見逃してはならない！脳挫傷の初期症状を見極める
脳と神経系の病気

見逃してはならない！脳挫傷の初期症状を見極める

📆 記事公開日:

はじめに

JHO編集部のウェブサイトにご訪問いただき、ありがとうございます。本記事では、日常生活で意外に軽視されがちな外傷性脳損傷（TBI）に関連した「閉鎖性頭部外傷」について、詳しく解説いたします。交通事故や転倒といった突発的な衝撃によって起こるケースが多く、頭蓋骨が破損していないため外見からは大きなダメージがわかりにくいという特徴があります。しかし、早期の発見やケアを怠ると重大な合併症へと進展する可能性もあり、適切な知識と注意が不可欠です。

免責事項

当サイトの情報は、Hello Bacsi ベトナム版を基に編集されたものであり、一般的な情報提供を目的としています。本情報は医療専門家のアドバイスに代わるものではなく、参考としてご利用ください。詳しい内容や個別の症状については、必ず医師にご相談ください。

本記事では、閉鎖性頭部外傷がどのように起こるのか、どのような症状や合併症が考えられるのか、そして予防や早期対処のためには何ができるのかという点を中心に、具体的かつ実践的な視点から探っていきたいと思います。外傷による頭部の問題は、重症度の見極めや専門家への相談時期を逸すると深刻な影響を及ぼすことがあります。皆様がご自分やご家族、あるいは周囲の方々を守るための知識を高める一助となれば幸いです。

なお、本記事は複数の信頼できる医療情報源を参照しつつ、医療の専門家による監修レベルの知見を踏まえた内容の整理を目指していますが、あくまで一般的な情報提供を目的としており、個別の診断や治療方針を示すものではありません。実際の治療やご自身の具体的な症状に関しては、必ず医師など専門家の診断・助言を仰いでください。

専門家への相談

本記事の執筆にあたり参考としたのは、Johns Hopkins Medicineや関連する公的医療機関・大学機関が提供する確立された情報源です。こうした機関は、外傷性脳損傷をはじめとした脳神経外科領域で数多くの研究実績を持っており、世界的にも権威ある存在として認められています。また、記事中に示す一般的な知見や留意点も、各種ガイドラインや専門家向けの論文をもとにまとめられたものです。読者の皆様が専門家の診断を受ける際の補助的な情報として活用できるよう、可能な限りわかりやすく整理するよう努めています。

しかし、再度強調いたしますが、本記事で述べる内容は医療上の「最終的な判断」を示すものではありません。個々の症例によって最適解が大きく異なる可能性があり、特に外傷性脳損傷の症状は微妙な差異が生命予後や神経学的後遺症に直結することがあります。したがって、何かしら心配な兆候を感じた場合は、速やかに専門医の診察を受けることをおすすめいたします。

閉鎖性頭部外傷とは何か？

閉鎖性頭部外傷とは、脳に対して外部から強い衝撃が加わったにもかかわらず、頭蓋骨が外部へ向けて開放されることなく、内部で脳が損傷を被る状態をいいます。外観上、擦り傷や骨折が見られないことが多いため、一見すると大きな問題がないように思われがちです。しかし、頭蓋骨内では脳組織や血管に微細なダメージが蓄積し、神経症状や認知機能の障害へとつながる可能性があります。

たとえば、自動車事故でシートベルトを着用していた場合、頭蓋骨が割れるほどの激しい衝撃は受けなかったとしても、頭部が急激に揺すぶられた結果、脳が頭蓋骨内部で衝突し、深刻な損傷を受けるリスクがあります。また、高所からの転倒やスポーツ事故などでも同様のケースが起こり得ます。幼児が激しく揺さぶられること（いわゆる揺さぶられっ子症候群など）でも、外部から見てはわかりにくい頭部外傷が引き起こされる点には十分に注意しなければなりません。

開放性頭部外傷との対比

頭部外傷には大きく分けて以下の2種類があります。

  1. 開放性頭部外傷
    頭蓋骨が割れたり破裂し、外部と頭蓋内が物理的に接触した状態を指します。傷口から脳が露出している場合や、骨折片が脳組織に刺さっている場合などが典型例です。外観上も損傷が顕著であるため、受傷者本人あるいは周囲の人がすぐに重大性を認識しやすいという特徴があります。
  2. 閉鎖性頭部外傷
    頭蓋骨の破裂を伴わないものの、脳が内部でダメージを受ける状況です。見た目にはほとんど異常がない場合が多い反面、脳内出血や脳浮腫などが発生していても発見が遅れるリスクが高まります。

いずれの種類であっても、脳組織が損傷を受ける事実には変わりません。ただし閉鎖性の場合は、外傷の重大性が外見では判別しにくいため、実際には開放性以上に厄介なケースも多々報告されています。特に、強い衝撃を受けても「骨折していないから問題ない」と自己判断して放置してしまうと、後述する重篤な症状が数日から数か月後に出現することがあるため危険です。

大人における閉鎖性頭部外傷の症状

大人が閉鎖性頭部外傷を負った際に現れる症状は、多岐にわたります。軽度の頭痛や軽度のめまいなど、一見大きな問題に見えない程度の症状から、意識障害や神経麻痺がみられる重症例まで、そのスペクトラムは非常に広いです。以下では、重症度に応じてよく報告される症状を概説します。

軽度な症状

比較的軽度の損傷の場合、しばしば以下のような症状がみられます。

  • 視覚異常: 視力がぼやけたり、二重に見える（複視）ことがあります。パソコン作業やテレビ視聴の際に違和感を覚える程度でも要注意です。
  • 聴覚への影響: 耳鳴りや軽度の難聴を感じるケースがあります。また、めまいが生じることも珍しくありません。
  • 持続的な疲労・倦怠感: 日常生活での活動意欲が低下し、仕事や家事をこなすのが億劫になることがあります。
  • 頭痛: 軽い頭痛が続いたり、ズキズキした痛みが断続的に生じることがあります。
  • 吐き気・嘔吐: 断続的な吐き気に加え、場合によっては嘔吐を伴うこともあります。
  • 一時的な記憶障害: 受傷直前や直後の出来事を思い出せない（健忘）といった症状が一過性に起こる場合があります。長期記憶にも何らかの影響が及ぶケースもあります。
  • 感情面の不安定: うつ状態や強い不安感が急激に生じる、イライラしやすくなるなど、情緒面での変調が起こりやすいです。
  • 睡眠障害: なかなか寝付けなかったり、逆に長時間眠り続けるなど、睡眠パターンに乱れが生じることがあります。

こうした症状は外傷後すぐに明確に表れるとは限らず、数時間から数日、あるいは1週間以上経過してから出てくることもあります。軽度だからと放置すると、症状の悪化や長期化を招くおそれがありますので、何かしらの違和感がある場合は早めに医師の診察を受けることが大切です。

重度な症状

より深刻な外傷の場合、神経系へのダメージが顕著となり、次のような強い症状が現れる可能性があります。

  • 持続的かつ激しい頭痛: 市販の鎮痛薬を服用しても収まらないほどの激痛が長時間続くことがあります。
  • 頻回な嘔吐: 吐き気が持続し、短時間に何度も嘔吐を繰り返す場合があります。
  • けいれん発作: 全身性のけいれんや一部の筋群のみのけいれんが起こる場合があります。
  • 意識障害・覚醒困難: 眠りこんだ状態から覚醒しにくくなるなど、意識レベルが低下し、重篤化すると昏睡状態に陥るリスクもあります。
  • 瞳孔の異常: 片側の瞳孔だけが拡張したり、左右の大きさが明らかに違うなど、神経外科的緊急対応が必要な兆候が出ることがあります。
  • 言語障害: 会話や文章を書くことがうまくできなくなり、言葉が出にくくなる失語症状や発話困難が見られることもあります。
  • 四肢のまひ・しびれ: 片側の手足に力が入らない、感覚が鈍くなるといった運動・知覚障害が生じることがあります。
  • 精神・行動面の異常: 混乱状態や攻撃的な態度の著しい増加、極端に落ち着きがなくなるなど、パーソナリティが大きく変化する場合もあります。

これらの重度症状は、脳内出血や脳浮腫、血管損傷などの深刻な合併症を示唆している可能性が高く、いずれも救急対応が必要です。特に意識障害や瞳孔の異常、けいれんなどが見られた場合は、ただちに救急車を呼び、専門の医療機関に搬送してもらうことが不可欠です。

子供における閉鎖性頭部外傷の症状

子供、とりわけ幼児や乳児は、自分の症状を的確に言葉で表現できないため、周囲の大人が注意深く観察する必要があります。受傷時に大きな傷が見られなければ、大人が「大したことはない」と判断してしまいがちですが、子供の脳は発達段階にあるため、ダメージが大人以上に深刻な結果をもたらすことも少なくありません。以下は子供が閉鎖性頭部外傷を受けた際に比較的よくみられる症状です。

  • 食欲不振: 急に母乳やミルク、離乳食などを拒否し、普段よりも食事量が極端に落ちることがあります。
  • 活動の変化: いつも楽しんでいる遊びやおもちゃに興味を示さなくなり、ぐったりしている、あるいは逆に落ち着きがなくなるといった行動変化が現れる場合があります。
  • 過敏性の高まり: 些細なことでも激しく泣き続けたり、怒りっぽくなるなど、感情調節が難しくなっている兆候が見られることがあります。
  • 長時間の泣き声: 普段とは異なる甲高い泣き声や、なかなか泣き止まない状態が続くことがあります。
  • 注意力の低下: 反応が鈍くなり、呼びかけに対する応答が遅れる、集中力が極端に落ちるなどの変化がみられることがあります。
  • 睡眠の乱れ: これまでは安定していた睡眠サイクルが急に崩れ、極端に長く寝続けたり、まったく眠れずに夜通し泣いているなど、睡眠習慣に変調が出る場合があります。
  • けいれん: 局所性のけいれんや全身性のけいれんを起こすケースもあります。特に、意識が朦朧としている状態でのけいれんは重症度が高い場合があるため要注意です。
  • 興味・関心の喪失: おもちゃや遊びにほとんど興味を示さなくなる、声かけにも反応が薄くなるといった症状が継続する場合があります。また、ある程度年長の子供では、大人と同じような頭痛や視覚異常、記憶障害、めまいなどがはっきりと現れることがあります。

子供はもともと発達過程に個人差が大きく、外傷と結びつけにくい症状が現れることもあります。そのため「いつもと少し様子が違う」と感じたら、なるべく早めに小児科や脳神経外科などの専門医に相談することが望ましいです。特に、嘔吐やけいれんなど重篤な症状がある場合にはすぐに救急受診を検討しましょう。子供の脳へのダメージは将来的な成長や発達、学習能力、運動能力、情緒など、長期にわたって多方面へ影響する可能性があります。そのため、小さな疑いでも早めの専門的判断を受けることが、後々の大きなリスクを回避するために重要なアクションとなります。

閉鎖性頭部外傷に伴う合併症のリスク

閉鎖性頭部外傷では、外部からの視認が難しいにもかかわらず、脳内では衝撃の結果としてさまざまな合併症が生じる可能性があります。特に注意が必要なのは、脳内出血や脳浮腫、慢性的な頭痛障害、けいれん発作などです。いずれも早期に適切な対応をとらなければ、重篤化したり長期的な後遺症として残る危険性があります。

脳内出血

脳の内部あるいは脳を包む髄膜周辺で出血が起こると、頭蓋骨内の圧力（頭蓋内圧）が急激に上昇することで脳組織が圧迫され、様々な神経症状を招く恐れがあります。とりわけ、硬膜下血腫や硬膜外血腫、脳内出血などは手術を要する重大な病態を引き起こす代表的な合併症です。受傷後しばらくは軽度の症状しか出ていなかったのに、数時間から数日後に急激に悪化するというケースもあり、見た目に変化がない閉鎖性頭部外傷ほど慎重な経過観察が必要です。

脳浮腫

外傷を受けた脳は炎症反応により腫れ（浮腫）を起こしやすくなります。脳浮腫が進行すると、脳内の血流や神経伝達機能に悪影響が及び、最悪の場合は脳ヘルニアという致死的状態に陥る可能性が否定できません。浮腫が顕著になると意識障害やけいれん、瞳孔異常などが急速に進行するため、一度でも重度の頭部外傷が疑われる場合は、しばらく入院してモニタリングを行うことが多いです。

慢性的な頭痛や注意力・認知機能低下

軽度な外傷でも、長期的な頭痛や注意力・記憶力の低下、思考の遅滞などが生じる場合があります。このような症状はポスト・コンカッション症候群などとも呼ばれ、脳の微細な損傷や神経ネットワークの異常が原因とされています。職場や家庭での集中力が落ちたり、作業効率が著しく低下するなどの社会生活上の支障をもたらすことがあり、心理的ストレスとも相まってうつ病や不安障害などの精神疾患が併発するリスクも高まります。

けいれん発作

外傷を受けた脳は興奮しやすくなり、けいれん発作のリスクが上昇するといわれています。特に外傷直後に起こる急性期のけいれんだけでなく、外傷から数か月あるいは数年後に慢性的なてんかん発作として発現することも報告されています。こうした発作は再発性である可能性があり、就業制限や日常生活上の大きな不安要因となるだけでなく、二次的な事故の原因にもなり得るため、継続的な医療フォローが望ましいです。

予防策と注意点

閉鎖性頭部外傷は、時として防ぎようのない外的要因（突然の事故や災害など）によって引き起こされますが、日常生活の工夫や安全対策によってリスクを低減することも可能です。特に、交通事故や転倒などが主要な原因となり得るため、以下のような予防的視点を持つことが大切です。

  • 交通安全に対する意識徹底: シートベルトやチャイルドシートの着用、バイクや自転車利用時のヘルメット着用など、基礎的なルール遵守が自己防衛の第一歩です。
  • 転倒予防: 高齢者や子供の場合、家の中での転倒が意外に多いです。階段や廊下に滑り止めマットを敷く、手すりを設置するなどの住宅環境の整備が有効です。
  • 適度な運動・筋力維持: 足腰の筋力が弱ると転倒リスクが高まります。ウォーキングや軽い筋力トレーニングなど、無理のない範囲で日常的に身体を動かす習慣をつけましょう。
  • 定期的な健康診断・目の検査: 視力やバランス感覚の低下は転倒リスクを増大させます。特に高齢者や持病をお持ちの方は、定期的な健康診断や眼科検査を受けることが推奨されます。
  • スポーツ時のヘルメット着用: スノーボード、スキー、スケートボード、自転車競技など、頭部を強打する可能性のあるスポーツでは、必ず適切なヘルメットを着用しましょう。
  • 子供の揺さぶり防止: 乳幼児をあやす際、強く揺らす行為は厳禁です。少しの手加減がわからず激しく揺さぶることで、深刻な脳損傷を引き起こす危険があります。

受傷後の観察と早期受診の大切さ

閉鎖性頭部外傷の場合、外傷直後に重篤な症状が現れなかったとしても、後になって症状が悪化するケースがよく報告されています。したがって、受傷後の少なくとも24～48時間程度は家族や同居人が様子を見守り、頭痛や吐き気、意識状態などに変化がないか慎重にチェックする必要があります。特に睡眠状態にある人を定期的に起こし、意識レベルや行動の異変を確認することも重要です。

また、職場や学校、スポーツチームなどで頭部外傷が疑われる事態が起きた場合には、「様子見」ではなく早めの医療機関受診を強く推奨します。脳外科専門の病院や総合病院の救急外来では、CTスキャンやMRIといった画像検査で脳の状態を確認し、出血や浮腫が起きていないかを診断してくれます。画像検査で異常がなかったとしても、その後の経過観察が必要なケースは少なくありません。

万が一、症状が悪化したり、明らかな神経学的徴候（片側の手足のまひ、けいれん、極端な意識レベルの変化）が見られた場合は、ただちに救急車を呼ぶなどの対策が必要です。速やかな受診と治療が、その後の神経学的後遺症を軽減し、社会復帰への可能性を高める鍵となります。

閉鎖性頭部外傷における最新の研究動向

近年、外傷性脳損傷に関する研究は国内外で活発に行われており、診断技術や治療戦略の進歩が期待されています。たとえば、画像検査の精度向上に加え、血液バイオマーカーを用いた重症度判定や予後予測の検討が進んでいます。また、回復期リハビリテーションのアプローチや精神面へのサポート体制なども含め、包括的な視点で患者のQOL（生活の質）を向上させる方法が多角的に研究されています。

実際に、2022年にJAMA（Journal of the American Medical Association）で公表された重症外傷性脳損傷の管理に関する無作為化比較試験では、脳内の酸素レベルをモニタリングしながら集中的な管理を行うことで、重篤な合併症を予防し、機能的予後の向上を目指す治療戦略が検証されています（後述の参考文献に追記）。これは日本国内の医療機関でも注目されており、高度医療を提供する施設では既に一定のエビデンスに基づく監視体制の強化が進行中です。

さらに、脳神経外科領域においてリハビリテーション医療は大変重要な位置を占めており、外傷性脳損傷後の神経回路再編成に関する基礎研究や臨床研究も活発化しています。特に、歩行機能や運動機能だけでなく、認知・記憶・言語といった高次脳機能障害の回復をサポートするプログラム開発も多くの医療機関や研究者によって取り組まれているのが現状です。

結論と提言

閉鎖性頭部外傷は、一見すると頭蓋骨に大きな損傷がないため見過ごされやすい外傷ですが、実際には脳内に深刻なダメージを与えうる重大な病態です。大人であれば「少し頭が痛いだけ」「めまいがあるが大丈夫」と自己判断してしまうケースも珍しくなく、子供であればなおさら外からは症状が読み取りにくくなります。しかし、早期に異変を察知し、専門的な診断・治療を行うことで、重篤化や長期的な後遺症を回避する可能性は高まります。

  • 予防策としては交通安全の徹底やヘルメット着用、住宅内環境の整備など、日常生活のあらゆる場面でリスクを最小化する工夫が重要です。
  • 受傷後は外傷の程度に関わらず、少しでも違和感があれば医療機関を受診し、必要に応じて画像検査や経過観察を受けることが望まれます。
  • 子供の場合は特に、受傷後の行動変化や食欲不振、睡眠パターンの乱れ、泣き止まないなどの些細な兆候でも見逃さないよう注意が必要です。
  • 治療・リハビリテーションにおいては、脳機能回復を促すリハビリや再発予防の指導など、多方面からのアプローチが効果的とされています。専門の医療チームやリハビリ専門施設で集中的なケアを受けることで、後遺症を大幅に軽減できる場合もあります。

このように、閉鎖性頭部外傷は「見た目」が軽度だからといって油断できない問題であることを十分に理解しておきましょう。万が一、事故や転倒などで頭部に強い衝撃を受けた場合、自覚症状が軽い段階からこまめに自己観察や周囲のサポートを行い、深刻な兆候が表れたらすぐに医療機関へ連絡する姿勢が大切です。

医療機関を受診する際の心構え

実際に頭部外傷を受け、医療機関を受診する際には、以下の点を心がけるとスムーズに診察・治療が行われやすくなります。

  • 受傷時の状況を正確に伝える: 事故や転倒の場所、衝撃の強さ、転倒角度、意識があったかどうかなど、できるだけ詳しく医師に説明しましょう。
  • 現在の症状を具体的に整理: 頭痛・吐き気・めまい・視覚異常・けいれんの有無などを時系列で伝えると、医療者が重症度や経過を把握しやすくなります。
  • 周囲から見た変化を共有: 自分では気づけない言動や表情の変化も、第三者の目から見れば顕著な場合があります。家族や友人の観察結果を合わせて伝えるとよいでしょう。
  • 以前の病歴や服用薬: 高血圧や心疾患、糖尿病などの既往症があれば、頭部外傷の予後に影響する場合があります。また、ワーファリン等の抗凝固薬を服用している方は出血リスクが高まるため、必ず医師に申告してください。
  • 疑問点を積極的に質問: 検査や治療の意図がわからないまま進行すると、不安が募りやすくなります。納得したうえで治療を受けるためにも、遠慮せず質問しましょう。

リハビリテーションと社会復帰

重症の頭部外傷を受けた場合、幸い手術や急性期治療がうまくいっても、長期的なリハビリテーションが必要となるケースは少なくありません。運動機能や言語機能だけでなく、注意力・記憶力・判断力といった認知機能の回復を目指すリハビリプログラムは、患者のQOL向上につながる重要な手段です。

  • 急性期リハビリ: 受傷直後や手術直後の段階から、ベッド上での基本的なリハビリを開始する場合があります。早期に身体を動かすことで、廃用症候群や血栓症のリスクを低減するほか、脳の可塑性を高める効果が期待できます。
  • 回復期リハビリ: 病棟や専門施設での集中的な訓練を行い、日常生活動作（ADL）の改善を図ります。歩行訓練、作業療法、言語療法など、患者の障害部位や回復度に合わせて多面的なアプローチが実施されます。
  • 在宅・外来リハビリ: ある程度回復した後も、通院や在宅で継続的なリハビリを行うことが多いです。家族や介護者の協力も欠かせません。自主トレーニングの重要性や、社会復帰・職場復帰に向けた具体的なプランニングが進められます。
  • 心理的サポート: 外傷後のストレスやうつ状態がリハビリ意欲に影響する場合もあります。臨床心理士や精神科医との連携により、心のケアを並行して行うことで、リハビリ効果を最大限に引き出すことが可能になります。

再発予防と安全対策の継続

外傷性脳損傷を経験した方は、再び頭部に衝撃を受けると、より大きなダメージを受けるリスクがあるといわれています。特にスポーツや日常生活での転倒には引き続き注意を払う必要があります。再発予防の視点で以下のような対策を継続することをおすすめします。

  • 安全運転と保護具の着用: すでに受傷経験のある人は、ヘルメットやシートベルト、チャイルドシートなどの使用をより厳格に守ることが重要です。
  • 住環境の再点検: 一度転倒事故が起きた場所の再整備（段差解消、手すり設置、滑り止め設置など）を行い、同じ原因で再び転倒しないようにしましょう。
  • 運動習慣の適正化: リハビリで改善した筋力やバランス感覚を維持するためにも、適度な運動を継続的に行うことが大切です。過度に激しい運動は避け、医師やリハビリスタッフと相談しながらプログラムを調整します。
  • 定期検診とフォローアップ: 退院後や治療終了後でも、定期的に脳神経外科やリハビリテーション科を受診し、後遺症や再発リスクについて専門家の意見を仰ぐことで安心して日常を送ることができます。

本記事の情報の活用と注意点

本記事で紹介した内容は、外傷性脳損傷、とりわけ閉鎖性頭部外傷に関する一般的な知識をまとめたものです。日本の読者の皆様の生活習慣や医療環境にもマッチするように配慮した解説を行っておりますが、個々の症例には大きなばらつきがあります。実際の治療方針は、患者さんの年齢や全身状態、既往歴、受傷のメカニズムなどを包括的に考慮して決定されますので、疑わしい症状や不安がある場合は迷わず医療機関を受診してください。

また、近年ではインターネット上にさまざまな健康情報が氾濫していますが、すべてが根拠に基づいているとは限りません。誤った情報に基づいて自己判断した結果、治療の時期を逸してしまうケースも残念ながら少なくありません。本記事も含め、あくまで「情報収集の一つ」として捉え、最終的な診断・治療は医師など有資格の専門家に委ねることを強く推奨いたします。

まとめ：専門家のアドバイスを大切に

  • 早期発見と早期受診: 外見上の損傷が軽微でも、閉鎖性頭部外傷は重大な合併症につながるリスクがあるため、異常を感じた時点で迅速に医療機関を受診することが重要です。
  • 予防のための日常対策: シートベルトやヘルメットなど、基本的な安全対策を習慣化し、さらに転倒の危険がある場所の整備や適度な運動などを実践しましょう。
  • 家族や周囲の協力: 子供や高齢者の場合、本人が症状を訴えられない、あるいは自覚できないケースがあります。周囲が普段との違いを敏感に察知できるよう、情報を共有し、観察する体制づくりが求められます。
  • リハビリと長期フォロー: 急性期の治療だけでなく、リハビリテーションによる認知機能や運動機能の回復、精神的サポート、再発予防策の継続が、その後の生活の質を大きく左右します。
  • 信頼できる情報源の利用: 医学的根拠に基づいた情報を優先的に活用し、疑問点があれば必ず医師に相談しましょう。

最終的には、閉鎖性頭部外傷に限らず、健康問題は専門家の判断と本人・家族の協力体制が不可欠です。本記事が皆様の日常生活における安全意識の向上と、もしもの時の適切なアクションの参考になることを願っています。

本記事はあくまでも一般的な情報提供を目的としており、個々の診断や治療方針を示すものではありません。外傷性脳損傷が疑われる場合は、必ず医師をはじめとする専門家に相談し、適切な評価と治療を受けてください。

参考文献

（本記事の内容は上記のような医学的・学術的情報源をもとに作成されていますが、個々の症状や病状に合った判断には必ず専門医の診断が必要です。心配な方は早めに受診し、専門家のアドバイスを受けてください。）

0 Shares
この記事はお役に立ちましたか？
はいいいえ