認知バイアスとは何か?心理学で探る確認バイアス
精神・心理疾患

認知バイアスとは何か?心理学で探る確認バイアス

はじめに

こんにちは、みなさん。JHO編集部です。本稿では、確認バイアス(confirmation bias) に焦点を当て、その概念から私たちの意思決定・健康管理に対する影響、さらにその回避策まで幅広く掘り下げていきます。この認知傾向は日々の生活全般、そして特に医療・健康関連の情報を収集・解釈する際に大きな影響を及ぼしやすいものです。たとえば、ある病状を疑ったとき「こういう病気ではないか」という先入観を抱いたまま情報を検索すると、自分が考える方向を裏づけるような内容ばかりに目が行きがちではないでしょうか。

免責事項

当サイトの情報は、Hello Bacsi ベトナム版を基に編集されたものであり、一般的な情報提供を目的としています。本情報は医療専門家のアドバイスに代わるものではなく、参考としてご利用ください。詳しい内容や個別の症状については、必ず医師にご相談ください。

私たちは常に限られた時間の中で膨大な情報を処理していますが、その過程で確認バイアスが働くと、誤った結論や自己流の判断へと導かれるリスクが高まります。健康に関する選択も例外ではありません。本記事を通じて、確認バイアスが私たちの思考や行動にどのように影響を及ぼしうるのか、そしてそれをどのように認識し、回避するかを探究します。少しでも多くの方が、より中立的な視点で情報を取り扱い、自分自身や家族の健康に関して適切な判断を下せるようになることを願っています。

専門家への相談

本記事で扱う確認バイアスは、心理学や認知科学、さらには医療・健康分野に根差した複合的なテーマです。こうした幅広い学問領域を横断する知見は、APA(アメリカ心理学会) をはじめとする世界的権威のある心理学・医学関連の組織や、大学の医学部門、長年にわたって研究を続けている専門機関の知見を踏まえることで、より正確に理解できます。また、本稿末尾に示した参考文献も、確認バイアスに関する学術的裏づけや専門性を示すうえで大きく役立ちます。

健康関連情報については、医師や公的保健機関への相談が非常に重要です。さまざまな研究結果や医学論文、心理学実験を通じて確認された知見は、私たちが日常の行動を決める際の強固な根拠になりえます。単に主観的な体験談だけではなく、複数の専門家の意見やエビデンスを参照することで、より広い視点から判断材料を得られるでしょう。このような客観的視点を持つことこそが、確認バイアスを意識的に回避するための第一歩となります。

確認バイアスの概念

確認バイアス とは、自分がすでに持っている信念や予想を支持する情報を優先的に探し、収集し、解釈する認知傾向を指します。心理学の分野では古くから知られており、これは健康管理を含むあらゆる領域で見られる非常に普遍的な現象です。特に医療や健康関連では、自分の症状や体調に関して不安を抱えた際「やっぱり重い病気に違いない」と思い込み、その考えを裏づける情報や体験談を積極的に探す一方、それと矛盾する情報は見落としたり軽視したりしがちです。

APA(アメリカ心理学会) によれば、確認バイアスは「すでに持つ信念や期待を裏づける情報ばかりを求め、反証となる証拠を避ける傾向」と定義されます。こうした偏った情報収集を続けると、自分が抱いている仮説を誤った方向に強化し、より多角的かつ正確な判断を妨げてしまうのです。たとえば微熱程度しかないのに、悪性の病気かもしれないと強く思い込むあまり、医師に相談する機会を逃し、結果的に適切なケアや予防策を後回しにするケースも生じるでしょう。

確認バイアスの種類

確認バイアスには、大きく分けて3つのタイプ があるとされています。以下では、それぞれが私たちの日常や健康管理にもたらす影響について具体的に解説します。

1. 情報検索のバイアス

情報検索のバイアス とは、自分の信念を裏づける情報だけを探し求める行動を指します。たとえば「ベジタリアンは長寿だ」と信じている場合、「ベジタリアン 長生き」などと検索キーワードを打ち込むと、その信念を支持する記事ばかりに注目しやすくなります。検索エンジン自体もユーザーの嗜好や過去の閲覧履歴を反映して結果を最適化するため、異なる視点を得る機会が無自覚のうちに減ってしまうのです。

健康に関して特定の食事法を好む場合でも、たとえば低炭水化物食 の良い面ばかりが目につき、別の栄養戦略や研究結果、あるいはリスクに関する情報を積極的に参照しなくなる可能性があります。その結果、全体的なバランスを欠いた判断をしてしまい、長期的には健康リスクを見逃すおそれがあります。

2. 分析のバイアス

分析のバイアス では、同じデータを見ても、自分が持つ先入観や政治的立場、健康観に合わせてデータの意味をねじ曲げて解釈してしまいます。たとえば、スタンフォード大学の研究でも示されているように、人は同一の研究結果を提示されても、支持する立場の人は「やはり自分たちの主張が正しい」と解釈し、反対の立場の人は「このデータは都合のいい部分だけを切り取っている」と否定的にとらえる傾向が確認されています。

健康関連情報でも、自分に都合のいい結論ばかりを導き出すと、新たな治療法や有益なアドバイスが目に入らなくなるかもしれません。統計や臨床試験の結果は、そのまま読むと中立的なデータであるはずですが、私たちがどう解釈するかで大きく意味付けが変わってしまうのです。

3. 記憶のバイアス

記憶のバイアス は、自分の信念や期待に合致する出来事を強く覚え、異なる情報は記憶から抜け落ちやすいという傾向です。たとえば「営業職に向いている人は外向的である」と信じている場合、内向的な面を持つ営業スタッフを見ても、その人の外向的な行動だけが鮮明に記憶に残り、内向的だった場面は忘れられやすくなります。

健康においても「あるサプリメントが絶対に効くはずだ」と思い込んでいれば、効果を感じた場面や肯定的な事例だけを根拠として強く覚え、実際には効果を感じなかったり、あるいは副作用があったりした話は「一時的な例外」として片づけてしまうかもしれません。こうしたバイアスは、誤った自己判断の固定化を招きやすくなります。

確認バイアスを認識するためのサイン

自分自身が確認バイアスの影響下にあるかどうかを見極めるには、下記のような行動を振り返ると参考になります。もし当てはまる場合、バイアスに陥っている可能性があるでしょう。

  • 自分の観点に固執し、異なる視点を再評価しない。
  • 自分の信念を強化する情報のみを収集する。
  • 反証となる情報を軽視または無視する。
  • 自らの見解を支持する意見を過度に評価し、異なる意見を否定的に見る。

たとえばダイエット法を探しているとき、最初に「これが自分に合う」と思い込むと、その方法を肯定する体験談や研究結果ばかりを漁りがちです。いくらほかにも有効なアプローチがあっても、最初の思い込みに反する情報は「そんなはずがない」「自分には当てはまらない」として初めから排除してしまう場合があります。結果として、より効果的な手段を見逃すリスクが高まるのです。

確認バイアスに陥る理由

なぜ私たちは確認バイアスに陥るのでしょうか。以下に代表的な3つの理由を挙げ、それぞれが健康管理や日常的な意思決定にもたらす影響を探ります。

1. 情報処理の限界

私たちの脳が一度に処理できる情報量には物理的な限界があります。大量のデータや記事、研究報告に常にさらされている現代社会では、すべてに目を通して同等に検討することは不可能です。そこで脳は効率化を図るため、すでに信じている考えや期待に合致する情報を優先して処理する「フィルター機能」を働かせます。これが自動的に行われるため、本人に自覚がないまま「自分に都合のいい情報だけが目に入る」という状態になります。

医療・健康の分野でも、たとえば新しい治療薬や予防法が続々と登場する中、自分が「これが正しい」と思っている情報以外を無意識にシャットアウトすれば、最新の研究成果を取りこぼすおそれがあります。結果的に最先端の治療や正確な予防策を見逃してしまうかもしれません。

2. 自尊心の保護

人は誰でも「自分が正しい選択をしている」と思いたいものです。もし、自分の判断が間違っていたと認めると、自尊心が傷つき、不快感や不安を覚えることがあります。そのため、自分の決定や主張を支持する情報 を探し、逆に否定的な情報を拒絶することで自尊心を保とうとするのです。

健康関連でも、「このサプリメントに効果がある」「この運動法こそが最適だ」と断言して始めた場合、その選択を裏づける情報を一生懸命集め、自分のやり方を否定するエビデンスを遠ざけることがあります。たとえ副作用やリスクを示す論文があっても、それを事前に目にしてしまうと「自分が誤っていた」という結論になりかねないため、知らず知らずのうちに遠ざけるのです。

3. 認知的不協和の軽減

認知的不協和 とは、相反する信念や態度が同時に存在するときに生じる不快感を指します。私たちはその不快感を小さくするために、自分の行動や信念を正当化する情報を積極的に求めます。健康診断に行く必要性を理解していながら「結果が怖いから行きたくない」と思っているとき、「検査の結果なんて必ずしも正確じゃない」「検査しても治療が変わるわけではない」といった情報に飛びつくのは典型的な例です。

こうして不安や矛盾を打ち消す一方で、客観的な視点や正確な知識から遠ざかってしまいます。結果として将来的な病気の早期発見や適切な治療の機会を失うかもしれず、健康を損なうリスクが大きくなるでしょう。

確認バイアスから脱出する方法

確認バイアスに陥ると、物事を多面的にとらえる力が弱まり、極端な判断に流れやすくなります。以下では、より中立的かつ包括的な見方を養うための手法を紹介します。

1. 異なる視点を探る

自分が興味を持った情報について、あえて反対意見 や異なる研究結果を探す努力をすることが大切です。たとえば特定のダイエット法を支持しているなら、その手法に否定的・懐疑的な立場からの論文や、別の食生活で成果を得た事例にも目を向けることで、多角的な判断が可能になります。

実際、2020年にCurrent Directions in Psychological Science誌に掲載されたBrashierとMarshの研究では(Brashier NM, Marsh EJ (2020) “Cognitive illusions” Current Directions in Psychological Science 29(4):379–387, doi: 10.1177/0963721420917681)、人は自分の信じたい内容を選択的に取り入れると同時に、反対意見に直面したときには防御的になりやすいと指摘されています。しかし意図的に多様な情報源へアクセスし、反論や別の事例を検証することで、この偏りを緩和できる可能性が示唆されています。こうした視点の拡大は、健康管理だけでなく、仕事や人間関係などさまざまな意思決定にも役立ちます。

2. 試行錯誤を許容する

自分が誤った前提を抱いていたことを認めるのは、決して気分のいいものではありません。しかし、その誤りを素直に認め、修正する姿勢が確認バイアスを弱める大きな力となります。たとえば、新しい食事法を試して思うような効果が得られなかったり、あるいは体に合わないとわかったりしたとき、それを「自分の能力不足」と否定的に捉えるのではなく「新しい事実を学ぶ機会」として受け止める習慣をつけるのです。

こうしたオープンマインドは、結果的に情報選択の幅を広げます。うまくいかなかった原因や別の方法を検討する余地が増えるため、より多面的で有益な判断が可能になります。健康に限らず、家族や職場でのコミュニケーションでも「自分の見方が常に正しいわけではない」という前提を持つことで、意外な学びを得られるでしょう。

3. 自分の信念を定期的に評価する

人は何年も同じ考え方を続けていると、それが自分のアイデンティティの一部になってしまいがちです。そこで重要となるのが、定期的に自分の信念を客観的に見直す ことです。

たとえば「過体重の人は皆、運動を嫌うものだ」という思い込みを持っているなら、実際にジムなどを訪れて観察し、いろいろな体型の人が熱心にトレーニングしている様子を見ると、自分の先入観が間違いだったことに気づくかもしれません。こうした小さな「気づき」の積み重ねが、確認バイアスを和らげ、より多様な情報を受け入れるきっかけをつくります。

結論と提言

結論

私たちが何気なく行っている情報収集や解釈、記憶のプロセスには、常に確認バイアス が強く働いています。情報検索、分析、記憶という3つの局面それぞれでこのバイアスが存在し、私たちの判断を微妙な方向へ誘導しかねません。特に健康や医療に関わる選択では、思い込みや先入観によって大切なエビデンスを見逃したり、適切な治療機会を逃したりする可能性が高まります。

そのため、バイアス自体を「悪」と決めつけるのではなく「人間の思考プロセスに当然含まれる傾向」と理解し、それが自分にどんな影響を及ぼすかを意識することが肝心です。そしてその上で、より正確で客観的な判断をするための工夫を日常的に取り入れる必要があります。

提言

確認バイアスを回避するために、以下のポイントを意識してみてください。

  • 複数の情報源を照合する: 健康関連のテーマであれば、医師や専門家、大学の医学部門、公的研究機関の情報などを幅広くチェックしましょう。信頼度が高いと考えられる専門家の見解同士が矛盾するときは、その理由を深く考えることで新たな視点を得られます。
  • 多様な意見に触れる習慣をつける: あえて自分の立場や意見に反対の情報を探すことで、バイアスの存在に気づくきっかけが増えます。ソーシャルメディアであっても、自分の好みと異なる話題を追ってみるのも一つの方法です。
  • 試行錯誤と再評価を繰り返す: 「一度決めたから絶対に正しい」と思い込みすぎず、状況や最新の研究によっては方針を変える柔軟性を持ちましょう。自分が下した判断の根拠が何だったのかを振り返る習慣をつけると、より客観的な視点を保ちやすくなります。
  • 自尊心や恐怖心に左右されすぎない: 自分の判断を批判されることを恐れるあまり、誤った情報を固持し続けることはリスクが大きいです。むしろ、誤りを認めたり修正したりできることこそ、健康管理においては実践的なメリットをもたらします。

これらの取り組みを通じて、私たちは確認バイアスの影響を和らげ、より根拠に基づいた健全な判断を行いやすくなります。特に健康に関する意思決定は、将来の生活の質や寿命にも直結する非常に重要な要素です。だからこそ、日々の小さなバイアスに気づき、それをコントロールする努力が欠かせません。

最後に、ここで扱った情報はあくまで一般的な知識としての参考 です。実際に健康状態や治療方法を判断する際には、必ず医師や公的保健機関などの専門家に相談し、個別の状況に合った助言を受けるようにしてください。自分の仮説に固執せず、新しい研究や異なる視点にオープンであることが、より良い健康管理と安心につながるはずです。

参考文献

(本記事は一般的な情報提供を目的としており、専門家の診断や指導に代わるものではありません。ご自身の健康状態や治療方針に関しては、必ず医師や公的機関にご相談ください。)

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