足関節捻挫(足首の捻挫)の治し方|症状・重症度チェックから最新治療、リハビリまで【整形外科医監修】
筋骨格系疾患

足関節捻挫(足首の捻挫)の治し方|症状・重症度チェックから最新治療、リハビリまで【整形外科医監修】

スポーツ活動中や日常生活のふとした瞬間に足首を捻ってしまう「足関節捻挫」。多くの方が経験するありふれた怪我であるため、「たかが捻挫」と軽視されがちです。しかし、厚生労働省の患者調査によると、捻挫は日本国内で非常に多く発生する外傷の一つであり、不適切な初期対応やリハビリテーション不足が、後遺症や再発のリスクを高めることが明らかになっています1。従来のインターネット上の情報は、応急処置としてのRICE処置(安静・冷却・圧迫・挙上)の解説に留まることが多く、より進んだ医学的知見や、長期的な予後までを見据えた包括的な情報が不足していました。本記事では、JAPANESEHEALTH.ORG編集委員会が、日本整形外科学会(JOA)や国際的な医学雑誌(British Journal of Sports Medicineなど)の最新ガイドラインに基づき、足関節捻挫の「本当の治し方」を徹底的に解説します。骨折の可能性を判断するための「オタワ足関節ルール」や、最新の応急処置指針「PEACE & LOVEアプローチ」など、専門的ながらも実践的な知識を提供し、読者の皆様がご自身の状態を正確に理解し、後遺症なく、真の意味で「早く、正しく」回復するための一助となることを目指します。

医学的監修:
仁木 久照(にき ひさてる)医師
聖マリアンナ医科大学 整形外科学講座 主任教授
(一般社団法人日本足の外科学会 元理事長)2


この記事の科学的根拠

本記事は、引用された研究報告書で明示されている最高品質の医学的根拠にのみ基づいています。以下のリストには、実際に参照された情報源と、提示された医学的指導との直接的な関連性が含まれています。

  • NCBI (米国国立生物工学情報センター) / StatPearls: 本記事における足関節の解剖学、受傷機転、臨床評価、およびオタワ足関節ルールの基礎的・包括的な解説は、NCBIの学術データベースで公開されている総説論文に基づいています3
  • British Journal of Sports Medicine (BJSM): 非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)の使用に関する注意喚起や、最新の治療推奨事項は、スポーツ医学分野で世界的に権威のある本誌の臨床ガイドラインを中核的な情報源としています4
  • 日本スポーツ整形外科学会 (JSOA): 捻挫の重症度分類や、本記事で紹介する3段階のリハビリテーションモデルの基礎は、日本のスポーツ整形外科領域における権威ある機関である本学会の「スポーツ損傷シリーズ」に基づいています5
  • Physio-pedia: RICE処置から進化した、軟部組織損傷に対する最新の管理アプローチ「PEACE & LOVE」に関する詳細な解説は、国際的な理学療法知識ベースであるPhysio-pediaの情報を参照しています6
  • 厚生労働省 e-Stat: 日本国内における足関節捻挫の発生頻度に関する疫学データは、政府の公式統計である患者調査から引用しており、日本の読者への関連性を高めています1

要点まとめ

  • 足関節捻挫は軽視されがちですが、不適切な対応は再発や慢性的な不安定性(慢性足関節不安定症: CAI)、さらには将来の変形性足関節症につながる可能性があります78
  • 骨折の疑いを判断するには「オタワ足関節ルール」が有効です。特定の部位に骨の圧痛があるか、体重をかけて4歩歩けない場合は、医療機関の受診を強く推奨します9
  • 応急処置の最新概念は「PEACE & LOVE」です。従来のRICE処置に加え、治癒に必要な炎症を妨げる可能性のある抗炎症薬の安易な使用を避け、回復期には積極的な運動を推奨します6
  • 回復には、損傷の重症度に応じた段階的なリハビリテーションが不可欠です。急性期から機能改善期、スポーツ復帰期まで、科学的根拠に基づいたプログラムを実践することが「正しく治す」ための鍵です10

まずはセルフチェック:その足首の捻挫、病院に行くべき?

足首を捻挫した際、多くの人が最初に悩むのは「この痛みはただの捻挫なのか、それとも骨折しているのか?」という点でしょう。不要なX線撮影を避けつつ、重大な骨折を見逃さないために、国際的に広く用いられている臨床判断ルールが「オタワ足関節ルール」です。

骨折の可能性は?「オタワ足関節ルール」で確認

オタワ足関節ルールは、その感度がほぼ100%に近く、このルールの基準に一つも当てはまらなければ、臨床的に意味のある骨折の可能性は極めて低いとされています9。以下の基準を確認し、一つでも該当する場合は、自己判断せずに速やかに整形外科などの医療機関を受診してください。

表1:オタワ足関節ルール(医療機関受診の目安)
痛みの部位 X線撮影を考慮する基準
足関節部 足関節に痛みがあり、かつ以下のいずれか一つでも該当する場合:

  • 外くるぶし(腓骨)の後縁6cmから先端にかけて骨を押すと痛みがある。
  • 内くるぶし(脛骨)の後縁6cmから先端にかけて骨を押すと痛みがある。
  • 負傷直後および診察時に、体重をかけて4歩続けて歩くことができない。
中足部 足の中央あたりに痛みがあり、かつ以下のいずれか一つでも該当する場合:

  • 第5中足骨(小指側の骨の付け根)を押すと痛みがある。
  • 舟状骨(内くるぶしの前方にある骨)を押すと痛みがある。
  • 負傷直後および診察時に、体重をかけて4歩続けて歩くことができない。

出典: NCBI StatPearls3, Physio-pedia9

捻挫の重症度は?3つのレベルを見分ける

骨折の可能性が低いと判断された場合でも、捻挫自体の重症度を把握することは、適切な治療計画を立て、回復期間を見積もる上で重要です。日本スポーツ整形外科学会などの専門機関は、靭帯の損傷度合いに応じて捻挫を3つの段階に分類しています5

表2:足関節捻挫の重症度比較
重症度 靭帯の損傷状態 主な症状 歩行能力 回復期間の目安
I度 (軽症) 靭帯が伸びた状態(微細な断裂) 軽度の腫れ、圧痛。関節の不安定感はない。 歩行は可能だが、軽い痛みを伴う。 1~2週間
II度 (中等症) 靭帯の部分的な断裂 明らかな腫れと皮下出血。中等度の痛みと、少しぐらつくような不安定感。 歩行は困難で、強い痛みを伴う。 3~6週間
III度 (重症) 靭帯の完全な断裂 高度の腫れ、激しい痛み、広範囲の皮下出血。明らかにグラグラする関節の不安定性。 体重をかけることができず、歩行不能。 6~12週間以上

出典: 日本スポーツ整形外科学会5

捻挫直後の応急処置:最新の「PEACE & LOVE」アプローチとは?

捻挫後の応急処置は、その後の回復過程を大きく左右する極めて重要なステップです。長年「RICE処置」が標準とされてきましたが、近年のスポーツ医学研究では、より包括的で積極的なアプローチである「PEACE & LOVE」が提唱されています6

従来のRICE処置の基本

RICEは、Rest (安静)、Ice (冷却)、Compression (圧迫)、Elevation (挙上) の頭文字を取ったもので、現在でも応急処置の基本的な考え方として有効です3。腫れや痛みを初期段階でコントロールすることを目的としています。

進化版アプローチ「PEACE & LOVE」

British Journal of Sports Medicineなどで推奨されているPEACE & LOVEアプローチは、受傷直後の対応(PEACE)と、その後の回復期における管理(LOVE)を組み合わせたものです46

【PEACE】受傷直後に行うこと

  • Protection (保護): 痛みを悪化させる活動や荷重を1~3日間避け、患部を保護します。
  • Elevation (挙上): できるだけ患部を心臓より高い位置に保ち、重力を利用して腫れを軽減させます。
  • Avoid Anti-inflammatories (抗炎症薬を避ける): これが最も重要な変更点です。炎症は組織が治癒するために不可欠な自然な生体反応です。非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)の安易な使用や過度なアイシングは、この長期的な組織治癒を妨げる可能性があるため、避けるべきとされています4。痛みが強い場合は、医師に相談してください。
  • Compression (圧迫): 弾性包帯やサポーターで軽く圧迫し、過度な腫れを抑制します。
  • Education (教育): 患者自身が自分の状態を理解し、能動的に回復プロセスに関わることの重要性を認識します。「治してもらう」のではなく「自分で治す」という意識が大切です。

【LOVE】数日後から始めるべきこと

  • Load (荷重): 痛みのない範囲で、できるだけ早く徐々に体重をかけ始めます。適切な荷重は、組織の修復を促進し、筋力や固有受容感覚の回復を助けます。
  • Optimism (楽観): 回復に対する前向きで自信に満ちた姿勢が、より良い結果につながることが科学的に示されています。
  • Vascularisation (血流増加): 痛みを伴わない有酸素運動(サイクリングなど)を早期に開始し、患部への血流を増やして治癒を促進します。
  • Exercise (運動): 積極的にリハビリ運動を行い、足首の可動域、筋力、そしてバランス能力を回復させます。

足関節捻挫の原因とメカニズム

なぜ足首を捻りやすいのか?足関節の構造

足関節は、脛骨(すねの内側の骨)、腓骨(すねの外側の骨)、距骨(足首の土台となる骨)の3つの骨で構成されています。これらの骨を繋ぎ、関節を安定させているのが靭帯です。足関節捻挫の約85%は、足裏が内側を向くように捻る「内反捻挫」で発生し、この時に足関節の外側にある靭帯群が損傷します3

  • 前距腓靭帯 (ATFL): 最も損傷しやすい靭帯です。足首を伸ばした状態(底屈)で内側に捻った際に強く緊張します。
  • 踵腓靭帯 (CFL): 前距腓靭帯の次に損傷しやすい靭帯で、より重度の捻挫で損傷することが多いです。
  • 後距腓靭帯 (PTFL): 最も強靭な靭帯であり、この靭帯が単独で損傷することは稀です。

特にバスケットボールやバレーボールでのジャンプ後の着地、サッカーやラグビーでの急な方向転換、あるいは段差を踏み外した時など、不安定な状態で着地した際に受傷しやすくなります5

放置は危険!慢性足関節不安定症(CAI)のリスク

「たかが捻挫」と放置したり、痛みが引いたからといってリハビリを怠ったりすると、深刻な後遺症につながる可能性があります。それが慢性足関節不安定症 (Chronic Ankle Instability: CAI)です。

NCBIに掲載された研究報告によると、急性足関節捻挫を経験した人のうち、約40%がCAIに移行するとされています3。一度損傷した靭帯は、治癒しても伸びてしまったり、硬い瘢痕組織になったりすることがあり、関節の機械的な安定性が低下します。さらに重要なのは、靭帯に埋め込まれている体の位置を感じるセンサー(固有受容器)の機能が低下することです11。この固有受容感覚の低下が、バランス能力の悪化を招き、「足首が抜けるような感覚(giving way)」や捻挫の再発を引き起こすのです。

この「急性捻挫 → 固有受容感覚の低下 → バランス能力の低下 → 再発 → CAI」という悪循環は、最終的に変形性足関節症へと至る危険な道筋です8。CAIによる関節の不安定性が長年にわたって関節軟骨に異常なストレスをかけ続け、軟骨がすり減り、骨が変形し、持続的な痛みと機能障害を引き起こします。適切なリハビリテーションは、この負の連鎖を断ち切るために不可欠なのです。

整形外科での診断と治療法

医師による診察と検査

医療機関では、まず問診でどのように捻ったか(受傷機転)を確認し、腫れや皮下出血の程度を視診します。次に、圧痛点(押して痛い場所)を触診で特定し、損傷した靭帯を推定します。靭帯の緩み(不安定性)を評価するために、前方引き出しテスト(主にATFLを評価)や距骨傾斜テスト(主にCFLを評価)といった徒手検査が行われます11。ただし、受傷直後は腫れと痛みで正確な評価が難しいため、より信頼性の高い評価は、受傷後4~5日経ってから再評価することが推奨されています4

保存療法:固定と薬物療法

ほとんどの足関節捻挫は、手術を必要としない「保存療法」で治療されます。治療の基本は、損傷の重症度に応じた固定(ギプス、シーネ、サポーターなど)と、前述のPEACE & LOVEアプローチに基づいた管理です。薬物療法に関しては、最新のガイドラインでは、炎症を抑制するNSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)のルーチン的な使用は推奨されていませんが、痛みが非常に強い場合には、医師の判断で短期的に処方されることがあります4

手術が必要になるケースとは?

手術が検討されるのは、以下のような限定的なケースです。

  • 重度の靭帯損傷(例:III度損傷)があり、高度な関節不安定性が認められる場合。
  • 数ヶ月間の適切な保存療法とリハビリテーションを行っても、不安定感や痛みが改善しない慢性足関節不安定症(CAI)の場合。
  • 骨のかけら(骨軟骨骨折)を伴う場合。
  • 高いレベルでの競技復帰を目指すアスリートで、高度な不安定性がパフォーマンスに影響する場合。

手術では、損傷した靭帯を修復・再建する処置が行われます。手術の適応については、専門医との十分な相談が必要です。

【完全ガイド】足関節捻挫の段階的リハビリテーションプログラム

足関節捻挫からの完全な回復と再発予防には、科学的根拠に基づいた段階的なリハビリテーションが最も重要です。以下に、急性期からスポーツ復帰までを網羅した包括的なプログラムを示します。各フェーズの目標と移行基準を理解し、焦らず着実に進めましょう。

表3:段階的 足関節捻挫リハビリテーションプログラム
フェーズ 目的 エクササイズ例 実施方法 次のフェーズへの移行基準
フェーズ1: 急性期
(受傷後 約1~7日)
・腫れと痛みの管理
・靭帯の保護
・痛みのない可動域維持
1. PEACE & LOVEの遵守
2. アルファベット運動: 足の親指で空中にアルファベットを描く。
3. 足関節ポンプ: 痛みのない範囲で足首をゆっくり上下させる。
・全ての運動は痛みのない範囲で。
・1日に2~3回実施。
・冷却は1回15-20分まで。
・腫れが大幅に引く。
・強い痛みを伴わずに体重をある程度かけられる。
フェーズ2: 回復期
(約2~4週)
・完全な関節可動域(ROM)の回復
・基本的な筋力強化の開始
1. タオルストレッチ: 座ってタオルを足裏にかけ、アキレス腱を伸ばす。
2. 等尺性筋トレ: 壁などに足裏を当て、上下内外の4方向に5秒間押し続ける。
3. タオルギャザー: 床のタオルを足指でたぐり寄せる。
・ストレッチ: 30秒保持×3セット。
・筋トレ: 各方向10回。
・1日に1~2回実施。
・痛みを伴わずに関節が完全に動く。
・びっこを引かずに正常に歩ける。
フェーズ3: 機能改善期
(約4~8週以降)
・動的な筋力と持久力の向上
・バランスと固有受容感覚の再教育
1. カーフレイズ (踵上げ): 両足から始め、片足での実施へ。
2. 片足立ちバランス: 硬い床から始め、クッションなど不安定な場所へ挑戦。
3. チューブトレーニング: ゴムチューブで抵抗をかけ、足首を動かす。
・筋トレ: 15回×3セット。
・バランス: 30~60秒保持。
・1日に1回実施。
・全ての機能訓練を痛みなく行える。
・痛みなく直線でジョギングができる。
・片足立ちが45秒以上可能。
フェーズ4: スポーツ復帰期 ・スポーツ特有の動作の回復
・再発予防のための高度なトレーニング
1. アジリティドリル: ジグザグ走、サイドステップ。
2. プライオメトリクス: ボックスジャンプなど。
3. 各競技に特化した動作練習。
・段階的に強度と複雑性を上げる。
・常に適切な準備運動を行う。
・全てのスポーツ動作を痛みや不安なく遂行できる。
・医師や理学療法士の許可を得る。

出典: rehasaku.net10, 日本スポーツ整形外科学会5 を基に統合・再構成

特に、慢性足関節不安定症に対するバランストレーニングは、再発予防に極めて有効であることがメタアナリシス(複数の研究を統合した質の高い分析)によって示されています12

足関節捻挫の再発を予防するために

一度捻挫をすると、再発のリスクが高まります。リハビリテーションを完了した後も、以下の点に注意して足首の健康を維持しましょう。

  • 運動前の適切な準備運動: 動的ストレッチなどで筋肉と関節を温め、運動に適した状態にします13
  • 筋力とバランスの維持: フェーズ3で行ったようなカーフレイズや片足立ちなどのトレーニングを、週に数回でも継続することが推奨されます。
  • 適切な靴の選択: 活動内容に合った、サポート力のある靴を選びましょう13
  • サポーターやテーピングの活用: 特に強度の高いスポーツ活動を行う際には、予防的に足首をサポートすることも有効です14

よくある質問

捻挫は3日で治りますか?

「早く治したい」というお気持ちはよく分かりますが、医学的には3日で捻挫が「治癒」することはありません。靭帯の修復には数週間から数ヶ月の期間が必要です。軽症(I度)であっても、組織が完全に修復されるには1~2週間はかかります5。「痛みが引いた=治った」と自己判断して活動を再開すると、不完全な状態で靭帯が治癒し、慢性的な不安定性(CAI)や再発のリスクを著しく高めます。焦らず、本記事で示した段階的なリハビリテーションを実践することが、結果的に「正しく、早く」回復するための最短の道です。

受傷直後は温めるべきですか、冷やすべきですか?

受傷直後(急性期)は、冷やす(冷却)のが原則です。これはPEACE & LOVEアプローチの「P (保護)」と「A (抗炎症薬を避ける)」の考え方に沿うものです。冷却には血管を収縮させ、過度な腫れや内出血、痛みを抑制する効果があります3。ただし、過度な冷却は組織の治癒に必要な炎症反応を妨げる可能性も指摘されているため、1回15~20分程度を目安に、氷嚢などをタオルで包んで行い、凍傷に注意してください10。痛みが長引く慢性期には、血行を促進して組織の修復を助けるために温熱療法が用いられることもありますが、急性期に温めるのは禁忌です。

市販の痛み止め(NSAIDs)を飲んでも良いですか?

これは非常に重要な点です。最新の臨床ガイドライン(BJSMなど)では、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)の安易な使用は推奨されていません4。なぜなら、炎症は組織が治癒する上で不可欠なプロセスであり、NSAIDsでこのプロセスを強力に抑制すると、長期的な組織の修復が遅れたり、不完全になったりする可能性があるからです。これがPEACE & LOVEアプローチで「Avoid Anti-inflammatories(抗炎症薬を避ける)」が強調されている理由です6。痛みが我慢できないほど強い場合は、自己判断で市販薬を使用する前に、必ず医師や薬剤師に相談し、適切な指示を受けてください。

リハビリはいつから始めれば良いですか?

リハビリテーションは、可能な限り早期に開始することが推奨されています。「安静」は重要ですが、絶対的な安静期間が長すぎると、筋力低下や関節の拘縮(硬くなること)を引き起こします。PEACE & LOVEアプローチの「L (荷重)」が示すように、受傷後数日経って強い痛みが引いてきたら、痛みのない範囲で徐々に体重をかけ始め、足首を動かす運動(フェーズ1のエクササイズ)を開始します6。どのタイミングでどの運動を始めるべきかは、損傷の重症度によって異なりますので、本記事の段階的プログラムを参考にし、可能であれば医師や理学療法士の指導のもとで進めるのが最も安全かつ効果的です。

結論

足関節捻挫は、決して「軽視してよい怪我」ではありません。その初期対応と、その後のリハビリテーションの質が、数ヶ月後、さらには数十年後のあなたの足首の健康状態を決定づけます。本記事で紹介した「オタワ足関節ルール」で重症度を把握し、最新の「PEACE & LOVEアプローチ」で適切に応急処置を行い、科学的根拠に基づいた段階的なリハビリテーションプログラムを粘り強く実践すること。これこそが、再発や慢性足関節不安定症(CAI)、そして将来の変形性足関節症といった深刻な後遺症を防ぎ、「正しく治す」ための最も確実で、結果的には最短の道筋です。あなたの足首の未来は、今日のあなたの賢明な選択にかかっています。

免責事項本記事は情報提供のみを目的としており、専門的な医学的助言に代わるものではありません。健康上の懸念や、ご自身の健康状態や治療に関する決定を下す前には、必ず資格のある医療専門家にご相談ください。

参考文献

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  2. 一般社団法人日本足の外科学会. 学会概要 | 本学会について [インターネット]. [引用日: 2025年6月24日]. Available from: http://www.jssf.jp/about/outline.html
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  14. Performance Health Academy. Make Sure You’re Up To Date On The New Clinical Guidelines for Ankle Sprains [Internet]. [cited 2025 Jun 24]. Available from: https://www.performancehealthacademy.com/make-sure-you-re-up-to-date-on-new-clinical-guidelines-ankle-sprains.html
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