の休養が推奨される場合が多いです。便通に関しては、激しい痛みを避けるために下剤が処方されることもあります。過度に力むと出血や創部の痛みを誘発するため、柔らかい便を維持できるよう食物繊維の多い食事や十分な水分摂取を意識しましょう。
- 温水での座浴
肛門付近を常に清潔に保ち、血行を良くするために役立ちます。 - 便秘予防
水分を多くとり、繊維質の高い食品（野菜、果物、全粒穀物など）を摂ることで便を柔らかく保ち、排便時の負担を軽減します。 - 長時間のトイレ滞在を避ける
トイレで長くいきむと、肛門周辺に負担がかかり傷の回復を妨げる可能性があります。 - 肛門への刺激を最小限に
手術後約3週間は肛門に指や器具を挿入しないように注意が必要です。 - 術後の異常の早期発見
手術部位が赤く腫れる、悪臭を伴う分泌液が出るなどの症状があれば感染や創部トラブルの疑いがあるため、早めに医師に連絡しましょう。
よくある質問
ハノイ・ホーチミン市での痔の手術におすすめな病院はどこですか？
信頼できる医療機関を選ぶことは、治療の質や手術後のケアの充実度に大きく影響します。以下は、ベトナムで痔の手術を検討する際に名前が挙がりやすい病院です。
- ハノイのBệnh viện Bạch Mai
- ハノイのBệnh viện Y Học Cổ Truyền Trung Ương
- ハノイのBệnh viện Việt Đức
- ホーチミン市のBệnh viện Thống Nhất
- ホーチミン市のBệnh viện Nhân Dân 115
- ホーチミン市のBệnh viện Đại Học Y Dược
以上はいずれも大規模病院であり、外科治療や内科治療の実績が豊富とされています。受診前に評判や診療科の情報を確認し、自分の症状や希望する治療方針に合った医療施設を選ぶことが大切です。
痔の手術の費用はどれくらいですか？
手術費用は、医療施設の公立・私立の区分、手術の方法、入院の有無、検査や薬剤費などによって大きく変動します。保険が適用される範囲や、病院の設備、個室利用の有無などの要因でも費用差が生じます。
費用の透明性が高い医療施設を選び、受診前にある程度の費用目安を確認しておくと安心です。また、必要に応じて複数の病院で見積もりを取ることも選択肢の一つです。
結論と提言
結論
痔の手術は、症状の進行度や重症度に応じては非常に有効な治療手段となります。軽度の痔は生活習慣の改善や薬物治療で十分にコントロールできるケースが多いものの、痛みや出血などが強く、保守的治療の効果が不十分な場合には手術を検討する価値があります。術式や回復プロセス、合併症のリスクなどを十分に理解したうえで、医師とよく相談しながら最適な治療法を選ぶことが肝要です。
提言
- 専門医に相談を
自分の症状に合った治療法を見極めるためにも、信頼できる専門医に早めに相談することが大切です。 - 術後のケアを徹底する
温水座浴や適度な休養、便秘予防など、術後ケアをきちんと行うことで回復がスムーズになります。 - 生活習慣の見直しを継続する
長時間の座位や飲酒など、再発リスクを高める要因をできる限り減らすことが、痔の再発防止につながります。
また、痔は再発を繰り返しやすい面があり、場合によっては複数回の処置が必要になることもあります。日頃からの肛門ケアや健康管理は、手術後の経過だけでなく再発予防の観点でも非常に重要です。
重要な注意：本記事の内容は一般的な医療情報を提供するものであり、個々の症状に対する確定的な診断・治療方針を示すものではありません。実際の治療にあたっては医師の診察や検査が不可欠です。必ず専門医に相談のうえ、個別の状況に合ったアドバイスを受けてください。
参考文献
- Haemorrhoidectomy – Health Direct (アクセス日: 2023年4月13日)
- Hemorrhoids – Mayo Clinic (アクセス日: 2023年4月13日)
- Hemorrhoids – Cleveland Clinic (アクセス日: 2023年4月13日)
- Hemorrhoidectomy – UCSF Health (アクセス日: 2023年4月13日)
- Hemorrhoidectomy for Thrombosed External Hemorrhoids – AAFP (アクセス日: 2023年4月13日)
- Hemorrhoidectomy – ScienceDirect (アクセス日: 2023年4月13日)
- Rubbini M, Ascanelli S. “Hemorrhoidectomy: Current controversies.” Minerva Chir. 2019;74(3):233-238. doi: 10.23736/S0026-4733.19.08152-0
- Bartnicka J ほか. “Differences in morphological and mechanical parameters of hemorrhoids in patients qualified for doppler guided hemorrhoidal artery ligation or open hemorrhoidectomy – a prospective cohort study.” Int J Colorectal Dis. 2021;36(3):701-711. doi: 10.1007/s00384-020-03771-3
なお、上記の研究（とくに近年の報告）によると、痔核手術の選択肢は多様化しており、術式によるリスクとメリットは患者個々の状態に応じて大きく変わると示唆されています。手術適応の決定には、主治医との十分なカウンセリングと最新のエビデンスを踏まえた検討が欠かせません。
最後に
痔は日本人にとって身近な疾患でありながら、羞恥心などの理由で放置されがちな側面があります。しかし、適切な診断と治療によって生活の質を大きく改善できる場合も多いのが事実です。特に手術が必要となる場合は、慎重な検討と専門医の意見が不可欠です。痛みや出血などの症状が慢性化し、日常生活に支障をきたすようであれば、早い段階で医療機関を受診し、必要に応じて手術を含む治療プランを検討してください。
また、手術を受けた後も、再発予防や創部の保護を目的とした生活習慣の管理が非常に重要です。坐浴や食事内容の工夫、便秘予防などのセルフケアを続けることで、快適な生活をより長く維持できる可能性が高まります。多角的なケアを行うことで、痔の悩みを軽減し、より健やかな日常生活を送ることができるでしょう。
専門家への相談と自己判断のバランスを大切に
医療機関や専門医のガイドラインを上手に活用しつつ、自分の体調や生活環境をしっかり観察し、無理なく取り組める方法を選択することが大切です。
本記事でご紹介した情報が、読者の皆様の症状理解や治療法の選択において、少しでも参考になれば幸いです。どうか、無理をせず、ご自身の体調を第一に考えて最適なケアを実践してください。今後も新たな研究や治療ガイドラインが更新される場合がありますので、疑問があるときは遠慮なく医療専門家へ相談し、最新情報を確認することをおすすめいたします。
免責事項
本記事は医学的な情報提供を目的としており、特定の症状や治療に対して確定的な診断や処方を行うものではありません。症状や治療法には個人差があるため、必ず医療機関で医師の診察を受け、専門家の指示に従ってください。本記事の情報を用いて行った自己判断による結果については、一切の責任を負いかねます。あくまでも参考資料としてご活用いただき、最終的な決定は医師との相談のうえで行うようお願いいたします。