【厚労省も推奨】科学が証明した筋肉肥大の新常識:トレーニング・栄養完全ガイド
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【厚労省も推奨】科学が証明した筋肉肥大の新常識:トレーニング・栄養完全ガイド

筋肉量を増やすことは、もはや一部のアスリートやボディビルダーだけのものではありません。日本の厚生労働省が2023年に発表した最新の指針により、筋力トレーニングは国民全体の健康寿命を延ばすための重要な柱として位置づけられました1。しかし、情報が溢れる中で「何を信じ、どう実践すれば良いのか」と悩む方も少なくありません。この記事では、JAPANESEHEALTH.ORG編集委員会が、厚生労働省の公式な推奨を基軸に、世界中の最新の科学的研究を統合・分析し、筋肉肥大に関する「新常識」を、どこよりも深く、そして実践的に解説します。科学的根拠に基づいたトレーニングと栄養の完全ガイドです。

この記事の科学的根拠

この記事は、入力された研究報告書で明示的に引用されている最高品質の医学的証拠にのみ基づいています。以下に示すリストには、実際に参照された情報源と、提示された医学的指針との直接的な関連性のみが含まれています。

  • 厚生労働省: この記事における国民の健康増進に関する指針は、厚生労働省が発行した「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」に基づいています1
  • Morton RW, et al. (British Journal of Sports Medicine): 最適なタンパク質摂取量(体重1kgあたり約1.6g)に関する推奨は、49件の研究を含むこのメタアナリシスに基づいています2
  • Baz-Valle E, et al. (Journal of Human Kinetics): 筋肥大に最適なトレーニング量(週12~20セット)に関する指針は、この系統的レビューに基づいています3
  • 藤田 聡 博士 (立命館大学): 筋肉合成のスイッチであるmTORの活性化におけるロイシンの重要性に関する解説は、日本の著名な研究者によるこの分析に基づいています4
  • 東京都健康長寿医療センター研究所: サルコペニアやフレイルの予防におけるレジスタンス運動の重要性に関する情報は、同所の公開資料に基づいています5

要点まとめ

  • 厚生労働省は、健康維持と疾病予防のために、成人および高齢者に対して週2~3回の筋力トレーニングを推奨しています1
  • 科学的根拠が示す最適なタンパク質摂取量は、1日あたり体重1kgにつき約1.6gです。これ以上摂取しても、筋肥大効果のさらなる向上は限定的です2
  • 筋肥大を最大化するためのトレーニング量は、1つの筋肉群あたり週に12~20セットが効果的であると複数の研究が示唆しています3
  • 筋肉の成長スイッチ「mTOR」を活性化させる鍵は、トレーニングによる負荷と、栄養素、特にアミノ酸の「ロイシン」です4
  • 超高齢化社会に直面する日本において、筋力を維持することは、サルコペニアやフレイルを予防し、自立した生活を送るために不可欠です5

なぜ今、筋肉が重要なのか?健康寿命を延ばすための新常識

日本の社会が直面する「超高齢化社会」という大きな課題の中で、個人の健康に対する考え方も大きな転換期を迎えています。単に長生きするだけでなく、いかに自立して質の高い生活を長く続けるか、すなわち「健康寿命」の延伸が国家的な目標となっています。その鍵を握るのが「筋肉」です。


厚生労働省の推奨:筋力トレーニングは国民の健康課題

これまで、健康のための運動といえばウォーキングやジョギングといった有酸素運動が中心に語られてきました。しかし、2023年に厚生労働省が10年ぶりに改訂した「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」では、この常識が大きく更新されました1。この新しいガイドラインでは、成人と高齢者の両方に対して、有酸素運動に加えて「週に2~3回の筋力トレーニング」を行うことが強く推奨されています。これは、筋力トレーニングが単なる趣味や体力作りではなく、全ての国民が取り組むべき基本的な健康習慣であると国が公式に認めたことを意味します。この背景には、筋力の維持が、生活の質を維持し、多くの加齢に伴う疾患を予防し、最終的には死亡危険度を減少させるという、数多くの科学的証拠が存在します。

筋力低下がもたらすリスク:サルコペニアとフレイル

なぜ国を挙げてまで筋力の維持が重要視されるのでしょうか。その答えは、加齢に伴う筋力の低下が引き起こす深刻な健康問題、「サルコペニア」と「フレイル」にあります。

  • サルコペニア: 年齢とともに筋肉量と筋力が進行性に減少していく状態を指します。これにより、歩行速度が遅くなったり、立ち上がるのが困難になったりと、日常生活の基本的な動作に支障をきたします。
  • フレイル: サルコペニアが進行し、さらに体力が低下して外部からのストレスに対する脆弱性が増した状態です。日本語では「虚弱」と訳され、転倒・骨折、要介護状態、さらには死亡に至る危険性が高まります5

東京都健康長寿医療センター研究所などの専門機関は、これらの状態を予防・改善する最も効果的な手段の一つが「レジスタンス運動」(筋力トレーニング)であると明確に示しています5。筋肉は、体を動かすエンジンであると同時に、健康を維持するための重要な「臓器」なのです。


筋肉が大きくなる仕組み:筋肥大の科学を解剖する

筋力トレーニングを行うと筋肉が大きくなる、いわゆる「筋肥大」。この現象は、単に筋肉が膨らむという単純なものではありません。その背後には、精巧で複雑な生物学的メカニズムが存在します。この仕組みを理解することは、トレーニング効果を最大化するための第一歩です。

筋肥大の2つのタイプ:筋原線維肥大と筋形質肥大

筋肥大は、主に二つの異なるタイプに分類できるとされています。2019年に学術雑誌「Frontiers in Physiology」で発表された詳細な分析によると、これら二つのタイプを理解することは、トレーニングの目的(筋力向上か、サイズの増大か)に応じてアプローチを調整する上で役立ちます6

  • 筋原線維肥大 (Myofibrillar Hypertrophy): これは、筋肉の収縮を直接担うタンパク質であるアクチンやミオシンといった「筋原線維」そのものが太くなる、あるいは数が増える現象です。これにより、筋肉が発揮できる力の最大値、すなわち「最大筋力」が向上します。高重量・低回数のトレーニングは、主にこちらのタイプの肥大を促進すると考えられています。
  • 筋形質肥大 (Sarcoplasmic Hypertrophy): こちらは、筋線維の内部を満たす液体成分(筋形質)や、エネルギー源となるグリコーゲン、非収縮性タンパク質などが増加し、筋肉の体積(サイズ)が増大する現象です。ボディビルダーに見られるような筋肉の大きさやボリューム感は、このタイプの肥大が大きく寄여しているとされます。比較的中程度の重量で高回数のトレーニングを行うことで、このタイプの肥大が促進されると考えられています。

実際には、この二つは完全に独立しているわけではなく、多くのトレーニングは両方のタイプの肥大を同時に引き起こしますが、どちらが優位になるかはトレーニングの様式によって変わってきます。

筋肥大を引き起こす3つのトリガー

では、具体的に何が筋肉に「大きくなれ」という信号を送るのでしょうか。科学的には、主に以下の3つの刺激が引き金になると考えられています。

  1. 機械的張力 (Mechanical Tension): これは筋肥大における最も重要な要素です。重い重量を持ち上げることで、筋線維に物理的な「張力」がかかります。この強い力が、筋線維内のセンサーを刺激し、成長を促すシグナル伝達経路を活性化させます。漸進性過負荷の原則(徐々に扱う重量や回数を増やしていくこと)は、この機械的張力を継続的に高めるために不可欠です。
  2. 代謝ストレス (Metabolic Stress): トレーニング中に筋肉が「パンプする」(パンプ感)感覚は、この代謝ストレスの現れです。高回数のトレーニングにより、筋肉内でエネルギーが作られる過程で乳酸やその他の代謝副産物が蓄積します。この化学的な環境の変化が、細胞の腫れを引き起こし、筋肥大を誘発する複数の経路を刺激すると考えられています。
  3. 筋損傷 (Muscle Damage): トレーニング後、特に慣れない運動をした後に感じる筋肉痛は、筋線維に微細な「損傷」が生じた証拠です。この損傷に対応して、体は修復プロセスを開始し、その過程で衛星細胞(サテライト細胞)と呼ばれる筋肉の幹細胞が活性化され、筋線維をより強く、太く再構築しようとします。ただし、過度な筋損傷は回復を遅らせるため、必ずしも筋肉痛を追い求める必要はありません。

成長の「スイッチ」:mTOR経路とホルモンの役割

これらの3つのトリガーは、最終的に細胞内のどこに信号を送るのでしょうか。その中心的な司令塔が「mTOR」(エムトール)と呼ばれるタンパク質リン酸化酵素です。mTORは、細胞の成長、増殖、生存を制御する非常に重要な「マスター調整因子」であり、筋肥大においては、タンパク質の合成を促進する「スイッチ」のような役割を果たします。
このmTORスイッチを「オン」にする最も強力な刺激が、前述の機械的張力と、食事から摂取するアミノ酸、特に「ロイシン」です。立命館大学の藤田聡教授をはじめとする日本の専門家も、このロイシンの重要性を強調しています。藤田教授の研究によれば、トレーニング後にロイシンを豊富に含む質の高いタンパク質を摂取することで、mTORが強力に活性化され、筋肉の合成プロセスが最大化されることが示されています4。このように、トレーニングによる物理的刺激と、栄養による化学的刺激の両方が揃ったときに、私たちの筋肉は最も効率的に成長するのです。


筋肥大を最大化するトレーニング戦略【実践編】

科学的な仕組みを理解した上で、次はいよいよ「何を、どれくらい、どのように」行うべきかという実践的な戦略に移ります。ここでは、最新の科学的知見に基づき、筋肥大を最大化するための具体的なトレーニング原則を解説します。

トレーニング量の最適化:週に何セットがベストか?

「やればやるほど良い」という考えは、筋力トレーニングにおいては必ずしも正しくありません。トレーニング量(ボリューム)には、効果が最大化される「スイートスポット」が存在することが、近年の研究で明らかになっています。
2022年に学術雑誌「Journal of Human Kinetics」で発表された系統的レビューでは、複数の研究を統合して分析した結果、筋肥大の効果はトレーニング量に応じて増加する「用量反応関係」があることが示されました3。具体的には、トレーニング経験のある若者の場合、1つの筋肉群あたり週に12~20セットのトレーニング量が、筋肥大を最大化するための最適な範囲であると結論づけられています。20セットを超えると、効果の伸びは緩やかになるか、あるいは過度な疲労により逆効果になる可能性も示唆されています。
一方で、高齢者においては異なる知見があります。2021年の学術雑誌「Experimental Gerontology」に掲載された151件の研究を対象としたネットワークメタアナリシスによると、高齢者の場合、機能改善(例:椅子からの立ち上がり時間)や筋肉量の増加には、むしろ低用量のトレーニング(LVRT)が最も効果的である可能性が示されました7。これは、高齢者の場合は回復力が若者と異なるため、過度な量を避けることが安全かつ効果的なアプローチであることを示唆しています。
これらの知見は、トレーニングプログラムを個人の年齢や経験レベルに合わせて調整することの重要性を浮き彫りにしています。

強度の設定:重い重量 vs 軽い重量

一般的に、筋肥大には「8~12回繰り返せる重さ」が推奨されてきました。しかし、最新の研究では、たとえ軽い重量であっても、「もうこれ以上1回も上げられない」という限界点(筋不全)まで追い込むことで、重い重量を使った場合と同等の筋肥大効果が得られることが分かっています。これは、限界まで追い込むことで、普段は使われない筋線維まで総動員されるためです。
厚生労働省も、安全かつ効果的な方法として、軽い負荷でもゆっくりとした動作で行う「スロートレーニング」を紹介しており、筋力が弱い人や高齢者でも安全に筋肥大を目指せるとしています8
ただし、最大筋力の向上という点では、やはり重い重量を扱うトレーニングに軍配が上がります。自身の目的(サイズアップか、筋力アップか)や、その日の体調に合わせて、様々な重量設定を取り入れることが賢明な戦略と言えるでしょう。

日本人に合わせた具体的なトレーニングプログラム例

以下に、科学的原則に基づいた、日本の一般的なフィットネスジムや自宅で実践可能なプログラムの例を挙げます。

週3日全身プログラム(初心者~中級者向け)

トレーニングプログラム例:週3回(例:月・水・金)
種目 セット数 レップ数(回数) 休憩時間 対象筋群
スクワット 3-4セット 8-12回 60-90秒 脚、お尻
ベンチプレス or 腕立て伏せ 3-4セット 8-12回 60-90秒 胸、肩、腕
デッドリフト or ベントオーバーロウ 3-4セット 8-12回 60-90秒 背中、脚
ショルダープレス 3セット 10-15回 60秒
ラットプルダウン or 懸垂 3セット 10-15回 60秒 背中
プランク 3セット 30-60秒 60秒 体幹

注:このプログラムは一例です。各種目は自身の体力レベルに合わせて、正しいフォームで行うことが最も重要です。必要であれば専門家の指導を受けてください。


筋肥大を加速させる栄養戦略【実践編】

トレーニングが筋肥大の「きっかけ」であるならば、栄養は成長を「実現」させるための材料です。どんなに優れたトレーニングをしても、適切な栄養がなければ筋肉は作られません。ここでは、科学的根拠に基づいた、日本の食生活にも応用しやすい栄養戦略を解説します。

タンパク質摂取のゴールデンルール:いつ、何を、どれくらい?

タンパク質は筋肉の主成分であり、筋肥大において最も重要な栄養素です。その摂取には「量」「質」「タイミング」という3つの黄金律があります。

  • 量 (どれくらい?): 筋肥大を目指す人にとって最適なタンパク質量はどれくらいか。この長年の疑問に対し、科学はかなり明確な答えを提示しています。2018年に英国スポーツ医学雑誌(BJSM)に掲載された、49件の研究・1863人を対象とした大規模なメタアナリシスによると、効果は1日あたり体重1kgにつき約1.6gで頭打ちになることが示されました2。例えば体重70kgの人であれば、1日約112gが目標となります。これ以上の摂取がさらなる効果をもたらすという証拠は限定的です。
  • 質 (何を?): 全てのタンパク質が同じように筋肉の材料になるわけではありません。重要なのは、必須アミノ酸、特に前述の「ロイシン」の含有量です。藤田聡教授の研究では、ホエイプロテインのような乳由来のタンパク質は、大豆プロテインに比べてロイシンを多く含み、トレーニング後の筋肉合成をより効果的に刺激することが示唆されています4。肉、魚、卵、乳製品といった動物性タンパク質は、一般的に質の高いタンパク源です。
  • タイミング (いつ?): かつてはトレーニング後30分以内の「ゴールデンタイム」が強調されていましたが、現在では1日を通して均等にタンパク質を摂取することがより重要だと考えられています。筋肉の合成はトレーニング後24~48時間にわたって高まった状態が続きます。そのため、総摂取量を3~4時間おきに4~6回に分けて、1食あたり20~30gのタンパク質を摂取することが、筋肉合成のスイッチを常にオンに保つための理想的な戦略です。

炭水化物と脂質の役割:筋肉の「燃料」と「守護神」

タンパク質に注目が集まりがちですが、炭水化物と脂質の役割を無視しては筋肥大は達成できません。

  • 炭水化物: 高強度のトレーニングを行うための主要なエネルギー源(燃料)です。体内の炭水化物が枯渇すると、体はエネルギーを生み出すために筋肉を分解し始めてしまいます(糖新生)。また、トレーニング後にタンパク質と同時に炭水化物を摂取することで、インスリンの分泌が促され、栄養素が筋肉に効率よく運ばれます。日本の大手食品メーカーである森永製菓などの専門機関も、トレーニング後の栄養補給としてタンパク質と炭水化物を3対1の比率で摂取することを推奨しています9
  • 脂質: テストステロンなどの筋肥大に関わるホルモンの生成に不可欠です。また、細胞膜の構成成分でもあり、健康維持に欠かせません。青魚に含まれるオメガ3脂肪酸や、オリーブオイル、アボカドなどに含まれる良質な脂質を適度に摂取することが重要です。

厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2020年版)」では、健康的な成人の三大栄養素のバランス(PFCバランス)として、総エネルギー摂取量に対してタンパク質13~20%、脂質20~30%、炭水化物50~65%を目標量としています10。筋肥大を目指す場合でも、このバランスを大きく崩すことなく、総カロリーとタンパク質量を調整することが基本となります。

日本の食生活に合わせた具体的な食事プラン

科学的な原則も、日々の食生活に取り入れられなければ意味がありません。以下に、日本のスーパーやコンビニエンスストアで手軽に揃えられる食材を使った、1日の食事プラン例(約2500kcal、タンパク質約130g)を提案します。

食事プラン例(体重70-80kgの男性向け)
食事 メニュー例 ポイント
朝食 玄米ごはん、納豆1パック、卵焼き(卵2個)、わかめの味噌汁 納豆と卵で良質なタンパク質を確保。玄米で複合炭水化物を摂取。
昼食 鶏むね肉の生姜焼き(約150g)、ブロッコリー、ミニトマト、白米 高タンパク・低脂質の鶏むね肉は筋肥大の味方。緑黄色野菜も忘れずに。
トレーニング後 ホエイプロテイン1杯、鮭おにぎり1個 吸収の速いプロテインと炭水化物を迅速に補給。コンビニでも実現可能11
夕食 サバの塩焼き1切れ、豆腐の冷奴、ほうれん草のおひたし サバで良質な脂質(オメガ3)とタンパク質を。豆腐で植物性タンパク質を追加。
間食/夜食 ギリシャヨーグルト(無糖) 就寝前のカゼインプロテイン源として。消化吸収が緩やかで、睡眠中の筋分解を防ぐ。

注:これはあくまで一例です。個人の活動量や目標に応じてカロリーや各栄養素の量を調整する必要があります。


よくある質問

Q1: 女性が筋力トレーニングをすると、男性のように体が大きくなりすぎませんか?

いいえ、その心配はほとんどありません。女性の体は、筋肉の成長を強力に促進する男性ホルモン「テストステロン」の分泌量が男性の約10分の1から20分の1と非常に少ないため、適切なトレーニングを行っても男性のような極端な筋肥大は起こりにくいです。むしろ、引き締まった健康的なボディラインの形成、骨密度の向上、基礎代謝の上昇など、女性にとって多くの利点があります。複数の研究でも、閉経後の女性において高強度のレジスタンストレーニングが全身の筋肥大を有意に向上させることが示されています12

Q2: 同じ筋肉群を鍛える場合、どれくらい休息日を設けるべきですか?

一般的に、トレーニングによって損傷した筋線維が修復され、以前よりも強くなる「超回復」のプロセスには48~72時間かかると言われています。したがって、同じ筋肉群を鍛える場合は、中1日~2日の休息を設けるのが効果的です。例えば、月曜日に胸のトレーニングをしたら、次に胸を鍛えるのは水曜日か木曜日にすると良いでしょう。休息もトレーニングの重要な一部です。

Q3: プロテインなどのサプリメントは絶対に必要ですか?

絶対に必要というわけではありません。サプリメントは、その名の通り「補助食品」です。食事から十分なタンパク質を摂取できるのであれば、必ずしも必要ではありません。しかし、多忙な現代生活において、毎食20~30gのタンパク質を確保するのが難しい場合や、トレーニング直後に手軽に栄養補給をしたい場合には、プロテインパウダーは非常に便利で効果的な選択肢となります。あくまで基本はバランスの取れた食事であり、サプリメントはその補助と考えるのが正しいアプローチです。

Q4: 高齢者が筋力トレーニングを始める際に、特に注意すべき点は何ですか?

高齢者がトレーニングを始める際は、安全性が最優先です。以下の点に特に注意してください。

  1. 医師への相談: 持病がある場合は、運動を始める前に必ずかかりつけの医師に相談してください。
  2. 十分な準備運動: 関節や筋肉をしっかり温め、怪我を予防します。
  3. 軽い負荷から始める: 最初から重い重量を扱わず、まずは正しいフォームを習得することに集中します。
  4. 専門家の指導: 可能であれば、高齢者の指導経験が豊富なトレーナーの指導を受けることが理想的です。

厚生労働省も、高齢者の運動においては、転倒などに注意し、無理のない範囲で行うことの重要性を強調しています8


結論

筋肉肥大は、見た目の美しさだけでなく、私たちの健康寿命を左右する極めて重要な健康戦略です。厚生労働省が国民全体に筋力トレーニングを推奨する今、科学的根拠に基づいた正しい知識を持つことが、かつてないほど重要になっています。
本記事で解説したように、筋肥大を達成するための鍵は、「トレーニング」と「栄養」という二つの歯車を噛み合わせることにあります。週に12~20セットという最適なトレーニング量をこなし、体重1kgあたり1.6gのタンパク質を確保するという具体的な数値目標は、あなたの努力を結果へと導くための強力な羅針盤となるでしょう。
しかし、最も大切なのは、これらの原則を安全に、そして継続的に実践することです。筋肉を育てる旅は、短距離走ではなく、生涯にわたるマラソンです。今日からできる小さな一歩として、まずは厚生労働省のガイドラインを参考に、日常生活に運動を取り入れてみてください。そして、本格的なプログラムを開始する際は、本記事で得た知識を基に、医師や資格を持つ専門家と相談しながら、あなた自身の体と目標に合った、安全で効果的な計画を立てることを強くお勧めします。

免責事項本記事は情報提供のみを目的としており、専門的な医学的アドバイスを構成するものではありません。健康に関する懸念がある場合、またはご自身の健康や治療に関する決定を下す前には、必ず資格のある医療専門家にご相談ください。

参考文献

  1. 厚生労働省. 健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023. 2023. Available from: https://www.mhlw.go.jp/content/001194020.pdf
  2. Morton RW, Murphy KT, McKellar SR, et al. A systematic review, meta-analysis and meta-regression of the effect of protein supplementation on resistance training-induced gains in muscle mass and strength in healthy adults. Br J Sports Med. 2018;52(6):376-384. doi:10.1136/bjsports-2017-097608. Available from: https://bjsm.bmj.com/content/52/6/376
  3. Baz-Valle E, Balsalobre-Fernández C, Alix-Fages C, Santos-Concejero J. A Systematic Review of The Effects of Different Resistance Training Volumes on Muscle Hypertrophy. J Hum Kinet. 2022;81:199-210. doi:10.2478/hukin-2022-0017. Available from: https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC8884877/
  4. 藤田 聡. 運動と栄養による効果的な筋量増加. 日本スポーツ栄養研究誌. 2017;10:10-16. Available from: https://www.jsna.org/cms/wp-content/uploads/2022/12/10-p10-16.pdf
  5. 東京都健康長寿医療センター研究所. レジスタンス運動の効果と方法. 健康長寿ネット. [インターネット]. 2022. [引用日: 2025年7月19日]. Available from: https://www.tyojyu.or.jp/net/kenkou-tyoju/shintai-training/resistance.html
  6. Haun CT, Vann CG, Roberts BM, et al. A Critical Evaluation of the Biological Construct Skeletal Muscle Hypertrophy: A Case for Myofibrillar Hypertrophy. Front Physiol. 2019;10:247. doi:10.3389/fphys.2019.00247. Available from: https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fphys.2019.00247/full
  7. Radaelli R, D’Amuri F, Goulart C, et al. Effects of Resistance Training Volume on Physical Function, Lean Body Mass and Lower-Body Muscle Hypertrophy and Strength in Older Adults: A Systematic Review and Network Meta-analysis of 151 Randomised Trials. Exp Gerontol. 2024;196:112613. doi:10.1016/j.exger.2024.112613. Available from: https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39405023/
  8. 厚生労働省. ガイドラインの認知と身体活動(案). 2023. Available from: https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/001140562.pdf
  9. 森永製菓. 筋トレするなら食事にもこだわれ! 筋トレ効果を最大化する食事の鉄則. [インターネット]. [引用日: 2025年7月19日]. Available from: https://www.morinaga.co.jp/protein/columns/detail/?id=62&category=muscle
  10. 厚生労働省. 日本人の食事摂取基準(2020年版). 2020. Available from: https://activesenior-f-and-n.com/food_nutrition/dietary-reference-intakes2020.html
  11. uFit. バルクアップに最適な食事メニュー!食事管理の基本を理解して効率よく筋肉を増やそう. [インターネット]. [引用日: 2025年7月19日]. Available from: https://ufit.co.jp/blogs/training/bulkup-meal
  12. Iodice P, Scurti R, Sticco M, et al. Higher volume resistance training enhances whole-body muscle hypertrophy in postmenopausal and older females: A secondary analysis of systematic review and meta-analysis of randomized clinical trials. J Exerc Sci Fit. 2024;22(4):175-182. doi:10.59566/jesf.2024.04.001. Available from: https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38744142/
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