「インプラント避妊法とは?その安全性について」
性的健康

「インプラント避妊法とは?その安全性について」

はじめに

現代では、さまざまな避妊方法が開発・利用されており、その中でも「インプラント型避妊法」、いわゆる避妊インプラント(以下、「埋め込み型避妊具」と呼ぶことがあります)は、長期的な妊娠予防効果が期待できる手段として注目されています。体内に小さな棒状のデバイスを皮下に挿入して一定期間ホルモンを放出し、妊娠を防ぐという仕組みです。埋め込み型避妊具については「本当に安全なのか」「挿入後にどのような変化やリスクがあるのか」といった疑問を持つ方も多くいます。本記事では、埋め込み型避妊具の概要や仕組み、メリット・デメリット、考慮すべきリスクや副作用に加え、使用前にぜひ確認してほしい注意点や最新の知見を詳しくお伝えします。

免責事項

当サイトの情報は、Hello Bacsi ベトナム版を基に編集されたものであり、一般的な情報提供を目的としています。本情報は医療専門家のアドバイスに代わるものではなく、参考としてご利用ください。詳しい内容や個別の症状については、必ず医師にご相談ください。

なお、本記事はあくまでも一般的な医学・健康情報の提供を目的としており、最終的な判断は医療の専門家(医師など)と相談したうえで行ってください。


専門家への相談

本記事では、埋め込み型避妊具に関する情報を示しますが、個々の体質や健康状態によって適切かどうかは異なります。埋め込み型避妊具を選択するかどうか迷われる場合や、持病や服用中の薬がある場合は、必ず医療機関で担当医に相談し、メリット・デメリットをよく確認したうえで決定してください。なお、本記事内で紹介する内容は、あくまで複数の信頼できる医学情報や文献、そして医療従事者の知見を参照したものであり、診察や治療に取って代わるものではありません。


埋め込み型避妊具(避妊インプラント)とは?

埋め込み型避妊具は、非常に細く短い棒状のデバイスを上腕の皮下に挿入し、体内で少量の黄体ホルモン(プロゲスチン)を持続的に放出することで避妊効果を得る方法です。デバイス自体はマッチ棒程度の大きさしかなく、数年にわたり高い避妊効果を維持できる点が特徴とされています。具体的には、体内に放出されるホルモンが頸管粘液を濃く・粘度の高い状態にし、精子が子宮内へ進入するのを防ぐとともに、排卵を抑制する働きをもたらすと考えられています。

埋め込み型避妊具の代表的な種類

  • Implanon(インプラノン)
    1本のロッドを上腕に埋め込みます。作用期間は3年程度とされています。
  • Jadelle(ジャデール)やSinoplant
    2本のロッドを埋め込み、約5年の避妊効果を期待できるとされます。
  • Norplant(ノルプラント)
    6本のロッドを埋め込み、5~7年ほどの効果があると報告されています。

これらは日本国内での承認状況や医療施設での取り扱い状況によって入手可能かどうかが異なります。利用可能な種類については、必ず医療機関で確認する必要があります。


埋め込み型避妊具の仕組みと作用

埋め込み型避妊具は、皮下に挿入されたデバイスから少しずつホルモンが放出され、以下のような2つのメカニズムによって妊娠を防ぐと考えられています。

  • 頸管粘液を変化させる
    頸管粘液を粘度の高い状態に保ち、精子が子宮内に侵入するのを難しくします。
  • 排卵を抑制する
    脳下垂体-卵巣系ホルモンの分泌リズムに影響を与えることで、排卵自体を起こりにくくします。

こうした作用により、正しく埋め込まれた場合は99%以上の高い避妊効果を期待できると報告されています。


挿入の流れ:埋め込み前・埋め込み時・埋め込み後

1. 挿入前の確認

  • 健康状態の確認
    事前に医師が健康状態をチェックし、埋め込み型避妊具の利点と注意点、あるいは不適応となる既往症がないかを確認します。具体的にはホルモン製剤の使用歴、血栓症のリスクや肝臓疾患の有無、乳がんの既往・家族歴などを詳しく問診・検査します。
  • 検査と妊娠の有無の確認
    挿入時点で妊娠していないかどうかを確認するために、妊娠検査や超音波検査が必要となる場合があります。

2. 埋め込み時の処置

  • 局所麻酔
    上腕の内側(支障が少ない腕の部分)を消毒した後、局所麻酔を実施して痛みを抑えます。
  • 埋め込み
    特殊な挿入器具を用いて、極小サイズのロッドを上腕の皮膚の下に挿入します。この処置自体は数分程度で完了するのが一般的です。処置後、挿入した部位を保護するために短期間(24時間程度)、圧迫や包帯で固定することがあります。

3. 埋め込み後のケアとフォローアップ

  • 挿入部位の確認
    痛みや腫れ、内出血がひどい場合は、医療機関に連絡します。
  • ホルモンバランスの変化
    埋め込み直後から1~2か月は、体がホルモンに慣れるまで出血パターンの変化や軽度の体調変化が起こることがあります。多くは数か月以内に落ち着くことが多いです。

埋め込み型避妊具は安全?~副作用とリスク

「埋め込み型避妊具は本当に安全なのか?」という疑問がしばしば挙げられます。結論から言えば、基本的には非常に安全性が高い方法だと広く認められています。ただし、個人差があるため、以下のような副作用やリスクについても知っておく必要があります。

1. よくみられる副作用

  • 月経パターンの変化
    特に挿入後の6~12か月は不規則な出血、少量の出血、茶色いおりものが続く場合があります。ごく少数で長期的な出血パターンの乱れが持続する方もいますが、大半は時間とともに安定してきます。
  • 頭痛やめまい
    ホルモンバランスの変化により、一時的に頭痛や軽いめまいが生じることがあります。
  • 胸の張りや乳房痛
    ホルモンによる乳腺の刺激で、乳房の違和感・痛みを感じることがあります。
  • 吐き気
    稀に、ホルモン変化によって吐き気やムカムカ感が出る方もいます。
  • 体重増加
    食欲の変化やむくみにより体重が増えやすいと感じる方もいますが、因果関係ははっきりしない場合も多く、生活習慣によって左右されるともいわれています。
  • 挿入部位の違和感や腫れ
    皮下への挿入に伴う内出血・圧痛・腫れがしばらく続く場合があります。

2. プラスに働く場合のある副次的効果

  • 生理痛(月経困難症)の改善
    ホルモンの影響で、生理痛が軽くなる方もいます。
  • 経血量が少なくなる
    月経の回数や出血量が減り、貧血気味の方にはメリットとなり得る場合があります。

実際、ある調査(Planned Parenthoodによる統計)によると、埋め込み型避妊具を1年以上使用した3人に1人は月経がほとんど来なくなったという結果も報告されています。月経が停止しても、これ自体が健康上有害とはされていません。


埋め込み後、いつから効果が始まるのか

多くの場合、生理周期(初日を1日目とする)の5日以内に挿入した場合は、その日から避妊効果がすぐに得られるとされています。しかし、それ以外の日に挿入した場合は、1週間程度はほかの避妊法を併用するように指示されることが多いです。確実な効果を得るためには医師の説明をよく聞き、挿入前後のスケジュールを立てておくことが重要です。


リスクと注意すべき症状

埋め込み型避妊具は大きなトラブルが少ない方法ですが、以下のようなリスクや症状がある場合はただちに医師へ相談することが望まれます。

  • 挿入した部分の感染症
    まれに、埋め込み部位が赤く腫れ、痛みや膿が出るなどの症状があらわれることがあります。
  • デバイスの移動・変形
    挿入後にロッドが想定外の位置へ移動しているように感じる、もしくは触れると変形したように感じる場合などは、医療機関で位置を確認する必要があります。
  • 黄疸の症状(目や皮膚が黄色くなる)
    肝機能異常の兆候である可能性があり、血液検査などが必要となる場合があります。
  • 異常な性器出血
    普段より明らかに出血量が多い、出血が長期間にわたって続くなどの異常があるときは、早めに医師の診察を受けましょう。
  • 妊娠の可能性
    しっかり挿入しても、絶対に0%というわけではありません。もし妊娠した可能性を感じたら、自己判断せず検査・受診を行うことが大切です。

埋め込み型避妊具を検討する際のポイント

1. 適さない可能性のある健康状態

埋め込み型避妊具は原則、安全性が高い方法として知られていますが、以下のような疾患やリスク因子をお持ちの場合は不向きとされています。

  • デバイスに含まれる成分に対するアレルギー
  • 重篤な血栓症の既往(深部静脈血栓症や肺塞栓など)
  • 肝臓疾患(肝腫瘍など)がある、または過去に患ったことがある
  • 乳がんの既往や疑いがある
  • 原因不明の性器出血がある

また、BMI(肥満度)が30以上の方では効果がやや低下する可能性も指摘されています。ただし、こうしたリスク因子がある方でも一律に禁忌となるわけではなく、個々の状況を考慮して判断するため、必ず担当医に相談してください。

2. メリット

  • 避妊効果が非常に高い(99%以上)
  • 挿入後は数年間、手間なく避妊を続けられる
  • 性的行為や日常生活の妨げになりにくい
  • 排卵機能はデバイス抜去後すぐ回復しやすい
  • 授乳中でも使用可能とされるケースが多い
  • 月経痛の軽減、過多月経の改善につながる可能性がある

3. デメリット

  • 出血パターンの乱れ
    不正出血や月経不順が気になる場合もあります。慣れてくると落ち着くことが多いですが、人によっては長期にわたり続くことがあります。
  • 挿入・抜去のプロセスが必要
    挿入や抜去は医療従事者による処置が必須であり、まれに皮下組織に癒着して抜去が困難になる例もあると報告されています。
  • デバイスの移動・まれな感染リスク
    埋め込み場所が想定よりずれたり、細菌感染が起こるリスクはごくわずかですがゼロではありません。
  • 挿入部位の瘢痕(小さな傷跡)
    小さいですが、切開痕や瘢痕が気になる方もいます。

特に一番多い理由としては、「予想以上に出血が長引く」ことを懸念し、使用中止を希望する例があるともいわれています。ただし、長期的にはむしろ月経が軽くなるか、ほとんど止まる方が多いため、メリットを感じる人も多いのが特徴です。


最新の研究知見と実際の臨床データ

日本国内外の研究やガイドラインでは、埋め込み型避妊具の有効性・安全性が広く示されています。以下、近年(過去4年以内)に公表された主な研究例を挙げます。

  • Raymond EGら(2021年)
    「A systematic review of the effectiveness of the etonogestrel implant in real-world settings」(Contraception and Reproductive Medicine, 6, Article 27, doi:10.1186/s40834-021-00184-6)では、エトノゲストレルを使用したインプラント型避妊具の実臨床での有効性を、複数の研究をまとめて評価しています。総合的な失敗率(避妊失敗)や副作用を整理し、実際に非常に高い予防効果が期待できると結論づけられました。
  • Vaughn MLら(2022年)
    「Implementation of the subdermal contraceptive implant for adolescents」(Journal of Pediatric and Adolescent Gynecology, 35(3), 281-288, doi:10.1016/j.jpag.2021.12.007)では、10代の若年層への埋め込み型避妊具導入に関する実践報告を行い、特に思春期の健康管理において有用な選択肢の1つとなり得るとされています。ホルモン製剤の副作用に対する懸念が若年者には大きいものの、正しいカウンセリングとフォローアップの体制があれば安全に活用できるという知見が示されました。
  • Omwenga JMら(2020年)
    「The Impact of Implant-based Contraception on Menstrual Patterns among Kenyan Women」(BMC Women’s Health, 20, 173, doi:10.1186/s12905-020-01052-7)では、ケニアの女性を対象に埋め込み型避妊具が月経パターンに与える影響を調査しました。その結果、多くの参加者で経血量の減少や生理痛の軽減が報告され、全般的な満足度が高かったという報告があります。ただし個人差が大きい点も指摘されており、日本国内でも同様に、個別の体質や生活習慣に合わせた判断が必要だと考えられます。

これらの最新研究はいずれも、埋め込み型避妊具の安全性と有効性を裏づけるデータを提示しており、日本人女性にも概ね応用可能と考えられています。ただし生活環境や体格・体質によってリスクや副作用は異なる場合があり、使用を開始する際は必ず医療専門家との面談が必要です。


よくある質問

  • 挿入後、すぐに性行為をしても大丈夫?
    生理周期の開始から5日以内に挿入した場合は即日から避妊効果がありますが、それ以外は1週間程度ほかの避妊法と併用してください。
  • 3年使用した後、取り出さずに放置するとどうなる?
    デバイスごとに決められた使用期限を過ぎるとホルモン放出量が大幅に減少して避妊効果が落ちるため、原則として挿入した期間が終わる前に抜去・交換するのが望ましいです。
  • 抜去後、すぐに妊娠は可能?
    一般的には、抜去後すぐに排卵機能が回復するため、妊娠を望む場合は比較的早期に自然妊娠しやすいとされています。
  • 挿入時、痛みはどの程度?
    局所麻酔を用いるため、強い痛みはほとんど感じないことが多いです。数日間は軽い筋肉痛や内出血が出る場合もあります。
  • 埋め込み型避妊具が体内で移動してしまうことはある?
    非常にまれですが、衝撃や組織との癒着などによりわずかにずれる可能性は報告されています。触れて確認できないほど移動したと感じたら、医師に相談してください。

最後に:埋め込み型避妊具は安全か?

結論として、埋め込み型避妊具は一般的には非常に安全性と有効性が高い避妊方法と評価されています。特に授乳期にも使いやすく、服用忘れの心配がないというメリットから、忙しい現代女性に向いた選択肢として注目されています。ただし、ホルモン特有の副作用や、体質・ライフスタイルによる個人差が少なくないため、実際に利用するかどうかは医師との相談が不可欠です。


医療専門家への推奨と受診の目安

  • 十分な検査やヒアリングを受けること
    避妊具の埋め込みは、服薬歴や持病(特に血栓症や肝疾患、乳がんなど)の有無が大きく影響します。必ず医師の指示に従い、安全性を確保したうえで行ってください。
  • 定期的なフォローアップ
    挿入後は体の変化に注意を払い、不正出血や腹痛、異常な倦怠感などが続く場合は早めに受診しましょう。
  • 抜去時期の管理
    使用可能期間(3年、5年など)が近づいたら、適切なタイミングで医師のもとで抜去や交換を受けるようにしましょう。

参考文献


注意事項

  • 埋め込み型避妊具は、医療従事者による処置と適切なアフターフォローが必要です。
  • 個々の体質や持病、ライフスタイルによっては向かない場合もあります。
  • 万一、痛みや異常出血、体調不良が長引く場合は、早めに病院を受診してください。

本記事で紹介した情報は、あくまで一般的な医学情報・保健指導の参考としてご利用いただくものであり、診断や治療方針を決定するものではありません。最終的には専門家(医師・薬剤師など)と相談のうえ、個別の状況に合わせて判断してください。

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