専門医が徹底解説!日焼け止めの効果と安全性「7つの新常識」SPF・PA、成分、選び方の完全ガイド
皮膚科疾患

専門医が徹底解説!日焼け止めの効果と安全性「7つの新常識」SPF・PA、成分、選び方の完全ガイド

日差しが気になる季節だけでなく、一年を通じて私たちの肌に影響を与える紫外線。日焼け止めは、その紫外線から肌を守るための最も重要なツールの一つです。しかし、「種類が多すぎて、どれを選べばいいかわからない」「成分の安全性が心配」「SPF値は高ければ高いほど良いの?」といった疑問や不安を抱えている方も少なくないでしょう。情報が溢れる中で、本当に信頼できる情報を見極めるのは困難です。本記事では、皮膚科専門医の監修のもと、日焼け止めの効果と安全性に関する最新の知見、誤解されやすいポイント、そして科学的根拠に基づいた最適な製品の選び方と使い方を、7つの主要な「新常識」として、包括的に解説します。この記事を読めば、日焼け止めに関するあなたの疑問は解消され、自信を持って自分と大切な人の肌を守るための知識が身につくはずです。

要点まとめ

  • 紫外線は、シミやシワなどの「光老化」や皮膚がんの主な原因です。日焼け止めによる防御は、美容だけでなく生涯にわたる健康維持に不可欠です12
  • SPFはUV-B(主に日焼けやシミの原因)を防ぐ指標、PAはUV-A(主にシワやたるみの原因)を防ぐ指標です。両方の表示を確認し、シーンに合ったものを選ぶことが重要です3
  • 日焼け止め成分には「紫外線吸収剤」と「紫外線散乱剤(ノンケミカル)」があり、それぞれに長所と短所があります。肌質や使用感の好みに合わせて選ぶ知識が求められます。
  • 近年、FDA(米国食品医薬品局)の研究により一部の紫外線吸収剤の血中移行が確認されましたが、これが直ちに「危険」を意味するわけではありません。科学的根拠に基づき冷静に情報を解釈することが大切です4
  • 日焼け止めの効果は「塗る量」と「塗り直し」で決まります。製品に表示された効果(SPF/PA値)を最大限に引き出すには、1cm²あたり2mgという十分な量をムラなく塗り、2~3時間ごとに塗り直すことが科学的に推奨されています5
  • 敏感肌や子供には、刺激の少ない「紫外線散乱剤(ノンケミカル)」を主成分とした製品が選択肢の一つとなります。ただし、他の配合成分にも注意が必要です6
  • 一部の日焼け止め成分はサンゴ礁の白化に影響を与える可能性が指摘されており、環境に配慮した製品選びも新たな視点となっています7

1. なぜ日焼け止めは重要なのか?紫外線の肌への「真実」

太陽光に含まれる紫外線(UV)は、私たちの肌に様々な影響を及ぼします。それは単なる日焼けに留まらず、長期的に肌の構造を変化させ、最も深刻な場合には生命を脅かす病気のリスクを高める可能性があります。紫外線対策の根本的な必要性を理解するために、まずは紫外線が肌に与える複合的な影響の全体像を、科学的知見に基づいて見ていきましょう。

1.1. 紫外線(UV-A, UV-B, UV-C)とは?それぞれの特徴と肌への到達度

紫外線は波長の長さによってUV-A、UV-B、UV-Cの3種類に分類されます。それぞれの特性は異なり、肌への影響も異なります1

  • UV-A (長波長紫外線): 全紫外線の約95%を占め、雲やガラスを通り抜けて肌の奥深く、真皮層にまで到達します。コラーゲンやエラスチンといった肌のハリを保つ線維を破壊し、シワやたるみといった「光老化」の主な原因となります。
  • UV-B (中波長紫外線): 主に肌の表面、表皮に作用し、強いエネルギーを持っています。肌が赤くなる日焼け(サンバーン)や、メラニン色素を増加させてシミ・そばかすの原因となります。また、細胞のDNAを直接損傷させ、皮膚がんのリスクを著しく高めることが知られています。
  • UV-C (短波長紫外線): 最もエネルギーが強いですが、そのほとんどはオゾン層によって吸収されるため、通常は地表には到達しません。

1.2. 短期的影響:日焼け(サンバーン・サンタン)のメカニズムとリスク

日焼けには、赤くヒリヒリする「サンバーン」と、肌が黒くなる「サンタン」の2種類があります。これらは皮膚で起こる異なる反応です。

  • サンバーン: 主にUV-Bによって引き起こされる皮膚の炎症反応です。UV-Bが表皮細胞のDNAを傷つけると、体はそれを修復しようとして血管を拡張させ、炎症性サイトカインという物質を放出します。これにより、皮膚が赤くなり、熱を持ち、ひどい場合には水ぶくれができます5。これは肌が火傷を負っている状態であり、危険信号です。
  • サンタン: 紫外線から肌を守るための防御反応です。紫外線刺激により、メラノサイト(色素細胞)が活性化し、メラニン色素を生成します。このメラニンが傘のように細胞核を守り、DNAのさらなる損傷を防ごうとします。肌が黒くなるのは、このメラニン色素が蓄積するためです。日本人の肌質は、欧米人と比較してサンタンを起こしやすいタイプが多いとされています。

1.3. 長期的影響:光老化(シミ、シワ、たるみ)の進行と皮膚科学的解説

加齢による自然な老化とは別に、長年にわたり紫外線を浴び続けることによって引き起こされる肌の変化を「光老化」と呼びます。肌の老化の約80%は、この光老化が原因とも言われています。福岡歯科大学の古村南夫教授のような光老化研究の専門家は、そのメカニズムを解明し、予防の重要性を訴えています8
光老化の主な特徴は、UV-Aが真皮層にまで到達し、肌のハリや弾力を支えるコラーゲン線維やエラスチン線維を変性・分解してしまうことにあります9。これにより、深く、ごわごわとしたシワや、肌のたるみが生じます。また、長期間の紫外線曝露はメラノサイトの働きを異常にさせ、境界がはっきりした濃いシミ(老人性色素斑)を形成します。これらの変化は、一度現れると完全に元に戻すことは非常に困難です。

1.4. 最も深刻なリスク:皮膚がん(悪性黒色腫、基底細胞がん、有棘細胞がん)の現状と紫外線との関連

紫外線の最も深刻なリスクは、皮膚がんの発症です。世界保健機関(WHO)の専門機関である国際がん研究機関(IARC)は、紫外線を「グループ1」、つまり「人に対する発がん性がある」と明確に分類しています。紫外線は細胞のDNAに直接損傷を与え、その修復過程でエラーが起こると遺伝子変異が蓄積し、やがてがん細胞が発生するのです。

1.4.1. 日本における皮膚がんの最新統計(罹患率・死亡率・生存率)

日本では、高齢化に伴い皮膚がんの患者数が増加傾向にあります。国立がん研究センターの最新の統計によると、2020年に皮膚がんと診断された人は23,846例、2023年に皮膚がんで亡くなった人は1,861人に上ります2。特に悪性黒色腫(メラノーマ)は転移しやすく、進行すると生命に関わる危険な皮膚がんです。しかし、早期に発見・治療すれば5年相対生存率は94.6%(2009-2011年診断例)と良好であり、日頃からの紫外線対策と皮膚への関心がいかに重要かを示しています2

1.4.2. 紫外線曝露と皮膚がん発症の科学的エビデンス

紫外線曝露と皮膚がん発症の関連は、数多くの科学的研究によって裏付けられています。オーストラリアのように紫外線が強い地域への移住者研究では、子供の頃に移住した人の方が大人になってから移住した人よりも皮膚がんの発症率が高いことが示されており、生涯を通じた紫外線曝露量(特に若年期)がリスクに大きく関わることが分かっています。また、屋外労働者は屋内労働者に比べて非黒色腫皮膚がん(基底細胞がん、有棘細胞がん)の発症率が高いことも報告されています。これらの疫学研究は、日焼け止め使用を含む紫外線対策が、皮膚がん予防に有効であることを強く示唆しています。

1.5. 紫外線対策の誤解:よくある間違いと正しい知識

紫外線対策に関しては、いくつかの誤解が広まっています。正しい知識を身につけ、効果的な対策を行いましょう。

  • 「曇りや雨の日は大丈夫」は間違い: 曇りの日でも、晴れの日の60%以上のUV-Bが降り注いでいます。特にUV-Aは天候による影響を受けにくく、曇りの日でも晴天時の80%以上が地表に到達するため、油断は禁物です1
  • 「ガラス越しは安全」は間違い: 一般的な窓ガラスはUV-Bの多くをカットしますが、シワやたるみの原因となるUV-Aは大部分を透過してしまいます。車の中や窓際の席にいるだけでも、光老化は進行します。
  • 「短時間なら大丈夫」は間違い: 「塵も積もれば山となる」という言葉通り、短い時間でも毎日の紫外線曝露が蓄積すれば、光老化や皮膚がんのリスクは高まります。日々の生活の中での対策が重要です。
  • 「冬は対策不要」は間違い: 冬は夏に比べて紫外線量は減りますが、ゼロではありません。特にスキー場など標高が高く、雪による反射が強い場所では、夏と同等かそれ以上の紫外線対策が必要です。

2. 日焼け止めの基本:SPFとPAを正しく理解する

日焼け止めを選ぶ際に誰もが目にする「SPF」と「PA」という表示。これらは製品の紫外線防御能力を示す重要な指標ですが、その意味を正確に理解している人は意外と少ないかもしれません。ここでは、これらの指標の正しい知識と、それを基にした賢い選び方を解説します。

2.1. SPFとは?UV-B防御効果の指標と数値の意味

SPFは「Sun Protection Factor」の略で、主にUV-B(サンバーンを引き起こし、皮膚がんの主な原因となる紫外線)を防ぐ効果の高さを示します。SPFの数値は、日焼け止めを塗っていない状態に比べて、サンバーンが始まるまでの時間を何倍に遅らせることができるかを表しています。例えば、何も塗らないと20分で赤くなり始める人がSPF30の日焼け止めを塗った場合、理論上はその30倍、つまり 20分 × 30 = 600分(10時間)までサンバーンを防げる、ということになります5。しかし、これは国際的な基準である「皮膚1cm²あたり2mg」という量をムラなく塗布した場合の数値であり、実際の使用状況では汗で流れたり、衣類でこすれたりするため、効果は低下します3

2.2. PAとは?UV-A防御効果の指標と「+」の意味

PAは「Protection Grade of UVA」の略で、シワやたるみの原因となるUV-Aを防ぐ効果の度合いを示します。その効果は「+」の数で表され、現在は以下の4段階があります3

  • PA+ : UV-A防御効果がある
  • PA++ : UV-A防御効果がかなりある
  • PA+++ : UV-A防御効果が非常にある
  • PA++++ : UV-A防御効果が極めて高い

「+」の数が多いほど、UV-Aを防ぐ効果が高いことを意味します。UV-Aは天候や季節を問わず常に降り注いでいるため、光老化を防ぐためにはPA表示も重視することが不可欠です。

2.3. SPF値・PA値の選び方:シーン別・肌タイプ別推奨基準

最適なSPF・PA値は、生活シーンや肌の紫外線感受性によって異なります。日本皮膚科学会は、以下のような目安を推奨しています5

生活シーン 推奨SPF目安 推奨PA目安
日常生活(散歩、買い物など) SPF10~20 PA+ ~ ++
屋外での軽いスポーツ、レジャーなど SPF20~40 PA++ ~ +++
炎天下でのレジャー、マリンスポーツなど SPF40~50+ PA+++ ~ ++++

また、子供の紫外線対策については、日本臨床皮膚科医会や日本小児皮膚科学会が、日常生活ではSPF15~20・PA++程度、屋外での活動が長い場合はSPF30~40・PA+++程度を推奨しています6。自分の活動内容に合わせて適切な製品を選ぶことが、肌への負担を抑えつつ効果的な紫外線対策を行う鍵です。

2.4. SPF値が高いほど良い?数値の限界と正しい考え方

「SPF50+」のような高い数値を見ると安心感を覚えますが、必ずしも「高ければ高いほど良い」というわけではありません。実は、UV-Bの防御率はSPF30で約97%、SPF50でも約98%と、その差はごくわずかです。SPF50を超えると防御率の伸びはさらに緩やかになります。むしろ高SPF製品は、肌への負担感が増したり、価格が高くなったりする傾向があります。SPFの数値に一喜一憂するよりも、十分な量をムラなく塗り、こまめに塗り直すことの方が、紫外線防御効果を維持する上ではるかに重要です。

2.5. 「UV耐水性★/★★」とは?新しい基準を理解する

2024年から、日本化粧品工業会は「UV耐水性」に関する新たな表示基準を導入しました9。これは、水に濡れた状態でのSPF値の保持能力を示すもので、従来の「ウォータープルーフ」という曖昧な表現よりも具体的な指標となります。

  • UV耐水性★: 40分間の耐水試験後も、SPF値が基準を維持することを示す。
  • UV耐水性★★: 80分間の耐水試験後も、SPF値が基準を維持することを示す。

汗をかきやすい夏場や、プール、海でのレジャーの際には、このUV耐水性表示も確認することで、より信頼性の高い製品選択が可能になります10

3. 日焼け止めの成分:何が肌を守り、何に注意すべきか?

日焼け止めの心臓部とも言えるのが、紫外線を防ぐ有効成分です。これらの成分は大きく「紫外線吸収剤」と「紫外線散乱剤」の2種類に大別されます。それぞれの仕組みや特徴、そして安全性に関する最新の科学的知見を深く理解することで、成分表示を見て自分に合った製品を選ぶことができるようになります。

3.1. 主な有効成分:紫外線吸収剤と紫外線散乱剤

両者は紫外線を防ぐメカニズムが根本的に異なります。紫外線吸収剤は、紫外線を吸収して熱などの別のエネルギーに変換することで肌への影響を防ぎます。一方、紫外線散乱剤は、物理的な粉末が肌の表面で紫外線を反射・散乱させることで肌を守ります。

3.1.1. 紫外線吸収剤:仕組み、種類、メリット・デメリット

紫外線吸収剤は、有機化合物であり、紫外線のエネルギーを吸収すると分子構造が変化し、熱や赤外線として放出することで肌を守ります。

  • メリット: 透明で白浮きしにくく、伸びが良いテクスチャーの製品が作りやすい。高いSPF/PA値の製品も設計しやすい。
  • デメリット: まれにアレルギー反応(かぶれ)や刺激の原因となることがある。成分によっては光で分解されやすく(光安定性が低い)、効果が時間とともに低下するものがある。また、後述する環境への影響が懸念される成分もあります。
  • 代表的な成分: メトキシケイヒ酸エチルヘキシル、オキシベンゾン、アボベンゾン、オクトクリレンなど。

3.1.2. 紫外線散乱剤(ノンケミカル):仕組み、種類、メリット・デメリット

紫外線散乱剤は、主に酸化チタンと酸化亜鉛という2つの無機鉱物粉末です。「ノンケミカル処方」と表示されている製品は、これらの散乱剤のみを使用しているものを指します。

  • メリット: 紫外線を物理的に反射・散乱させるため、アレルギーなどの皮膚反応を起こしにくいとされ、敏感肌や子供向けの製品によく使用される。光に対しても安定している。
  • デメリット: 粉末であるため、肌に塗ると白浮きしやすい傾向がある。使用感が重く感じられることがある。(ただし、近年の技術進歩により、粒子を微細化(ナノ化)することでこれらの欠点は大幅に改善されています。)
  • 代表的な成分: 酸化チタン(主にUV-Bに強い)、酸化亜鉛(UV-AからUV-Bまで広範囲をカバー)。

3.2. 成分の安全性:科学的根拠に基づく最新情報

消費者が最も懸念する成分の安全性について、科学的根拠に基づいて解説します。特に、近年注目されているFDAの研究や、特定の成分に関する議論について正しく理解することが重要です。

3.2.1. FDA(米国食品医薬品局)による成分の経皮吸収と血中濃度に関する研究とその意味

2019年および2020年に、権威ある米国医師会雑誌(JAMA)にFDAの研究者らによる衝撃的な論文が掲載されました4。この研究では、市販の日焼け止めに含まれる複数の紫外線吸収剤(アボベンゾン、オキシベンゾン、オクトクリレン等)を推奨量で塗布した際、それらの成分が皮膚から吸収され、FDAがさらなる安全性データの検討を要すると定めた血漿中濃度(0.5 ng/mL)を超えることが示されました。このニュースは、「日焼け止め成分が血液に入る」として一部で不安を呼びましたが、以下の点を冷静に理解する必要があります。

  • この結果は、これらの成分が直ちに有害であることを意味するものではありません。血中に移行することが確認された、という事実を示したに過ぎません。
  • FDA自身も、この研究結果をもって日焼け止めの使用を中止すべきではないと強調し、紫外線による皮膚がんのリスクの方がはるかに大きいとして、継続的な使用を推奨しています。
  • 現在FDAは、化粧品メーカーに対してこれらの成分に関する追加の安全性データの提出を求めており、評価が進行中です。

消費者としては、この情報を念頭に置きつつ、過度に不安になることなく、特に妊娠中の方や乳幼児、あるいは広範囲に長期間使用する場合には、紫外線散乱剤を主成分とする製品を選ぶなど、より慎重な製品選択を検討するのも一つの方法です。

3.2.2. 日本における規制と専門家の見解

日本においては、化粧品に使用できる成分やその配合上限は、厚生労働省の定める化粧品基準によって厳しく管理されています。市場で販売されている日焼け止めは、この基準をクリアしたものです。日本の多くの皮膚科専門家も、FDAの研究結果を認識しつつも、日焼け止め使用による皮膚がん予防や光老化防止のメリットは、現時点で考えられるリスクをはるかに上回るという見解で一致しており、適切な使用を推奨しています。

3.2.3. ナノ粒子化された成分の安全性は?現在の知見

紫外線散乱剤の白浮きや使用感を改善するために、酸化チタンや酸化亜鉛の粒子をナノメートルサイズまで微細化する技術が広く用いられています。このナノ粒子について、「皮膚から吸収されて体内に影響を及ぼすのではないか」という懸念が一部で議論されました。しかし、現在までの多くの研究では、健康な皮膚のバリア機能は強固であり、ナノ化された酸化チタンや酸化亜鉛が皮膚の角層を越えて体内に吸収される可能性は極めて低い、というのが専門機関(欧州のSCCSなど)の一致した見解です。一方で、サンゴへの影響など、環境への影響についてはまだ研究が続けられています7

3.2.4. 特定の注意すべき成分とアレルギーリスク

日焼け止め成分の中には、人によってはアレルギー性接触皮膚炎(かぶれ)や、光が当たることでアレルギー反応が誘発される光アレルギー性接触皮膚炎の原因となるものがあります。特に紫外線吸収剤の一部は、アレルゲンとして報告されることがあります。肌が弱い方やアレルギー体質の方は、使用前に二の腕の内側などでパッチテストを行うことが推奨されます。また、環境ホルモン作用が疑われる成分(例:オキシベンゾンなど)についての議論もありますが、人への健康影響については現時点で明確な結論は出ていません。

健康に関する注意事項

  • 日焼け止めを使用して肌に赤み、かゆみ、発疹などの異常が現れた場合は、すぐに使用を中止し、製品を洗い流してください。症状が改善しない場合は、皮膚科専門医にご相談ください。
  • 成分に対するアレルギーが疑われる場合は、どの成分が原因かを特定するために、医療機関でのパッチテストが有効です。使用した製品を持参して受診することをお勧めします。
  • 日焼け止めは医薬品ではなく、化粧品です。皮膚疾患の治療を目的とするものではありません。

よくある質問

Q1. 日焼け止めは毎日、室内でも塗るべきですか?
はい、専門家は季節や天候、屋内外を問わず、一年中毎日使用することを推奨しています。その理由は、シワやたるみの原因となるUV-Aが、雲や窓ガラスを透過して常に私たちの肌に降り注いでいるためです1。特に窓際で過ごす時間が長い方や、車を運転する方は、室内でも光老化のリスクに晒されています。日常生活では、SPF10~20/PA+~++程度の肌への負担が少ないものを選び、スキンケアの一環として習慣づけることが、将来の美しい肌を守る鍵となります5
Q2. 日焼け止めを塗っているのに焼けてしまうのはなぜですか?
最も一般的な原因は「塗布量が不足している」ことと「塗り直しができていない」ことです。SPFやPAの数値は、国際基準である「皮膚1cm²あたり2mg」を塗布して測定されていますが、多くの人がその半分以下の量しか塗布できていないというデータがあります10。顔全体であれば、パール粒2つ分(約0.8g)が適量の目安です。また、汗や水、衣類との摩擦で日焼け止めは簡単に落ちてしまいます。効果を維持するためには、2~3時間ごと、特に汗をかいた後やプールから上がった後には必ず塗り直すことが不可欠です5
Q3. 子供に安全な日焼け止めの選び方を教えてください。
子供の皮膚は大人よりも薄くデリケートなため、より慎重な製品選びが求められます。一般的に、アレルギー反応のリスクが低いとされる「紫外線散乱剤(ノンケミカル)」が主成分の製品が推奨されます6。製品パッケージに「ノンケミカル」「紫外線吸収剤不使用」といった表示があるか確認しましょう。また、「パッチテスト済み」「アレルギーテスト済み」と記載されているものや、石鹸で簡単に落とせるタイプを選ぶと、肌への負担を軽減できます。使用前には、必ず二の腕の内側などで少量を試し、赤みやかゆみが出ないことを確認してから顔や全身に使用してください。
Q4. 「リーフセーフ」の日焼け止めとは何ですか?日本で選ぶ意味はありますか?
「リーフセーフ」とは、サンゴ礁に有害とされる特定の化学物質を含まない日焼け止めを指します。特に「オキシベンゾン」と「オクチノキサート」という2つの紫外線吸収剤は、サンゴの白化現象を引き起こす原因の一つとして問題視されています7。ハワイやパラオ、タイの一部の国立公園などでは、これらの成分を含む日焼け止めの販売や使用が法律で禁止されています。日本ではまだ同様の法規制はありませんが(2025年現在)、沖縄などの美しいサンゴ礁を守るために、環境に配慮する意識は高まっています。鹿児島県の高校生が日焼け止め成分とサンゴの白化について研究し発表するなど、若い世代の関心も集まっています11。海でレジャーを楽しむ際には、リーフセーフ処方の製品を選ぶことが、未来の環境を守るための私たちにできる行動の一つと言えるでしょう。
Q5. レーザー治療後におすすめの日焼け止めはありますか?
レーザー治療後の肌は非常にデリケートで、紫外線による色素沈着のリスクが高まっています。そのため、徹底した紫外線対策が不可欠です。この時期の肌には、刺激が少なく、高い防御力を持つ製品が推奨されます。具体的には、アレルギーリスクの低い「紫外線散乱剤(ノンケミカル)」を主成分とし、SPF30以上/PA+++以上の高い防御力を持つものが望ましいです。また、肌のバリア機能をサポートする保湿成分や、炎症を抑える成分が配合されているとなお良いでしょう。美容皮膚科などで扱われている、治療後の敏感な肌のために開発された「ドクターズコスメ」の日焼け止めも選択肢の一つです12。ただし、自己判断で選ばず、必ず治療を受けたクリニックの医師の指示に従ってください。

結論

日焼け止めは、単なる美容アイテムではなく、光老化や皮膚がんといった深刻なリスクから私たちの肌と健康を守るための、科学的根拠に基づいた「必需品」です。SPFやPAの数値を正しく理解し、紫外線吸収剤と散乱剤の特性を知り、自分のライフスタイルや肌質に合った製品を選ぶこと。そして何よりも、十分な量をこまめに塗り直すという正しい使い方を実践すること。これらの「新常識」を身につけることが、日焼け止めの効果を最大限に引き出す鍵となります。最新の科学的知見に目を向け、時には環境への配慮も行いながら、賢い紫外線対策を日々の習慣に取り入れ、生涯にわたる健康で美しい肌を目指しましょう。

免責事項
この記事は情報提供を目的としており、個別の医学的アドバイスに代わるものではありません。症状がある場合は専門家にご相談ください。

参考文献

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