【科学的根拠に基づく】がんは遺伝するのか? | 遺伝リスク、診断、および予防的管理に関する包括的レポート
がん・腫瘍疾患

【科学的根拠に基づく】がんは遺伝するのか? | 遺伝リスク、診断、および予防的管理に関する包括的レポート

「がんは遺伝するのか?」という問いは、多くの人々が抱く根源的な不安と関心を反映しています。この問いに対する最も簡潔な答えは、「一部のがんは遺伝的要因が強く関与するが、大多数はそうではない」というものです。科学的データによれば、すべてのがんのうち、明確に遺伝性、すなわち親から受け継がれた単一の遺伝子変異が主な原因となるのは、全体の約5〜10%に過ぎないとされています1。残りの大多数は「散発性がん」と呼ばれ、生涯を通じて環境要因、生活習慣、そして偶然の積み重ねによって細胞に生じる後天的な遺伝子変異によって引き起こされます2。しかし、この5〜10%という数字は、遺伝的リスクの重要性を決して軽視させるものではありません。特定の遺伝子変異を持つ個人やその家族にとって、がんの発症リスクは一般集団に比べて著しく高くなる可能性があります。このリスクを正確に理解することは、単に不安を煽るためではなく、むしろそれを力に変え、標的を定めた予防策、早期発見のためのサーベイランス(監視)、そして個別化された治療戦略へとつなげるための第一歩となります。この知識は、自身だけでなく、血縁者の健康を守る上でも極めて重要な意味を持ちます7。本レポートは、この単純な問いを起点として、がんと遺伝の複雑な関係性を深く掘り下げることを目的とします。がんを引き起こす遺伝子の基本的な仕組みから、主要な遺伝性がん症候群の臨床的特徴、リスクが疑われる場合の診断プロセス、そして遺伝情報に基づいた最新の予防・治療戦略に至るまで、科学的根拠に基づいた包括的な情報を提供します。さらに、遺伝的リスクを知ることがもたらす心理社会的、倫理的、そして法的な側面にも光を当て、読者がこの重要なテーマについて、より深く、より正確な理解を得るための一助となることを目指します。


この記事の科学的根拠

この記事は、入力された研究報告書に明示的に引用されている最高品質の医学的根拠にのみ基づいています。以下のリストには、実際に参照された情報源のみが含まれており、提示された医学的指導との直接的な関連性も示されています。

  • 大阪医療センター 遺伝診療センター: 遺伝性がんの一般的な特徴に関する記述は、同センターが公開する情報に基づいています1
  • 米国臨床腫瘍学会(ASCO): 遺伝学に関するツールキットからの情報は、遺伝子検査のプロセスやカウンセリングの重要性を説明するために参照されました3
  • 米国国立がん研究所(NCI): がんの遺伝学、遺伝子検査、主要な症候群(リ・フラウメニ症候群など)に関する事実は、同研究所が提供する広範な公開情報に基づいています581321222325
  • 日本遺伝性腫瘍学会: リ・フラウメニ症候群やリンチ症候群の診療ガイドライン、および各種症候群に関する情報は、日本の臨床現場における標準的なアプローチを記述するために不可欠でした123750
  • 日本HBOCコンソーシアム(JOHBOC): 遺伝性乳がん卵巣がん症候群(HBOC)に関する詳細な情報、特に日本人における頻度や診療ガイドラインは、同コンソーシアムの公開資料に基づいています3147
  • 厚生労働省: 日本のがんゲノム医療推進体制や、遺伝情報による差別防止に関する行政の指針は、同省の公開資料を参照しました525559606163

要点まとめ

  • がん全体のうち、遺伝的要因が主な原因である「遺伝性がん」は約5〜10%です。残りの大部分は、生活習慣や環境要因による後天的な遺伝子変異が原因の「散発性がん」です。
  • 遺伝性がんは、若年発症、一人で複数のがんを発症、特定の珍しいがん、世代を超えた家族歴などの特徴(レッドフラッグ)があります。
  • 主要な遺伝性がん症候群には、遺伝性乳がん卵巣がん症候群(HBOC)、リンチ症候群、リ・フラウメニ症候群などがあり、それぞれ特定のがんのリスクが著しく高まります。
  • 遺伝子検査を受ける前には、遺伝カウンセリングでその意義、限界、心理的・社会的影響について十分な説明を受け、情報に基づいた自己決定をすることが不可欠です。
  • 遺伝子情報に基づき、リスク低減手術や定期的なサーベイランス(監視)、PARP阻害薬のような分子標的治療など、個別化された予防・治療が可能になります。

第1章 がんの遺伝的構造:単一の変異から悪性腫瘍へ

1.1 生命の設計図とその異常

人体を構成する約37兆個の細胞は、その核内に生命の設計図であるデオキシリボ核酸(DNA)を保持しています。DNAは、タンパク質の合成や細胞機能の制御を司る遺伝子という単位に分かれており、細胞がいつ、どのように成長し、分裂し、そして死滅すべきかを厳密に規定しています2。がんは、本質的にこの遺伝子の病気です。DNA配列に異常な変化、すなわち「変異」が生じることで、この精密な細胞制御システムが破綻し、細胞が無秩序な増殖を開始することが、がん発生の根本的な原因です2

これらの遺伝子変異は、様々な要因によって引き起こされます。細胞が分裂する際にDNAを複製する過程で生じるランダムなエラー、喫煙や紫外線といった環境因子への曝露、特定のウイルス感染、そして親から子へと受け継がれる遺伝的素因などがその主な原因として挙げられます2

1.2 がん発生に関わる主要な遺伝子たち

がんの発生には、主に3種類の遺伝子が関与しています。これらは、車のアクセル、ブレーキ、そして修理工に例えることができます。

がん遺伝子

がん遺伝子は、正常な状態では細胞の増殖を促進する「アクセル」の役割を担っています。しかし、変異によってこの遺伝子が恒常的に活性化されると、アクセルが踏みっぱなしの状態となり、細胞は無制限に増殖し続けます2。このような変異を持つがん遺伝子の代表例として、多発性内分泌腫瘍症2型(MEN2)の原因となるRET遺伝子が知られています。この遺伝子の特定の変異は、細胞増殖のシグナルを常にオンにし、甲状腺髄様がんなどの腫瘍を引き起こします5

がん抑制遺伝子

がん抑制遺伝子は、細胞増殖を停止させたり、DNAの損傷を修復したり、あるいは修復不可能な細胞を自死(アポトーシス)に導いたりする「ブレーキ」として機能します。この遺伝子に変異が生じて機能が失われると、細胞は増殖の制御を失い、がん化へと向かいます2。がん抑制遺伝子は、遺伝性がん症候群において中心的な役割を果たします。

  • TP53(「ゲノムの守護神」): この遺伝子は、細胞周期の停止、DNA修復、アポトーシス誘導など、がん抑制において極めて重要な役割を担います。その生殖細胞系列変異は、若年での肉腫、乳がん、脳腫瘍など、極めて多様ながんを高率に引き起こすリ・フラウメニ症候群(LFS)の原因となります9
  • BRCA1/BRCA2: これらの遺伝子は、DNAの二本鎖切断を修復する重要な機能を持っています。その機能が失われると、遺伝子の不安定性が増大し、がん化につながります。これらの遺伝子の生殖細胞系列変異は、遺伝性乳がん卵巣がん症候群(HBOC)の主要な原因です1
  • APC: この遺伝子は、細胞の増殖を制御し、不要な細胞のアポトーシスを促す役割があります。この遺伝子の変異は、大腸に数百から数千個のポリープが発生し、放置すればほぼ100%大腸がんへと進行する家族性大腸腺腫症(FAP)を引き起こします1

DNA修復遺伝子

これはがん抑制遺伝子の一種であり、特にDNA複製の際に生じるエラーを修正する「校正係」の役割を担います。ミスマッチ修復(MMR)遺伝子群がその代表であり、これらの遺伝子(MLH1, MSH2, MSH6, PMS2など)の機能が失われると、ゲノム全体で変異が蓄積しやすくなります。この状態はマイクロサテライト不安定性(MSI)として知られ、リンチ症候群の根本的な原因となります1

1.3 生殖細胞系列変異と体細胞変異:リスクの起源

がんを引き起こす遺伝子変異は、その発生源によって二つに大別されます。この区別は、がんが遺伝するかどうかを理解する上で最も重要です。

  • 体細胞変異(Somatic Mutation): 生涯のいずれかの時点で、特定の臓器の一つの細胞に後天的に生じる変異です。これは子孫に受け継がれることはなく、ほとんどの散発性がんの原因となります2
  • 生殖細胞系列変異(Germline Mutation): 生まれつき、精子や卵子を含む体のすべての細胞に存在する変異です。これは親から子へと受け継がれる可能性があり、常染色体顕性(優性)遺伝形式の疾患では、その確率は50%です2。遺伝性がん症候群は、この生殖細胞系列変異によって引き起こされます。

この二つの変異の違いを説明する上で中心的な概念が、「2ヒット仮説」です19。この仮説は、がん抑制遺伝子の機能が完全に失われるためには、一対ある遺伝子の両方(父由来と母由来)に「ヒット」(変異)が入る必要があると説明します。

  • 散発性がんの場合: 健常な人は、機能が正常な遺伝子を2つ持って生まれてきます。がんが発生するためには、生涯の間に同じ細胞内で、偶然にも2回の独立した体細胞変異(1回目のヒットと2回目のヒット)が起こる必要があります。これは確率的に非常に稀な事象であり、そのため散発性がんは主に高齢で発症します。
  • 遺伝性がんの場合: 遺伝性がん症候群の人は、生まれつき体のすべての細胞で、片方の遺伝子に生殖細胞系列変異(1回目のヒット)を持っています。したがって、がんが発生するために必要なのは、生涯のいずれかの時点で、いずれかの細胞で残りの正常な遺伝子にたった1回の体細胞変異(2回目のヒット)が起こることだけです。

この「2ヒット仮説」という分子メカニズムは、遺伝性がん症候群の臨床的特徴、すなわち「なぜ若年で発症するのか」「なぜ複数の異なるがんを発症するのか」「なぜ両側の臓器にがんができるのか」という疑問に対する根本的な答えを提供します。全身の細胞がすでに「1回目のヒット」を持っているため、一般集団に比べて「2回目のヒット」が起こる確率が劇的に高く、またそれが体のどこで、いつ起こっても不思議ではないのです。例えば、若くして乳がんと診断され、その後卵巣がんを発症する(多発がん、若年発症)、あるいは小児期に両眼に網膜芽細胞腫を発症する(両側性、若年発症)といった臨床像は、この「2ヒット仮説」によって見事に説明されます1。したがって、後述する遺伝カウンセリングで用いられる「レッドフラッグ(危険信号)」は、この根底にある分子メカニズムが臨床的に現れたものに他なりません。

第2章 リスクのスペクトラム:散発性がん、家族性がん、遺伝性がんの区別

がんのリスクは一様ではなく、遺伝的要因と環境要因の関与の度合いによって、大きく3つのカテゴリーに分類されます。この区別は、個人のリスクを評価し、適切な対策を講じる上で不可欠です。

2.1 散発性がん(約70-80%)

これは最も一般的ながんの形態であり、明確な遺伝的背景なしに、偶然に発生するものを指します。加齢に伴う細胞の複製の繰り返し、喫煙、不健康な食事、紫外線への曝露といった長年の環境要因や生活習慣によって体細胞に変異が蓄積した結果として発症します2。散発性がんは、特定の家系内に集中して発生することはなく、一般的に高齢で発症する傾向があります。

2.2 家族性がん(約15-20%)

このカテゴリーは、ある家系内で偶然期待されるよりも多くのがん患者が発生するものの、遺伝性がん症候群のような単一の強力な遺伝子変異が見つからない、いわば「グレーゾーン」の状態を指します24。「がん家系」という言葉が使われる場合、多くはこの家族性がんに該当します2

その原因は複合的であると考えられており、以下のような要因が挙げられます。

  • 多因子遺伝: 単独ではリスク上昇効果が小さい複数の「低浸透率遺伝子」の組み合わせが、家系内で受け継がれている可能性。
  • 共通の環境・生活習慣: 家族内で共有されている食生活、喫煙習慣、居住環境などが、がんリスクを共通して高めている可能性25
  • 偶然の集積: がんはありふれた病気であるため、単なる偶然によって特定の家系に複数のがん患者が現れることもあります。

この家族性がんというカテゴリーの存在は、一般の人々にとって混乱の原因となりやすく、また臨床的にも大きな課題を提起します。例えば、家族にがん患者が多いことを心配した人が、近年普及している消費者向け(DTC)遺伝子検査を受けるケースが考えられます。これらの検査の多くは、遺伝性がん症候群の原因となる稀で強力な変異ではなく、一般的な遺伝子多型(SNP)と疾患リスクとの統計的な関連性を調べるものです26。その結果、「平均的なリスク」と判定され、本来は強化すべき検診を怠ってしまうといった誤った安心感につながる危険性があります。逆に、未診断の遺伝性がん症候群を持つ人が、その原因遺伝子をカバーしていないDTC検査を受けて陰性と判定され、同様に偽りの安心感を得る可能性も否定できません。このように、家族性がんという概念は、遺伝子検査の結果を専門家(遺伝カウンセラーなど)の介在なしに解釈することの難しさと潜在的な危険性を浮き彫りにしています。

2.3 遺伝性がん(約5-10%)

これは、単一の強力な「高浸透率遺伝子」に生じた生殖細胞系列変異が、親から子へと受け継がれることによって引き起こされるがんです1。遺伝性がんは、以下のような特徴的なパターンを示します。

  • 若年発症: 通常のがん発症年齢よりも著しく若い年齢で診断される(例:50歳未満の乳がんや大腸がん)1
  • 多発性・両側性: 一人の個人が、生涯に複数の異なる種類のがん(重複がん)や、同じ臓器に複数のがん(多発がん)を発症する。また、乳房や腎臓のような対になった臓器の両方にがんが発生する(両側性)1
  • 稀な腫瘍: 男性の乳がんや卵巣がん、副腎皮質がんなど、一般集団では稀な種類のがんが発生する25
  • 世代を超えた伝達: がんが家系内で複数の世代にわたって見られ、常染色体顕性(優性)遺伝のパターンを示す21

ここで重要なのは、原因遺伝子変異を受け継いだとしても、必ずしも100%がんを発症するわけではないという点です。これは「不完全浸透」として知られ、同じ変異を持っていてもがんを発症する人、しない人、また発症するがんの種類や年齢が異なる人が存在します。これは、他の遺伝的要因や環境要因が、最終的な発症に影響を与えることを示唆しています5

第3章 主要な遺伝性がん症候群の臨床概要

遺伝性がん症候群は数十種類が知られていますが、ここでは臨床的に重要で比較的頻度の高いものを中心に、その特徴、原因遺伝子、および関連するがんリスクについて詳述します。

3.1 遺伝性乳がん卵巣がん症候群(HBOC)

  • 原因遺伝子: 主にDNA修復に関わるBRCA1およびBRCA2遺伝子の生殖細胞系列変異によって引き起こされます1。その他、PALB2, ATM, CHEK2などの遺伝子もHBOC様のリスクと関連することがあります1
  • 遺伝形式: 常染色体顕性(優性)遺伝。
  • がんリスク: 一般集団と比較して、生涯にわたるがん発症リスクが著しく高まります。
    • 乳がん(女性): BRCA1変異保持者で46〜87%、BRCA2変異保持者で38〜84%と報告されています(一般女性のリスクは約10%)31
    • 卵巣がん: BRCA1変異保持者で39〜63%、BRCA2変異保持者で16.5〜27%(一般女性のリスクは約1.6%)31
    • その他のがん: 前立腺がん、膵臓がんのリスクも上昇します。特にBRCA2変異は、男性乳がんのリスクを顕著に高めることが知られています1
  • 頻度: 日本人では、一般集団の200〜500人に1人がBRCA1/2の病的バリアントを保持していると推定されています31

3.2 リンチ症候群(遺伝性非ポリポーシス大腸がん:HNPCC)

  • 原因遺伝子: DNAのミスマッチ修復(MMR)を担うMLH1, MSH2, MSH6, PMS2、およびEPCAM遺伝子の機能不全が原因です1
  • 遺伝形式: 常染色体顕性(優性)遺伝。
  • がんリスク: 最も一般的な遺伝性大腸がんの原因であり、生涯リスクは非常に高いです。
    • 大腸がん: 生涯リスクは遺伝子によって異なりますが、最大で80%に達することもあります。若年発症で、右側結腸に発生しやすい傾向があります。
    • 子宮体がん(子宮内膜がん): 女性では生涯リスクが最大60%に達し、大腸がんよりも先に発症することもあります。
    • その他のがん: 卵巣がん、胃がん、小腸がん、膵臓がん、胆道がん、腎盂・尿管がん、脳腫瘍(グリオーマ)など、非常に広範な臓器のがんリスクが上昇します1
  • 診断: がん組織を用いたマイクロサテライト不安定性(MSI)検査や免疫組織化学(IHC)検査が、遺伝子検査に進む前のスクリーニングとして重要な役割を果たします5

3.3 リ・フラウメニ症候群(LFS)

  • 原因遺伝子: 「ゲノムの守護神」と称されるがん抑制遺伝子TP53の生殖細胞系列変異が原因です9
  • 遺伝形式: 常染色体顕性(優性)遺伝。
  • がんリスク: 生涯にわたるがん発症リスクが極めて高く、男性で約70%、女性では約90%に達すると報告されています35。特徴は、非常に若年(小児期を含む)で発症し、かつ極めて多様ながん種が見られることです。
    • コアスペクトラムがん: 軟部組織肉腫、骨肉腫、閉経前乳がん、脳腫瘍、副腎皮質がん、白血病が代表的です5
  • 臨床上の注意点: TP53遺伝子は放射線によるDNA損傷に応答して細胞を修復またはアポトーシスに導く役割を持つため、この機能が欠損しているLFS患者に放射線治療を行うと、新たな二次がんを誘発するリスクが著しく高まる可能性があります。そのため、治療や診断における放射線曝露は可能な限り避けることが強く推奨されます12

3.4 遺伝性ポリポーシス症候群

家族性大腸腺腫症(FAP):

  • 原因遺伝子: APC遺伝子の変異1
  • 臨床的特徴: 10代から大腸に数百から数千個の腺腫性ポリープが発生し始めます。これらのポリープを放置した場合、40歳頃までにほぼ100%の確率で大腸がんに進行します5。予防的大腸全摘術が標準的な管理法となります。

MUTYH関連ポリポーシス(MAP):

  • 原因遺伝子: MUTYH遺伝子1
  • 遺伝形式: 常染色体潜性(劣性)遺伝。両親からそれぞれ変異遺伝子を受け継いだ場合に発症する点で、他の多くの症候群と異なります。
  • 臨床的特徴: FAPよりもポリープの数は少ない(通常10〜数百個)ですが、大腸がんのリスクは有意に上昇します。

3.5 その他の主要な症候群(概要)

  • 遺伝性びまん性胃がん(HDGC): CDH1遺伝子が原因で、印環細胞がんという特殊なタイプの胃がん(スキルス胃がん)と、小葉がんというタイプの乳がんのリスクが著しく高まります1
  • 多発性内分泌腫瘍症(MEN):
    • MEN1型: MEN1遺伝子が原因。副甲状腺、下垂体、膵臓の腫瘍が特徴です9
    • MEN2型: RET遺伝子が原因。甲状腺髄様がん、褐色細胞腫、副甲状腺機能亢進症が特徴です5
  • フォン・ヒッペル・リンドウ(VHL)病: VHL遺伝子が原因。腎細胞がん、褐色細胞腫、中枢神経系や網膜の血管芽腫のリスクが高まります9
  • 遺伝性網膜芽細胞腫: RB1遺伝子が原因。小児期に発症する眼のがんです5

表1:主要な遺伝性がん症候群の概要

症候群名 主要な原因遺伝子 遺伝形式 主ながんリスクと生涯発症率(概算) 主な臨床的特徴
遺伝性乳がん卵巣がん症候群 (HBOC) BRCA1, BRCA2 常染色体顕性 – 乳がん(女性): 40-85%
– 卵巣がん: 15-60%
– 膵臓がん: 5-10%
– 前立腺がん: 15-25%
– 男性乳がん: 5-10% (BRCA2)
若年発症乳がん、トリプルネガティブ乳がん (BRCA1)、卵巣がん、男性乳がん
リンチ症候群 (LS) MLH1, MSH2, MSH6, PMS2, EPCAM 常染色体顕性 – 大腸がん: 20-80%
– 子宮体がん: 20-60%
– 卵巣がん: 5-20%
– 胃がん、その他多数
若年発症大腸がん(右側結腸)、子宮体がん、MSI-High腫瘍
リ・フラウメニ症候群 (LFS) TP53 常染色体顕性 – 生涯がんリスク: 70-90%
– 肉腫、乳がん、脳腫瘍、副腎皮質がん、白血病など
小児期・若年期に多様ながんを発症、多発がん、放射線感受性
家族性大腸腺腫症 (FAP) APC 常染色体顕性 – 大腸がん: ほぼ100%(未治療時)
– 十二指腸がん、胃がん、甲状腺がん
10代から大腸に数百〜数千のポリープが発生
MUTYH関連ポリポーシス (MAP) MUTYH 常染色体潜性 – 大腸がん: 40-60% 10〜数百個の大腸ポリープ
遺伝性びまん性胃がん (HDGC) CDH1 常染色体顕性 – びまん性胃がん: 50-70%
– 小葉乳がん(女性): 40-60%
スキルス胃がん、若年発症、予防的胃切除が選択肢
多発性内分泌腫瘍症1型 (MEN1) MEN1 常染色体顕性 – 副甲状腺、下垂体、膵消化管の腫瘍 副甲状腺機能亢進症がほぼ必発
多発性内分泌腫瘍症2型 (MEN2) RET 常染色体顕性 – 甲状腺髄様がん: ほぼ100%
– 褐色細胞腫: 約50%
甲状腺髄様がん、予防的甲状腺切除術を考慮
フォン・ヒッペル・リンドウ病 (VHL) VHL 常染色体顕性 – 腎細胞がん: 25-45%
– 中枢神経系血管芽腫: 60-80%
– 褐色細胞腫: 10-20%
腎がん、網膜血管腫、褐色細胞腫

注: 生涯発症率は研究報告によって幅があり、人種差も考慮されるため、あくまで目安です。データソース: 1

第4章 臨床的アプローチ:疑いから診断まで

遺伝性がん症候群の診断プロセスは、単なる血液検査ではありません。家族歴の聴取から始まり、遺伝カウンセリングを経て、適切な遺伝子検査を選択し、その結果を正しく解釈するという、一連の慎重なステップから成り立っています。

4.1 「レッドフラッグ」の特定:遺伝性症候群を疑うとき

遺伝性がんのリスク評価は、詳細な個人歴および家族歴の聴取から始まります。臨床医や遺伝カウンセラーは、遺伝性がん症候群を示唆する「レッドフラッグ(危険信号)」に注意を払います。国内外の診療ガイドラインで共通して挙げられている主な基準は以下の通りです17

  • 若年でのがん発症: 50歳未満で診断された乳がん、大腸がん、子宮体がんなど1
  • 一人の個人における複数の原発がん:
    • 両側の乳房や腎臓など、対になった臓器の両方にがんが発生(両側性)18
    • 生涯に2つ以上の異なる種類のがんを発症(重複がん)1
  • 特定の組み合わせのがん: 家系内に乳がんと卵巣がん、あるいは大腸がんと子宮体がんの患者が複数いる25
  • 稀な腫瘍の発生: 男性の乳がん、卵巣がん、膵臓がん、副腎皮質がん、甲状腺髄様がんなど25
  • 特定の民族的背景: アシュケナージ系ユダヤ人の祖先を持つ場合、HBOCのリスクが高いことが知られています23
  • 家族歴:
    • 第一度近親者(親、子、兄弟姉妹)または第二度近親者(祖父母、おじ・おば、孫など)に、同じ、あるいは関連するがんの患者が複数いる21
    • 家系内にすでに遺伝子変異が見つかっている人がいる18

家族歴を評価する際は、父方・母方の両方について、少なくとも3世代にわたる情報を聴取することが理想的です23

4.2 遺伝カウンセリングの中心的役割

遺伝カウンセリングは、遺伝子検査の前後にわたって行われる、専門家との対話プロセスです。これは、情報に基づいた自己決定を支援し、心理社会的なサポートを提供するために不可欠な要素です3

  • 検査前カウンセリング: 遺伝カウンセラーや臨床遺伝専門医は、詳細な家族歴(3世代家系図)を作成し、遺伝性がん症候群の可能性を評価します。その上で、遺伝子検査の目的、方法、精度、限界、そして考えうる結果(陽性、陰性、意義不明瞭バリアント)について詳しく説明します。また、検査結果が本人だけでなく血縁者にもたらす医学的、心理的、社会的な影響(保険や雇用への懸念など)についても話し合い、十分な情報提供のもとで検査を受けるかどうかの意思決定(インフォームド・コンセント)を支援します。
  • 検査後カウンセリング: 検査結果を分かりやすく説明し、その医学的な意味合いを解説します。陽性の場合は、具体的なサーベイランス計画やリスク低減策について情報提供し、血縁者への情報伝達の方法についても相談に乗ります。陰性や意義不明瞭バリアント(VUS)の場合も、その意味を正確に伝え、今後のフォローアップについて話し合います。また、結果を受け止める上での心理的なサポートも重要な役割です18。このプロセスでは、本人が結果を知る権利だけでなく、「知らないでいる権利」も尊重されます43

4.3 検査技術:単一遺伝子からマルチ遺伝子パネルへ

遺伝子検査は、通常、血液サンプルから採取したDNAを用いて行われますが、唾液や頬の粘膜細胞が用いられることもあります25。検査アプローチは、臨床状況に応じて選択されます。

  • 単一遺伝子座検査: 家系内に特定の遺伝子変異がすでに同定されている場合に、その変異の有無のみを調べるために行われます。
  • 単一遺伝子検査: 臨床像から特定の症候群が強く疑われる場合に、その原因遺伝子のみを検査します。
  • マルチ遺伝子パネル検査: 現在の標準的なアプローチであり、数十から数百のがん関連遺伝子を一度に網羅的に解析します。これにより、診断効率は飛躍的に向上しましたが、同時に予期せぬ遺伝子に変異が見つかる(二次的所見)可能性や、後述するVUSが同定される頻度も高くなりました4

この単一遺伝子検査からマルチ遺伝子パネル検査への移行は、遺伝子診断におけるパラダイムシフトを意味します。かつては、臨床医がHBOCを疑いBRCA1/2のみを検査していたのに対し、現在ではパネル検査によって、全く予期していなかったTP53遺伝子の変異(リ・フラウメニ症候群)が見つかる可能性があります。これは患者の健康管理に計り知れない影響を与える「偶発的所見」であり、臨床の現場に新たな課題を突きつけています。検査対象の遺伝子数が増えるほど、VUSが発見される確率も劇的に上昇し、これは患者に大きな心理的ストレスを与え、臨床医には難しい判断を迫ります。したがって、この技術的進歩は、検査前のカウンセリングで、より広範な結果(不確実性や人生を左右する偶発的所見を含む)に患者が備えられるようにすることの重要性を増大させました。遺伝子医療は、一度きりの検査ではなく、VUSの再分類などを通じた長期的なフォローアップを要する、動的なプロセスへと変貌を遂げているのです。

4.4 結果の解読:陽性、陰性、VUS

遺伝子検査の結果は、3つのカテゴリーのいずれかで報告されます。

  • 陽性(Pathogenic/Likely Pathogenic Variant): 病気の原因となる、あるいはその可能性が極めて高いと科学的に証明されている遺伝子変異が同定されたことを意味します。これにより遺伝性がん症候群の診断が確定し、具体的な医学的管理の方針が立てられます25
  • 陰性: 検査した遺伝子には、既知の病的バリアントが見つからなかったことを意味します。しかし、その解釈は単純ではありません。
    • 真の陰性: 家系内に特定の病的バリアントが同定されており、その変異が本人に見つからなかった場合、その症候群に関するがんリスクは一般集団と同等と見なされます。
    • 情報価値のない陰性: 強い家族歴があるにもかかわらず、既知の病的バリアントが見つからなかった場合、この結果は「確定的なものではない」と解釈されます。その家系のがんが、未発見の遺伝子や検査パネルに含まれていない遺伝子の変異によって引き起こされている可能性が残るためです25
  • 意義不明瞭バリアント(Variant of Uncertain Significance: VUS): 遺伝子に変化(バリアント)は見つかったものの、それががんリスクを上昇させるかどうか、現時点の科学的知見では判断できない状態を指します。これは非常に一般的な結果であり、患者に不安を与えることがありますが、VUSに基づいて予防手術などの臨床的判断を下すべきではありません24。VUSは、将来の研究によって病的、あるいは良性のバリアントに再分類される可能性があるため、定期的な情報の更新が必要です。

第5章 予防的管理:科学的根拠に基づくサーベイランスとリスク低減策

遺伝性がん症候群の診断は、運命の宣告ではなく、むしろ予防医療への扉を開く鍵です。遺伝的リスクを特定することで、一般集団とは異なる、より集中的なサーベイランス(監視)やリスク低減策を実施することが可能となり、がんによる死亡率を大幅に低下させることが期待できます。

5.1 集中サーベイランス:「がんの芽を早期に摘む」

高リスク者に対するサーベイランスの目的は、がんを未然に防ぐこと、あるいは治療成績が格段に良い極めて早期の段階で発見することです。そのプロトコルは症候群ごとに異なり、国内外の診療ガイドラインによって推奨されています10

表2:主要な遺伝性がん症候群に対するガイドラインに基づくサーベイランス・プロトコル(例)

症候群 対象臓器/がん種 サーベイランス方法 推奨開始年齢 推奨頻度
HBOC 乳がん 臨床的乳房視触診
乳房MRI検査
マンモグラフィ
25歳〜
25〜30歳
30歳〜
6〜12ヶ月ごと
1年ごと
1年ごと
卵巣がん 経腟超音波検査
血清CA125測定
30〜35歳 6〜12ヶ月ごと
膵臓がん MRI/MRCPまたは超音波内視鏡検査(EUS) 40〜50歳(家族歴考慮) 1年ごと
前立腺がん 血清PSA測定、直腸診 40歳〜 1年ごと
リンチ症候群 大腸がん 大腸内視鏡検査 20〜25歳 1〜2年ごと
子宮体・卵巣がん 経腟超音波検査、子宮内膜細胞診、血清CA125 30〜35歳 1年ごと
胃・十二指腸がん 上部消化管内視鏡検査(ピロリ菌検査・除菌も) 30〜35歳 1〜3年ごと
腎盂・尿管がん 検尿・尿細胞診 30〜35歳 1年ごと
リ・フラウメニ症候群 全身 全身MRI検査 小児期/診断時 1年ごと
脳腫瘍 脳MRI検査 小児期/診断時 1年ごと
乳がん(女性) 臨床的乳房視触診
乳房MRI検査
20歳〜 6〜12ヶ月ごと
1年ごと
腹部・骨盤 腹部・骨盤超音波検査 小児期/診断時 3〜4ヶ月ごと
FAP 大腸 大腸内視鏡検査 10〜15歳 1年ごと
胃・十二指腸 上部消化管内視鏡検査 20〜25歳 1〜3年ごと

注: これはあくまで一般的な例であり、具体的なプロトコルは個人の状況、家族歴、原因遺伝子の種類などによって調整されます。必ず専門医と相談することが必要です。データソース: 10

5.2 予防的(リスク低減)介入

サーベイランスに加えて、がんの発症リスクそのものを低下させるための、より積極的な介入も選択肢となります。

  • リスク低減手術: 特定のがんのリスクが極めて高い臓器を、がんが発生する前に切除する手術です。HBOCの女性に対する両側乳房切除術(RRM)やリスク低減卵管卵巣摘出術(RRSO)36、FAP患者に対する予防的大腸全摘術5などが代表例です。これらの手術はがんリスクを90%以上低下させる強力な手段ですが、身体的・心理的な影響も大きいため、その適応は慎重に検討される必要があります。
  • 化学予防: タモキシフェンやアロマターゼ阻害薬などの薬剤を用いて乳がんリスクを低減させる、あるいはアスピリンを服用してリンチ症候群における大腸がんリスクを低減させるなど、薬物による予防も研究が進められています。

5.3 生活習慣の力

遺伝的リスクが高いという事実は変えられませんが、そのリスクが実際にがんとして発現するかどうかには、生活習慣が大きく影響します2。遺伝子変異は「弾が込められた銃」に例えられますが、その「引き金を引く」要因の一つが生活習慣です。

  • 禁煙: 喫煙は、遺伝的背景に関わらず、あらゆるがんの最も強力なリスク因子の一つです。
  • 健康的な体重の維持: 肥満は、乳がん、大腸がん、子宮体がんなど多くのがんのリスクを高めます。
  • 定期的な運動: 運動習慣は、大腸がんや乳がんのリスクを低下させることが示されています。
  • バランスの取れた食事: 野菜や果物を豊富に摂取し、赤肉や加工肉の摂取を控えることは、がん予防の基本です。
  • アルコールの節制: 過度の飲酒は、食道がん、肝臓がん、乳がんなどのリスクを高めます。
  • 紫外線対策: 皮膚がんのリスクを低減するために不可欠です。

これらの健康的な生活習慣は、がん抑制遺伝子への「2回目のヒット」を引き起こす可能性のあるDNA損傷を減らし、発症を遅らせる、あるいは防ぐ上で重要な役割を果たすと考えられます。

第6章 治療への影響:プレシジョン・オンコロジーの夜明け

遺伝性がん症候群の原因となる生殖細胞系列変異の情報は、もはや将来のリスク予測のためだけのものではありません。現在のがん治療において、最適な治療法を選択するための極めて重要なバイオマーカーとなっています。これは「プレシジョン・メディシン(精密医療)」あるいは「個別化医療」と呼ばれる新しい治療パラダイムの中核をなすものです8

6.1 診断から治療へ:治療計画における生殖細胞系列情報

生殖細胞系列の遺伝子情報が、がんの外科治療や放射線治療の方針決定に直接影響を与えることがあります。例えば、HBOCと診断された乳がん患者は、健常な側の乳房にも将来がんが発生するリスクが非常に高いため、患側の乳房部分切除(温存手術)ではなく、両側乳房切除術を選択することがあります36。同様に、前述の通り、リ・フラウメニ症候群の患者では、放射線誘発性の二次がんリスクを避けるため、可能な限り放射線治療を含まない治療計画が優先されます。

6.2 分子標的治療と免疫療法

遺伝子情報に基づいた薬物療法は、プレシジョン・メディシンの最も目覚ましい成果の一つです。

  • PARP阻害薬: BRCA1/2遺伝子はDNA修復に関わるため、この遺伝子に変異があるがん細胞は、特定のDNA修復経路に弱点を抱えています。PARP阻害薬は、その弱点を標的とし、がん細胞を選択的に死滅させる薬剤です。この「合成致死」というメカニズムに基づき、PARP阻害薬はBRCA1/2生殖細胞系列変異陽性の乳がん、卵巣がん、膵臓がん、前立腺がんに対して劇的な効果を示します。
  • 免疫チェックポイント阻害薬: リンチ症候群のがん組織は、MMR機能の欠損により、極めて多くの遺伝子変異(高頻度マイクロサテライト不安定性、MSI-High)を蓄積しています。この多数の変異は、がん細胞が免疫系から「異物」として認識されやすい特徴を生み出します。免疫チェックポイント阻害薬(例:ペムブロリズマブ)は、がん細胞が免疫系にかけるブレーキを解除する薬剤であり、MSI-Highの固形がんに対して、がんの種類を問わず高い効果を発揮することが証明されています33

これらの例は、生殖細胞系列の遺伝子情報が、がんの発生臓器にかかわらず、その生物学的特性を規定し、治療薬の選択に直結することを示しています。この流れは、がん治療が「臓器ごと」から「遺伝子変異ごと」へと移行しつつあることを象徴しています。

6.3 日本におけるがんゲノム医療

日本においても、国を挙げたがんゲノム医療の推進体制が構築されています52

  • がんゲノム医療中核拠点病院・連携病院: 全国に指定されたこれらの専門医療機関が、がんゲノム医療の提供拠点となっています52
  • がん遺伝子パネル検査: 標準治療が終了した、あるいは存在しない固形がん患者などを対象に、保険診療でがん遺伝子パネル検査が実施されています。この検査は、がん組織のDNA(体細胞)を解析し、治療薬の選択に役立つ遺伝子変異を探すことが主目的です6
  • 診断への波及効果: 興味深いことに、この治療目的のパネル検査が、遺伝性がん症候群の新たな診断経路となっています。パネル検査の結果、リンチ症候群を示唆するMSI-Highや、HBOCを疑わせるBRCA1/2変異など、生殖細胞系列変異の可能性が高い所見(二次的所見)が見つかることがあります。その場合、患者は遺伝カウンセリングに紹介され、確定診断のための生殖細胞系列検査へとつながります18。このように、進行がんの治療選択のために始まった取り組みが、結果としてその患者の家族全体の将来のリスク管理に貢献するという、診断と治療の好循環を生み出しているのです。

第7章 ヒューマン・エレメント:心理社会的、倫理的、法的側面のナビゲーション

遺伝的リスクを知ることは、医学的な側面だけでなく、個人の心理、家族関係、そして社会との関わりに深く影響を及ぼします。これらのヒューマン・エレメントへの配慮なくして、遺伝子医療は成り立ちません。

7.1 心理的負担

遺伝性がん症候群の診断は、当事者に大きな心理的ストレスをもたらします。「いつがんになるかわからない」という将来への不安、子どもに遺伝子変異を受け継がせてしまったかもしれないという罪悪感、そして度重なる検査や予防手術への恐怖など、その負担は多岐にわたります7。遺伝カウンセリングは、これらの不安や疑問に寄り添い、正確な情報を提供することで心理的負担を軽減する重要な役割を担いますが、必要に応じて臨床心理士や精神科医による継続的なメンタルヘルスケアも不可欠です5

7.2 家族とのコミュニケーション:繊細な責任

遺伝情報は、個人だけのものではなく、血縁者と共有される情報です。自身が遺伝子変異の保持者であると知った場合、それを家族に伝えるべきか、どのように伝えるかという、非常にデリケートな問題に直面します7。第一度近親者(親、子、兄弟姉妹)は、同じ変異を50%の確率で共有しているため、この情報は彼らが自身の健康管理について重要な決断を下すための機会となり得ます2。しかし、家族関係の複雑さや、相手が情報をどのように受け止めるかという懸念から、コミュニケーションは困難を伴うことがあります。遺伝カウンセラーが、客観的な情報提供の手紙(家族への手紙)を作成するなど、このプロセスを支援する体制が整えられています7

7.3 日本における遺伝子差別と保護

遺伝情報に基づく不当な差別(遺伝子差別)への懸念は、人々が遺伝子検査を受けることをためらわせる大きな障壁となり得ます。特に、生命保険への加入や就職における不利益な取り扱いが心配されます。日本における法整備と現状は以下の通りです。

  • ゲノム医療推進法: 2023年に成立したこの法律は、日本のゲノム医療に関する基本理念を定めており、その中で「ゲノム情報による不当な差別が行われることのないようにする」ことが明確に謳われています54。これは、国として遺伝子差別防止に取り組む姿勢を示した重要な一歩です。
  • 雇用分野: 厚生労働省は、Q&A形式の指針を発表し、採用選考時に応募者の遺伝情報を収集することは原則として認められないこと、また遺伝情報を理由とした解雇や不利益な配置転換は、権利の濫用として無効となる可能性が高いとの見解を示しています59
  • 保険分野: 生命保険協会および日本損害保険協会は、加盟各社が保険の引き受けや支払査定において、遺伝学的検査の結果を収集・利用しないことを公に表明しています62
  • 「保護の隙間」: これらの取り組みは前向きなものですが、多くは法律による直接的な罰則を伴う禁止規定ではなく、行政の指針や業界の自主規制に基づいています。そのため、患者団体などからは、より実効性のある包括的な差別禁止法の制定を求める声が上がっており、誰もが安心してゲノム医療の恩恵を受けられる社会の実現に向けた課題は依然として残されています44

よくある質問

家族にがん患者がいますが、遺伝子検査を受けるべきですか?

家族にがん患者がいるというだけで、すぐに遺伝子検査が必要になるわけではありません。重要なのは、本稿で述べた「レッドフラッグ」に当てはまるかどうかです。例えば、50歳未満で診断された、一人で複数のがんを発症した、家系に乳がんと卵巣がんの両方がある、といった特徴がある場合は、遺伝性がんの可能性が高まります。まずはかかりつけ医や専門の医療機関に相談し、遺伝カウンセリングを受けることをお勧めします18。カウンセリングでは、ご自身の家族歴を基にリスクを評価し、検査の必要性や意義について専門家と十分に話し合うことができます。

遺伝子検査の結果が「意義不明瞭バリアント(VUS)」でした。どうすればよいですか?

VUSは、遺伝子に変化が見つかったものの、それががんのリスクを上げるかどうか現時点では不明である、という非常に一般的な結果です24。重要なのは、この結果に基づいて予防手術などの医学的な決断を下すべきではないということです。VUSと判定されても、過度に心配する必要はありません。今後の研究によって、そのバリアントが病気に関係あるかどうかが判明する可能性があります。定期的に遺伝カウンセラーや医師に相談し、情報の更新がないか確認することが大切です。現在の健康管理は、ご自身の家族歴に基づいて推奨される検診を続けることが基本となります。

遺伝性がんと診断されたら、必ずがんになるのですか?

いいえ、必ずしも100%がんになるわけではありません。遺伝性がん症候群の原因遺伝子を持っていても、生涯がんを発症しない人もいます。これを「不完全浸透」と呼びます5。遺伝子診断は、がんになる運命を告げるものではなく、あくまで「リスクが高い状態である」ことを知らせるものです。この情報を基に、定期的なサーベイランス(監視)で早期発見に努めたり、リスク低減手術を選択したりすることで、がんによる死亡リスクを大幅に下げることが可能です。健康的な生活習慣を心がけることも、発症リスクを抑える上で重要です2

結論

8.1 エビデンスの統合

本レポートを通じて、「がんは遺伝するのか」という問いに対する多角的な答えを提示してきました。その核心を要約すると、以下のようになります。

  • がんは一般的に遺伝病ではありません。しかし、全がんの5〜10%は、単一の遺伝子に生じた強力な生殖細胞系列変異によって引き起こされる「遺伝性がん」です。
  • 遺伝性がんは、若年発症、多発・両側性がん、特徴的ながん種の組み合わせといった、予測可能なパターンを示します。
  • 遺伝的リスクを知ることは、運命の宣告ではなく、むしろ力を与えるツールです。それは、標的を定めたサーベイランスによる早期発見、リスク低減手術による予防、そしてプレシジョン・メディシンによる最適な治療を可能にします。
  • 遺伝子検査のプロセスにおいては、その医学的・心理社会的影響を十分に理解し、情報に基づいた自己決定を支援するための遺伝カウンセリングが不可欠です。
  • 日本においても、ゲノム医療の推進と遺伝子差別防止に向けた法整備や体制構築が進んでいますが、さらなる充実が求められています。

8.2 今後の展望:進化するランドスケープ

がんと遺伝をめぐる科学と医療は、日進月歩で進化を続けています。今後の展望として、以下のような分野が注目されます。

  • 多因子リスクスコア(PRS): 数十万から数百万の一般的な遺伝子多型(SNP)の情報を統合し、個人の疾患リスクを評価するアプローチです64。これは、単一の強力な遺伝子変異が見つからない「家族性がん」のリスク評価を精緻化し、より個別化された予防策につながる可能性があります。
  • リキッドバイオプシー: 血液などの体液サンプルから、がん由来の微量なDNA(ctDNA)を検出する技術です。これが高精度化すれば、高リスク者に対するサーベイランスにおいて、侵襲的な画像検査や内視鏡検査を補完、あるいはその頻度を減らす画期的なツールとなる可能性があります。
  • 新たな原因遺伝子の発見: 次世代シーケンサー技術の進歩により、これまで原因不明であった遺伝性がん症候群の新たな原因遺伝子が次々と同定されています19。これにより、診断の範囲が拡大し、より多くの人々が遺伝的リスクの恩恵を受けられるようになると期待されます。

8.3 最終提言

本レポートで提供した情報は、あくまで一般的な科学的知見と臨床的アプローチを概説したものです。個人の健康状態、家族歴、そして価値観は一人ひとり異なります。したがって、遺伝子検査を受けるかどうかの判断、具体的なサーベイランス計画の立案、治療法の選択といった個人的な医療上の決定は、必ず医師、遺伝カウンセラー、その他の医療専門家との十分な対話を通じて行う必要があります18

がんと遺伝に関する正確な知識を身につけることは、不必要な不安を取り除き、主体的に自身の健康と向き合うための第一歩です。このレポートが、そのための信頼できる羅針盤となることを願っています。あなたの健康を守る旅は、情報に基づいた専門家との対話から始まります。

免責事項この記事は情報提供のみを目的としており、専門的な医学的アドバイスに代わるものではありません。健康上の懸念がある場合や、ご自身の健康や治療に関する決定を下す前には、必ず資格のある医療専門家にご相談ください。

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