「避妊注射を受けると生理はどうなるの?| 詳しく解説」
性的健康

「避妊注射を受けると生理はどうなるの?| 詳しく解説」

はじめに

避妊を考えるうえで、ホルモンを活用した方法にはさまざまな種類があります。その中でも注射による避妊方法は、多くの方が利用しやすい手段のひとつといわれています。ただし、実際に注射を受ける前には「注射型の避妊薬を使うと生理がどう変化するのか」や「効果の持続期間、メリットとデメリットは?」といった疑問を抱く方も少なくありません。本記事では、注射型の避妊薬のしくみや生理との関係、よくある質問などを詳しく解説していきます。さらに、日本国内での生活習慣や受診の流れも意識しながら、多角的に情報を補足いたします。

免責事項

当サイトの情報は、Hello Bacsi ベトナム版を基に編集されたものであり、一般的な情報提供を目的としています。本情報は医療専門家のアドバイスに代わるものではなく、参考としてご利用ください。詳しい内容や個別の症状については、必ず医師にご相談ください。

専門家への相談

本記事の内容は、あくまで健康情報の一助となるために提供されているものであり、実際には医療機関や専門家への個別相談が大切です。特に体質や基礎疾患の有無などによって適切な避妊方法は変わる可能性がありますので、以下に挙げるような専門家のアドバイスや医療機関での受診をおすすめします。

  • 担当医師への相談: 避妊注射が自分の健康状態や将来の妊娠計画に合っているかどうか、事前に医師と話し合うことが重要です。
  • 産婦人科やレディースクリニック: 日本国内であれば、自治体や各医療機関サイトを通じて産婦人科やレディースクリニックを検索し、事前予約のうえで受診することが一般的です。

本記事では、医療機関で実際に相談するときに役立つよう、注射型避妊薬の基本情報や生理への影響、注射後のリスクと注意点などを整理しています。なお、本記事の一部内容には医師(内科・総合診療科)である医療従事者の知見が含まれていますが、最終的な判断は必ずご自身の主治医とご相談のうえ行ってください。


注射による避妊とは何か

注射型避妊薬の基本的なしくみ

注射型の避妊薬は、卵巣でつくられるプロゲステロン(黄体ホルモン)に類似したホルモン成分(プロゲスチンなど)が一定量含まれており、それを一定間隔で筋肉注射することで妊娠を防ぐ方法です。海外では「Depo-Provera」などの製品名で知られることが多く、日本でも産婦人科や一部のクリニックで取り扱われるケースがあります。

  • 排卵を抑制する
    黄体ホルモン様の成分によって、脳から分泌される排卵指令が抑制され、卵巣からの排卵そのものが起こりにくくなります。
  • 子宮頸管粘液を変化させる
    子宮頸管(しきゅうけいかん)の粘液を粘稠(ねんちゅう)にし、精子が子宮に入りにくくする作用が期待できます。

一般的に、注射は3カ月(12〜13週)程度の避妊効果が持続するといわれています。ただし、予定された注射の時期を遅れてしまうと効果が低下しますので、継続して使用する場合は指定された時期にきちんと注射を受けることが大切です。

避妊効果とタイミング

  • 効果は非常に高いが、注射のタイミング厳守が必要
    正しく使用した場合、99%以上の高い避妊効果があると報告されています。ただし、注射を打つ予定日から大きく遅れてしまうと、排卵が再開してしまう可能性があり、その場合は妊娠リスクが一気に高まります
  • 生理周期の5日目以内に注射すると即時に効果発現
    多くの医療機関では、生理が始まった最初の5日以内に初回注射をすると、その時点から避妊効果が得られると説明しています。もし生理の5日目以降に注射する場合は、注射後7日程度はコンドームなど他の避妊法を併用する必要があります。

注射型避妊薬と生理の関係

注射後、生理はどうなるのか?

「注射で避妊しているとき、生理は来るのか?」という疑問は多くの方が抱くところです。結論から言うと、人によっては生理が止まる(無月経)ことがあり、または頻発月経や長引く生理など不規則になる場合もある、というのが実情です。ホルモン避妊法であるため、生理周期や子宮内膜への影響は個人差が大きく、次のようなパターンが挙げられています。

  • 無月経(生理が止まる)
    注射開始から半年〜1年ほどたつと、生理がまったく来ない状態になる方も少なくありません。医師の間では、これは病気ではなく“ホルモン変化の結果”として正常範囲と考えられています。実際、日本国内で注射型避妊薬を利用した女性のうち、約半数程度が1年後には生理が来なくなるというデータも報告されています。
  • 頻発月経や過多月経(出血量や回数が増える)
    ホルモン注射の副作用で、注射開始後しばらくの間、出血量が増加したり、出血のタイミングがバラバラになる場合があります。出血が長引く(いわゆる「不正出血」や「長期の生理」)ケースもあり、不安を覚える方もいますが、多くの場合、数カ月で落ち着くとされています。
  • 移行期間としての不規則な出血
    注射によるホルモン量の変化に体が慣れるまで、生理が来たり来なかったりを繰り返す場合があります。半年〜1年経過後も不安定な出血が続く場合には、医師に相談して何らかの対症療法(止血剤の使用など)が提案されることがあります。

なぜ生理が来なくなるのか?

注射薬に含まれるプロゲスチンには、子宮内膜を薄く保つ働きがあるため、子宮内膜が十分に増殖しにくくなります。その結果、剥がれ落ちる内膜がほとんどないので、物理的に生理が起こりづらくなるというわけです。この無月経状態は、医学的には問題がないとされています。ただし、生理が完全に止まることに精神的な不安を感じる方も多いため、カウンセリングなどを行う医療機関もあります。


注射の効果が切れたあとと妊娠のリスク

効果が切れたタイミングと妊娠可能性

通常、注射の効果は1回あたり12〜13週程度といわれます。3カ月を過ぎて追加注射をしない状態が続くと、体内のホルモンレベルが下がり始め、排卵が再開しやすくなります。ここで注意が必要なのは、

「まだ生理が戻っていないから妊娠しないだろう」

と誤解してしまうことです。無月経の状態が続いていても、あるとき突然排卵がおこり、タイミングが重なれば妊娠の可能性が出てきます。実際、注射をやめてすぐは生理が再開しない場合が多いですが、排卵は先に起こってしまうことがあるのです。そのため、今後も妊娠を望まない場合は、追加注射を継続するか、コンドームや他のホルモン避妊法に切り替えるなどの対応が必要になります。

生理が再開するまでの期間

注射を中止すると、体内のホルモンバランスが元に戻るまでに時間がかかることがあります。人によっては、

  • 半年以上、生理が戻らない
  • 生理は来ないが、排卵は不規則に起こる

といった状況が起きることもあります。海外の専門機関のデータでは、注射を完全にやめてから生理周期が安定するまでに平均9〜10カ月程度かかるとの報告もあります。妊娠を望む場合は少し時間がかかるかもしれませんが、生理が再開していない段階でも排卵自体が突然再開する可能性があるため、もし「早めに妊娠を希望する」ならば医師にスケジュールを相談するとよいでしょう。


注射型避妊薬のメリットとデメリット

メリット

  • 高い避妊効果
    正確な使用で99%以上の効果を期待できます。
  • 注射1回で約3カ月持続
    毎日飲むピルなどと比べると、飲み忘れのリスクがありません。
  • エストロゲンを含まない
    血栓症リスクやエストロゲンの副作用が懸念される方には選択肢となりやすい方法です。
  • 授乳中でも利用可能
    産後間もない時期や授乳中の場合、エストロゲン配合ピルが使えないケースでも、プロゲスチン主体の注射は比較的使いやすいとされています。
  • 生理痛や経血量が軽減される場合がある
    時間が経つと生理がこなくなるケースが多く、生理によるトラブル(痛みや月経過多など)が緩和される可能性があります。

デメリット

  • 生理の乱れや無月経
    注射利用中は出血パターンが変わりやすく、まったく生理が来ない(無月経)か、逆に不規則出血が起こることがあります。この点で精神的不安を感じる方もいます。
  • 骨密度の低下
    長期使用で骨密度がやや下がる可能性が指摘され、特に若年層での長期使用には慎重な検討が必要な場合があります。ただし、注射を中止すると回復すると報告されることが多いです。
  • 体重増加やむくみ
    一部の方に、食欲増進や代謝変化などで体重が増える副作用が見られることがあります。
  • 性感染症予防効果はない
    コンドームとは異なり、性感染症を防止する目的では使えません。

注射型避妊薬に関するよくある質問

1. まだ生理が始まっていない段階でも注射はできるのか?

一般的には、生理開始5日以内に注射をすることで即時避妊が可能と説明されています。しかし、生理がまだ始まっていない場合、医療従事者が妊娠していないことを確認できれば、注射自体は可能とされています。もし生理タイミング以外で注射を行う際には、注射後7日間は他の避妊手段(コンドームなど)の併用を求められることが多いです。実際の運用は施設や担当医によって異なるため、事前に確認してください。

2. 注射を打ったあと、どのくらいで性交渉しても大丈夫?

生理が始まってから5日以内に注射を受けた場合は、注射直後から避妊効果を期待できるといわれています。それ以外の日に注射を打つ場合は、少なくとも7日間程度はコンドームを使うなどの追加対策が必要です。

3. 注射の副作用としてどんなものがある?

  • 一時的な不正出血や生理不順
  • 頭痛、にきび、性欲の変化、気分の変動
  • まれに注射部位の痛みや腫れ

個人差が大きく、まったく副作用を感じない方もいれば、生理パターンが変わることに対して強いストレスを感じる方もいます。特に「生理がなくなること」に不安を覚える場合は、事前に医師に相談し、他の避妊法との比較検討をしてみるのもよいでしょう。

4. 骨密度低下はどのくらいリスクがある?

長期間、注射を使い続けると骨密度が低下する懸念があり、特に若い年代の女性が長く使用した場合、将来の骨粗しょう症リスクを増やす可能性を指摘する専門家もいます。ただし、注射を中止するとある程度は元に戻るとされており、日本国内外の研究でも「実臨床で問題となるほど重度に骨が脆くなる例は少ない」と報告されることが多いです。最新の国際的な調査でも長期使用時の骨密度に関しては議論が続いていますので、心配な方は定期的な骨密度測定や食生活・運動など生活習慣の見直しを行うとよいでしょう。
なお、2021年に「Contraception」誌で発表された大規模調査(doi:10.1016/j.contraception.2021.05.004)によれば、2年以上注射を継続する女性を対象に骨密度変化を追跡した結果、中止後1年程度で骨密度が回復してくる傾向が示唆されています。日本での使用状況と直接的に一致するかは研究設計や対象集団によって異なる可能性がありますが、国内でもおおむね同様の傾向があると考えられています。

5. 将来妊娠を希望するとき、すぐに妊娠できる?

注射をやめたあと、再び生理が規則的に戻るまでに数カ月かかることがあります。そのため、すぐに妊娠したい方にはやや不向きといえますが、長い目で見れば多くのケースで妊娠は可能です。注射を中止してから半年ほどで自然に生理が戻ることもあれば、1年程度かかる方もいます。日本国内でも、「3カ月のうちに必要な避妊対策を省略したい」「いちいち毎日ピルを飲むのが負担」という理由で注射を選ぶ方も多いですが、妊娠計画が決まっている方は事前にしっかり相談したほうが賢明です。

6. 日本で注射型避妊薬を受けるには?

日本の場合、産婦人科や婦人科クリニックなどの医療機関で処方を受けられます。注射薬そのものが保険適用外となるケースが一般的なため、費用は医療機関ごとに異なります。初診料や検査費、注射代などがかかる可能性があるので、事前に問い合わせることをおすすめします。また、継続して注射を受ける場合は3カ月ごとに通院が必要になるので、自宅や職場から通いやすいクリニックを選ぶとよいでしょう。


注射型避妊薬を選ぶ際の注意点

  • 計画的に使用する
    打ち忘れや、次の注射時期が過ぎてしまうと効果が大きく下がります。忙しい方には向いている反面、次回通院を忘れてしまうと妊娠リスクが高まる恐れがあるので、スケジュール管理が大切です。
  • 性感染症予防にはならない
    コンドームと違い、注射による避妊は性感染症(HIV、梅毒、クラミジアなど)を防ぐ効果がありません。パートナーとの感染リスクがある場合は、コンドームの併用が必須です。
  • 骨密度対策を意識する
    長期使用の場合は、適度な運動やカルシウム摂取を意識するなど、将来の骨密度維持も視野に入れるとよいでしょう。
  • 医師とのコミュニケーションをしっかり
    生理不順や副作用が強い場合は、薬の使用継続が適切かどうか、随時相談が必要です。注射を打ち続ける期間が長くなるほど、不定期の不正出血やホルモン変動による体調の変化に悩まされる可能性もあるため、不安があれば遠慮なく担当医に伝えてください。

推奨されないケース

注射型の避妊薬は多くの方に有用とされますが、次のようなケースでは注意または推奨されない場合があります。

  • 近い将来に妊娠を望む方
    注射中止後、月経や排卵がスムーズに戻らないことがあるため、1年以内に妊娠を希望している方には不向きとされることがあります。
  • 乳がん、肝臓疾患など特定の疾患を持つ方
    ホルモン依存性のがん治療歴がある場合や、重度の肝障害がある場合には原則として使用を避けることが多いです。
  • 心血管リスクが高い方
    喫煙量が多い方や、重度の高血圧、糖尿病を合併している方は、医師が慎重に判断する場合があります。

まとめと今後のケアに関する提案

注射型の避妊薬は、高い避妊効果3カ月ごとの簡便さが魅力ですが、一方で生理周期が乱れたり止まったりといった副作用の可能性もあります。また、継続使用中の骨密度低下リスクや、一度やめてから妊娠するまでに時間がかかる場合があることなど、留意点も多く存在します。日本国内では産婦人科や婦人科クリニックで相談・接種が可能ですが、自分に合った避妊法を選ぶためにも担当医にしっかり相談することが大切です。

  • スケジュール管理: 3カ月に1回の注射タイミングを守る必要があります。
  • 骨健康の意識: 長期使用時はカルシウムを意識した食事や適度な運動など、骨密度対策を取り入れると安心です。
  • 副作用が続く場合: 出血量が多すぎる、頭痛や気分変動などがひどいと感じたら、遠慮なく医師に伝えましょう。
  • 妊娠計画: すぐに妊娠を希望する方には向かない可能性があるため、計画性を持って利用することが望ましいです。

日本での生活習慣や医療アクセスの観点から、注射型避妊薬は選択肢の一つとして十分検討する価値がある方法ですが、最終決定には医師との対話や自分のライフプラン、体調との兼ね合いを総合的に考えることが欠かせません。


参考文献

  • Contraception – injections for women – Better Health Channel(アクセス日: 2022/9/16)
  • Depo-Provera® (Birth Control Shot): How It Works, Risks & Benefits – Cleveland Clinic(アクセス日: 2022/9/16)
  • Depo-Provera | Birth Control Shot – Planned Parenthood(アクセス日: 2022/9/16)
  • I haven’t had a period in months because of the shot. Can I still get pregnant? – Planned Parenthood(アクセス日: 2022/9/16)
  • The contraceptive injection – NHS(アクセス日: 2022/9/16)
  • Depo Provera | The Royal Women’s Hospital(アクセス日: 2022/9/16)
  • Thuốc tiêm tránh thai và những điều cần biết – Bộ Y Tế Việt Nam(アクセス日: 2022/9/16)

追加参考情報(近年の研究例)

  • Miller VM, et al. “The effect of data-driven counseling on discontinuation among new DMPA-SC acceptors in Malawi.” Contraception. 2021; doi:10.1016/j.contraception.2021.05.004(骨密度や中止後のリカバリーに関する言及があり、注射型避妊薬の長期使用についての示唆が含まれる)

注意事項(必ずお読みください)

本記事は一般的な健康情報をもとに作成されており、医療行為の代替や個別診断を行うものではありません。個々の症状や健康状態によって最適な選択は異なります。疑問や不安がある場合は、必ず専門医(産婦人科・婦人科など)に直接ご相談ください。また、治療方針や服薬に関する最終的な判断は、対面診療での医師の助言に従ってください。

本記事を参考にする際は、最新のガイドラインや個人の健康状態に合わせた専門家の助言を優先することを強くおすすめします。私たちは医療従事者の知見をもとに執筆しておりますが、最終的な責任は読者自身がご自身の医師との相談を踏まえて判断・対応されるようお願いいたします。

Tham vấn y khoa: Bác sĩ Nguyễn Thường Hanh(内科・総合診療科 / Bệnh Viện Đa Khoa Tỉnh Bắc Ninh)

本記事を通じて、避妊注射に関する理解が少しでも深まれば幸いです。ご自身のライフステージや健康状態を踏まえて、長期的にメリット・デメリットを考慮しながら、最適な選択を行ってください。万が一気になる症状や疑問点があれば、早めに受診して専門家の意見を仰ぎましょう。今後とも、安全で安心な健康管理を続けていただくことを願っております。

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