【コレステロールの薬はいつから?】脂質異常症で「薬が必要な数値」と生活習慣で様子を見る目安を解説
心血管疾患

【コレステロールの薬はいつから?】脂質異常症で「薬が必要な数値」と生活習慣で様子を見る目安を解説

健康診断で「コレステロールが高いですね」「中性脂肪が少し高めです」と言われると、多くの人がまず気になるのが「もう薬を飲まないといけないのか?」という点ではないでしょうか。

同じ「脂質異常症」と言われても、すぐに薬が必要な人もいれば、食事や運動など生活習慣の見直しだけで様子を見る人もいます。インターネット上にはさまざまな情報があり、「LDLが◯mg/dLを超えたら危ない」「一度薬を飲み始めたら一生やめられない」など、不安になる声も少なくありません。

本記事では、日本のガイドラインや公的機関の情報をもとに、「どのくらい数値が高いと薬を検討するのか」「生活習慣だけで様子を見られるのはどのようなケースか」「どんなときに早めの受診が必要なのか」を、できるだけわかりやすく整理して解説します。

「今の自分の数値は放置していいのか」「薬を始めたほうがいいのか」「医療機関ではどんなことを相談すれば良いのか」をイメージしやすくなるよう、生活の具体的な場面も交えながら説明していきます。

Japanese Health(JHO)編集部とこの記事の根拠について

Japanese Health(JHO)は、健康と美容に関する情報を提供するオンラインプラットフォームです。最新の医学文献や公的ガイドラインを整理し、日常生活で活用しやすい形でお届けすることを目指しています。

本記事では、脂質異常症(高コレステロール血症・高トリグリセライド血症)と「薬物療法を始める目安」をテーマに、以下のような一次情報源に基づき、JHO編集部がAIツールのサポートを受けつつ、最終的には人の目で一つひとつ確認しながら作成しています。

  • 厚生労働省・自治体・公的研究機関:e-ヘルスネットの脂質異常症に関する解説、健康日本21に関連する統計資料、自治体が公開する生活習慣病情報など、日本人を対象とした公式情報を優先して参照しています。
  • 日本の専門学会・ガイドライン:日本動脈硬化学会『動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版』や『脂質異常症診療ガイド』、日本医師会が公開する脂質異常症治療の解説資料などをもとに、薬物療法の開始基準や管理目標を整理しています。
  • 国外のガイドライン・査読付き論文:世界保健機関(WHO)、米国心臓協会(AHA)・米国心臓病学会(ACC)などが公表するコレステロール管理ガイドラインを、日本の状況と比較する参考情報として利用しています。

AIツールは、文献の要点整理や構成案の作成といった「アシスタント」として活用していますが、公開前には必ずJHO編集部が原著資料と照合し、重要な記述について事実関係・数値・URLの妥当性を確認しています。

私たちの運営ポリシーや編集プロセスの詳細は、運営者情報(JapaneseHealth.org)をご覧ください。

要点まとめ

  • 脂質異常症と診断される目安は、LDLコレステロール140mg/dL以上、HDLコレステロール40mg/dL未満、中性脂肪150mg/dL以上などですが、診断基準と「薬を始める基準」は異なります
  • 多くの人では、まず食事・運動・禁煙など生活習慣の見直しが基本で、数か月かけて改善を目指し、それでも目標値に届かない場合に薬物療法が検討されます。
  • 日本動脈硬化学会などの資料では、リスクにかかわらずLDLコレステロールが180mg/dL以上のように非常に高い場合は、生活習慣の改善と並行して薬物療法を考慮することが示されています。
  • 心筋梗塞や脳梗塞の既往がある方、糖尿病や慢性腎臓病などの合併症がある方は、より低いLDL値から薬物療法が推奨されることが多く、「同じ数値でも人によって判断が変わる」のが特徴です。
  • 海外ガイドラインでは、LDL 190mg/dL以上で強力なスタチン治療を推奨するなど、より積極的な管理が提案されており、日本でも高リスクの方では早期からの薬物療法が重要とされています。
  • 脂質異常症そのものは自覚症状に乏しい一方、放置すると動脈硬化を進め、心筋梗塞・脳梗塞など命に関わる病気のリスクを高めるため、定期的な検査と医療機関での相談が不可欠です。
  • 薬を飲み始めた場合でも、自己判断で中止したり減量したりせず、必ず医師と相談しながら続けることが大切です。副作用が心配なときも、一人で悩まずに相談しましょう。

第1部:脂質異常症の基礎知識と日常生活の見直し

まず、「脂質異常症とは何か」「どのくらいの数値から高いと評価されるのか」を整理しましょう。そのうえで、多くの人にとって最初の一歩となる「生活習慣の見直し」について解説します。

1.1. 脂質異常症とは?基本的な仕組みと基準値

血液中には、エネルギー源や細胞膜の材料として必要な脂質(コレステロールや中性脂肪)が常に流れています。これらは本来、体にとって欠かせない成分ですが、増えすぎたりバランスが崩れたりすると「脂質異常症」と呼ばれる状態になります。

日本では、厚生労働省のe-ヘルスネットや日本動脈硬化学会の基準をもとに、以下のような値が脂質異常症の診断の目安とされています。1,2,3

  • LDLコレステロール(悪玉):140mg/dL以上で「高LDLコレステロール血症」
  • HDLコレステロール(善玉):40mg/dL未満で「低HDLコレステロール血症」
  • 中性脂肪(トリグリセライド):150mg/dL以上(空腹時)で「高トリグリセライド血症」
  • non-HDLコレステロール:170mg/dL以上で「高non-HDLコレステロール血症」

ここで大切なのは、これらはあくまで「スクリーニングのカットオフ値」(脂質異常症とみなして詳しく評価するための入り口)であり、「この値を超えたらすぐに薬を飲まなければならない」という意味ではないという点です。3,4

実際に薬物療法を始めるかどうかは、同じ数値であっても「年齢」「性別」「喫煙の有無」「血圧」「糖尿病などの合併症」「すでに心筋梗塞や脳梗塞を経験しているか」などを総合的に判断して決められます。

1.2. 「高いと言われたけれど様子見でよい」ケースと、そうでないケース

健康診断で「やや高めですね」と言われたとき、多くの方が「要観察」「生活習慣の改善をしましょう」といったコメントを受けていると思います。このようなコメントが付く代表的なケースは次のようなものです。

  • LDLコレステロールが140〜159mg/dL(軽度〜中等度の高LDL)
  • 中性脂肪が150〜199mg/dL程度で、他に大きなリスク因子がない
  • HDLコレステロールが40mg/dL前後で、軽度の低下にとどまっている
  • 血圧や血糖値はおおむね正常で、喫煙もしていない

このような場合、日本動脈硬化学会のガイドラインや日本医師会の解説では、まず食事・運動・禁煙などの非薬物療法を数か月しっかり行い、その効果を見てから薬物療法を検討することが基本とされています。3,5

一方、次のようなケースでは、「生活習慣の改善と並行して、早い段階から薬物療法を検討した方が良い」とされています。

  • LDLコレステロールが180mg/dL以上と非常に高い
  • 心筋梗塞・狭心症・脳梗塞などの動脈硬化性疾患の既往がある
  • 糖尿病や慢性腎臓病など、心血管リスクが高い病気を合併している
  • 家族性高コレステロール血症が疑われる(若いのにLDLが著しく高い、家族に若年で心筋梗塞を起こした人がいる等)

つまり、「どの数値から薬か」という疑問に対しては、数値そのものと同じくらい「その人の全体的なリスク」も重要だということを覚えておきましょう。

1.3. 日常のNG習慣と、すぐに見直したいポイント

脂質異常症は、日々の生活習慣と深く関わっています。薬を検討するかどうかにかかわらず、次のような習慣を見直すことで、コレステロールや中性脂肪の改善が期待できます。1,6

  • 揚げ物・脂身の多い肉・菓子パン・スナック菓子が多い:飽和脂肪酸やトランス脂肪酸の摂りすぎはLDLを押し上げます。
  • 夕食が遅く、量も多い:夜遅い時間帯に高カロリー食を摂ると、中性脂肪が上がりやすくなります。
  • アルコールをほぼ毎日飲む:特にビールや日本酒など糖質を多く含む酒類は、中性脂肪を上昇させる原因になります。
  • 運動習慣がほとんどない:身体を動かす習慣は、中性脂肪を減らし、HDL(善玉)を増やす効果が期待できます。
  • 喫煙習慣がある:喫煙はHDLを低下させ、動脈硬化の進行を早める要因として知られています。

逆に、野菜・魚中心の食事や、週合計150分程度の有酸素運動(早歩きなど)、禁煙といった基本的な生活習慣の改善は、薬の有無にかかわらず、心血管リスク全体を下げるうえで非常に重要です。

表1:セルフチェックリスト — 「生活習慣の見直しで改善できるかも?」と思ったら
こんな状況はありませんか? 考えられる背景・原因カテゴリ
LDLコレステロールが140〜159mg/dLで、会社の健診で「経過観察」と言われた 動脈硬化リスクは上昇傾向だが、多くの場合まず生活習慣の改善が推奨される
夕食後の間食や夜食が多く、中性脂肪が150〜199mg/dL程度で高め 夜間の過剰摂取と運動不足による中性脂肪の上昇
以前より体重が増え、ウエスト周りがきつくなってきた 内臓脂肪の増加に伴う脂質異常症・高血圧・糖尿病リスクの上昇
最近忙しく、ほとんど運動できていないが、喫煙は続けている 動脈硬化リスクがさらに高まり、薬物療法の効果も出にくくなる可能性

第2部:身体の内部要因 — 遺伝・ホルモン・隠れた病気

生活習慣を見直してもなかなか数値が下がらない場合、その背景には遺伝的な体質や、内分泌・代謝の病気が隠れていることがあります。ここでは、とくに薬物療法の判断に大きく影響する要因を整理します。

2.1. 家族性高コレステロール血症など、遺伝が関係するタイプ

脂質異常症の中には、「家族性高コレステロール血症(FH)」のように生まれつきLDLコレステロールが非常に高くなりやすい遺伝性の病気が存在します。3,5 代表的な特徴は次の通りです。

  • 若い年代(20〜30代)にもかかわらず、LDLコレステロールが180〜200mg/dL以上と著しく高い
  • 親や兄弟姉妹に、若いころから脂質異常症があり、心筋梗塞などを起こした人がいる
  • アキレス腱や手の甲にコブのような脂肪沈着(腱・皮膚黄色腫)が見られることがある

このような場合、生活習慣の改善だけでは十分な効果が得られないことが多く、早期から薬物療法(スタチンなど)を継続的に行うことが、動脈硬化性疾患の予防に重要と考えられています。

2.2. 糖尿病・高血圧・慢性腎臓病などの合併症

糖尿病や高血圧、慢性腎臓病を持つ方は、そうでない方に比べて心筋梗塞や脳梗塞を起こすリスクが高く、同じLDL値でも、より積極的なコレステロール管理が推奨されます。3,7

  • 糖尿病のある方では、LDLがそれほど高くなくても、一定以上(例えば100〜120mg/dL以上)でスタチン治療が検討されることがあります。
  • 慢性腎臓病(CKD)のある方では、腎機能の悪化とともに心血管リスクが高まるため、早期から薬物療法を行うことが多くなります。
  • 高血圧・喫煙・肥満など複数の危険因子が重なる場合も、LDLの目標はより厳しく設定されます。

ガイドラインでは、これらの危険因子の有無や組み合わせによって、「リスク区分(低・中・高など)」と「LDLコレステロールの目標値」が段階的に定められています。薬を始めるかどうかは、こうした区分をもとに、主治医が個々の状況に合わせて判断します。

2.3. ホルモンバランスやその他の病気が関わるケース

脂質異常症は、ホルモンや甲状腺の働きなど、体の内部の調節機構とも関係しています。たとえば、次のような病態では脂質の値が悪化しやすくなります。1,3

  • 甲状腺機能低下症:倦怠感や体重増加、寒がりなどとともに、LDLコレステロールが高くなることがあります。
  • クッシング症候群などホルモン異常:体重増加や血圧上昇とともに脂質異常を伴う場合があります。
  • 肝臓病や腎臓病:脂質の合成・分解・排泄に関わる臓器の病気によって、コレステロールや中性脂肪のバランスが崩れることがあります。

検査結果が「急に大きく変化した」「生活はあまり変わっていないのに悪化している」という場合は、脂質異常症だけでなく、背景に別の病気が隠れていないかを調べることも大切です。

第3部:専門的な診断が必要な状態と「薬を始める目安」

ここでは、実際にガイドライン上で薬物療法を強く検討することが多い数値の目安と、その背景にある病気・リスクについて整理します。なお、以下はあくまで一般的な目安であり、最終的な判断は必ず医療機関で行われます。

3.1. LDLコレステロールが180mg/dL以上の場合

日本動脈硬化学会などの解説資料では、リスク区分にかかわらず、LDLコレステロールが180mg/dL以上と非常に高い場合は、生活習慣の改善に加えて薬物療法を考慮することが示されています。3,5,8

海外のガイドライン(ACC/AHA 2018など)でも、LDL 190mg/dL以上で高強度のスタチン療法を推奨するなど、極めて高いLDL値に対しては積極的な薬物療法が勧められています。7

若年であっても、これだけ高いLDL値が続くと、生涯の動脈硬化リスクが非常に高くなります。特に、家族性高コレステロール血症の可能性がある場合は、専門医による評価と継続的な薬物療法が重要です。

3.2. 心筋梗塞・脳梗塞などを経験したことがある場合

すでに心筋梗塞、狭心症、脳梗塞、末梢動脈疾患などの動脈硬化性疾患を経験した方は、「二次予防」としてコレステロールをしっかり下げることが極めて重要です。3,7

  • このグループでは、LDLコレステロールをできるだけ低く抑えることが推奨され、多くの場合でスタチンを中心とした薬物療法が行われます。
  • 海外のガイドラインでは、LDL 70mg/dL未満を目標とすることが多く、日本のガイドラインでも高リスク群ほど厳格な管理目標が示されています。
  • LDLが比較的低めでも、すでに動脈硬化性疾患を発症している場合は、薬物療法の恩恵が大きいと考えられています。

このようなケースでは、「薬を飲むかどうか」というよりも、「どの薬をどの程度の強さで組み合わせるか」という視点で治療が検討されます。

3.3. 非常に高い中性脂肪と膵炎リスク

脂質異常症はコレステロールだけでなく、中性脂肪も重要です。中性脂肪が500mg/dL以上のように非常に高い状態が続くと、急性膵炎のリスクが高まるとされています。1,3

  • 膵炎のリスクが問題となるレベルでは、アルコールや過食の是正に加えて、フィブラート系薬剤などによる薬物療法が検討されることがあります。
  • 糖尿病や肥満、過度の飲酒が背景にある場合は、それらのコントロールも同時に行う必要があります。

中性脂肪が「少し高め」程度(150〜199mg/dL)の段階では、まず生活習慣の見直しが中心ですが、数値が非常に高くなっている場合は、早めの受診と専門的な治療が必要です。

3.4. 海外ガイドラインとの違いと、日本での実際の運用

米国や欧州のガイドラインでは、LDL 190mg/dL以上の成人に対して高強度スタチン療法を推奨するなど、数値ベースで比較的明確な線引きが示されています。7,9 一方、日本では、人種差や生活習慣の違いを踏まえつつ、総合的な心血管リスク評価に基づく個別化が重視されています。

日本のガイドラインを実臨床に当てはめる際には、リスクスコア(久山町スコアなど)を使って10年以内の心血管イベントリスクを推定し、その結果に応じてLDLの目標値や薬物療法の開始時期を調整する方法も用いられています。3,4

こうした背景から、「自分はどのガイドラインを参照すればいいのか」と迷うこともあるかもしれませんが、日本人を対象に作られたガイドラインや主治医の判断を基本にすることが安心につながります。

第4部:今日から始める改善アクションプラン

「薬が必要かどうか」を判断する前に、多くの方に共通して取り組めるのが生活習慣の見直しです。ここでは、数値の高さやリスクに応じて、今日から始められる具体的なアクションを段階別に整理します。

表2:改善アクションプラン — 数値とリスクに応じたステップ
ステップ アクション 具体例
Level 1:今夜からできること(境界域〜軽度の脂質異常) 食事と間食の見直し・アルコール量の調整 夕食の揚げ物の回数を減らし、魚料理や蒸し料理を増やす/夜遅い時間の菓子パンやスナック菓子を控え、どうしてもお腹が空いたら野菜スープや少量のナッツにする/週の飲酒日数を減らし、「休肝日」を作る。
Level 2:今週末から始めること(LDLや中性脂肪が明らかに高い人) 運動習慣の導入と体重管理 週に5日、1日30分程度の早歩きや軽いジョギングを行う/エレベーターではなく階段を使う/1〜2か月で体重の3〜5%減量を目標に、総摂取カロリーを見直す。
Level 3:1〜3か月かけて取り組むこと(薬を検討するかどうかを決める前の期間) 生活記録と数値の変化を確認 食事内容・運動量・体重を簡単にメモし、1〜3か月後に再検査を受ける/同じ医療機関でデータを比較し、生活改善の効果を主治医と一緒に確認する。
Level 4:高リスクの人がすぐに取り組むべきこと 医療機関での相談と薬物療法の検討 LDLが180mg/dL以上、または心筋梗塞・脳梗塞の既往がある人などは、早めに循環器内科や総合内科で相談し、スタチンなどの薬物療法の必要性について話し合う。

生活習慣を改善しても数値があまり変わらない場合や、もともとのリスクが高い場合には、薬物療法を組み合わせることで心血管イベントのリスクをさらに減らすことができます。薬を始めるかどうかは、生活改善と検査結果の推移を見ながら、主治医と一緒に決めていきましょう。

第5部:専門家への相談 — いつ・どこで・どのように?

「薬が必要かどうか」を自分だけで判断するのは難しく、また危険でもあります。ここでは、医療機関を受診すべきタイミングや、どの診療科を選べばよいか、診察時に役立つ情報のまとめ方などを解説します。

5.1. すぐに受診を検討すべきサイン

  • LDLコレステロールが180mg/dL以上と非常に高いと言われた
  • 中性脂肪が500mg/dL以上など極端に高い値を指摘された
  • 胸の痛み、息切れ、片側の手足のしびれ・脱力、ろれつが回らないなど、心筋梗塞や脳梗塞を疑う症状がある
  • 若いのに脂質異常症を指摘され、家族にも同じような人が多い(家族性高コレステロール血症が疑われる)

特に、胸痛や突然の神経症状など急性の症状が出ている場合は、脂質異常症かどうかにかかわらず、ためらわずに119番通報を含めた救急受診を検討してください。

5.2. 症状がない場合でも受診を検討したいケース

  • 健診で脂質異常症を指摘されたが、これまで一度も医師に詳しく相談したことがない
  • 糖尿病や高血圧、慢性腎臓病など、他の生活習慣病をすでに指摘されている
  • 喫煙やメタボリックシンドロームなど、複数のリスク因子を抱えている
  • 薬を飲むべきかどうか、インターネットの情報だけでは判断できず不安を感じている

脂質異常症は自覚症状がほとんどないため、「特に困っていないから」と受診を先延ばしにしがちです。しかし、症状がないうちから対策することが、将来の心筋梗塞や脳梗塞を防ぐ鍵になります。

5.3. どの診療科にかかればよい?診察時に持参すると役立つもの

  • 受診先の目安
    • まずはかかりつけ医(内科・家庭医)がいれば相談するのがおすすめです。
    • 心筋梗塞や狭心症が疑われる場合は循環器内科、脳梗塞の既往がある場合は脳神経内科・脳神経外科が関わることもあります。
    • 家族性高コレステロール血症が疑われる場合は、専門的に診ている施設への紹介を受けることもあります。
  • 診察時に持参すると役立つもの
    • 直近の健康診断の結果(できれば過去数年分)
    • 現在服用している薬の一覧やお薬手帳
    • 家族に心筋梗塞・脳梗塞などを起こした人がいるかのメモ
    • 普段の食事や運動習慣、お酒・タバコの状況を簡単にまとめたメモ

これらの情報があると、医師はあなたの長期的なリスクや生活背景を含めた「全体像」を把握しやすくなり、「薬を始めるべきか」「どのくらいの強さで治療するか」をより具体的に相談できます。

よくある質問

Q1: LDLコレステロールが140mg/dLを少し超えたぐらいでも、すぐに薬を飲んだほうがよいですか?

A1: LDLコレステロールが140mg/dL以上という値は、脂質異常症の診断の目安ではありますが、必ずしも「すぐに薬が必要」という意味ではありません。他の危険因子(糖尿病、高血圧、喫煙、家族歴など)が少なく、心筋梗塞や脳梗塞の既往もない場合、多くはまず食事・運動・禁煙などの生活習慣改善を行い、数か月後に再検査して効果を確認します。1,3

ただし、すでに心血管疾患がある方や、複数の危険因子を抱えている方では、同じ140mg/dLでも薬物療法を含めた積極的な管理が検討されることがあります。ご自身のリスクを正確に知るためにも、一度医療機関で相談することをおすすめします。

Q2: LDLが180〜190mg/dL以上と非常に高いと言われました。やはり薬が必要でしょうか?

A2: LDLコレステロールが180mg/dL以上と非常に高い場合、日本のガイドラインや医薬品解説資料では、リスク区分にかかわらず薬物療法を考慮することが示されています。3,5,8 海外のガイドラインでも、LDL 190mg/dL以上で強力なスタチン療法が推奨されており、放置すると将来の心筋梗塞や脳梗塞のリスクが大きくなると考えられています。7

このような場合、生活習慣の改善は当然重要ですが、それだけで十分に下がらないことも多く、早い段階から薬物療法を組み合わせることでリスクをしっかり下げることが期待できます。まずは早めに医療機関を受診し、詳しい検査と治療方針の相談を行ってください。

Q3: コレステロールの薬(スタチンなど)は、一度飲み始めたら一生やめられないのですか?

A3: スタチンなどの薬は、飲んでいる間はLDLコレステロールを下げてくれますが、中止すると元の値(あるいはそれ以上)に戻りやすいという性質があります。そのため、心筋梗塞や脳梗塞の既往がある方や、家族性高コレステロール血症など高リスクの方では、基本的に長期的な継続が前提となることが多いです。3,7

一方で、軽度の脂質異常症で生活習慣の改善を同時に進めている方では、体重減少や生活の変化により、将来的に薬の量を減らしたり、中止を検討できるケースもあります。ただし、自己判断で中止するとリスクが高まる可能性があるため、必ず主治医と相談し、血液検査の結果を確認しながら慎重に検討しましょう。

Q4: 中性脂肪だけが高い場合でも、薬を飲む必要がありますか?

A4: 中性脂肪が150〜199mg/dL程度の「やや高い」レベルでは、多くの場合、まず食事・運動・体重管理・飲酒量の見直しなど生活習慣の改善が中心となります。1,6 一方、中性脂肪が500mg/dL以上など非常に高い場合には、急性膵炎のリスクを下げるために、フィブラート系薬剤などによる薬物療法が検討されることがあります。3

また、糖尿病や肥満、メタボリックシンドロームが背景にある場合は、これらの病気の治療と並行して中性脂肪の管理を行う必要があります。数値や背景によって判断が変わるため、検査結果を持参して医療機関で相談するのが安全です。

Q5: コレステロールの薬にはどんな副作用がありますか?

A5: 代表的なスタチン系薬剤では、まれに筋肉痛や肝機能の異常、非常にまれですが重い筋障害(横紋筋融解症)などが副作用として報告されています。3,8 ただし、多くの人は問題なく服用できており、心筋梗塞や脳梗塞を予防するメリットが大きいとされています。

筋肉痛やだるさ、尿の色の変化、異常な疲れやすさを感じたときは、自己判断で薬を中止するのではなく、すぐに医師や薬剤師に相談することが大切です。薬の種類や量を調整したり、別の薬に変更することで、リスクと効果のバランスをとることができます。

Q6: 生活習慣だけでコレステロールを下げられる人と、そうでない人の違いは何ですか?

A6: 生活習慣の見直しが有効なのは、主に軽度〜中等度の脂質異常症で、遺伝的な要因や重い合併症が少ない人です。食事や運動、体重管理、禁煙などにしっかり取り組むことで、LDLや中性脂肪が大きく改善するケースも少なくありません。1,6

一方、家族性高コレステロール血症など遺伝性の強いタイプや、糖尿病・腎臓病など高リスクの合併症がある場合は、生活習慣の改善だけでは十分な効果が得られにくく、薬物療法を組み合わせることで初めてリスクを適切なレベルまで下げられることが多いです。どちらに当てはまるかを見極めるためにも、医療機関で総合的な評価を受けることが重要です。

Q7: 「薬に頼りたくない」という気持ちが強いのですが、それでも薬を飲んだ方がよい場合はありますか?

A7: 「できれば薬に頼りたくない」というお気持ちは、とても自然なものです。しかし、すでに心筋梗塞や脳梗塞を起こしたことがある方、高リスクの合併症を抱える方、LDLが極端に高い方では、薬物療法による心血管イベントの予防効果が非常に大きいことが、多くの研究で示されています。3,7

薬はあくまで「生活習慣改善を補助し、リスクをさらに下げるための道具」です。生活改善と薬物療法を組み合わせることで、「将来の発作を防ぐ」「仕事や日常生活を長く続ける」ことにつながると考えると、受け入れやすく感じられるかもしれません。不安や疑問は遠慮せずに医師に伝え、納得できるかたちで一緒に治療方針を決めていきましょう。

結論:この記事から持ち帰ってほしいこと

脂質異常症において、「薬が必要かどうか」は単に数値だけで決まるものではありません。LDLコレステロール140mg/dL以上、中性脂肪150mg/dL以上といった診断基準は、あくまで「詳しく評価し、対策を考え始める入り口」です。

多くの人にとって、最初の一歩は食事・運動・禁煙・体重管理など生活習慣の見直しです。一方で、LDLが180mg/dL以上と非常に高い人、すでに心筋梗塞や脳梗塞を起こしたことがある人、糖尿病や慢性腎臓病などを合併している人では、生活改善と並行して薬物療法を早期から検討することが、将来の重い病気を防ぐうえで大きな意味を持ちます。

自分の数値やリスクを正しく理解するためには、健診結果の用紙だけで悩み続けるのではなく、医療機関で一度じっくり相談してみることが重要です。「まだ大丈夫だろう」と先延ばしにせず、「今できること」を一緒に考えてくれる専門家に頼ることで、長い目で見たときの安心につながります。

本記事が、「どのくらい高いと薬が必要なのか」という疑問に対して、少しでも整理の助けとなり、これからの生活や受診のタイミングを考える手がかりになれば幸いです。

この記事の編集体制と情報の取り扱いについて

Japanese Health(JHO)は、信頼できる公的情報源と査読付き研究に基づいて、健康・医療・美容に関する情報をわかりやすくお届けすることを目指しています。

本記事の原稿は、最新のAI技術を活用して下調べと構成案を作成したうえで、JHO編集部が一次資料(ガイドライン・論文・公的サイトなど)と照合しながら、内容・表現・数値・URLの妥当性を人の目で一つひとつ確認しています。最終的な掲載判断はすべてJHO編集部が行っています。

ただし、本サイトの情報はあくまで一般的な情報提供を目的としており、個々の症状に対する診断や治療の決定を直接行うものではありません。気になる症状がある場合や、治療の変更を検討される際は、必ず医師などの医療専門家にご相談ください。

記事内容に誤りや古い情報が含まれている可能性にお気づきの場合は、お手数ですが運営者情報ページ記載の連絡先までお知らせください。事実関係を確認のうえ、必要な訂正・更新を行います。

免責事項 本記事は情報提供のみを目的としており、専門的な医学的助言や診断、治療に代わるものではありません。健康上の懸念がある場合や、治療内容の変更・中止等を検討される際には、必ず資格のある医療専門家にご相談ください。

参考文献

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  3. 日本動脈硬化学会. 動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版. https://www.j-athero.org/jp/wp-content/uploads/publications/pdf/GL2022_s/jas_gl2022_220713.pdf(最終アクセス日:2025-11-26)
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  5. 独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA). 脂質異常症. https://www.rad-ar.or.jp/siori/content/content_file/345.pdf(最終アクセス日:2025-11-26)
  6. 生活習慣病オンライン. 脂質異常症(高脂血症). https://seikatsusyukanbyo.com/guide/dyslipidemia.php(最終アクセス日:2025-11-26)
  7. Grundy SM, et al. 2018 Guideline on the Management of Blood Cholesterol. Journal of the American College of Cardiology. 2019;73(24):e285–e350. https://www.acc.org/~/media/Non-Clinical/Files-PDFs-Excel-MS-Word-etc/Guidelines/2018/Guidelines-Made-Simple-Tool-2018-Cholesterol.pdf(最終アクセス日:2025-11-26)
  8. 日本循環器学会 ほか. 冠動脈疾患予防のためのLDLコレステロール低下療法. 日本栄養・食糧学会誌. https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsnfs/78/3/78_151/_pdf/-char/ja(最終アクセス日:2025-11-26)
  9. National Lipid Association. Clinician’s Handbook: 2018 Guideline on the Treatment of High Blood Cholesterol. https://www.lipid.org/sites/default/files/nla_clinicianhandout_2018cholgl.pdf(最終アクセス日:2025-11-26)
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