【眼科専門医が解説】目のかゆみの原因は?アレルギー・ドライアイ・感染症の見分け方から治し方まで徹底ガイド
眼の病気

【眼科専門医が解説】目のかゆみの原因は?アレルギー・ドライアイ・感染症の見分け方から治し方まで徹底ガイド

目のかゆみは多くの人が経験するありふれた症状ですが、その裏にはアレルギーから感染症、ドライアイまで多様な原因が隠れています。放置したり、誤った自己判断で対処したりすると、症状を悪化させるだけでなく、重大な眼疾患を見逃すことにもなりかねません。この記事では、日本の主要な診療ガイドラインに基づき、目のかゆみの原因の見分け方から最新の治療法までを、眼科専門医が徹底的に解説します。日本では成人の42.5%が花粉症を持つと報告されており1, 2、アレルギー性結膜炎全体の有病率は48.7%にも上ります3。これは、目のかゆみが多くの人にとって極めて身近な問題であることを示しています。

要点まとめ

  • 目のかゆみの主な原因は「アレルギー」「ドライアイ」「感染症」「眼瞼炎」の4つであり、原因によって治療法が全く異なります。
  • アレルギー性のかゆみは、日本のガイドラインで推奨される抗アレルギー点眼薬が基本治療ですが、重症例ではステロイドや免疫抑制点眼薬も使用されます4
  • ドライアイによるかゆみは、涙の量や質を改善する処方薬(ヒアルロン酸、ジクアホソル、レバミピド)が有効です5
  • 強い痛みや膿のような目やに、急な視力低下は感染症の危険なサインであり、自己判断せず直ちに眼科を受診する必要があります6
  • 市販薬を1週間使用しても改善しない場合や、コンタクトレンズ使用者は、正確な診断のために眼科医に相談することが強く推奨されます。

あなたのかゆみはどのタイプ?症状から考える主な原因

目のかゆみに加えて、他にどのような症状があるかを確認することは、原因を推測する上で非常に重要です。以下のチェックリストでご自身の状態を客観的に把握し、続く鑑別テーブルで可能性の高い疾患を確認してみましょう。

  • 充血:白目がどの程度赤いか?
  • 目やに:色はどうか(透明、白、黄色、緑)?質はどうか(サラサラ、ネバネバ、ドロドロ)?量は多いか?
  • 痛み:目の奥が痛む、異物が入ったようなゴロゴロ感、光を見ると痛むなど、痛みの種類はどうか?
  • 乾燥感:目が乾く、しょぼしょぼする感じはあるか?
  • その他の症状:まぶたの腫れ、涙が出る、光がまぶしい、視界がかすむ、くしゃみ・鼻水など鼻の症状はあるか?

これらの症状の組み合わせから、考えられる主な原因を以下の表にまとめました。

症状から考える原因疾患の簡易鑑別テーブル
主な原因疾患 かゆみの程度 目やにの特徴 充血の程度 その他の特徴的な症状
アレルギー性結膜疾患 強い 白く、サラサラした水様性 中等度~強い くしゃみ・鼻水、目の異物感、まぶたの腫れ
ドライアイ 軽度~中等度 量は少なく、糸を引くような粘液性 軽度 目の乾燥感、ゴロゴロ感、かすみ、疲れ
細菌性結膜炎 軽度 黄色~緑色の膿性、粘り気が強い 強い 朝、目やにで目が開きにくい
ウイルス性結膜炎 中等度 白く、サラサラした水様性が大量 非常に強い まぶたの強い腫れ、耳前リンパ節の腫れ・痛み
眼瞼炎/MGD 軽度~中等度 (慢性的) 量は少ない 軽度 (まぶたの縁が赤い) まぶたの縁の赤み・腫れ、フケ、異物感

最も多い原因:アレルギー性結膜疾患

目のかゆみの原因として最も一般的なのがアレルギー性結膜疾患です4。これは、特定のアレルギー原因物質(アレルゲン)が目の表面にある結膜に付着することで、免疫システムが過剰に反応し、炎症を引き起こす状態です。アレルギー反応の基本的なメカニズムは、アレルゲンが結膜に侵入すると、免疫細胞の一種である肥満細胞(マスト細胞)がそれを認識し、ヒスタミンなどの化学伝達物質を放出します。このヒスタミンが知覚神経を刺激して強い「かゆみ」を、血管を拡張させて「充血」を引き起こすのです7

季節性アレルギー性結膜炎(花粉症など)

特定の季節にのみ症状が現れるタイプで、その多くは花粉が原因です。日本では、春のスギやヒノキが有名ですが、初夏から夏にかけてはイネ科(カモガヤなど)、秋にはブタクサやヨモギといった、年間を通じて様々な植物の花粉が飛散しています8。このタイプは、くしゃみ、鼻水、鼻づまりといったアレルギー性鼻炎の症状を伴うことが非常に多いのが特徴です。

通年性アレルギー性結膜炎

季節に関係なく、一年中症状が見られるタイプです。主な原因はハウスダストで、特にダニの死骸やフン、カビ、ペットの毛やフケなどがアレルゲンとなります9。季節性のように急激に悪化することは少ないですが、掃除を怠ったり、特定の環境にいたりすると症状が強くなるなど、軽快と悪化を繰り返す傾向があります。

アレルギー性結膜疾患の治療法【ガイドライン準拠】

アレルギー性結膜疾患の治療目標は、『アレルギー性結膜疾患診療ガイドライン』において「アレルギー症状をコントロールし、QOL(生活の質)を維持して快適な日常生活を送れるようにすること」と明確に定められています4。治療は、セルフケアと薬物療法が二本柱となります。

セルフケアとアレルゲン回避(初期療法)

薬物療法と同じくらい重要なのが、原因となるアレルゲンを物理的に避けることです。ガイドラインでも推奨されている具体的な対策は以下の通りです。

  • 花粉対策: 花粉情報のウェブサイトやアプリを活用し、飛散の多い日の外出を控える。外出時には、花粉防止用のマスクやメガネ(フード付きのものが効果的)を着用する。帰宅時には、玄関で衣服や髪についた花粉をよく払い、すぐに洗顔やうがいをして洗い流す。
  • ハウスダスト対策: こまめに室内の掃除を行い、特にソファやカーペット、寝具は念入りに掃除機をかける。寝具は、ダニを通しにくい高密度のカバーを使用することも有効。室内の湿度を50%程度に保ち、カビの発生を抑える。
  • 洗眼: 目に入ったアレルゲンを洗い流すことは有効ですが、水道水で直接目を洗うのは避けましょう。涙の保護成分まで洗い流してしまい、かえって目を傷つける可能性があります。防腐剤の入っていない人工涙液を使用するか、眼科医の指導に従ってください。

薬物療法(点眼薬)

アレルギー性結膜疾患の治療の基本は、抗アレルギー点眼薬です。これらの薬は、その作用機序によっていくつかの種類に分けられます10

アレルギー性結膜疾患の主な治療薬(点眼)と特徴
薬剤の種類 主な役割と特徴 ガイドライン上の位置づけ4, 11
抗ヒスタミン薬 かゆみの原因物質であるヒスタミンの作用を直接ブロックする。即効性があり、今あるつらいかゆみを迅速に抑える。 初期治療および軽症例の基本薬剤。症状が出たときに使用する(頓用)。
メディエーター遊離抑制薬 アレルギー反応を引き起こす肥満細胞を安定させ、ヒスタミンなどの化学伝達物質が放出されること自体を抑える。予防的な効果が高い。 花粉飛散予測期間の約2週間前から、または症状が少しでも現れた時点から使用を開始する初期療法として推奨される。長期的な症状管理にも適している。
ステロイド点眼薬 非常に強力な抗炎症作用で、かゆみ、充血、結膜のむくみ(浮腫)などの重い症状を強力に抑え込む。 抗アレルギー点眼薬だけでは効果が不十分な中等症から重症例に使用される。眼圧上昇や感染症誘発などの副作用リスクがあるため、自己判断での使用は絶対にせず、眼科医の厳密な管理下でのみ使用されるべき薬剤であることを強く認識する必要がある。
免疫抑制点眼薬
(タクロリムス、シクロスポリン)
アレルギーに関わる免疫反応そのものを抑制する。従来の治療法に抵抗性を示した重症例に対して高い効果を発揮する。 アトピー角結膜炎や春季カタルといった、視力障害のリスクを伴う最重症型のアレルギー性結膜疾患に使用される。これらの薬剤の登場は、従来の治療に抵抗性であった重症患者の治療を革新した。眼科専門医による正確な診断と処方が必須。

いつ病院へ行くべきか?

市販の抗アレルギー点眼薬を1週間程度使用しても症状が全く改善しない、あるいは悪化する場合には、眼科の受診を強く推奨します。市販薬では対応できない重症のアレルギーである可能性や、他の疾患が隠れている可能性があるため、専門医による正確な診断と、より強力な処方薬による治療が必要です。

PC・スマホ時代の現代病:ドライアイ

ドライアイは、かつては加齢によるものと考えられていましたが、現代では長時間のコンピューター作業(VDT作業)やスマートフォンの使用、エアコンによる乾燥した環境、コンタクトレンズの装用など、多様な要因によって若年層にも急増している「現代病」です5。『ドライアイ診療ガイドライン』では、「様々な要因により涙液層の安定性が低下する疾患であり、眼不快感や視機能異常を生じ、視覚機能の異常を伴うことがある」と正確に定義されています5

日本の診断基準では、①目が疲れやすい、目が乾く、ゴロゴロするといった自覚症状があり、かつ②BUT(Tear Film Break-up Time:涙液層破壊時間)という検査で、涙の膜が5秒以下で壊れてしまう場合にドライアイと診断されます5

ドライアイでかゆみが出るメカニズム

ドライアイでなぜかゆみが生じるのか、不思議に思うかもしれません。そのメカニズムは、涙の量的な減少や質的な劣化によって、目の表面を潤し保護している「涙のバリア機能」が低下することにあります。バリアが弱まると、角膜や結膜の表面が乾燥して微細な傷がつきやすくなります。この傷ついた表面は非常に敏感になり、通常であれば問題にならないようなホコリやハウスダストなどのわずかな物理的刺激にも過敏に反応してしまい、結果として「かゆみ」や「異物感(ゴロゴロ感)」として感じられるのです。

ドライアイの治療法【ガイドライン準拠】

ドライアイの治療は、生活習慣の改善といったセルフケアと、失われた涙の機能を補う薬物療法が中心となります。

セルフケア

ガイドラインでも推奨される、日常生活で取り入れられる具体的な対策は以下の通りです5, 12

  • 意識的なまばたき: PCやスマホの画面に集中していると、まばたきの回数が無意識のうちに通常の1/4程度まで減少すると言われています。意識して深く、しっかりとしたまばたきをすることで、涙を目の表面に行き渡らせましょう。
  • VDT作業の休憩: 1時間連続で作業をしたら、最低でも10分程度の休憩を取り、目を休ませることが重要です。
  • 環境改善: 加湿器を使用して室内の湿度を60%程度に保つ、エアコンの風が直接目に当たらないように風向きを調整するなどの工夫が有効です。

薬物療法(点眼薬)

ドライアイの治療薬は、単に水分を補うだけでなく、涙の成分の分泌を促すなど、様々なアプローチがあります。これらはすべて医師の処方が必要な医療用医薬品です。

ドライアイの主な治療薬(処方点眼薬)と特徴
薬剤の種類 主な役割と特徴 ガイドライン上の位置づけ5
人工涙液・ヒアルロン酸ナトリウム 不足した涙の水分を物理的に補充し、目の表面を保湿・保護する。特にヒアルロン酸ナトリウムは保水性が非常に高く、角膜の微細な傷の治癒を促進する効果も期待できる。 すべてのドライアイ治療の基本となる薬剤。軽症から重症まで幅広く使用される。
ジクアホソルナトリウム 涙の主成分である「水分」と、涙を目の表面に留める接着剤の役割を持つ「ムチン」の両方の分泌を促進する作用を持つ。 涙の「量」と「質」の両面から涙液層の安定性を改善する。現在のドライアイ治療における主要な選択肢の一つとして推奨されている。
レバミピド 主に角膜と結膜の「ムチン」の産生を促進することで、涙の安定性を高める(涙の「質」を改善する)。 特に、涙の量は十分でも蒸発しやすいタイプ(蒸発亢進型)のドライアイに有効。ジクアホソルナトリウムと並び、主要な治療選択肢として推奨されている。

いつ病院へ行くべきか?

市販の人工涙液や目薬を1日に5〜6回以上使用しないと快適に過ごせない場合や、目の乾燥感に加えて、かすみ、痛み、まぶしさなどの症状がある場合は、角膜に傷がついているなど、より専門的な治療が必要な状態と考えられます。早めに眼科を受診しましょう。

放置は危険:感染症による目のかゆみ

目のかゆみの原因の中には、視力に重大な影響を及ぼす可能性のある「感染症」も含まれます。アレルギーやドライアイと異なり、感染症は自己判断で放置すると非常に危険です。

警告:以下の症状がある場合は、自己判断せず直ちに眼科を受診してください

  • 我慢できないほどの強い目の痛み
  • 黄色や緑色の、膿のようなドロっとした目やにが大量に出る
  • 急に視界がかすんだり、見えにくくなったりする
  • 光が異常にまぶしく感じる(羞明)
  • コンタクトレンズを外しても症状が改善しない、または悪化する

なお、一部のウェブサイトに見られる「痛風性結膜炎」という病名は、医学的には存在しません。感染症は、原因となる病原体によって、細菌性、ウイルス性、真菌性、アカントアメーバ性などに正しく分類されます。

細菌性結膜炎・角膜炎

  • 原因: 黄色ブドウ球菌、インフルエンザ菌、肺炎球菌、緑膿菌などが原因となります。特に、コンタクトレンズの不適切な使用(規定時間を超える長時間の装用、こすり洗いを怠る、保存液の交換をしない、定期交換を守らないなど)は、若年層における角膜感染症(角膜炎、特に緑膿菌によるもの)の最大の危険因子であると『感染性角膜炎診療ガイドライン』でも強く警告されています6
  • 症状: 膿性(黄色〜緑色)で、粘り気のあるドロっとした目やにが特徴です。朝起きると目やにで目が固まって開けにくい、といった症状がよく見られます。
  • 治療: 原因菌に有効な抗菌点眼薬による治療が必須です。眼科医が症状や検査結果から原因菌を推測し、最適な薬剤を選択します。自己判断で市販の抗菌薬を使用すると、耐性菌を増やしたり、原因菌に合わない薬で治療が遅れたりするリスクがあります。

ウイルス性結膜炎(はやり目など)

  • 原因: アデノウイルスなどが原因で、一般に「はやり目」と呼ばれます。感染力が非常に強く、目をこすった手で触れたタオル、ドアノブ、電車のつり革などを介して、家庭内、学校、職場などで容易に集団感染を引き起こします13
  • 症状: サラサラした水のような目やにが大量に出る、強い充血、まぶたの著しい腫れ、目のゴロゴロ感や痛み、そして耳の前にあるリンパ節(耳前リンパ節)の腫れや圧痛が特徴的なサインです。
  • 治療: 残念ながら、アデノウイルスに直接効く特効薬はありません。治療の基本は、体の免疫力でウイルスが排除されるのを待つことです。眼科では、つらい炎症を抑えるための抗炎症点眼薬や、細菌による二次感染(混合感染)を防ぐための抗菌点眼薬が処方されることが一般的です。他者へ感染させないための対策(手洗い励行、タオルの共有を避けるなど)も極めて重要です。

その他の重篤な感染症(真菌性、アカントアメーバ角膜炎)

これらは頻度は低いものの、診断が難しく、治療に長期間を要し、最悪の場合は失明に至る可能性のある極めて重篤な角膜感染症です。

  • 真菌性角膜炎: 土の中にいるカビ(真菌)が原因です。農作業中やガーデニング中に木の枝や葉で目を突いた後などに発症するリスクがあります14
  • アカントアメーバ角膜炎: 水道水や土、プールなどに生息するアメーバ(原生生物)が原因です。コンタクトレンズを着用したままシャワーを浴びたり、水道水でレンズを洗浄・保存したりするといった行為が、最大の危険因子です14
警告: これらは治療が非常に困難で、失明に至る可能性のある極めて重篤な疾患です。少しでも疑わしい場合は、直ちに角膜専門医のいる高度な診断・治療が可能な眼科専門医療機関を受診する必要があります。

まぶたの縁のトラブル:眼瞼炎・マイボーム腺機能不全(MGD)

かゆみの原因は、目の表面だけでなく、まぶたの縁にある場合もあります。それが眼瞼炎(がんけんえん)です。

  • 眼瞼炎とは: まつ毛の生え際あたりを中心とした、まぶたの縁(眼瞼縁)に起こる炎症の総称です15
  • マイボーム腺機能不全(MGD)とは: 涙が蒸発するのを防ぐための油分を分泌する「マイボーム腺」の出口が詰まったり、油の質が悪くなったりする状態です。眼瞼炎の主要な原因であり、またドライアイの最も大きな原因の一つでもあります16

症状と治療

まぶたの縁が赤く腫れる、フケのようなもの(鱗屑)が付着する、まつ毛が抜けやすくなる、そして慢性的なかゆみや異物感が特徴です。治療の基本かつ最も重要なのが「リッドハイジーン(眼瞼清拭)」というセルフケアです。

  1. 温罨法(おんあんぽう): 蒸しタオルやまぶた専用の温熱シートなどで、まぶたを5分程度温めます。これにより、マイボーム腺に詰まった固い油を溶かし、排出しやすくします。
  2. 清拭(せいしき): その後、まぶた専用のシャンプーや洗浄剤(アイシャンプー)、あるいは刺激の少ないベビーシャンプーを薄めたものを綿棒などにつけ、まつ毛の根元を優しくマッサージするように丁寧に洗浄します。

リッドハイジーンを継続しても改善しない場合や、炎症が強い場合は、眼科で抗菌薬や抗炎症作用のある点眼薬・眼軟膏が処方されます。

よくある質問 (FAQ)

市販薬を使ってもかゆみが治らないのですが、どうすればいいですか?

市販の抗アレルギー点眼薬を1週間程度使用しても症状が改善しない場合、いくつかの可能性が考えられます。①アレルギーの炎症が強く、市販薬では効力が不十分である、②アレルギーではなく、ドライアイや感染症など他の原因である、③アレルギーとドライアイなどを併発している、などです。自己判断を続けると、適切な治療の機会を逃してしまう可能性がありますので、速やかに眼科を受診し、専門医による正確な診断を受けることを強くお勧めします4

コンタクトレンズを使っている場合、特に注意することはありますか?

はい、非常に重要です。コンタクトレンズ装用者は、非装用者に比べて角膜感染症のリスクが格段に高まります6。目にかゆみや充血、痛みなどの異常を感じたら、まずは直ちにコンタクトレンズを外し、メガネに切り替えてください。それでも症状が改善しない場合は、絶対に放置せず、眼科を受診してください。また、アレルギー症状がある場合、レンズにアレルゲンやタンパク質が付着しやすくなり、症状を悪化させることがあります。眼科医に相談し、アレルギー用の目薬を点眼したり、汚れの付きにくい1日使い捨てタイプのレンズに変更したりするなどの対策が必要です。

子供の目のかゆみで気をつけることは何ですか?

子供、特にアトピー性皮膚炎のあるお子さんの場合、「春季カタル」という重症のアレルギー性結膜疾患に注意が必要です。非常に強いかゆみを伴い、目をこすりすぎることで角膜に傷がつき、視力に後遺症を残すことがあります。また、子供は症状をうまく伝えられないことも多いため、頻繁に目をこすっている、まぶしそうにしている、などのサインを見逃さないことが重要です。子供の目のかゆみが続く場合は、自己判断せず、小児の診療に慣れた眼科医に相談してください。

結論

目のかゆみという一つの症状にも、その背後にはアレルギー、ドライアイ、感染症、眼瞼炎といった多岐にわたる原因が存在し、それぞれ対処法が全く異なることをご理解いただけたかと思います。重要なのは、ご自身の症状を正しく見極め、適切な対応を取ることです。

  • アレルギーが疑われる場合は、アレルゲン回避を徹底し、抗アレルギー点眼薬によるセルフケアから始めることができます。
  • ドライアイのサインがあれば、生活習慣を見直し、目を潤す工夫を取り入れましょう。
  • そして何よりも、強い痛みや急な視力低下といった「危険なサイン」が見られる場合は、失明につながる重篤な感染症の可能性も否定できません。決して自己判断せず、一刻も早く眼科専門医の診察を受けてください。

この記事が、皆様がご自身の目の健康状態を理解し、大切な視力を守るための一助となれば幸いです。症状が長引く場合や、少しでも不安を感じる場合は、ためらわずに専門家である眼科医に相談しましょう。

免責事項この記事は情報提供のみを目的としており、専門的な医学的アドバイスに代わるものではありません。健康上の問題や症状がある場合は、必ず資格のある医療専門家にご相談ください。

参考文献

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  3. 関係学会 (環境省資料より). アレルギー性結膜炎の有病率調査. In: 花粉症環境保健マニュアル2022. 2019. https://www.env.go.jp/chemi/anzen/kafun/2022_full.pdf.
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  6. 日本眼感染症学会. 感染性角膜炎診療ガイドライン(第3版). 日本眼科学会雑誌. 2023;127:859-895. [引用日: 2025年6月18日]. 以下より入手可能: https://www.nichigan.or.jp/Portals/0/resources/member/guideline/infectious_keratitis_3rd.pdf.
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