はじめに
こんにちは、JHO編集部です。今日は、まだ国内では十分に知られていないものの、近年その認知度が高まりつつある「ノンバイナリー」という概念について取り上げます。ノンバイナリーという言葉をご存じでしょうか。多くの方がイメージする“男性”や“女性”といった二元的な枠組みに収まらない性自認を持つ人々を総称する言葉ですが、実際には非常に多様な意味合いを含んでいます。本記事では、ノンバイナリーとは何か、その特徴や支援のあり方など、幅広い側面から解説しながら、私たちの社会全体がこの概念をより深く理解するための手がかりをお伝えしていきます。多様性への理解と敬意を深めることは、社会をより豊かにする第一歩です。どうぞ最後までお読みいただき、共に考えていきましょう。
免責事項
当サイトの情報は、Hello Bacsi ベトナム版を基に編集されたものであり、一般的な情報提供を目的としています。本情報は医療専門家のアドバイスに代わるものではなく、参考としてご利用ください。詳しい内容や個別の症状については、必ず医師にご相談ください。
専門家への相談
ノンバイナリーという性自認の概念を正しく理解するためには、実際にこの分野に携わっている専門家や団体が提供する情報がとても大切です。たとえば、National Center for Transgender Equalityは、ノンバイナリーの当事者やその家族、支援者に向けて、具体的な情報やリソースを数多く公開しています。本記事では、こういった団体の知見を参考にしながら内容を整理し、国内の読者の皆さんにも役立つようにまとめています。ただし、個々の健康状態や法的手続きに関する詳細については、医療・法律の専門家への相談が不可欠です。本記事はあくまで情報提供を目的とするものであり、最終的な判断は専門家の助言を踏まえて行うようお願いいたします。
ノンバイナリーとは何か
ノンバイナリー（non-binary）は、従来の「男性」「女性」という二元的な性別カテゴリーに当てはまらないジェンダーを自認する人々を指す総称です。大切なのは、ノンバイナリーという呼称が単に「男性でも女性でもない」という一言で片付くものではなく、むしろ多様なサブアイデンティティが存在している点です。そのため、「ノンバイナリー＝一つの固定された性別」というわけではなく、個々人によってさまざまなジェンダー表現やアイデンティティのあり方があることを理解する必要があります。
たとえば、以下のようなサブアイデンティティがよく挙げられます。
- アジェンダー: 自分にはジェンダーがない、あるいはジェンダーを感じないと認識する人。
- バイジェンダー: 自身に複数のジェンダー、または二つの異なるジェンダーが同居すると感じる人。
- ジェンダークィア: 二元的な性別では捉えきれないすべての性自認を包括する概念として用いられることが多い。
- ジェンダーフルイド: その時々の状況や心理状態によって、ジェンダーが流動的に変化すると感じる人。
このように、多様な呼び名と背景があり、どの言葉がしっくりくるかは個々人の感覚や自己認識によって異なります。ノンバイナリーは「男性か女性か」という問いに答えがない、もしくはどちらにも当てはまらない状態を認める概念だといえるでしょう。
国内における認知度の変化
近年、SNSやメディアを通じてノンバイナリーという言葉が紹介される機会が増え、若い世代や多様性に関心の高い層を中心に徐々に理解が進みつつあります。一方で、まだまだ一般的には十分に浸透しておらず、「初めて聞いた」「詳しくはわからない」と感じる人も多いのが現状です。こうした状況の中、「性的マイノリティ」という大枠に含まれる存在として一括りに理解されることもあれば、当事者自身が自分のジェンダーをなかなか説明しづらいと感じる場合もあります。
しかし、二元的な枠にとらわれない性自認を周囲が理解し尊重することで、生きづらさや孤立感を軽減できる場合があるのも事実です。海外では、学校や職場でノンバイナリーのアイデンティティを明確に伝え、社会生活を送る人が増えており、国内でも段階的に変化が進むことが期待されます。
ノンバイナリーの特徴
ノンバイナリーの特徴は一概に「これ」とは言えないほど個人差がありますが、一般的に以下のようなポイントがよく取り上げられます。
- 外見での判断が難しいこと
ノンバイナリー当事者は、社会が無意識に持つ「男性らしさ」「女性らしさ」の枠に縛られることを好まない場合が多く、服装や髪型、メイクなどを自分の感覚で選ぶ傾向があります。そのため、外見だけではノンバイナリーであるかどうかを判断できません。 - 医療的な支援の必要性
ノンバイナリーのなかには、自分の身体的特徴をより自身のジェンダー感覚に近づけるためにホルモン療法や外科的処置など、医療の力を借りようと考える人も存在します。ただし、身体的な変化を望まないノンバイナリーの人も多く、医療的支援の必要性は個々によって大きく異なります。 - 代名詞の選択
英語圏では「they/them」のように性別を特定しない代名詞を使うことが一般的になりつつありますが、日本語ではもともと代名詞を多用しない文化的背景があり、「私」「自分」「うち」など、さまざまな一人称が使われます。英語圏ほど顕著ではないものの、呼称や敬称の選び方に関して当事者自身が試行錯誤するケースもあります。 - 国際的なイベントの存在
7月14日は「国際ノンバイナリーデー」とされ、ノンバイナリーをはじめとした多様なジェンダーを讃え、認知度向上を図るための日として定着しつつあります。このような記念日をきっかけに、世界各地で啓発活動やイベントが行われ、SNSを通じて情報が広く共有されることで、さらに理解が深まることが期待されています。
精神的健康との関連
2022年にThe Trevor Project（アメリカを拠点とするLGBTQ+ユース支援団体）が実施した全国規模の調査では、ノンバイナリーを含む多様なジェンダーアイデンティティを持つ若者のうち、適切なサポートや理解が得られていると感じる人ほどメンタルヘルスが安定している傾向があると報告されています。これはまだ主に英語圏でのデータではあるものの、多様なジェンダー自認を受け入れ、尊重する社会的風土が若者の心身に良い影響を及ぼす可能性を示唆するもので、国内でも非常に参考になるでしょう。
ノンバイナリーを支援する方法
ノンバイナリーの当事者を取り巻く環境は、国や地域、コミュニティによって大きく異なります。日本国内では、LGBTQ+当事者への支援活動が徐々に活発化している一方で、ノンバイナリーという概念の理解や具体的な対応においてはまだまだ発展途上の面があるといえます。以下では、私たちが日常生活で具体的に実践できる支援の方法や、考慮すべきポイントを取り上げます。
- アイデンティティを尊重する
外見や名前、話し方などから相手の性別を決めつけるのではなく、本人が「自分はこう思っている」「自分をこう呼んでほしい」と表明した時には、その選択を尊重することが何より重要です。相手から「こう呼んでほしい」とリクエストがあった場合、面倒に感じたりせず、そのまま受け止める姿勢を持ちましょう。 - 名前や呼称の選択を尊重する
海外では「they/them」という中立的な代名詞を使うのが比較的一般的になりつつありますが、日本語の場合、一人称も三人称も幅広い表現方法があります。どんな呼称や言葉遣いが心地よいかは各人によって違うため、自分から「どうお呼びすればいいですか？」と丁寧に確認するのがよいでしょう。 - 自ら学ぶ姿勢を持つ
ノンバイナリーやその他のジェンダーマイノリティの情報は、国内外の支援団体のウェブサイトや書籍、SNSなどで比較的容易に得られます。基本的な用語や歴史、法制度の現状などを自分で調べ、学んでおくことで、無神経な言動や誤解を減らすことにつながります。また、学んだ知識を周囲と共有することで、支援の輪を広げることができます。 - 権利を擁護する
ノンバイナリーを含む多様なジェンダーアイデンティティを持つ人々が、平等に社会活動を行えるようにするためには、法制度や社会保障制度における整備が必要となります。たとえば公式書類や公的な身分証明での「Xジェンダー」表記や、選択的なジェンダー表記の導入など、多様なニーズに対応する制度設計が求められています。その実現のためには社会全体の理解や協力が不可欠であり、各種の請願や署名活動などにも目を向けることが大切です。 - 地域でのサポートを促進する
地元のLGBTQ+コミュニティセンターや当事者支援団体などは、ノンバイナリーの人々が必要とする情報や医療サービス、カウンセリングなどにアクセスするうえで大きな助けとなります。何か困り事があったときに自分だけで対処しようとせず、地域のリソースを活用するよう働きかけるといったサポートも大変重要です。 - インクルーシブな空間づくり
学校や職場など、日常生活の大部分を過ごす場所がインクルーシブ（多様な背景や価値観を受け入れる姿勢のある環境）であることは、ノンバイナリーを含む多様な人々にとって大きな安心感をもたらします。休憩室や更衣室、トイレなど、物理的な空間の設計を見直したり、研修やセミナーを開催して理解を深める機会を設けたりすることが考えられます。
こうした取り組みを一歩ずつ積み重ねることで、ノンバイナリー当事者だけでなく、すべてのジェンダーマイノリティや多様な背景を持つ人々が安心して生活できる社会へと近づくことができます。
結論と提言
結論
ノンバイナリーという概念は、単なる“性別カテゴリーの追加”ではありません。男女という二元的な枠組みに収まらないことを認め、そこに価値を見出す多様性そのものです。人はそれぞれ生まれ持った背景や人生経験によって、実に多様なアイデンティティを育んでいきますが、ノンバイナリーの人々もまた、私たちと同じように日々の生活や社会活動を担っています。ジェンダーをめぐる捉え方は時代と共に変化し、国や文化、世代によっても異なります。しかし、どのようなジェンダーであれ、その存在を尊重し、互いに認め合うことができれば、社会全体の豊かさにつながっていくでしょう。
提言
- 尊重の文化を育む
一人ひとりが「相手のジェンダー観を受け入れる」という意識を高めることが、ノンバイナリーを理解する大前提となります。日常の会話で何気なく使っている言葉や、決めつけた見方を改めるだけでも、相手にとっては大きな安心感につながります。 - 知識をアップデートし続ける
ノンバイナリーやその他のジェンダーマイノリティに関する情報は日々進歩しています。新しい研究結果や海外での法改正など、現状を知ることで適切なサポートが可能になります。学んだ情報は、周囲に伝え、共に学ぶ姿勢を大切にしましょう。 - 無意識のバイアスに気付く
自分でも気づかないうちに「男だから○○」「女だから××」といった固定観念に縛られていないか、振り返ることが重要です。意識を変える最初のステップは、自分が抱えている思い込みに気付くことです。 - コミュニティの連携を強化する
ノンバイナリーを含む多様なジェンダーの当事者を支援するには、個人の取り組みだけでは限界がある場合もあります。地域の支援団体、医療機関、教育機関、行政など、さまざまなレベルで連携を図り、誰もが安心できる環境をつくるために協力することが求められます。
こうした提言を念頭に、私たち一人ひとりが「新しい知識や考え方を取り入れる」ことを日常化していくことで、ノンバイナリーの方々を含むあらゆる人が生きやすい社会が実現するはずです。
重要なポイント: ここで取り上げた内容はあくまで情報提供を目的とした参考資料です。医療や法的手続きを要する問題については、必ず専門家（医療従事者や弁護士など）のアドバイスを受けてください。個々の状況やニーズに応じた具体的な支援策を検討することで、より良い環境づくりが可能になります。
参考文献
- Understanding Nonbinary People: How to Be Respectful and Supportive アクセス日: 2023年11月22日
- In Focus: Nonbinary People アクセス日: 2023年11月22日
- Non-Binary Gender Identities: Providing Affirmative Care アクセス日: 2023年11月22日
- Transgender and Non-Binary People FAQ アクセス日: 2023年11月22日
- LGBTQ+ Pride Flags アクセス日: 2023年11月22日
- International Non-Binary People’s Day アクセス日: 2023年11月22日
上記の参考資料や国内外の支援団体が提供する情報を定期的にチェックし、新しい知識や法改正の動向を取り入れることで、ノンバイナリーを含む多様なジェンダーの人々に寄り添ったサポートが可能になります。また、何よりも大切なのは、当事者の声や希望に耳を傾けることです。私たちが相互理解に基づいた社会を築いていくためにも、ぜひ継続的な学習と情報交換を心がけていきましょう。