この記事は、そんなつらい鼻の悩みを持つあなたのための包括的ガイドです。Japanese Health(JHO)編集部は、日本の最新診療ガイドラインや国内外の信頼できる医学研究に基づき、鼻炎の全体像をできるだけわかりやすく整理しました。本記事を通じて、ご自身の症状を深く理解し、適切な対処法を見つけるための確かな第一歩を踏み出していただければ幸いです。
要点まとめ
- 鼻炎には、アレルギー性、感染性、血管運動性、薬剤性など多くのタイプがあり、それぞれ原因や治療法が異なります。正確な診断が、適切な治療の第一歩です45。
- 日本で最も多いアレルギー性鼻炎は、2019年の全国疫学調査で国民の約半数が罹患している「国民病」です67。最新の『鼻アレルギー診療ガイドライン2024年版』に基づき、薬物療法、アレルゲン免疫療法(舌下免疫療法など)、手術療法といった多角的な治療選択肢があります8。
- 市販の点鼻薬(血管収縮薬)の長期連用は、かえって症状を悪化させる「薬剤性鼻炎」を引き起こすリスクがあります9。市販薬は用法・用量を守って短期間のみ使用し、改善しない場合は必ず医師・薬剤師に相談することが重要です10。
- 治療の基本は、原因の除去・回避と、症状や重症度に応じた適切な薬物療法です。特にアレルギー性鼻炎では、鼻噴霧用ステロイド薬が中等症以上の治療の中心的薬剤と位置づけられています811。
- 根本治療を目指せるアレルゲン免疫療法(特に舌下免疫療法)や、日帰りでも可能なレーザー手術など、治療法は年々進化しています212。諦めずに専門医と相談し、自分に合った治療法を一緒に検討することが大切です。
鼻炎の悩みを解消する道しるべ
止まらないくしゃみや鼻水、そして息苦しい鼻づまりは、仕事や勉強への集中力を奪い、夜も眠れないほどのストレスを引き起こします。「この状態がいつまで続くのだろう」と不安になり、気分まで落ち込んでしまう方も少なくありません。
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鼻炎の症状を根本からコントロールし、快適な生活を取り戻すためには、まず鼻だけでなく、耳やのどを含む「耳鼻咽喉」の健康状態を全体として理解することが大切です。耳鼻咽喉科疾患 完全ガイドを参照することで、現在の症状がどのような病態に関連しているのか、全体像をつかむ助けになります。
鼻炎にはアレルギー性だけでなく、寒暖差や感染によるものなど多くの種類があり、それぞれで対処法が異なります。まずはご自身のタイプを正しく知るために、鼻炎の種類の見分け方を確認し、適切なアプローチを見つけることが治療の第一歩です。
特に鼻水が出ないのに鼻が詰まる症状は、アレルギーだけでなく、鼻の構造的な問題や慢性的な炎症など、別の原因が隠れている可能性もあります。もし頑固な鼻閉にお悩みなら、鼻水のない鼻づまりの原因を詳しく知ることで、見落とされがちな原因をチェックするきっかけになります。
また、市販の点鼻薬を使いすぎて症状が悪化してしまう「薬剤性鼻炎」にも注意が必要です。もし点鼻薬が手放せなくなっていると感じたら、薬剤性鼻炎の正しい対処法を学び、早めに専門医に相談しながら適切な使用方法に戻すことが回復への近道です。
治療と並行して自宅でできるケアとして、鼻洗浄(いわゆる「鼻うがい」)は、アレルゲンやウイルスを洗い流し、粘膜を清潔に保つうえで非常に効果的です。科学的根拠に基づいた鼻うがいの方法を実践し、日々の不快感を少しずつ軽減していきましょう。
鼻炎は「仕方がないから我慢する」病気ではありません。正しい知識とケアで、コントロールすることができます。つらい症状を一人で抱え込まず、必要に応じて専門医と相談しながら、自分に合った治療法とセルフケアのバランスを探していきましょう。
本記事は、JHO(JapaneseHealth.org)編集委員会が、厚生労働省や日本の専門学会、査読付き論文などの信頼できる情報に基づいて作成しました。
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1. 鼻炎とは何か?基本を理解する
鼻炎について正しく理解するために、まずは鼻の基本的な構造と、鼻炎がどのような仕組みで起こるのかを押さえておきましょう。基礎を知っておくと、後で出てくる治療法やセルフケアの意味も理解しやすくなります。
1.1. 鼻の構造と役割
私たちの鼻は、単に空気を吸ったり吐いたりするだけの器官ではありません。鼻の内部(鼻腔)は鼻粘膜で覆われており、そこには細かい線毛が生えています。鼻は次のような重要な役割を担っています。
- 呼吸とフィルタリング:空気中のホコリやウイルス、アレルゲンなどを粘膜と線毛で捉え、肺の奥まで入り込まないようにフィルターのような役割を果たします。
- 加温・加湿:吸い込んだ冷たく乾燥した空気を、肺に適した温度と湿度に調整します。冷たい空気を直接吸い込むよりも、鼻呼吸の方が体への負担が少なく済みます。
- 嗅覚:においを感じ取る「嗅上皮」が存在し、食事の楽しみや危険の察知(ガス漏れ、煙など)にも関わります。
鼻炎によってこれらの機能が損なわれると、単に「鼻がつらい」だけでなく、感染症にかかりやすくなったり、睡眠の質が低下したりと、生活全体のQOLが大きく下がってしまいます。
1.2. 鼻炎の定義:鼻粘膜の炎症
鼻炎とは、何らかの原因によって鼻の粘膜に炎症が起きている状態を指します48。炎症が起こると、免疫反応の一環として血管が拡張し、粘膜が腫れたり、鼻水などの分泌物が増えたりします。その結果として、鼻炎の代表的な3つの症状(くしゃみ、鼻水、鼻づまり)が現れます48。
1.3. 鼻炎はなぜ起こる?一般的な原因の概観
鼻炎を引き起こす原因は一つではありません。代表的なものとして、スギ花粉やハウスダストなどのアレルゲン、風邪のウイルスや細菌などの感染、温度変化やタバコの煙といった物理的・化学的刺激、さらには特定の薬剤の使用などが挙げられます。それぞれの原因によって、症状の出方や治療方針が変わってくるため、「何がきっかけになっていそうか」を整理しておくことが大切です。
1.4. 日本における鼻炎の現状:「国民病」としての側面
日本において、鼻炎は非常に身近な病気です。特にアレルギー性鼻炎は「国民病」とも呼ばれ、2019年に行われた「鼻アレルギーの全国疫学調査」では、日本人のアレルギー性鼻炎の有病率が49.2%にのぼることが報告されています67。つまり、国民の約2人に1人が、何らかのアレルギー性鼻炎に悩んでいる計算になります。中でも春のスギ花粉症は非常に多くの人々を悩ませており、労働生産性や学業成績への影響も含め、社会的な課題ともなっています131415。
2. 【種類別】あなたの鼻炎はどれ?症状・原因・特徴を徹底比較
「鼻炎」とひとことで言っても、その種類は様々です。ここでは、代表的な鼻炎の種類について、それぞれの原因、症状、特徴を比較しながら解説します。ご自身の症状がどれに近いかを、あくまで目安として確認してみてください。最終的な診断は医療機関で行われます。
| 鼻炎の種類 | 主な原因 | 主な症状 | アレルギー検査 | 特徴的な経過・備考 |
|---|---|---|---|---|
| アレルギー性鼻炎 | アレルゲン(花粉、ハウスダスト等) | くしゃみ、水様性鼻水、鼻閉、目のかゆみ | 陽性 | 通年性/季節性があり、重症度分類に基づいて治療を調整します。口腔アレルギー症候群を合併する場合もあります4816。 |
| Local Allergic Rhinitis(LAR) | 鼻粘膜での局所アレルゲン反応 | アレルギー性鼻炎に似た症状 | 血清IgE陰性、鼻誘発陽性 | 『鼻アレルギー診療ガイドライン2024』で注目されている概念。血液検査が陰性でも症状が続く場合に考慮されます516。 |
| 感染性鼻炎(急性鼻炎) | ウイルス、細菌 | くしゃみ、鼻水(初期水様性→粘性・膿性も)、鼻閉、発熱、咽頭痛 | 通常不要 | いわゆる「鼻かぜ」。通常1週間前後で軽快しますが、長引く場合は副鼻腔炎に注意が必要です17。 |
| 慢性鼻炎 | 急性鼻炎の遷延、副鼻腔炎、アレルギーなど | 持続する鼻閉、粘性~膿性鼻水、後鼻漏、嗅覚障害 | 原因による | 原因特定が重要。高齢者の頑固な後鼻漏など、QOL低下に直結しやすいタイプです16。 |
| 萎縮性鼻炎 | 原因不明、鼻手術後、慢性感染、加齢など | 鼻内乾燥、痂皮、悪臭鼻汁、鼻閉感(鼻腔は広い)、嗅覚脱失 | 通常不要 | 進行は比較的ゆっくりですが、QOL低下が大きく、対症療法が中心となります18。 |
| 血管運動性鼻炎 | 自律神経の過敏反応(温度差、ストレス等) | 発作的くしゃみ、水様性鼻水、鼻閉(特に朝、温度変化時) | 陰性 | 「寒暖差アレルギー」とも呼ばれます。誘因の回避と対症療法が中心です1920。 |
| 薬剤性鼻炎 | 血管収縮点鼻薬の長期・過量使用 | 強い鼻閉、点鼻薬への依存 | 通常不要 | 原因薬剤の中止が必須。リバウンド現象に注意しつつ治療を進めます910。 |
2.1. アレルギー性鼻炎:最も一般的なタイプ
アレルギー性鼻炎は、日本で最も患者数が多い鼻炎であり、花粉症もこの一種です。特定の物質(アレルゲン)に対して鼻の粘膜が過敏に反応することで、くしゃみや鼻水、鼻づまりといった症状が現れます。
2.1.1. 定義とメカニズム
アレルゲンが体内に侵入すると、体を守る免疫システムがこれを「異物」と認識し、IgE抗体という物質を作ります48。このIgE抗体は鼻の粘膜にあるマスト細胞に付着し、再びアレルゲンが侵入すると、マスト細胞からヒスタミンなどの化学伝達物質が放出されます24。このヒスタミンが神経や血管を刺激することで、くしゃみ、鼻水、鼻づまりといったアレルギー反応(即時相反応)が起こります2。さらに、数時間後には鼻の粘膜に炎症細胞が集まってきて、持続的な鼻づまり(遅発相反応)が起こるとされています2。
2.1.2. 主な原因アレルゲン
原因となるアレルゲンは、大きく分けて通年性と季節性の2種類があります。
- 通年性アレルゲン:年間を通して存在するもので、ハウスダスト(主成分はダニの糞や死骸)、カビ、ペットのフケなどが代表的です48。日本の高温多湿な住環境や、畳・布団といった生活様式は、特にダニが繁殖しやすい条件だといわれています。
- 季節性アレルゲン(花粉症):特定の季節に飛散する花粉が原因となります。
- スギ:日本の花粉症の代表格で、春先に大量に飛散します。地域によって飛散時期や量に差があり、北海道や沖縄では比較的少ないとされています415。
- ヒノキ:スギ花粉の少し後から飛散し、スギとヒノキの両方にアレルギーを持つ人も多く見られます。
- イネ科(カモガヤなど):初夏から秋にかけて飛散します4。
- キク科(ブタクサ、ヨモギなど):秋の花粉症の主な原因となる花粉です4。
- シラカバ(カバノキ科):北海道や高原地帯で春に飛散し、後述する口腔アレルギー症候群との関連が深いことで知られています4。
日本の環境省や日本気象協会などが提供する花粉飛散情報を日々チェックし、飛散が多い日は外出や洗濯物の干し方を工夫することも対策として有効です15。
2.1.3. 症状
アレルギー性鼻炎の症状は多岐にわたりますが、特徴的なパターンがあります。
- 鼻の3大症状:発作的に連発するくしゃみ、さらさらとした水のような鼻水(水様性鼻水)、そして鼻づまりが代表的です478。
- 目の症状:目のかゆみ、充血、涙目など、アレルギー性結膜炎を合併することが非常に多く、日常生活への負担がさらに大きくなります38。
- のど・皮膚の症状:のどのかゆみやイガイガ感、顔や首などのかゆみを伴うこともあります4811。
- 全身症状:頭痛、倦怠感、微熱、集中力の低下など、全身に影響が及ぶことも珍しくありません234。
- 口腔アレルギー症候群(OAS):特定の果物や野菜を食べた後、口の中や唇、のどにかゆみや腫れが出る症状です。花粉のアレルゲンと果物・野菜のアレルゲンの構造が似ているために起こる交差反応で、例えばシラカバ花粉症の方はリンゴやモモなどに反応することがあります4。
2.1.4. 分類
アレルギー性鼻炎は、いくつかの観点から分類されます。
- 発症時期による分類:通年性アレルギー性鼻炎と季節性アレルギー性鼻炎(花粉症)に分けられます816。
- 症状の持続期間による分類(ARIAガイドライン):症状が週4日未満かつ4週未満の「間歇性」と、週4日以上または4週以上続く「持続性」に分類されます5。
- 重症度分類(日本のガイドライン):くしゃみ・鼻水の回数と鼻づまりの程度をスコア化し、「軽症」「中等症」「重症」「最重症」の4段階に分類します2816。この分類に基づいて、薬の選び方や治療のステップアップを決めていきます。
2.1.5. Local Allergic Rhinitis(LAR:局所アレルギー性鼻炎)
近年注目されている新しい概念が「局所アレルギー性鼻炎(LAR)」です516。これは、血液検査ではアレルギーの原因となるIgE抗体が見つからない(陰性)にもかかわらず、鼻の粘膜で局所的にIgE抗体が産生され、アレルギー性鼻炎と同様の症状が起こる病態です516。『鼻アレルギー診療ガイドライン2024年版』でもその存在が明記されており、診断にはアレルゲンを直接鼻の粘膜に投与して反応を見る「鼻誘発テスト」が重要となります16。アレルギー検査で陰性といわれたにもかかわらず症状が続く場合は、このLARの可能性について医師と相談してみる価値があります。
2.2. 感染性鼻炎(急性鼻炎):いわゆる「鼻かぜ」
2.2.1. 原因
一般的に「鼻かぜ」と呼ばれるものの多くは、ライノウイルス、コロナウイルス、RSウイルスなどのウイルス感染が原因です17。症状が長引いたり悪化したりした場合には、二次的に細菌感染を起こすこともあります。
2.2.2. 症状
初期は水様性の鼻水やくしゃみ、鼻づまりといったアレルギー性鼻炎と似た症状が出ますが、経過とともに黄色や緑色の粘り気のある鼻水(粘性・膿性鼻水)へと変化することがあります。発熱やのどの痛み、咳といった全身の感冒症状を伴うことが多い点が特徴です。
2.2.3. 特徴と経過
多くの場合、特別な治療をしなくても、1週間から10日程度で自然に軽快します17。ただし、症状が長引く場合や、顔面の痛み・高熱などを伴う場合は、副鼻腔炎(蓄膿症)へ移行している可能性もあるため、早めの受診が勧められます。
2.3. 慢性鼻炎:長引く鼻の不調
2.3.1. 定義と原因
急性鼻炎が治りきらずに長引いたり、繰り返したりすることで発症するタイプです。慢性副鼻腔炎との関連も深く、コントロール不良のアレルギー性鼻炎が背景にあることもあります17。大気汚染や粉塵、化学物質、低湿度といった環境要因も原因になりえます17。
2.3.2. 症状
持続的な鼻づまり、粘り気のある鼻水、鼻水がのどに落ちる後鼻漏(こうびろう)が主な症状です。嗅覚障害や頭が重い感じ、集中力の低下なども見られ、「常に鼻の調子が悪い」と感じる状態が続きます。
2.3.3. 日本における慢性鼻炎
特に高齢者では、他の明らかな原因が見当たらないにもかかわらず、頑固な後鼻漏に悩まされるケースがあります16。慢性鼻炎は原因が多岐にわたるため、自己判断に頼らず、耳鼻咽喉科でしっかりとした鑑別診断を受けることが大切です。
2.4. 萎縮性鼻炎:鼻粘膜の萎縮と乾燥
2.4.1. 原因
鼻の粘膜が萎縮して薄くなり、乾燥してしまう病気です。原因不明の特発性のもの(真性萎縮性鼻炎、Ozena)に加え、鼻の手術(特に下鼻甲介という部分の過度な切除)の後遺症として起こることがあります18。そのほか、慢性的な感染症や栄養障害、加齢に伴う変化も関係するとされています16。
2.4.2. 症状
鼻の中の乾燥感、痂皮(かさぶた)の形成が特徴的です。この痂皮には細菌が繁殖しやすく、独特の悪臭を放つ膿性痂皮となることがあります。鼻血や嗅覚の消失、実際には鼻の中は広いのに詰まっているように感じる「鼻閉感」なども見られます。
2.4.3. 特徴
比較的、女性や高齢者に多いとされています。進行はゆっくりですが、日常生活のQOLを大きく損ない、根本的な治療が難しいことから、継続的なケアが必要な難治性の疾患です21。
2.5. 血管運動性鼻炎(非アレルギー性鼻炎の一種)
2.5.1. 原因とメカニズム
アレルギー検査は陰性で、特定の原因アレルゲンが見つからないにもかかわらず、アレルギー性鼻炎に似た症状が起こるタイプです。鼻粘膜の血管の収縮や拡張をコントロールしている自律神経(特に副交感神経)のバランスが乱れ、過敏に反応してしまうことが原因と考えられています。誘因として、温度の急激な変化(寒暖差)、湿度の変化、精神的ストレス、飲酒、香水やタバコの煙といった特定のにおいなどが挙げられます1920。
2.5.2. 症状
発作的なくしゃみ、水様性の鼻水、鼻づまりが主な症状です。特に朝起きたときや、寒い屋外から暖かい室内に入ったときなど、温度差が大きい場面で症状が出やすい傾向があります。アレルギー性鼻炎と異なり、目のかゆみを伴わないことが多い点も一つの特徴です。
2.5.3. 日本での状況
日本では「寒暖差アレルギー」という表現で一般にも知られつつありますが、厳密にはアレルギー疾患ではありません。明確なアレルゲンがないため診断が難しいことも多く、治療は誘因の回避と対症療法が中心となります1920。
2.6. 薬剤性鼻炎:薬の使いすぎが原因
2.6.1. 原因
この鼻炎の主な原因は、市販の点鼻薬に多く含まれる血管収縮薬の長期・過量使用です910。点鼻薬を使い続けると、薬の効果が切れた際にリバウンド(反跳性鼻閉)でかえって鼻粘膜の腫れがひどくなり、「薬をやめると息苦しくなる」という悪循環に陥ってしまいます。
2.6.2. 症状
深刻で頑固な鼻づまりが最大の特徴です。次第に点鼻薬の効果が短くなり、使用頻度が増えていく傾向があります。「一日中点鼻薬が手放せない」「使うほど効かなくなってきた」と感じる場合は、薬剤性鼻炎の可能性が高まります。
2.6.3. 特徴
点鼻薬への依存性が大きな問題となります。市販薬の手軽さの裏に潜む重大なリスクであり、一部の製品では「2週間以上連続して使用しないこと」といった注意喚起がなされています9。予防のためにも、用法・用量を守り、「効かないから」と自己判断で長期間使い続けないことが重要です。
2.7. その他の鼻炎
- 職業性鼻炎:小麦粉を扱うパン職人、木材の粉塵を吸う大工、動物を扱う研究者など、職場の特定の物質が原因となる鼻炎です22。
- 妊娠性鼻炎:妊娠中のホルモンバランスの変化によって鼻づまりなどの症状が出ることがあります16。
- 加齢性鼻炎(老人性鼻漏):加齢に伴う鼻粘膜の機能低下により、水のような鼻水が垂れてくる状態です16。
- 好酸球増多性鼻炎:アレルギー検査は陰性ですが、鼻水の中にアレルギー性炎症に関わる「好酸球」という白血球が増加するタイプの鼻炎です16。
3. 鼻炎の診断:正しい理解への第一歩
正確な治療を行うためには、まず自分の鼻炎の種類と原因を正しく診断してもらうことが不可欠です。市販薬での自己対応だけでは、原因疾患を見逃してしまう可能性もあります。
3.1. 医療機関での診断プロセス
耳鼻咽喉科やアレルギー科などの専門医は、次のような流れで診断を進めていきます。
3.1.1. 問診の重要性
診断の出発点となる、とても重要なステップです。医師は以下のような点について詳しく質問します11162324。
- どのような症状が、いつから、どのくらいの頻度で出ていますか?
- 特定の季節、場所、時間帯で悪化する傾向はありますか?
- ご家族にアレルギー体質の方はいらっしゃいますか?
- 住環境や職場環境、ペットの有無など、生活背景について
- 現在使用している薬(市販薬を含む)の種類や期間
あらかじめメモにまとめて受診すると、限られた診察時間の中でもスムーズに情報を伝えることができます。
3.1.2. 鼻鏡検査・内視鏡検査
鼻の中を直接観察し、鼻粘膜の色や腫れの程度、鼻水の性状、鼻茸(ポリープ)や鼻中隔弯曲(鼻の真ん中の仕切りの曲がり)の有無などを確認します1624。写真やモニターで一緒に確認できる施設もあり、ご自身の状態を理解しやすくなっています。
3.1.3. アレルギー検査
アレルギー性鼻炎が疑われる場合に行われる検査です。米国のガイドラインでは、経験的な治療に反応しない場合や診断が不確かな場合にアレルギー検査を推奨しており、全ての鼻炎患者に必須というわけではありません11。
- 皮膚テスト(プリックテスト、皮内テスト):アレルゲンエキスを皮膚に少量つけて反応を見る検査です。感度が高く、比較的短時間で結果が分かります111624。
- 血液検査(特異的IgE抗体検査):採血により、どのアレルゲンに対して抗体を持っているかを調べます。一度に多くのアレルゲンを検査できる点がメリットです111624。
- 鼻汁好酸球検査:鼻水を採取し、アレルギー性炎症の指標となる好酸球の有無を調べます16。
- 鼻誘発テスト:原因と疑われるアレルゲンを直接鼻粘膜に投与し、症状の変化や鼻腔内の状態を観察する検査です。LARや職業性アレルギーの確定診断に非常に有用とされています1622。
3.1.4. 画像検査
レントゲンやCT検査は、副鼻腔炎の合併が疑われる場合や、鼻中隔弯曲、腫瘍などを評価するために行われます16。アレルギー性鼻炎の診断だけを目的として、ルーチンに行われることは推奨されていません11。
3.2. 自己判断の危険性と専門医受診の目安
鼻炎はありふれた病気であるがゆえに、「市販薬でなんとかなる」「忙しいから様子を見よう」と自己判断で放置されがちです。しかし、不適切な市販薬の使用を続けると、症状が悪化したり、別の病気(副鼻腔炎、ポリープ、腫瘍など)を見逃したりする可能性があります。次のような場合は、ためらわずに専門医(耳鼻咽喉科、アレルギー科)を受診しましょう。
- 市販薬を1週間程度使っても症状が改善しない
- 症状が重く、仕事や学業、家事に支障が出ている
- 鼻づまりで呼吸が苦しい、眠りが浅い、いびきがひどい
- 匂いが分かりにくい、突然匂いを感じなくなった(嗅覚障害)
- 頬や額に痛みがある、色のついた鼻水が続く(副鼻腔炎の疑い)
- 原因が分からず不安で、適切な対処法を知りたい
4. 【種類別】鼻炎の治療法:最新情報とエビデンスに基づく選択肢
鼻炎の治療は、その種類や重症度によって大きく異なります。ここでは、『鼻アレルギー診療ガイドライン2024年版』など、最新のエビデンスに基づいた治療の選択肢を、タイプ別に整理して紹介します。
| 薬剤クラス | 代表的な薬剤(成分名例) | 主な効果対象症状 | 副作用の主な注意点 | 『鼻アレルギー診療ガイドライン2024』での主な位置づけ | 備考(眠気、即効性等) |
|---|---|---|---|---|---|
| 第2世代抗ヒスタミン薬(内服) | フェキソフェナジン、ロラタジン、エピナスチン、セチリジン等25 | くしゃみ、鼻水、(鼻閉) | 眠気(少ないものが多い)、口渇(まれ) | 軽症~最重症の基本治療薬。初期療法にも位置づけられています416。 | 眠気の少ないものが多く、日中の仕事や勉強にも使いやすいとされています126。 |
| 鼻噴霧用ステロイド薬 | フルチカゾン、モメタゾン、ベクロメタゾン等2724 | くしゃみ、鼻水、鼻閉 | 局所刺激感(まれ)、鼻出血(まれ) | 中等症以上の基本治療薬。鼻症状全般に対する効果が高いとされています41116。 | 効果発現に数日かかることがありますが、全身性副作用は少ないとされています2428。 |
| ロイコトリエン受容体拮抗薬(内服) | モンテルカスト、プランルカスト25 | 鼻閉、(くしゃみ、鼻水) | 胃腸症状(まれ)、精神神経系症状(まれ、注意喚起あり) | 鼻閉が強いタイプや喘息合併例に有用。併用療法として位置づけられます416。 | 眠気はほとんどなく、仕事や学習への影響は少ないとされています4。 |
| 点鼻用血管収縮薬 | ナファゾリン、オキシメタゾリン等26 | 鼻閉 | 薬剤性鼻炎(長期連用で悪化)、局所刺激感 | 頓用・短期間使用に限定とされています416。 | 即効性は高い一方で、連用は厳禁です910。市販薬にも多く含まれています。 |
| 抗IgE抗体薬(注射) | オマリズマブ25 | 全般 | 注射部位反応、アナフィラキシー(まれ) | 既存治療で効果不十分な最重症スギ花粉症に適応があります16。 | 費用が高く、原則として専門施設での治療になります。 |
| 比較項目 | 皮下免疫療法(SCIT) | 舌下免疫療法(SLIT) |
|---|---|---|
| 投与方法 | アレルゲンエキスを皮下注射2 | アレルゲンエキス(錠剤/液体)を舌下に保持後嚥下2 |
| 投与頻度・場所 | 初期は週1~2回、維持期は月1回程度。医療機関で実施2 | 毎日自宅で実施。定期的な通院は必要2 |
| 対象アレルゲン(日本) | スギ花粉、ダニなど(医師の判断による) | スギ花粉、ダニ(保険適用)1222 |
| 治療期間 | 3~5年以上2 | 3~5年以上1222 |
| 主な副作用 | 注射部位の腫れ・痒み、全身反応(じんましん、喘息発作、アナフィラキシーのリスクあり)2 | 口腔内のかゆみ・腫れ、耳のかゆみ、胃腸症状など。重篤な副作用はSCITより少ないとされています2 |
| メリット | 長年の実績があり、医師の管理下で実施できる | 自宅で実施可能、通院負担が少ない、SCITより重篤な副作用リスクが低いとされています2 |
| デメリット | 通院頻度が高い、注射の痛み、アナフィラキシーリスク | 毎日の服用継続が必要、効果発現に時間がかかる |
| 費用(保険適用時) | 診察料+注射料(月数千円程度) | 診察料+薬剤費(月2,000~3,000円程度が目安)1229 |
| 鼻炎の種類 | 主な治療方針と具体例 | 備考 |
|---|---|---|
| 感染性鼻炎(急性) | 対症療法(解熱鎮痛薬、抗ヒスタミン薬、点鼻血管収縮薬短期間使用)、安静、保温、保湿。 | 細菌感染が疑われる場合は、医師の判断で抗菌薬を使用します。 |
| 慢性鼻炎 | 原因疾患の治療(副鼻腔炎、アレルギー等)。点鼻ステロイド薬、粘液溶解薬、鼻洗浄、ネブライザー。難治例では手術も検討されます1719。 | 原因特定と長期的な管理が重要です。 |
| 萎縮性鼻炎 | 対症療法(鼻洗浄、鼻内軟膏〔抗生物質含有・保湿剤〕、ビタミン剤、エストロゲンスプレーなど)。痂皮除去、悪臭・感染コントロール。 | 根本治療は難しく、QOL改善を目標としたケアが中心です。 |
| 血管運動性鼻炎 | 誘因回避、生活指導。薬物療法(点鼻ステロイド薬、抗ヒスタミン薬、点鼻血管収縮薬頓用)。重症例ではレーザー手術なども検討1920。 | ストレスマネジメントや生活習慣の調整も重要です。 |
| 薬剤性鼻炎 | 原因となる血管収縮点鼻薬の即時中止。離脱症状対策として、生理食塩水点鼻や点鼻ステロイド薬、短期の経口ステロイドなどを用いることがあります30。 | 発症前から、点鼻薬の適正使用を心がけることが最も重要です。 |
4.1. アレルギー性鼻炎の治療:日本の診療ガイドラインを中心に
アレルギー性鼻炎の治療の目標は、症状をコントロールし、QOL(生活の質)を維持・向上させることです4。治療は次の3つを基本の柱とし、必要に応じて手術療法が加わります24。
- アレルゲンの除去と回避
- 薬物療法
- アレルゲン免疫療法
日本の『鼻アレルギー診療ガイドライン2024年版』では、重症度に応じた段階的な治療(ステップワイズ治療)が推奨されています16。また、スギ花粉症など季節性のものでは、花粉の飛散が始まる約2週間前、あるいは症状が少しでも現れた時点から薬物療法を始める「初期療法」が有効であるとされています41516。
4.1.1. アレルゲンの除去と回避(環境整備)
薬物療法と並行して行う、最も基本的で重要な対策です。
- 室内環境:
- 外出時(特に花粉症):
4.1.2. 薬物療法
現在の鼻炎治療の中心であり、多くの種類の薬剤が用いられています(詳細は表2参照)。
- (1) 第2世代抗ヒスタミン薬(内服薬):くしゃみ・鼻水に特に有効で、軽症から最重症まで幅広く使われる基本薬です42225。第1世代に比べて眠気などの副作用が大幅に軽減されており、フェキソフェナジンやロラタジンなどが代表例です142526。
- (2) 鼻噴霧用ステロイド薬:くしゃみ、鼻水、鼻づまりの3大症状すべてに高い効果を発揮する、中等症以上の治療の中心的薬剤です811151624。局所投与のため全身性副作用は少ないとされますが、効果が安定するまで数日を要することがあります424。近年の研究では、経口抗ヒスタミン薬よりも鼻症状全般の改善効果が高いことを示すデータも報告されています2428。
- (3) ロイコトリエン受容体拮抗薬(LTRA、内服薬):特に鼻づまりに効果的で、気管支喘息を合併している場合に良い適応となります42225。眠気の副作用はほとんどなく、就業中や学業中でも使いやすいとされています4。
- (4) その他の薬剤:軽症例に用いられる化学伝達物質遊離抑制薬2422、速効性のある経鼻抗ヒスタミン薬2234、強い鼻閉に対して頓用される血管収縮薬配合経口薬1625など、症状や生活スタイルに応じてさまざまな薬が組み合わせて使われます。
- (5) 抗IgE抗体薬(オマリズマブ):既存の治療で効果が十分得られない最重症のスギ花粉症に対して用いられる注射薬です16222535。費用面などのハードルはありますが、症状改善が大きく期待できる選択肢の一つです。
- (6) 併用療法:症状に応じて、複数の薬剤を組み合わせることが一般的です111634。最新のメタアナリシスでは、鼻噴霧用ステロイド薬と経鼻抗ヒスタミン薬の併用が、単独療法より高い効果を示す傾向が報告されています34。
4.1.3. アレルゲン免疫療法(減感作療法):根本治療を目指す
アレルギーの原因となるアレルゲンを少量から体に投与し、徐々に慣らしていくことで、アレルギー反応そのものを起こしにくくする治療法です24111522。長期的な症状改善、薬剤の減量、将来的な喘息発症の予防効果などが期待できる、数少ない「体質改善」を目指せる治療法とされています2。一方で、効果を十分に得るためには3~5年程度の継続が必要とされます1222。
- (1) 皮下免疫療法(SCIT):アレルゲンエキスを定期的に注射する方法で、長年の実績があります24。
- (2) 舌下免疫療法(SLIT):アレルゲンエキスを含む錠剤や液体を毎日舌の下に保持する方法で、自宅で行える点が大きな特徴です。注射の痛みがなく、重篤な副作用のリスクが低いことから、近年日本でも普及が進んでいます241522。現在、日本ではスギ花粉とダニアレルギーに対して保険適用となっています122229。
4.1.4. 手術療法
薬物療法などで改善しない頑固な鼻づまりや、鼻中隔弯曲症などの構造的問題を合併している場合には、手術療法が検討されることがあります。
- (1) レーザー手術(下鼻甲介粘膜焼灼術):レーザーで鼻の粘膜を焼灼し、アレルギー反応を起こしにくくする治療です。日帰りで行えることが多く、体への負担も比較的小さいとされていますが、効果は永久ではなく、数年で再発する可能性があります19353637。
- (2) 内視鏡下鼻内手術:より根本的な構造改善を目指す手術です。下鼻甲介の骨を部分的に切除したり、曲がった鼻中隔を矯正したり、重症の鼻水に対して後鼻神経を切断したりする方法があります17193839。入院が必要な場合もありますが、保険適用で受けることができ、高額療養費制度の対象となることもあります3839。
4.2. 感染性鼻炎(急性鼻炎)の治療
ほとんどがウイルス性であるため、安静、保温、保湿といった対症療法が基本となります。発熱や痛みに対しては解熱鎮痛薬、鼻づまりに対しては点鼻用血管収縮薬を短期間使用することがあります。細菌感染が疑われる場合に限り、医師の判断で抗菌薬が処方されます。
4.3. 慢性鼻炎の治療
慢性鼻炎では、原因に応じた治療が原則です(詳細は表4参照)。副鼻腔炎が原因であればその治療を、アレルギーが原因であればアレルギー治療を強化します。点鼻用ステロイド薬や鼻洗浄、ネブライザー療法などを組み合わせて行うことが一般的です1719。
4.4. 萎縮性鼻炎の治療
根本的な治療が難しいため、鼻腔の保湿、痂皮の除去、感染コントロールといった対症療法が中心となります(詳細は表4参照)。生理食塩水での鼻洗浄や、保湿剤・抗生物質含有軟膏の塗布などを継続して行うことが重要です。
4.5. 血管運動性鼻炎の治療
ストレス管理や温度差を避けるといった「誘因の回避」が治療の基本です19。薬物療法としては点鼻用ステロイド薬などが用いられますが、効果が限定的なこともあります1920。症状が強く日常生活に支障をきたす場合には、レーザー手術などの外科的治療が検討されることもあります19。
4.6. 薬剤性鼻炎の治療
もっとも重要なのは、原因となっている血管収縮点鼻薬を直ちに中止することです。中止直後は離脱症状として強い鼻づまりに悩まされることがありますが、その時期を点鼻用ステロイド薬への切り替えや短期の経口ステロイド薬などで乗り切る方法が報告されています30。いずれにしても、医師と相談しながら計画的に中止していくことが安心です。
5. 鼻炎のセルフケアと日常生活での注意点
医療機関での治療と並行して、日々のセルフケアを実践することで、症状をよりコントロールしやすくなります。ここでは、鼻炎の種類を問わず参考になる基本的なセルフケアと、注意したいポイントをまとめます。
5.1. 共通する基本的なセルフケア
- 十分な睡眠とストレス管理:睡眠不足や過度なストレスは、免疫機能や自律神経のバランスを乱し、鼻炎症状を悪化させることがあります1732。
- バランスの取れた食事:粘膜の健康を保つビタミン類、腸内環境を整える発酵食品などを意識的に取り入れましょう11732。
- 適度な運動:血行を促進し、自律神経のバランスを整える効果が期待できます1740。
- 禁煙・節酒:タバコの煙は鼻粘膜への強い刺激となり、症状悪化の原因になります1731。
- 正しい鼻のかみ方:片方ずつ、ゆっくりと優しくかむことが大切です。強くかみすぎると耳に圧がかかり、中耳炎の一因になることがあります17。
5.2. 鼻うがい(鼻洗浄)のすすめ
鼻腔内を洗い流すことで、アレルゲンやウイルス、ホコリなどを除去し、粘膜を清潔に保つ効果があります10173240。体温に近い0.9%の生理食塩水(市販のキットまたは自作)を使い、清潔な器具で行うことが重要です10173132。初めて行う場合は、説明書をよく読み、無理のない姿勢で少量から試してみましょう。
5.3. 部屋の加湿と換気
空気の乾燥は鼻粘膜のバリア機能を低下させます。加湿器などを利用して湿度を50~60%に保つのが理想的とされています1732。一方で、カビの増殖を防ぐためにも、適度な換気や加湿器の清掃を忘れないことが大切です。花粉シーズンは、飛散量の少ない時間帯を選んで短時間の換気を行うなどの工夫も有効です31。
5.4. 市販薬(OTC医薬品)の賢い使い方
日本では市販薬の選択肢が非常に豊富ですが、自己判断だけで使用するのは注意が必要です。
- 種類と成分の理解:抗ヒスタミン薬は、眠気の少ない第2世代を選ぶのが一般的なポイントとされます。また、点鼻薬はステロイド主体のものを選ぶと、長期使用にも適している場合が多いとされています1262741。
- 注意点:
5.5. 鼻づまりを和らげる即効性のある対処法(薬以外)
薬を増やさずに一時的に鼻づまりを楽にしたいとき、次のような方法が役立つことがあります。ただし、あくまで一時的な対処であり、根本的な治療に代わるものではありません。
- 蒸しタオルで鼻や頬の周りを温める101740。
- 温かい飲み物を少しずつ飲む1017。
- 入浴で体を温め、湯気をゆっくり吸い込む1732。
- 詰まっている側の鼻を上にして横向きに寝ることで、左右差を和らげる1040。
6. 特別な状況における鼻炎:子ども、妊婦・授乳婦、高齢者
同じ鼻炎でも、年齢やライフステージによって、症状の現れ方や治療で配慮すべき点が変わってきます。ここでは、特に注意が必要な3つのケースを取り上げます。
6.1. 小児の鼻炎
子どもの鼻炎は、鼻づまりによる口呼吸がいびきや睡眠障害、集中力低下につながったり、中耳炎や副鼻腔炎を合併しやすかったりするなど、成長や学業への影響が懸念されます1622。治療では、年齢に応じて安全性が確認されている薬剤を選択することが重要です162225。舌下免疫療法は、日本ではスギ花粉・ダニともに5歳以上からが対象とされています22。早期から症状を放置せず、適切な管理を行うことで、将来の合併症リスクも減らすことが期待できます。
6.2. 妊婦・授乳婦の鼻炎
妊娠中はホルモンの影響で鼻づまりなどの症状が悪化することがあり(妊娠性鼻炎)、薬剤の使用にはより慎重な判断が求められます16。自己判断で市販薬を使用することは避け、必ず産婦人科医や耳鼻咽喉科医に相談してください。基本的にはアレルゲン回避や鼻うがいなどのセルフケアを優先し、薬物療法が必要な場合は、安全性が高いとされる局所療法(点鼻薬など)を少量から選択するのが一般的です1622。
6.3. 高齢者の鼻炎
加齢に伴う鼻粘膜の萎縮や乾燥により、水のような鼻水が止まらない「老人性鼻漏」などに悩まされることがあります16。また、多くの薬を同時に服用していることが多いため、抗ヒスタミン薬による眠気や口渇、転倒リスクなど、副作用への配慮が特に重要です。保湿や鼻洗浄などの非薬物療法も積極的に取り入れながら、かかりつけ医とよく相談して治療方針を決めましょう。
7. 鼻炎の合併症と関連疾患
鼻炎は鼻だけの問題にとどまらず、さまざまな合併症や関連疾患につながることが知られています。長期的な健康リスクを理解しておくことは、「放置しない」ための大きな動機づけにもなります。
- 副鼻腔炎(蓄膿症):鼻の炎症が副鼻腔にまで広がることで発症します17。顔面の痛みや、色のついた鼻水が続く場合は要注意です。
- 中耳炎:特に子どもでは、鼻と耳をつなぐ耳管を経由して炎症が広がりやすく、中耳炎を繰り返す原因になることがあります。
- 睡眠時無呼吸症候群・いびき:慢性的な鼻づまりが、いびきや睡眠時無呼吸の一因となることがあります317。
- 喘息:アレルギー性鼻炎と喘息は、気道のアレルギー性炎症という共通の病態を持つとされ、「One airway, one disease」という概念で捉えられています。鼻炎をしっかり治療することが、喘息のコントロールにもつながると考えられています11。
- アトピー性皮膚炎:いわゆるアレルギーマーチの一環として、アトピー性皮膚炎と合併しやすいことが知られています11。
- 注意欠如・多動症(ADHD)との関連:最近の研究では、アレルギー性鼻炎とADHDの間に双方向性の関連がある可能性が報告されており、鼻炎による睡眠障害やQOL低下が、精神的な発達にも影響を及ぼす可能性が指摘されています44。
- QOLの低下:集中力や作業効率の低下は、学業成績や仕事のパフォーマンスに直接影響します2311。長期的にはメンタルヘルスにも関わるため、軽視せずに対策を取ることが大切です。
8. 日本における鼻炎対策の取り組みと将来展望
国民病ともいえる鼻炎、特に花粉症に対しては、国や自治体、専門学会もさまざまな対策を進めています。ここでは、その一端と今後の展望を紹介します。
8.1. 国や自治体、学会による花粉症対策
発生源であるスギ人工林の伐採や、花粉の少ない品種への植え替え、花粉飛散予測技術の向上、医療体制の整備や国民への情報提供(アレルギーポータルサイトなど)といった多角的な取り組みが行われています1531。こうした対策は、効果が現れるまでに時間を要する一方で、将来的な患者数の減少や症状の軽減につながることが期待されています。
8.2. 新しい治療法の開発動向
医療の世界でも、より短期間で効果が得られたり、副作用が少なかったりする新しいアレルゲン免疫療法(ペプチド免疫療法など)の研究2や、重症例に対する生物学的製剤の開発45が進められています。今後は、これらの新しい治療選択肢が実臨床でどのように位置づけられていくかが注目されています。
8.3. 鼻炎治療の個別化医療への期待
将来的には、バイオマーカー(血液や鼻汁中の特定の物質)を用いて診断や治療効果を予測したり、個人の遺伝的素因や生活習慣に合わせたオーダーメイド治療が行われたりすることが期待されています。自分にとって最も負担が少なく、効果の高い治療を選べる時代に向けて、研究が進んでいます。
よくある質問(FAQ)
Q1:鼻炎は遺伝しますか?
Q2:子どもの鼻炎は、何歳から治療できますか?
Q3:鼻炎の薬は一生飲み続けないといけませんか?
Q4:鼻うがいは毎日やっても大丈夫ですか?
Q5:市販の点鼻薬を長く使い続けても大丈夫ですか?
A5:血管収縮剤が含まれる点鼻薬(「ナファゾリン」「オキシメタゾリン」など)は、長期連用を避ける必要があります。使い続けると、かえって鼻づまりが悪化する「薬剤性鼻炎」という深刻な状態を引き起こすリスクが高まります9。使用は数日間の頓用にとどめ、症状が改善しない場合は必ず専門医に相談してください。一方、医療用の鼻噴霧用ステロイド薬は、医師の指示のもとで長期使用が可能な安全性の高い薬とされていますが、これも自己判断ではなく、必ず指示に従って正しく使用することが重要です。
Q6:妊娠中でも使える鼻炎薬はありますか?
Q7:レーザー治療は一度で治りますか?効果はどのくらい続きますか?
Q8:鼻炎とメンタルヘルスには関係がありますか?
A8:直接的な因果関係を一概に断定することはできませんが、慢性的なくしゃみ・鼻水・鼻づまりにより、睡眠不足や集中力低下、仕事・勉強でのパフォーマンス低下が続くと、気分の落ち込みやイライラ、不安感につながることがあります。また、アレルギー性鼻炎と注意欠如・多動症(ADHD)との双方向性の関連を示唆する研究も報告されています44。鼻炎症状だけでなく、気分の変化や日常生活への影響も含めて、一人で抱え込まずに医療機関に相談することが大切です。
結論
鼻炎は、単なる「鼻かぜ」や「アレルギー」という言葉で片付けられない、多様な原因と病態を持つ奥深い疾患です。本記事では、その全体像を、日本の最新の診療ガイドラインと科学的エビデンスに基づいて整理しました。最も重要なのは、ご自身の症状を正しく理解し、自己判断に頼りすぎず、適切な診断のもとで治療を受けることです。
幸い、薬物療法から根本治療を目指す免疫療法、手術に至るまで、治療法は年々進化し、選択肢も増えています。つらい症状に一人で悩まず、この記事をきっかけに、ぜひ専門医に相談してみてください。Japanese Health(JHO)編集部は、皆さまが鼻の悩みから解放され、より快適な毎日を送れるよう、これからも信頼できる情報を発信していきます。
健康に関する注意事項
- 本記事は、厚生労働省や日本の専門学会、国際的なガイドライン、査読付き論文などの医学的知見に基づいて作成されていますが、個別の医学的診断や治療に代わるものではありません。
- 鼻炎の症状、特に呼吸困難、顔面の強い痛み、高熱、嗅覚の急激な低下などを伴う場合は、速やかに医療機関を受診してください。自己判断で重篤な病状を見逃さないことが重要です。
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