【医師・管理栄養士監修】妊娠中のいちごは食べていい？科学的根拠に基づくメリット・注意点の完全ガイド

第1章：お母さんと赤ちゃんに嬉しい！いちごが持つ5つの主要な健康効果

いちごは、その愛らしい見た目と甘酸っぱい味だけでなく、妊娠中に特に重要となる栄養素の宝庫です。ここでは、科学的根拠に基づいたいちごの5つの主要な健康効果を詳しく見ていきましょう。

1.1. 胎児の神経管閉鎖障害の危険性を低減する「葉酸」

妊娠、特にその初期段階において最も重要視される栄養素の一つが「葉酸」です。葉酸はビタミンB群の一種で、細胞の分裂や成長、そして赤血球の形成に不可欠な役割を担います⁴。

葉酸の決定的な役割

妊娠のごく初期、受胎後約28日目までには、赤ちゃんの脳や脊髄の基礎となる「神経管」が形成されます。この極めて重要な時期に母体の葉酸が不足すると、神経管が正常に閉じずに「神経管閉鎖障害」と呼ばれる先天性異常の危険性が高まることが、多くの研究で明らかにされています²⁷。代表的な神経管閉鎖障害には、二分脊椎や無脳症などがあり、受胎前後の十分な葉酸摂取によってその危険性を50～70%低減できると報告されています²⁸。

いちごは葉酸の優れた供給源

果物の中でも、いちごは葉酸を豊富に含むことで知られています。文部科学省の「日本食品標準成分表」によると、生のいちごには100gあたり90μgの葉酸が含まれています⁴¹⁰。これは中くらいの大きさのいちご約5～7粒に相当し、手軽に美味しく葉酸を補給できる優れた食品と言えます⁶。また、葉酸は水溶性で熱に弱い性質を持つため、加熱せずに生で食べられるいちごは、栄養素を効率的に摂取する上で非常に合理的です⁶。

食事からの葉酸とサプリメントの重要性

ここで一つ、非常に重要な点があります。いちごは素晴らしい葉酸源ですが、妊娠中に推奨される葉酸量をいちごだけで満たすことは現実的ではありません¹²。その理由は、食品に含まれる「食事性葉酸（ポリグルタミン酸型）」と、サプリメントに含まれる「モノグルタミン酸型葉酸」の体内での利用効率の違いにあります。一般的に、サプリメントの葉酸の方が生体利用率が高いとされています²。 厚生労働省や日本産科婦人科学会は、神経管閉鎖障害の危険性を低減するため、妊娠を計画している女性から妊娠初期の女性に対し、通常の食事に加えて、サプリメントなどから1日あたり400μgのモノグルタミン酸型葉酸を摂取することを推奨しています¹²³。この400μgをいちごだけで摂取しようとすると、1日に約440g、中粒で約30個以上ものいちごを毎日食べ続ける必要があり、経済的にも身体的にも負担が大きくなります¹²¹³。 したがって、最も賢明な取り組み方は、ほうれん草やブロッコリーなどの緑黄色野菜やいちごといった葉酸を多く含む食品を積極的に食事に取り入れつつ、推奨されている葉酸サプリメントを併用することです。いちごは、このバランスの取れた戦略における美味しく、楽しい一部として大きな役割を果たしてくれます。

1.2. 免疫力を高め、鉄分の吸収を助ける「ビタミンC」

妊娠中は、ホルモンバランスの変化などにより、母体の免疫機能が通常とは異なる状態になります。そのため、感染症などに対する抵抗力を維持することが大切です。ここで活躍するのが「ビタミンC」です。

「ビタミンの王様」としての力

いちごは「ビタミンの王様」とも呼ばれるほどビタミンCが豊富で、その含有量は100gあたり62mgに達します⁴。これは、みかんやグレープフルーツの約2倍に相当する量です¹⁶。ビタミンCは、白血球などの免疫細胞の働きを活性化させ、風邪などのウイルスから体を守る防壁機能を強化するのに役立ちます⁵。

妊娠性貧血の予防を支援

ビタミンCのもう一つの重要な役割は、鉄分の吸収を促進することです¹⁶。妊娠中は、胎児への血液供給や分娩時の出血に備えるため、血液量が大幅に増加します。それに伴い鉄の需要も高まり、「妊娠性貧血」になりやすくなります¹⁴。鉄分には、肉や魚に含まれる「ヘム鉄」と、野菜や果物、豆類に含まれる「非ヘム鉄」の2種類があります。ヘム鉄に比べて非ヘム鉄は体に吸収されにくいという特徴がありますが、ビタミンCと一緒に摂取することで、その吸収率が格段に向上します¹⁴¹⁵。興味深いことに、いちご自体にも少量の非ヘム鉄が含まれています¹⁷。つまり、いちごを食べることは、ビタミンCを摂取するだけでなく、いちご自身に含まれる鉄分、さらには一緒に食べた他の食品（例えば、ほうれん草のサラダや納豆など）に含まれる鉄分の吸収をも助けるという、非常に効率的な栄養摂取法なのです¹⁶¹⁸。妊娠中のビタミンCの推奨摂取量は1日あたり110mgです⁹。いちごを約180g（中粒で約12粒）食べれば、この推奨量をほぼ満たすことが可能です。

1.3. 妊娠中の便秘と血糖値管理を支援する「食物繊維」

妊娠中の多くの女性が悩まされるのが便秘です。これは、ホルモンの影響で腸の動きが鈍くなったり、大きくなった子宮が腸を圧迫したりすることが原因です。この不快な症状の緩和に役立つのが「食物繊維」です。

2種類の食物繊維の組み合わせ

いちごには、「水溶性食物繊維」のペクチンと「不溶性食物繊維」の両方がバランス良く含まれています¹⁶。

• 水溶性食物繊維（ペクチン）: 水に溶けてゲル状になり、便を柔らかくして排出しやすくします。また、腸内の善玉菌の餌となり腸内環境を整える効果もあります⁵。
• 不溶性食物繊維: 水分を吸収して便のかさを増やし、腸を刺激して蠕動（ぜんどう）運動を活発にします¹⁷。

この2種類の食物繊維の相乗効果により、いちごは妊娠中の便秘解消の強い味方となってくれます¹⁶。

血糖値の急上昇を穏やかに

さらに、水溶性食物繊維のペクチンには、糖質の吸収を穏やかにし、食後の血糖値の急激な上昇を抑える働きがあります⁵。これは、果物に含まれる糖分（果糖）の摂取を懸念する上で非常に重要な点です。いちご自体の組成が、糖による危険性をある程度緩和する仕組みを持っているのです。この点は、後の章で解説する「妊娠糖尿病」の危険性管理にも繋がります。

1.4. むくみ対策に役立つ「カリウム」

妊娠中期から後期にかけて、多くの妊婦さんが手足の「むくみ（浮腫）」を経験します。これは体内の水分均衡の変化や、塩分の摂りすぎが原因の一つとされています。カリウムは、体内の余分なナトリウム（塩分の主成分）を尿として排出する働きを持つ無機質です¹⁶。これにより、体内の水分均衡が調整され、むくみの軽減や、妊娠高血圧症候群の予防にも繋がる効果が期待できます⁵。生のいちごには100gあたり170mgのカリウムが含まれており¹⁰、塩分を控えた食事とともに、デザートとしていちごを取り入れることは、むくみ対策として有効です。

1.5. 母体を酸化ストレスから守る「抗酸化物質」

私たちの体は、呼吸によって取り込んだ酸素を利用する過程で「活性酸素」を生成します。適度な活性酸素は体を守る働きをしますが、過剰になると細胞を傷つけ、老化や生活習慣病の原因となる「酸化ストレス」を引き起こします。妊娠中は母体にも様々なストレスがかかるため、この酸化ストレスから体を守ることが健康維持に繋がります。いちごは、その鮮やかな赤色の源である「アントシアニン」をはじめ、タンニンなどのポリフェノール類を豊富に含んでいます⁴。これらは強力な抗酸化作用を持つ成分です。近年、この抗酸化作用に関する注目すべき科学的知見が報告されています。2023年に学術誌『Journal of Nutritional Science』に掲載されたランダム化比較試験では、健康な若い女性がいちご500g相当のピューレ飲料を摂取したところ、血中のビタミンCと葉酸濃度が有意に上昇しただけでなく、わずか1時間後にはLDL（悪玉）コレステロールの酸化が抑制されることが示されました¹⁹²⁰。これは、いちごの摂取が、体内の抗酸化能力を迅速に高める可能性を示唆する、非常に価値のある証拠です。

第2章：安全に楽しむために知っておきたい危険性と注意点

いちごは栄養豊富な一方で、妊娠中に食べる際にはいくつかの注意点があります。これらを正しく理解し、適切な対策を講じることで、危険性を最小限に抑え、安心してその恩恵を享受することができます。ここでは、過剰な心配をせず、冷静かつ建設的な視点で危険性管理を行うための知識を提供します。

2.1. 「食べ過ぎ」による体重増加と妊娠糖尿病の危険性

いちごの最大の魅力である甘さは、果糖やブドウ糖といった糖質によるものです。これらは天然の糖分ですが、一度に大量に摂取すると血糖値を急上昇させる可能性があります⁹。

妊娠糖尿病との関連

妊娠中は、胎盤から分泌されるホルモンの影響で、血糖値を下げるインスリンの働きが弱まりやすい状態にあります（インスリン抵抗性）。この状態で糖質を過剰に摂取し、血糖値が高い状態が続くと、膵臓に負担がかかり、血糖制御がうまくいかなくなることがあります。これが「妊娠糖尿病」です。日本の妊婦さんの約7～9%が妊娠糖尿病と診断されています²²。妊娠糖尿病は、母体においては妊娠高血圧症候群や難産のリスクを高め、赤ちゃんにおいては巨大児や出生後の低血糖などの合併症を引き起こす可能性があります²²。

解決策は「適量」を守ること

この危険性を避けるための最も単純で効果的な方法は、「食べ過ぎない」ことです。厚生労働省と農林水産省が策定した「食事バランスガイド」では、1日の果物の摂取目安量を約200g（2つ＝2SV）としています²³。これをいちごに換算すると、中くらいの大きさ（1粒約15g）で約13粒となります¹⁶。この量を目安に、他の果物との均衡を考えながら楽しむことが重要です。

2.2. 残留農薬と食中毒：正しい知識と洗浄方法

多くの妊婦さんが果物を食べる際に気になるのが、残留農薬と食中毒の危険性です。これらについて、正確な情報と具体的な対策を解説します。

残留農薬について

海外の一部の報告で、いちごが残留農薬の多い果物として挙げられることがあり、不安に感じる方もいらっしゃるかもしれません²⁴。

日本の厳格な安全基準

まず知っておくべきは、日本国内で流通している農産物は、食品衛生法に基づき厳格な基準で管理されているという事実です。厚生労働省は、すべての農薬について「残留農薬基準値」を設定しており、これは食品安全委員会による科学的な危険性評価に基づいています²⁵。この基準は、人が一生涯毎日摂取し続けても健康に影響がないとされる量（一日摂取許容量：ADI）を十分に下回るように設定されており²⁶、基準値を超えた食品の販売は禁止されています²⁵。したがって、国内で正規に販売されているいちごは、安全性が確保されています。

海外での検出事例の背景

2022年頃、日本から台湾へ輸出されたいちごの一部が、残留農薬基準値を超えているとして不合格になる事例が報道されました²⁷。これは不安を煽る報道に聞こえるかもしれませんが、背景を理解することが重要です。この問題の核心は、国によって農薬の使用基準や残留基準値が異なる点にあります。例えば、日本ではいちごへの使用が認められている農薬「フロニカミド」や「クロルフェナピル」が、台湾ではいちごへの使用が登録されておらず、基準値が「不検出」または極めて低い「0.01ppm」に設定されていました²⁸²⁹。そのため、日本の国内基準では全く問題のないレベルの微量な残留であっても、台湾の基準では不合格となってしまったのです。これは、日本のいちごが危険であるという意味ではなく、輸出入における規制の違いに起因する問題です。この事例から私たちが学ぶべきは、恐慌に陥ることではなく、どのような食品であっても「正しく洗う」という基本的な衛生管理を徹底することの重要性です。

食中毒の危険性（リステリア菌・トキソプラズマ）

妊娠中の女性にとって、残留農薬以上に注意すべきは、食中毒を引き起こす細菌や原虫です。妊娠中は免疫機能が変化するため、通常よりも食中毒菌に感染しやすくなります³⁰。

• リステリア菌: 冷蔵庫内のような低温環境でも増殖できる厄介な細菌です。加熱不十分な肉や魚、ナチュラルチーズなどが感染源として知られていますが、土壌にも存在するため、果物や野菜も汚染される可能性があります。リステリア菌に感染すると、胎盤を通じて赤ちゃんにも影響が及び、早産や流産の原因となることがあります¹⁴。
• トキソプラズマ: 猫の糞や土の中にいる原虫で、生肉や洗浄が不十分な野菜・果物を介して感染します。妊娠中に初めて感染すると、赤ちゃんに先天性トキソプラズマ症を引き起こす可能性があります³¹。

統一された解決策：「正しい洗浄」

残留農薬と食中毒、この二つの異なる危険性に対する最も効果的で統一された解決策は、食べる前にいちごを正しく洗浄することです⁹。農林水産省も食中毒予防の三原則として「つけない・増やさない・やっつける」を掲げており³³、洗浄はその第一歩として極めて重要です³²。具体的な洗浄方法は第3章で詳しく解説します。

2.3. いちごアレルギーに関する注意

いちごは、食物アレルギーの原因となることがある果物の一つです（特定原材料に準ずる21品目に含まれます）。もし、妊婦さんご自身がいちごアレルギーをお持ちの場合は、摂取を避ける必要があります。一方で、「妊娠中に母親が特定の食物を避けることで、生まれてくる赤ちゃんのアレルギーを予防できる」という考え方がありますが、これには注意が必要です。現在の医学的知見では、母親がアレルギーではない食品を予防的に除去しても、赤ちゃんの食物アレルギー発症を予防できるという科学的根拠は確立されていません¹¹。むしろ、過度な食事制限は母体の栄養均衡を崩し、かえって健康を損なう可能性があります。ご自身にアレルギーがない限り、特定の食品を過度に避けるのではなく、様々な食品を均衡良く摂ることが推奨されます。

2.4. 伝統的に言われる「体の冷え」について

東洋医学的な考え方では、いちごやスイカなどの果物は「体を冷やす」性質があるとされ、妊娠中の「冷え」は避けるべき、という話を聞いたことがあるかもしれません¹⁶。現代栄養学の観点からは、常温のいちごを適量食べたからといって、体の中心体温が危険なレベルまで下がることはありません。この「冷え」の感覚は、いちごが約90%を水分で占めることに関係していると考えられます¹⁷。もちろん、冷蔵庫で冷やしたものを大量に食べたり、氷をたくさん入れたスムージーを一気に飲んだりすれば、一時的に体が冷たく感じることはあるでしょう。過度に心配する必要はありませんが、もし冷えが気になる場合は、常温に戻してから食べる、温かい飲み物と一緒に摂るなどの工夫をすると良いでしょう。何事も均衡と節度が大切です。

第3章：【実践手引】妊娠中のいちご、いつ・どれだけ・どう食べるのが最適？

いちごの栄養と危険性を理解した上で、次はその知識を日々の食生活に活かすための具体的な実践方法を見ていきましょう。いつ、どれだけ、どのように食べるのが最も効果的で安全なのでしょうか。

3.1. 1日の摂取目安量：何粒までなら大丈夫？

前章でも触れましたが、健康的な食生活の指針として、厚生労働省は1日の果物摂取量を約200gと推奨しています¹⁶³⁷。これは、いちごだけでなく、りんごやバナナ、みかんなど、その日に食べるすべての果物を合計した量です。この200gをいちごだけで摂る場合、粒の大きさによって個数は変わります。

• 小粒のいちご（1粒 約10g）：約20粒
• 中粒のいちご（1粒 約15g）：約13粒¹⁶
• 大粒のいちご（1粒 約25g）：約8粒

例えば、朝食にバナナを1本（約100g）食べた日は、おやつのいちごは残りの100g程度（中粒で6～7粒）に調整するなど、1日の合計で考える習慣をつけましょう⁹。

3.2. 栄養を逃さない！専門家が教える正しい洗い方と保存方法

いちごに含まれる貴重な栄養素、特に水溶性のビタミンCや葉酸を失わず、同時に衛生面のリスクを低減するためには、洗い方に秘訣があります。

栄養を最大限に活かす洗浄手順

1. ヘタはつけたまま洗う: これが最も重要な点です。先にヘタを取ってしまうと、その切り口から水が入り込み、ビタミンCや葉酸が流れ出てしまいます。また、果肉が水分を吸って味が水っぽくなる原因にもなります¹⁷。
2. ボウルで振り洗い＋流水ですすぐ: まず、ボウルに水を張り、その中でいちごを優しく振り洗いして、表面の汚れや埃を落とします。その後、流水で30秒ほど、一つひとつ丁寧にすすぎます。残留農薬の多くは水溶性であり、この流水洗浄で効果的に洗い流せると言われています²⁴。長時間水に浸けっぱなしにするのは避けましょう。
3. 水気を拭き取り、最後にヘタを取る: 清潔なキッチンペーパーなどで優しく水気を拭き取ります。そして、食べる直前にヘタ（がく）を取り除きましょう。

鮮度を保つ保存方法

いちごは傷みやすい繊細な果物です。購入後は、洗わずに乾燥を防ぐためラップをかけるか、蓋付きの容器に入れ、冷蔵庫の野菜室で保存します。この際、いちご同士が重ならないように一層に並べると、傷みを防ぎ長持ちさせることができます。そして、食べる直前に上記の洗浄方法で洗いましょう。

3.3. 妊娠時期別（初期・中期・後期・つわり期）のおすすめの食べ方

妊娠期間は、時期によって母体の状態や必要な栄養素の優先順位が変化します。それに合わせていちごの食べ方を工夫することで、より効果的にその恩恵を受けることができます。

妊娠初期・つわり期（～15週）

• 重点栄養素: 葉酸
• 課題: つわりによる食欲不振、吐き気、脱水
• おすすめの食べ方:
  いちごスムージー: この時期の救世主となり得るのが、冷たいスムージーです。いちごをヨーグルトや牛乳と一緒にミキサーにかけることで、葉酸、タンパク質、カルシウム、そして水分を一度に補給できます。冷たくて口当たりが良いため、固形物が受け付けない時でも比較的飲みやすく、強い匂いもありません。胃腸への負担も少なく、脱水予防にも繋がります⁹。

妊娠中期・後期（16週～）

• 重点栄養素: ビタミンC、食物繊維、カリウム
• 課題: 貧血、便秘、むくみ、体重管理
• おすすめの食べ方:
  食後のデザートとして: 鉄分を多く含む食事（赤身肉、ほうれん草、あさり、納豆など）の後に、デザートとして生のいちごを食べるのが非常におすすめです。いちごのビタミンCが、食事で摂った鉄分の吸収を強力に支援します¹⁶。
  ヨーグルトと一緒に: 無糖のヨーグルトに生のいちごをトッピングすれば、便秘解消に役立つ食物繊維と、骨の形成に必要なカルシウムを同時に摂取できる、理想的なおやつになります。

3.4. いちご狩りを楽しむための衛生上の助言

春の行楽として人気のいちご狩り。妊娠中でも楽しみたいと考える方は多いでしょう。しかし、農園では摘み取ったいちごをその場で食べることが多いため、衛生面には特に配慮が必要です。

安全に楽しむための要点

• 洗浄設備を確認する: 予約する際に、農園に手洗いや果物を洗うための水道設備があるか確認しておくと安心です。
• 持参した水で洗う: もし可能であれば、ペットボトルに入れたきれいな水を持参し、食べる前にさっと洗い流すことをお勧めします。土壌由来のトキソプラズマなどの危険性を低減できます³¹。
• 持ち帰りを主として楽しむ: 最も安全な方法は、その場で食べるのは数個に留め、楽しみの主を「摘み取って家に持ち帰ること」に置くことです。自宅に帰ってから、3.2で紹介した方法で丁寧に洗浄すれば、衛生的な懸念なく、ゆっくりと美味しいいちごを味わうことができます。

第4章：専門家が回答する、妊婦さんのためのいちご問答集

ここでは、妊婦さんから特によく寄せられる質問について、専門家の視点からお答えします。

結論：均衡の取れた食事で、健やかなマタニティライフを

本記事では、妊娠中のいちご摂取について、その多岐にわたる利点と、知っておくべき危険性や注意点を包括的に解説しました。いちごは、胎児の健やかな発育に不可欠な葉酸、母体の免疫力を支え貧血予防にも繋がるビタミンC、そして妊娠中の不快な症状を和らげる食物繊維やカリウムなどを豊富に含む、妊婦さんにとってまさに「恵みの果物」です。その恩恵を安全に享受するための鍵は、「適量を守る」「食べる前には正しく洗う」という2つの単純な原則に集約されます。1日の果物摂取目安である200gを意識し、ヘタをつけたまま流水で丁寧に洗う習慣を身につけることで、危険性を最小限に抑えることができます。最も大切なことは、いちごのような特定の食品に頼り切るのではなく、厚生労働省が示す「妊産婦のための食事バランスガイド」を参考に、主食・主菜・副菜のそろった均衡の良い食事を基本とすることです²³³⁷。いちごは、その豊かで彩りのある食生活を構成する、素晴らしく、そして美味しい一つの断片です。どうぞ、正しい知識を味方につけて、旬の味覚を楽しみながら、心身ともに健やかで満たされたマタニティライフをお送りください。