白内障とは何か | 症状と治療法を徹底解説
眼の病気

白内障とは何か | 症状と治療法を徹底解説

はじめに

加齢による視力低下の代表的な病気として知られる白内障(いわゆる「かすみ目」「老人性白内障」「カタラクト」などの名称で呼ばれることもあります)は、世界保健機関(WHO)によると失明(視力を永久的に喪失する状態)の最も大きな原因として位置づけられています。白内障の主な特徴は、水晶体という目の中にある透明なレンズが濁っていくため、光がしっかり網膜まで届かず視界が霞んだり、夜間の見え方が悪くなったりすることです。高齢者に多い病気ですが、糖尿病やステロイド薬の長期使用などで若い世代でも起こる可能性があります。手術によって視力を取り戻すことも十分期待できる時代になりましたが、発見が遅れたり放置してしまうと失明に至る恐れがあるため、症状をよく理解したうえで早期に対処することが重要です。

免責事項

当サイトの情報は、Hello Bacsi ベトナム版を基に編集されたものであり、一般的な情報提供を目的としています。本情報は医療専門家のアドバイスに代わるものではなく、参考としてご利用ください。詳しい内容や個別の症状については、必ず医師にご相談ください。

本記事では、白内障とは何か、どのように症状があらわれるのか、原因や治療法、そして予防策について、実際の生活で役立つ情報を詳しく解説していきます。また、白内障の診断や手術後の経過についても、最新の研究や専門家の意見を参考にしながら解説し、読者のみなさまが安心して理解を深められるように努めました。

専門家への相談

本記事では、白内障に関する医療情報や国際的な医療機関からの知見を取り入れ、さらに医師(内科および総合診療科)であるBác sĩ Nguyễn Thường Hanhによる医療的な監修・見解をもとに情報を整理しています。ただし、個々の患者さんの病態や治療方針は専門家によって異なる場合がありますので、何か気になる症状がある場合や治療に関する詳細を確認したい場合は、必ず直接、医師や専門家に相談するようにしてください。

白内障とは何か

白内障の定義

白内障とは、水晶体(目の奥にある透明なレンズ)が濁ってしまう状態を指します。人の目は、角膜から入った光が水晶体を通過し、網膜で像を結ぶことで「ものを見る」仕組みになっています。健康な水晶体は透明で、光をしっかり通すことができますが、水晶体内でタンパク質などの成分が変性・沈着を起こすと、その部分が白く混濁しはじめます。濁りがひどくなるにつれ、光が網膜に届きにくくなり、視界がぼやけたり、色がわかりづらくなったり、ときに失明状態にまで至ることがあります。

世界保健機関(WHO)では、白内障を失明の原因の中で最も多い疾患として挙げています。加齢による発症が多いため、日本国内でも高齢化が進むにつれ患者数は増加傾向にあります。さらに、糖尿病などの基礎疾患やステロイド薬の長期服用がある場合、若い年齢層でも発症がみられます。

なお、2020年に学術誌Eyeに掲載されたシステマティックレビュー(Hashemi H.ら, 2020, Eye, 34(8):1357–1368, doi:10.1038/s41433-020-0938-4)によれば、世界各国の地域差はあるものの、高齢化に伴って白内障が引き起こす視力障害の割合は依然として非常に大きく、日本においても加齢性白内障の早期発見・早期治療が急務となることが示されています。

白内障にはどんな種類があるのか

白内障といっても、水晶体の濁り方や生じる部位によって以下のように分けられます。

  • 核性白内障
    水晶体の中心(核)部分が濁るタイプ。視界が黄色っぽく変色して見えたり、遠くが見えにくくなる一方、近くが見えやすくなる場合もあります。
  • 皮質白内障
    水晶体の周縁(皮質部分)から白い線や斑点状の混濁が広がるタイプ。光の散乱が大きいため、逆光のときまぶしさを強く感じたりします。
  • 後嚢下白内障
    水晶体の後部(後嚢)に濁りが生じるタイプ。読書時や明るい場所で視界がかすむことが多く、比較的若い人にもみられます。
  • 先天性白内障
    生まれつき水晶体が濁っている場合。遺伝や胎内感染、何らかの代謝異常などが原因とされますが、まれなケースです。

日本では核性白内障が多いと言われていますが、糖尿病患者の増加などライフスタイルの変化や、ステロイド薬の長期使用などにより、他のタイプの白内障もさまざまな年齢層で報告されています。

症状

白内障でよくみられる症状

白内障の主な症状としては、ものがかすんで見える視界に霧がかかったように感じるといった「視力低下」が挙げられます。さらに、進行状況や部位によって以下のような症状が現れます。

  • 遠くが見えにくい、または近くが見えにくい
    白内障のタイプによって、遠視が強まったり近視が強まったりする場合があります。
  • 光に対するまぶしさが増す
    特に夜間の車のライトや太陽光を非常にまぶしく感じ、ハロー(光のまわりに輪が見える)やグレア(ぎらつき)現象が起こりやすくなります。
  • 二重に見える(複視)
    片目で見ているにもかかわらず、重なって見える場合があります。
  • 色の区別がしにくくなる
    全体的に黄ばんだり白くくもった印象を受けやすくなり、特に淡い色を見分けにくくなります。
  • 夜間の視力低下
    暗い場所での視認性がさらに落ち、夜間の歩行や運転がしづらくなる場合があります。

初期のころは、視力の変化がごくわずかであることも多く、老眼など他の要因と区別しづらいかもしれません。しかし、「視界がかすむ」「まぶしさを強く感じる」などの変化を自覚したら、なるべく早めに眼科を受診して検査を受けることが大切です。

こんなときは医師に相談を

  • 急激に視野が狭くなったり、激しい眼痛をともなう
    ほかの眼疾患(急性緑内障など)の可能性もあるため、早急に診察を受けてください。
  • 以前から白内障の診断を受けており、急に視力の低下が進んだ
    進行度合いや合併症がないかを確認する必要があります。
  • ものが二重に見えたり(複視)、光のにじみや極端なまぶしさを感じる
    白内障が進んでいる場合、または他の眼の病気が隠れている場合があります。

上記のような異常があれば自己判断をせず、専門家の診察を受けましょう。

原因とリスク要因

白内障が起こる主な原因

白内障の最も代表的な原因は加齢とされています。加齢に伴い水晶体中のタンパク質が凝集しやすくなり、濁りが進んでいきます。しかし、加齢以外にも次のような要因で白内障が起こることがあります。

  • ステロイド薬の長期使用
    気管支ぜんそくやリウマチなどの治療でステロイド薬を長期間服用している場合、水晶体が濁りやすくなると報告されています。
  • 糖尿病などの基礎疾患
    血糖値のコントロールが不良な状態が続くと、水晶体の代謝が乱れ、白内障の発症や進行を早める場合があります。
  • 目の外傷や手術後
    以前に目をケガしたり、手術を行ったりすると二次的に白内障が生じることがあります。
  • 強い紫外線に長期間さらされる
    屋外での作業が多い方や、日差しの強い環境に長時間いた方は、紫外線の影響で白内障が進行するリスクが高まります。

これらの原因は加齢性白内障に加えて、さまざまな年代でも発生する白内障のリスクを高めると考えられています。

白内障のリスクを高める要素

  • 年齢
    一般的には40歳以降から徐々にリスクが高まり、60~70代で発症率が著しく上昇します。
  • 家族歴
    遺伝的に白内障を発症しやすい体質をもつ家系が存在します。
  • 喫煙
    たばこに含まれる有害物質が水晶体にダメージを与え、加齢変化を促進すると考えられています。
  • アルコールの過剰摂取
    長期間大量に飲酒することで、白内障のリスクが高まる可能性があります。
  • 日光暴露
    紫外線を多く浴びる環境にいる場合、リスクが高まります。
  • 肥満や高血圧
    生活習慣病と関連し、血管障害を通じて眼に影響を与える可能性があります。

こうしたリスク要因があっても必ず白内障になるわけではありませんが、複数の要因が重なるほど発症確率が高まる傾向があります。早期発見のためには定期的な眼科検診が大切です。

診断と治療

白内障の診断方法

白内障の診断は、主に視力検査細隙灯顕微鏡検査によって行われます。細隙灯顕微鏡(スリットランプ)とは、目の断面を観察できる検査装置で、水晶体の混濁の程度や部位を詳細にチェックできます。また、眼底検査(網膜の状態を確認する)や眼圧測定(緑内障との鑑別が必要な場合)など、総合的に目の状態を調べることも大切です。

白内障が疑われる場合、専門家である眼科医の診察を受けるとともに、どのタイプの白内障か、進行度はどれくらいかなど、今後の治療方針に影響する情報をきちんと把握しておく必要があります。

白内障は治る? 治療の選択肢

初期~中期

白内障は水晶体そのものが混濁するため、目薬や内服薬だけでは根本的に濁りを取り除くことはできません。ただし、初期~中期の軽度な段階であれば、適切なメガネ装用によってある程度視力を補正できる場合があります。また、糖尿病などの基礎疾患がある方は、そのコントロールを改善することで、白内障の進行を緩やかにする可能性が指摘されています。

手術の適応

視力低下が日常生活に大きく支障をきたすようになると、手術が考慮されます。手術では濁った水晶体を超音波などで砕いて取り除き、そこに眼内レンズ(人工水晶体)を挿入するのが標準的な方法です。これは日帰り手術として行われるケースが多く、局所麻酔(点眼麻酔)で進められます。

  • 手術後の経過と注意点
    手術後は基本的に1か月程度、感染予防や炎症を抑えるための点眼薬を使用します。多くの患者さんが数日から数週間で視力の改善を実感し、最終的には数週間~2か月ほどで落ち着くとされています。手術は両目同時に行うのではなく、まずは進行が強いほうや視力の低いほうの目から実施し、一定期間を空けた後、もう一方を手術するという流れが一般的です。

手術後のリスク・合併症

白内障手術は非常に安全性の高い手術ですが、まれに合併症が生じることがあります。たとえば、術後感染(術後眼内炎)や後発白内障(新たな濁りが生じる)などが挙げられます。後発白内障は、レーザーによって再手術をせずに治療できる場合が多いとされています。万が一、強い痛みや視力低下などが起こった場合はすぐに受診してください。

また、2021年に発表された大規模コホート研究(術後約3万人を対象とした解析)でも、白内障手術後の合併症率は非常に低く、適切な術前検査と術後管理を行うことでほとんどの患者が良好な視機能を獲得していると報告されています。

予防と進行を遅らせる工夫

白内障を予防・進行抑制する生活習慣

白内障は加齢による変化が大きな要因となるため、完全に防ぐのは難しい部分があります。しかし、以下の生活習慣を意識することで、進行を遅らせたりリスクを下げたりすることが期待できます。

  • 紫外線対策
    外出時には紫外線カット機能のあるサングラスや帽子を利用して、直接目に強い日差しが当たるのを防ぎましょう。紫外線は水晶体にダメージを与え、白内障の進行に関わるとされています。
  • 糖尿病のコントロール
    既に糖尿病を持つ方は、血糖値のコントロールを適切に行うことで白内障の進行を抑える可能性があります。定期的な検査と医師の指導を受け、適切な食事・運動・薬物療法を続けましょう。
  • 禁煙・節酒
    喫煙やアルコールの多量摂取は白内障のリスクを高めると報告されています。なるべく禁煙に取り組み、アルコールも適量に抑えることが望ましいです。
  • 栄養バランスのとれた食生活
    抗酸化作用をもつビタミン(ビタミンC、ビタミンEなど)やカロテノイド(ルテイン、ゼアキサンチンなど)が水晶体の酸化ストレスを軽減する可能性が議論されています。野菜や果物、魚などをバランスよく摂る食事を心がけましょう。
  • 定期的な眼科検診
    40歳を過ぎたら、年1回程度の眼科検診を受けるのが理想的です。白内障だけでなく、緑内障や加齢黄斑変性症など、他の眼疾患の早期発見にもつながります。

早期受診の大切さ

白内障は少しずつ進行するため、初期段階では自覚症状が軽微なことも少なくありません。視力の低下を「年のせい」と放置してしまうと、治療のタイミングを逃してしまうことがあります。視界がかすんだり、まぶしさが強くなってきたと感じたら、なるべく早めに眼科を受診しましょう。特に車の運転などが日常に必要な方は、視力低下が生活や安全に直結するため、より慎重な対応が求められます。

よくある疑問への回答

「手術は痛くないの?」

白内障手術は点眼麻酔によって行われることが多く、痛みはほとんど感じません。本人が意識のある状態で受けられますが、術中の視界はほぼ光やぼんやりした影だけなので、手術の詳細な様子は見えないとされています。また、心配が強い場合は状況に応じて静脈麻酔などが使われる場合もありますので、事前に主治医に相談してください。

「術後、すぐに日常生活に戻れる?」

基本的には日帰り手術が可能なケースが多く、翌日にはある程度普通の生活を送れます。ただし、1週間程度は激しい運動を避け、処方された点眼薬をきちんと使い、定期的に通院して経過観察を受ける必要があります。目をこすったり水が入りすぎたりしないように注意し、術後1か月程度は感染症のリスクを避けるために医師の指示に従いましょう。

「両目同時に手術できる?」

安全性を考慮して、通常は片目ずつ時間を空けて手術します。1回の手術で両目を同時に行うケースはごく一部で、合併症や感染症などのリスクを考えると、片目ずつ行ったほうが安心とされています。

「手術しなければずっとメガネで対応できる?」

初期段階であれば眼鏡やコンタクトレンズで視力を補える場合がありますが、白内障が進行していくとレンズの濁りが強くなり、メガネによる矯正効果が得られにくくなります。メガネを変えても視力が上がらない、日常生活で困るほど視界が不良になってきた場合は、手術が適応となることが多いです。

白内障にまつわる注意点とアドバイス

他の疾患との合併に注意

  • 緑内障や加齢黄斑変性症を併発している場合
    白内障が原因で視力低下が起こっていると考えて手術をしても、他に緑内障や加齢黄斑変性などの疾患があると、期待していたほど視力が回復しない場合があります。術前にしっかり検査しておくことが重要です。
  • 糖尿病網膜症
    糖尿病が長年続くと網膜にも影響が出る場合があり、白内障手術単独では視力が改善しにくくなるケースがあります。総合的な眼科診療を受けておきましょう。

生活上の注意点

  • まぶしさへの対策
    白内障によるまぶしさや眩感(ハロー・グレア)はサングラスや遮光眼鏡の活用である程度軽減できます。ドライブ時や屋外作業時は特に注意しましょう。
  • 暗所での移動の安全確保
    夜間の視力低下を自覚している場合は、十分な明かりの確保や白杖、家族の付き添いなどを検討してください。
  • 全身疾患の管理
    糖尿病や高血圧などは、白内障だけでなく他の重篤な合併症リスクを高めます。主治医の指示のもとでしっかりコントロールを行いましょう。

結論と提言

白内障は加齢による自然な変化として多くの人が経験する可能性のある病気です。水晶体が濁ってしまうことで視界がかすみ、まぶしさや色覚異常、夜間の見えづらさなど、日常生活に支障をきたす症状が徐々に現れます。初期段階では眼鏡やコンタクトレンズで一時的に対処できる場合もありますが、進行すると手術以外では視力回復が難しくなっていきます。

一方で、白内障手術は現在では安全性が高く、日帰りで受けられるケースがほとんどです。適切な術前検査と術後管理を行うことで、多くの方が十分な視力を取り戻せるようになりました。もっとも大切なのは早期発見・早期対応です。視界のかすみやまぶしさを「年のせい」と軽視せず、異変を感じたら眼科医を受診することをおすすめします。

また、糖尿病や生活習慣病を持っている場合は、その管理が白内障の進行を遅らせるうえでも重要なポイントになります。紫外線対策や禁煙など、日常生活のちょっとした心がけも白内障の予防や進行遅延に寄与しますので、ぜひ意識してみてください。

最後に、すべての医療情報はあくまでも一般的な参考であり、個々の症状や病歴、生活環境によって最適な治療方針は異なります。疑問や不安がある方は、必ず医師や専門家に直接相談し、納得のいくまで説明を受けてから治療を進めてください。

重要な注意点
この記事の内容はあくまで一般的な医療情報の提供を目的としており、専門家による直接の診断・治療の代替にはなりません。症状の判断や治療方針の最終決定は必ず医師に相談してください。

参考文献

医師への相談を強く推奨します
本稿に記載された情報は一般的な参考情報であり、個々の患者さんの症状や状況に応じた最適なアドバイスを提供するものではありません。必ず医師の診察・指示を受けたうえで治療や生活習慣の改善を行ってください。

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