はじめに
こんにちは、JHO編集部です。今日は、多くの方が気になる結膜炎について、より深く掘り下げてみます。結膜炎は日常的によく耳にする目の不調で、小さなお子さんがいるご家庭では特に身近な存在かもしれません。結膜炎とは、眼球表面を覆っている「結膜」に炎症が起こった状態を指し、その原因はウイルス、細菌、アレルギー、物理的刺激など多岐にわたります。原因によっては周囲に感染させやすいタイプもあれば、まったく感染性を持たないタイプも存在します。こうした違いを理解することで、適切な感染予防策を講じ、誤った対処や不必要な心配を避ける手がかりを得ることができます。
免責事項
当サイトの情報は、Hello Bacsi ベトナム版を基に編集されたものであり、一般的な情報提供を目的としています。本情報は医療専門家のアドバイスに代わるものではなく、参考としてご利用ください。詳しい内容や個別の症状については、必ず医師にご相談ください。
本記事では、最新の臨床知見や信頼できる公的機関・眼科専門医のアドバイスを踏まえ、結膜炎の感染性と対策について詳しく解説します。情報はすべて厳選された研究やガイドラインに基づいていますので、どうぞ安心してお読みください。ただし、本記事の内容はあくまで一般的な情報提供を目的としており、実際に治療や対処を行う際は専門家への相談が欠かせません。
専門家への相談
本記事は、権威ある医療機関や専門医の見解に基づき構成されています。特に、日本国内の眼科クリニックと緊密な連携をとり、信頼性の高い情報を厳選して取りまとめました。また、本記事で提示する知見は、臨床研究や公衆衛生分野で定評ある海外機関の推奨事項、学術誌での研究報告(例:JAMA Ophthalmology、BMJ Openなど)をもとに精査されています。さらに海外の公的機関(NHS、CDC ほか)や学術誌の情報も参考とし、十分な科学的根拠を伴う内容を最優先としております。疑わしい症状がある場合、あるいは対処法について迷う場合には、必ず医師や専門家の判断を仰いでください。
結膜炎の原因と感染性
結膜炎には、主に以下のタイプがあります。
- ウイルス性結膜炎
- 細菌性結膜炎
- アレルギー性結膜炎
- 刺激性結膜炎(化学物質や異物などによる)
これらは原因によって感染性に大きな差があります。ウイルス性結膜炎や細菌性結膜炎は一般的に強い感染力を持ち、特に初期症状が現れたばかりの段階では、周囲への伝播リスクが高いことが臨床的にも知られています。一方で、アレルギー性結膜炎や、花粉や化学物質などの刺激物質が原因となる結膜炎は、他者へうつる性質はほとんどありません。
感染性が強いタイプの結膜炎を早期に把握し、原因を正しく判断することは極めて重要です。なぜなら、感染性結膜炎を見逃したまま対策を怠ると、家庭内や職場、学校などで集団的に広がる危険性があるからです。逆に、感染性のないタイプと判明すれば、不必要な心配や隔離を避けられます。実際、手洗いや消毒、接触予防といった基本的な公衆衛生上の対策が感染拡大の防止にきわめて有効であることは多くの研究でも示唆されており、特に小児科や学校保健の分野で強調されています。
ウイルス性および細菌性結膜炎
ウイルス性結膜炎
ウイルス性結膜炎はアデノウイルスなどが原因となることが多く、一般的に強い感染力を有します。初期症状が出現してから24時間ほどは、特に感染拡大のリスクが高いと考えられています。この時期に目や周囲に触れた手がほかの人や物品に接触すると、分泌物中のウイルスが容易に拡散しやすいのです。飛沫感染の可能性もあり、咳やくしゃみによって飛び散る細かい飛沫が目に侵入することで感染するリスクが指摘されています。
最近の研究では、アデノウイルス性結膜炎に対する抗ウイルス点眼薬の有用性が検討されており、治療戦略や感染予防のための具体的な指針が少しずつ明らかになってきました。たとえば、JAMA Ophthalmology に掲載されたランダム化臨床試験(Silverstein BE ら, 2020, JAMA Ophthalmol, 138(9):989–996, doi:10.1001/jamaophthalmol.2020.2996)では、ポビドンヨード点眼を用いた治療の有効性が示唆されており、感染性結膜炎の管理において今後さらに研究が進むことが期待されています。
細菌性結膜炎
細菌性結膜炎は黄色ブドウ球菌、肺炎球菌、インフルエンザ菌などの細菌が原因となり、目やにが黄色~黄緑色に変化し、粘性が高い分泌物が特徴的です。こちらも人から人への感染リスクが高いタイプであり、とくに小児や高齢者の集団では広がりやすい傾向があります。感染初期には強い充血や分泌物が大量に出るため、清潔なタオル・ガーゼなどを用いてこまめに拭き取ることが大切です。
抗菌点眼薬や軟膏が治療の中心となり、適切に使用することで多くの場合は数日~1週間程度で症状が軽快します。近年の BMJ Open (Hutnik C ら, 2022, BMJ Open, 12(5):e059956, doi:10.1136/bmjopen-2021-059956) に掲載されたメタアナリシス研究では、急性細菌性結膜炎に対するさまざまな治療的介入と衛生対策の重要性が検討されており、感染リスクの高い環境(保育所、介護施設など)での予防策の徹底が再度強調されています。
アレルギーによる結膜炎
アレルギー性結膜炎は、人から人へ感染する性質がありません。原因としては花粉、ハウスダスト、動物の毛、カビなど、特定のアレルゲンに対する過敏反応が挙げられます。主な症状は目のかゆみ、軽度の充血、水っぽい目やに、涙の増加などで、特に季節の変わり目には花粉の飛散量が増えるため、症状が悪化しやすいことがよく知られています。
感染性がないため、集団への広がりを過度に心配する必要はありませんが、本人にとっては日常生活の質(QOL)を大きく低下させる可能性があります。アレルギー性結膜炎を持続的に放置すると、目を頻繁に擦ることによる角膜ダメージやドライアイの併発などが懸念されます。そのため、必要に応じて抗アレルギー点眼薬や内服薬、人工涙液による目の洗浄などを適切に利用することが推奨されます。
刺激性結膜炎
化学物質や異物、物理的刺激(目を強く擦る、ゴミやほこりの入り込みなど)によって生じる結膜炎が刺激性結膜炎です。これも感染性はないため、人にうつる心配はほぼありません。しかし、目の表面にダメージが起こる可能性があるので、異物感や痛みがある場合はただちにきれいな水(流水)で洗い流し、それでも症状が続く場合には早めに眼科を受診する必要があります。
感染のリスクが高い人々
ウイルス性・細菌性など感染性の結膜炎が広まる際、特定の条件下でリスクが高まります。具体的には以下のような状況です。
- 感染した人と直接接触する人
(抱っこ、遊び、スポーツなどで目に触れ合う機会が多い場合) - ウイルスや細菌で汚染された物品に触れる人
(タオル、枕、ドアノブ、スマートフォンの画面など) - 汚染された水やタオルを使用する環境
(公共プールや温泉など、水の循環管理が不十分な場所) - コンタクトレンズを頻繁に使用し、清潔を十分に保てていない人
とくに小児施設(保育園・幼稚園など)や高齢者施設は集団生活を営むため、ウイルス性・細菌性結膜炎が流行すると一気に拡大するリスクがあります。これらの施設では、早期発見と迅速な対応が重要です。また、家族内に感染者が出た場合、寝具やタオルの使い回しを避けるなど「濃厚接触」を最小限に抑える配慮が求められます。
感染予防策
結膜炎の感染拡大を防ぐには、基本的な衛生対策が欠かせません。以下に一般的に推奨される予防策を示します。とくにウイルス性・細菌性結膜炎が疑われる場合は、積極的に実行してください。
- 手洗いを徹底する
石鹸と流水で20秒以上かけて手洗いする習慣をつける。外出先から帰宅した時、食事の前後、トイレの後、目や顔周囲を触れた後は必ず手を洗う。 - 目を擦らない・触れない
汚れた手が目に触れることで病原体が付着し、結膜炎の症状が悪化または拡散しやすくなる。かゆみが強いときは清潔なガーゼや冷たいタオルなどで軽く冷やす方法を試す。 - 目の周囲の清潔保持
分泌物が目の周りに付着しやすいので、清潔なガーゼやティッシュで優しく拭き取る。刺激を避けるため、強く擦りすぎない。 - 個人専用のタオル・枕カバーの使用
共有物品を使い回すと感染が広がりやすい。家族内に感染者がいる場合は、特に注意が必要。 - 公共プールの利用を控える
プールの水は塩素消毒されているものの、完全に病原体を除去できるわけではない。症状がある間はリスクを避けることが望ましい。 - メガネの使用を優先する
コンタクトレンズの装着は、目の衛生環境を維持しづらいため、感染リスクが高まる。症状がある場合は眼科医の指示があるまでコンタクトを中止するのが無難。 - 体調不良時は外出を控える
他者への伝播を防ぐため、症状が落ち着くまで適度に休息を取り、人混みへの外出を控える。
これらの対策は長年にわたって医療専門家が推奨している「感染症予防の基本戦略」です。近年もさまざまな研究から、目への過度な接触を避けること、衛生管理を徹底することが、結膜炎の集団感染拡大を抑制するのに有用であると再確認されています。
結膜炎の再発予防
一度結膜炎にかかった場合、再発を防ぐ対策をしっかりと行うことが重要です。以下は、実際の臨床現場でも繰り返し強調されているポイントです。
- 患病中に使用した化粧品は廃棄する
アイメイク用品や目の周辺に使う製品は、細菌やウイルスが付着している可能性があるため、再発の原因となり得る。 - コンタクトレンズは眼科医の許可が出るまで使用しない
結膜炎の治療後も、角膜や結膜の状態が安定してから使用するのが安全。 - メガネとケースを清潔に保つ
定期的にメガネやケースを洗浄・消毒し、拭き取り用のクロスも清潔を保つ。 - 医師の再発予防指示に従う
症状が落ち着いても医師の指示どおりに点眼薬を使用し続ける場合がある。自己判断で中断しない。
再発は本人だけでなく周囲にも新たな感染のリスクをもたらすおそれがあります。とくにウイルス性や細菌性の場合、目薬が余ったからといって素人判断で続けたり、逆に途中でやめてしまうと完全にウイルスや細菌を抑え切れない可能性があります。したがって、完治のタイミングや薬の使い方に関しては、必ず主治医に従いましょう。
他の関連する最新知見
近年では、結膜炎と新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の関連に注目した研究も報告されています。たとえば、Ocul Immunol Inflamm. 2020;28(3):391-395 (Seah I, Agrawal R. “Can the coronavirus disease 2019 (COVID-19) affect the eyes? A review of coronaviruses and ocular implications in humans and animals.” doi:10.1080/09273948.2020.1738501) によると、新型コロナウイルス感染症の一部症例で結膜炎のような症状を呈するケースがあることが指摘されています。ただし、ウイルスが結膜炎を主病変として起こす頻度はそれほど高くないと報告されており、あくまで“可能性がある”という段階です。日本国内で通常みられる結膜炎の大半が従来型ウイルスや細菌によるものである点は変わりませんが、新たな感染症の流行が起こると、結膜炎の診断・治療にも追加の検討が必要になる可能性があります。
このように最新の医学研究では、結膜炎の原因ウイルスや細菌の特性だけでなく、新興感染症との関係も探られつつあり、そのメカニズムや最適な予防法・治療法が今後さらに明らかになると期待されています。現在はまだ研究の途上であり、確立した知見が少ない部分もあるため、引き続き海外・国内の信頼できる研究機関や医学誌などを通じて新情報をアップデートしていくことが重要です。
結論と提言
結論
- 結膜炎は原因によって感染性が大きく異なる。
ウイルス性・細菌性結膜炎は強い感染力を持ち、初期段階はとくに他者への伝播リスクが高い。一方、アレルギー性や刺激性による結膜炎は、基本的に他者にうつることはない。 - 感染対策として基本的な衛生管理が有効。
手洗い、共有物品の使いまわし防止、目への不必要な接触回避といった基本策で大きくリスクを下げられる。 - 治療と再発予防には専門家の指示が重要。
ウイルス性・細菌性の場合は早期受診と適切な薬物療法が必要で、完治の判断や再発予防の期間は医師のアドバイスを守ることが望ましい。
提言
- 信頼性の高い情報源を利用する
眼科専門医や日本国内外の公的機関(保健所や学会、NHS、CDC など)をはじめ、権威ある医学誌の情報を参考にし、自分で判断できない場合は必ず専門家に相談する。 - 症状が疑わしい場合は早期に眼科を受診する
「目のかゆみ、充血、分泌物が増えた」「視界がかすむ」など症状が出たら放置せず、適切な診断と治療を受けることが大切。 - 感染性の疑いがある場合は感染拡大を防ぐ行動を徹底する
とくに家庭内や職場、学校でのタオルや寝具の使い回しを避け、こまめな手洗いと物品消毒を励行する。 - 自己判断による治療中断を避ける
処方された薬は医師の指示通りに使用し、完治の診断を受けるまで自己判断で中断や変更をしない。 - 症状が長期化・悪化した場合は再度専門家へ
一度治まったように見えても、違和感や見えづらさが続くなら、自己判断せず再度受診する。
参考文献
- 結膜炎について(NHS) (アクセス日: 2022年6月20日)
- 結膜炎の予防(CDC) (アクセス日: 2022年6月20日)
- 結膜炎(思春期向け KidsHealth) (アクセス日: 2022年6月20日)
- 結膜炎(保護者向け KidsHealth) (アクセス日: 2022年6月20日)
- 結膜炎とは何か (APIC) (アクセス日: 2022年6月20日)
- 結膜炎 (Royal Children’s Hospital) (アクセス日: 2022年6月20日)
- Conjunctivitis(AAO) (アクセス日: 2022年6月20日)
- Pink Eye(Cleveland Clinic) (アクセス日: 2022年6月20日)
参考文献(追加研究例):
- Silverstein BE, Allaire C, Bateman KM, Gearinger LS. Efficacy of Povidone-Iodine 0.6% Eye Drops for Treatment of Adenoviral Conjunctivitis: A Randomized Clinical Trial. JAMA Ophthalmol. 2020;138(9):989–996. doi:10.1001/jamaophthalmol.2020.2996
- Hutnik C, Jong M, Tang E, et al. Interventions for acute bacterial conjunctivitis: a systematic review and network meta-analysis. BMJ Open. 2022;12(5):e059956. doi:10.1136/bmjopen-2021-059956
- Seah I, Agrawal R. Can the coronavirus disease 2019 (COVID-19) affect the eyes? A review of coronaviruses and ocular implications in humans and animals. Ocul Immunol Inflamm. 2020;28(3):391-395. doi:10.1080/09273948.2020.1738501
※本記事の内容は一般的な情報提供を目的としたものであり、医師等専門家による診断・治療に代わるものではありません。症状に不安がある場合や、対処法について迷う場合は、必ず眼科専門医などの医療従事者にご相談ください。適切な診断・治療を行うことで、再発や周囲への感染を最小限に抑え、より迅速な回復につながります。