【整形外科専門医が解説】肩から腕への痛み、その原因は首?-頚椎症・胸郭出口症候群から内臓の病気まで徹底解明
筋骨格系疾患

【整形外科専門医が解説】肩から腕への痛み、その原因は首?-頚椎症・胸郭出口症候群から内臓の病気まで徹底解明

「肩から腕にかけての痛み」は、多くの人が一度は経験する、非常によくある症状です。しかし、その背後には、単なる筋肉の疲労から、神経の病気、さらには緊急の対応を要する内臓の異常まで、多岐にわたる原因が隠れている可能性があります1。厚生労働省が実施した令和4年の国民生活基礎調査2によると、「肩こり」は女性が訴える症状の第1位、男性では第2位となっており、この“国民病”ともいえる状態が、腕の痛みやしびれといった、より深刻な問題に発展することも少なくありません。本記事では、日本整形外科学会(JOA)の診療ガイドライン3,4,5や国内外の最新の研究論文に基づき、整形外科専門医の監修のもとで作成された、信頼できる情報を提供します。ご自身の痛みの原因がどこにあるのかを見極めるための知識と、適切な対処法を体系的に解説することで、あなたの不安を解消するための一助となることを目指します。

【重要】本記事をご利用の皆様へ(免責事項)

本記事は、信頼できる医学的情報を提供することを目的としていますが、個々の患者様の診断や治療方針を決定するものではありません。肩から腕への痛みが続く、または悪化する場合、あるいは本記事で紹介する「危険なサイン」に当てはまる場合は、自己判断せず、必ず速やかに整形外科などの専門医療機関を受診してください。

要点まとめ

  • 肩から腕への痛みは、単なる「こり」だけでなく、首の骨(頚椎)の問題、神経の圧迫、肩関節の異常、さらには心臓など内臓の病気(放散痛)が原因である可能性があります。
  • 首を特定の方向に動かすと痛みが走る場合は「頚椎」、腕を上げる動作でしびれやだるさが出る場合は「胸郭出口症候群」、腕が上がらない・夜間に痛む場合は「肩関節」の問題が疑われます。
  • 胸の痛みや圧迫感、息苦しさなどを伴う場合は、心筋梗塞などの重篤な病気の可能性があるため、直ちに救急受診が必要です6
  • 正確な診断には整形外科の受診が不可欠です。レントゲンで「異常なし」と言われても、MRIなどの詳細な検査で原因が判明することがあります。
  • 原因が特定されれば、薬物療法、理学療法、生活習慣の改善など有効な治療法が存在します。自己判断で放置せず、専門家へ相談することが解決への第一歩です。

まずはセルフチェック:あなたの痛みはどのタイプ?危険なサインを見逃さないために

正確な診断は医師によって下されるべきですが、ご自身の症状を客観的に把握することは、原因を探る上で非常に重要です。以下のリストを参考に、ご自身の状態を整理してみましょう。

  • 痛みはいつからですか? (突然始まったか、徐々に始まったか)1
  • どのような時に痛みが強くなりますか? (腕を上げた時、首を後ろに反らした時、夜間、安静時など)3
  • 痛みの性質はどのようなものですか? (ズキズキする鋭い痛み、ジンジン・ビリビリするしびれるような痛み、重だるい鈍い痛みなど)1
  • 痛み以外の症状はありますか? (腕や手のしびれ、筋力低下(物をよく落とすなど)、腫れ、腕の色が変わる、冷たい感じなど)1
  • 【最重要・緊急チェック】 胸の痛み・圧迫感、息苦しさ、動悸、腹痛、発熱などを伴いますか?6

症状から考える原因のヒント

直感的に理解できるよう、代表的な症状と考えうる原因の方向性を表にまとめました。これはあくまで目安であり、診断を確定するものではありません。

症状のヒント 考えられる原因の方向性
首を後ろに反らすと腕に痛みが走る 頚椎(首の骨)の問題の可能性が高い3
電車のつり革を持つなど、腕を上げた時にしびれる 胸郭出口症候群の可能性が高い7
夜中に肩が痛くて目が覚める、腕が上がらない 肩関節(五十肩、腱板断裂など)の問題の可能性が高い8
胸の圧迫感や息切れを伴う 【緊急受診を!】 心臓など内臓の病気の可能性6

【原因別】肩から腕への痛みの正体:整形外科医の視点で徹底解明

ここでは、肩から腕への痛みを引き起こす代表的な疾患について、その原因、症状の特徴、診断、治療法を整形外科医の視点で詳しく解説します。

原因1:頚椎(首の骨)の問題 – 多くの腕の痛みの「犯人」は首にいる

腕の痛みの原因として最も多いものの一つが、実は首の骨、すなわち頚椎の問題です1。特に中高年以降では、加齢に伴う変化が神経を刺激し、症状を引き起こすことがよくあります。

頚椎症性神経根症、頸椎椎間板ヘルニア

病態解説:
加齢によって頚椎が変形し、骨のトゲ(骨棘:こつきょく)が形成されたり、クッションの役割を果たす椎間板が本来の位置から飛び出したり(ヘルニア)することで、脊髄から腕へと向かう神経の根元(神経根)が圧迫・刺激されます。これが痛みやしびれを引き起こすメカニズムです3,9

特徴的な症状:

  • 通常は片側の首、肩甲骨の周り、腕、そして時には指先にまで広がる「放散する」痛みやしびれが特徴です3
  • 首を後ろに反らしたり、痛みのある側に傾けたりすると、神経の圧迫が強まり症状が悪化することがあります(スパーリングテストの概念)3
  • 咳やくしゃみ、トイレでいきむなど、急に首に力が入った時に痛みが腕に響くこともあります。

診断プロセス:
整形外科ではまず、症状の詳しい聞き取り(問診)と、筋力低下や感覚の異常、腱反射を調べる神経学的診察を行います。画像検査としては、X線(レントゲン)で骨全体の変形や骨棘の有無を確認し、MRI検査で神経や椎間板の圧迫状態を直接的に評価することが、確定診断のために極めて重要となります3

治療法【JOAガイドラインおよび国際的エビデンス準拠】:
保存療法が第一選択: 治療の基本は手術をしない保存療法です。国際的な研究報告によると、「急性期の頸部神経根症の85%以上は、8~12週間以内に特定の治療なしで自然に改善する」とされており9、過度に不安になる必要はありません。安静を保ち、薬物療法や理学療法を組み合わせることで、多くの場合症状は軽快します。

  • 薬物療法: 痛みを抑えるための消炎鎮痛薬(NSAIDs)、傷ついた神経の修復を助けるビタミンB12、神経の過敏な興奮を抑える薬剤(プレガバリン、ミロガバリンなど)が用いられます9,10
  • 理学療法・装具: 頚椎カラーと呼ばれる装具で首を固定して安静を保ったり、首を優しく引っ張る頸椎牽引療法を行ったりします。また、理学療法士によるリハビリテーションも有効です。
  • 神経ブロック注射: 痛みが非常に強く、日常生活に大きな支障が出ている場合には、痛みの信号を神経の根元で遮断する神経ブロック注射が有効な選択肢となります。これは日本ペインクリニック学会の治療指針でも推奨されている方法です11

手術療法: こうした保存療法を3ヶ月以上続けても十分な改善が見られない場合や、筋力低下が進行して腕や指が動かしにくくなる(麻痺が進行する)場合には、神経の圧迫を取り除くための手術が検討されます3

原因2:胸郭出口症候群(TOS) – なで肩の女性や筋肉質な男性は要注意

病態解説:
首の付け根から鎖骨、そして第一肋骨に囲まれた狭い空間(胸郭出口)で、腕へ向かう神経の束(腕神経叢)や血管が圧迫されることで生じる病気です7。圧迫される場所によって、斜角筋症候群、肋鎖症候群、小胸筋症候群などに分類されます7。なで肩の女性や、重いリュックサックを日常的に使用する人、重量物を扱う仕事に従事する人、あるいは過度な筋力トレーニングで首周りの筋肉が発達した男性に多く見られます。稀に、生まれつき第一肋骨の上に小さな肋骨(頚肋:けいろく)が存在し、それが原因となることもあります7,12

特徴的な症状:

  • 腕を上げる動作、例えば「電車のつり革につかまる」「洗濯物を干す」「黒板に字を書く」といった際に、腕全体のだるさ、しびれ、痛み、脱力感が出現するのが典型的な症状です4,7
  • 症状は、手の小指側(尺側)や前腕に出やすい傾向があります。
  • 神経だけでなく血管(特に鎖骨下動脈・静脈)が圧迫されると、腕や手の血色が悪くなる(白っぽくなる、青紫色になる)、冷たく感じる、腫れるといった血行障害の症状が現れることもあります7,13

診断プロセス:
診断は、特徴的な症状の問診に加えて、整形外科医が特定の姿勢や動作で症状が誘発されるかを確認する「誘発テスト」によって行われます。代表的なものに、アドソンテスト、ライトテスト、ルーステストなどがあります4,7。画像検査では、X線検査で頚肋の有無を確認したり、超音波ドップラー検査で血流の状態を評価したり、MRIで神経や血管の圧迫を描出したりします。

治療法:

  • 保存療法: 治療の基本は、原因となる姿勢や動作の回避です。理学療法士の指導のもと、姿勢矯正や胸郭出口を広げるためのストレッチ、肩甲骨周りの筋力強化を行うことが中心となります7,13
  • 薬物療法・ブロック注射: 痛みを和らげるための消炎鎮痛剤、血流を改善する薬、ビタミンB12などが補助的に用いられます7。痛みが強い場合は、星状神経節ブロックなどのブロック注射が検討されることもあります11
  • 手術療法: 保存療法で十分な効果が得られない重症例や、血行障害が顕著な場合、あるいは麻痺が進行する場合には、神経や血管の圧迫を取り除くための手術(第1肋骨切除術など)が検討されます7,13

原因3:肩関節そのものの問題 – 五十肩と腱板断裂の見分け方

痛みの原因が、首や神経ではなく、肩関節自体にあるケースも非常に多く見られます。代表的なものが「肩関節周囲炎(いわゆる五十肩・四十肩)」と「腱板断裂」です。

肩関節周囲炎(五十肩・四十肩)

症状:
主な症状は、肩をあらゆる方向に動かす際の動きの制限(可動域制限)と痛みです。「髪をとかす」「帯を結ぶ」といった動作ができなくなり、特に夜間に痛みが強くなる(夜間痛)のが特徴です8,14。病気は、炎症が最も強く何をしても痛い「炎症期」、肩が固まって動かなくなる「拘縮期」、そして徐々に動きが改善していく「回復期」という経過をたどります8

治療:
この病気の治療で最も重要なのは、病期に応じた適切な対応を行うことです5,8。炎症期には無理に動かさず、安静を保ち、消炎鎮痛剤の内服や関節内へのステロイド注射で炎症を抑えることが優先されます。痛みが落ち着き、拘縮期に移行したら、今度は温熱療法や、理学療法士の指導のもとで振り子運動などのリハビリテーションを積極的に行い、固まった関節の動きを回復させていくことが重要です。

腱板断裂

症状:
肩を動かすための重要なインナーマッスルである腱板が断裂する状態です。腕を上げる途中の特定の角度で痛みや力が抜ける感じ(ペインフルアークサイン)が特徴です15。五十肩との大きな違いは、五十肩では他人に腕を動かしてもらおうとしても固くて上がらないのに対し、腱板断裂では自力では上がらなくても、他人の介助があれば比較的スムーズに上がることが多い点です(他動運動は可能)15

治療:
治療方針は、年齢、日常の活動レベル、断裂の大きさなどを総合的に考慮して決定されます16。断裂が比較的小さく、症状が軽度な場合は、理学療法による肩甲骨周りの筋力強化や、痛みを抑えるための注射といった非手術的治療が選択されます。一方で、断裂が大きく、活動性の高い若年者や、保存療法で改善が見られない場合は、主に関節鏡(内視鏡)を用いた腱板修復術が検討されます16,17

【緊急】見逃しは命に関わる!内臓の病気が原因の「放散痛」

このセクションは本記事で最も重要です。肩から腕への痛みが、時として命に関わる内臓疾患のサイン(レッドフラグ)である可能性について、強く警告します。

放散痛とは:
「痛みの発生源である内臓と、実際に痛みを感じる皮膚の神経が、脊髄レベルで同じ経路を共有しているために、脳が痛みの場所を勘違いしてしまう現象」と説明できます6。心臓や肺、消化器などの異常が、肩や腕の痛みとして感じられることがあるのです。

心臓の病気(心筋梗塞、狭心症):
特に左肩や左腕の内側への放散痛が有名です6。もし肩や腕の痛みに加えて、胸を締め付けられるような強い痛みや圧迫感、息苦しさ、冷や汗、吐き気などの症状を伴う場合は、一刻を争う心筋梗梗塞の可能性があります。このような症状がある場合は、「様子を見よう」などと決して考えず、ためらわずに救急車を要請してください。

その他の可能性:

  • 胆石症や胆のう炎: 胆嚢の炎症が右側の横隔膜を刺激し、右肩への放散痛を引き起こすことがあります6
  • 膵炎: 膵臓の炎症が、左背部から肩への放散痛として感じられることがあります6
  • 悪性腫瘍: 非常に稀ではありますが、肺の先端部分にできた腫瘍(パンコースト腫瘍)が、腕へ向かう神経(腕神経叢)を直接圧迫し、激しい痛みやしびれ、腕の筋肉の萎縮を引き起こすことがあります6

日本の現状:なぜ「肩こり」は国民病となり、腕の痛みに繋がるのか?

なぜ、これほどまでに肩や首の問題に悩む日本人が多いのでしょうか。その背景には、日本特有の社会的・労働環境的要因が深く関わっています。

データで見る日本の“肩こり大国”:
先に述べたように、厚生労働省の国民生活基礎調査2,18では、肩こりが日本人の抱える自覚症状のトップクラスであることが示されています。これは単なる個人の不調ではなく、社会全体の健康課題と言えます。

労働環境との科学的関連:
一つの大きな要因として、日本の労働環境が挙げられます。長時間のデスクワーク、特にVDT(Visual Display Terminals)作業は、変化の少ない座位姿勢を長時間強いるため、首や肩周りの筋肉の緊張を持続させ、血行不良を引き起こします。日本産業衛生学会が発表したある研究19では、特に女性の、長時間にわたる座位中心のデスクワークが肩こりの有訴率と有意に関連していることが科学的に示されており、これが頸肩腕障害のリスクを著しく高めることが指摘されています。

プレゼンティーイズムという経済損失:
さらに、肩こりなどの身体的不調を抱えたまま働くことによる生産性の低下、いわゆる「プレゼンティーイズム」が、病気で欠勤する「アブセンティーイズム」よりも大きな経済的損失を企業や社会にもたらしているという事実も無視できません20。これは、肩や腕の痛みが個人のQOL(生活の質)を低下させるだけでなく、社会経済的にも重要な課題であることを示唆しています。

専門家が教える予防法と今日からできるセルフケア

痛みの原因を正しく診断し、治療を受けることが最優先ですが、日常生活の中で予防や症状緩和のためにできることもたくさんあります。ここでは、エビデンスに基づいた具体的な方法を紹介します。

姿勢の改善(デスクワーク環境の見直し):

  • コンピューターのモニターの上端が、目線の高さか少し下に来るように調整します。
  • 椅子に深く腰掛け、背もたれをしっかりと使い、骨盤を立てるように意識します。
  • 肘の角度が90度になるように、机や椅子の高さを調整します。足裏全体が床につくことも重要です。

効果的かつ安全なストレッチ:
日本理学療法士協会などが推奨する、首・肩・肩甲骨周りの筋肉の緊張を和らげるストレッチは非常に有効です21。以下に代表的なものを紹介します。

  • 首のストレッチ: ゆっくりと首を前に倒し、次に横に倒します。後ろに反らす動きは、頚椎症を悪化させる可能性があるので慎重に行いましょう。
  • 肩甲骨のストレッチ: 両手を前で組み、背中を丸めながら腕を前方に伸ばします。次に、背中で手を組み、胸を張るように腕を後方に引きます。
  • 振り子運動: 五十肩の拘縮期に有効です。痛くない方の手で机などにつき、体を前かがみにして、痛い方の腕をだらりと下げて力を抜き、前後に優しく振ります。

生活習慣の総合的な見直し:

  • 有酸素運動: ウォーキングなど、全身の血行を促進する有酸素運動を習慣にしましょう。
  • 入浴: ぬるめのお湯にゆっくり浸かり、体を芯から温めることで筋肉の緊張が和らぎます。
  • ストレス管理と睡眠: ストレスは筋肉を緊張させ、痛みを増強させます。十分な睡眠と、自分なりのリラックス法を見つけることが大切です。
重要な注意喚起痛みが強い時に無理にストレッチをしたり、マッサージをしたりすることは、かえって炎症を悪化させる可能性があります。セルフケアを試みても症状が改善しない、または悪化する場合には、必ず専門医に相談してください。

肩から腕の痛みに関するよくある質問(FAQ)

最後に、患者さんからよく寄せられる質問について、専門家の視点からお答えします。

Q1. 肩から腕が痛い・しびれる場合、何科を受診すればよいですか?

A: まずは整形外科の受診を強くお勧めします。整形外科では、骨、関節、筋肉、神経といった運動器全般を専門的に診察し、原因を特定するための適切な検査(X線、MRIなど)を行うことができます1。もし、本記事で解説したような胸痛や息切れなど内臓疾患が強く疑われる症状がある場合は、その旨を医師に明確に伝え、必要に応じて内科や循環器内科への紹介を相談してください。

Q2. 整形外科でレントゲン検査を受け「骨に異常なし」と言われましたが、痛みが続きます。どうすればよいですか?

A: レントゲン検査は、主に骨の形状の異常や骨折の有無を評価するのに優れた検査ですが、神経、椎間板、筋肉、腱といった「軟部組織」の異常を詳細に描出することはできません15。頚椎椎間板ヘルニアや胸郭出口症候群、腱板の小さな断裂といった疾患の多くは、MRI検査や超音波(エコー)検査といった追加の画像検査によってはじめて正確な診断が確定します。症状が続く場合は、自己判断で諦めず、再度主治医に相談し、追加検査の必要性について検討してもらうことが非常に重要です。

Q3. マッサージや整体、鍼灸は効果がありますか?

A: その効果は、痛みの原因によって大きく異なります。長時間のデスクワークなどによる単純な筋肉の緊張(いわゆる肩こり)が主な原因であれば、これらの施術によって血行が促進され、一時的に症状が緩和されることがあります。しかし、頚椎椎間板ヘルニアや胸郭出口症候群のように神経の圧迫が根本原因である場合、不適切な強い刺激はかえって神経の炎症を助長し、症状を悪化させる危険性も伴います。最も安全で効果的なアプローチは、まず医療機関で正確な診断を受け、ご自身の痛みの原因を特定した上で、治療の一環としてこれらの施術が適切かどうかを主治医や理学療法士に相談することです。

まとめ:正しい知識が、痛みと不安からの解放への第一歩

本記事で解説してきたように、肩から腕への痛みは、単なる「こり」から、治療が必要な整形外科疾患、さらには見逃してはならない内臓の病気のサインまで、極めて多様な原因から生じます。したがって、最も危険なのは自己判断で「いつものことだ」と放置してしまうことです。専門家による正確な診断が、何よりも重要であるということを、改めて強調します。

幸いなことに、原因が特定されれば、薬物療法、効果的なリハビリテーション、注射療法、生活習慣の改善など、その原因に応じた有効な治療法が存在します。あなたのその痛みを放置せず、この記事で得た知識を一つのきっかけとして、専門家と共に解決への第一歩を踏み出しましょう。正しい知識を持つことが、痛みとそれに伴う不安から解放されるための、最も確実な道筋となるはずです。

参考文献

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