【科学的根拠に基づく】腰痛と頻尿が同時に起こる原因は?危険なサイン、何科を受診すべきか徹底解説
腎臓と尿路の病気

【科学的根拠に基づく】腰痛と頻尿が同時に起こる原因は?危険なサイン、何科を受診すべきか徹底解説

腰痛と頻尿。一見すると関係なさそうな二つの症状が同時に現れると、体に何か重大な異常が起きているのではないかと心配になるものです。厚生労働省の「国民生活基礎調査」によると、腰痛は日本人が抱える自覚症状の中で長年、男性で1位、女性で2位を占める「国民病」です1。それに頻尿が加わると、その不安はさらに増大します。この記事では、日本の主要な医学会の診療指針など、最新の医学的知見に基づき、腰痛と頻尿が同時に起こる原因を深く掘り下げ、医療機関を受診する際の具体的な指針を提示します。この記事を読み終える頃には、ご自身の症状を客観的に理解し、次に取るべき適切な行動が明確になっていることでしょう。

この記事の科学的根拠

この記事は、最高品質の医学的根拠として明確に引用された情報源にのみ基づいています。提示される医学的指導の信頼性を担保するため、以下に本記事が依拠する主要な情報源とその関連性を示します。

  • 日本整形外科学会/日本腰痛学会監修『腰痛診療ガイドライン2019』: 危険な腰痛を見分けるための「レッドフラッグ」(危険信号)に関する記述は、主にこの診療指針に基づいています。日本の腰痛診療における標準的な指針です2
  • 日本泌尿器科学会/日本排尿機能学会編集『夜間頻尿診療ガイドライン』: 頻尿の原因分類や、客観的な評価方法である「排尿日誌」に関する推奨は、この専門的な診療指針を参考にしています3
  • 日本泌尿器科学会他『尿路結石症診療ガイドライン』: 尿路結石が引き起こす特有の痛みと頻尿のメカニズムに関する解説は、このガイドラインに基づいています4
  • 日本整形外科学会/日本脊椎脊髄病学会監修『腰部脊柱管狭窄症診療ガイドライン』: 脊椎の問題が排尿障害を引き起こす機序については、このガイドラインで詳述されている知見を基に解説しています5

要点まとめ

  • 腰痛と頻尿の同時発生は、主に「泌尿器系の病気」と「脊椎・神経系の病気」という二つの異なる経路から起こります。
  • 突然の尿閉(尿が出ない)、足の麻痺、会陰部の感覚消失、悪寒を伴う高熱などの「危険なサイン(レッドフラッグ)」は、救急受診が必要な緊急事態の可能性があります。
  • 痛みの性質(鋭いか鈍いか)、場所(脇腹か腰の中心か)、伴う症状(発熱、血尿、足のしびれなど)によって、受診すべき診療科(泌尿器科または整形外科)の目安を判断することができます。
  • 原因は多岐にわたるため、自己判断は危険です。症状が気になる場合は、必ず医療機関を受診し、専門医による正確な診断を受けることが極めて重要です。

見逃してはいけない危険なサイン(レッドフラッグ)

何よりもまず、ご自身の状態が緊急を要するものかどうかを判断することが重要です。腰痛と頻尿に加え、以下の症状が一つでも当てはまる場合は、重篤な疾患の可能性があり、夜間や休日であっても、ためらわずに救急外来を受診するか、救急車を呼ぶことを強く推奨します。これらは、日本整形外科学会などが定める『腰痛診療ガイドライン』でも「レッドフラッグ」として警告されている危険な兆候です67

表1:緊急受診が必要な「レッドフラッグ」チェックリスト
症状 必要な対応
突然、尿が全く出なくなった(尿閉) 直ちに救急外来を受診するか、救急車を要請してください。
お尻や股間の感覚がなくなった、または著しく鈍い(サドル麻痺) 直ちに救急外来を受診するか、救急車を要請してください。
自分の意思とは関係なく尿や便が漏れてしまう(尿・便失禁) 直ちに救急外来を受診するか、救急車を要請してください。
両足の力が急に入らなくなった、またはしびれが急速に悪化・拡大している 直ちに救急外来を受診するか、救急車を要請してください。
悪寒や震えを伴う38℃以上の高熱と、激しい腰痛がある 速やかに医療機関(救急外来または日中の診療所)を受診してください。
これまでに経験したことのないような、突然発症した激しい腰・脇腹の痛み 速やかに医療機関(救急外来または日中の診療所)を受診してください。

上記のレッドフラッグに該当しない場合でも、症状が続く、あるいは悪化するようであれば、専門医の診察を受けることが重要です。

腰痛と頻尿を引き起こす二大原因

腰痛と頻尿の関連性を理解するためには、原因が大きく二つの異なる経路、すなわち「泌尿器系の病気」と「脊椎・神経系の病気」から生じることを知るのが有効です。ここでは、それぞれの経路に属する代表的な疾患について、なぜ二つの症状が同時に起こるのか、その仕組み(病態生理)と共に詳しく解説します8

原因①:泌尿器系の病気

腎臓、尿管、膀胱、前立腺といった泌尿器系の臓器は、背骨の前に位置しています。これらの臓器に炎症や閉塞などの問題が起きると、その痛みが関連痛として腰部や背中に感じられることがあります9。特に、腎臓や尿管は腰に近いため、その病変は腰痛として認識されやすいのです。

腎盂腎炎(じんうじんえん)

メカニズム: 腎盂腎炎は、多くの場合、膀胱炎の原因菌が尿管を逆流して腎臓に到達し、感染と炎症を引き起こす病気です10。炎症によって腎臓が腫れ上がり、その外側を覆う腎被膜という膜が引き伸ばされることで、患側の脇腹から背中にかけて強い痛みが生じます11。そして、原因となった膀胱炎の症状として頻尿がみられます。日本感染症学会の指針でも、重要な尿路感染症として位置づけられています12

主要症状: 典型的な症状は、①38℃以上の高熱、悪寒、震え、②片側の腰背部痛(背中を叩くと痛みが響く「叩打痛」が特徴的)、③頻尿、排尿時痛、尿の濁りといった先行する膀胱炎症状、の三つです10。特に女性は尿道が短いため細菌が侵入しやすく、男性に比べて腎盂腎炎になりやすい傾向があります13

尿路結石症(にょうろけっせきしょう)

メカニズム: 腎臓で作られた結石が尿管に下降し、途中で詰まってしまうと、尿の流れがせき止められます。これにより結石より上流の尿管や腎臓の内圧が急激に高まり(水腎症)、腎被膜が急激に引き伸ばされることで、激烈な痛み(疝痛発作)が生じます9。この痛みは「痛みの王様(King of Pains)」と形容されるほど強烈です。また、結石が膀胱の近くまで落ちてくると、膀胱壁を直接刺激するため、頻尿や残尿感といった症状が出現します14

主要症状: 突発的に発症する、片側の脇腹や背中の極めて激しい痛みが最大の特徴です。この痛みは間欠的で、数分から数時間続く波のように押し寄せ、あまりの痛みにじっとしていられなくなります。痛みは下腹部や鼠径部、男性では精巣にまで放散することがあります。血尿(尿に血が混じること)や、吐き気・嘔吐を伴うことも少なくありません9。日本や欧米の泌尿器科学会ガイドラインでも、診断と治療法が標準化されています415

前立腺炎(ぜんりつせんえん)

メカニズム: 男性の骨盤の深い部分にある前立腺に炎症が起こる病気です。前立腺の炎症が周囲の神経や筋肉に波及し、関連痛として腰部、下腹部、会陰部(股間)、太ももの内側などに鈍い痛みや不快感を引き起こします16。同時に、炎症による膀胱頸部(膀胱の出口)への刺激が、頻尿、尿意切迫感、排尿時痛といった排尿症状の原因となります。日本泌尿器科学会の『男性下部尿路症状・前立腺肥大症診療ガイドライン』でも重要な疾患として扱われています17

主要症状: 急性細菌性前立腺炎では発熱や強い排尿困難を伴いますが、多くは慢性の経過をたどり、腰や下腹部の鈍痛、会陰部の不快感、頻尿、残尿感、射精時痛など、多彩で漠然とした症状が続きます16

膀胱炎(ぼうこうえん)

メカニズム: 通常、単純な膀胱炎だけで強い腰痛が起こることは稀ですが、炎症が非常に強い場合や、痛みが関連痛として腰に感じられることがあります9。しかし、膀胱炎において腰痛を伴う場合に最も注意すべきは、感染が腎臓まで及んで腎盂腎炎に進行している可能性です18。膀胱炎の症状に加えて腰痛や発熱が出てきた場合は、単なる膀胱炎ではないと考え、速やかに医療機関を受診する必要があります。

主要症状: 頻尿、残尿感、排尿の終わり際の痛み(排尿終末時痛)、尿の濁りなどが典型的な症状です19

原因②:脊椎・神経系の病気

腰椎(腰の骨)の中には、脊柱管という神経の通り道があります。この中を、足や膀胱・直腸の機能を支配する重要な神経の束「馬尾(ばび)」が通っています20。加齢による変形や椎間板の突出などによってこの脊柱管が狭くなり、馬尾神経が圧迫されると、腰痛や足のしびれといった整形外科的な症状と、頻尿や尿閉といった泌尿器科的な症状が同時に出現することがあります。

腰部脊柱管狭窄症(ようぶせきちゅうかんきょうさくしょう)

メカニズム: 主に加齢に伴う腰椎や椎間板、靭帯の変性によって、神経の通り道である脊柱管が物理的に狭くなり、内部の馬尾神経や神経根が圧迫される病気です21。神経が圧迫されることで血流が悪くなり、腰痛や下肢の症状、そして排尿に関する問題が生じます。『腰部脊柱管狭窄症診療ガイドライン』においても、排尿障害は重要な症状の一つとされています5

主要症状: 最大の特徴は「間欠跛行(かんけつはこう)」です。これは、しばらく歩いていると足に痛みやしびれ、脱力感が生じて歩行が困難になるものの、少し前かがみになってしゃがみこんで休むと症状が軽快し、また歩けるようになるという特有の症状です21。排尿障害としては、神経の慢性的な圧迫により膀胱の知覚が鈍くなったり、逆に過敏になったりすることで、頻尿、残尿感、尿意切迫感、尿の勢いの低下などが起こります21

腰椎椎間板(ようついついかんばん)ヘルニア

メカニズム: 腰椎の間にあるクッションの役割を果たす椎間板の一部が、後方に飛び出して神経を圧迫する病気です。多くの場合、片側の神経根を圧迫し、お尻から足にかけての激しい痛み(坐骨神経痛)を引き起こしますが、まれに椎間板が中央に大きく突出すると、馬尾神経全体を圧迫することがあります20。この状態は次に述べる馬尾症候群につながる可能性があり、緊急の対応が必要です。

主要症状: 急性に発症する腰痛と、片側の下肢に放散する痛みが典型的です。排尿・排便障害を伴う場合は、馬尾症候群への移行を強く疑います。

馬尾症候群(ばびしょうこうぐん)

メカニズム: 上記の腰椎椎間板ヘルニアや腰部脊柱管狭窄症などが重篤化したり、あるいは外傷や腫瘍によって、馬尾神経全体が高度に圧迫された状態です。これは放置すると回復不能な後遺症を残す可能性があるため、整形外科領域における最も緊急性の高い病態の一つとされています2223

主要症状: 冒頭の「レッドフラッグ」で挙げた症状そのものです。すなわち、激しい腰痛や下肢痛に加えて、①両足の麻痺や広範囲のしびれ、②会陰部の感覚がなくなるサドル麻痺、③そして尿が出せなくなる「尿閉」や、逆に尿や便が意図せず漏れてしまう「失禁」といった、重篤な排尿・排便障害を特徴とします23。海外の研究でも、手術のタイミングが予後を左右することが指摘されています2425

鑑別診断のまとめ

ここまで解説してきた疾患を一覧表にまとめました。ご自身の症状と照らし合わせ、どの可能性が考えられるか参考にしてください。ただし、これはあくまで目安であり、正確な診断は必ず医師による診察が必要です。

表2:腰痛と頻尿をきたす主な疾患の鑑別診断マトリックス
考えられる病気 主な原因系統 腰痛の特徴 排尿症状の特徴 その他の代表的な症状 主な診療科
腎盂腎炎 泌尿器系 片側の脇腹~背中の痛み(叩くと響く)、持続的 頻尿、排尿時痛、残尿感、尿の濁り 38℃以上の高熱、悪寒・震え、吐き気 泌尿器科、内科
尿路結石症 泌尿器系 突然の激しい片側の脇腹の痛み(波がある)、下腹部等への放散痛 頻尿、残尿感(結石が膀胱近くにある場合) 血尿、吐き気・嘔吐、落ち着きがなくなる 泌尿器科
前立腺炎 泌尿器系 下腹部、会陰部、腰の鈍い痛みや不快感 頻尿、残尿感、排尿時痛、尿勢低下 射精時痛、倦怠感、発熱(急性の場合) 泌尿器科
腰部脊柱管狭窄症 脊椎・神経系 歩行時に悪化する腰痛(下肢症状が主体のことも多い) 頻尿、残尿感、尿意切迫感、尿勢低下 間欠跛行(歩くと足がしびれ、前屈みで軽快) 整形外科
馬尾症候群 脊椎・神経系 激しい腰痛、下肢痛 尿が出ない(尿閉)、尿・便がもれる(失禁) 両足の麻痺、会陰部の感覚消失(サドル麻痺) 救急科(緊急手術)

何科を受診すべきか?具体的な行動指針

症状の原因を探り、適切な治療を受けるためには、正しい診療科を選ぶことが重要です。ここでは、受診に向けた準備と、最適な診療科を選ぶための具体的なガイドを提示します。

受診前の準備:症状を正確に伝えるために

診察をスムーズに進め、医師が正確な診断を下すために、事前にご自身の症状を整理しておくことをお勧めします。以下の点をメモしておくと良いでしょう。

  • いつから: 腰痛と頻尿はいつ頃から始まりましたか?
  • 痛みの性質: 痛みは「ズキズキと鋭い」のか、「ズーンと鈍い」のか。「常に痛い」のか、「痛みの波がある」のか。
  • 悪化・軽快因子: 何をすると痛みが強まりますか?(例:歩く、じっとしている、体をひねる)。逆に、どんな姿勢をとると楽になりますか?(例:前かがみ、横になる)。
  • その他の症状: 発熱、血尿、足のしびれや力の入りにくさ、吐き気など、他に気になる症状はありますか?

特に頻尿の評価において、『夜間頻尿診療ガイドライン』では「排尿日誌」の記録が強く推奨されています326。これは、数日間にわたり、「いつ(時刻)」「どれくらいの量(排尿量)」「どんな水分をどれだけ飲んだか(水分摂取量)」を記録するものです。これにより、ご自身の排尿パターンを客観的に把握でき、医師にとって非常に貴重な診断情報となります。

最適な診療科の選び方

「この症状は泌尿器科?それとも整形外科?」というのは、多くの人が抱く最大の疑問です。以下の原則とフローチャートを参考に、ご自身の症状に最も合った診療科を選びましょう27

基本原則:

  • 泌尿器科: 尿をつくり、運び、溜めて、排出する一連の臓器(腎臓、尿管、膀胱、尿道)と、男性生殖器(前立腺、精巣など)の専門家です。排尿時の痛み、血尿、発熱などを伴う場合は、まず泌尿器科が考えられます27
  • 整形外科: 骨、関節、筋肉、靭帯、そしてそれらを支配する脊椎・脊髄神経の専門家です。体を動かしたときの痛み、足のしびれや麻痺などを伴う場合は、整形外科が適しています27
  • 内科・総合診療科: どちらか判断に迷う場合や、症状がはっきりしない場合は、まず身近なかかりつけの内科や総合診療科で相談するのも良い選択です。初期診断を行い、必要に応じて適切な専門科へ紹介してくれます27

診療科選択の目安:

  1. まず、冒頭の「レッドフラッグ」に当てはまる症状がないか確認します。あれば、直ちに救急外来へ向かってください。
  2. レッドフラッグがない場合、次の質問に進みます。
  3. 質問:痛みの特徴と伴う症状はどれに近いですか?
    • A) 脇腹の激痛で波があり、血尿や吐き気を伴う。または、高熱や悪寒、排尿時痛がある。
      泌尿器科の可能性が高いです(尿路結石や腎盂腎炎が疑われます)109
    • B) 歩くと足がしびれて痛くなり、前かがみで休むと楽になる。腰の痛みよりも足の症状が辛い。
      整形外科の可能性が高いです(腰部脊柱管狭窄症などが疑われます)20
    • C) 【男性の場合】下腹部や股間のあたりに鈍い痛みや不快感が続く。
      泌尿器科の可能性が高いです(前立腺炎が疑われます)16
  4. 上記のいずれにもはっきり当てはまらない、または症状が軽度で判断に迷う場合は、まずは内科または総合診療科で相談することをお勧めします。

病院で行われる主な検査

受診後の流れを事前に知っておくことで、安心して診察に臨むことができます。各科で行われる代表的な検査は以下の通りです。

  • 泌尿器科: 尿検査(血尿、細菌、炎症の有無を調べる基本の検査)、血液検査(炎症反応や腎機能を確認)、超音波(エコー)検査(腎臓や膀胱、前立腺の形や結石の有無を調べる)、CT検査(結石や炎症の程度をより詳細に評価する)などが行われます9
  • 整形外科: 専門医による問診と詳細な身体診察(筋力、感覚、反射などを調べる神経学的所見)が最も重要です。その上で、レントゲン(X線)検査(骨の変形や位置異常を確認)、CT検査、MRI検査(神経の圧迫状態を詳細に描出するのに最も有用)などが適宜行われます8

よくある質問

腰痛と頻尿がありますが、熱や麻痺はありません。急いで病院に行くべきですか?

熱や麻痺といった「レッドフラッグ」症状がない場合、直ちに救急車を呼ぶほどの緊急性はない可能性が高いです。しかし、腰痛と頻尿が同時に起きていること自体が、体からの何らかのサインです。症状が持続したり、日常生活に支障をきたしたりしている場合は、自己判断で放置せず、日中の診療時間内に、本記事の「診療科選択の目安」を参考にご自身に合った診療科を受診してください。早期に原因を特定し、治療を開始することが重要です。

「排尿日誌」とは何ですか?どうやって書けばいいですか?

排尿日誌とは、ご自身の排尿状況を客観的に記録するもので、頻尿の診断に非常に役立つツールです。日本泌尿器科学会のガイドラインでも推奨されています3。ノートや専用の記録用紙に、24時間(あるいは2〜3日間)、①排尿した時刻、②排尿した量(市販の計量カップなどを使用)、③飲んだ水分の種類と量を記録します。これにより、1日の総尿量、排尿回数、1回あたりの平均尿量などが正確に分かり、医師が頻尿の原因(水分摂取過多、膀胱容量の低下、夜間多尿など)を判断する上で重要な手がかりとなります。

ストレスが原因で腰痛と頻尿が起こることはありますか?

直接的な原因として特定するのは難しいですが、ストレスはさまざまな身体症状に影響を与えうることが知られています。強いストレスは筋肉の緊張を高め、腰痛を悪化させることがあります。また、自律神経のバランスが乱れることで、膀胱が過敏になり頻尿(過活動膀胱など)を引き起こす可能性も指摘されています。ただし、これらの症状がある場合、まずは本記事で解説したような器質的な疾患(感染症や神経圧迫など)がないことを確認することが最優先です。検査で明らかな異常が見つからない場合に、初めてストレスなどの心因性の要因が考慮されるのが一般的です。

結論

腰痛と頻尿が同時に発生することは、身体からの重要なサインであり、決して無視すべきではありません。本記事で詳述したように、その原因は腎盂腎炎や尿路結石といった「泌尿器系」の疾患から、腰部脊柱管狭窄症や馬尾症候群といった「脊椎・神経系」の疾患まで、多岐にわたります。

最も重要なことは、発熱や麻痺などの「レッドフラッグ」を見逃さず、該当する場合にはためらわずに救急医療機関を受診することです。それ以外の状況であっても、痛みの性質や伴う症状を手がかりに、適切な専門医に相談することが、不安を解消し、健康を取り戻すための最も確実な第一歩となります。

この記事が、あなたの抱える症状への理解を深め、適切な医療へとつながる一助となることを心から願っています。

免責事項本記事は、医学的情報の提供を目的としており、専門的な医学的アドバイス、診断、治療に代わるものではありません。健康上の問題や治療に関する決定を行う際は、必ず資格を有する医療専門家にご相談ください。

参考文献

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