糖尿病治療薬の種類徹底解説 | あなたに最適な薬を見つけるために
糖尿病

糖尿病治療薬の種類徹底解説 | あなたに最適な薬を見つけるために

はじめに

糖尿病は、血糖値のコントロールが十分に行われない状態が慢性的に続く疾患であり、多くの患者さんにとって日常生活において大きな負担となっています。特に糖尿病の治療においては、病態に応じた正しい薬物療法の選択と継続が極めて重要です。ところが、糖尿病の基礎知識や治療薬に対する理解が十分でない場合、自己判断による薬の中断や、漢方薬・サプリメントなどへ安易に切り替えてしまうなど、好ましくない行動につながりやすいという課題があります。自己流の方法では血糖値が急激に上昇したり、合併症のリスクが高まったりする恐れもあるため、適切な情報を身につけ、かつ主治医の指示をしっかりと守ることが肝心です。

免責事項

当サイトの情報は、Hello Bacsi ベトナム版を基に編集されたものであり、一般的な情報提供を目的としています。本情報は医療専門家のアドバイスに代わるものではなく、参考としてご利用ください。詳しい内容や個別の症状については、必ず医師にご相談ください。

本記事では、JHOによる糖尿病タイプ1とタイプ2の治療薬の選定方法と、それらの薬がどのように効果を発揮するのかについて、詳しく解説していきます。この記事では、それぞれの薬の特徴や副作用、禁忌などを分かりやすくまとめ、また日本国内でも広く実践されている生活習慣全般(食事・運動・ライフスタイル改善)とのかかわりもあわせて考察し、具体的な注意点を提示します。さらに、糖尿病の治療薬に関しては、患者さんの個々の状態(血糖コントロール状況や合併症の有無、他の基礎疾患など)に基づいて処方が決定されるため、安易な独断は非常に危険であることを繰り返し強調します。

なお、本記事はあくまでも情報提供を目的としており、最終的な治療方針の決定や薬の使用については、必ず主治医や専門家の判断を仰ぐ必要があります。糖尿病治療は、医療機関と患者さんが協力して取り組む長期的なプロセスです。本記事が、糖尿病治療にまつわる正しい知識を身につけ、日々のセルフケアをより充実させる一助となれば幸いです。

専門家への相談

本記事では、ベトナムに所在する病院の専門家であるThạc sĩ – Bác sĩ CKI Hà Thị Ngọc Bíchから得られたアドバイスをもとに内容を作成しています。糖尿病については国際的に共通する治療ガイドラインや臨床研究が多数存在し、それらを踏まえたうえで各国・各地域の実臨床では微調整を行う場合があります。日本においても、主治医や糖尿病専門医、栄養士、薬剤師など多職種チームによる総合的なアプローチが重要となります。

糖尿病は慢性的な生活習慣病として、心血管系や腎機能、末梢神経などに影響を及ぼしやすい側面があります。そのため、血糖管理のみならず、合併症の予防や適切な生活管理が不可欠です。海外の医療機関からの見解と、日本国内の診療ガイドラインを比較検討しながら、患者さんそれぞれの状態に適合した治療選択を行うことが求められています。とりわけ、薬物療法においては薬の選択肢が多彩であり、さらに近年は新薬や新しい治療戦略が次々と登場しています。こうした新しい情報をアップデートしながら、専門家の指導のもとで最適な治療を受けることが大切です。

糖尿病タイプ1の治療薬

糖尿病タイプ1は、自己免疫の機序などによって膵β細胞の機能が高度に障害され、インスリンの分泌が著しく低下または枯渇してしまう疾患です。そのため、インスリン療法が必須であり、経口薬のみでコントロールできるタイプ2とは病態も治療戦略も大きく異なります。インスリンにはいくつかの種類があり、それぞれ作用発現時間や持続時間が異なるため、食事量や日常活動に合わせて使い分けることが重要です。

  • 短時間作用型インスリン 注射後おおむね30分程度で効果を発現し、注射後90~120分でピークに達し、約4~6時間効果が持続します。例としてはHumulin RやNovolin Rなどが挙げられます。食事に合わせてインスリンを補う目的で使われることが多く、食事開始の30分前程度に注射することが一般的です。
  • 速効性インスリン 注射後5~15分で効果を発現し、約60分後にピークを迎えます。作用時間はおよそ3~4時間と短いですが、食事開始前のタイミングに合わせやすいメリットがあります。代表例としてはglulisineやlisproなどがあり、日本の臨床現場でもよく使用されています。
  • 中時間作用型インスリン 注射後1~3時間で効果が現れ、6~8時間後に効果のピークが見られ、持続時間は12~24時間程度です。NPHインスリン(Neutral Protamine Hagedorn)がその代表例で、1日2回を基本とした投与設計を行うことが一般的です。
  • 長時間作用型インスリン 注射後ゆるやかに作用を発現し、14~40時間という長い時間、比較的安定した血中濃度を保つタイプです。glargineやdetemir、degludecなどが該当し、特にdegludecは作動時間が42時間程度に及ぶとされ、1日1回の注射でほぼ24時間カバーできるメリットがあります。基礎分泌を補う目的で使用されることが多いです。

これらのインスリン療法は、特に糖尿病タイプ1の患者さんにとって主軸となる治療です。血糖値の安定化を図るためには、食事内容や運動量、日々の生活リズムに応じてインスリンの種類や投与タイミング、投与量を調整し続ける必要があります。妊娠糖尿病や経口薬で十分なコントロールが得られないタイプ2の患者さんでもインスリンが処方される場合がありますが、その際は主にタイプ2に特有のインスリン抵抗性の程度や膵機能の残存状況などを総合的に判断します。

さらに、タイプ2の患者さんの中には、治療開始から10年以上経口薬を使用した後、インスリン注射への移行が検討されるケースも少なくありません。高齢の患者さんはほかに基礎疾患を抱えている場合もあり、低血糖発作のリスクや注射手技の習熟度も考慮に入れた上でインスリンの導入が判断されます。

糖尿病タイプ2の経口治療薬

糖尿病タイプ2は、インスリン抵抗性の亢進やインスリン分泌の相対的な不足を中心とした病態が特徴で、経口薬だけでも十分に血糖値をコントロールできる場合が多々あります。ただし、食事や運動の管理を怠ると血糖コントロールが乱れやすく、合併症のリスクが高まります。医師は患者さん個々の状態(血糖値の推移、HbA1c値、BMI、肝機能や腎機能など)を総合的に評価しながら、複数ある経口薬の中から最適な薬を選択していきます。ここでは代表的な薬のいくつかを紹介します。

Sulfonylurea

Sulfonylureaは、膵β細胞を刺激してインスリン分泌を促進する薬です。代表的な薬にはglimepirideやglipizide、glyburide(国内では一般名が異なることがあります)が挙げられます。開始用量の目安は1日あたり30~60mg程度(製剤によっては含量が異なる)ですが、具体的な量は医師の指導に従います。

  • 主な副作用
    • 体重増加
    • 低血糖 特に低血糖は、高齢者や腎機能障害を有する方、あるいは食事量や運動量に変化が生じた際に生じやすくなるため注意が必要です。
  • 禁忌
    • 重度の腎機能障害
    • 妊娠糖尿病
    • タイプ1糖尿病 これらの場合、インスリンによる精密な血糖調整が必要となる、あるいは薬効が十分に得られないなどの理由から禁忌となります。

Metformin

Metforminは、肝臓におけるグルコース生成を抑制し、同時に末梢(筋肉)への糖利用を促進することで血糖値を改善する薬です。世界的にもっとも広く使用されている糖尿病治療薬の一つであり、肥満を伴う糖尿病タイプ2の患者さんには第一選択薬として使用されることが多い傾向にあります。

  • 主な副作用
    • 消化器症状(下痢、嘔気、金属様味覚など)
    • まれに乳酸アシドーシス
    • 長期使用による体重減少
  • 禁忌
    • 重度の肝機能障害や腎機能障害
    • 重度の呼吸機能障害
    • 妊娠糖尿病やタイプ1糖尿病 乳酸アシドーシスのリスクを考慮し、腎機能障害を有する患者さんなどには投与できない場合があります。
  • 開始用量 1日500~800mg程度から開始し、消化器症状をみながら徐々に増量するケースが一般的です。必ず医師の指示に従い、自己判断での増減量は避けてください。

Thiazolidinedione

Thiazolidinedione系薬剤(TZD)は、インスリン抵抗性を改善することで血糖値をコントロールします。具体的には、細胞内においてインスリンシグナル伝達を促し、筋肉や脂肪組織への糖取り込みを高め、肝臓での糖新生を抑制します。代表例としてはrosiglitazoneやpioglitazoneがあります。

  • 主な副作用
    • 体液貯留による浮腫
    • 心不全の悪化
    • 体重増加
  • 禁忌
    • 重度の心不全
    • 肝機能障害
    • 妊娠中や授乳中 心血管系合併症を持つ患者さんには注意が必要で、浮腫や体重増加のリスクを考慮した処方が求められます。
  • 開始用量 1日15~30mg程度が目安となる場合が多く、患者さんの状態に応じて医師が調整します。

Dipeptidyl Peptidase-4(DPP-4)阻害剤

DPP-4阻害剤は、インクレチン(GLP-1やGIPなど)を分解するDPP-4酵素の働きを阻害することで、インスリン分泌を促進し、グルカゴンの分泌を抑制します。この結果、血糖値が改善し、HbA1cの低下につながります。1日1回の服用でよいケースが多いのも利点です。

  • 主な副作用
    • 消化器系の乱れ(吐き気、下痢など)
    • インフルエンザ様症状
    • 皮膚反応 また、非常にまれですが膵炎のリスクが指摘されています。腹痛などの異常があれば、早急に主治医に相談が必要です。
  • 使用上の注意 重度の腎機能障害や肝機能障害がある患者さんでは用量調整が必要な場合があります。近年、国内外で多数の研究が行われ、DPP-4阻害剤の安全性や長期効果に関するデータが蓄積されつつあります。

なお、DPP-4阻害剤に関しては、国内外でさまざまな比較研究が行われており、例えば2020年に日本の専門家が中心となって実施した研究(Yabe D, Seino Y. “Dipeptidyl Peptidase-4 Inhibitors for the Treatment of Diabetes.” Curr Diab Rep 2020, doi:10.1007/s11892-020-1337-9)では、複数のDPP-4阻害剤を比較した結果、軽度から中等度の腎機能障害がある患者さんでも適切な用量調整のもとで有用性を示す一方、膵炎などのリスクは厳重にモニタリングすべきであると報告されています。日本国内の臨床では、比較的多くの患者さんに選択されやすい薬剤であり、特にインスリン分泌がある程度残存しているタイプ2糖尿病患者に有効とみなされています。

SGLT2阻害剤

SGLT2阻害剤(Sodium-Glucose Cotransporter 2 inhibitors)は、腎臓の近位尿細管にあるSGLT2の働きをブロックすることで、血液中のブドウ糖を尿中に排泄し、血糖値を低下させる薬です。代表例としてdapagliflozinやempagliflozinなどが挙げられます。

  • 主な副作用
    • 尿路感染症や性器感染症のリスク増加
    • 体液量減少による脱水や低血圧
    • 重篤なケースではケトアシドーシスのリスク
  • 禁忌
    • タイプ1糖尿病
    • 妊娠中や授乳中
    • 重度の腎機能障害 インスリン分泌がほとんどないタイプ1糖尿病患者さんで使用すると、ケトアシドーシスのリスクが高まると指摘されています。

SGLT2阻害剤は血糖降下以外にも体重や血圧の改善効果が報告されており、また近年では心不全や腎機能保護効果にも注目が集まっています。2021年にAnker SDらが発表した大規模臨床試験(“Empagliflozin in Heart Failure with a Preserved Ejection Fraction.” N Engl J Med 2021; 385:1451–1461. doi: 10.1056/NEJMoa2107038)では、心不全を合併する患者さんにおいてempagliflozinの使用が心血管イベントのリスク軽減につながる可能性が示唆されています。この研究はヨーロッパを中心に行われたものですが、日本を含むアジア地域でも同様のベネフィットが期待できるとの議論が続いています。ただし、副作用として脱水やケトアシドーシス、感染症リスクがあるため、導入時には医師との十分な相談が欠かせません。

結論と提言

糖尿病の薬物療法は、患者さん一人ひとりの病態や生活スタイルに合わせて最適化されるべきです。タイプ1ではインスリン療法が必須となる一方、タイプ2ではインスリン抵抗性やインスリン分泌能力に基づき、さまざまな経口薬や注射薬が選択肢として存在します。代表的な薬としてSulfonylurea、Metformin、Thiazolidinedione、DPP-4阻害剤、SGLT2阻害剤などを取り上げましたが、それぞれの薬には特有の作用機序や副作用、禁忌があり、患者さんごとに処方は異なります。主治医や専門家の指示を守らず、独断で薬を変更・中断すると、血糖値の急激な乱れや深刻な合併症を引き起こすリスクがあります。

糖尿病は長期にわたるマネジメントが必要とされる疾患です。血糖を良好にコントロールすることはもちろん、心血管疾患や腎症、神経障害といった合併症を防ぐための総合的なアプローチが欠かせません。薬物療法による血糖コントロールはその中心的な要素ですが、同時に患者さん自身の食事の質・量、毎日の活動量(運動)、ストレス管理、睡眠など、ライフスタイル全般を見直すことも重要です。さらに、定期的な診察を受け、血液検査や尿検査で腎機能や脂質代謝、肝機能などをフォローアップしながら、薬の効果と副作用を見極めていくことが大切です。

提言

  • 薬物療法の遵守と専門家の指導 処方された薬は、医師の指示を守って継続的に使用することが基本です。自己判断で中断・変更しないようにしましょう。副作用が疑われる場合は、早めに受診して相談しましょう。
  • 生活習慣の最適化 糖尿病の管理では、食事・運動・睡眠・ストレス管理など、日常生活全般を総合的に整えることが欠かせません。管理栄養士の指導のもとで食事療法を学び、適度な運動習慣を継続してください。
  • 合併症の予防と早期発見 定期検査を受けて、合併症(網膜症・腎症・神経障害など)の有無を早めに把握し、必要な対応を取ることが重要です。特に腎機能や血圧コントロールを意識して、医療スタッフとの連携を密にしてください。
  • 多職種チームアプローチ 糖尿病は多面的な対応が必要な疾患です。医師だけでなく、看護師、薬剤師、管理栄養士、理学療法士など、多職種の専門家によるチーム医療がより良い結果をもたらすことがわかっています。疑問点や不安があれば、遠慮せずに医療スタッフに相談しましょう。
  • 新しい情報へのアンテナ 糖尿病治療は近年めざましい進歩を遂げています。新薬や新しい治療手段が次々と登場しており、それに伴う臨床研究の蓄積も進んでいます。学会や医療機関が提供する最新情報に目を向けて、自身の治療や生活の質向上に役立てましょう。
  • 専門家への相談のすすめ 本記事は、糖尿病治療における代表的な薬の特徴や注意点をまとめたものですが、個々の患者さんの病態は千差万別です。必ず医療専門家と相談し、最適な治療プランを構築するようにしてください。自己流や民間療法のみでの対処は危険であり、合併症リスクを高める可能性があります。

参考文献

重要なお知らせ: 本記事は一般的な情報提供を目的として作成されたものであり、医療専門家による診断や治療方針の決定に取って代わるものではありません。糖尿病は個々の病態が異なるため、本記事を参考にして自己判断で薬を変更・中断することは危険です。必ず担当の医師や専門家に相談し、指示を仰いでください。こうした専門家のサポートを受けることで、より安全かつ効果的な治療の継続が可能となります。
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