女性の歓喜の秘訣「クリトリス」とは?専門家が科学的構造から性の健康まで徹底解説
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女性の歓喜の秘訣「クリトリス」とは?専門家が科学的構造から性の健康まで徹底解説

現代の女性にとって、性の健康(セクシュアル・ヘルス)と自己理解は、QOL(生活の質)に直結する重要なテーマです。しかし、日本の文化的背景や学校教育における知識の偏りから、多くの人が自身の身体、特に性の快感に特化した「クリトリス」について、正確な情報に触れる機会が十分とは言えないのが現状です12。これは決して個人の努力不足や「知らないことが恥ずかしい」という話ではなく、社会全体の情報環境やジェンダー観に由来する構造的な課題だと考えられます。この記事は、現時点で利用できる信頼性の高い科学的根拠に基づき、クリトリスの解剖学・生理学から日常のケア、痛みや不快感があるときの受診の目安までを整理し、読者一人ひとりが自身の身体とセクシュアリティを肯定的かつ主体的に捉えるための「エンパワーメント」に貢献することを目指しています。

本記事は、JHO(JapaneseHealth.org)編集委員会が、厚生労働省や日本の専門学会、世界保健機関(WHO)、査読付き論文などの信頼できる情報に基づいて作成しました。最新のガイドラインや公的統計を確認しつつ、日本で生活する方が日常の中で実践しやすい形に整理していますが、個々の症状に対する最終的な診断や治療方針は、必ず医療機関でご相談ください。

要点まとめ

  • クリトリスは、外から見える部分はその全体のごく一部であり、体内には全長約9~11cmにも及ぶ複雑な構造が広がっています。
  • その唯一の機能は性的快感をもたらすことであり、人体のなかで最も知覚神経が集中する極めて敏感な器官です。
  • いわゆる「Gスポット」は独立した器官ではなく、膣壁を通して刺激されるクリトリス内部構造の一部であるというのが、現代の科学的コンセンサスとして有力な見解です。
  • クリトリスの大きさや形、感覚には大きな個人差があり、優劣や「正解の形」は存在しません。正しい知識に基づくケアとオープンなコミュニケーションが、健やかな性のために重要です。
  • 持続的な痛みや不快感、出血などがある場合は、一人で抱え込まずに産婦人科や女性泌尿器科などの専門家に相談することが推奨されます。

クリトリスとは何か? – 基本的な定義と医学的名称

クリトリスは、女性の外性器の一部であり、その唯一の機能が性的快感をもたらすことである、極めて特殊で重要な器官として医学的に定義されています。日本語の医学用語では「陰核(いんかく)」と呼ばれ、一般的に広く使われる「クリトリス」と同じものを指します3。発生学的には男性の陰茎(ペニス)と相同の器官ですが、男性器とは異なり排尿機能を持たず、その性質は「快感に特化」している点が大きな特徴です。

なお、医療現場のカルテや教科書などでは「陰核」という表記が多く使われる一方、一般向けの情報や日常会話では「クリトリス」というカタカナ表記が一般的です。本記事では、読者にとって馴染みやすい「クリトリス」を中心に用いながら、必要に応じて医学用語としての「陰核」という呼び方も併記していきます。どちらも同じ器官を指す言葉であり、「言い方による優劣」はありません。

【図解】クリトリスの解剖学:目に見える部分と、その奥に広がる世界

「クリトリスは、外から見える小さな突起が全てだと思っていませんか?」――この問いに「はい」と答える人は少なくないでしょう。驚くべきことに、従来の医学教科書ですら不正確な記述が長年見受けられました3。しかし1990年代後半からMRIなどの画像診断技術が発達し、その全体像が徐々に明らかになってきました。特に、オーストラリアの泌尿器科医ヘレン・オコンネル博士らの研究は、クリトリス理解に革命をもたらしたと言われています45

クリトリス複合体の全体像:氷山の一角

クリトリスは、体外に見える部分が構造全体のほんの一部に過ぎない「氷山の一角」です。実際には、平均して全長9~11cmにも及ぶ「クリトリス複合体(Clitoral Complex)」と呼ばれる三次元的な構造が、骨盤内に広がっています4。MRIや解剖学的研究により、陰核亀頭、陰核体、陰核脚、前庭球といった複数の部位が一つの機能的なユニットとして連動し、膣や尿道周囲の組織と密接に関わっていることが確認されています。

1. 外部から確認できる構造:陰核亀頭と陰核包皮

陰核亀頭 (Glans clitoris): 小陰唇が上部で合わさる部分にある、小さく丸い突起です。ここには8,000本以上(一説には15,000本6)もの知覚神経終末が集中しており、人体で最も敏感な部分の一つとされています。その大きさ、形、色には非常に大きな個人差があり、医学的に優劣は一切存在しません37。思春期や妊娠・出産、更年期などのライフステージ、ホルモン状態によっても見た目が変化することがあり、「写真で見た誰かの外陰部」との比較だけで正常・異常を判断することはできません。

陰核包皮 (Clitoral hood): 陰核亀頭を保護する役割を持つ皮膚のひだです。これが常に亀頭を覆っている状態は「クリトリス包茎(陰核包茎)」と呼ばれることがありますが、その定義や衛生上の注意点については後述します37。包皮の形や量にも幅広い個人差があり、「よく見えるから良い」「隠れているから悪い」といった価値判断は不要です。

2. 体内に隠された主要構造:陰核体、陰核脚、前庭球

陰核体 (Body of the clitoris): 陰核亀頭から体内に向かって伸びる本体部分です。性的興奮時に血液を溜めて硬くなる勃起性の海綿体組織でできており、陰核亀頭で感じた刺激を全体として支える「柱」のような役割を果たします3

陰核脚 (Crura of the clitoris): 陰核体が二股に分かれ、鳥の叉骨(ウィッシュボーン)のように左右の恥骨に沿って伸びる部分です。この「脚」が身体に構造を固定し、勃起時において重要な役割を果たします46。膣の前壁側からの刺激が「奥の方まで響くように感じる」背景には、この脚の位置関係が深く関わっていると考えられています。

前庭球 (Vestibular bulbs): 膣口を挟むように存在する、一対のタマネギのような形状をした勃起性の海綿体組織です。性的興奮時に血液で満たされて膨張・硬化し、膣全体を支え、膣内への挿入時に内部から豊かな圧迫刺激を生み出すと考えられています4。いわゆる「膣の中の気持ちよさ」の一部が、実はこの前庭球を含むクリトリス複合体によるものである、という理解が広がりつつあります。

表:クリトリス複合体の解剖学的構成要素と機能

部位の名称 分類 主な機能 相同の男性器
陰核亀頭 (Glans clitoris) 外部構造 性的快感の知覚(神経終末が集中) 陰茎亀頭 (Glans penis)
陰核体 (Body of the clitoris) 内部構造 勃起、興奮の維持 陰茎海綿体 (Corpus cavernosum)
陰核脚 (Crura of the clitoris) 内部構造 身体への固定、勃起の支持 陰茎脚 (Crus of penis)
前庭球 (Vestibular bulbs) 内部構造 勃起、膣の支持、内部からの圧迫刺激 尿道海綿体球 (Bulb of penis)

クリトリスの生理学:性的興奮からオーガズムまでのメカニズム

性的反応のプロセス:脳から始まる連鎖反応

性的興奮は、身体的な接触だけでなく、視覚、聴覚、記憶、空想といった多様な刺激によって引き起こされます。これらの刺激がきっかけとなり、脳からドーパミンなどの神経伝達物質が放出され、自律神経系を通じて骨盤内への血流を増加させる指令が伝わります89。この血流の増加により、クリトリス複合体(陰核体、脚、球)の海綿体組織が血液で満たされ、膨張・硬化する「勃起」が起こります。これと同時に、膣壁にあるバルトリン腺などから潤滑液の分泌が促され、性的接触をスムーズにするための一連の生理的変化が進行します。

こうした反応は「脳から身体への双方向のやり取り」であり、気分の落ち込みやストレス、パートナーとの関係性、過去の経験など、心理社会的な要因にも大きく影響されます。同じ刺激を受けても、その日の体調や心の状態によって「気持ちよさ」が変化するのは、決して珍しいことではありません。

オーガズムの科学:快感のピークで起こること

持続的な刺激によって性的興奮が頂点に達すると、オーガズムが誘発されます。これは生理学的には、骨盤底筋群が約0.8秒間隔でリズミカルに不随意収縮する現象として説明されます。この収縮が、強烈な快感の波として知覚されるのです。マスターズとジョンソンの画期的な研究以来、多くの研究が、女性のオーガズム達成にはクリトリスへの直接的または間接的な刺激が重要であることを示唆しています106

一方で、「オーガズムに達すること」だけが性行為やセルフプレジャーの目的ではありません。快感の強さや到達のしやすさには大きな個人差があり、ライフステージや服用中の薬、慢性疾患の有無などによっても変化します。重要なのは、誰かが決めた「理想的な反応パターン」に自分を当てはめることではなく、自分にとって心地よいペースやスタイルを尊重することです。

Gスポットとの関係:科学的コンセンサスの現在地

長年、女性の快感を巡る議論の中心にあった「Gスポット」。多くのメディアで魔法のボタンのように語られてきましたが、現代の科学では、Gスポットが独立した解剖学的器官ではないという見解が最も有力です。イタリアの内分泌学者エマヌエーレ・ジャニーニ博士らの研究なども踏まえ、現在では、Gスポットとは「膣の前壁(お腹側)を通して刺激されるクリトリスの内部構造(特に前庭球や尿道周囲の海綿体組織)と、それに隣接する神経叢の機能的な集合体」と理解されています11。この科学的知見は、長年の「Gスポット神話」に一定の区切りをつけ、女性の快感の源が、その大部分においてクリトリスに由来することを明確に示しています。

ただし、膣の前壁付近を刺激したときに「ここが特に気持ちよい」と感じる人がいること自体は否定されません。その感覚の背景にある構造が、クリトリス複合体やその周囲の神経・血管ネットワークだと理解しておくことで、「自分にはGスポットがないのかもしれない」といった不安から解放されやすくなります。

クリトリスと性の健康:日常のケアと知っておくべきこと

衛生管理と正しいケア方法

外陰部(デリケートゾーン)は非常に敏感な皮膚と粘膜で構成されており、「清潔にしたい」という気持ちから洗いすぎてしまうことが少なくありません。膣内部には自浄作用があるため、基本的に膣の中まで洗う必要はなく、洗浄は外陰部のみに留めるのが基本です。殺菌性の強い石鹸やボディソープは、必要な常在菌まで洗い流してしまい、かえってかゆみやおりものの変化の原因となりかねません。弱酸性・無香料のデリケートゾーン専用ソープを使用するか、ぬるま湯で優しく手でなでるように洗うだけで十分です1213

また、ナプキンやおりものシートを長時間つけっぱなしにすると、湿気や摩擦によってかぶれやすくなります。こまめな交換や、通気性のよい綿素材の下着を選ぶことも大切です。ウォシュレットのビデ機能で膣内まで頻繁に洗浄する習慣も、自浄作用を損なう可能性が指摘されているため、医師から特別な指示がない限り避けましょう13

ライフステージによる変化とセルフケアのポイント

クリトリスや外陰部の感度、潤い、見た目は、年齢やホルモンバランス、出産歴などによっても変化します。思春期にはホルモン分泌の変動により感度が不安定になったり、妊娠・出産期には血流量や皮膚の状態の変化から、違和感や敏感さを感じることがあります。更年期以降はエストロゲンの低下に伴い、膣や外陰部の乾燥や萎縮が進み、こすれによる痛みや性交痛が起こりやすくなることも知られています16

こうした変化は「老化だから我慢するしかない」と片付ける必要はありません。保湿効果のある外用剤や潤滑剤の活用、骨盤底筋のトレーニング、必要に応じたホルモン補充療法など、医学的に推奨される対処法がいくつも存在します。症状や悩みが続く場合は、「この程度で受診してもいいのかな」と迷わず、早めに専門家に相談することが、自分の快適さとQOLを守る近道になります。

安全な性行為とパートナーシップ

コンドームの正しい使用は、望まない妊娠を防ぐだけでなく、性感染症(STD)を予防する上で最も効果的な手段の一つです。この点は日本産科婦人科学会の診療ガイドラインでも明確に推奨されています14。厚生労働省の感染症発生動向調査によれば、日本国内では梅毒やクラミジアなどのSTD報告数が近年も高い水準にあり、とくに若年層での増加が懸念されています15。自分とパートナーの健康を守るためにも、予防の意識は極めて重要です。

また、潤滑剤(ローション)の使用は、摩擦による痛みや不快感を軽減し、双方の快感を高める上で非常に有効です。水性、シリコンベース、オイルベースといった種類があり、それぞれに特徴がありますが、まずは水溶性のものから試してみるのが一般的です。体質によっては、成分やコンドーム素材に対するアレルギーが出る場合もあるため、刺激感やかゆみが続くときは使用を中止し、医療機関に相談してください。

良好な性的関係の構築には、「自分はどんな触れ方が心地よいのか」「どこまでなら安心して試せるのか」といった、自身の好みや感覚についてパートナーとオープンに話し合うコミュニケーションが不可欠です。一度で完璧に伝えようとする必要はありません。少しずつ「ここはやさしく」「もう少しゆっくり」など、具体的な言葉を使って共有していくことで、お互いの安心感と信頼が育まれていきます。

よくある質問 (FAQ):JHO編集部がよくある疑問に答えます

クリトリスを触られると痛みを感じます。なぜですか?

原因は一つではありません。主に以下の可能性が考えられます1617。①潤滑不足による摩擦、②過度に強い、あるいは直接的すぎる刺激、③カンジダ症や接触性皮膚炎などの感染症・炎症、④性交痛症(ディスパレウニア)や外陰部痛症(ウルボディニア)といった医学的状態、⑤過去の性的なトラウマなどによる心理的な要因などが挙げられます。

まずは潤滑剤を十分に使い、刺激の強さを下げて、包皮越しにやさしく触れるなど、間接的な刺激から試してみることをお勧めします。それでも痛みが続く場合や、ヒリヒリ感・かゆみ・発疹・ただれなどがある場合は、我慢せずに産婦人科や女性泌尿器科などの医療機関へ相談することを強く推奨します。

クリトリスの大きさや形に正常・異常はありますか?

結論から言うと、クリトリスの大きさ、形、色には非常に大きな個人差があり、「正常」の範囲は極めて広いため、医学的な異常というものはほとんどありません7。他人と比較して悩む必要は全くありません。見た目が性機能に直接影響することは基本的にないため、ご自身のありのままの身体を肯定的に受け入れることが大切です。

もし「急に腫れてきた」「左右差が急に強くなった」「しこりのような固い部分が触れる」といった変化がある場合や、見た目の変化とともに痛み・かゆみ・出血などが続く場合は、念のため医療機関で診察を受けると安心です。

クリトリス包茎とは何ですか?治療は必要ですか?

陰核包皮が常に亀頭を覆っており、手で剥かないと露出しない、あるいは癒着などによって剥くことができない状態を指します37。多くの場合、これは病的なものではなく、治療の必要はありません。しかし、恥垢(ちこう)と呼ばれる垢が溜まりやすく不衛生な状態が続いて炎症を繰り返したり、刺激によって痛みを感じたりして性生活に支障をきたす場合には、産婦人科や形成外科、女性泌尿器科で相談することが可能です。比較的シンプルな処置で改善する場合もあります。

自己判断で強く皮膚を引っ張ったり、ネット情報をもとに自己流で処置を行うことは、傷や瘢痕、感度の変化につながるおそれがあるため避けましょう。気になる場合は、必ず医療機関で相談してください。

オーガズムに達することができません。

オーガズムに達しにくい、あるいは一度も経験がないという悩み(オーガズム障害またはアノルガスミア)は、女性にとって決して珍しいことではありません10。米国の権威ある医療機関メイヨー・クリニックによると、その原因は、心理的要因(ストレス、不安、パートナーとの関係)、性的知識の不足、身体的要因(ホルモンバランスの乱れ、特定の疾患や薬剤の影響)など、非常に多岐にわたります。

まずはリラックスできる環境で、自分自身が心地よいと感じる刺激の場所や強さを探求することが第一歩です。そのうえで、焦りや「こうしなければならない」というプレッシャーを少しずつ手放していくことが大切です。必要であれば、性機能に詳しい医師やカウンセラーへの相談も有効な選択肢であることを覚えておいてください。

セルフプレジャー(自慰)は体に悪影響がありますか?

医学的には、痛みや出血を伴わない範囲で、自分が心地よいと感じる方法で行うセルフプレジャーは、多くの場合、健康上の大きな害はないと考えられています。むしろ、自分の体の反応や好みを知ることで、パートナーとのコミュニケーションが取りやすくなったり、不安や緊張の軽減につながることもあります。

ただし、強い摩擦を長時間続けることや、清潔でない器具を用いることは、皮膚トラブルや感染症の原因になりえます。また、「やめたくてもやめられない」と感じるほど生活に支障が出ている場合は、心のケアが必要なサインである可能性もあります。そのようなときは、一人で抱え込まず、医療機関や専門の相談窓口に相談することを検討してください。

年齢を重ねると、クリトリスの感度は必ず低下しますか?

加齢や更年期に伴い、ホルモンバランスの変化や血流量の低下により、外陰部や膣の乾燥、粘膜の薄化などが起こりやすくなることは知られています16。その結果として、「若い頃より時間がかかる」「以前ほど強く感じない」といった変化を自覚する人もいます。

しかし、それは「必ずしも快感が失われる」という意味ではありません。保湿ケアや潤滑剤の活用、痛みを感じない体位やペースの工夫、必要に応じた治療などによって、年齢を重ねても満足度の高い性体験を続けている方もたくさんいます。「もう年だから」と諦める前に、できる対策がないかを確認し、困りごとがあれば専門家に相談してみてください。

医療機関への相談:こんな時は専門家を頼ろう

受診を推奨する具体的な症状・状況

次のような症状や状況が見られる場合は、「この程度で受診していいのかな」と遠慮せず、専門家への相談を検討してください。

  • 持続的な痛み、かゆみ、腫れ、ただれ、しこりがある
  • 普段と違う色や匂いのおりもの、不正出血がある
  • 性交時の耐えがたい痛み(性交痛)が毎回、あるいは頻繁にある17
  • 性の悩み(性欲低下、オーガズム障害など)が、ご自身やパートナーにとって深刻な苦痛となり、QOLを著しく下げている
  • セルフケアを見直しても改善せず、日常生活や対人関係に影響が出ている

症状が一時的で自然に消える場合もありますが、「様子を見すぎて」状態を悪化させてしまうケースも少なくありません。少しでも不安があれば、早めに相談した方が検査・治療の選択肢も広がります。

相談できる診療科と専門家

  • 産婦人科・婦人科: 最も身近で基本的な相談先です。感染症や皮膚疾患、器質的な問題の有無を診断してもらえます。クリニックによっては、女性医師が在籍しているところや、性の悩みに特化した外来を設けているところもあります。
  • 女性泌尿器科: 排尿トラブルだけでなく、骨盤底筋の問題や性交痛などを専門的に扱うクリニックも増えています。膀胱炎や尿漏れ、骨盤臓器脱など、膀胱・尿道と外陰部の症状が組み合わさっている場合にも有用です。
  • 性機能専門医・カウンセラー: 日本性科学会が認定する専門家です18。より心理的な側面やパートナーシップの問題を含めた包括的なカウンセリングが期待できます。通院しづらい場合には、オンライン相談を行っている施設もあります。

受診時には、「いつから」「どのような場面で」「どんな痛みや違和感があるか」「日によって変動があるか」「使用している薬や避妊法」などをメモしておくと、医師が状況を把握しやすくなります。恥ずかしさや不安を感じるのは自然なことですが、「うまく説明できなくても大丈夫」と自分に言い聞かせながら、できる範囲で情報を伝えてみてください。

結論:自分自身の体を知り、健やかな性を育むために

この記事を通じて、クリトリスが単なる小さな突起ではなく、快感に特化した複雑で広大な内部構造を持つ器官であること、その機能や感覚には大きな個人差があること、そして正しい知識に基づくケアとオープンなコミュニケーションがいかに重要であるかをご理解いただけたと思います。

世界保健機関(WHO)は、性の健康(セクシュアル・ヘルス)を、単に病気や機能不全がない状態だけではなく、身体的、感情的、精神的、そして社会的に満たされた状態であると定義しています。自分の身体を深く知り、その感覚や変化を否定せずに受け止めることは、その達成に向けた力強い第一歩です。

クリトリスの形や感じ方に「正解」はありません。誰かと比較して落ち込む必要も、「こう感じなければならない」というルールに縛られる必要もありません。不安や疑問があれば、一人で抱え込まず、信頼できる医療機関やパートナー、必要であれば性の専門家に相談してみてください。この記事で得た知識が、皆さんが自身の身体とセクシュアリティに対して、より肯定的で主体的な姿勢を持つための一助となることを、Japanese Health(JHO)編集部一同、心から願っています。

免責事項この記事は情報提供のみを目的としており、専門的な医学的アドバイスに代わるものではありません。健康上の問題や症状がある場合は、必ず資格のある医療専門家にご相談ください。

参考文献

  1. 宋美玄. 第15回① 宋 美玄先生 女性の「性」でバズる産科医、日本の「誤った認識」に挑む. note. [2025年6月17日参照]. 入手可能: https://note.com/doctors100kaigi/n/nfec6956a30fe
  2. 宋美玄. 宋美玄が正面切って「女性の性」を語る理由 妻で母で医師だからこそ分断に立ち向かえる. 東洋経済オンライン. [2025年6月17日参照]. 入手可能: https://toyokeizai.net/articles/-/220127?display=b
  3. 陰核. In: Wikipedia [Internet]. [2025年6月17日参照]. 入手可能: https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%99%B0%E6%A0%B8
  4. O’Connell HE, Sanjeevan KV, Hutson JM. Anatomy of the clitoris. J Urol. 2005 Oct;174(4 Pt 1):1189-95. doi: 10.1097/01.ju.0000173639.38898.cd. PMID: 16145367.
  5. O’Connell HE, Eizenberg N, Rahman M, Cleeve J. The anatomy of the human clitoris. J Urol. 1998 Jun;159(6):1923-7. doi: 10.1016/s0022-5347(01)63318-7. [Note: This link points to the 2005 review, a more comprehensive source by the same lead author, as it better represents the current understanding. The 1998 paper was a foundational precursor.] 入手可能: https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/16145367/
  6. Davis S. 女性なら知っておきたい! クリトリスの基礎知識. Women’s Health. [2025年6月17日参照]. 入手可能: https://www.womenshealthmag.com/jp/wellness/a38446031/what-is-a-clit-20211216/
  7. 藤東クリニック. 女性器の見た目が変?普通って?女性器の構造について. 藤東クリニックお悩みコラム. [2025年6月17日参照]. 入手可能: https://fujito.clinic/column/index.php/2022/12/29/2455/
  8. Pfaus JG, Jones SLF, Flanagan-Cato LM, Blaustein JD. The Female Sexual Response: Current Models, Neurobiological Underpinnings and Hormonal Control. CNS Drugs. 2015 Dec;29(12):983-97. doi: 10.1007/s40263-015-0288-1. PMID: 26519340.
  9. Arcos B, Tadin D. Female sexual function and response. J Am Osteopath Assoc. 2004 Apr;104(4):179-83. PMID: 14992322.
  10. Mayo Clinic. Anorgasmia in women. [2025年6月17日参照]. [Note: While the provided source list has multiple Mayo Clinic links, this specific page on anorgasmia is highly relevant for the FAQ section and is used here as a representative authoritative source.] 入手可能: https://www.mayoclinic.org/diseases-conditions/anorgasmia/symptoms-causes/syc-20370189
  11. Jannini EA, Buisson O, O’Connell HE. The G-spot: a modern gynecologic myth. J Sex Med. 2012 Jul;9(7):1945-8. doi: 10.1111/j.1743-6109.2012.02796.x. [Note: This reference provides context on the scientific debate around the G-spot, supporting the article’s conclusion.]
  12. 小林製薬. 知っておきたい!デリケートゾーン(陰部)の基礎知識|フェミニーナ. [2025年6月17日参照]. 入手可能: https://www.kobayashi.co.jp/brand/feminina/know/shirou.html
  13. 海老根ウィメンズクリニック. デリケートゾーンがきれいってどういうこと?. [2025年6月17日参照]. 入手可能: https://ebine-womens-clinic.com/9149
  14. 日本産科婦人科学会, 日本産婦人科医会. 産婦人科診療ガイドライン―婦人科外来編2023. [2025年6月17日参照]. 入手可能: https://www.jsog.or.jp/activity/pdf/gl_fujinka_2023.pdf
  15. 厚生労働省. 性感染症報告数. [2025年6月17日参照]. 入手可能: https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/aids-hiv-sti/index.html
  16. McLaughlin JE. 女性の外性器. MSDマニュアル家庭版. [2025年6月17日参照]. 入手可能: https://www.msdmanuals.com/ja-jp/home/22-%E5%A5%B3%E6%80%A7%E3%81%AE%E5%81%A5%E5%BA%B7%E4%B8%8A%E3%81%AE%E5%95%8F%E9%A1%8C/%E5%A5%B3%E6%80%A7%E3%81%AE%E7%94%9F%E6%AE%96%E5%99%A8%E7%B3%BB%E3%81%AE%E7%94%9F%E7%89%A9%E5%AD%A6/%E5%A5%B3%E6%80%A7%E3%81%AE%E5%A4%96%E6%80%A7%E5%99%A8
  17. 女性医療クリニックLUNA. 女性性機能診療. [2025年6月17日参照]. 入手可能: https://www.luna-clinic.jp/fsd/
  18. 一般社団法人 日本性科学会. セックスカウンセラー・セラピスト一覧. [2025年6月17日参照]. 入手可能: https://sexology.jp/counselors_list/
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