医学的査読:
本稿の作成にあたり、日本の白内障治療分野を牽引する以下の専門家の研究成果および公開情報を重要な参考文献として参照しました。
赤星 隆幸 医師 (三井記念病院)
清水 公也 医師 (国際医療福祉大学大学院)
この記事の科学的根拠
この記事は、入力された研究報告書で明示的に引用されている最高品質の医学的根拠にのみ基づいています。以下は、参照された実際の情報源の一部と、提示された医学的ガイダンスとの直接的な関連性です。
- 日本眼科学会:白内障の定義、症状、標準的な手術方法、および術後の合併症に関する基本的な医学的指針は、同学会の公開情報に基づいています。
- 日本白内障屈折矯正手術学会 (JSCRS):手術の最適なタイミング、術後の生活上の注意点、および多焦点眼内レンズに関する臨床成績や見解は、同学会の専門家向け情報および一般向け啓発資料を基にしています。
- 米国眼科学会 (AAO):術後の回復タイムラインや合併症に関する国際的な標準治療の考え方については、同学会の患者向けガイドラインを参照しています。
- Cochrane Review:多焦点眼内レンズと単焦点眼内レンズの有効性と安全性を比較するエビデンスについては、質の高いシステマティックレビューとして国際的に評価されているコクラン・レビューのデータを基に解説しています。
要点まとめ
- 白内障は加齢が主な原因ですが、アトピー、糖尿病、外傷なども要因となり、単なる老化現象ではありません。
- 現代の手術のタイミングは視力数値ではなく、「日常生活に不便を感じるか」という生活の質(QOL)が最も重要な基準です。
- 術後1週間は感染症予防が最重要期間です。医師の指示に従った点眼と、目への刺激を避ける厳格な自己管理が求められます。
- 眼内レンズには、保険適用の「単焦点」と、眼鏡への依存度を減らす選定療養の「多焦点」「焦点深度拡張型(EDOF)」があり、ご自身のライフスタイルに合わせた選択が後悔しない鍵となります。
- 高額療養費制度を利用することで、医療費の自己負担を大幅に軽減できます。特に両眼手術を同月内に行うと、負担額をさらに抑えられる可能性があります。
第1部: 白内障手術の基礎知識
白内障手術は、濁った水晶体を取り除き、人工の眼内レンズを挿入することで視機能を取り戻す治療法です。その成功は、患者様自身が病気の本質、手術の適切なタイミング、そして回復過程を深く理解することから始まります。本章では、白内障手術を受けるすべての方が知っておくべき基礎知識を、最新の医学的知見と権威あるガイドラインに基づき、網羅的かつ詳細に解説します。
1.1. 白内障の理解:単なる「老化」ではない病気
白内障は、眼の中でカメラのレンズのような役割を担う「水晶体」が白く濁る病気です2。透明であるべき水晶体が濁ることで、光が適切に網膜に届かなくなり、様々な視覚症状を引き起こします。
主な原因としての加齢
白内障の最も一般的な原因は加齢です3。水晶体を構成するタンパク質が年齢とともに変性し、その透明性を失うことで発症します。統計的にもこの傾向は明らかであり、早い人では40代から発症し始め、50代で約40%、80代になるとほぼ100%の人に白内障が認められます4。厚生労働省のNDBオープンデータによれば、実際に白内障手術を受ける患者数は60代から急増し、70代、80代が全体の約70%を占めています5。これは、白内障が多くの人にとって避けられない加齢性変化であることを示しています。
加齢以外の多様な原因
しかし、白内障を単なる「老化現象」と捉えるのは正確ではありません。特に若年層で発症する場合、その背景には様々な要因が存在します。
- アトピー性皮膚炎: 顔面、特にまぶたのアトピー性皮膚炎が重症な場合、その炎症や、痒みから目を掻いたり叩いたりする物理的刺激が原因で、特徴的な形状の白内障(アトピー白内障)を発症することがあります3。
- 外傷: 眼球への強い打撲(外傷性白内障)は、年齢に関わらず水晶体に損傷を与え、白内障を引き起こす原因となります3。
- 全身疾患: 糖尿病は、高血糖状態が水晶体の代謝に影響を与え、白内障の進行を早めることが知られています3。
- 薬剤: ステロイド薬の長期的な内服や点眼は、副作用として白内障(ステロイド白内障)を引き起こすことが広く知られています3。
- その他の要因: 放射線被曝や、ぶどう膜炎などの他の眼疾患も白内障の原因となり得ます3。
このように、白内障は多様な原因によって引き起こされるため、年齢に関わらず、後述する症状に心当たりがある場合は専門医の診察を受けることが重要です。
主要な症状
白内障の症状は、単に「視力が落ちる」だけではありません。水晶体の濁り方や部位によって、多彩な症状が現れます。
- 視力低下・かすみ: 最も一般的な症状です。視界全体が霧がかかったように、あるいはすりガラスを通して見ているように感じられます1。
- 羞明(しゅうめい): 水晶体の濁りによって光が乱反射し、屋外の太陽光や室内の照明、夜間の対向車のヘッドライトなどを以前より強くまぶしく感じるようになります1。
- 複視: 片方の目で見たときに、物が二重、三重にだぶって見えることがあります。これは乱視とは異なる、水晶体内部の不均一な濁りが原因です1。あるジャーナリストは「数字の3が8に見える」という具体的な体験を報告しており、日常生活における支障の大きさがうかがえます6。
- コントラスト感度の低下: 物体の輪郭がはっきりしなくなり、色の濃淡の区別がつきにくくなります。薄暗い場所で物が見えにくくなるのもこのためです7。
- 色覚の変化: 水晶体の核が黄色く濁ることで、視界全体が黄色がかって見えることがあります。手術後にこのフィルターが取り除かれることで、逆に世界が「青みがかって見える」と感じることがあります3。
これらの症状は、眼鏡やコンタクトレンズでは矯正することができません。日常生活においてこれらの不便を感じ始めたときが、次のステップである手術を検討するタイミングとなります。
1.2. 手術の最適なタイミング:視力検査の数値を超えて
かつて白内障手術は、視力が大幅に低下してから行われる「失明を防ぐための手術」でした。しかし、手術技術と眼内レンズの飛躍的な進歩により、その位置づけは根本的に変わりました。現代の白内障手術は、「見え方の質」を取り戻し、生活の質(QOL)を向上させるための、より積極的な治療へと進化しています8。
現代の基準は「生活の質(QOL)」
現在の眼科医療では、「視力が0.7以下になったら手術」といった画一的な基準は存在しません1。最も重要な判断基準は、「患者自身が視覚症状によって日常生活に不便を感じているかどうか」です。これは、白内障手術が単なる視力回復手術(開眼手術)から、患者が「いかに見えるようにしたいか」を選択する屈折矯正手術へと変化したことを象徴しています8。このパラダイムシフトは、患者に新たな役割を求めます。それは、単に医療を受ける客体ではなく、自身のライフスタイルや希望を医師と共有し、治療方針の決定に主体的に関わる「パートナー」としての役割です。特に、後述する多焦点眼内レンズなどの選択肢が登場したことで、この「選択の重要性」はかつてなく高まっています。患者は、自身の価値観に基づき、どのような見え方を手に入れたいかを熟考する必要があるのです。
QOL低下の具体例
日常生活における不便さは、人それぞれです。以下のような具体例が、手術を検討するきっかけとなります。
- 職業上の支障: 細かい手作業を要する職業、デザインや色彩を扱う仕事、あるいはPC作業が多いデスクワークなどで、かすみやコントラスト低下が業務効率を下げている場合1。
- 運転時の危険: 夜間の対向車のライトが眩しくて運転が怖い、道路標識やセンターラインが二重に見えて不安を感じるなど、安全に関わる問題1。
- 趣味の制限: 読書や手芸が楽しめなくなった、ゴルフでボールの行方が追えなくなった、絵画の色合いが分からなくなったなど、人生の喜びを損なっている場合6。
- 日常生活の困難: 新聞の文字が読みにくい、料理の際に手元が見えづらい、あるいは家の汚れに気づかなくなったなど、日々の暮らしの中での具体的な不便9。
これらの「不便」を感じたときが、専門医に相談し、手術によってQOLがどの程度改善する可能性があるのかを具体的に検討すべきタイミングです。
特殊な集団における考慮事項
手術のタイミングは、特定の条件下ではより慎重な判断が求められます。
- 超高齢者(85歳以上): 85歳以上であっても、白内障による視力低下で日常生活に支障をきたしていれば、手術は積極的に検討されます。ただし、加齢により水晶体を支える組織が弱くなっているなど、手術の難易度が上がる可能性も考慮し、リスクとベネフィットを慎重に評価する必要があります3。
- 小児白内障: 小児の場合、視力の発達が阻害される「弱視」を防ぐために、早期の発見と適切な時期の手術が極めて重要です。手術の適応や時期、術後のコンタクトレンズや眼鏡による矯正、視能訓練など、成人とは異なる専門的な管理が必要となるため、小児白内障手術の経験が豊富な専門医に相談することが不可欠です3。
- 他の眼疾患(緑内障など)との合併: 緑内障がある場合でも、基本的には白内障手術は安全に施行可能です。それどころか、特定のタイプの緑内障(閉塞隅角緑内障など)では、白内障手術によって眼圧が下がり、緑内障の進行リスクや発作のリスクを低減させる効果も期待できます3。
1.3. 手術方法:現代医療の奇跡
白内障手術は、この数十年で驚異的な進歩を遂げました。かつては大きな切開を伴う入院必須の手術でしたが、現在では極小の切開創から行われる、低侵襲で安全性の高い日帰り手術が主流となっています10。
標準術式:超音波水晶体乳化吸引術
現在、世界標準となっている手術法が「超音波水晶体乳化吸引術(Phacoemulsification)」です1。その手順は以下の通りです。
- 麻酔: 点眼薬による局所麻酔で行われ、手術中に痛みを感じることはほとんどありません7。患者の体験談でも、痛みのなさが繰り返し語られています6。
- 切開創作成: 角膜の端に、幅わずか2~3mm程度の非常に小さな切開創を作成します1。
- 前嚢切開: 水晶体を包む透明な袋(水晶体嚢)の前面を、円形に丸く切り取ります(Continuous Circular Capsulorhexis, CCC)。
- 水晶体の乳化・吸引: 切開創から超音波を発する細い器具を挿入し、濁った水晶体の核を超音波で細かく破砕しながら吸引・除去します1。
- 眼内レンズ挿入: 水晶体の中身がなくなった水晶体嚢の中に、折りたたみ式の柔らかい人工のレンズ(眼内レンズ)を挿入し、広げて固定します。
- 終了: 切開創は非常に小さいため、多くの場合、縫合は不要で自然に閉鎖します(自己閉鎖創)11。
標準的な手術時間は10分から30分程度ですが12、これはあくまで目安です。
誤解の払拭:手術時間と切開創の大きさ
「手術時間が短いほど良い手術」「切開創が小さいほど簡単な手術」といった認識は、明確な誤りです7。手術時間は、白内障の進行度(核の硬さ)、水晶体を支える組織の脆弱性、瞳孔の開き具合など、患者一人ひとりの眼の状態によって大きく変動します。進行した硬い白内障では、より多くの超音波エネルギーと時間が必要になります。安易な短時間手術は、かえって合併症のリスクを高める可能性すらあります。最も重要なのは、個々の症例に応じて、最も安全かつ確実な手技を丁寧に行うことであり、時間の長短が手術の質を直接示すものではありません。
技術革新の最前線:フェイコ・プレチョップ法
日本の眼科医が世界の白内障手術に与えた大きな貢献の一つが、赤星隆幸医師によって開発された「フェイコ・プレチョップ法」です13。この画期的な手技は、従来の術式が抱えていた課題を克服しました。従来法では、超音波をかけながら水晶体の核に溝を掘って分割していましたが、これには時間がかかり、多くの超音波エネルギーを必要とし、角膜への負担も大きいという欠点がありました15。プレチョップ法は、その名の通り、超音波をかける「前(Pre)」に、特殊な器具(プレチョッパー)を用いて水晶体の核を物理的に「割る(Chop)」手技です15。これにより、以下の劇的な改善がもたらされました。
- 手術時間の大幅な短縮: 20~30分かかっていた手術が5分以内に短縮可能となりました16。
- 眼内への侵襲の低減: 超音波使用時間と眼内に灌流させる液体量を最小限に抑えることで、角膜内皮細胞など眼の組織へのダメージを大幅に軽減します15。
- 合併症の減少と安全性の向上: 手術時間の短縮と低侵襲化により、術中・術後の合併症リスクが格段に低下しました16。
- 極小切開創の実現: この手技により、切開創を1.8mmまで縮小することが可能になりました。術後乱視の発生率は切開創の大きさのほぼ3乗に比例するため、1.8mmの切開創は術後乱視をほとんど引き起こさず、より質の高い術後視力を実現します1617。
このプレチョップ法は、白内障手術の安全性と効率性を飛躍的に向上させ、現在では世界中の多くの眼科医に採用されています14。これは、日本の眼科医療が世界最高水準にあることを示す一例と言えるでしょう。
第2部: 術後回復のタイムラインと生活上の注意点
白内障手術の成功は、手術そのものだけでなく、術後の適切な自己管理に大きく依存します。特に術後初期は、感染症予防と創部の安静が極めて重要です。この章では、日本眼科学会や米国眼科学会(AAO)などの権威ある機関のガイドラインと、多くの患者様の実際の体験談を統合し、術後回復の全期間にわたる詳細なタイムラインと、日常生活における具体的な注意点を網羅的に解説します。
2.1. 詳細な回復タイムライン
術後の回復過程は、大きく4つの期間に分けることができます。それぞれの期間で注意すべき点が異なるため、全体像を把握しておくことが、安心して回復期を過ごすための鍵となります。
第1期:術後24~48時間(最重要期間)
この期間の最大の目標は、感染予防と眼圧の安定です。手術で作成された小さな切開創は、この時間で閉鎖し始めます18。
- 行動制限: 目をこする、押さえるなどの行為は絶対に避けてください。また、眼圧の上昇を防ぐため、頭を腰より下に下げるような前かがみの姿勢や、重い物を持つことは厳禁です18。咳やくしゃみをする際も、できるだけ優しく行うよう心がけます18。
- 保護具の着用: 就寝中を含め、処方された保護メガネや眼帯(アイパッチ)を必ず着用します。これにより、無意識に目をこすったり、寝具が目に当たったりするのを防ぎます19。
- 点眼: 指示された点眼薬を、決められた時間に正確に使用することが最も重要です。
- 視力: 視界はまだぼやけているのが普通です22。焦らず、目を休ませることを優先してください。
第2期:術後1週間(治癒と感染防御期間)
術後1週間は、細菌性眼内炎などの感染症が最も起こりやすい、非常にデリケートな時期です23。厳格な自己管理が求められます。
- 清潔の維持: 目に水や汗、ホコリが入らないように最大限の注意を払います21。入浴、洗顔、洗髪には厳しい制限があります(詳細は後述)。
- 点眼の継続: 処方された抗菌薬や抗炎症薬の点眼を、自己判断で中断することなく、スケジュール通りに継続します3。
- 活動制限: 激しい運動や力仕事は引き続き禁止です24。
- 視力: 視力は徐々に改善し始めますが、まだ不安定な状態です22。
- 通院: 手術翌日、3日後、1週間後など、医師の指示に従い頻繁な診察が必要です。これにより、治癒の進行状況や合併症の有無を早期に確認します25。
第3期:術後1週~1ヶ月(安定化期間)
創部は安定し、感染症のリスクは大幅に低下します。日常生活の多くを、注意しながら再開できるようになります。
- 活動の再開: デスクワークや軽い家事、散歩などは問題なく行えます8。
- 継続する制限: 水泳(プールや温泉)、サウナ、目を打つ可能性のあるコンタクトスポーツ、アイメイクなどは、感染や創部への影響を避けるため、引き続き1ヶ月程度は控える必要があります8。
- 視力の安定: 視力はさらに安定していきますが、日によって多少の変動を感じることもあります。この時期は、新しい眼内レンズからの情報に脳が適応していく「神経順応」の重要なプロセスです28。
第4期:術後1~3ヶ月(最終調整期間)
多くの場合、この期間で視機能は完全に安定し、回復期は終了となります。
- 視力の確定: 視力が安定するため、必要であれば新しい眼鏡の処方を受けることが可能になります8。
- 制限の解除: 医師の許可を得て、ほとんどの活動制限が解除されます。
- 点眼の終了: 炎症が完全に治まれば、医師の指示に従って点眼薬を徐々に減らし、終了します12。
- 定期検診: 検診の間隔は長くなりますが(例:3ヶ月後)、後発白内障などの長期的な合併症をチェックするためにも、指示された定期検診は必ず受けるようにしましょう20。
2.2. 必須の術後ケア:譲れないポイント
術後の回復を確実なものにするためには、以下の3つのケアが不可欠です。これらは手術の成否を左右すると言っても過言ではありません。
点眼薬
処方される点眼薬には、それぞれ重要な役割があります。
- 抗菌薬: 細菌の増殖を抑え、術後眼内炎などの感染症を予防します18。
- 抗炎症薬(ステロイド・非ステロイド性抗炎症薬): 手術による炎症や腫れを抑え、痛みを和らげ、嚢胞様黄斑浮腫などの合併症を予防します3。
これらの点眼薬を、処方された用法・用量を守って使用することは、患者様の最も重要な責務です23。点眼を忘れたり、自己判断で中止したりすると、重篤な合併症を引き起こすリスクが著しく高まります30。点眼の際は、まず石鹸で手をよく洗い、容器の先端がまつ毛やまぶたに触れないように注意しながら、下まぶたを軽く引いて確実に点眼しましょう31。
保護メガネ・眼帯
保護具には二つの重要な目的があります。
- 物理的保護: 就寝中などに無意識に目をこすったり、手や物が目に当たったりするのを防ぎます32。これは、創部の安静を保ち、眼内レンズのズレなどを防ぐ上で非常に重要です33。
- 環境からの保護: 風、ホコリ、花粉、紫外線など、外部からの刺激物や細菌が目に入るのを防ぎます8。
通常、術後1週間程度の着用が推奨されますが8、特に就寝時の着用は、無意識の行動から目を守るために不可欠です。
定期検診
術後の定期検診は、単なる「様子の確認」ではありません。
- 治癒過程の評価: 創部の閉鎖状態、炎症の程度、眼圧などを客観的に評価します。
- 合併症の早期発見: 術後眼内炎や眼圧上昇、網膜の異常など、自覚症状がなくても発生しうる合併症を早期に発見し、迅速な治療につなげます。
- 治療方針の調整: 目の状態に合わせて、点眼薬の種類や回数を調整します。
手術翌日、3日後、1週間後、2週間後、1ヶ月後、3ヶ月後といったスケジュールが一般的ですが26、これはあくまで一例です。医師の指示に必ず従い、指定された診察はすべて受けることが、安全な回復への最短ルートです。
2.3. 日常生活への復帰 完全ガイド
多くの患者様が最も気になるのが、「いつから何ができるのか」という具体的な活動再開の目安です。インターネット上には様々な情報が溢れ、混乱を招くことも少なくありません。そこで、日本眼科医会、米国眼科学会(AAO)、および国内の主要な専門クリニックが提供する情報を統合し、最も信頼性の高いガイドラインを以下の表にまとめました。これは、患者様が自身の回復計画を立て、医師と相談する際の確かな基準となります。
活動 | 目安 | 理由・注意点 |
---|---|---|
入浴・シャワー | 首から下は翌日より可。浴槽に浸かるのは1週間後から。 | 目に汚れた水が入るのを防ぐため(感染リスク)。血圧上昇による眼内出血のリスクも避ける3。 |
洗顔・洗髪 | 1週間後から。それまでは濡れタオルで目の周りを避けて拭く。 | 洗顔料やシャンプー、水道水が目に入るのを防ぐため(感染リスク)。洗髪は美容院で上向きに洗うのが最も安全3。 |
仕事(デスクワーク) | 翌日から可能。 | 身体的負担が少ないため。ただし、適度な休憩を取り、目を疲れさせすぎないこと8。 |
仕事(力仕事・屋外作業) | 最低1週間、推奨は1ヶ月間控える。 | 眼圧が上昇し、創部が開くリスクがある35。汗やホコリによる感染リスクも高い8。 |
運転 | 視力が安定し、医師の許可が出てから(通常1週間程度)。 | 安全な運転には、安定した視力と、新しい見え方への慣れ(距離感など)が不可欠8。 |
軽い運動(散歩など) | 翌日から可能。 | 身体への負荷が少なく、眼圧上昇のリスクも低いため8。 |
激しい運動(ランニング、筋トレ等) | 2週間~1ヶ月後から。 | 眼圧上昇、汗による感染、目をぶつけるリスクを避けるため27。 |
アイメイク | 1ヶ月後から。 | 化粧品に含まれる細菌による感染リスクが非常に高い。再開時は新しい化粧品を使用することが推奨される8。 |
飲酒 | 1週間程度控える。 | アルコールは血管を拡張させ、炎症を悪化させる可能性がある。転倒のリスクも高まる8。 |
喫煙 | 1週間程度控えることが望ましい。 | タバコの煙は目に強い刺激となり、炎症やドライアイを悪化させる可能性がある8。 |
旅行 | 近場の短期旅行は1週間後から。海外など長距離旅行は1ヶ月後から。 | 万が一合併症が起きた場合に、すぐに受診できる体制を確保するため。温泉や公衆浴場は1ヶ月間避ける8。 |
この表はあくまで一般的な目安です。最終的な判断は、必ず主治医の診察と指示に基づいて行ってください。
ここで特筆すべきは、公式なガイドラインと患者様の心理との間に見られるギャップです。臨床的な安全基準が「最低限の制限」を示す一方で、多くの患者様の体験談ブログでは、より強い不安が語られています33。眼球を切開したという事実(「眼球切ってるんです」33)や、「最悪失明する」という恐怖は、患者様をガイドライン以上に慎重な行動へと駆り立てます。例えば、保護メガネを指示された期間より長く着用したり34、1週間後も自分で洗髪するのをためらったりする行動です。これは医療者側から見れば「過剰な心配」と映るかもしれませんが、患者様にとっては、計り知れない価値を持つ「視力」を守るための、合理的で理解可能な自己防衛行動です。したがって、私達はこれらの患者心理を尊重し、「多くの患者様が、安心のために保護メガネを少し長めに着用されたり、洗髪はご家族に手伝ってもらったりするなどの工夫をされています」といった情報を提供することが、患者様の不安を肯定し、共感を示す上で重要であると考えています。
第3部: 術後の見え方と一般的な症状
白内障手術は、濁ったレンズを透明なレンズに入れ替えることで、劇的な視機能の改善をもたらします。しかし、手術直後から完璧な見え方が得られるわけではありません。回復過程では、多くの患者が特有の、しかし多くは正常な視覚現象を経験します。この章では、クリアな視界に至るまでの道のりと、その過程で起こりうる一般的な症状について、科学的根拠に基づき解説し、患者様が抱きがちな不安を解消することを目指します。
3.1. クリアな視界への道のり
初期のぼやけと回復の個人差
手術直後、特に保護眼帯を外した直後は、視界がぼやけて見えるのが一般的です18。これは、手術による軽度の角膜のむくみや炎症、そして脳が新しい眼内レンズからの視覚情報にまだ慣れていないために起こる正常な反応です37。視力回復のスピードには大きな個人差があり、手術翌日から驚くほどよく見える人もいれば、1週間以上かけて徐々に回復していく人もいます8。焦らず、ご自身のペースで回復していくことを理解することが大切です。
回復速度に影響を与える要因
視力回復のペースが比較的ゆっくりになる場合、いくつかの要因が考えられます。
- 白内障の進行度: 手術前の白内障が非常に進行しており、核が硬かった場合、手術中により多くの超音波エネルギーを使用するため、術後の角膜のむくみが強く出ることがあります。このむくみは時間とともに解消されますが、その間は視界がかすんで見えます25。
- 併存する他の眼疾患: 網膜や視神経に元々何らかの疾患(例:糖尿病網膜症、黄斑変性、緑内障など)がある場合、白内障手術で水晶体の濁りがなくなっても、視力回復には限界があることがあります23。
- 多焦点眼内レンズの使用: 複数の焦点を持つ多焦点眼内レンズは、脳がその独特な光の分配に慣れる(神経順応)のに時間がかかることがあります。単焦点レンズに比べて、安定した見え方を実感するまでに数週間から数ヶ月を要することがあります23。
「感動」の効果:世界が生まれ変わる感覚
多くの患者様が術後に経験するのが、視界の劇的な変化に対する感動です。体験談には、「新聞紙の白さ、活字の黒さの鮮やかさに驚いた」「テレビ画面が美しい」「景色が明るく一変した」といった声が溢れています9。これは、長年、黄色く濁ったフィルター(白内障)を通して世界を見ていたため、そのフィルターが取り除かれたことで、本来の色や明るさを取り戻したために起こる現象です。色の鮮明さが増し、世界が立体的で晴れやかに見えるこの感覚は、白内障手術がもたらすQOL向上の最も大きな側面の一つです36。
3.2. 一般的(かつ正常)な見え方の現象を理解する
術後、多くの患者様がこれまで経験したことのない視覚現象に気づき、不安に感じることがあります。しかし、その多くは回復過程における正常な反応です。
青視症(せいししょう):世界が青みがかって見える
術後、視界全体が青っぽく見える現象は「青視症」と呼ばれ、非常に多くの患者様が経験します7。これは、病気や異常ではありません。科学的な理由は、加齢による白内障では水晶体が徐々に黄色く濁り、青色光をカットする天然のサングラスのような役割を果たしていたためです。手術によってこの黄色いフィルターが取り除かれると、本来の量の青色光が網膜に届くようになり、脳がその変化に慣れるまで、相対的に青を強く感じてしまうのです36。特に片眼のみ手術した場合に、左右の色の違いとして感じやすいですが、通常は数週間から3ヶ月程度で脳が適応し、自然な色覚に戻ります3。
飛蚊症(ひぶんしょう):視界に浮遊物が見える
視界に黒い点や糸くずのようなものが飛んで見える症状が飛蚊症です。術後に飛蚊症を自覚したり、以前より気になるようになったりすることがありますが、これも多くの場合、異常ではありません25。白内障によって視界がかすんでいた間は気づかなかった、元々眼球内に存在した硝子体の濁りが、手術によって視界がクリアになったことで、はっきりと認識されるようになるためです20。ほとんどの飛蚊症は生理的なもので心配ありませんが、「急に数が増えた」「稲妻のような光が見える(光視症)」「視野の一部がカーテンのように暗くなる」といった症状を伴う場合は、網膜剥離などの重篤な病気の前兆である可能性があるため、直ちに医師の診察を受ける必要があります1838。
異物感・乾燥感(ゴロゴロ感・ドライアイ)
術後に目がゴロゴロする、しょぼしょぼする、砂が入ったような感じがするといった症状も一般的です18。これは、手術で作成した小さな切開創や、手術操作、消毒薬の影響で、一時的に涙の層が不安定になり、ドライアイの状態になるためです39。あるシステマティックレビューでは、術後ドライアイが最長3ヶ月間持続する可能性があることが示されています40。この不快感は、創部が治癒し、涙の状態が正常化するにつれて改善しますが、処方された潤滑用の点眼薬(人工涙液)を使用することで、症状を和らげることができます1841。
充血
手術によって眼球表面の細い血管が一時的に傷つくため、白目の部分が赤くなる(結膜下出血)ことがあります18。見た目は派手で驚くかもしれませんが、痛みはなく、視力にも影響しません。これは自然に吸収され、通常は1~2週間程度で綺麗に消えていきますので、心配は不要です20。
これらの視覚現象の多くは、「神経順応(Neuro-adaptation)」という、脳の素晴らしい適応能力によって時間とともに解決されます。手術によって眼からの視覚情報が劇的に変化すると、脳は新しい情報処理の方法を学習し直します。青視症への慣れ、多焦点レンズの独特な見え方への適応、明るすぎる感覚の正常化など、これらすべてが神経順応のプロセスです。この回復過程を「異常」ではなく「脳の再学習期間」と理解することは、術後の不安を軽減し、前向きに回復期を過ごす上で非常に重要です。
3.3. 新しいメガネの作成:忍耐は美徳
白内障手術を受けると、多くの場合、それまで使っていた眼鏡は合わなくなります8。特に、遠方もしくは近方のどちらか一方にピントを合わせた単焦点眼内レンズを入れた場合は、ピントが合わない距離を見るために新しい眼鏡が必要になります。
なぜ待つ必要があるのか?
術後すぐに眼鏡を作りたくなる気持ちは理解できますが、焦りは禁物です。術後1~2ヶ月間は、軽度の炎症や創部の治癒過程により、視力や乱視の度数が微妙に変動する可能性があるためです8。この不安定な時期に眼鏡を作成してしまうと、すぐに度数が合わなくなり、無駄な出費となってしまいます。
最適なタイミング
眼科医の間のコンセンサスは、視力が完全に安定する術後1~2ヶ月を待ってから、最終的な眼鏡の処方を受けるのが最も確実であるというものです8。この時期になれば、安定した度数で、快適な眼鏡を作成することができます。
それまでの間の対処法
眼鏡がないと日常生活に著しい支障が出る場合は、いくつかの暫定的な対策があります。
- 安価な既製老眼鏡の利用: 手元を見るために、ドラッグストアなどで購入できる安価な既製老眼鏡を一時的に使用する34。
- 一時的な眼鏡の作成: いずれ作り直すことを前提として、術後早期に暫定的な度数で安価な眼鏡を作成する8。
これらの方法については、主治医や眼鏡店の専門家と相談するのが良いでしょう。
第4部: 合併症のリスクと緊急時の対応
白内障手術は、現代の外科手術の中で最も安全性が高い手技の一つであり、成功率は極めて高いです18。しかし、いかなる手術にもリスクは皆無ではなく、ごく稀に合併症が起こる可能性があります。患者様が合併症の兆候を正しく理解し、いつ医療機関に連絡すべきかを知っておくことは、万が一の事態に迅速かつ適切に対応し、視力を守る上で極めて重要です。この章では、危険な兆候(レッドフラッグ・サイン)と、起こりうる合併症について、その頻度と対処法を客観的なデータに基づいて解説します。
4.1. 危険信号:直ちに医師に連絡すべき症状
術後の経過中に、もし以下のいずれかの症状が現れた場合は、決して自己判断で様子を見たりせず、時間や曜日に関わらず、直ちに手術を受けた医療機関に連絡してください42。これらは、重篤な合併症のサインである可能性があります。
これらの症状を正しく認識し、迅速に行動することが、患者様自身ができる最も重要な術後管理の一つです。
4.2. 起こりうる合併症の詳細解説
合併症について知ることは、いたずらに不安を煽るためではありません。それぞれの合併症の性質、頻度、症状、治療法を正しく理解し、客観的なリスク評価を可能にすることが目的です。
術後眼内炎(じゅつごがんないえん)
- 概要: 手術の切開創から眼内に細菌が侵入し、増殖することで起こる重篤な感染症です。白内障手術における最も恐れられる合併症です3。
- 発症時期: 多くは術後3日~1週間以内に発症します(早発性)8。
- 頻度: 非常に稀です。発生頻度は約2,000~5,000件に1件(0.02%~0.05%)と報告されています3。処方された抗菌薬の点眼を正しく行っていれば、リスクはさらに低減します。
- 症状: 上記のレッドフラッグ・サインである、急激な視力低下、激しい眼痛、著しい充血が典型的な症状です8。
- 治療・対応: 眼科における真の緊急事態です。診断がつけば、緊急の処置(眼内への抗生物質注射や、場合によっては緊急手術)が必要となります。治療の開始が遅れると、重篤な視力障害や失明に至る危険性があるため、一刻も早い受診が不可欠です8。
後発白内障(こうはつはくないしょう)
- 概要: 手術の数ヶ月後から数年後に、再び視界がかすんでくる状態です。これは白内障の「再発」ではなく、手術の際に眼内レンズを固定するために残しておいた水晶体の後方の袋(後嚢)が、時間とともに濁ってくるために起こります7。
- 発症時期: 術後数ヶ月~数年後。個人差が大きいです8。
- 頻度: 比較的よく見られる変化です。術後数年で約10%~30%の患者に発生すると言われています3。
- 症状: 元の白内障と同様の、ゆっくりと進行するかすみ、まぶしさ、視力低下です8。
- 治療・対応: 治療は非常に簡単かつ安全です。外来でYAGレーザーという特殊なレーザーを濁った後嚢に照射し、穴を開けて光の通り道を再び作ることで、視力は即座に回復します。痛みはなく、処置は数分で終了し、入院も不要です8。
嚢胞様黄斑浮腫(のうほうようおうはんふしゅ)
- 概要: 網膜の中心部で、最も視力に重要な部分である「黄斑」に、手術の炎症が原因で水が溜まり、むくみ(浮腫)が生じる状態です4243。
- 発症時期: 術後6~10週頃に発症のピークがあります42。
- 頻度: 合併症のない通常の手術後においても、最も頻度の高い合併症とされています42。特に糖尿病網膜症やぶどう膜炎の既往がある患者様ではリスクが高まります29。
- 症状: 視界の中心が歪んで見える(変視症)、かすんで見える、視力が低下する、といった症状が現れます。
- 治療・対応: 主に抗炎症薬(ステロイドや非ステロイド性抗炎症薬)の点眼で治療します。ほとんどの場合、点眼治療で改善しますが、改善しない場合は眼内への薬剤注射などが必要になることもあります29。
網膜剥離(もうまくはくり)
- 概要: 眼球の内壁に張り付いている網膜が、剥がれてしまう病気です。
- 頻度: 白内障手術後の合併症としては稀です20。ただし、強度近視の人はもともと網膜剥離のリスクがやや高いとされています。
- 症状: レッドフラッグ・サインである、飛蚊症の急増、光視症、視野欠損が典型的な前兆です。
- 治療・対応: これもまた緊急事態であり、放置すると失明に至るため、早期の外科的治療(手術)が必要です。
眼圧上昇
- 概要: 術後に一時的に眼圧が上昇することがあります。
- 発症時期: 主に術後数日以内に見られます26。
- 頻度: 比較的よく見られますが、一過性であることがほとんどです。
- 症状: 軽い眼痛や頭痛を感じることがありますが、無症状の場合もあります。
- 治療・対応: 通常、眼圧を下げる点眼薬を使用することで数日以内に正常化します。視力への後遺症を残すことは稀です26。
これらの情報を正しく理解し、術後のご自身の目の状態に注意を払い、異常を感じたらすぐに相談するという姿勢が、安全で快適な術後回復の鍵となります。
第5部: 【深掘り解説】眼内レンズの選択
現代の白内障手術における最大のパラダイムシフトは、手術が単なる「治療」から「選択」へと進化した点にあります。その中心にあるのが、多種多様な機能を持つ「眼内レンズ(IOL)」の登場です。かつては全員が同じ単焦点レンズを使用していましたが、現在では患者様一人ひとりのライフスタイルや価値観に合わせて、最適なレンズを選択する時代になりました44。しかし、この「選択の自由」は、同時に「選択の複雑さ」と「選択の責任」を患者様にもたらします。この章では、眼内レンズのテクノロジーを基礎から解説し、科学的根拠に基づいた客観的なデータと、個々のライフスタイルを照らし合わせる実践的なフレームワークを提供することで、患者様が後悔のない、最良の意思決定を行うための究極のガイドとなることを目指します。
5.1. 眼内レンズ技術の解説:単焦点 vs. その他
眼内レンズは、その焦点の合い方によって、大きく「単焦点」と「多焦点」に分類されます。近年では、その中間に位置する「焦点深度拡張型(EDOF)」という新しいカテゴリーも登場しています。
単焦点眼内レンズ(Monofocal IOL)
- コンセプト: 最も歴史が長く、標準的な眼内レンズです。保険診療の対象であり、日本における白内障手術の約9割で使用されています44。その名の通り、ピントが合う距離は1点のみです7。
- 特徴: ピントが合った距離(例えば遠方)では、他のどのレンズよりもコントラストが良く、非常にクリアでシャープな見え方を提供します。光のロスがないため、ハロー・グレアといった異常光視症もほとんどありません44。
- トレードオフ: 遠方にピントを合わせれば手元(読書、スマートフォン)を見るためには老眼鏡が、手元に合わせれば遠方(運転、テレビ)を見るために近視用の眼鏡が必ず必要になります。眼鏡への依存度は高くなります。
多焦点眼内レンズ(Multifocal IOL)
- コンセプト: レンズの光学面に特殊な加工(回折や屈折を利用した構造)を施すことで、眼内に入った光を複数の距離に振り分け、複数の焦点を作り出すレンズです7。これにより、眼鏡への依存度を大幅に減らすことを目的とします。
- 進化の系譜:
- 重要なトレードオフ: 光を複数の焦点に分配するという原理上、1つの焦点に集まる光の量は単焦点レンズより少なくなります。これが、「コントラスト感度の低下(見え方の質の低下)」と「異常光視症(ハロー・グレア)」という多焦点レンズ特有のデメリットの根本的な原因です。眼鏡からの解放という利便性と、これらの視覚的な不快症状のリスクを天秤にかけることが、選択の核心となります45。
焦点深度拡張型眼内レンズ(EDOF: Extended Depth of Focus IOL)
- コンセプト: 多焦点レンズが光を「分割」するのに対し、EDOFレンズは1つの焦点を「引き延ばす」という異なるアプローチを取ります49。これにより、遠方から中間距離にかけて、切れ目のない自然な見え方を提供することを目指します51。
- 特徴: 多焦点レンズに比べて、ハロー・グレアなどの異常光視症が少ないとされています。その一方で、近方(30cm前後)の見え方は3焦点レンズに比べて弱い傾向があります。
- 代表的なレンズ: Clareon Vivityなどがこのカテゴリーに属します。また、TECNIS Synergyのように、EDOF技術と多焦点技術を組み合わせたハイブリッド型のレンズも登場しています485253。
- エビデンス: 近年のシステマティックレビューでは、EDOF(またはEnhanced Monofocal)レンズは、従来の単焦点レンズと比較して、中間・近方視力を有意に改善し、かつ異常光視症の発生率に有意な差はなかったと報告されており54、単焦点と多焦点の「良いとこ取り」を目指す選択肢として注目されています。
乱視矯正眼内レンズ(Toric IOL)
- コンセプト: 上記の単焦点、多焦点、EDOFのいずれのタイプにも、乱視を矯正する機能を追加したものがトーリック眼内レンズです7。これは焦点の種類とは別の「機能」であり、手術前に角膜乱視が一定以上ある患者様に用いられます。手術時にレンズの乱視軸を正確に合わせることで、白内障と同時に乱視も治療することが可能です55。
5.2. ライフスタイルとのマッチング:実践的な意思決定フレームワーク
どのレンズが「最高」かという問いに、唯一の正解はありません。「最適な」レンズは、患者様一人ひとりのライフスタイル、仕事、趣味、そして何を最も重視するかによって異なります。以下の表は、患者様がご自身の生活を振り返り、医師との相談に臨むための実践的なツールです。これは、単なるレンズの機能リストではなく、患者様の「したいこと」から出発する、共感に基づいた意思決定支援フレームワークです。
ライフスタイル・優先事項 | 最適なレンズタイプ(例) | 主な利点 | 重要なトレードオフ・注意点 |
---|---|---|---|
「とにかく最高にクリアな見え方を。眼鏡は全く苦にならない」 | 単焦点 | 最高のコントラスト感度。ハロー・グレアがほぼ無い。 | 遠近どちらかで必ず眼鏡が必要56。眼鏡への依存度が最も高い。 |
「プロのドライバー、パイロット。夜間運転が非常に多い」 | 単焦点 or EDOF (Vivityなど) | 致命的なハロー・グレアのリスクが最小限47。安全性を最優先。 | 眼鏡が必要になる場面が多い。特にEDOFでは近方用に必要。 |
「日常生活のほとんどを眼鏡なしで過ごしたい」 | 3焦点 (PanOptix58など) or ハイブリッドEDOF (Synergy57など) | 眼鏡からの解放度(Spectacle Independence)が最も高い。 | ハロー・グレアのリスクが最も高い45。コントラストがやや低下する可能性。 |
「主な活動はPC作業や料理など、中間距離(50~80cm)が中心」 | EDOF or 中間視力に優れた3焦点 | 中間距離が自然に見やすい51。 | 近方(30-40cm)の見え方は、近方特化のレンズより弱い場合がある。 |
「芸術家、デザイナー、写真家など、色の正確性や最高の画質が必須」 | 単焦点 | 最高のコントラストと色再現性。視覚的なノイズが皆無。 | 制作活動以外の場面で眼鏡が必須となる48。 |
「もともと強い乱視がある」 | 各レンズの乱視矯正(トーリック)モデル | 白内障と同時に乱視も治療でき、裸眼視力が向上する。 | 手術時にレンズの軸を正確に合わせる、より精密な手技が要求される7。 |
このフレームワークは、患者様が「私はどのタイプだろう?」と自己分析し、医師との対話をより具体的で生産的なものにするための出発点となります。
5.3. 患者満足度の科学:世界のデータが語ること
眼内レンズの選択は、最終的に患者様の「満足度」に帰結します。近年、この主観的な「満足度」を科学的に評価するための研究が世界中で進められています。
全体像:高い満足度
まず、白内障手術全体の患者満足度は非常に高いことが確認されています59。しかし、レンズの種類によって満足度の内訳は異なります。
多焦点 vs. 単焦点 – 国際的エビデンス
このテーマに関する最も信頼性の高いエビデンスは、複数の臨床試験を統合・解析したシステマティックレビューやメタアナリシスから得られます。特に、Cochrane Reviewはエビデンスのゴールドスタンダードとされています。
- 結論: 多焦点レンズは、単焦点レンズと比較して、眼鏡なしでの近方・中間視力が有意に優れており、眼鏡依存度が大幅に低いことが一貫して示されています455060。
- 代償: その一方で、多焦点レンズはハロー・グレアといった異常光視症の発生率が有意に高く、コントラスト感度が低いことも同様に一貫して示されています45。
日本のデータ:ローカルな視点
国際的なデータに加え、日本人を対象としたデータは非常に重要です。日本白内障屈折矯正手術学会(JSCRS)が実施した大規模調査では、以下の点が明らかになりました6162。
- 多焦点レンズ挿入者の68.4%が眼鏡不要またはほとんど不要となり、全体的な満足度は高い。
- 一方で、3.9%の患者様が何らかの見え方への不満を訴えている。
- さらに、1.2%の症例では、不満(主にコントラスト低下やハロー)が原因で、多焦点レンズを摘出し、単焦点レンズに交換する再手術が行われている。
このデータは、多焦点レンズが多くの患者様に恩恵をもたらす一方で、一部の患者様にとっては許容しがたい不利益を生む可能性があるという「両刃の剣」であることを、日本の臨床現場の数字として裏付けています。
満足度の客観的評価:PROMsの活用
現代の臨床研究では、患者様の主観を測定するために、科学的に妥当性が検証された質問票「患者報告アウトカム(Patient-Reported Outcome Measures, PROMs)」が用いられます。NEI VFQ-25やCatquest-9SFといった質問票がその代表例です6364。ある研究では、日本の患者様に3焦点レンズを挿入し、これらの質問票を用いて評価したところ、非常に高いQOLスコア、眼鏡依存度の低さ、そして高い満足度が示されました63。こうした厳密な手法によって、私達が議論している「満足度」が、単なる感想ではなく、科学的に測定可能な指標であることがわかります。
5.4. あなたは多焦点レンズの良い候補者か?正直な自己評価
臨床データやライフスタイルのマッチングに加え、もう一つ、レンズ選択に大きな影響を与える「公言されない要因」があります。それは、患者様ご自身の性格や、脳の神経質な度合いです。専門クリニックの中には、「神経質な方」や「完璧主義な方」は多焦点レンズに不向きな場合があると指摘するところもあります48。これは、第3部で述べた「神経順応」の能力に個人差があるためです。ハローやグレアといった、レンズの物理的特性から生じる視覚的なノイズを、脳がうまく「無視」できるかどうかが、多焦点レンズへの満足度を大きく左右します。同じ手術結果であっても、ある人は「少し気になるが、眼鏡がない利便性の方が大きい」と感じ、別の人は「このギラつきが気になって仕方がない」と感じるのです。これは、どちらが正しいかという問題ではなく、個人の神経学的な特性の違いです。医師は問診を通して患者様の性格をある程度推測しようとしますが、最終的にご自身の特性を最もよく知っているのは患者様自身です。医師との相談の前に、以下の質問について正直に自己評価してみることをお勧めします。
- 普段から、視界の些細な汚れや、眼鏡のレンズの傷などが気になりやすいタイプですか?
- 「多少の不便さがあっても完璧にクリアな見え方」と「多少の見え方の質は落ちても眼鏡から解放される利便性」のどちらをより強く望みますか?
- 新しい環境や状況に慣れるのに、比較的時間がかかる方ですか?
こうした自己分析を通じて得られた気づきを医師と共有することで、よりパーソナライズされた、後悔のないレンズ選択が可能になります。これは、手術の「科学」に、患者理解という「アート」を融合させる、最良の意思決定プロセスです。
第6部: 費用と公的医療保険制度
白内障手術、特に高性能な多焦点眼内レンズを選択する際に、患者様にとって大きな関心事となるのが費用です。日本の医療保険制度は複雑であり、どの治療にどの制度が適用されるのかを正確に理解することは、安心して治療に臨むために不可欠です。この章では、白内障手術にかかる費用の内訳、保険診療・選定療養・自由診療という3つの制度の違い、そして医療費の負担を大幅に軽減できる「高額療養費制度」の賢い活用法について、具体的かつ分かりやすく解説します。
6.1. 費用の理解:全体像の内訳
白内障手術の費用は、選択する眼内レンズの種類によって大きく異なります。
- 保険適用の標準手術(単焦点眼内レンズ): 健康保険が適用されるため、患者様の自己負担は医療費総額の1割~3割となります65。一般的な日帰り手術の場合、自己負担額の目安は以下の通りです3。
- 1割負担: 片眼あたり 約15,000円
- 2割負担: 片眼あたり 約30,000円
- 3割負担: 片眼あたり 約45,000円~50,000円
(※これらはあくまで目安であり、医療機関や処方薬によって変動します。)
- 先進的な眼内レンズ(多焦点・EDOFレンズ): これらのレンズを使用する場合、費用は保険適用の手術よりも高額になります48。その支払い方法は、後述する「選定療養」または「自由診療」となります。
6.2. 日本の保険制度を理解する
白内障手術における眼内レンズの選択は、以下の3つの医療保険制度と密接に関連しています。
1. 保険診療(健康保険適用)
標準的な単焦点眼内レンズを用いた白内障手術が対象です。手術費用、検査費用、薬剤費用など、治療にかかるすべての費用が健康保険の対象となり、患者様は窓口で自己負担割合(1割~3割)に応じた金額を支払います66。
2. 選定療養
2020年4月に導入された、比較的新しい制度です67。これは、保険適用外の治療(ここでは多焦点眼内レンズの使用)を、保険適用の治療(白内障手術自体)と併せて受けることを認めるハイブリッド型の制度です。厚生労働省によって承認された多焦点眼内レンズおよびEDOF眼内レンズが対象で、手術の技術料や検査・薬剤費は保険診療、レンズ代は単焦点レンズとの差額分を全額自己負担として支払います6869。この制度の導入により、先進的なレンズ技術へのアクセスがより多くの患者様に開かれました。
3. 自由診療(全額自己負担)
日本国内でまだ厚生労働省の承認を得ていない最新の眼内レンズや、レーザー白内障手術を多焦点レンズと組み合わせる場合などが対象となります47。手術、レンズ、検査、薬剤など、治療にかかるすべての費用が全額自己負担となり、費用は医療機関によって自由に設定され、非常に高額になります48。
制度区分 | 説明 | 対象となる眼内レンズ(例) |
---|---|---|
保険診療 | 標準的な白内障手術。 | 単焦点眼内レンズ |
選定療養 | 手術は保険、レンズ代は差額を自己負担するハイブリッド制度。 | 国内承認済みの多焦点・EDOFレンズ(PanOptix, Synergy, Vivity等) |
自由診療 | 全ての費用を自己負担する制度。 | 国内未承認の最新レンズ(Intensity等)、レーザー手術との組み合わせ |
6.3. 高額療養費制度:費用負担を軽減する鍵
どの制度を利用するかにかかわらず、医療費の自己負担額を大幅に軽減できる可能性のある、非常に重要な制度が「高額療養費制度」です。
制度の概要
これは、1ヶ月(月の1日から末日まで)に医療機関や薬局の窓口で支払った医療費の自己負担額が、年齢や所得に応じて定められた上限額を超えた場合に、その超えた金額が後から払い戻される(または事前に申請すれば窓口での支払いが上限額までとなる)制度です70。入院時の食事代や差額ベッド代などは対象外ですが、白内障手術の費用は対象となります。
賢い活用法:「同月内手術」戦略
この制度の鍵は、「1ヶ月ごと」に計算されるという点です。両眼の手術を予定している場合、2回の手術を同じ暦月内に行うか、月をまたいで行うかで、最終的な自己負担額に大きな差が出ることがあります。
具体的なシミュレーション
以下に、一般的な所得の70歳以上の方(自己負担割合2割)を例に、その効果をシミュレーションします。この場合、1ヶ月の自己負担上限額は18,000円(外来のみの場合)です65。
- 前提: 片眼の白内障手術の自己負担額(2割)が30,000円と仮定します。
- シナリオ1:月をまたいで手術(例:1月に右眼、2月に左眼)
- 1月の実質負担:18,000円。
- 2月の実質負担:18,000円。
- 両眼の合計実質負担額:36,000円
- シナリオ2:同じ月内に両眼を手術(例:1月中に右眼と左眼)
- 1月中の支払い合計:60,000円。
- 上限額18,000円を超える42,000円が払い戻される。
- 両眼の合計実質負担額:18,000円
このシミュレーションが示すように、両眼の手術を同月内に行うことで、自己負担額を半分に抑えることが可能です71。手術のスケジュールを計画する際には、この「同月内手術」のメリットを考慮し、主治医や病院の相談窓口に確認することを強くお勧めします。
第7部: 患者の体験談と名医の見つけ方
白内障手術の旅は、医学的なプロセスであると同時に、深く個人的で感情的な体験でもあります。臨床データやガイドラインが「何をすべきか」を教えてくれる一方で、実際に手術を経験した人々の声は、その過程で「何を感じるか」を教えてくれます。この最終章では、患者コミュニティから得られる貴重な知見を統合し、この旅における最も重要なパートナーである「信頼できる眼科医」を見つけるための指針を示します。
7.1. 患者の声から学ぶ:コミュニティからの体験談
インターネット上のブログや体験談には、医療の現場では語られにくい、患者様の生の声が溢れています。これらは、これから手術を受ける人々にとって、共感と実践的な知恵の宝庫です。
共通する不安とそれを乗り越える勇気
手術を前にした患者様が抱く不安は、驚くほど共通しています。手術そのものへの恐怖、痛みへの心配、そして何よりも術後の感染症への強い懸念です9。「眼球を切る」という事実がもたらす恐怖は、非常に根源的なものです。しかし、多くの体験談は、手術が実際には痛みがなく、あっという間に終わったという安堵感で締めくくられています6。こうした「先輩」たちの声は、後に続く人々の不安を和らげ、一歩踏み出す勇気を与えてくれます。
「アハ体験」:世界が生まれ変わる瞬間
術後の患者様が最も感動的に語るのは、視界が劇的に変化した「発見の瞬間」です。
- 「今まで見えなかった家の汚れが見えるようになった」9
- 「新聞の白と黒のコントラスト、テレビの色の鮮やかさに感動した」9
- 「すべての物が立体的に目に映る」9
- 「暗いと思っていた電球が、実は煌々と照っていたことに気づいた」6
これらの体験は、白内障が知らず知らずのうちに奪っていた「本来の世界の色と光」を取り戻すプロセスであり、手術がもたらすQOL向上の核心を物語っています。
適応への道のり:脳との対話
一方で、術後の視界がすぐに快適になるとは限りません。多くの患者様が、最初は見え方が「鋭すぎる」「明るすぎる」「何か変だ」と感じる適応期間を経験します28。これは、第3部で詳述した「神経順応」のプロセスです。脳が新しいレンズからの情報に慣れ、視界が「落ち着く」までには時間が必要です。このプロセスを理解することは、術後の違和感を「異常」ではなく「正常な過程」として受け入れる助けとなります。
自己主張の重要性:賢い患者になる
体験談から得られる最も重要な教訓の一つは、「主体的に関わること」の重要性です。
- 質問をためらわない: 「うるさいぐらい先生に質問と確認するぐらいでちょうどいい」というアドバイスは、特に複雑なレンズ選択において的を射ています28。
- 希望を明確に伝える: ご自身がどのようなライフスタイルで、どのような見え方を望むのかを、具体的に医師に伝えることが、満足のいく結果につながります30。
- 納得するまで決断しない: 説明に不明な点があれば、何度でも確認する。患者様がご自身の治療における能動的なパートナーとなることが、後悔のない選択への鍵です。
7.2. 信頼できる眼科医の選び方:見るべきポイント
白内障手術の成否は、執刀医の技術に大きく依存します。しかし、「名医」とは、単に手術が上手いだけの医師を指すのではありません。真に信頼できる眼科医とは、優れた技術に加え、患者様一人ひとりと真摯に向き合うコミュニケーション能力を兼ね備えた人物です。
技術力だけではない、優れた医師の指標
手術を受ける医療機関や医師を選ぶ際には、以下の点に注目すると良いでしょう。
- 丁寧なインフォームド・コンセント: 眼内レンズの選択肢について、メリットだけでなく、ハロー・グレアなどのデメリットやトレードオフについても、時間をかけて丁寧に説明してくれるか30。患者様のライフスタイル、仕事、趣味、そして視覚に関する価値観を詳細にヒアリングしてくれるか48。
- 包括的な術前検査: 視力や眼圧だけでなく、角膜形状、眼軸長、網膜の状態など、最適な眼内レンズ度数を決定し、合併症リスクを評価するための精密な検査を網羅的に行っているか。
- 明確な術後フォローアップ体制: 術後の定期検診のスケジュールや、万が一の合併症が起きた際の緊急連絡先・対応プロセスが明確に示されているか。
日本の眼科医療を牽引するエキスパートたち
日本には、世界の眼科医療をリードする多くの優れた専門家が存在します。例えば、画期的な「フェイコ・プレチョップ法」を開発し、白内障手術の安全性と効率性を飛躍的に高めた赤星隆幸医師13や、多焦点レンズやモノビジョン法に関する研究で知られ、日本眼科医会の広報資料の監修も務める清水公也医師87273などがその代表格です。これらの医師の存在は、特定の個人を受診することを推奨するものではなく、日本の白内障治療がいかに高い水準にあるかを示すものです。彼らのようなトップランナーが確立した高い基準が、日本全体の眼科医療の質を底上げしているのです。
よくある質問
Q1: 白内障手術の最適なタイミングはいつですか?
Q2: 手術は痛いですか?時間はどのくらいかかりますか?
Q3: 術後の生活で最も注意すべきことは何ですか?
Q4: 手術後、眼鏡は必要なくなりますか?
Q5: 「後発白内障」とは、白内障の再発ですか?
結論
現代の白内障手術は、技術の進歩により、非常に安全で、患者様の人生を変えるほどの恩恵をもたらす治療法となりました。かつて諦めるしかなかった「見え方の質」を取り戻し、再び色鮮やかでクリアな世界で活動的な生活を送ることを可能にします。しかし、その最良の結果は、医療者側からの単方向的な提供によって得られるものではありません。それは、患者様と医師との強固なパートナーシップの賜物です。このパートナーシップは、まず「知識」から始まります。患者様ご自身が、手術の基本、回復過程、リスク、そして眼内レンズの選択肢について深く理解すること。本稿が、そのための信頼できる羅針盤となることを願っています。次に、その知識を基にした「対話」です。患者様がご自身のライフスタイルや価値観を医師と共有し、医師は専門家としての知見をもって最適な治療計画を提案する。この共同作業を通じて、一人ひとりにとっての「最良の選択」が生まれます。そして最後に、手術後の「協力」です。患者様は、処方された点眼薬の使用や生活上の注意点を忠実に守り、ご自身の体の変化に注意を払う。医師は、定期的な診察を通じてその回復を注意深く見守り、万が一の事態に迅速に対応する。白内障からの解放は、単一の手術で終わるイベントではありません。それは、十分な準備、慎重な意思決定、そして丁寧な術後管理という一連の旅路です。この旅を、信頼できる医師というパートナーと共に歩むことで、患者様は再びクリアな視界という、かけがえのない宝物をその手にすることができるのです。
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