【冬の乾燥肌(皮脂欠乏症)】なぜ悪化する?原因と今日からできる対策ガイド
皮膚科疾患

【冬の乾燥肌(皮脂欠乏症)】なぜ悪化する?原因と今日からできる対策ガイド

冬になると、すねや腕が白い粉をふいたり、お風呂上がりに全身がかゆくて眠れなくなったりしませんか。毎年のことだからとあきらめている方もいれば、「年齢のせい」「体質だから仕方ない」と一人で悩んでいる方も少なくありません。

医学的には、こうした状態は単なる「乾燥肌」にとどまらず、皮膚のバリア機能が低下した「皮脂欠乏症(ひしけつぼうしょう)」や、その先に進んだ「皮脂欠乏性湿疹(ひしけつぼうせいしっしん)」と呼ばれる病気の一つとして扱われます。日本皮膚科学会のガイドラインでも、冬季に悪化しやすい皮脂欠乏症は放置せず、保湿や入浴方法の見直しで早めにケアすることがすすめられています1

本記事では、日本皮膚科学会の「皮脂欠乏症診療の手引き2021」や「アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2021」、アメリカ皮膚科学会(AAD)の乾燥肌対策ページ、さらに高齢者の乾燥肌に関する最新の国際的な研究などをもとに、冬の乾燥肌のメカニズムと対策をわかりやすく整理します1210

「お風呂は何度くらいがいいの?」「市販のボディローションと皮膚科でもらう保湿剤は何が違うの?」「高齢の家族がかゆみで眠れないとき、どこまで自宅でケアできるの?」といった具体的な疑問にもお答えしながら、今日から実践できるケアのポイントと、受診の目安を丁寧に解説していきます。

なお、本記事の情報はあくまで一般的な解説であり、個々の症状に対する診断や治療を直接行うものではありません。強い痛みや発熱、広範囲の赤みなど気になる症状がある場合は、自己判断で放置せず、早めに皮膚科などの医療機関に相談してください。

Japanese Health(JHO)編集部とこの記事の根拠について

Japanese Health(JHO)は、健康と美容に関する情報を提供するオンラインプラットフォームです。膨大な医学文献や公的ガイドラインを整理し、日常生活で活用しやすい形でお届けすることを目指しています。

本記事の内容は、日本皮膚科学会の「皮脂欠乏症診療の手引き2021」や「アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2021」、アメリカ皮膚科学会(AAD)の乾燥肌に関する解説ページ、乾燥肌(xerosis cutis)に関するシステマティックレビューや国際的な査読付き論文などの一次情報源に基づいて、JHO編集部がAIツールのサポートを受けつつ、最終的には人の目で一つひとつ確認しながら作成しています12410

  • 厚生労働省・自治体・公的研究機関:日本人向けの公式情報、統計資料などを優先して参照しています。
  • 国内外の医学会ガイドライン・査読付き論文:日本皮膚科学会やアメリカ皮膚科学会(AAD)、国際的な皮膚科学雑誌に掲載されたガイドライン・レビューを中心にエビデンスを整理しています145
  • 教育機関・医療機関・NPOによる一次資料:患者さん向けQ&Aやスキンケア指導資料など、日本の生活者に即した情報も参考にしています58

AIツールは、文献の要約や構成案作成の「アシスタント」として活用していますが、公開前には必ずJHO編集部が原著資料と照合し、重要な記述を一つひとつ確認しながら、事実関係・数値・URLの妥当性を検証しています。

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要点まとめ

  • 冬の乾燥肌は、気温・湿度の低下や暖房による空気の乾燥、お風呂の入り方などが重なって、皮膚のバリア機能が弱まり、水分が逃げやすくなることで悪化します19
  • 日本皮膚科学会のガイドラインでは、皮脂欠乏症(乾皮症)に対して「保湿剤(エモリエント)の外用」が治療の基本であり、入浴方法や生活習慣の見直しと組み合わせることが推奨されています1
  • 高齢者では、加齢による皮膚の変化や基礎疾患、薬の影響も重なり、乾燥肌の有病率が50%を超えるという報告もあり、かゆみや睡眠障害、転倒リスクなど生活の質への影響が大きいことが示されています6
  • お風呂の温度は38〜40℃程度に保ち、ナイロンタオルでゴシゴシこすらないこと、入浴後数分以内に保湿剤をたっぷり塗ること、室内の湿度を40〜60%程度に保つことがセルフケアの重要なポイントです2810
  • 強いかゆみで眠れない、皮膚が赤く腫れて痛い、ジュクジュク・膿・発熱を伴う場合、あるいは全身のかゆみが続く場合は、湿疹や感染症、内科的な病気が隠れていることもあるため、早めに皮膚科や内科で相談することが大切です13

第1部:冬の乾燥肌の基本と日常生活の見直し

まずは、冬になると肌が乾燥しやすくなる基本的な仕組みと、日常生活の中で乾燥を悪化させてしまう習慣について整理します。専門的な病気を疑う前に、「お風呂」「洗浄」「衣類」「室内環境」といった身近なポイントを見直すだけでも、症状が大きく改善することがあります。

1.1. 冬の乾燥肌はなぜ起こる?皮膚バリアとTEWLの仕組み

私たちの皮膚は、外側から「角質層(かくしつそう)」というごく薄い層で守られています。角質層には、レンガのように並んだ角化細胞と、それらをつなぎ合わせる脂質(セラミド、コレステロール、脂肪酸など)があり、外からの刺激を防ぎつつ、体内の水分が逃げないようにフタをする役割を担っています。この機能を、一般に「皮膚バリア機能」と呼びます14

皮膚から水分がどれくらい逃げているかを表す指標が「経表皮水分喪失(TEWL: transepidermal water loss)」です。冬の外気は気温が低く、空気中に含める水分量が少ないため、皮膚表面とのあいだに「水分の濃度差」が生じ、水蒸気が皮膚から空気へと逃げやすくなります。さらに、エアコンやファンヒーターなどの暖房は室内の空気を乾燥させ、長時間その空気にさらされることでTEWLが増加し、角質層の水分量が低下しやすくなります910

韓国で冬季の室内環境を再現して行われた実験では、湿度の低い部屋で6時間過ごしただけで、前腕部のTEWLが上昇し、皮膚の水分量が低下したことが報告されています9。日本でも冬は暖房の使用が増え、同様の環境になりやすいと考えられます。

年齢とともに皮膚の保湿成分である天然保湿因子(NMF)や角質細胞間脂質が減少し、汗腺・皮脂腺の働きも弱くなります。そのため、高齢者は若年者と比べてもともと乾燥しやすく、冬の環境変化による影響を強く受けやすい状態にあります67

日本皮膚科学会の「皮脂欠乏症診療の手引き」では、このような皮膚バリア機能の低下とTEWLの増加を背景として、「皮膚のツヤの消失、乾燥、粗造、粉をふいたような状態、細かいひび割れ、かゆみ」などが見られる状態を「皮脂欠乏症」と定義しています1

1.2. 冬に乾燥肌を悪化させるNG習慣とその理由

冬の乾燥肌を訴える方の生活をよく聞いてみると、共通して見られる習慣があります。ここでは代表的なNG習慣と、その理由、代わりにおすすめしたい行動を具体的に紹介します。

  • 42℃以上の熱いお風呂に長時間浸かる
    日本皮膚科学会と日本アレルギー学会が作成したアトピー性皮膚炎診療ガイドラインでは、入浴温度は38〜40℃程度が推奨されており、42℃以上の高温浴は皮脂や天然保湿因子を奪い、かゆみを増悪させる可能性があるとされています2。熱いお湯は一時的には「気持ちいい」と感じても、角質層の脂質を溶かしてしまうため、入浴後に突っ張り感やかゆみが強くなりやすくなります8
  • ナイロンタオルでゴシゴシこする
    ナイロンタオルや硬いボディブラシで強くこすると、汚れだけでなく角質層の一部も削り取ってしまいます。日本の皮膚科医や看護師によるスキンケア解説でも、「ナイロンタオルでゴシゴシ洗う」ことは乾燥肌や敏感肌を悪化させるNG習慣として繰り返し注意喚起されています58
  • 洗浄力の強すぎるボディソープ・石けんの使いすぎ
    「さっぱりしたい」と思って強い洗浄力の石けんやボディソープを毎日全身に使うと、皮脂や角質細胞間脂質が必要以上に洗い流されてしまいます。特に高齢者では皮脂分泌量自体が減少しているため、全身に毎日石けんを使う必要がない場合も多く、ワキ・陰部・足など汚れやすい部位だけを重点的に洗う方法が推奨されています110
  • 保湿剤を「かゆい時だけ少し塗る」
    保湿剤は、痛み止めの薬のように「つらい時だけ使うもの」ではありません。皮脂欠乏症や乾燥肌の基本的な治療・予防として、毎日継続的に使用することでバリア機能を整え、症状の再燃を防ぐことが目的です。日本皮膚科学会のガイドラインでも、症状が落ち着いた後も保湿を継続する「メンテナンス保湿」が推奨されています1
  • 暖房の風を直接当てる/室内が常にカラカラ
    エアコンやファンヒーターの温風が直接肌に当たると、その部分の水分がさらに奪われ、局所的な乾燥やかゆみを生じやすくなります。冬の室内環境に関する研究でも、湿度が低い環境ではTEWLが増加し、皮膚の水分量が低下することが示されています9

これらの習慣をすべて一度に変えるのは大変ですが、「お湯の温度を1〜2℃下げてみる」「ナイロンタオルをやめて手や柔らかいタオルで洗う」「入浴後5分以内に保湿剤を塗る」といった小さな一歩から始めるだけでも、数週間〜数か月のうちに肌の状態が変わってくることが期待できます。

表1:冬の乾燥肌セルフチェックリスト
こんな症状・状況はありませんか? 考えられる主な背景・原因カテゴリ
毎年冬になると、すねや腕が粉をふいたように白くなり、つっぱり感が気になる 皮脂欠乏症(乾皮症)、冬の低湿度・暖房によるバリア機能低下
お風呂上がりや寝る前に、特に足や腰回りがかゆくて眠れない 熱いお風呂・長風呂、入浴後の保湿不足、皮脂欠乏性湿疹の可能性
高齢の家族が「体中がかゆい」と言い、掻き壊して血がにじんでいる 高齢者の皮脂欠乏症、薬の影響、糖尿病や腎臓病などの基礎疾患
手洗いや消毒が多く、指先のひび割れやあかぎれが増えている 洗浄・アルコールによるバリア破壊、保湿不足、接触皮膚炎

第2部:身体の内部要因 — 年齢・病気・栄養バランスと冬の乾燥肌

生活習慣を見直してもなかなか改善しない場合、背景には年齢による変化やホルモンバランス、慢性的な疾患、薬の影響、栄養状態など「身体の内部要因」が関わっている可能性があります。ここでは、特に注意したいポイントを整理します。

2.1. 高齢者に多い乾燥肌とその特徴

高齢になると、皮脂や汗の分泌量が低下し、角質層の脂質量も減少します。その結果、皮膚が水分を保持しにくくなり、全身の乾燥やかゆみが生じやすくなります。高齢者を対象としたシステマティックレビューとメタアナリシスでは、xerosis cutis(乾燥肌・皮脂欠乏症)の有病率が約53%と報告されており、特に施設入所高齢者で高いことが示されています6

日本皮膚科学会の資料や日本の皮膚科医による解説でも、「冬は高齢者の皮脂欠乏症が増える季節」として、入浴方法と保湿指導の重要性が繰り返し強調されています14。高齢者では、かゆみのために夜間に何度も目が覚めてしまい、日中の眠気や転倒リスクの増加、皮膚の掻き壊しからの感染症など、生活の質(QOL)への影響も大きくなりがちです6

2.2. アトピー素因・ホルモンバランス・遺伝的な体質

アトピー性皮膚炎(AD)のある方や、もともと敏感肌・乾燥肌になりやすい体質の方は、角質層のバリア機能が生まれつき弱いことが知られています。アトピー性皮膚炎診療ガイドラインでは、アトピー性皮膚炎の基本的な治療として、炎症を抑える外用薬と並び、毎日の保湿療法が位置づけられています2

また、女性では、妊娠・出産・更年期などライフステージに伴うホルモン変動により、皮脂分泌や皮膚の水分量が変化し、一時的に乾燥しやすくなることがあります。特に冬場は環境要因と重なって症状が悪化しやすいため、季節に応じてスキンケアの強度を調整することが大切です3

2.3. 内科疾患・薬剤による乾燥肌

全身のかゆみや乾燥肌が長く続く場合、皮膚だけでなく体の内側に原因が隠れていることもあります。代表的なものとして、糖尿病、慢性腎臓病、甲状腺機能低下症、肝胆道系疾患、栄養不良、悪性リンパ腫などが挙げられます37

また、利尿薬、一部の降圧薬、脂質異常症治療薬、向精神薬、ビタミンA誘導体(レチノイド)などの薬剤が乾燥肌を引き起こすことも知られています3。高齢の方で多剤服用がある場合、「薬を飲み始めてから特にかゆくなった」などの変化がないかを振り返り、かかりつけ医に相談するとよいでしょう。

2.4. 栄養・水分摂取と乾燥肌の関係

水分や栄養状態が極端に不足していると、皮膚にも影響が及びます。ただし、「水をたくさん飲めば乾燥肌が治る」という単純なものではなく、バランスの良い食事と適切な水分摂取、アルコール・喫煙のコントロールが重要です。

乾燥肌に直接効くと断定できる特定のサプリメントについては、現時点で十分なエビデンスは限られており、オメガ3脂肪酸やビタミンDなどについても、効果が期待できる可能性はあるものの研究結果はまだ一貫していません4。そのため、まずは主食・主菜・副菜をそろえた食事、適度な良質の脂質(青魚、ナッツ、オリーブオイルなど)、ビタミンA・E・Dを含む食品をバランスよくとることを優先しましょう。

第3部:専門的な診断が必要な皮膚疾患・全身疾患

セルフケアや生活習慣の見直しだけでは改善しない場合や、赤み・ジュクジュク・発熱などの症状を伴う場合は、専門的な診断が必要な皮膚疾患や全身疾患が背景にあるかどうかを確認する段階です。ここでは代表的な疾患と、受診を検討すべきサインを解説します。

3.1. 皮脂欠乏性湿疹・アトピー性皮膚炎などの湿疹

乾燥肌が進行すると、「皮脂欠乏性湿疹」と呼ばれる状態になることがあります。これは、乾燥した皮膚に細かいひび割れ(「陶器のヒビ」のような模様)が入り、赤みやかゆみが強くなる湿疹の一種です。日本皮膚科学会のガイドラインでは、皮脂欠乏症の治療で最も重要なのは保湿療法ですが、湿疹を伴う場合にはステロイド外用薬などの抗炎症治療を併用することが推奨されています1

また、もともとアトピー性皮膚炎がある方では、冬に乾燥が強まることで症状が悪化しやすくなります。アトピー性皮膚炎診療ガイドラインでは、炎症のコントロール(外用ステロイド・タクロリムスなど)と並行して、全身の保湿を毎日続けることが症状の安定化に重要とされています2

3.2. 乾癬・接触皮膚炎・薬疹など他の皮膚疾患

乾燥肌と思っていたら、実際には乾癬(かんせん)や接触皮膚炎、薬疹など別の皮膚疾患だったというケースもあります。乾癬では、厚みのある銀白色の鱗屑(りんせつ)がついた赤い盛り上がり(紅斑)が肘や膝、頭皮などに現れます。接触皮膚炎(かぶれ)は、特定の化粧品や金属、ゴム、薬剤などが触れた部分に、赤み・水ぶくれ・かゆみが出るのが特徴です311

自己判断が難しい場合は、皮膚科で問診・視診・必要に応じてパッチテストなどの検査を受けることで、原因物質の特定や適切な治療方針の決定が可能になります。

3.3. 全身のかゆみと内科的な病気

乾燥肌と同時に、体重減少や発熱、だるさ、夜間の寝汗、黄疸(皮膚や目が黄色くなる)、尿量の変化などが見られる場合は、肝臓・腎臓・血液・内分泌などの病気が隠れている可能性があります3。特に、以下のような場合は早めに内科を受診してください。

  • 全身の強いかゆみが数週間以上続き、保湿や入浴の工夫をしてもほとんど改善しない
  • かゆみと同時に、発熱・原因不明の体重減少・リンパ節の腫れなどがある
  • 尿が泡立つ、むくみが強い、息切れがひどいなど腎臓病を疑う症状がある
  • 皮膚や白目が黄色くなってきた、濃い色の尿が続くなど肝胆道系疾患を疑う症状がある

乾燥肌をきっかけに、思わぬ全身疾患が見つかることもあります。「年齢のせい」「乾燥する季節だから仕方ない」と決めつけず、気になる全身症状がある場合は早めに医療機関を受診しましょう。

第4部:今日から始める冬の乾燥肌アクションプラン

原因が何であれ、「今この瞬間からできること」「今週から試せること」「長期的に続けたいこと」を整理すると、行動に移しやすくなります。ここでは、レベル別のアクションプランを紹介します。

表2:冬の乾燥肌 改善アクションプラン
ステップ アクション 具体例
Level 1:今夜からできること 入浴方法と保湿のタイミングを変える お湯の温度を38〜40℃に設定し、入浴時間を5〜10分程度にする。ナイロンタオルをやめて手や柔らかいタオルで洗う。お風呂上がり、タオルで軽く押さえるように水気をとったら、3〜5分以内に全身に保湿剤をたっぷり塗る2810
Level 2:今週から始めること 保湿剤と洗浄剤を見直す・室内環境を整える 顔と体でそれぞれ自分の肌質に合った保湿剤(クリーム・ローション・軟膏など)を選び、1日1〜2回必ず塗る時間を決める。洗浄力の強すぎるボディソープをやめ、低刺激タイプに切り替える。加湿器や洗濯物の室内干しなどで湿度40〜60%を目標にする459
Level 3:今月から意識したいこと 長期的なスキンケアルーティンと受診の検討 数週間続けても改善が乏しい場合は、症状の写真や保湿・入浴の記録をつけて皮膚科を受診する。高齢の家族がいる場合は、一緒に保湿を行う時間を設けたり、塗りやすいポンプ式ボトルを用意するなど、続けやすい仕組みを整える。全身のかゆみや全身症状がある場合は内科受診も検討する16

保湿剤の成分については、ワセリン(白色ワセリン)、グリセリン、尿素、セラミド、ヒアルロン酸など、さまざまなタイプがあります。国際的なレビューでは、保湿剤(エモリエント)療法がxerosis cutisの管理における「柱」として位置づけられており、クリーム・ローション・軟膏のベースや、保湿成分の組み合わせを個々の肌状態に合わせて選択することが重要とされています456

一方で、全ての成分がすべての人に合うわけではなく、防腐剤や香料、プロピレングリコール、ラノリンなど、一部の成分に対して接触皮膚炎(かぶれ)を起こすケースも報告されています11。新しい製品を試すときは、最初は少量を腕の内側などに塗って様子を見る、強い赤みやかゆみが出た場合は使用を中止し、必要に応じて皮膚科で相談するようにしましょう。

第5部:医療機関への相談 — いつ・どこで・どのように?

冬の乾燥肌はセルフケアで改善することも多い一方で、湿疹や感染症、内科的な病気が隠れているケースもあります。ここでは、受診を検討すべきサインと、医療機関の選び方、診察時に役立つポイントをまとめます。

5.1. 受診を検討すべき危険なサイン

  • 皮膚が赤く腫れて熱を持ち、触ると強い痛みがある
  • 水ぶくれや膿、黄色いかさぶたが広がっている
  • 発熱、悪寒、だるさなど全身症状を伴う
  • かゆみでほとんど眠れない状態が続き、日常生活に支障が出ている
  • 乾燥だけでなく、原因不明の体重減少や食欲低下、リンパ節の腫れ、黄疸などの症状がある

これらの症状がある場合は、早めに皮膚科や内科を受診してください。急速に悪化している、広範囲の赤みと発熱がある、意識がもうろうとするなどの緊急性が疑われる場合は、迷わず119番通報や救急受診を検討しましょう。

5.2. 症状に応じた診療科の選び方

  • 主に皮膚の乾燥・かゆみ・湿疹が気になる場合:まずは皮膚科の受診が基本です。皮脂欠乏症かどうか、他の皮膚疾患が隠れていないかを確認し、保湿剤や外用薬の選び方を相談できます12
  • 全身のかゆみ+内科的な症状がある場合:内科(必要に応じて腎臓内科・肝臓内科・血液内科など)で、血液検査や超音波検査などを含めた全身のチェックを受けます3
  • どの診療科に行けばよいか迷う場合:まずはかかりつけの内科や総合診療科で相談し、必要に応じて皮膚科や専門診療科を紹介してもらう方法もあります。

5.3. 診察時に持参すると役立つものとポイント

  • 現在使用している保湿剤・外用薬・内服薬のリスト
    市販薬やサプリメントも含めて、できるだけ正確に医師に伝えましょう。
  • 症状の写真や経過メモ
    「いつ頃から」「どの部位に」「どのようなタイミングで」かゆみや乾燥が強くなるのかをメモしておくと、診断の助けになります。
  • 入浴・スキンケア・生活習慣に関するメモ
    お風呂の温度や時間、使用している洗浄剤、保湿剤の種類と使用回数、仕事や生活環境(暖房の種類など)を簡単にまとめておくと、原因の絞り込みに役立ちます。
  • 高齢の方やお子さんの場合
    ご本人がうまく症状を説明できないこともあるため、家族や介護者が一緒に受診し、普段の様子や困りごとを医師に伝えるとよいでしょう。

日本では健康保険制度により、多くの皮膚科診療は保険診療として受けられます。費用は症状や検査内容によって異なりますが、「まずは相談してみる」ことで、自己流のケアでは気づかなかった原因や治療の選択肢が見えてくることも少なくありません。

よくある質問

Q1: 冬になると毎年すねや腕が粉をふいてかゆくなります。これは病気ですか?

A1: 毎年冬になると同じ部位がカサカサ・粉ふき・かゆみを繰り返す場合、医学的には「皮脂欠乏症(乾皮症)」や、その一歩手前の乾燥肌の状態になっている可能性があります1。特に、すねの前面や腰回り、腕の外側などは乾燥しやすく、冬季に症状が目立ちやすい部位です。

放置すると「皮脂欠乏性湿疹」と呼ばれる湿疹に進行し、赤みや強いかゆみ、ひび割れからの痛み・出血が出ることもあります1。まずはこの記事の第1部・第4部を参考に、入浴方法や保湿ケアを見直してみてください。それでも改善しない場合や、赤み・ジュクジュク・痛みを伴う場合は、皮膚科での相談をおすすめします。

Q2: 42℃以上の熱いお風呂が好きですが、乾燥肌にはよくないのでしょうか?

A2: 日本皮膚科学会と日本アレルギー学会がまとめたアトピー性皮膚炎診療ガイドラインでは、入浴温度は38〜40℃程度が推奨されており、42℃以上の高温浴は皮脂や天然保湿因子を奪い、かゆみを悪化させる可能性があるとされています2

熱いお湯は一時的にはリラックスできても、入浴後に「つっぱる」「かゆい」と感じる方が多く、結果として保湿剤をたくさん塗らないといけなくなります。どうしても熱いお湯が好きな場合は、肩まで長時間浸かるのではなく、短時間の半身浴にする、週のうち何日かは38〜40℃に下げてみるなど、少しずつ調整してみるとよいでしょう8

Q3: 保湿クリームはいつ・どのくらい塗ればいいのか分かりません。1日1回でも効果はありますか?

A3: 日本皮膚科学会のガイドラインや国際的なレビューでは、乾燥肌や皮脂欠乏症のケアとして「毎日継続して保湿剤を使用すること」が推奨されています14。特に効果的なのは、お風呂やシャワーの後、皮膚がまだ少し湿っているうちに全身にたっぷりと塗ることです。

1日1回だけでも「塗らないよりはずっと良い」のですが、かゆみが強い時期や乾燥の強い部位(すね・腰回り・手足など)は、朝と夜の2回塗るとさらに効果が期待できます5。指先の第一関節分の長さに出した軟膏を広げる「フィンガーチップユニット(FTU)」という目安もありますが、日常生活では「皮膚がうっすらテカる程度」を目標に、ケチらず使うことを意識してみてください。

Q4: 市販のボディローションと皮膚科でもらう保湿剤(ヘパリン類似物質など)は何が違いますか?

A4: 日本の薬機法では、スキンケア製品は大きく「化粧品」「医薬部外品」「医薬品」に分けられます。市販のボディローションやクリームの多くは「化粧品」または「医薬部外品」に分類され、主に「肌をすこやかに保つ」「うるおいを与える」といった目的で作られています。一方、ヘパリン類似物質外用剤や尿素外用剤、白色ワセリンなど、医療機関で処方される保湿剤の一部は「医薬品」として位置づけられ、皮脂欠乏症などの治療を目的として使用されます15

どちらが「絶対に優れている」というわけではなく、症状の程度や部位、使いやすさ、好みのテクスチャーなども含めて選ぶことが大切です。市販品で十分に保湿できている方もいれば、炎症を伴う場合や高齢者の重い乾燥では医療用保湿剤の方が適している場合もあります。迷う場合は、現在使っている製品を持参して皮膚科で相談するのがおすすめです。

Q5: 乾燥肌のせいでかゆくて眠れません。市販薬だけで対処しても大丈夫ですか?

A5: かゆみのために眠れない状態が続くと、日中の集中力低下やイライラ、転倒リスクの増加など、生活の質への影響が大きくなります6。保湿剤や市販のかゆみ止めで一時的に軽くなることもありますが、「睡眠に支障が出るほどのかゆみ」が数日〜数週間続く場合は、自己判断に頼らず皮膚科を受診することをおすすめします。

皮脂欠乏性湿疹がある場合は、外用ステロイドなどの抗炎症治療が必要になることもあり、適切な強さ・塗り方を医師と相談しながら進めることが大切です12。また、全身のかゆみと発熱・体重減少などの全身症状を伴う場合は、内科的な病気が隠れていないかのチェックも必要です。

Q6: 高齢の親が全身の乾燥とかゆみに悩んでいます。転倒や皮膚の傷にも関係がありますか?

A6: 高齢者の乾燥肌(xerosis cutis)は非常に一般的で、システマティックレビューでは有病率が約53%と報告されており、皮膚のひび割れや掻き壊しから「スキンテア(皮膚裂傷)」や感染症につながるリスクが指摘されています6。足裏やかかとのひび割れが痛くて歩きづらくなり、その結果として転倒しやすくなるケースもあります。

毎日の保湿ケアは、高齢者のQOLを守る意味でも非常に重要です。本人だけでケアするのが難しい場合は、家族や介護スタッフが「塗りやすいポンプ式の保湿剤を用意する」「入浴後の決まった時間に一緒に保湿する」など、習慣化しやすい工夫を取り入れてみてください16

Q7: 冬でも日焼け止めを塗ったほうがいいですか?乾燥肌が悪化しないか心配です。

A7: 冬でもUVA(長波長紫外線)は地表に届いており、くもりの日や室内の窓越しでも皮膚に影響を与えることが知られています10。一方で、日焼け止めの成分やクレンジング方法によっては乾燥や刺激を感じる方もいます。

乾燥肌の方が冬に日焼け止めを使う場合は、「保湿成分を含んだクリームタイプ」の日焼け止めを選び、まずはしっかり保湿剤を塗ってから、その上に日焼け止めを重ねる方法がおすすめです5。石けんで落とせるタイプを選ぶと、クレンジングによる負担も軽減できます。顔以外の部分については、外出時間や露出部位に応じて、帽子やマフラーなど物理的な紫外線対策も組み合わせるとよいでしょう。

結論:この記事から持ち帰ってほしいこと

冬の乾燥肌は、「年齢のせい」「体質だから」とあきらめてしまいがちですが、その多くは皮膚のバリア機能が環境や生活習慣によって一時的に弱っている状態です。お風呂の温度や時間、洗い方、保湿のタイミング、室内の湿度といった身近なポイントを少し変えるだけで、症状が大きく改善することも少なくありません1210

一方で、高齢者の重い乾燥や、強いかゆみで眠れない状態、赤み・ジュクジュク・発熱を伴う場合、全身のかゆみと内科的な症状を伴う場合などは、皮脂欠乏性湿疹や他の皮膚疾患、全身疾患が隠れている可能性があります。そのようなときは、「もう少し様子を見よう」と先延ばしにせず、皮膚科や内科で専門家に相談することが大切です36

Japanese Health(JHO)編集部は、厚生労働省や日本の専門学会、世界の公的機関が公開している信頼できる情報をもとに、日本に暮らす方々が自分の体と向き合うための手がかりを提供したいと考えています。この記事が、冬の乾燥肌に悩むあなたやご家族にとって、「自分でできること」と「専門家に頼るべきタイミング」を考える一助となれば幸いです。

この記事の編集体制と情報の取り扱いについて

Japanese Health(JHO)は、信頼できる公的情報源と査読付き研究に基づいて、健康・医療・美容に関する情報をわかりやすくお届けすることを目指しています。本記事では、日本皮膚科学会やアメリカ皮膚科学会(AAD)などの専門学会のガイドラインや解説、国際的な皮膚科学雑誌に掲載されたレビュー論文、各国の公的機関による資料をもとに、冬の乾燥肌(皮脂欠乏症)に関する情報を整理しました1410

本記事の原稿は、最新のAI技術を活用して下調べと構成案を作成したうえで、JHO編集部が一次資料(ガイドライン・論文・公的サイトなど)と照合しながら、内容・表現・数値・URLの妥当性を人の目で一つひとつ確認しています。最終的な掲載判断はすべてJHO編集部が行っています。

ただし、本サイトの情報はあくまで一般的な情報提供を目的としており、個々の症状に対する診断や治療の決定を直接行うものではありません。気になる症状がある場合や、治療の変更を検討される際は、必ず医師などの医療専門家にご相談ください。

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免責事項 本記事は情報提供のみを目的としており、専門的な医学的助言や診断、治療に代わるものではありません。健康上の懸念がある場合や、治療内容の変更・中止等を検討される際には、必ず資格のある医療専門家にご相談ください。

参考文献

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  2. 日本皮膚科学会・日本アレルギー学会. アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2021. 日皮会誌131(13):2691–2777, 2021.

  3. StatPearls Publishing. Xeroderma (Xerosis Cutis). StatPearls [Internet], 2023.

  4. Blume‐Peytavi U, et al. Clinical benefits of basic emollient therapy for the management of xerosis cutis and diseases associated with dry skin. Int J Dermatol. 2025.

  5. Proksch E, et al. Optimization of basic emollient therapy for the management of xerosis cutis. Int J Dermatol. 2025.

  6. Yoon JY, et al. The prevalence and interventions of xerosis cutis among older adults: A systematic review and meta-analysis. Geriatr Nurs. 2023; PMID:37844538.

  7. Lodén M, et al. Xerosis and aging: Clinical and pathophysiological aspects. 2025 review.

  8. 望月ら. 乾燥肌の方に知ってほしい入浴時のポイントと入浴後のスキンケア. 持田製薬, 2023.

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  10. American Academy of Dermatology. Dry skin: Tips for managing. AAD.org, 2013–2023.

  11. 独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA). 重篤副作用疾患別対応マニュアル:薬剤による接触皮膚炎など. 2006–2020.

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