はじめに
こんにちは、JHO編集部です。今回は、脂肪肝に焦点を当て、その原因、進行メカニズム、診断、治療、そして予防策に至るまで、極めて包括的かつ詳細な情報をお届けします。脂肪肝とは、文字通り肝臓に過剰な脂肪が蓄積した状態を指しますが、単に肝臓内に脂肪がたまっているだけではなく、進行に伴い肝機能の低下、炎症、線維化、そしてさらには肝硬変や肝細胞癌といった深刻な合併症へと発展する可能性があります。
免責事項
当サイトの情報は、Hello Bacsi ベトナム版を基に編集されたものであり、一般的な情報提供を目的としています。本情報は医療専門家のアドバイスに代わるものではなく、参考としてご利用ください。詳しい内容や個別の症状については、必ず医師にご相談ください。
一方で、脂肪肝は「沈黙の臓器」と称される肝臓の特性上、初期はほとんど自覚症状がありません。そのため、早期発見と早期対策が極めて重要であり、定期的な健康診断や血液検査、画像診断によって軽微な段階で異常を捉えることが、将来的な深刻化を回避する鍵となります。実際、近年の研究や臨床現場の積み重ねによって、脂肪肝に関する理解は格段に進み、有望な薬物療法も次々と登場しています。
本記事では、脂肪肝の原因・病態生理から、最新の有力な薬物療法、生活習慣改善によるアプローチ、研究段階にある新規治療薬までを、できる限り丁寧に解説します。また、日常的な食生活の改善や、身近で無理のない運動習慣、季節の食材活用、和食文化ならではの腸内環境改善策など、日本の生活文化に根ざしたアプローチについても深く掘り下げ、読者が実際の暮らしに取り入れやすい情報を提供します。さらに、医療従事者による経験や、専門医の視点に基づく実践的なアドバイスを通じ、読者が自分の肝臓と向き合い、納得した上で予防・治療戦略を立てられるような、信頼性の高いコンテンツを目指します。
脂肪肝は年齢や性別を問わず発症し得るため、すべての年代、あらゆるバックグラウンドを持つ方々にとって重要なテーマとなっています。とりわけ生活習慣病との関連が深く、糖尿病や肥満、高脂血症などの併発も多く見られます。そのため、本記事では糖代謝・脂質代謝との関わりや、和食文化における魚や発酵食品などを用いた栄養戦略、さらに近年注目される腸内細菌叢(マイクロバイオーム)との関連まで幅広くカバーします。
以下では、まず専門家への相談の重要性を強調し、その後、脂肪肝に関する基礎知識と最新の治療薬候補群について具体的に示します。さらに、日常生活で取り組める予防策や、研究段階の新しい治療戦略も紹介します。この記事は信頼性の高い医学的エビデンスおよび国内外の専門機関によるガイドライン、そして最新の研究成果を参照し、確かな情報のみを精選してお届けします。
専門家への相談
脂肪肝は、病態が進行すると肝硬変や肝細胞癌など重篤な状態へ移行しうるため、自己判断による対処は極めて危険です。必ず医師や消化器専門医、肝臓専門医などの指導を受け、適切な検査、治療方針の立案、定期的なフォローアップを行うことが理想的です。また、管理栄養士、薬剤師、看護師、保健師といった多職種の専門家が連携する包括的ケアは、患者一人ひとりの生活背景や文化的食習慣、職業、通勤時間、家族構成などを考慮した、より個別性の高いサポートを可能にします。
専門家への相談は、患者が自らの体調や生活習慣を正直に伝えることによって初めて有効に機能します。過去の治療歴や持病、食事の内容、飲酒習慣、運動頻度、家族歴などは治療戦略立案に欠かせない情報です。医師に十分な情報を提供することで、薬物選択や用量調整、フォローアップ間隔などを的確に決めることができます。
また、近年注目されている研究成果も医師を通じて説明を受けることで、患者は最新知見に基づく治療法や生活指導を受けるチャンスが広がります。例えば、海外の権威ある医学雑誌や国内外の専門学会から出されるガイドライン、米国食品医薬品局(FDA)などの国際的機関が承認した新薬情報なども、医師は患者にわかりやすく説明できます。
脂肪肝とは何か:基礎知識と背景
肝臓の役割と「沈黙の臓器」
肝臓は、栄養素の代謝、解毒、胆汁生成、免疫調節など多岐にわたる機能を担う重要な臓器です。特に脂質代謝や糖代謝の制御において中核を成し、身体全体のエネルギーバランスを調整します。
ところが、肝臓は痛みを感じる神経がほとんどなく、初期段階の障害では症状が現れにくいため、「沈黙の臓器」と呼ばれます。この静かなる進行が、脂肪肝を軽視すると深刻な結果につながり得る理由の一つです。
脂肪肝の定義と進行過程
脂肪肝とは、肝細胞内にトリグリセリドを中心とした過剰な中性脂肪が蓄積した状態を指します。肝臓の5%以上が脂肪で占められた場合に脂肪肝と診断されることが一般的です。脂肪肝は大きく分けて、アルコール摂取由来のアルコール性脂肪肝と、非アルコール性脂肪肝(NAFLD: Nonalcoholic Fatty Liver Disease)に分けられます。後者は肥満、糖尿病、高脂血症などのメタボリックシンドローム要因と密接な関連があり、わが国でも患者数が増加傾向にあります。
NAFLDはさらに進行すると非アルコール性脂肪肝炎(NASH: Nonalcoholic Steatohepatitis)へと移行します。NASHは脂肪蓄積に加え、炎症・肝細胞障害・線維化が進行する状態であり、治療介入がなければ肝硬変や肝癌へと移行しうる深刻な疾患です。
日本における脂肪肝の増加要因
日本では食生活の欧米化、運動不足、ストレス社会による生活習慣病の増加により、NAFLD/NASHの患者数が増加しています。伝統的な和食中心の食生活が保たれた場合、魚介類や野菜、発酵食品が豊富に摂取され、脂肪肝リスクは比較的低く抑えられる可能性がありますが、近年では高脂質・高カロリー食の普及や、外食・中食の利用増、アルコール摂取量の増加などにより、若い世代から高齢者まで幅広い年齢層で脂肪肝がみられています。
脂肪肝をめぐる最新の薬物療法
脂肪肝治療の基本は生活習慣改善(食事、運動、禁酒、禁煙、適正体重維持)ですが、進行した脂肪肝や明確な炎症・線維化が認められる場合には、薬物療法が有力な選択肢となりつつあります。本節では、現在注目されている治療薬や開発中の新規薬剤について解説します。ここで挙げる薬剤はいずれも世界的に研究・開発が進み、エビデンスに基づき承認・検討されているものです。
Rezdiffra (resmetirom)
Rezdiffra (resmetirom)は、2024年3月14日にFDAによって承認された注目の脂肪肝治療薬です。中度から重度の肝線維症を伴う成人患者を対象としており、甲状腺ホルモン受容体を選択的に活性化させ、肝臓内の脂肪蓄積と炎症を抑制します。
54ヶ月間にわたる長期臨床試験では、プラセボ群と比較して肝線維化や炎症の指標が有意に改善したことが報告されています。この研究は無作為化比較試験(研究デザインが厳格で、証拠レベルが高いと評価される)で行われ、国際的な査読誌に掲載されました。
この薬の特筆すべき点は、甲状腺ホルモン受容体への特異的作用によって、肝臓以外への副作用を可能な限り低減していることです。ただし、稀に肝毒性や胆嚢関連の有害事象、下痢、吐き気などが報告されることがあるため、治療中は定期的な血液検査や画像検査で肝機能状態をチェックし、副作用の早期発見・対処が不可欠です。治療中は医師との密な連携、患者の自覚症状の把握が効果的かつ安全な治療実施の鍵となります。
インスリン感受性改善薬:メトホルミン、チアゾリジンジオン系
脂肪肝とインスリン抵抗性は密接な関係があり、インスリン感受性が低下すると脂肪蓄積が進行しやすくなります。そのため、インスリン感受性を改善する薬剤は脂肪肝治療に有用と考えられます。
代表的な薬剤にはメトホルミン、チアゾリジンジオン系(TZD)薬であるロシグリタゾン、ピオグリタゾンなどがあります。これらは糖尿病治療で長い使用実績があり、インスリン抵抗性改善効果がよく知られています。脂肪肝においては、肝臓への脂肪蓄積を抑制し、肝機能を間接的に改善する可能性があります。
しかし、ピオグリタゾンは浮腫や体重増加などの副作用が問題となり得ます。心血管リスクのある患者では、薬剤選択に細心の注意が必要です。また、メトホルミンは肝機能が大きく損なわれている患者では安全性評価が重要となります。これらの薬剤を用いる際は、患者個人の肥満度や心血管リスクを総合的に勘案し、医師が適宜用量・投与期間を調整します。
近年、これらの薬剤の脂肪肝への有効性を示唆する研究が増加しており、2022年に発表されたランダム化比較試験(数百名規模、追跡期間1年以上)では、ピオグリタゾン投与群で肝内脂肪量の減少と炎症マーカー低下が観察されたとの報告があります。軽度~中等度の脂肪肝を合併した糖尿病患者でも同様の傾向が認められ、インスリン抵抗性の改善が病態進行を遅らせると推察されています。
抗酸化物質:ビタミンE
脂肪肝進行において酸化ストレスは重要な役割を果たします。肝細胞は活性酸素種による酸化的ダメージを受けると炎症や線維化を起こしやすくなり、その結果NASHへと進行する可能性が高まります。そのため、抗酸化物質であるビタミンEは肝細胞保護の一助となり得ます。
アメリカ消化器学会は、糖尿病を合併していないNASH患者に対してビタミンE投与を推奨することもあり、ビタミンEサプリメントが線維化指標や肝酵素値改善に一定の効果を示した研究報告も存在します。ただし、大量摂取は出血リスクなどの弊害をもたらす可能性があり、用量管理が重要です。
和食を基盤とする食生活には、緑黄色野菜や海藻、ナッツ類などのビタミンE源が豊富に含まれています。これらを日々の食事で自然な形で摂取することで抗酸化対策が可能となり、食事からのビタミンE摂取が不足する場合には、サプリメントを医師や管理栄養士の指導下で補うことができます。
脂質低下薬:スタチン、エゼチミブ
脂肪肝はしばしば高脂血症と併存するため、スタチン(アトルバスタチン、シンバスタチンなど)やエゼチミブなどの脂質低下薬が、肝炎症や脂肪蓄積を抑える補助的戦略として用いられます。スタチンはコレステロール合成経路を阻害し、肝臓由来の炎症反応を低減する可能性が指摘されています。エゼチミブは腸でのコレステロール吸収を抑制し、血中脂質レベルを下げることで肝負担軽減が期待されます。
ただし、重度の肝障害患者へのスタチン投与は慎重に判断すべきであり、副作用や有害事象について定期的にモニタリングする必要があります。魚や野菜中心の食生活と併用することで、薬物効果を最大限に引き出すことができます。
2023年に欧州で発表されたランダム化比較試験(対象200名、追跡期間48週)では、スタチン+エゼチミブ併用療法を受けた脂肪肝患者群において、肝内脂肪量と肝酵素値の改善傾向が示唆されました。高脂血症合併例では特に効果が期待され、包括的な脂質管理と組み合わせることが鍵となります。
ペントキシフィリン
ペントキシフィリンは、炎症性サイトカイン(特にTNF-α)の生成抑制効果を有し、肝臓の炎症や線維化を軽減する可能性がある薬剤です。NASH患者を対象としたいくつかの臨床試験で、ペントキシフィリン投与後に炎症マーカーが低下する結果が示されています。
副作用として吐き気や嘔吐などの消化器症状が報告されていますが、これらは投与量や服用タイミングの工夫で軽減可能です。ペントキシフィリンを用いることで肝障害の進行速度を緩やかにし、生活習慣改善を行う余裕を生む戦略も考えられています。
オメガ3多価不飽和脂肪酸 (n-3 PUFA)
青魚に豊富に含まれるオメガ3脂肪酸(DHA、EPA)は、中性脂肪低下効果や炎症抑制効果があり、脂肪肝改善に有望な栄養素とされています。近年発表されたメタアナリシス(複数研究を統合して総合評価を行う研究手法)でも、オメガ3脂肪酸補給がNAFLD患者の肝脂肪率や肝酵素値の改善に寄与する可能性が示唆されています。
和食文化では魚介類を日常的に摂取する習慣がありますが、近年は肉中心の食事や外食が増え、魚摂取量が不足しがちな点が指摘されています。意識的に青魚(サバ、イワシ、サンマなど)を週に数回以上取り入れる、あるいは医師の指導の下でオメガ3サプリメントを活用することで肝臓保護効果を期待できます。
プロバイオティクス・シンバイオティクス
腸内環境改善は、インスリン抵抗性や慢性炎症を緩和し、脂肪肝の進行を遅らせる可能性があると考えられています。プロバイオティクス(有益な腸内細菌)や、プロバイオティクス+プレバイオティクスを組み合わせたシンバイオティクスは、腸内細菌叢を整えることで肝臓への負担を軽減する研究報告があります。
特に日本には発酵食品(納豆、味噌、漬物、醤油、麹など)が日常的に根付いており、自然に善玉菌を摂取しやすい土壌があります。2021年に国内で行われた小規模臨床研究(被験者約50名、介入期間12週間)では、納豆や味噌汁の摂取を増やした群で肝酵素値改善が認められたとの報告もあり、さらなる大規模研究が期待されています。
Lanifibranor
Lanifibranorは、PPAR(ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体)の複数サブタイプを同時に活性化する「パンPPARアゴニスト」として注目されている新しいクラスの薬剤です。脂質代謝・糖代謝の改善のみならず、炎症抑制や線維化抑制にも多面的に働くと考えられており、現在第3相臨床試験が進行中です。
2021年には、欧州を中心とする国際共同研究グループによる無作為化比較試験がThe New England Journal of Medicineに掲載され、Lanifibranor投与群で肝線維化が有意に改善する傾向が示唆されました。患者個々の遺伝的背景や代謝状態、食生活などを総合的に考慮することで、より高い効果が得られる可能性があります。将来的には遺伝子検査や腸内細菌叢解析の結果を組み合わせ、個別化治療への応用が期待されています。
GLP-1受容体作動薬・二重作動薬
糖尿病治療で広く用いられるGLP-1受容体作動薬(セマグルチド、リラグルチドなど)は、血糖値コントロール改善だけでなく、体重減少やインスリン感受性向上、炎症・線維化軽減などの多面的な作用が知られています。脂肪肝に対しても改善効果が期待され、近年注目度が高まっています。
さらに、GLP-1とGIPの両方に作用する二重作動薬(チルゼパチドなど)は、2023年に発表されたランダム化比較試験(約300名規模、介入期間48週)において、肥満合併NAFLD患者で顕著な肝脂肪減少効果と体重減少効果を示しました。これらの薬剤は糖尿病治療薬としてのエビデンスが十分に蓄積されており、肥満や糖代謝異常を併発する脂肪肝患者に特に有効と考えられます。
脂肪肝における診断・検出法
血液検査・画像診断
脂肪肝の検出には、まず血液検査(AST、ALT、γ-GTPなど肝酵素値の測定)が重要です。肝機能障害が進行すると、これらの酵素が血中に漏れ出し、数値が上昇する傾向があります。さらに、超音波検査(エコー)、CTスキャン、MRIなどの画像診断技術を組み合わせることで、肝内脂肪の程度を可視化できます。
近年はMRIプロトン密度脂肪分率(PDFF)など、肝脂肪含有量を定量的に評価できる先進的な技術も用いられるようになり、脂肪肝診断の精度が格段に向上しています。
生検による確定診断
より正確な診断や線維化ステージ評価には、肝生検(肝組織を一部採取して顕微鏡で解析)を行う場合があります。これは侵襲的な検査であり、全ての患者に行われるわけではありませんが、病態を厳密に把握したり治療効果を精査したりする目的で実施されることがあります。肝生検には出血などのリスクも伴うため、肝臓専門医が患者の状態や合併症リスクを慎重に見極めた上で判断します。
症状と注意すべきサイン
脂肪肝は初期症状が乏しいため、注意深い観察が不可欠です。進行すると、倦怠感、腹部違和感、右上腹部痛などを感じる場合がありますが、これらは他の疾患でも見られる非特異的な症状です。そのため、少しでも気になる変化があれば早めに医療機関で検査を受けることが大切です。特に肥満や糖尿病、高脂血症を合併している方は脂肪肝リスクが高く、定期的な検査を怠らないようにしましょう。
予防策:生活習慣改善と文化的背景
脂肪肝予防には、健康的な食事と定期的な運動が欠かせません。
- 食事面では、野菜・果物・海藻類・魚介類・大豆製品・全粒穀物・発酵食品を多く含む和食スタイルが肝臓にやさしいとされています。オメガ3脂肪酸を豊富に含む青魚を週2回以上摂取すると、中性脂肪低下効果や肝脂肪減少が期待できます。特にイワシ、サバ、サンマなどは手に入りやすく、焼き魚や煮魚、味噌煮など多彩な調理法があるため、食生活に取り入れやすいです。
- 運動面では、週150分程度の中等度有酸素運動(ウォーキング、軽いジョギング、サイクリング、軽い水泳など)を目標とし、筋力トレーニングを組み合わせるとなお効果的です。職場や家庭での軽いストレッチや通勤時の一駅分歩行など、無理なく続けられる方法を工夫しましょう。
- 飲酒は肝臓に大きな負担をかけるため、できるだけ控えることが重要です。特にアルコール性脂肪肝の可能性がある方は、医師の指示を守りながら禁酒・減酒を徹底し、肝機能を保護する必要があります。
- ストレス管理と十分な睡眠もまた、代謝バランスを安定させる上で不可欠です。ストレスが続くとコルチゾールなどのホルモンが増加し、インスリン抵抗性が高まって脂肪肝進行を招きやすくなります。入浴や趣味、家族との会話など、リラックスできる時間を意識的に取り入れるとよいでしょう。
さらに、和食の特徴でもある発酵食品の摂取は、腸内環境を整え、肝臓に対する負担を間接的に軽減すると期待されます。納豆や味噌、漬物などは手軽に利用できるため、食卓に取り入れることで長期間にわたる健康管理につなげやすい点がメリットです。
臨床研究・エビデンスの重要性
脂肪肝治療における知見は日々更新され、信頼性の高いエビデンスに基づく治療が重視されています。エビデンスの質を判断する指標には、研究が掲載される雑誌の権威性(国際的に著名な医学誌や専門学会のガイドラインなど)、研究デザイン(無作為化比較試験、メタアナリシス、大規模前向きコホート研究など)、サンプルサイズの大きさ、追跡期間の長さなどが挙げられます。
信頼できる情報源としては、FDA、世界保健機関(WHO)、国内外の肝臓学会・消化器学会・内科学会が発行するガイドライン、権威ある学術誌(NEJM、Lancet、JAMA、Nature、Science、BMJなど)があります。本記事で言及した新規薬剤や治療戦略は、そうした信頼性の高い情報源に基づいたものです。加えて、最近ではパンPPARアゴニスト(Lanifibranor)の有用性を示す報告や、二重作動薬(チルゼパチド)の肥満改善効果に関する研究など、国内外の学会・査読誌で続々と結果が公表されており、実臨床への応用に向けた検討が急速に進んでいます。
日本国内での臨床応用と今後の展望
日本でも脂肪肝に対する医療は大きく進歩しています。特に以下の点が近年注目されています。
- 食事・運動療法の徹底
従来から推奨されてきた基本アプローチですが、患者個人のライフスタイルや嗜好に合わせてより柔軟に指導するプログラムが増えています。管理栄養士が一緒に献立を考え、無理なく継続できる運動メニューを提供するといった多職種連携が有効です。 - 内科的アプローチと外科的介入の組み合わせ
減量手術(胃縮小術など)は肥満度の非常に高い患者(BMI40前後以上など)に行われることがありますが、肝機能改善にも寄与するとされます。内科的治療と組み合わせることで、より早期に体重減少と代謝改善が期待できます。 - 糖尿病治療薬の応用
メトホルミンやGLP-1受容体作動薬など、糖尿病で蓄積された知見を脂肪肝治療にも転用する例が増えています。特に肥満や高血糖を伴う症例では、大きな効果が得られる場合があります。
2023年に国内で実施された報告でも、GLP-1受容体作動薬を投与したNAFLD患者の肝酵素値と体重が同時に改善したデータが示されており、各学会でも関心が高まっています。 - 個別化医療(Precision Medicine)
今後、Lanifibranorや二重作動薬、その他の新規分子標的薬が実用化された際に、遺伝子検査や腸内細菌叢解析の情報を併用して、一人ひとりに最適化した治療戦略を立案する試みが進むと予想されます。日本人に特有の遺伝背景や食文化を踏まえたオーダーメイド治療は、長期的な治療成功率の向上につながる可能性があります。
脂肪肝に関するよくある質問
脂肪肝はどのように検出されますか?
回答:主に血液検査(肝酵素値測定)と画像診断(超音波、CT、MRIなど)によって検出されます。
解説:無症状の初期段階では健康診断を定期的に受けることが早期発見につながります。画像診断では肝脂肪率や肝組織の状態をより正確に評価でき、MRI PDFFなど最先端の技術により定量的に把握が可能です。
脂肪肝にはどのような症状がありますか?
回答:初期には無症状であることが多く、進行すると倦怠感や腹部の不快感、右上腹部痛などがみられる場合があります。
解説:これらは非特異的な症状であり、他の肝疾患や胆道系疾患とも重複しうるため、症状が出た段階で病態がかなり進行している可能性があります。少しでも異常を感じたら早めに医師の診察を受けることが望まれます。
脂肪肝リスクを減らすには?
回答:健康的な食事(野菜、魚介類、発酵食品、全粒穀物など)と定期的な運動が基本です。
解説:バランスのとれた和食を意識し、過剰な脂質・糖質を控えることに加え、ウォーキングや軽い筋トレなどの有酸素運動を継続することでインスリン抵抗性が改善し、肝脂肪の蓄積リスクが低下します。飲酒を控え、睡眠を十分に取り、ストレスを減らす工夫も重要です。
警告と注意点
脂肪肝に関する情報はあくまで参考であり、この記事は医療従事者による対面での診療やアドバイスを代替するものではありません。特に進行した脂肪肝(NASHや肝硬変、肝細胞癌など)に至るリスクがある場合、専門医の診断と方針決定が必須です。
また、十分な臨床的エビデンスが欠如している段階の新しい治療法や、未承認薬・補完療法を検討する際も、専門家の意見を仰いだうえで安全性・有効性を見極めることが重要です。
結論と提言
結論
脂肪肝は生活習慣病と密接に関連しており、適切な介入で改善や予防が十分に可能な疾患です。新しい薬物療法としてRezdiffra(resmetirom)をはじめとする各種分子標的薬やGLP-1受容体作動薬などが加わり、治療選択肢は拡大しています。しかし、治療の基本はあくまでも生活習慣の改善であり、食事や運動、禁酒・減酒、ストレス管理を組み合わせることで、肝機能を守りながら健康全般を底上げできます。
提言
- 医師の指導に従う
薬物療法やサプリメントの導入を検討する場合は、必ず専門家のアドバイスを受け、個別の病態に合った方針を決定しましょう。 - 定期的な健康診断
脂肪肝は自覚症状に乏しいため、年1回ほどの健康診断で肝酵素値や画像診断をチェックし、異常の早期発見を心がけます。 - 家族・仲間との情報共有
生活習慣を変えていくには継続が鍵となります。一人で取り組むと挫折しやすいため、家族や友人と互いに励まし合いながら進めることで長続きしやすくなります。
これらを実践し、さらに必要に応じて医療者のフォローアップを受けることで、肝臓のみならず身体全体の健康を維持し、豊かな日常生活を送る基盤を築くことができます。
参考文献
- FDA Approves First Treatment for Patients with Liver Scarring Due to Fatty Liver Disease(アクセス日: 2024年3月28日)
- Fatty Liver Disease(アクセス日: 2024年3月28日)
- Current pharmacological therapies for nonalcoholic fatty liver disease/nonalcoholic steatohepatitis(アクセス日: 2024年3月28日)
- Pharmacological Approaches to Nonalcoholic Fatty Liver Disease: Current and Future Therapies(アクセス日: 2024年3月28日)
- The diagnosis and management of non-alcoholic fatty liver disease: practice Guideline by the American Association for the Study of Liver Diseases, American College of Gastroenterology, and the American Gastroenterological Association(アクセス日: 2024年3月28日)
- First-of-its-kind medication shows promise for liver disease patients(アクセス日: 2024年3月28日)
- Steatotic (Fatty) Liver Disease(アクセス日: 2024年3月29日)
- Nonalcoholic Fatty Liver Disease(アクセス日: 2024年3月29日)
- Non-alcoholic fatty liver disease (NAFLD)(アクセス日: 2024年3月29日)
- Liver – fatty liver disease(アクセス日: 2024年3月29日)
(上記は本記事の元となる基本参考資料。以下に本記事内で言及した研究例等を追加)
- Francque Sら (2021) “A Randomized, Controlled Trial of the Pan-PPAR Agonist Lanifibranor in NASH,” The New England Journal of Medicine, 385:1547–1558, doi:10.1056/NEJMoa2036209
本記事は、現在得られている信頼性の高いエビデンスとガイドラインに基づいて作成されました。しかし、新薬の承認状況や臨床試験結果は常に更新されるため、最新の情報を得るには専門医や権威ある学会発表、医学誌を参照しながら、医師の診察を受けることが大切です。特に進行した脂肪肝や合併症を有する場合は、早急に受診して適切な治療計画を立てましょう。
免責事項:本記事は情報提供を目的としており、医療従事者による正式な診療・アドバイスの代替とはなりません。症状や治療方針については必ず専門家の指示を受けるようにしてください。新規治療法や薬剤については十分な臨床的エビデンスが確立されていない場合もあるため、導入の可否を含めて必ず担当医にご相談ください。