免責事項
当サイトの情報は、Hello Bacsi ベトナム版を基に編集されたものであり、一般的な情報提供を目的としています。本情報は医療専門家のアドバイスに代わるものではなく、参考としてご利用ください。詳しい内容や個別の症状については、必ず医師にご相談ください。
はじめに
近年、子どもの病気と思われがちだった手足口病が、大人にも見られるケースが報告されています。とくに免疫力が低下している方は、子どもと同様の症状を呈したり、より重症化したりする可能性があります。多くの人が「手足口病は子ども特有の病気だ」と誤解しがちですが、実際には成人にも起こりうる病気です。本記事では、大人における手足口病の症状や原因、リスク、治療・対策方法など、あらゆる情報を整理して詳しく解説します。
専門家への相談
本記事は、多方面の医療情報をもとに編集されています。手足口病に関する医療情報や疫学的知見は、Mayo ClinicやCDC(Centers for Disease Control and Prevention)、NHS(英国国民保健サービス)などの公的機関や国際的な学術誌における論文を参考としてまとめました。これらの機関や学術誌は、多数の専門家による査読を経て情報を公開しており、その信頼性は国際的にも評価されています。ただし、最終的な診断や治療については主治医や専門の医療従事者に直接ご相談ください。
手足口病とは
手足口病は、主にコクサッキーウイルス(coxsackievirus)やエンテロウイルス(enterovirus)の感染によって発症するウイルス性感染症です。多くは子どもに多発する病気ですが、ウイルス自体は大人にも感染を引き起こし、発症リスクをゼロにはできません。ウイルスは主に飛沫や接触(鼻水や唾液、便、発疹の中の液など)によって伝播し、保育園や学校、オフィスなど人が集まる環境で感染拡大することがよくあります。
大人でもかかる理由
- 免疫力の低下
成人であっても、睡眠不足、栄養バランスの乱れ、ストレスや慢性疾患などで免疫力が落ちている場合、子ども同様に感染しやすくなります。 - 子どもとの接触機会
子育て家庭、保育施設、学童保育、教育現場など、子どもと日常的に接する機会の多い大人は、ウイルスにさらされるリスクが自然と高くなるため、発病の可能性が高まります。 - ウイルスの多様性
手足口病を引き起こすコクサッキーウイルスA16やエンテロウイルス71などは型が複数あり、一度かかってもほかの型に再感染するリスクがゼロにはなりません。
大人の手足口病は危険?
子どもに比べると、成人の手足口病は一般的に症状が軽度な場合もありますが、重症化したり合併症を伴ったりするケースが報告されています。とくに妊娠中の女性や基礎疾患のある方などは注意が必要です。
大人で重症化する可能性
- 高熱が長引く
子どもの場合、発熱は数日程度で下がることが多いですが、大人では熱が長く続き、全身倦怠感が強く出ることがあります。 - 皮膚症状がひどくなる
手足の皮疹がより大きくなり、痛みを伴う水疱を形成することもあり、仕事や家事に支障をきたすほどの苦痛を感じる人もいます。 - 神経系の合併症リスク
まれではありますが、脳炎や髄膜炎などを引き起こす可能性が指摘されています。アメリカのCDCによると、手足口病の病原ウイルス(とくにエンテロウイルス71など)が中枢神経系に影響を与えるケースが報告されており、成人でも完全にリスクがないとは言い切れません。
実際に、Journal of Clinical Virology(2022年)に掲載された韓国の研究では、2019年から2021年にかけて病院を受診した成人手足口病患者のうち、一部の人で強い倦怠感や脳神経系の症状が長引いた事例が見られたと報告されています(Park Kら、DOI:10.1016/j.jcv.2022.105086)。ただし、すべての成人が重症化するわけではなく、もともとの体調や基礎疾患の有無によってリスクが大きく変わります。
手足口病の主な原因
多くの場合、コクサッキーウイルスA16によって引き起こされますが、エンテロウイルス71やほかのコクサッキーウイルス(A型やB型)でも発症することがあります。ウイルスは唾液、便、鼻汁、咳やくしゃみの飛沫などを介して伝播し、不十分な手洗いなどでさらなる拡散が起きる可能性があります。
- 飛沫感染(咳・くしゃみ)
- 接触感染(皮疹の水疱液や便など)
- 口腔内粘膜への接触
日本国内では比較的夏から秋にかけて流行しやすい傾向がありますが、近年では一年を通じて散発的に報告されることもあり、時期を問わず注意が必要です。
大人の手足口病の症状
一般的には、子どもの症状と似ていますが、以下の特徴が大人の場合に顕著に出ることがあります。
- 発熱・倦怠感
子どもよりも発熱の期間が長くなる場合があり、頭痛や全身の倦怠感が強く現れることがあります。 - 口腔内の水疱・口内炎
舌、歯ぐき、頬の内側などに痛みを伴う水疱や口内炎が出現し、食事や水分摂取がしにくくなるケースもあります。 - 手足やお尻の発疹
赤い斑点や水疱が多くの場合、手のひらや足の裏、指の間などに表れ、ときにお尻やひざ周りにも発疹が広がります。かゆみよりも痛みを訴える人が多いことが特徴です。 - 呼吸器症状
軽い咳、鼻水、のどの痛みなど風邪のような症状を伴う場合もあります。 - 下痢・嘔吐
成人では胃腸症状(嘔吐・下痢)を伴うこともあり、脱水状態に陥りやすい点に注意が必要です。
こうした症状は通常、5日前後から1週間ほどで軽快し始め、多くは10日以内に回復するといわれています。しかし、免疫力が落ちている場合や、発疹部位が広範囲に及んだ場合などはより長引く可能性があります。
妊婦は要注意?手足口病のリスク
妊娠中に感染すると、母体だけでなく胎児への影響を懸念する声があります。一部の報告では、妊娠初期や後期に手足口病にかかった場合、流産や早産リスクがわずかに増加するとの指摘もありますが、確定的ではなく、さらなる研究が必要とされています。ただし妊娠中は免疫力が変動しやすく、他の合併症を誘発する恐れも否定できません。
- 流産・早産など
はっきりした因果関係は十分に解明されていないものの、可能性を指摘する論文もあります。 - 胎児への影響
先天性心疾患や奇形リスクへの関連を示唆する研究もありますが、サンプル数が限られ、十分な臨床的エビデンスが欠如しているのが現状です。
そのため、妊娠中に発熱や発疹など、少しでも手足口病が疑われる症状があれば、念のため産婦人科や内科を早めに受診することが望ましいでしょう。
手足口病は自然治癒するのか
子どもの場合と同様、多くの成人患者もおよそ1週間から10日で症状が落ち着き、特別な治療をせずに自然治癒するケースが多いと報告されています。実際、CDCでも手足口病に特化した治療薬やワクチンはまだなく、対症療法(痛みや熱を抑える治療)が中心とされています。
軽症なら自宅療養でOK?
多くの場合、軽症であれば以下のような対策をとりながら自宅で安静に過ごせば回復に向かいます。
- 水分補給の徹底
嘔吐や下痢がある場合は脱水を防ぐため、こまめに水分補給を心がける。 - 口腔内の痛みケア
飲食時に痛みを感じる際は、刺激が少なく冷たい食品や、やわらかい食事を選ぶ。 - 発熱時の対策
熱が高い場合は解熱剤を使用したり、ぬるめのシャワーや氷枕などで体温を下げる。 - 十分な休息
仕事や家事をなるべく控え、身体を休ませることで回復を早める。
ただし、症状が強く出て食事や水分が十分に取れない、長期にわたって高熱が続く、神経学的な症状(ふらつき、ひどい頭痛、意識障害など)が出現した場合は、合併症の可能性も否定できません。迷わず医療機関を受診するようにしましょう。
重症化と合併症のリスク
手足口病は自然治癒しやすい病気とはいえ、大人の場合は次のような合併症を引き起こすケースが稀にあります。
- 髄膜炎
高熱と強い頭痛、首の後ろの硬直が起こる場合は髄膜炎のサインかもしれません。 - 脳炎
意識障害やけいれんが起こるような深刻な症状の場合は脳炎が疑われます。 - 心筋炎
ウイルス感染が心臓に影響して動悸や胸の痛みが持続するなどの報告例があります。 - 爪の変形や脱落
回復後数週間から数か月後に爪が剥がれたり、変色したりする症状が出る場合がありますが、通常は自然に回復することが多いとされています。
いずれも極めて稀ですが、大人は社会的・家庭的な責任があるため、仕事や子育てに影響が出る前に早めの対応が肝心です。
予防策と注意点
手足口病は飛沫や接触によって簡単に感染が拡大するため、以下のような予防策が推奨されています。
- 手洗いの徹底
食事前、トイレ後、外出先から帰宅したときなど、こまめにせっけんを使用して手を洗うことが第一の予防策です。 - マスクの着用
特に咳やくしゃみの症状がある人が近くにいる場合や、人の多い場所ではマスクを着用して飛沫を防ぎましょう。 - 清掃・消毒
テーブルやドアノブ、子どものおもちゃなどはアルコール消毒や洗剤でこまめに拭き掃除をすることが推奨されています。 - タオル・食器の共用を避ける
家庭内でも手足口病の症状がある人とは、タオルや食器を別にするのが理想的です。 - 体調管理を徹底
免疫力が低下すると感染しやすくなるため、十分な睡眠とバランスの良い食事を心がけ、ストレスをできるだけ軽減することが大切です。
中国で2016年から2020年にかけて行われた大規模な後ろ向き観察研究(Zhang Wら、BMC Infect Dis. 2021;21:42. doi:10.1186/s12879-020-05732-0)によると、徹底した手洗いと予防的な衛生管理を行う地域では手足口病の発生率が統計的に有意に低下したとされています。子どもだけでなく成人にも有効な対策として、基本的な手指衛生が改めて重要視されています。
治療とケアのポイント
対症療法
手足口病はウイルス性疾患であり、特効薬やワクチンが確立されていません。治療は以下のような症状を和らげる「対症療法」が中心です。
- 解熱鎮痛剤の使用
発熱や痛みに対しては、市販の解熱鎮痛剤を適切な用量で使用して症状を抑えます。 - 口腔内ケア
口内炎や水疱がある場合、塩うがいやうがい薬を使ってのどや口内を清潔に保ち、刺激の少ない食事を摂ることで症状をやわらげます。 - 湿疹や水疱の保護
発疹部分を清潔に保ち、かきむしらないように注意を促します。無理に水疱を破ると二次感染のリスクが高まるため、清潔なガーゼなどで覆う場合もあります。
病院受診の目安
- 1週間を過ぎても症状が改善しない
高熱や強い痛み、皮疹の悪化がみられる場合。 - 水分・食事が全く取れない
脱水症状が疑われる。 - 神経系の症状(頭痛、嘔気、ふらつき、痙攣など)
髄膜炎や脳炎の可能性を考慮し、早めに受診。 - 呼吸困難や動悸などの循環器症状
心筋炎などのリスクが捨てきれない場合。
症状が中度~重度になる兆しを感じたら、早めに内科や皮膚科を受診して専門家の診断を受けましょう。
日常生活の注意点
水分と栄養
発熱や下痢などで体力が落ちるため、スポーツドリンクなどでこまめに水分補給を行いましょう。口内炎で痛みがある場合は、ゼリーやプリン、柔らかいおかゆなど、刺激が少ないものを中心に食べると飲み込みやすく、必要な栄養を確保しやすいです。
子どもとの接触
もし家族内や職場に子どもがおり、その子が手足口病になった場合、二次感染を防ぐために注意が必要です。大人が先に感染している場合でも、ほかの型のウイルスに再感染する可能性はゼロではありません。マスクの着用、定期的な手洗いを徹底するとともに、しばらくはタオルや寝具を分けるなどの対応を行いましょう。
仕事や外出
体調が悪化する前に早めに休養を確保し、周囲にうつさないよう、無理な外出や勤務は避けることが望ましいです。実際、成人の手足口病は疲労感が強く出る人も多く、仕事や家事との両立が難しくなる恐れがあります。
妊娠中のケア
妊娠中はなるべく感染源に近づかないことが最善策です。家族や周囲に罹患者がいる場合は、普段よりも手洗いを徹底し、必要に応じてマスクや手袋を活用するなど予防策を強化してください。万が一感染した場合は、産婦人科と連携しながら早めに対処しましょう。
手足口病に関する最新の研究動向
手足口病は主に小児の病気として研究が盛んに行われていますが、成人症例に着目した報告も近年増えています。たとえば、中国や韓国など東アジア地域の大規模調査では、大人が発症した場合に重症化するリスク因子(免疫状態や合併疾患など)について検討が進められています。また、予防ワクチンの開発は子ども向けを中心に研究されてきましたが、成人を含めた安全性と有効性の評価が急務とされており、今後さらにエビデンスの蓄積が進む可能性があります。
結論と提言
大人の手足口病は、子どもと同じくウイルス感染が原因で発症し、多くの場合は1週間から10日程度で自然に治癒します。しかし、妊娠中や基礎疾患のある方は重症化しやすくなる恐れがあり、少数ではありますが脳や心臓などの重大な合併症を引き起こす報告例もあります。以下のポイントを改めて確認しておきましょう。
- 感染経路の理解と徹底した衛生管理
手洗い・うがい・マスク着用・消毒はもっとも基本的かつ有効な予防策です。 - 早期の受診と十分な休養
重症化リスクが少しでも疑われる場合や、症状が長引く場合は早めに医療機関を受診することが大切です。 - 妊娠中は特に注意
合併症や胎児への影響は極めて少ないと考えられますが、免疫状態などを考慮するとリスクを見過ごせません。 - 自然治癒を促す対症療法
特効薬やワクチンは現時点で確立されていないため、発熱や口内炎、発疹などを軽減するケアが中心です。 - 周囲へうつさない配慮
家族や職場の人への感染拡大を防ぐため、できる限り接触を避け、必要に応じて外出を控えましょう。
最後に、手足口病は基本的に重症化しにくい一方で、一部のケースでは大人でも症状が強く出ることがあります。自分の体調管理を徹底するとともに、家族や周囲の健康状態にも配慮した行動をとってください。
本記事で紹介した内容は、すべて信頼できる文献や医療機関の情報をもとにまとめていますが、最終的な判断や治療方針は医師や専門家の診断に従ってください。
参考文献
- Hand-foot-and-mouth disease – Mayo Clinic(アクセス日不明)
- Hand, Foot And Mouth Disease In Adults And Children: Myth-busting And Hard Facts – Domestos(アクセス日不明)
- Hand, foot and mouth disease – NHS(アクセス日不明)
- Hand, Foot, and Mouth Disease in Adults – Penn Medicine(アクセス日不明)
- Symptoms and Diagnosis of Hand, Foot, and Mouth Disease – CDC(アクセス日不明)
- Zhang W, Dai W, Zhao W, Li J, Zhang T. The prevalence and risk factors of hand, foot and mouth disease among children in Xi’an city, Northwestern China, from 2016 to 2020. BMC Infect Dis. 2021;21:42. doi:10.1186/s12879-020-05732-0
- Park K, Lee J, Jang Y, Yoon K. Clinical features and epidemiology of adult hand, foot and mouth disease in a tertiary care hospital in South Korea, 2019–2021. J Clin Virol. 2022;147:105086. doi:10.1016/j.jcv.2022.105086
免責事項
本記事の内容は一般的な健康情報を提供するものであり、診断や治療を代替するものではありません。個々の症状や体質、既往症などによって最適なケアは異なるため、必ず医療機関や専門家に相談のうえで判断してください。
以上の情報は、多くの医療従事者や公的機関のデータをもとに編纂されていますが、最新の研究や個々の事情によって推奨が変わる場合があります。判断に迷う場合は、専門家の意見を仰ぐことをおすすめします。
この記事が皆さまの参考となり、健康管理や予防にお役立ていただければ幸いです。どうか無理をせず、おかしいと感じたら早めに医療機関を受診してください。