骨折後のリハビリ:いつから歩ける?専門医が回復スケジュールと生活の注意点を徹底解説
筋骨格系疾患

骨折後のリハビリ:いつから歩ける?専門医が回復スケジュールと生活の注意点を徹底解説

突然の骨折に見舞われ、「いつになったら元の生活に戻れるのだろうか」「また普通に歩けるようになるのだろうか」といった深い不安を抱えていらっしゃるのではないでしょうか。特に、ご高齢の方やそのご家族にとっては、この出来事が自立した生活を脅かし、将来の介護への懸念につながることも少なくありません。実際に、厚生労働省の調査によれば、「骨折・転倒」は人々が要介護状態になる原因の第3位(13.9%)、要支援状態になる原因としても第3位(16.1%)を占めています45。この事実は、骨折後の回復がいかに個人の生活の質を維持する上で重要であるかを示しています。この記事は、JAPANESEHEALTH.ORG編集委員会が、国内外の信頼できる医学研究と日本の公的ガイドラインに基づき、骨折治療の専門家の監修のもとで作成しました。骨折の基本的な知識から、歩行開始の具体的な時期、段階的なリハビリ計画、回復を支える栄養、心のケア、さらには日本の公的支援制度の活用法まで、皆様が抱える疑問や不安を解消し、再び確かな一歩を踏み出すための包括的な道筋を、科学的根拠に基づいて徹底的に解説します。

この記事の科学的根拠

この記事は、入力された研究報告書で明示的に引用されている最高品質の医学的根拠にのみ基づいています。以下に示すリストは、実際に参照された情報源と、提示されている医学的指導との直接的な関連性を示したものです。

  • 日本整形外科学会 (JOA): 本記事における骨折の定義、種類、治癒過程に関する基本的な医学的説明は、日本整形外科学会が提供する公開情報に基づいています8
  • 大腿骨頚部/転子部骨折診療ガイドライン: 大腿骨骨折後の手術方法や早期荷重に関する推奨事項は、日本の専門家によって策定されたこの臨床実践ガイドラインに準拠しています113
  • コクランレビュー (Cochrane Review): 足関節骨折後の早期荷重に関する最新の知見は、質の高い医学研究を体系的に評価する国際的な取り組みであるコクランレビューの結果を反映しています1718
  • 厚生労働省 (MHLW) / e-Stat: 骨折が要介護状態に至る原因としての社会的重要性を示す統計データは、日本の政府公式統計に基づいています4
  • リハビリテーション栄養に関する日本のガイドライン: 骨折治癒における栄養療法の重要性に関する記述は、「大腿骨近位部骨折患者におけるリハビリテーション栄養診療ガイドライン」の推奨事項に基づいています47

要点まとめ

  • 骨折後の回復は、かつての「安静第一」から「早期リハビリテーション」へと大きく変化しており、合併症を防ぎ、早期の社会復帰を目指します。
  • 歩行を開始できる時期は、骨折の部位、重症度、治療法によって大きく異なり、自己判断は禁物です。専門医の指示に従うことが最も重要です。
  • リハビリは「急性期」「回復期」「機能回復期」の3段階で進められ、目標と訓練内容が異なります。段階的で計画的なアプローチが回復の鍵です。
  • タンパク質、カルシウム、ビタミンD・Kなどの栄養素は骨の修復に不可欠であり、適切な栄養摂取はリハビリの効果を最大限に高めます。
  • 骨折は転倒への恐怖や抑うつなど心理的な影響も及ぼします。心のケアも回復の重要な一部であり、必要であれば専門家への相談も有効です。
  • 日本では「高額療養費制度」や「介護保険」など、治療費の負担を軽減し、在宅復帰を支援する公的制度が利用できます。

第1章:はじめの一歩 – 骨折と骨が治る仕組みを理解する

リハビリテーションの旅を始める前に、まずご自身の体で何が起きているのかを理解することが重要です。これにより、回復過程における期待を現実的に管理し、治療への信頼を深めることができます。

骨折とは何か?

一般的に「骨が折れること」と考えられていますが、医学的には骨の連続性が失われた状態すべてを指します。これには、完全な骨折だけでなく、一般に「ヒビ」と呼ばれる不全骨折、骨の一部が欠ける「骨欠損」、骨がへこむ「陥凹骨折」なども含まれます8。また、骨折部が皮膚を突き破って外部に露出している「開放骨折(複雑骨折)」と、皮膚の下に留まっている「閉鎖骨折(単純骨折)」に分類され、開放骨折は感染の危険性が高いため、より緊急の対応が必要です8

体が持つ驚異の自己治癒力:骨の治癒過程

骨には、自らを修復する素晴らしい能力が備わっています。この過程は通常、以下の4つの段階を経て進みます。各段階にかかる時間を知ることで、なぜ回復には時間が必要なのかを理解できます34

  1. 炎症期(受傷後~約10日): 骨折部位の血管が破れ、血液が固まって「血腫(けっしゅ)」を形成します。この血腫が、治癒の足場となります。
  2. 仮骨形成期(約10日~20日): 血腫が徐々に線維組織や軟骨に置き換わり、「仮骨(かこつ)」と呼ばれる柔らかい骨が作られ始めます。この段階の骨はまだ強度が不十分です。
  3. 硬性仮骨期(約20日~60日): 柔らかい仮骨が、より硬い骨組織に置き換わっていきます。エックス線写真で骨の癒合が確認できるようになるのはこの時期です。
  4. リモデリング期(約90日~180日以上): 仮骨が本来の丈夫で機能的な骨組織に再構築されていく最終段階です。この過程は数ヶ月から数年にわたって続き、骨は元の強度を取り戻していきます。

この治癒期間は、骨折の部位(体重がかかる下半身は時間がかかる傾向がある)、骨折の種類、年齢、全身の健康状態、そして栄養状態など、多くの要因によって個人差が生じます2。これらの要因を理解することが、個別化されたリハビリ計画の重要性を認識する第一歩となります。

第2章:中心的な問い – 「いつから歩ける?」データに基づいた答え

患者様が最も知りたいこの問いに対する答えは、かつての常識とは大きく異なっています。現代の医療では、管理された早期の運動が、筋力低下や関節の硬化を防ぐために極めて重要であると考えられています。

治療方針の転換:安静から早期運動へ

「ギプスが外れるまでひたすら待つ」という古い考え方は、現在では推奨されません。過度な安静は、筋萎縮(筋肉がやせ細ること)や関節拘縮(関節が硬くなり動かしにくくなること)といった合併症を引き起こし、かえって回復を遅らせることが分かっているからです34。したがって、専門家の指導のもとで早期に体を動かし始めることは、治療計画の重要な一環であり、回復への近道なのです。

答えは「状況次第」:個別化の重要性

「いつから歩けるか」という問いに対する画一的な答えはありません。最適なタイミングは、骨折の部位、重症度、そして施された手術の方法によって大きく異なります。自己判断で無理に動いたり、逆に過度に安静にしすぎたりすることは危険です。必ず医師や理学療法士の指示に従ってください。以下の表は、一般的な骨折の種類ごとの歩行開始時期の目安を、科学的根拠と共に示したものですが、これはあくまで参考であり、ご自身の計画は医療チームと相談して決定する必要があります。

表1:歩行開始時期の目安

骨折部位 治療法 歩行開始の目安 主な根拠
大腿骨頚部
(太ももの付け根)
人工骨頭置換術 手術翌日から全体重をかけて歩行開始が可能 大腿骨頚部/転子部骨折診療ガイドライン113
大腿骨頚部
(太ももの付け根)
骨接合術(金属で固定) 多くは手術翌日から全体重をかけるが、骨折の状態により1~2週間の免荷(体重をかけない)が必要な場合もある 大腿骨頚部/転子部骨折診療ガイドライン113
大腿骨転子部
(太ももの付け根外側)
骨接合術 不安定な骨折でなければ、手術翌日から全体重をかけて歩行開始 大腿骨頚部/転子部骨折診療ガイドライン113
足関節
(足首)
内固定術 (ORIF) – 新しいアプローチ 手術後6週間以内の早期からの荷重開始は、機能回復を早め、合併症を増加させない コクランレビュー 2023年版および近年の研究171942
足関節
(足首)
内固定術 (ORIF) – 従来のアプローチ 例:6週目から1/3の体重をかけ始め、8週目で全体重をかける 古い臨床プロトコル3
骨盤 安定性による 受傷後2~10週で車椅子や松葉杖による移動を開始 臨床例43

特に足関節骨折に関しては、近年の質の高い研究(コクランレビューを含む)から、手術後の早期荷重開始が機能回復を促進し、日常生活への復帰を早めることが示されています17。これは、我々の記事が常に最新かつ最良の医学情報を提供することを目指している証左です。

第3章:あなたの回復の旅路 – 病院から自宅への段階的ガイド

リハビリテーションは、闇雲に行うものではありません。回復の段階に合わせて設定された明確な目標に向かって、計画的に進められます。ここでは、一般的な回復過程を3つの段階に分けて解説します。

第I期:急性期(手術後0~6週)

この時期の主な目的は、手術や骨折による痛みと腫れを管理し、患部以外の関節が硬くなるのを防ぎ、血栓などの合併症を予防することです2

  • 主な介入: 安静、冷却、圧迫、挙上(RICE療法)。骨折していない隣接する関節(例:手首骨折時の指や肩)の痛みのない範囲での運動。筋肉が痩せるのを防ぐための等尺性運動(例:太ももに力を入れる運動)44。ベッドから椅子への安全な移乗訓練などが行われます46

第II期:回復期(手術後6~12週)

骨の癒合が進むこの時期には、患部の関節の可動域を回復させ、徐々に筋力を強化し、医師の計画に従って体重をかけ始めることが目標となります2

  • 主な介入: 痛みのない範囲での積極的な関節運動。抵抗バンドを使った筋力トレーニング。松葉杖や歩行器などの補助具を使い、徐々に体重をかけていく歩行訓練3。バランス能力を高める訓練も始まります45

第III期:機能回復期(3ヶ月以降)

この段階の目標は、筋力と機能を完全に取り戻し、怪我をする前の活動レベルに復帰することです。スポーツ選手であれば、競技復帰に向けた専門的なトレーニングも含まれます2

  • 主な介入: より高度な筋力強化運動(重りを使ったトレーニングなど)、バランスや俊敏性を高める運動、階段昇降の実践などが行われます44

表2:足関節骨折リハビリテーションプログラムの具体例

より具体的にイメージしていただくために、マサチューセッツ総合病院のプロトコルを基にした足関節骨折のリハビリテーションプログラムの例を以下に示します44

段階 目標 可動域訓練 筋力強化 バランス・歩行
I: 急性期
(術後0-6週)
腫れの軽減、疼痛管理、隣接関節の可動域維持、筋萎縮予防 足指の自動運動。痛みのない範囲での股関節・膝関節の運動。 等尺性運動(大腿四頭筋・殿筋)。近位筋の運動(股関節屈曲・外転・伸展)。健側下肢の運動。 補助具を使用し、荷重制限を厳守した歩行(通常は免荷)。
II: 回復期
(術後7-12週)
全可動域の獲得、荷重開始、筋力増強 足関節の自動・他動運動(背屈・底屈)。ふくらはぎの穏やかなストレッチ。 抵抗バンドを用いた足関節運動。体重をかけた運動の開始(両足での踵上げ、許可されれば片足立ち)。 段階的な荷重歩行訓練。安定した面上でのバランストレーニング。
III: 機能回復期
(術後12週以降)
完全な筋力・機能の回復、通常活動への復帰、スポーツへの準備 より高度なストレッチ。 漸進的な筋力強化運動(片足での踵上げ、スクワット、ランジ)。軽いジャンプ運動(プライオメトリクス)の開始。 不安定な面上でのバランストレーニング。ジョギング、ランニング、方向転換の練習(許可に応じて)。

第4章:回復を加速させる食事 – 骨の治癒を促す栄養の力

リハビリテーションというと運動療法が注目されがちですが、栄養は回復の土台を築く上で同様に重要です。適切な栄養摂取は、体が骨を修復するために必要な「建築材料」を供給することを意味します。日本の「大腿骨近位部骨折患者におけるリハビリテーション栄養診療ガイドライン」でも、強化された栄養療法が回復結果を改善し、日常生活動作(ADL)を向上させることが明確に推奨されています47。栄養を、理学療法と並ぶ回復の柱として捉えることが重要です。

骨の修復に不可欠な栄養素

  • タンパク質: 骨の骨格(コラーゲン)を作る主成分です。日本のガイドラインでは、タンパク質を豊富に含む栄養補助が筋力とADLを改善する可能性が示唆されています47。肉、魚、卵、大豆製品、乳製品などを積極的に摂取しましょう。
  • カルシウムとビタミンD: 骨の基本的な構成要素です。カルシウムは骨の材料となり、ビタミンDはその吸収を助けます。ビタミンDは日光を浴びることでも体内で生成されます。
  • ビタミンK、マグネシウム、亜鉛: これらは骨の代謝を助ける重要な微量栄養素です2。緑黄色野菜、ナッツ、海藻類などに含まれます。
  • 野菜と果物: 多くの研究を統合した分析(メタアナリシス)では、野菜や果物の摂取量が多いほど骨折の危険性が低いことが示唆されています24。ある研究では、野菜の摂取量が1日200g増えるごとに骨折の危険性が14%減少したと報告されています48

これらの栄養素をバランス良く摂取することが大切です。必要に応じて、医師や管理栄養士に相談することも、日本のガイドラインで推奨される有効な手段です47

第5章:心のケア – 恐怖、不安、モチベーションを乗り越える

骨折という経験は、身体的なダメージだけでなく、心にも大きな影響を与えます。特に「転倒への恐怖」は、回復への大きな障壁となり得ます。

精神的な負担を認識する

骨折を経験すると、再び転ぶことへの恐怖心、不安、自信喪失、さらには抑うつ気分に陥ることがあります27。これらの感情は、回復過程において自然な反応ですが、放置するとリハビリへの意欲を削ぎ、回復を遅らせる原因となります。特に、持続的な気分の落ち込み、興味や喜びの喪失、絶望感などは、治療可能な医学的状態である「うつ病」の兆候かもしれません50515253

恐怖の悪循環を断ち切る

「転ぶのが怖い」という気持ちから活動を避けるようになると、筋力やバランス能力が低下し、結果的として実際に転倒する危険性がかえって高まってしまいます49。この悪循環を断ち切ることが、リハビリテーションの重要な目標の一つです。

実践的なアドバイス

  • 医療チームとの対話: 抱えている恐怖や不安について、医師や理学療法士に率直に話してみましょう。専門家はあなたの感情を理解し、対処法を一緒に考えてくれます。
  • 小さな目標を設定する: 「今日は昨日より5分長く歩く」など、達成可能な小さな目標を立て、それをクリアしていくことで、少しずつ自信を取り戻すことができます。
  • 専門家の助けを求める: 気分の落ち込みが長く続く場合は、一人で抱え込まず、かかりつけ医や心療内科、精神科などの専門家に相談することを検討してください。

リハビリテーションは、単なる身体的な訓練ではなく、自信と生活の主導権を取り戻すためのプロセスでもあるのです。

第6章:暮らしのガイド – 日本の費用と支援制度を賢く利用する

骨折による入院や手術、リハビリには相応の費用がかかり、また退院後の生活環境にも配慮が必要です。幸い、日本ではこれらの負担を軽減するための公的な制度が整備されています。

経済的負担を軽減する:高額療養費制度

これは、医療機関や薬局の窓口で支払った額が、暦月(月の初めから終わりまで)で自己負担限度額を超えた場合に、その超えた金額が支給される制度です29。自己負担限度額は、年齢や所得によって異なります。事前に「限度額適用認定証」を申請し、医療機関の窓口に提示することで、支払いを自己負担限度額までに抑えることができます28。また、年間の医療費が一定額を超えた場合には、確定申告で医療費控除を受けることも可能です33

自宅での安全な生活のために:介護保険による住宅改修

要介護認定または要支援認定を受けている場合、介護保険を利用して自宅の安全性を高めるための改修を行うことができます35。原則として費用の1割(所得に応じて2~3割)の自己負担で、上限20万円までの工事が可能です。対象となる工事には以下のようなものがあります36

  • 手すりの取り付け
  • 段差の解消
  • 滑りの防止及び移動の円滑化等のための床又は通路面の材料の変更
  • 引き戸等への扉の取替え
  • 洋式便器等への便器の取替え

さらに、歩行器や特殊寝台(介護用ベッド)などの福祉用具も、介護保険を利用してレンタルすることができます39。これらの制度を積極的に活用することで、退院後の生活への移行をスムーズにし、在宅での安全を確保することができます。

第7章:次の骨折を防ぐために – より安全な未来を築く

一度骨折を経験した方は、次の骨折を防ぐための予防策を講じることが非常に重要です。世界保健機関(WHO)も、脆弱性骨折の予防には多面的なアプローチが必要であると強調しています1516

  • バランス能力の向上: リハビリで習得したバランストレーニングを継続することが、転倒予防の基本です。
  • 骨を強くする食生活: カルシウムやビタミンDを豊富に含む食品を積極的に摂りましょう。地中海式食事パターンなどが骨の健康に良いとする研究もあります。
  • 適切なサプリメント: 食事だけで不十分な場合は、医師と相談の上でビタミンDやカルシウムのサプリメントを検討します。
  • 住環境の見直し: 家の中に転倒の危険がないかチェックしましょう。床に物を置かない、滑りやすいマットは撤去する、十分な照明を確保する、といった簡単な工夫が大きな違いを生みます。

これらの予防策は、自立した生活を長く続けるための、自分自身への投資です54

よくある質問

リハビリテーションは痛みを伴いますか?

リハビリテーションの目的は、機能を回復させることであり、過度な痛みを与えることではありません。理学療法士は、患者様の痛みのレベルを常に確認しながら、可能な範囲で運動を進めます。運動後に多少の筋肉痛や違和感が生じることはありますが、鋭い痛みや激痛がある場合は、決して無理をせず、すぐにスタッフに伝えることが重要です。痛みは体からの重要なサインです。

退院後、自宅でリハビリを続けることはできますか?

はい、可能ですし、非常に重要です。多くの場合、入院中に理学療法士から自宅でできる運動プログラム(ホームエクササイズ)の指導を受けます。これを継続することが、機能回復を維持・向上させる鍵となります。また、必要に応じて、介護保険を利用した「訪問リハビリテーション」や、クリニックでの「外来リハビリテーション」を継続することもできます45。かかりつけ医やケアマネージャーに相談してみましょう。

骨折したら、接骨院や整骨院に行っても良いですか?

骨折が疑われる場合は、まず整形外科を受診する必要があります。なぜなら、接骨院や整骨院の柔道整復師は、エックス線撮影や診断を行うことが法律で認められていないからです。正確な診断を下せるのは医師のみです。日本整形外科学会も、骨折の診断と治療は整形外科医の専門分野であると明確にしています8。まずは整形外科で正確な診断を受け、その後の治療方針(手術や保存療法)を決定し、リハビリテーションの計画を立ててもらうことが、適切な回復への第一歩です。

仕事にはいつ復帰できますか?

仕事への復帰時期は、骨折の部位や重症度、そして仕事の内容(デスクワークか、体を動かす仕事か)によって大きく異なります。主治医は、骨の癒合状態や身体機能の回復度合いを総合的に評価し、復帰のタイミングについてアドバイスをします。自己判断で復帰を急ぐと、再受傷のリスクを高める可能性があります。必ず主治医の許可を得てから復帰するようにしてください。

結論

骨折からの回復は、一直線の道のりではないかもしれません。しかし、現代の医学は、早期かつ積極的なリハビリテーション、適切な栄養管理、そして心のケアを組み合わせることで、多くの患者様が再び自立した生活を取り戻せることを示しています。重要なのは、ご自身の体の治癒力を信じ、医師や理学療法士といった専門家チームと協力し、回復過程に主体的に関わることです。この記事で提供した情報が、皆様の不安を和らげ、回復への道のりを照らす一助となれば幸いです。利用できる公的制度も活用しながら、焦らず、着実に、力強い一歩を踏み出していきましょう。

免責事項この記事は情報提供のみを目的としており、専門的な医学的アドバイスを構成するものではありません。健康に関する懸念や、ご自身の健康や治療に関する決定を下す前には、必ず資格のある医療専門家にご相談ください。

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  37. 【失敗しない】介護リフォームの補助金と事例(お風呂・トイレ・玄関). [インターネット]. [引用日: 2025年6月23日]. Available from: https://www.minnanokaigo.com/guide/care-insurance/renovation/
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