「気分や行動が極端だと言われる」「人間関係のトラブルが続き、自分でもどうしてこうなるのかわからない」「もしかして自分は“人格障害”なのでは…」――こうした不安を、誰にも打ち明けられず一人で抱えている方も少なくありません。
近年では「人格障害」という言葉に代わって「パーソナリティ障害」という名称が使われるようになりました。これは、本人の生まれつきの特徴やこれまでの経験の積み重ねによって形づくられた「パーソナリティ(人格)」のあり方が理由で、生きづらさや強い苦痛、人間関係のトラブルなどが続いてしまう状態を指します。ただし、「性格が悪い」「努力が足りない」といった意味ではありません。
本記事では、厚生労働省や国立精神・神経医療研究センター、世界保健機関(WHO)などの信頼できる情報をもとに、パーソナリティ障害の基礎知識から、主なタイプ、原因やリスク要因、治療や支援の選択肢、日常生活でできる工夫、医療機関を受診する目安までを、できるだけ専門用語をかみ砕きながら丁寧に解説します。
「自分はおかしいのでは」「周りに迷惑ばかりかけている」という強い自己否定に苦しんでいる方にも、少しずつ自分の特性を理解し、専門家や周囲の支援を借りながら、より自分らしい生き方を探していくヒントになることを目指しています。
なお、本記事はあくまで一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の診断や治療方針を決めるものではありません。気になる症状がある場合や、日常生活に支障が出ている場合には、早めに医療機関に相談することをおすすめします。
Japanese Health(JHO)編集部とこの記事の根拠について
Japanese Health(JHO)は、健康と美容に関する情報を提供するオンラインプラットフォームです。膨大な医学文献や公的ガイドラインを整理し、日常生活で活用しやすい形でお届けすることを目指しています。
本記事の内容は、厚生労働省や国立精神・神経医療研究センター、世界保健機関(WHO)などの公的機関、および国内外の医学会が公表している資料・ガイドライン・査読付き論文を一次情報源とし、それらをもとにJHO編集部がAIツールのサポートを受けつつ、最終的には人の目で一つひとつ確認しながら作成しています。
- 厚生労働省・自治体・公的研究機関:e-ヘルスネットや精神障害に関する各種パンフレット、統計資料など、日本人向けの公式情報を優先して参照しています。
- 国内外の医学会ガイドライン・査読付き論文:日本の精神医学関連学会の資料や、WHOが示す国際疾病分類(ICD-11)、Cochraneレビューなど、科学的に検証されたエビデンスをもとに要点を整理しています。
- 教育機関・医療機関・NPOによる一次資料:パーソナリティ障害の背景や、日本の医療・福祉制度に関する実務的な情報源として活用します。
AIツールは、文献の要約や構成案作成といった「アシスタント」として活用していますが、公開前には必ずJHO編集部が原著資料と照合し、重要な記述を一つひとつ確認しながら、事実関係・数値・URLの妥当性を検証しています。
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要点まとめ
- パーソナリティ障害は、「性格が悪い」という意味ではなく、考え方・感じ方・人との関わり方などの偏りによって、本人や周囲が大きな苦しみや困難を抱えている状態を指します。
- 診断には、青年期から続く持続的なパターンであること、社会・仕事・家庭生活などに支障が出ていることなど、いくつかの条件があり、自分で決めつけるのではなく専門家による評価が必要です。
- パーソナリティ障害には、対人不安が強いタイプ、感情の波が激しいタイプ、他人を信用しづらいタイプなど、複数のタイプがあり、うつ病・不安症・依存症など他の精神疾患を合併することも少なくありません。
- 近年の研究では、適切な心理療法や薬物療法、生活環境の調整、周囲の理解と支援によって、長期的な経過の中で改善していく可能性が高いことがわかってきています。
- 「つらいと感じる期間が長く続いている」「自分や他人を傷つけてしまいそうで怖い」といった場合には、一人で抱え込まず、精神科・心療内科・公的相談窓口などに早めに相談することが大切です。
「自分の性格そのものが問題なら、一生変わらないのでは?」と感じてしまうと、とても絶望的な気持ちになります。しかし、専門家はパーソナリティ障害を「変わりにくいが、時間をかけて改善していくことができる心の偏り」ととらえています。
この記事では、まず「パーソナリティとは何か」「なぜ障害という言葉がつくのか」といった基礎から整理し、そのうえで生活習慣や環境要因、幼少期の体験、ストレスやトラウマなど、背景となりうる要因を段階的に見ていきます。
次に、実際に医療機関でどのように診断・治療されるのか、日本の保険診療で受けられる主な心理療法、薬物療法の役割、就労や福祉サービスの支援などを紹介します。
あわせて、「周りの人にどう説明したらよいか」「家族やパートナーとして、どのように接すればよいか」といった、当事者と支える人双方の疑問にも、関連する総合ガイドや詳細解説記事への橋渡しを交えながら触れていきます。
この記事を読み進めることで、「自分の状態をどう理解し、どのタイミングで、どこに相談すればよいのか」を具体的にイメージしやすくなることを目指しています。
第1部:パーソナリティ障害の基本と日常生活で現れやすいサイン
まずは、「パーソナリティ」と「パーソナリティ障害」という言葉の基本的な意味から整理し、日常生活の中でどのような形でサインが表れやすいのかを見ていきます。いきなり「病名」から考えるのではなく、「自分はどんな場面で困りやすいのか」を振り返ることが出発点になります。
1.1. パーソナリティとパーソナリティ障害の基本的な仕組み
パーソナリティとは、ものの考え方(認知)、感情の感じ方・強さ、行動のパターン、人との付き合い方などを含む「その人らしさ」の総体です。性格・気質・価値観・経験が長い時間をかけて組み合わさり、一人ひとり異なる形で形づくられます。
国立精神・神経医療研究センターの「こころの情報サイト」や厚生労働省の資料では、パーソナリティ障害を「大多数の人とは違う反応や行動をすることで本人が苦しんだり、周囲が困ったりする場合に診断される状態」と説明しています。認知(ものの捉え方や考え方)、感情のコントロール、対人関係などの偏りが背景にあり、「性格が悪いこと」を意味するものではないと明確に示されています。12
世界保健機関(WHO)が定めるICD-11では、パーソナリティ障害は「持続的で広範なパーソナリティ機能の障害」であり、自己像や人間関係、感情・行動のコントロールなどに著しい偏りがあり、そのために生活や仕事、人間関係に大きな支障や苦痛が生じている状態とされています。重症度(軽度・中等度・重度)と主な性格特性(過剰な不安、衝動性、こだわりの強さなど)で評価することが特徴です。3
1.2. 日常生活で気づきやすいサインと「NG習慣」
パーソナリティ障害そのものは、血液検査や画像検査だけで診断できるものではありません。日常生活の中で繰り返し現れる「考え方・感じ方・行動パターン」の組み合わせと、その結果生じる困りごとがヒントになります。たとえば、次のような特徴が長期的に続いている場合、パーソナリティの偏りが背景にある可能性があります。
- 些細なきっかけで怒りが爆発し、後から強い自己嫌悪に襲われることが多い。
- 相手のちょっとした表情の変化や言葉を「嫌われた」「見捨てられた」と感じやすい。
- 人と親しくなりたい気持ちはあるが、傷つくことが怖くて距離を取り過ぎてしまう。
- 白黒思考が強く、「完璧でない自分は価値がない」と感じやすい。
- 衝動的な買い物・暴飲暴食・自傷行為など、感情を紛らわせる行動を繰り返してしまう。
こうした生きづらさをさらに悪化させてしまう「NG習慣」としては、以下のようなものが挙げられます。
- つらさを忘れるための過度な飲酒やギャンブル、ネット・ゲームへの没頭。
- 感情が高ぶった状態でのSNS投稿やメッセージ送信(後から後悔しやすい)。
- 「どうせわかってもらえない」と決めつけ、誰にも相談しないまま我慢し続けること。
- 自己否定が強いときに、大きな人生の決断(退職・離婚・引っ越しなど)を衝動的に行うこと。
これらは「意志が弱いから」ではなく、感情の揺れや対人不安の強さを一時的にやり過ごそうとする中で身についてきた「苦肉の策」であることも多いです。だからこそ、責めるのではなく、「別の対処法を一緒に探していく」視点が大切になります。
| 最近3か月の自分の様子 | 背景として考えられること |
|---|---|
| 人間関係が長続きせず、「親友」や「信頼できる人」がほとんどいない | 対人不安や「見捨てられ不安」が強い、あるいは他人への不信感が強い状態 |
| 自分の評価が極端に上下し、「最高な自分」と「最低な自分」を行き来している | 自己イメージの不安定さ、感情の波の大きさ |
| ストレスが強いときに、自傷行為や過食・浪費などを繰り返してしまう | 感情調整の難しさ、衝動コントロールの問題 |
| 他人からのちょっとした注意や指摘で、激しい怒りや絶望感に襲われる | 過去の傷つき体験と結びつきやすい感情のパターン |
※これはあくまでイメージの一例であり、これだけで診断できるものではありません。気になる場合は、専門家に相談することが大切です。
第2部:身体・心の内部要因 ― 生まれつきの気質と経験の重なり
生活習慣や現在のストレスだけでなく、生まれつきの気質や脳の働き方、幼少期からの体験、人間関係の積み重ねも、パーソナリティの形成に大きく関わります。ここでは、特に注目されている内部要因を整理します。
2.1. 生まれつきの気質と脳の働き方
パーソナリティ障害は、「育て方が悪かった」「本人の努力不足」といった単純な原因で説明できるものではありません。脳科学や行動遺伝学の研究では、生まれつきの気質や神経の働き方にも一定の遺伝的な傾向があり、それがストレスや環境要因と相互に影響し合ってパーソナリティが形づくられていくと考えられています。4
例えば、もともと刺激に敏感で不安を感じやすい気質の人が、安心できる環境で支えられながら育つ場合と、暴力やいじめなどの強いストレス環境で育つ場合では、後のパーソナリティや対人関係のパターンが大きく異なる可能性があります。
2.2. 幼少期からの体験・トラウマとの関わり
多くの研究で、幼少期の虐待(身体的・性的・心理的)、ネグレクト(養育の放棄・無視)、家庭内暴力の目撃などの体験が、その後のパーソナリティ障害のリスクを高める可能性が指摘されています。これは、子どもの時期に「自分は大切にされる存在だ」「他人は基本的には信頼できる」という感覚を育むことが難しくなってしまうためです。
ただし、つらい体験があったからといって必ずパーソナリティ障害になるわけではありませんし、逆に目立った虐待歴がなくても、さまざまな要因の組み合わせで生きづらさが生じることもあります。「原因はこれだけ」と決めつけるのではなく、「どんな経験が今の自分の感じ方・考え方に影響しているのか」を、専門家と一緒に少しずつ振り返っていくことが大切です。
2.3. 他の精神疾患との関係(うつ病・不安症・依存症など)
パーソナリティ障害のある人は、うつ病や不安症、摂食障害、アルコール・薬物依存症など、他の精神疾患を合併しやすいことが知られています。国立精神・神経医療研究センターの情報では、「パーソナリティ障害は背後から悪影響を及ぼす黒幕のような障害」であり、合併した他の精神疾患が前面に出てくるため、パーソナリティ障害自体が見落とされることもあると説明されています。1
例えば、同じ「うつ状態」に見えても、背景にパーソナリティの偏りがある場合には、治療の進め方や支援の仕方が変わってくることがあります。そのため、「薬を飲むと少し楽になるが、人間関係のトラブルは繰り返してしまう」「気分の波や衝動的な行動が長年続いている」といった場合には、パーソナリティの視点からも評価してもらうことが役立つ場合があります。
第3部:専門的な診断が必要なタイプと、その特徴
パーソナリティ障害には、さまざまなタイプが含まれます。世界的にはDSMという診断基準で「A群・B群・C群」と分類されることが多く、日本でも教育や臨床の場で広く参照されています。一方、WHOのICD-11では、従来の細かいタイプ分類よりも、「重症度」と「どのような性格特性が目立つか」でとらえる枠組みへと移行しつつあります。3
ここでは代表的な特徴を、イメージしやすい形で紹介しますが、自己診断に使うのではなく、「こうした特徴があるなら専門家に相談してみよう」という目安として活用してください。
3.1. A群:奇妙で風変わりに見えやすいタイプ
A群には、妄想性パーソナリティ障害、統合失調質パーソナリティ障害、統合失調型パーソナリティ障害などが含まれます。特徴としては、他人への強い不信感、奇妙に見える思考や信念、感情表現の乏しさなどが挙げられます。
- 周囲の人の言動を「裏がある」と疑いやすく、なかなか人を信用できない。
- 独特の世界観や信念に強くこだわり、相手にとっては理解しづらいことがある。
- 親密な人間関係を持つことにあまり関心がなく、一人で過ごすことを好む。
これらの特徴があっても、必ずしも病気というわけではありません。しかし、「不信感が強すぎて職場や家庭で重大なトラブルにつながる」「周囲とのズレが大きく、孤立やいじめの原因になっている」といった場合には、専門家に相談する価値があります。
3.2. B群:感情が激しく、衝動的な行動が目立つタイプ
B群には、境界性(ボーダーライン)パーソナリティ障害、反社会性パーソナリティ障害、演技性パーソナリティ障害、自己愛性パーソナリティ障害などが含まれます。感情の波が激しく、衝動的な行動や対人トラブルが起こりやすいことが特徴です。
- 境界性パーソナリティ障害:見捨てられ不安が非常に強く、対人関係が「理想化」と「絶望」に揺れやすい。自傷行為や自殺企図、衝動的な行動を繰り返すこともあります。
- 反社会性パーソナリティ障害:他人の権利や社会のルールを無視する行動パターンが反復し、トラブルを起こしても罪悪感が乏しいことが特徴です。
- 自己愛性パーソナリティ障害:自分は特別であるという強い思いと、実は傷つきやすい自尊心の両方を抱え、賞賛への欲求や共感の乏しさがみられます。5
B群の特徴は、本人だけでなく周囲の人にも大きな影響を及ぼしやすく、職場や家族関係で深刻なトラブルになってから相談に至るケースも少なくありません。早い段階で適切な心理療法につながることで、長期的な見通しが大きく変わることが、近年の研究で示されています。4
3.3. C群:不安が強く、対人関係を避けがちなタイプ
C群には、回避性パーソナリティ障害、依存性パーソナリティ障害、強迫性(完璧主義)パーソナリティ障害などが含まれます。不安や恐れが強く、失敗や拒絶を極端に避けようとするあまり、行動が制限されてしまうことが特徴です。
- 回避性パーソナリティ障害:人と関わりたい気持ちはあるのに、「拒絶されるくらいなら最初から近づかないほうがまし」と感じ、対人関係を避けてしまう傾向があります。
- 依存性パーソナリティ障害:自分で決めることが極端に不安で、身近な人に過度に頼ろうとするパターンがみられます。
- 強迫性パーソナリティ障害:完璧さや規則に強くこだわるあまり、融通が利かず、仕事や家庭で摩擦が生じやすくなります。
これらのタイプは、周囲からは「真面目」「控えめ」「しっかりしている」と評価されることも多く、一見問題がないように見える場合もあります。しかし、「本当は人と関わりたいのに怖くて動けない」「自分を犠牲にしてでも相手に合わせてしまう」など、内面では強い苦痛を抱えていることも少なくありません。
第4部:今日から始める改善アクションプラン
パーソナリティ障害は、長い年月をかけて形づくられてきたパターンであるため、「一晩で治る」というものではありません。その一方で、近年の研究では、適切な治療や支援を受けることで、長期的には症状が大きく改善し、生活の質が向上するケースが多いことも分かってきています。ここでは、「今できる小さな一歩」から「専門家と一緒に取り組む中長期的な対策」までを段階的に整理します。
| ステップ | アクション | 具体例 |
|---|---|---|
| Level 1:今夜からできること | 感情の波を「書き出して眺める」習慣をつける | 寝る前に、その日にあった出来事と自分の気持ちをノートやスマホメモに簡単に記録する。 |
| Level 2:今週から始めること | 信頼できそうな相談先を1つ探しておく | 自治体の精神保健福祉センターや、こころの相談ダイヤル、職場の産業医・EAPなど、利用できる窓口を調べ、連絡先を控えておく。 |
| Level 3:今月から取り組むこと | 精神科・心療内科・カウンセリングなど、専門家への相談を検討する | 「いきなり受診は不安」という場合は、まず公的な電話相談や保健センターなどで話を聞いてもらい、受診先を一緒に探してもらう。 |
| Level 4:半年〜数年かけて取り組むこと | 心理療法・グループワーク・リワーク/就労支援を継続する | 認知行動療法や弁証法的行動療法(DBT)など、感情のコントロールや対人スキルを学ぶプログラムを、無理のないペースで続ける。 |
「長く通わないといけないのでは」「途中で投げ出してしまいそう」と不安になる方も多いですが、パーソナリティ障害の治療は「マラソン」のようなイメージです。短距離走のように全力で走ってすぐにゴールするのではなく、「自分のペースで一歩ずつ進む」ことが何より大切です。
また、周囲の人(家族・パートナー・友人・同僚など)に、自分の状態を少しずつ伝えていけると、日常生活でのサポートを得やすくなります。「全部を理解してもらう」ことを目指す必要はなく、「こういう場面が苦手なので、こうしてもらえると助かる」と具体的に伝えるところから始めてみるのも一つの方法です。
第5部:専門家への相談 ― いつ・どこで・どのように?
「どのタイミングで病院に行けばいいのか」「どの診療科を選べばよいのか」「何を話せばいいのかが分からない」と感じると、受診の一歩を踏み出すのは簡単ではありません。ここでは、受診の目安や、相談時に役立つポイントをまとめます。
5.1. 受診を検討すべき危険なサイン
- 「生きていたくない」「自分なんていなくなったほうがいい」といった気持ちが強くなり、自傷行為や自殺を具体的に考えている。
- 衝動的な行動(暴力・破壊行為・浪費・危険な運転など)が止められず、自分や他人の安全が心配な状態になっている。
- 強い不安や怒り、虚しさが続き、仕事や学業、家事・育児がほとんど手につかない状態が2週間以上続いている。
- 幻覚や妄想のような症状(誰もいないのに声が聞こえる、周囲が自分を監視していると強く信じているなど)が現れている。
これらに当てはまる場合は、できるだけ早く精神科・心療内科などの医療機関に相談することが重要です。命の危険が差し迫っている、暴力や自傷が止められないといった緊急時には、迷わず119番通報や地域の救急窓口への連絡も検討してください。
5.2. 症状に応じた診療科の選び方
- 気分の落ち込みや不安、不眠が中心の場合:心療内科・精神科。
- 対人関係の問題や感情のコントロールの難しさが主な悩みの場合:精神科クリニックやカウンセリングルーム(臨床心理士・公認心理師)など。
- 仕事のストレスやハラスメントが関係している場合:産業医、EAP(従業員支援プログラム)、職場のメンタルヘルス相談窓口なども利用可能です。
どこに相談してよいか分からない場合は、自治体の保健所・精神保健福祉センター、厚生労働省が案内している公的な相談窓口などに連絡し、「こういうことで困っているが、どこに相談すればよいか」と尋ねてみるのも良い方法です。26
5.3. 診察時に持参すると役立つものと、相談のコツ
- これまでの経過メモ:いつ頃から、どのような場面で、どんな気持ち・行動が続いているかを、箇条書きで構いませんので簡単にまとめておく。
- 服薬情報:現在飲んでいる薬の一覧(お薬手帳)や、過去に試した精神科の薬の情報。
- 家族やパートナーが同席できる場合:日頃の様子や困りごとを補足してもらうことで、診断や治療方針の検討に役立つことがあります。
初診では緊張してうまく話せないことも多いため、「全部を完璧に伝えよう」と力を入れすぎる必要はありません。伝えられなかったことは、次回以降の診察やカウンセリングで少しずつ共有していけば大丈夫です。
よくある質問
Q1: パーソナリティ障害は「性格が悪い」という意味ですか?
A1: いいえ、そのような意味ではありません。国立精神・神経医療研究センターや厚生労働省の資料では、パーソナリティ障害は「大多数の人とは違う反応や行動をすることで本人が苦しんだり、周囲が困ったりする場合に診断される状態」であり、「性格が悪いこと」を意味するものではないと明確に説明されています。12
「自分はダメな人間だ」と責めるのではなく、「なぜこんなに生きづらいのか」という視点から、専門家と一緒に原因や対処法を整理していくことが大切です。
Q2: インターネットのセルフチェックだけでパーソナリティ障害かどうか分かりますか?
A2: セルフチェックは、自分の状態を振り返るヒントにはなりますが、それだけで診断することはできません。診断には、症状の内容だけでなく、「いつ頃から続いているのか」「どれくらい日常生活や人間関係に支障が出ているのか」といった点を、専門家が総合的に評価する必要があります。3
チェック結果が気になった場合には、「こんな結果が出て不安です」と医療機関や公的相談窓口などに共有し、一緒に整理してもらうと良いでしょう。
Q3: パーソナリティ障害は一生治らないのですか?
A3: 以前は「一生変わらない」と考えられていた時期もありましたが、近年の研究では、適切な治療や支援によって、長期的な経過の中で症状が大きく改善し、生活の質が向上する人が多いことが示されています。14
特に、境界性パーソナリティ障害では、10年以上の経過を追った研究で、多くの人が自傷行為の減少や対人関係の安定など、目に見える改善を示したという報告もあります。「性格を変える」というより、「感情の扱い方や人との付き合い方のパターンを少しずつ学び直していく」イメージに近いと考えるとよいでしょう。
Q4: 薬だけでパーソナリティ障害は良くなりますか?
A4: パーソナリティ障害そのものを「薬だけで治す」ことは難しいとされています。薬物療法は、不眠やうつ症状、不安、衝動性などの一部の症状を和らげるために用いられることが多く、根本的な改善のためには心理療法(カウンセリング)などを組み合わせることが重要とされています。4
薬の種類や量は、症状や体質、他の病気との関係によって異なりますので、自己判断で増減せず、必ず処方した医師と相談しながら調整してください。
Q5: 家族やパートナーがパーソナリティ障害かもしれません。どう関わればよいですか?
A5: 家族やパートナーが激しい感情の揺れや対人トラブルに苦しんでいる場合、支える側も大きなストレスを抱えやすくなります。「相手を変えよう」とする前に、まずは自分自身の安全と心の健康を守ることが大切です。
そのうえで、「あなたが大切だと思っている」「一緒に支援を考えたい」というメッセージを、責める口調ではなく、具体的な提案(相談窓口や医療機関の情報を一緒に調べるなど)とともに伝えてみるとよいでしょう。家族向けの相談窓口や家族会も各地にありますので、支える側が単独で抱え込まないことが何より重要です。6
Q6: 発達障害とパーソナリティ障害はどう違うのですか?
A6: 発達障害は、脳の働き方の違いによって、注意の向け方やコミュニケーションのスタイル、感覚の敏感さなどに特徴が現れる状態で、幼少期から持続していることが特徴です。一方、パーソナリティ障害は、思考・感情・対人関係・衝動のコントロールなどの「パーソナリティのパターン」が青年期以降に問題となる形で表れてくることが多いとされています。2
両者が重なっているケースもあり、区別が難しいことも少なくありません。専門家は、生育歴や現在の困りごと、発達特性の有無などを総合的に評価して判断しますので、「自分でどちらかを決める」必要はありません。
Q7: 仕事を続けながら治療を受けることはできますか?
A7: 多くの方が、仕事や学業を続けながら治療やカウンセリングを受けています。通院の頻度や時間帯については、主治医やカウンセラーと相談し、可能な範囲で調整してもらうことができます。
日本では、精神障害者保健福祉手帳や障害年金、就労移行支援・就労継続支援といった制度もあり、症状の程度や生活状況に応じて利用できる場合があります。制度の利用については、医療機関のソーシャルワーカーや自治体の窓口に相談するとよいでしょう。6
結論:この記事から持ち帰ってほしいこと
パーソナリティ障害は、「性格が悪い」「努力が足りない」といった言葉で片づけられるものではなく、考え方・感じ方・行動のパターンが偏ってしまうことで、自分自身も周囲も苦しんでしまう心の状態です。生まれつきの気質や脳の働き方、幼少期からの経験、現在のストレスなど、さまざまな要因が重なって生じると考えられています。
一方で、近年の研究や臨床経験からは、「時間をかければ変化しうる」という希望も見えてきています。感情の波を言葉にして整理すること、信頼できる相談先を見つけること、専門家と一緒に心理療法に取り組むこと、周囲の人との関わり方を少しずつ工夫していくこと――どれも小さな一歩ですが、積み重ねることで確かな変化につながっていきます。
今つらさを抱えている方に伝えたいのは、「あなたの生きづらさには理由があり、一人で抱え込む必要はない」ということです。不安や恥ずかしさから、相談の一歩を踏み出すのは簡単ではありませんが、その一歩が、長い目で見たときに大きな転機となることがあります。この記事が、その一歩を支える小さな手がかりになれば幸いです。
この記事の編集体制と情報の取り扱いについて
Japanese Health(JHO)は、信頼できる公的情報源と査読付き研究に基づいて、健康・医療・美容に関する情報をわかりやすくお届けすることを目指しています。
本記事の原稿は、最新のAI技術を活用して下調べと構成案を作成したうえで、JHO編集部が一次資料(ガイドライン・論文・公的サイトなど)と照合しながら、内容・表現・数値・URLの妥当性を人の目で一つひとつ確認しています。最終的な掲載判断はすべてJHO編集部が行っています。
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参考文献
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国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所. こころの情報サイト「パーソナリティ障害」. https://kokoro.ncnp.go.jp/disease.php?%40uid=5G107GdWgaFy4nBq(最終アクセス日:2025-11-26)
-
厚生労働省. 精神障害のある方への支援. https://www.mhlw.go.jp/content/12000000/001482954.pdf(最終アクセス日:2025-11-26)
-
World Health Organization. International Classification of Diseases 11th Revision (ICD-11): Personality disorders. https://icd.who.int/(最終アクセス日:2025-11-26)
-
脳科学辞典編集委員会. パーソナリティ障害. 脳科学辞典. https://bsd.neuroinf.jp/wiki/パーソナリティ障害(最終アクセス日:2025-11-26)
-
MSDマニュアル プロフェッショナル版. 自己愛性パーソナリティ症(NPD). https://www.msdmanuals.com/ja-jp/professional/…(最終アクセス日:2025-11-26)
-
厚生労働省. 精神障害のある方への理解を深める. https://www.mhlw.go.jp/content/12000000/001482957.pdf(最終アクセス日:2025-11-26)

