【産婦人科専門医が監修】小陰唇のすべて|解剖・機能から多様性、悩み(肥大・黒ずみ・かゆみ)、最新治療までを科学的根拠に基づき徹底解説
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【産婦人科専門医が監修】小陰唇のすべて|解剖・機能から多様性、悩み(肥大・黒ずみ・かゆみ)、最新治療までを科学的根拠に基づき徹底解説

デリケートゾーンの悩みは、多くの女性にとって非常に個人的で、なかなか他人に相談しにくいものです。実際、日本の大手企業である花王株式会社が2023年に行った調査によると、84%もの女性がデリケートゾーンに何らかの悩みを抱えていることが明らかになりました1。しかし、株式会社マイナビが2024年に行った別の調査では、悩みを抱える女性の75.2%が誰にも相談できていないという現実も浮き彫りになっています2。この情報のギャップ、そして一人で抱え込む不安を解消することこそが、本記事の目的です。インターネットには不確かな情報や商業的な広告が溢れていますが、この記事では、米国産婦人科医会(ACOG)のような国際的な医学会の公式見解や、査読を経て信頼性が担保された学術論文といった「科学的根拠」のみに基づき、読者一人ひとりがご自身の体と正しく向き合い、賢明な判断を下すための羅針盤となることを約束します。

要点まとめ

  • 小陰唇の形状、色、大きさには極めて大きな個人差があり、医学的には「正常」の範囲が非常に広いことが科学的に証明されています。
  • 小陰唇は見た目だけでなく、感染を防ぐ「保護機能」と性的感覚を司る「性的機能」という重要な役割を担っています。
  • かゆみ、におい、黒ずみといった悩みには、多くの場合、正しいセルフケアで対応できますが、持続する症状は婦人科受診が必要です。
  • 美容目的の小陰唇形成術(ラビアプラスティ)には、有効性を裏付ける質の高いデータが不足しており、国際的な医学会は合併症のリスクに警鐘を鳴らしています。
  • 悩みの背景には、メディアが作り出す非現実的な理想像や心理的要因も影響しています。治療を検討する前に、客観的な情報収集と信頼できる専門家との対話が不可欠です。

第1部:基礎知識編 – あなたの体を科学的に理解する

自身の体について正しく知ることは、あらゆる悩みを解決するための第一歩です。ここでは、小陰唇の解剖学的な構造、生命にとって不可欠な機能、そして「普通」とは何かという概念について、科学的根拠に基づいて深く掘り下げます。

1.1. 小陰唇とは?解剖学的な位置と構造

小陰唇は、外陰部にある一対の薄い皮膚のひだです。外側にあるふっくらとした大陰唇の間に位置し、内側にある陰核(クリトリス)、尿道口、そして膣口を保護するように存在しています。まさに、これらの非常に繊細で重要な器官を守るための「門」のような役割を果たしているのです3。この位置関係を理解することは、小陰唇がなぜデリケートであるかを理解する上で重要です。
組織学的に見ると、小陰唇は非常にユニークな特徴を持っています。その外側は通常の皮膚に近い性質を持ちながら、内側は粘膜に近い性質を持つという、移行帯の組織で構成されています。この皮膚と粘膜の境界線は「ハルト線(Hart’s line)」と呼ばれ、この特殊な構造が、小陰唇の敏感さや潤いを保つ性質の理由となっています。

1.2. 小陰唇の重要な機能:見た目だけではない生命の役割

小陰唇の役割は、単なる見た目の問題ではありません。女性の健康と快適な生活を守るための、極めて重要な生理的機能を担っています。

  • 保護機能(バリア機能): 小陰唇が物理的な蓋として膣口と尿道口を覆うことで、外部からの細菌、汚れ、その他の物理的刺激が内部に侵入するのを防ぎます。これは、膣炎や尿路感染症といった感染症を予防するための、体の第一線の防衛ラインとして機能していることを意味します。
  • 性的機能(感覚機能): 近年の研究により、小陰唇の性的機能の重要性も科学的に解明されつつあります。2025年に発表された最新のスコーピングレビューによると、小陰唇には神経終末と血管が非常に豊富に分布していることが示されています4。これにより、性的興奮時には血流が増加して膨張(engorgement)し、感度が高まるというメカニズムが働きます。これは、性的な喜びを感じる上で重要な役割を果たす可能性を示唆しています。

1.3. 「正常」とは何か?医学的に見た小陰唇の驚くべき多様性

多くの女性が抱える「私の小陰唇は普通なのだろうか?」という不安。この問いに答えるためには、まず「平均」という言葉の幻想から解放される必要があります。一部の日本のクリニックサイトでは、日本人女性の平均値として「幅1~1.5cm、長さ4~5cm」といった数値が提示されることがあります5

しかし、これはあくまで限定的なデータに過ぎません。世界の医学界が「正常」の定義を覆した、画期的な研究が存在します。2005年に著名な医学雑誌『BJOG』に掲載されたロイド医師らの研究(Lloyd et al.)では、健康な女性50人の外性器を詳細に測定した結果、驚くべき多様性が明らかになりました。この研究によると、小陰唇の幅は最小7mmから最大50mm、長さは最小20mmから最大100mmと、極めて広い範囲に分布していたのです6。この科学的 事実は、「正常」とされる範囲がいかに広く、平均値という一つの基準に固執することがいかに無意味であるかを明確に示しています。

多様性は、大きさだけに留まりません。

  • 色: 明るいピンク色から褐色、黒褐色まで、メラニン色素の量によって様々であり、すべてが健康な色のバリエーションです。
  • 形状: 表面が滑らかな人もいれば、しわが多い人もいます。これも完全に正常な個人差です。
  • 左右差: 人間の顔や手足が完全に対称でないように、小陰唇も左右非対称であることがむしろ普通です。左右の大きさが違うことは、異常ではありません。

英国王立産婦人科医会(RCOG)も、患者向けの情報提供において、これらの外見上のバリエーションはすべて正常なものであると強調しています7。大切なのは、他人と比較することではなく、自分自身の体のユニークさを理解し、受け入れることです。

第2部:お悩み解決編 – 日常のケアと医学的視点

小陰唇に関する悩みは多岐にわたりますが、その多くは正しい知識と適切なセルフケアによって改善が期待できます。ここでは、特に相談の多い悩みについて、その原因と科学的根拠に基づいた対策を解説します。

2.1. 日本人女性の二大悩み「かゆみ・におい」の正しい原因と対策

デリケートゾーンのかゆみやにおいは、非常に不快で気になる症状ですが、原因を正しく理解することが解決への近道です。

  • 原因の切り分け:
    • かゆみ: 主な原因としては、真菌の一種であるカンジダが増殖する「カンジダ膣炎」、ナプキンや下着の素材、石鹸などが肌に合わない「接触皮膚炎」、そして閉経期以降の女性ホルモンの減少に伴う乾燥「萎縮性膣炎」などが挙げられます8
    • におい: 小陰唇のひだの間に汗や皮脂、古い角質(垢)が溜まり、そこに雑菌が繁殖することが主な原因です。特にアポクリン汗腺からの汗は、においの元となりやすいとされています。
  • 科学的セルフケア:
    • 洗浄: RCOGなどの専門機関が推奨するのは、洗いすぎない優しい洗浄です7。洗浄力の強い石鹸やボディソープは、必要な皮脂まで奪い乾燥を招くため避け、弱酸性のデリケートゾーン専用ソープを使用するか、ぬるま湯で優しく洗い流す程度で十分です。膣内まで洗うビデの使用は、膣内の善玉菌まで洗い流してしまい、かえって自浄作用を損なうため避けるべきです。
    • 保湿: 洗浄後は、清潔なタオルでゴシゴシこすらず、優しく押さえるように水分を拭き取ります。その後、デリケートゾーン専用の保湿剤でケアをすることで、乾燥を防ぎ、バリア機能をサポートします。
    • 衣類: 蒸れは雑菌繁殖の温床です。通気性が良く、肌に優しい綿素材の下着を選び、体を締め付けるスキニージーンズやガードルの長時間の着用は避けることが、かぶれやにおいの予防に繋がります。

2.2. 形態に関する悩み「肥大・黒ずみ・左右差」の真実

「びらびらが大きい」「黒ずんでいる」といった形態に関する悩みは、しばしば深刻なコンプレックスの原因となります。しかし、その多くは医学的には問題のない正常なバリエーションです。

  • 肥大(Labial Hypertrophy): 医学的に「肥大」を定義する明確なサイズ基準はありません。その大きさは主に先天的な体質によるもので、思春期、妊娠・出産、加齢に伴うホルモンバランスの変化によって影響を受けることがあります9。アトピー性皮膚炎などで長期間掻き続けるといった物理的刺激も一因となり得ますが、後述する迷信とは明確に区別する必要があります。
  • 黒ずみ(Hyperpigmentation): 黒ずみの正体はメラニン色素です。これもホルモンバランスの影響や、下着との摩擦といった慢性的な刺激によって色素沈着が起こるもので、病的な状態ではありません。
  • 左右差(Asymmetry): 前述の通り、左右対称であることの方が稀であり、非対称であることが解剖学的に「普通」の状態です。

【重要】迷信の完全否定「性的経験が豊富だと小陰唇が肥大したり黒ずんだりする」という俗説がインターネット上などで見受けられますが、これはいかなる科学的根拠もない、完全な誤解であり間違いです。小陰唇の形態や色は、個人の体質やホルモンの影響によって決まるものであり、性交渉の経験とは一切関係ありません。このような誤った情報が、女性に不当な汚名(スティグマ)を着せ、心に傷を負わせることを、私たちは断固として否定します。

2.3. いつ医療機関を受診すべきか?見逃してはいけない危険なサイン

セルフケアで改善しない、または以下のような症状が見られる場合は、自己判断せずに速やかに婦人科を受診することを強く推奨します。

  • 2週間以上続く、または日ごとに悪化していく激しいかゆみや痛み
  • おりものの異常(普段と違う色:黄色、緑色、灰色など。性状:カッテージチーズ状、泡状など。強い悪臭を伴う)
  • 新たにできた、または徐々に大きくなる「しこり」や「できもの」
  • 治りにくい「ただれ」(潰瘍)8
  • 排尿時の激しい痛みや、頻繁にトイレに行きたくなる(頻尿)
  • 性交時に持続的な痛みがある

これらの症状の背後には、治療が必要な感染症(カンジダ膣炎、細菌性膣症など)、皮膚疾患、あるいは極めて稀ですが悪性腫瘍(外陰がんなど)が隠れている可能性も否定できません。早期発見・早期治療が何よりも重要です。

第3部:医学的アプローチ編 – 治療の選択肢を客観的に考える

悩みが日常生活に支障をきたす場合、医学的な介入が選択肢となることがあります。しかし、その決断は、正確な情報と客観的な視点に基づいて慎重に行われるべきです。

3.1. 小陰唇に関連する医学的疾患

特定の医学的状態が、小陰唇の症状を引き起こすことがあります。

  • 小陰唇癒着症(Labial Adhesions): 主に女性ホルモン(エストロゲン)の分泌レベルが低い乳幼児期や閉経後に見られる、左右の小陰唇が癒合してしまう状態です。排尿がしにくくなるなどの症状があれば、エストロゲン軟膏の塗布や、医師による用手剥離といった治療が行われます。
  • 皮膚疾患: 難治性のかゆみや痛みを引き起こす「硬化性苔癬(Lichen Sclerosus)」や「扁平苔癬(Lichen Planus)」といった特殊な皮膚疾患が存在します。これらは専門医による診断と長期的な管理が必要です7
  • 感染症: 性器ヘルペスや尖圭コンジローマといった性感染症(STI)は、水ぶくれやイボ状のできものとして外観に変化をきたします。これらはパートナーへの感染を防ぐためにも、適切な診断と治療が不可欠です10

3.2. 小陰唇形成術(ラビアプラスティ):知っておくべき全て

小陰唇形成術(ラビアプラスティ)は、小陰唇の大きさを縮小したり形を整えたりする手術です。その目的は、慢性的な痛み、下着との摩擦による炎症、衛生上の清掃困難といった「機能的な問題」の改善、および本人が強い精神的苦痛を感じている「審美的な問題」の解消にあります。

代表的な手術方法には、主に以下の二つがあります。

  • 縁取り切除法(トリム法/Edge Resection): 肥大した小陰唇の縁を、文字通り縁取るように直接切除する方法です。手技が比較的単純である一方、小陰唇本来の自然な縁の色素や質感が失われ、縫合した傷跡が目立つ可能性があるという欠点も指摘されています。
  • 楔状切除法(ウェッジ法/Wedge Resection): 肥大している部分を楔(くさび)形に切除し、残った断端同士を縫合する方法です。小陰唇の自然な縁を温存できるという大きな利点がありますが、より高度で繊細な形成外科的技術を要します。

どちらの方法が優れているかは一概には言えず、個々の小陰唇の形状や、執刀する医師の技術、考え方によって選択されます。

3.3. 【最重要】美容外科手術のリスクと世界の医学界の厳しい視点

小陰唇形成術を検討する上で、最も重要なのは、そのリスクと、世界の主要な医学会がこの手術に非常に慎重な立場をとっているという事実を理解することです。特に、米国の産婦人科医の代表組織である米国産婦人科医会(ACOG)は、2020年に発表した公式見解(Committee Opinion No. 795)の中で、明確な警告を発しています。

“女性は、性器の美容整形手術の有効性を裏付ける質の高いデータが不足していること、および痛み、出血、感染症、瘢痕化、癒着、感覚の変化、性交困難、再手術の必要性といった潜在的な合併症について知らされ、カウンセリングを受けるべきである。”11

【上記引用の解説】
この声明を和訳し、その意味を解説すると、以下のようになります。
「世界の産婦人科医を代表するACOGは、美容目的の女性器形成術について、その有効性を裏付ける質の高い科学的データが不足していると明確に警告しています。また、患者は、痛み、出血、感染、瘢痕(傷跡)、癒着、感覚の変化(鈍くなる、または過敏になる)、性交痛、そして再手術の必要性といった潜在的な合併症について、手術前に十分に説明を受けるべきであると強調しています。」

英国王立産婦人科医会(RCOG)も同様に、安易な手術に警鐘を鳴らしており、医師がまず行うべき責務は「女性器の形態や外観の多様性に関する正確な情報を提供し、教育することである」と述べています12。これらの権威ある機関の見解は、手術を検討する際に必ず知っておくべき、極めて重要な客観的事実です。

3.4. なぜ私たちは悩むのか?心理的・社会的背景

小陰唇に関する悩みが、近年なぜこれほど注目されるようになったのでしょうか。その背景には、個人の体質だけでなく、複雑な心理的・社会的要因が絡み合っています。

  • メディアと非現実的な理想像: インターネットやポルノグラフィで流布される加工された画像は、しばしば「毛がなく、小さく、左右対称で、大陰唇に完全に隠れている」といった、現実離れした「理想の女性器像」を植え付けます。このような非現実的な基準と自分自身を比較することで、多くの女性が不必要な身体への不満を抱くようになっているという研究結果があります13
  • 身体醜形障害(BDD)の可能性: 小陰唇形成術を希望する女性の中には、医学的には「身体醜形障害(Body Dysmorphic Disorder: BDD)」と診断されるケースが、そうでない女性のグループに比べて有意に多いことが、2014年の研究で報告されています14。BDDとは、他人が気づかない、あるいは気にも留めないような些細な外見上の特徴を重大な欠点だと思い込み、過度に悩み、日常生活に支障をきたしてしまう精神疾患です。ACOGは、手術を検討する前に心理的な評価の必要性も推奨しています。
  • パートナーの影響: パートナーからの心ない否定的なコメントや、パートナーを喜ばせたいという思いが、手術を考える動機の一部になることもあります。しかし、2024年に発表された体系的レビューによると、それが唯一の理由となるケースは少なく、多くは機能的・審美的な理由との複合であることが示されています15

第4部:日本における現状と課題

これらの世界的な議論に加え、日本には特有の文化や医療環境が存在します。

4.1. 日本の文化と外陰部への意識の変化

  • 脱毛文化の影響: 近年、美容目的のVIO脱毛だけでなく、将来の介護に備える「介護脱毛」への関心が急速に高まっています16。これにより、これまであまり意識してこなかった自分自身の外陰部の形状や色に、まじまじと目が向く機会が増え、新たな悩みを生む一因となっていると考えられます。
  • 公衆浴場(温泉)文化: 温泉や銭湯など、公衆の場で他者の裸眼に触れる機会が多い日本の文化が、無意識のうちに他者と自分を比較し、外見に関するコンプレックスを助長する一因となっている可能性も指摘されています。

4.2. 日本の医療現場:ガイドラインの不在と商業主義の課題

日本の医療現場には、患者が賢明な判断を下す上で障壁となる、二つの大きな課題が存在します。

  • ガイドラインの不在: 前述のACOGやRCOGのように、一般市民や医療者に向けて、美容目的の女性器手術に対して慎重な立場を明確に示す公式なガイドラインが、日本の主要な医学会(日本産科婦人科学会や日本美容外科学会など)のウェブサイトでは、現時点(2024年6月)では見当たりません。
  • 二極化する医療と商業主義: このような公的な指針がないことが、一部の美容クリニックによる積極的な手術の宣伝・広告と、大学病院など公的医療機関の極めて慎重な姿勢という、医療現場の二極化を生んでいます。その結果、患者は客観的で中立的な情報を得ることが難しく、商業的な情報に惑わされやすい状況が生まれています。

結論:あなたの体と、どう向き合うか

この記事を通じて、私たちは科学的根拠に基づき、小陰唇に関する多角的な情報を提供してきました。最後に、最も大切なメッセージをお伝えします。

自己受容の勧め: 本記事で繰り返し示してきたように、小陰唇の形、色、大きさの驚くべき多様性は、病気や異常ではなく、あなただけの「個性」です。科学的なデータは、その「普通」の範囲がいかに広いかを雄弁に物語っています。まずは、自分自身の体をありのままに、慈しみをもって受け入れることが、心の健康にとっての重要な第一歩です。

情報リテラシーの重要性: もし治療を検討する際には、クリニックのウェブサイトにある美しい症例写真や心地よい言葉だけでなく、その治療法が持つ科学的根拠、潜在的なリスク、そしてACOGのような国際的な医学界が示す客観的な評価にも、必ず目を向けてください。この記事が、そのための信頼できる情報源となれば幸いです。

専門家との対話: 日常生活に支障をきたすほどの機能的な問題で困っていたり、外見のことで深く悩んで精神的に辛かったりするならば、決して一人で抱え込まないでください。信頼できる婦人科の専門医に相談することが、解決への道を開きます。その際は、手術を勧めるだけでなく、あなたの心と体の健康全体を真摯に考え、多様性について教育し、他の選択肢も含めて共に考えてくれる医師を選ぶことが何よりも重要です。

よくある質問 (FAQ)

Q: 小陰唇形成術で感度は変わりますか?

A: 変わる可能性があります。小陰唇には豊富な神経が分布しているため、手術手技によっては感覚が鈍くなる(感覚低下)、または逆に痛みを伴うほど過敏になる可能性があります。これは、米国産婦人科医会(ACOG)も指摘する潜在的な合併症の一つです11。手術による瘢痕組織が神経に影響を与えることも考えられます。一方で、術前の巻き込みによる痛みなどが解消され、結果的に性生活が改善したという報告もあります。結果は個人差が大きく、執刀医の技術にも左右されるため、手術を受ける前にはリスクとして十分に説明を受ける必要があります。

Q: 手術に健康保険は適用されますか?

A: 日本の健康保険制度において、小陰唇形成術は原則として「美容目的」と見なされるため、保険適用外の自由診療となります。したがって、費用は全額自己負担です。ただし、日常生活に著しい支障をきたすほどの重度の肥大、外傷後の著しい変形、先天性奇形など、医師が医学的に「疾患の治療」であると判断した、極めて稀なケースにおいては、保険が適用される可能性もゼロではありません。しかし、ほとんどの場合が自由診療であると理解しておく必要があります。詳細は直接、医療機関に確認することが必要です。

Q: 何歳から手術を考えられますか?

A: 身体の成長が完了していない未成年者への美容目的の手術は、世界的に見ても非常に慎重に行われるべきだと考えられています。RCOGなどの国際的な機関は、身体的にも精神的にも発達の途上である18歳未満の若年者に対して、安易に手術を行うことに警鐘を鳴らしています。小陰唇も、第二次性徴が完了するまでは形態が変化する可能性があります。多くのクリニックでは、未成年者の場合は保護者の同意を必須としていますが、そもそも身体の成長が完全に止まる成人になってから、改めて慎重に検討することが強く推奨されます。

免責事項この記事は情報提供のみを目的としており、専門的な医学的アドバイスに代わるものではありません。健康上の問題や症状がある場合は、必ず資格のある医療専門家にご相談ください。

参考文献

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