はじめに
母乳育児の期間は、赤ちゃんに十分な栄養を届けると同時に、母体自身の健康管理においても非常に重要な時期といえます。一般的に「母乳は赤ちゃんにとって最良の栄養源」といわれますが、母乳に含まれる成分は母親の食生活によって微妙に変化します。そのため、「どんな食べ物を摂取すればよいのか」「どんな食べ物は控えたほうがよいのか」を知っておくことが大切です。特にアレルギーリスクや消化器官への負担、赤ちゃんの発育に影響を与える可能性がある食品は、できるだけ避けるか注意して取り入れることが推奨されます。
免責事項
当サイトの情報は、Hello Bacsi ベトナム版を基に編集されたものであり、一般的な情報提供を目的としています。本情報は医療専門家のアドバイスに代わるものではなく、参考としてご利用ください。詳しい内容や個別の症状については、必ず医師にご相談ください。
本記事では、母乳育児中にできるだけ避けたいとされる代表的な14種類の食品を中心に解説します。これらの食品がもつ特徴や、実際にどのような影響を赤ちゃんにもたらすのかを順番に詳しく見ていきます。同時に、日本の食文化や生活習慣をふまえた上での注意点や、海外で報告されている最新の研究知見も適宜補足しながらまとめました。母乳育児に取り組むお母さんのなかには「これは食べてもいいの?」「少しぐらいなら飲んでも大丈夫?」と疑問に思う方も多いでしょう。本記事は、そうした疑問や不安を解消する一助となるよう、専門的な情報をできるだけ平易にまとめることを目的としています。
なお、本記事は多くの文献・研究を参考にした情報提供を目的としておりますが、個々の体質や赤ちゃんの状況、家族のアレルギー歴などによって対応は大きく異なります。最終的に何を食べ、何を控えるかは、必ず医師などの専門家に相談し、ご自身と赤ちゃんに最適な方法を選択してください。
専門家への相談
本記事では、過去の研究および近年の学術雑誌に公表された知見を参考にしています。また、母乳育児や小児科領域における複数の専門家の見解も踏まえ、可能な限り正確な情報をまとめました。特に、Le Thi My Duyen(Bác sĩ Lê Thị Mỹ Duyên)という医師による小児科・産科の臨床実践を踏まえた知見も参照しております。ただし、各ご家庭の事情や赤ちゃんの健康状態、遺伝的なアレルギー体質の有無などは人それぞれ異なります。したがって、具体的に「どのような食品をどう避ければいいか」「どこまで控えればいいか」といった点は、必ず担当の医師や管理栄養士などと相談しながら決定することをおすすめします。
さらに近年は、母乳育児と食品アレルギーの関連について、アメリカやヨーロッパ、日本国内を含む各国で多くの研究が進められています。後ほど詳述しますが、例えば食物アレルギーの予防や赤ちゃんの腸内環境の形成にかかわる研究結果も続々と報告されており、国や地域、医療機関によって若干ガイドラインが違う場合があります。そのため「絶対に避けるべき」と明言できるものと、「ある程度まで許容範囲」と判断されるものが混在しているケースもあります。
以下では、一般的に「母乳育児中には摂取を控える、もしくは注意して取り入れることが望ましい」と考えられている14種類の食品を順に紹介します。母乳を通じて赤ちゃんに影響が出る仕組み、具体的な留意点や実際に報告されている症状などを整理しました。必要に応じて海外の最新研究や国内での事例も引用しながら解説を加えますので、ご自身の状況を踏まえつつ参考にしてください。
14種類の食品と注意点
ここからは、母乳育児中にできるだけ避ける、あるいは気をつけたいとされる14種類の食品について、具体的に詳しく見ていきます。これらの食品がもつ特性や、赤ちゃんに及ぼすリスクの理由、量を減らすときのポイントなどを網羅的に解説します。同時に「完全に避けなければいけない場合」と「少量なら問題ない場合」を区別しながら、国内外のガイドラインや研究を交えてご案内します。なお、日本人の食文化に合わせた視点からも補足し、どのように日常生活に取り入れるかについても可能な範囲で言及します。
1. カフェインを多く含む飲み物(コーヒー、紅茶、エナジードリンクなど)
ポイントとリスク
- カフェインはコーヒーや紅茶、エナジードリンク、炭酸飲料(一部)、チョコレートなどにも含まれています。大人にとっては覚醒作用のある身近な成分ですが、新生児や乳児の体内では分解・排泄機能が未熟なため、カフェインが蓄積しやすいとされます。
- 大人であれば1〜2時間程度で分解・排泄するカフェインも、赤ちゃんの体内では数倍以上長く残る可能性が報告されています。その結果、寝つきが悪くなる、落ち着かない、機嫌が悪いなどの症状が出るケースがあります。
- さらに、カフェインの過剰摂取は母体の鉄分吸収を阻害することも指摘されており、貧血リスクのある母親にとっては注意が必要です。
具体的な取り組みとアドバイス
- どうしてもコーヒーが飲みたい方は、1日1〜2杯程度に抑える、ノンカフェインやデカフェ商品を活用するなどの工夫がおすすめです。
- 同時に、紅茶・緑茶にもカフェインが含まれるため、コーヒーを控えたつもりでも別の飲み物でカフェインをとり過ぎてしまう場合もあります。トータルの摂取量をしっかり把握しましょう。
- 2022年に発表されたアメリカ小児科学会(American Academy of Pediatrics)の新ガイドラインでも、母乳育児中のカフェイン摂取は控えめにしつつ、適量であれば大きな問題は起こりにくいと報告されています(Meek, Noble, and Section on Breastfeeding, 2022)。ただし赤ちゃんの体質によっては少量でも不調が起こる可能性があるため、様子を見ながら調整が必要です。
2. チョコレート
ポイントとリスク
- チョコレートにはテオブロミンという成分が含まれています。テオブロミンはカフェインと似た構造をもち、過剰に摂取すると母乳を介して赤ちゃんに覚醒作用や興奮をもたらす可能性があると考えられます。
- とくに「カカオ含有率の高いチョコレート」や「ココアパウダーが濃厚に使われたスイーツ」などはテオブロミンの量が多い場合があるため注意が必要です。
具体的な取り組みとアドバイス
- 適度に楽しむ分には大きな問題が生じないことも多いですが、赤ちゃんが夜泣きやぐずりを頻繁に起こし始めた場合は、一度チョコレートの摂取をやめてみて症状が改善するか確認してみてもよいでしょう。
- ただし、日本人の一般的な食生活でチョコレートだけを大量摂取することはあまり考えられません。そこまで神経質になる必要はありませんが、上記のような症状が見られたときは摂取を控えるといったバランス感覚が大切です。
3. 柑橘類(みかん、レモン、オレンジ、グレープフルーツなど)
ポイントとリスク
- 柑橘類はビタミンCや食物繊維が豊富で、健康面において優れた食材ですが、酸味が強い果物に含まれる酸性成分が赤ちゃんの消化器官を刺激する可能性があります。
- 海外の育児情報サイトなどでは、柑橘類を大量に摂ると母乳が酸性に傾き、赤ちゃんの消化を乱すケースがあると指摘するものも存在します。しかし、これは個人差が大きく、実証研究としては因果関係が明確に示されていない部分があります。
- 一部では、柑橘類を食べた母親の母乳によって赤ちゃんがおむつかぶれを起こした、という事例報告も見られます。もっとも、これも赤ちゃんの体質によるところが大きいです。
具体的な取り組みとアドバイス
- もし赤ちゃんに下痢やおむつかぶれ、嘔吐などが見られた場合は、柑橘類をしばらく控え、代替として他のビタミンC源(イチゴ、パパイヤ、キウイなど)を活用する方法があります。
- どうしても柑橘類が食べたいときは、量を調整したり、果汁100%ジュースの場合は薄めて飲んだりするなど工夫してみてください。
- 日本の食習慣では温州みかんや柚子などを日常的に取り入れる人が多いため、すぐに影響を感じない場合は無理に止める必要はありません。ただし、もし赤ちゃんに不調が見られたら一度摂取量を減らし、原因を切り分けていく姿勢が重要です。
4. ブロッコリー
ポイントとリスク
- ブロッコリーやキャベツ、カリフラワー、玉ねぎ、キュウリといった野菜は「腸内でガスを発生させやすい可能性がある」とよく言われます。大人にとっては「少しおなかにガスがたまったかな」程度の体感ですが、赤ちゃんにとってはわずかなガスでも不快感につながりやすいとされます。
- ただし、すべての赤ちゃんが同じように反応するわけではなく、全く問題ない場合も珍しくありません。
具体的な取り組みとアドバイス
- ブロッコリーの摂取が赤ちゃんの便通や機嫌にどの程度影響するかは個人差が大きいです。母乳育児中にブロッコリーを食べてみて、翌日以降の様子を観察し、明らかにお腹が張ってつらそうであれば調整しましょう。
- 日本の食卓では野菜摂取が栄養バランスを支えるうえで重要なので、完全にやめるのではなく、量を減らす・頻度を下げる・調理法を工夫するなどが有効です。
5. 水銀を多く含む魚(メカジキ、サメ、マグロの一部など)
ポイントとリスク
- 一部の大型魚は、海洋汚染などを背景として水銀を蓄積しやすいとされます。特にメカジキ、サメ、クロマグロなどは水銀濃度が高いとされるため、妊娠中や授乳中は量に注意が必要です。
- 水銀は胎児や乳児の神経系の発達に影響を及ぼす可能性があり、過剰摂取は避けるべきだと厚生労働省を含む各国当局がガイドラインで示しています。
具体的な取り組みとアドバイス
- 魚はDHAやEPAなど赤ちゃんの脳神経発達に有益な栄養素も豊富に含まれるため、まったく食べないのではなく、週に2回程度、種類を分散させて食べるのが推奨されています。
- 日本では行政機関が魚の摂取量の目安を提示しているので、それを確認しながら、できるだけ水銀リスクの低い魚(サーモン、イワシ、アジなど)を選ぶのも有効です。
- 近年の厚生労働省やアメリカ食品医薬品局(FDA)の報告でも、授乳中の魚摂取は多様な栄養の観点からメリットが大きいとされつつ、水銀リスクに留意するよう繰り返し注意喚起されています。
6. アルコール
ポイントとリスク
- アルコールは母乳に移行しやすく、赤ちゃんの脳や神経系の発達に影響を与える可能性があります。特に大量に摂取した場合や頻繁にアルコールを摂り続けた場合、母乳中のアルコール濃度が高まり、赤ちゃんの発育に対する悪影響が懸念されます。
- 少量であっても赤ちゃんの肝臓はアルコールを十分に分解できないため、一般的には母乳育児中のアルコール摂取は避けるか厳しく制限するほうが望ましい、と多くの医療機関や専門家が指摘しています。
具体的な取り組みとアドバイス
- 「授乳が終わった直後に少量だけ飲む」「飲酒後はしばらく母乳を与えない」などの工夫をする人もいますが、実際には「ポンプで搾乳して捨てればアルコールが抜ける」というわけではなく、母体の血中アルコール濃度の推移にあわせて母乳への移行量が変動します。
- やむを得ず飲みたい場合は、医師に相談し、どの程度の量なら影響が少ないか見極めてもらうことが大切です。
- 飲酒の習慣がある人は、母乳育児中はノンアルコール飲料に切り替えるなどの方法で対処するケースも多くみられます。
7. ピーナッツ
ポイントとリスク
- ピーナッツは世界的にみてもアレルギー源として上位に挙げられる食品です。アレルギーのある母親がピーナッツを摂取すると、アレルギーの原因タンパク質が母乳を介して赤ちゃんに移行する可能性が示唆されています。
- 遺伝的にアレルギー傾向をもつ家系の場合、赤ちゃんに発疹や呼吸器症状(喘鳴など)が起こるリスクが高まると考えられます。
- 他方で、母乳を通して低容量のアレルゲンに触れることで、将来的なアレルギー発症を防ぐ効果があるという説も一部で議論されています。しかし、まだ結論が十分に固まっていないため、現時点では専門家の多くが「家系的にピーナッツアレルギーが強く疑われる場合は、産後しばらくは摂取を控えるほうが無難」としています。
具体的な取り組みとアドバイス
- ピーナッツを含む食品を食べたあと、赤ちゃんに湿疹や下痢、呼吸苦などの症状が見られるようなら、すぐに医療機関を受診してアレルギー検査を行うことを推奨します。
- 2021年に発表された食物アレルギーに関するレビュー(Venter et al., 2021)では、母親の食事からアレルゲンを完全に除去した場合とそうでない場合の赤ちゃんのアレルギー発症率に有意差があるかどうか、研究の見解が分かれると報告されています。つまり絶対的な結論はまだ出ていないものの、念のためリスクが高いと予想される場合は慎重に対応する必要があります。
8. パセリとミント
ポイントとリスク
- パセリやミント、セージなどはハーブとして料理に用いられることが多いですが、これらには母乳の分泌を抑制するとされる成分が含まれます。なかでもミントティーを多量に飲むと母乳の量が減ったと感じる母親がいることが報告されています。
- これらのハーブを「まったく摂らないほうがいい」というわけではありませんが、大量摂取すると授乳量が減るリスクがあるため注意が必要です。
具体的な取り組みとアドバイス
- 普段の食事にパセリを少量ふりかける程度であれば、ほとんど問題ありません。過度に心配する必要はないでしょう。
- ただし、ハーブティーやサプリメントなどで大量に摂取する習慣のある方は、母乳量に影響がないか観察しつつ、違和感がある場合は使用を控えることをおすすめします。
- 海外では、卒乳を促すためにあえてミントティーを活用する例もあるほど、母乳分泌に影響するハーブであることが広く知られています。日本ではあまり浸透していませんが「ハーブ=自然派で安全」という先入観だけで大量に飲むのは避けましょう。
9. 乳製品
ポイントとリスク
- 母親が摂取した乳製品のタンパク質が母乳に移行し、乳児がアレルギー反応を起こす場合があります。典型的にはミルクアレルギーや牛乳タンパクアレルギーと呼ばれ、吐き戻し、下痢、皮膚症状(湿疹)などが現れることがあります。
- 欧米圏では牛乳を日常的に大量摂取する文化があるため、母乳育児中に乳製品を制限する例もしばしば見られますが、日本では食生活のバリエーションが広いため、牛乳・ヨーグルト・チーズなどをそこまで大量にとらない人もいます。
- もし赤ちゃんに皮膚症状や消化不良が起きやすい場合は、試しに乳製品を数週間完全に除去してみて、改善があるかどうか確認する方法があります。
具体的な取り組みとアドバイス
- 「乳製品アレルギーが疑われる」場合は、医師の指導のもとで除去食を実施し、その後少量ずつ再開して様子を見るのが一般的です。独断でアレルゲンを判断すると必要な栄養が足りなくなるリスクもあるため、必ず専門家と相談しましょう。
- 最近の日本の小児科領域の臨床例でも、牛乳や乳製品を控えることで湿疹が軽快したという報告例が多々あります。ただし、他の食材によるアレルギーだった可能性を否定できないケースもあるため、正確な診断が欠かせません。
- 乳製品はカルシウムを補給するうえでも重要な食品なので、完全除去をする場合は代替食品やサプリメントの利用について専門家に相談する必要があります。
10. ニンニク
ポイントとリスク
- ニンニクの強い香り成分は、母乳にも移行しやすいとされています。これにより母乳の風味が変化し、赤ちゃんが母乳を嫌がる可能性があります。
- ただし、すべての赤ちゃんが嫌がるわけではなく、むしろ気にせずに飲む子もいます。そのため一概に「ニンニクを避けるべき」とは言えませんが、摂りすぎて母乳の香りが極端に変わった場合、赤ちゃんが授乳を嫌がるケースがあるので注意しましょう。
具体的な取り組みとアドバイス
- 一般的な料理の範囲で少量のニンニクを使う分には大きな問題は起きにくいですが、ニンニクを大量に使う料理(ペペロンチーノやガーリックソースなど)を頻繁に食べたあとに赤ちゃんが授乳を嫌がるようなら、一度控えて様子を見てください。
- ニンニクを控えた状態に戻して赤ちゃんの哺乳行動が安定するようなら、ニンニクが原因だった可能性があります。
11. 辛い食べ物(唐辛子、カレー、スパイス類など)
ポイントとリスク
- 香辛料や唐辛子を多用した料理(カレー、キムチ、辛口ラーメンなど)は大人でも胃腸に刺激を与えやすい性質があります。母乳を介して直接辛み成分が移行するかは完全には明確でないものの、一部では赤ちゃんが消化不良を起こしやすくなる報告もあります。
- 汗をかきやすくなる、赤ちゃんが不快そうに泣く、母体も胃もたれを起こすなど、トータルで辛いものは産後の身体には負担が大きい可能性があります。
具体的な取り組みとアドバイス
- 辛い料理を絶対に避ける必要はありませんが、「あえて激辛にする必要はない」という考え方が一般的です。もし辛い料理を好む方は、まず控えめにしてみて、赤ちゃんの様子と自分の体調を見ながら加減を調整するとよいでしょう。
- もともと辛い料理を食べ慣れている地域や家庭では、辛みがそこまで大きな問題にならないケースもありますが、産後は体調が揺らぎやすい時期なので、無理をしない範囲で少しずつ試すのが無難です。
12. 小麦(グルテン含有食品)
ポイントとリスク
- 小麦製品(パン、麺類、ケーキなど)に含まれるグルテンが原因で、乳児がアレルギー反応を示すことがあります。母乳経由でもグルテンに敏感な赤ちゃんが下痢、湿疹、腹部不快感を起こす可能性が報告されています。
- ただし、日本人はパンやパスタよりもコメを主食とする人が多く、小麦摂取量が欧米より少ない傾向があり、アレルギー症状が重篤化する例はそこまで多くないともいわれています。
具体的な取り組みとアドバイス
- 赤ちゃんの便に血液が混じる、腹痛を起こしているように見える、などの症状が続く場合は、小麦アレルギーを疑い、一時的に小麦を除去してみる方法があります。
- このときも自己判断のみで進めるのではなく、小児科医やアレルギー専門医に相談して検査を実施し、ほかの原因食品と切り分けて考えましょう。
13. トウモロコシ
ポイントとリスク
- トウモロコシは世界的にみるとアレルギー頻度はそれほど高くありませんが、日本でも一部の乳幼児でトウモロコシに対するアレルギー反応が報告されています。
- トウモロコシはスナック菓子やコーンスープ、ベビーフードなど多くの加工食品にも含まれているため、気づかずにたくさん摂取している例もあります。
具体的な取り組みとアドバイス
- トウモロコシ由来の甘味料(コーンシロップなど)も多くの食品に使われていますので、赤ちゃんに発疹や下痢などが続く場合は商品ラベルを確認し、コーン由来成分を避けてみる選択肢が考えられます。
- 大豆や小麦と同様に、トウモロコシアレルギーが疑われる際も専門医への相談が欠かせません。自己判断で除去食を続けると栄養バランスを崩すリスクがあるため注意が必要です。
14. 卵や甲殻類(エビ、カニ、ホタテなど)
ポイントとリスク
- 卵アレルギーは子どもの食物アレルギーのなかでもとくに多いとされ、とりわけ卵白のタンパク質が原因となるケースが多いです。母乳にどの程度移行するかは個人差が大きいものの、母親が大量に摂取した場合、赤ちゃんに湿疹などの軽い症状が出る可能性が指摘されています。
- 甲殻類(エビ、カニ、ホタテなど)も主要アレルゲンのひとつであり、家庭内でアレルギー歴がある場合は特に慎重になる必要があります。
具体的な取り組みとアドバイス
- 卵や甲殻類を食べたあと、赤ちゃんにじんましんや呼吸困難が見られる場合は、すぐに受診して検査を行うのが最優先です。
- 卵白や甲殻類にアレルギーがあると判明した場合、母乳育児中はこれらを極力避ける方が安全ですが、しっかりと医療機関で相談しながら進めましょう。
- 一方で最近のガイドラインでは、アレルゲンとなる食品を完全に除去し続けるのではなく、一定の月齢になった段階でごく微量から導入を図る「経口免疫寛容」の考え方も示されています(Du Toit et al., 2022)。ただし、母乳経由での暴露を積極的に勧めるかどうかは個々の症例によりますので、必ず専門医と相談してください。
結論と提言
母乳育児中は、赤ちゃんが摂取する栄養源の多くを母乳に依存しているため、母親の食生活が赤ちゃんに大きな影響を及ぼします。特にアレルギーリスクの高い食品や刺激の強い食品を日常的に摂取している場合、赤ちゃんの肌トラブルや消化不良、睡眠障害などを誘発する可能性があります。
ただし、ここで挙げた14種類の食品は「絶対にすべて禁止」というわけではなく、「赤ちゃんや母親の体質・健康状態によっては控えたほうがよい」または「摂取量・頻度に注意したほうがよい」といった意味合いで紹介しています。実際には、人それぞれの体質や食文化、赤ちゃんの発達段階によって状況は異なるため、一律のルールで縛るよりも、個々の症状や反応をみながら柔軟に対応する姿勢が重要です。
とくにアレルギーに関しては、最新の研究から「ある程度の早期摂取が将来的なアレルギー予防に有効」との見解も示されはじめています。一方で、重篤なアレルギー症状が疑われる場合は早期導入がかえってリスクを高めるケースもあり、専門家のサポートが欠かせません。
最終的なポイントとして、以下の点を提言します:
-
母体・赤ちゃんの体調をよく観察しながら、食品を段階的に試す
赤ちゃんの機嫌、便通、肌の状態などを観察し、「特定の食品を摂ったあとに明らかな変化があるか」を見極めましょう。 -
アレルギーの疑いがある場合は、必ず専門医や管理栄養士に相談
自己判断で除去食を始めると栄養が偏り、母体にも赤ちゃんにもデメリットが生じる可能性があります。除去食が必要かどうか、どの程度の期間行うべきかは専門家のアドバイスを受けるのが安全です。 -
過剰な制限ではなく、バランスの取れた食生活を維持する
母乳育児中は多くの栄養素が必要ですが、同時に過度な制限をしすぎるとかえってストレスを感じる方も多いでしょう。大切なのは「摂りすぎに注意する」「明らかな症状が出たときは控える」の2点です。 -
疑わしい症状がなく、特に問題を感じていないのであれば、必要以上に制限しなくても良い
一律に「授乳中はこれを食べてはいけない」と思い込みすぎると、食事が単調になり、母親の健康やメンタルに悪影響を及ぼす可能性があります。臨機応変に対応する柔軟性が大切です。 -
新たな研究動向を定期的にチェックしながら最新情報を取り入れる
近年は母乳育児と食事に関する知見が急速に更新されています。例えばアメリカ小児科学会や日本小児科学会のガイドライン改訂など、新しい情報にアンテナを張っておくと安心です。
参考文献
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14 Foods To Avoid While Breastfeeding
http://www.momjunction.com/articles/foods-to-avoid-while-breastfeeding_002898/?ref=hotpickssidebar
アクセス日:2017年7月17日 -
Are there any foods to avoid while breastfeeding?
https://www.babycenter.com/404_are-there-any-foods-to-avoid-while-breastfeeding_8906.bc
アクセス日:2017年7月17日 -
Meek J.Y., Noble L., Section on Breastfeeding.
Policy Statement: Breastfeeding and the Use of Human Milk. Pediatrics. 2022;150(1): e2022057988. doi:10.1542/peds.2022-057988 -
Venter C., Maslin K., Patil V.K. et al.
The role of maternal dietary proteins in the development of food allergy in infants and young children. Pediatric Allergy and Immunology. 2021;32(3): e13759. doi:10.1111/pai.13759 -
Du Toit G., et al.
Preventing food allergy in infancy: A review of current guidelines. Journal of Allergy and Clinical Immunology in Practice. 2022;10(9):2173-2180. doi:10.1016/j.jaip.2022.05.001
※本記事は、多角的な文献や臨床報告に基づく参考情報として提供しております。内容は医学的助言の代替を意図したものではありません。母乳育児中に特定の食材やサプリメントなどを制限・導入する場合、個々の体質や赤ちゃんの状況によって適切な方法は異なります。必ず医師や管理栄養士などの専門家へご相談ください。