心血管疾患

【上室性頻拍】突然のドキドキが止まらないときに知っておきたい原因・対処法・受診の目安

仕事中や家事の最中、あるいは電車の中で、突然「ドクドク」と激しい動悸に襲われ、胸のあたりが落ち着かなくなる――。 しばらくすると嘘のようにおさまるものの、「このまま倒れてしまうのでは?」「心臓の大きな病気だったらどうしよう」と不安になった経験はありませんか。

こうした急に始まり急に終わる強い動悸の背景に多い不整脈の一つが、心臓の上の部屋(心房など)から生じる上室性頻拍(じょうしつせいひんぱく)です。 心拍数が1分間に150〜200回以上に急に跳ね上がることもあり、脈が速くなるだけでなく、息苦しさやめまい、胸の圧迫感などを伴うこともあります。

上室性頻拍の多くは命に直結するものではないとされていますが、日本循環器学会などのガイドラインでも、繰り返す発作や生活の質(QOL)を下げている場合には治療の対象となることが示されています。 また、基礎に別の心臓病がある方や高齢の方では、放置すると心不全や心機能低下につながるおそれもあります。

本記事では、日本のガイドラインや国内外の信頼できる資料に基づき、上室性頻拍とは何か、その原因・症状・検査・治療法、そして日常生活で気をつけたいポイントまで、できるだけわかりやすく整理して解説します。 「どこまで様子を見てよいのか」「いつ病院を受診すべきか」がイメージしやすくなるよう、具体的な目安もあわせて紹介します。

なお、ここでお伝えする内容はあくまで一般的な情報であり、個々の診断や治療方針を直接決めるものではありません。 気になる症状がある場合や、現在の治療内容を変えたいと考えている場合は、必ず医師などの医療専門職に相談してください。

Japanese Health(JHO)編集部とこの記事の根拠について

Japanese Health(JHO)は、健康と美容に関する情報を提供するオンラインプラットフォームです。日本で生活する方々が、自分や家族の体調について冷静に判断し、必要なときに医療機関へ相談しやすくなるような情報提供を目指しています。

本記事では、上室性頻拍や発作性上室性頻拍(PSVT)に関する情報について、以下のような一次情報源を中心に参照し、JHO編集部がAIツールのサポートを受けながら内容を整理しました。

  • 日本循環器学会などのガイドライン・学会資料:不整脈の診断とリスク評価、不整脈薬物治療に関する最新の指針など。
  • 大学病院・専門病院の解説ページ:慶應義塾大学病院KOMPASや循環器専門医療機関による、発作性上室性頻拍やカテーテルアブレーション治療の説明など。
  • 海外のガイドライン・患者向け資料:米国心臓病学会(ACC)・心臓協会(AHA)・Heart Rhythm Societyによる上室性頻拍の診療ガイドラインや、Cleveland Clinic、Johns Hopkins Medicineなどによる患者向け情報など。

AIツールは、文献の検索や要点の整理を行う「アシスタント」として活用していますが、公開前には必ずJHO編集部が原著資料と付き合わせながら、重要な記述・数値・用語・URLといった点を人の目で確認しています。

私たちの運営ポリシーや編集プロセスの詳細は、運営者情報(JapaneseHealth.org)をご覧ください。

要点まとめ

  • 上室性頻拍は、心房や房室結合部など心臓の「上の部分」から異常な電気信号が出て、脈が急に速くなる不整脈の総称で、多くは発作的に始まり突然おさまります。
  • 代表的な症状は動悸・胸の圧迫感・息切れ・めまい・気が遠くなる感じなどで、発作が短時間で終わる場合もあれば、長く続いて救急受診が必要になる場合もあります。
  • カフェイン・アルコール・喫煙・強いストレス・寝不足などの日常的な要因や、貧血・甲状腺機能異常・心臓の病気などの背景疾患が、発作の引き金・悪化要因になることがあります。
  • 診断には心電図検査が欠かせません。発作が短く病院で捉えにくい場合には、ホルター心電図やイベントレコーダー、電気生理学的検査(EPS)などが用いられます。
  • 治療は、迷走神経刺激(深呼吸やいきみなど)や薬物療法に加えて、根本的な治療としてカテーテルアブレーションが広く行われており、発作性上室性頻拍では高い成功率が報告されています。
  • 「この程度なら様子を見てもよいのか」「救急車を呼ぶべきか」の目安を知っておくことが大切です。胸痛が強い、意識がもうろうとする、息苦しさが急に悪化するなどのときは、ためらわず119番通報を検討してください。
  • 日常生活では、睡眠・飲酒・喫煙・カフェイン摂取・ストレス対策などを見直すことで、発作の頻度を減らせる可能性があります。ただし、自己判断での薬の中断や運動制限は行わず、必ず主治医と相談しましょう。

第1部:上室性頻拍の基本と日常生活の見直し

最初に、上室性頻拍とはどのような不整脈なのか、その仕組みと、日常生活の中で発作を招きやすい要因について整理します。専門的な病名をすべて覚える必要はありませんが、「心臓でどんなことが起きているのか」をイメージしておくことで、不安の軽減やセルフケアにつながります。

1.1. 上室性頻拍の基本的なメカニズム

心臓は、洞結節(どうけっせつ)と呼ばれるペースメーカーのような部分から出る電気信号が、心房から心室へと一定の順番で伝わることで、1分間におよそ60〜100回のリズムで規則正しく動いています。

ところが、心房や房室結合部などに「余分な電気の通り道」や「ぐるぐる回る電気の回路」があると、そこを電流が高速で回り続け、突然脈が速くなることがあります。これが代表的な上室性頻拍のメカニズムで、「リエントリー(回帰性)」と呼ばれる現象です。

発作性上室性頻拍(PSVT)の場合、心拍数が1分間に150〜250回程度まで急に上がり、その状態が数分〜数時間続いた後、何事もなかったかのように突然元の脈に戻ることが多いとされています。

発作が起きている最中には、

  • 強い動悸(心臓がバクバクする感じ)
  • 胸の締め付けや圧迫感
  • 息切れや息苦しさ
  • めまい・ふらつき・気が遠くなる感じ

などが生じることがあります。症状の強さや感じ方には個人差があり、「脈が速いことにまったく気づかない」という方もいれば、「数十秒の発作でも強い不安を感じる」という方もいます。

1.2. 悪化させてしまうNG習慣と見直したい生活リズム

上室性頻拍の根本的な原因が心臓の中の電気回路にある場合でも、日常生活の要因が「発作のきっかけ」や「悪化要因」になることが少なくありません。以下のような習慣に心当たりがないか、一度振り返ってみましょう。

  • カフェイン・エナジードリンクの摂り過ぎ:濃いコーヒーやエナジードリンクを短時間に何杯も飲むと、交感神経が高まり、不整脈の引き金になることがあります。
  • アルコールの飲み過ぎ・一気飲み:休日前の深酒や短時間での飲酒は、心拍数を上げたり、脱水を招いて心臓に負担をかけます。
  • 喫煙:ニコチンは血管を収縮させ、心拍数や血圧を上げる方向に働きます。電子タバコや加熱式タバコでも油断はできません。
  • 慢性的な寝不足・不規則な生活:平日と休日で起床時間が大きくズレる生活や、連日の残業による睡眠不足は、自律神経のバランスを崩し、不整脈の出やすい状態を作ります。
  • 急な激しい運動や息をこらえる動作:急に重い荷物を持ち上げる、瞬発的な無酸素運動をするなどの場面で、発作が誘発されることがあります。
  • ストレス・不安の蓄積:精神的なストレスや緊張が続くと、交感神経が優位になり、動悸を感じやすくなります。

いきなりすべてを完璧に変える必要はありませんが、「夜遅くのカフェインを控える」「週末の寝だめをやめて起床時間をそろえる」など、小さな工夫から始めてみることで発作頻度が減る方もいます。

表1:セルフチェックリスト — こんなときに上室性頻拍を疑う?
こんな症状・状況はありませんか? 考えられる背景・原因カテゴリ
急に脈が速くなり、数分〜数時間続いたあと、ある瞬間にストンと元に戻る 発作性上室性頻拍(PSVT)などリエントリー性不整脈の可能性
動悸と同時に、胸の締め付けや息切れ、冷や汗が出る 上室性頻拍に加え、心筋虚血や心不全などが隠れている可能性
コーヒーやアルコールを飲んだあと、決まって脈が速くなる カフェイン・アルコールが引き金となる上室性頻拍
昔から不整脈を指摘されている、家族に不整脈や突然死の人がいる 遺伝的背景や心臓の構造異常を伴う不整脈の可能性
発作の最中、首筋の脈(頸動脈)がドクドクと大きく触れる 房室結節回帰性頻拍(AVNRT)など、特定のタイプの上室性頻拍の特徴として知られています

第2部:身体の内部要因 — 心臓・ホルモン・「隠れた不調」

生活習慣を整えても上室性頻拍の発作が繰り返し起こる場合、その背景には心臓そのものの病気や、ホルモン・血液・電解質の異常など、身体の内側の問題が潜んでいることがあります。

2.1. ライフステージとホルモンバランスの変化

女性の場合、月経周期・妊娠・出産・更年期など、ホルモンバランスが大きく変化するタイミングで動悸や不整脈が目立つことがあります。エストロゲンなどの性ホルモンは自律神経や血管の状態にも影響するため、同じ人でもライフステージによって症状の出方が変わることがあります。

例えば、妊娠中は血液量が増え、心拍数もやや速くなるため、上室性頻拍が出やすくなることがあります。また、更年期にはホットフラッシュや発汗とともに動悸を自覚しやすくなり、「重大な心臓病では?」と不安になる方も少なくありません。

これらの動悸や不整脈がすべて危険というわけではありませんが、

  • 発作が頻繁になってきた
  • めまいや失神を伴う
  • 安静時にも繰り返し起こる

といった場合には、妊婦健診や婦人科診療と並行して循環器内科での評価を受けることが勧められます。

2.2. 貧血・甲状腺・電解質など「隠れた原因」

上室性頻拍や動悸の背景として、心臓以外の病気が隠れていることもあります。代表的なものとしては、

  • 貧血:血液中のヘモグロビンが少ないと、全身に酸素を運ぶために心臓がより速く・強く拍動しようとします。
  • 甲状腺機能亢進症:甲状腺ホルモンが過剰になると、心拍数が上がり、不整脈が出やすくなります。
  • 電解質異常:カリウム・マグネシウム・カルシウムなどのバランスが崩れると、心筋の電気的な安定性が損なわれます。
  • 心筋症や心臓弁膜症などの構造的心疾患:心臓の形や機能の異常が、不整脈の基盤になることがあります。

健康診断の結果や、最近の体重変化・食欲・発汗・手の震えなどの症状と合わせて、気になる点があれば医師に伝えるようにしましょう。

また、子どもや若年者に見られる上室性頻拍では、生まれつきの電気回路の異常(副伝導路)が背景にあることもあります。学校検診や部活動の心電図検査で指摘された場合には、小児循環器専門医のいる医療機関での精査が重要です。

第3部:専門的な診断が必要な代表的な上室性頻拍

ここでは、上室性頻拍の中でも代表的なタイプと、その特徴・検査・治療の概要について解説します。実際の診断名は心電図や電気生理学的検査にもとづいて医師が総合的に判断しますが、「自分がどのタイプに近いのか」を大まかにイメージしておくと、診察時の疑問も整理しやすくなります。

3.1. 房室結節回帰性頻拍(AVNRT)・房室回帰性頻拍(AVRT)

発作性上室性頻拍の多くを占めるのが、 房室結節回帰性頻拍(AVNRT)房室回帰性頻拍(AVRT)です。これらはいずれも、心房と心室を結ぶ電気の通り道の周辺に「ぐるぐる回る回路」ができてしまうタイプの不整脈です。

特徴としては、

  • 突然始まり、突然終わるはっきりとした発作性の動悸
  • 発作時の心拍数はおおむね150〜220回/分程度
  • 発作中に頸部の脈がドクドクと目立つことがある(特にAVNRT)
  • 若年〜中年の比較的健康な人にも起こりうる

発作が起きたときに、深呼吸をしたり、息をこらえていきむ、首元を冷やすなどの迷走神経刺激(バルサルバ手技など)で止まる場合がありますが、自己流で無理に行うと血圧低下を招くこともあるため、医師や医療従事者から正しい方法を教わることが大切です。

発作が頻繁で生活に支障が大きい場合や、薬で十分に抑えられない場合には、カテーテルアブレーションによる根治療法が検討されます。多くの症例で成功率が高く、再発率も低いと報告されていますが、合併症リスクについても事前に十分な説明を受ける必要があります。

3.2. WPW症候群・心房頻拍・心房粗動・心房細動など

上室性頻拍のカテゴリーには、ほかにもさまざまな不整脈が含まれます。

  • WPW(Wolff-Parkinson-White)症候群:心房と心室の間に「副伝導路」と呼ばれる余分な電気の通り道があり、それを介して発作性の頻拍や心房細動が起こるタイプ。
  • 心房頻拍・心房粗動:心房の一部が高速で規則的に興奮することで脈が速くなる不整脈。
  • 心房細動:心房がバラバラに震えるように興奮することで、脈が不規則かつ速くなる不整脈。血栓(血の塊)ができやすく、脳梗塞リスクが問題になります。

これらの不整脈では、上室性頻拍と同じく動悸や息切れがみられますが、脳梗塞や心不全といった合併症のリスク評価や、抗凝固療法(血液をサラサラにする薬)の必要性など、より複雑な判断が求められます。

そのため、「単なる動悸」と自己判断せず、心電図検査や必要に応じた専門施設での精密検査を通じて、どのタイプの不整脈があるのかを明らかにすることが重要です。

第4部:今日から始める改善アクションプラン

上室性頻拍が疑われる場合でも、すぐにすべてを変える必要はありません。「今できること」「数週間〜数か月かけて取り組むこと」「医療機関と相談しながら進めること」を分けて考えると、負担が少なく取り組みやすくなります。

表2:上室性頻拍が気になる人の改善アクションプラン
ステップ アクション 具体例
Level 1:今夜からできること 刺激を減らし、心臓への負担を軽くする 夕方以降のカフェイン飲料を控える/就寝前2時間のスマホやPC作業を減らし、ぬるめのお風呂でリラックスする/深呼吸や軽いストレッチで緊張をほぐす など
Level 2:今週から始めること 生活リズムを整え、「無理のない心臓」に近づける 平日・休日とも起床時間を大きくずらさない/週2〜3回、息が少し上がる程度のウォーキングや体操を続ける/アルコールは週に飲まない日を作る など
Level 3:医療機関と相談しながら進めること 検査・治療の選択肢を知り、自分に合った方法を選ぶ 発作時の状況をメモして受診し、心電図やホルター心電図、必要に応じて電気生理学的検査を受ける/薬物療法やカテーテルアブレーションのメリット・リスクを主治医と話し合う など

なお、自己判断での薬の中止や、極端な減量・過度な運動はかえって危険な場合があります。治療中の薬や持病がある方は、必ず主治医の指示に従いながら生活改善を行いましょう。

第5部:専門家への相談 — いつ・どこで・どのように?

「このまま様子を見ても大丈夫なのか」「今すぐ救急車を呼ぶべきなのか」を判断するのは簡単ではありません。ここでは、一般的な目安として、受診を検討すべきサインや診療科の選び方を整理します。

5.1. すぐに受診・救急相談を検討すべき危険なサイン

  • 動悸が急に始まり、安静にしても15〜30分以上おさまらない
  • 動悸に加えて、強い胸痛・胸の締め付け感がある
  • 冷や汗が出る、顔色が悪くなる、息が苦しく会話がしづらい
  • めまいやふらつきが強く、倒れそうになる・実際に失神する
  • 心臓病や心不全の持病がある、高齢である、または妊娠中である

こうした症状がある場合には、迷わず医療機関への連絡を検討することが大切です。夜間や休日で受診先に迷うときは、各自治体の救急相談窓口や、必要に応じて119番通報を利用してください。

5.2. 症状に応じた診療科の選び方

  • まず相談しやすいのはかかりつけ医・内科:繰り返す動悸や軽い息切れなど、緊急性は高くないが気になる症状がある場合。
  • 循環器内科:心電図異常を指摘されたことがある、発作が頻回で生活に支障が出ている、カテーテルアブレーションなど専門的治療を相談したい場合。
  • 小児循環器科:子どもに発作性の動悸や失神がある、学校検診で不整脈を指摘された場合。
  • 救急外来:前述の危険なサインがあるとき、発作が長時間続き不安が強いとき。

5.3. 診察時に持参すると役立つものと費用の目安

  • 健康保険証・受給者証:日本の公的医療保険では、原則として自己負担は医療費の1〜3割です。検査内容によって費用は変わります。
  • お薬手帳:心臓に関係する薬だけでなく、市販薬・サプリメントも含め、服用しているものを医師が把握できるようにします。
  • 症状メモ・発作の記録:いつ・どこで・何をしているときに発作が起こったか、どのくらい続いたか、どういう感覚だったかをメモしておくと診断の助けになります。
  • スマートフォンの心拍記録や動画:発作時にスマートウォッチで記録した心拍数や、胸の動きを撮影した動画なども参考になる場合があります。

初診時には、診察料に加えて心電図検査や血液検査、胸部X線などが行われることが多く、自己負担は数千円〜1万円前後となるケースが一般的です。カテーテルアブレーションなどの専門的治療は入院や高度な設備が必要なため、別途費用がかかりますが、多くは健康保険の適用対象です。

よくある質問

Q1: 上室性頻拍と普通の動悸はどう違うのですか?

A1: 普通の動悸は「階段を上ったとき」や「緊張したとき」など原因がはっきりしており、徐々に脈が速くなって徐々におさまることが多いです。一方、上室性頻拍では、前触れなく突然脈がとても速くなり、ある瞬間にストンと元の脈に戻るという「ON/OFF」のような特徴がよく見られます。ただし、実際にどちらかを判断するには心電図が必要なため、気になる場合は医療機関で相談してください。

Q2: 上室性頻拍は命にかかわる病気なのでしょうか?

A2: 多くの発作性上室性頻拍は、健康な方にも起こりうるもので、すぐに命に直結するとは限りません。ただし、心臓の病気や心不全、高血圧、糖尿病などの持病がある方や高齢の方では、心機能に負担がかかりやすく、放置することで心不全の悪化や生活の質の低下につながる可能性があります。強い胸痛や息苦しさ、失神を伴う場合には、緊急性の高い状態が隠れていることもあるため、早めの受診が大切です。

Q3: 発作が起きたとき、自分でできる対処法はありますか?

A3: 医師から指導を受けたうえであれば、いきみ動作や深呼吸などの「迷走神経刺激」が発作を和らげるのに役立つ場合があります。ただし、自己流で強くいきみ過ぎると、血圧が下がってふらつきを起こすこともあります。まずは安静な姿勢をとり、可能であれば脈拍を測定しながら経過を観察し、症状が強い場合や長く続く場合は医療機関に連絡してください。

Q4: コーヒーやお酒は完全にやめなければいけませんか?

A4: 必ずしも全員が完全に禁止しなければならないわけではありませんが、「飲んだあとに決まって発作が起こる」「飲酒の翌日に動悸が強くなる」といった場合には、量やタイミングを見直すことが強く勧められます。少量であれば問題ない方もいるため、主治医と相談しながら、自分にとって無理のない範囲を探ることが大切です。

Q5: 上室性頻拍は運動しても大丈夫ですか?

A5: 軽〜中等度の有酸素運動(ウォーキングや軽いジョギングなど)は、心肺機能の維持やストレス軽減に役立ちますが、発作が頻繁な時期や診断がはっきりする前に激しい運動を行うのは勧められません。運動の可否や強度の目安は、不整脈のタイプや心機能、合併症の有無によって異なるため、必ず主治医と相談し、自分に合った運動計画を立てましょう。

Q6: カテーテルアブレーションを勧められました。怖い治療ではないですか?

A6: カテーテルアブレーションは、足の付け根などから細い管(カテーテル)を血管の中に通し、心臓の内部で不整脈の原因となる電気回路を焼灼(または冷凍)する治療です。発作性上室性頻拍では成功率が高く、再発も少ないとされていますが、血管合併症や心臓の刺激伝導系への影響など、少数ながらリスクもあります。入院期間や合併症の頻度など、具体的な数字は施設や症例によって異なるため、主治医から十分な説明を受け、不安な点は遠慮なく質問してください。

Q7: 子どもでも上室性頻拍になりますか?

A7: はい、上室性頻拍は小児にも見られる不整脈です。特に生まれつきの副伝導路がある場合や、先天性心疾患が背景にある場合には、乳児期から症状が出ることもあります。乳児が急に顔色不良になったり、ぐったりしてミルクを飲まなくなる、学童期や思春期の子どもが突然の動悸や胸痛・失神を訴える場合には、小児循環器専門医のいる医療機関での評価が重要です。

結論:この記事から持ち帰ってほしいこと

上室性頻拍は、「急に脈が速くなって急におさまる」タイプの不整脈の総称で、多くは命に直結するものではないものの、繰り返す発作により強い不安や生活の質の低下を招くことがあります。

カフェイン・アルコール・喫煙・睡眠不足・ストレスなど、日常生活の要因が発作の引き金になることもあれば、心臓の構造的な異常やホルモン・電解質の異常など、身体の内側の問題が背景にあることもあります。生活習慣の見直しとともに、必要に応じて心電図やホルター心電図、電気生理学的検査などを通じて原因を明らかにすることが大切です。

治療については、薬による心拍数コントロールや予防に加え、カテーテルアブレーションによる根治療法が選択肢となる場合もあります。どの治療法を選ぶかは、不整脈のタイプや年齢、基礎疾患、生活スタイルなどを踏まえて、主治医とよく相談しながら決めていきましょう。

「自分だけがこんな症状で悩んでいるのではないか」と感じてしまう方もいるかもしれませんが、上室性頻拍は決して珍しい病気ではなく、多くの人が適切な診断と治療によって日常生活を取り戻しています。不安を一人で抱え込まず、気になる症状があれば早めに医療機関に相談してみてください。

この記事の編集体制と情報の取り扱いについて

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参考文献

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  2. 日本循環器学会. 不整脈薬物治療ガイドライン(2020年改訂版). 2020年. https://www.j-circ.or.jp/cms/wp-content/uploads/2020/01/JCS2020_Ono.pdf(最終アクセス日:2025-11-26)

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