【医師監修】ドラベ症候群の全貌:原因、症状から日本の最新治療・公的支援まで徹底解説
小児科

【医師監修】ドラベ症候群の全貌:原因、症状から日本の最新治療・公的支援まで徹底解説

お子様がドラベ症候群、あるいはその疑いがあると告げられたご家族の皆様は、計り知れない不安と戸惑いの中にいらっしゃることと存じます。これまで当たり前であった日常が、未知の病気という大きな課題に直面し、先の見えない道のりを歩み始めたように感じていらっしゃるかもしれません。情報が溢れる現代社会において、何を信じ、何を手がかりにすれば良いのか、途方に暮れることもあるでしょう。この記事は、そのようなご家族の皆様にとって、信頼できる道標となることを目指して作成されました。JapaneseHealth.org編集委員会は、最新の医学的知見に基づき、ドラベ症候群という疾患の全体像を、根本的な原因から日々の具体的な対策、そして日本の公的支援制度の活用法に至るまで、網羅的かつ詳細に解説します。ドラベ症候群は、確かに生涯にわたる複雑な課題を伴う疾患です。しかし、近年の研究の進展は目覚ましく、新しい治療選択肢も登場しています。そして何よりも、この道のりを歩んでいるのは、決してあなた方ご家族だけではありません。ドラベ症候群患者家族会によると、日本全国には同じ経験を分かち合い、支え合う仲間が存在し、医療者や研究者もまた、治療法の開発に日々尽力しています1。本稿が、皆様の心に寄り添い、正確な知識という力をもって、お子様との未来を少しでも明るく、希望に満ちたものにするための一助となることを心から願っています。

この記事の要点まとめ

  • ドラベ症候群は、主に乳児期に発症する稀な遺伝性の重症てんかんで、多くはSCN1A遺伝子の新生突然変異が原因です25
  • 初期症状は発熱に伴う長時間のけいれん発作が特徴で、年齢と共に多彩な発作や発達の遅れ、行動障害などが現れます7
  • 体温上昇や特定の光刺激が発作を誘発しやすく、日常生活での対策が重要です58
  • 治療は、バルプロ酸などの第一選択薬に加え、日本で承認された特異的治療薬(スチリペントール、フェンフルラミン)が中心となります2518
  • 一部の抗てんかん薬(カルバマゼピン等)は発作を悪化させるため、使用は禁忌です7
  • 日本では指定難病に認定されており、小児慢性特定疾病や障害者手帳などの公的支援制度を活用することで経済的負担を軽減できます9
  • 患者家族会との繋がりは、情報共有や精神的支えを得る上で極めて重要です1

第1章:ドラベ症候群とは?- 疾患の全体像

ドラベ症候群の全体像を正確に理解することは、適切な対応への第一歩です。ここでは、疾患の定義、歴史的背景、そして根本的な原因について深く掘り下げます。

1.1. 定義と歴史

Dravet Syndrome Foundation(ドラベ症候群財団)の定義によると、ドラベ症候群(Dravet Syndrome)は、主に乳児期に発症する、稀で重篤な遺伝性の「発達性てんかん性脳症(Developmental and Epileptic Encephalopathy, DEE)」です2。米国国立神経疾患・脳卒中研究所(NINDS)は、この病態を、てんかん発作そのものだけでなく、てんかん性の脳活動が発達の遅れや停滞を引き起こす状態であると説明しています34
この症候群の歴史は、1978年にフランスの医師シャルロット・ドラベによって初めて詳細に報告されたことに始まります。Epilepsy Foundation(米国てんかん財団)の資料によれば、当初は「乳児重症ミオクロニーてんかん(Severe Myoclonic Epilepsy of Infancy, SMEI)」と呼ばれていました5。しかし、その後の研究で、特徴的な症状であるミオクロニー発作(ピクッとする短いけいれん)が見られない患者もいることや、てんかん発作が成人期まで持続することが明らかになったため、現在では発見者の名誉を称え「ドラベ症候群」という名称に統一されています8
日本では、この疾患の希少性と治療の困難性、そして長期にわたる療養の必要性から、2015年7月1日から厚生労働省により「指定難病140」として正式に認定され、医療費助成の対象となっています9

1.2. 原因:SCN1A遺伝子変異という鍵

ドラベ症候群の根本的な原因は、その大半が遺伝子の変異にあることが解明されています。Dravet Syndrome Foundationによると、患者の約80%から85%以上で、**SCN1A(エスシーエヌワンエー)**という特定の遺伝子に病気を引き起こす変異が見つかります2
このSCN1A遺伝子は、脳の神経細胞(ニューロン)の表面に存在する「Nav1.1(エヌエーブイいちてんいち)」というナトリウムチャネルの設計図となる極めて重要な役割を担っています2。ナトリウムチャネルは、神経細胞が電気信号をやり取りするための「扉」のようなもので、特に脳の活動を抑制する働きを持つ抑制性ニューロンの機能に不可欠です。ドラベ症候群の患者では、SCN1A遺伝子の変異により、このNav1.1チャネルが正常に作られなくなります。その結果、抑制性ニューロンがうまく機能せず、脳全体の神経活動の興奮と抑制のバランスが崩れ、てんかん発作という形で過剰な興奮状態が引き起こされやすくなると考えられています2。この状態は、遺伝子のペアの一方が機能しないことで全体の機能が半分になってしまうことから「ハプロ不全(haploinsufficiency)」と呼ばれます2
ご家族にとって非常に重要な点として、これらのSCN1A遺伝子変異のほとんどが**「新生突然変異(de novo mutation)」**であることが、Epilepsy Foundationによって強調されています5。これは、両親の遺伝子には変異がなく、お子様が生まれてくる過程で新たに生じた変異であることを意味します。したがって、多くの場合、ドラベ症候群は親から子へ直接遺伝するものではありません。この事実は、ご両親がご自身を責める必要は全くないこと、そして次のお子様が同じ病気になるリスクは一般的に高くないことを示しており、遺伝カウンセリングなどで詳しい説明を受けることが推奨されます。
ごく稀に、SCN1B、SCN2A、GABRG2といった他の遺伝子の変異が原因となることも報告されていますが、圧倒的多数はSCN1A遺伝子の関連です13

1.3. 疫学:日本における患者数

ドラベ症候群は希少疾患であり、世界的な有病率は出生児15,700人から40,000人に1人と推定されています2。日本における正確な全国疫学調査はまだ完了していませんが、医薬品医療機器総合機構(PMDA)に提出された資料によると、厚生労働省の報告に基づき国内の患者数は約3,000人とされています18。ただし、難病情報センターは、成人例などでまだ診断に至っていない未診断の患者もいる可能性があり、実際の数はこれより多い可能性も指摘しています21。日本の研究機関では患者レジストリ(登録制度)の構築も進められており、例えば静岡てんかん・神経医療センターが主導する研究では、2023年3月時点で120名のドラベ症候群患者が登録されるなど、疾患解明に向けた継続的な努力が行われています22

第2章:特徴的な症状と経過 – 発作から併存症まで

ドラベ症候群の症状は、てんかん発作に留まらず、発達、行動、運動機能など多岐にわたります。そして、その現れ方は年齢とともに変化していくのが大きな特徴です。また、同じ診断名であっても、症状の重さや組み合わせは子ども一人ひとりによって大きく異なる「スペクトラム(連続体)」の性質を持つことを理解することが、適切な支援の第一歩となります。ある子どもの経過が、必ずしも別の子どもに当てはまるわけではないため、個々の状態に合わせた個別化されたケアプランが不可欠です。

2.1. てんかん発作:年齢で変化する多彩な貌

ドラベ症候群の核となる症状は、治療が難しい(難治性)てんかん発作です。その発作のタイプは、子どもの成長段階に応じて特徴的な変化を見せます。

乳児期(1歳未満)

  • 発症: 多くは生後5~6ヶ月頃、遅くとも1歳未満に、それまで健康に発達していた乳児に突然発作が起こります7
  • 初発症状: 最初の発作は、風邪などによる発熱を伴うことが非常に多く、「熱性けいれん」として始まります7。しかし、Epilepsy Foundationが指摘するように、通常の熱性けいれんとは異なり、発作が5分以上続く**「けいれん重積状態(status epilepticus)」**になりやすいのが特徴です5
  • 発作のタイプ: 全身が硬直してガクガクと震える「全身けいれん(強直間代発作)」や、体の片側だけにけいれんが起こる「片側けいれん(半身間代発作)」が典型的です13
  • 発達: この時期は、発作を繰り返していても、発達の遅れはまだ目立たないことがほとんどです5

幼児期(1歳~5歳頃)

  • 発作の変化: 発熱時だけでなく、熱がないときにも発作を起こすようになります5
  • 新しい発作の出現: この時期になると、多彩なタイプの発作が現れます7
    • ミオクロニー発作: 全身や手足が一瞬「ピクッ」と短くけいれんする発作です。これが頻繁に起こることもあります5
    • 非定型欠神発作: 数秒から数十秒間、意識が途切れてボーッとしたり、動作が止まったりする発作です7
  • 発達への影響: 1歳を過ぎた頃から、言葉の遅れや運動能力の獲得の遅れなど、発達の伸びが鈍化し始め、知的発達の遅れが明らかになってきます7

学童期以降(6歳~)

  • 発作パターンの変化: 難病情報センターによると、けいれん重積状態の頻度は減少する傾向にありますが、発作が完全になくなることは稀です21。ミオクロニー発作や欠神発作は減少し、睡眠中に起こる全身けいれんが主になることもあります8
  • 併存症の顕在化: この時期になると、てんかん発作そのものよりも、後述する発達・行動・運動の問題が生活上の大きな課題となってきます。成人になっても発作は持続することが多く、特に発熱は依然として発作の誘因となります21

2.2. 発作の誘因と対策

ドラベ症候群の発作は、特定の刺激によって誘発されやすいことが知られています。これらの誘因を理解し、日常生活で工夫を凝らすことは、発作の頻度を減らし、子どもの安全を守る上で非常に重要です。

体温上昇

最も一般的で重要な誘因です。Epilepsy Foundationによれば、発熱だけでなく、わずかな体温の変化でも発作の引き金となり得ます5

  • 原因:
    • 感染症(風邪など)や予防接種による発熱21
    • 入浴、特に熱いお風呂7
    • 夏の暑さ、炎天下での活動、こもり熱21
    • 激しい運動による体温上昇。
  • 対策:
    • 発熱時は、医師の指示のもと、早めに解熱剤を使用し、積極的に体を冷やすことが推奨されます8
    • 入浴は、ぬるめのお湯(38~39℃程度)にし、長湯を避ける、あるいはシャワー浴に切り替えるといった工夫が有効です21
    • 夏場の外出は涼しい時間帯を選び、保冷剤を入れられるベストや小型ファン付きの衣服などを活用して、体を冷やす工夫をします21

光過敏性

一部の患者では、特定の光刺激が発作を誘発します7

  • 原因:
    • テレビやゲーム、スマートフォンの画面の点滅25
    • 写真撮影のフラッシュ25
    • 木漏れ日やブラインド越しの光など、明暗のコントラストが強い状況8
    • 縞模様や水玉模様、幾何学模様などの特定の図形7
  • 対策:
    • テレビやゲームは、部屋を明るくして画面から離れて見るようにします。
    • 外出時はサングラスや、つばの広い帽子を着用することが有効です8
    • 難病情報センターは、光刺激で発作が起きそうなときに片目を手で覆うことで発作を回避できる場合があると紹介しています21

その他

強い精神的ストレスや、過度の興奮、驚きなども発作の誘因となることがあります5。また、睡眠不足も発作の頻度を増やす可能性があるため、規則正しい生活リズムを心がけることが大切です。

2.3. 発作以外の課題:併存する発達・行動・運動の問題

UCBファーマ社の解説にもあるように、ドラベ症候群は単なるてんかんではなく、脳の発達全体に影響を及ぼす疾患です4。そのため、てんかん発作と並行して、様々な併存症(合併症)が生活の質(QOL)に大きく関わってきます。

精神運動発達遅滞(知的発達の遅れ)

発症から1年ほどは正常な発達を見せることが多いですが、1歳を過ぎる頃から発達のペースがゆっくりになり、多くの場合、軽度から重度の知的障害を伴います7。一度できるようになったことができなくなる「退行」は通常見られませんが、新たなスキルの獲得が停滞する「発達の伸び悩み」が特徴です7

行動特性

日本小児神経学会によると、学童期になると、行動面での課題が目立つようになります24

  • 多動・衝動性・不注意: 注意欠陥・多動性障害(ADHD)に似た症状が見られ、落ち着きがなく、じっとしているのが苦手なことがあります。
  • 自閉傾向: 自閉スペクトラム症(ASD)の特徴を併せ持つこともあり、コミュニケーションや対人関係の構築に困難が見られる場合があります。

これらの特性は、学校などでの集団生活において、大きな困難を生じさせることがあります24

運動障害

  • 運動失調(Ataxia): 体のバランスが取りにくく、歩行が不安定でふらついたり、転びやすかったりします7。これが「運動失調」と呼ばれる症状です。
  • 歩行の特徴: 歩き始めが遅れることが多く、歩けるようになっても不安定な歩容が続きます。UCBファーマ社の資料によれば、思春期以降には、膝を曲げて重心を低くして歩く特徴的な「しゃがみ歩行」が見られることもあります4
  • 手先の不器用さ: 細かい作業が苦手など、巧緻運動の障害も見られます24

その他の併存症

Dravet Syndrome Foundationは、上記以外にも以下のような様々な問題が報告されていると指摘しています2

  • 睡眠障害: 寝つきが悪い、夜中に何度も起きるなど。
  • 成長・栄養の問題: 食欲不振や食事の困難さから、低身長や低体重になることがあります。
  • 自律神経系の問題(Dysautonomia): 体温、心拍数、血圧などの調節がうまくいかないことがあります。
  • 骨格系の問題: 側弯症など。

これらの併存症は、てんかん発作の管理と同じくらい重要であり、療育、リハビリテーション、行動療法など、多角的なアプローチが必要となります。

第3章:診断への道のり – 早期発見の重要性

ドラベ症候群の診断は、時に長い道のり(診断の旅、Diagnostic Odyssey)となることがあります。初期症状が一般的な熱性けいれんと酷似しているため、専門医でさえもすぐに診断を下すのが難しい場合があるからです5。しかし、2022年に発表された国際的なコンセンサス声明では、適切な治療を早期に開始し、発作を悪化させる可能性のある薬剤を避け、長期的な予後を改善するために、早期の正しい診断が極めて重要であると強調されています27

3.1. ドラベ症候群を疑うべき初期サイン

前述の国際コンセンサス声明では、特定の臨床的特徴が見られた場合に、早期からドラベ症候群を疑い、遺伝子検査を検討すべきであるという「危険信号(レッドフラッグ)」が提示されています27。ご家族がこれらのサインを知っておくことは、医師との対話を促し、早期診断に繋がる可能性があります。
生後2ヶ月から15ヶ月の乳児において、以下のいずれかの特徴が見られた場合、ドラベ症候群の可能性を考慮すべきです:

  • 発熱や予防接種をきっかけに、初めての長時間(5分以上)の片側けいれん発作を起こした27
  • 発熱や予防接種をきっかけに、**初めてのけいれん重積状態(30分以上続く発作)**を起こした27
  • 発作が体の右側と左側で交互に起こるように見える2
  • 1歳までに長時間のけいれん発作を2回以上経験した2

これらのサインが見られた場合、ご家族は主治医に「これはただの熱性けいれんでしょうか?ドラベ症候群の可能性について、遺伝子検査を検討する必要はありませんか?」と積極的に問いかけることが重要です。

3.2. 診断基準:何を根拠に診断されるか

日本におけるドラベ症候群の診断は、厚生労働省が定めた診断基準に基づいて行われます。これは、症状、検査所見、遺伝子検査などを総合的に評価するものです19

  • A. 症状: 全身または半身のけいれん発作、多彩な発作タイプ、発熱や入浴による誘発、光や図形への過敏性、けいれん重積状態や群発を起こしやすいこと。
  • B. 検査所見: 乳児期は正常な画像所見、年齢と共に脳波異常や発達遅滞、運動失調が出現すること。
  • C. 鑑別診断: 似た症状を示す他の疾患を除外すること。
  • D. 遺伝学的検査: SCN1A遺伝子の検査が推奨されること。

診断のカテゴリー

厚生労働省の基準では、以下のように診断されます19

  • 確定診断(遺伝子検査陽性): 1歳未満でA1(全身・半身けいれん)を発症し、A2~5の特徴を1つ以上有する場合、SCN1A遺伝子検査で病的な変異が見つかれば確定診断となります。
  • 確定診断(遺伝子検査陰性でも可): 1歳未満でA1を発症し、A2~5の特徴を2つ以上、かつB3~5の特徴を1つ以上有する場合は、遺伝子検査が陰性であっても臨床的に確定診断されます。

Dravet Syndrome Foundationも指摘するように、これは遺伝子変異が見つからなくても、特徴的な臨床経過をたどる場合はドラベ症候群と診断されることを意味しており、臨床症状の重要性を示しています2

3.3. 検査の役割:遺伝子検査、脳波、画像検査

診断プロセスでは、いくつかの重要な検査が行われます。

  • 遺伝子検査: 診断を確定するための最も重要な検査です。国際コンセンサス声明では、SCN1A遺伝子だけを調べるのではなく、関連する複数のてんかん遺伝子を一度に調べる「てんかん遺伝子パネル検査」が推奨されています27。この検査は血液採取によって行われます。
  • 脳波(EEG): 脳の電気活動を記録する検査です。ドラベ症候群では、発症初期(1歳頃まで)は脳波が正常なことが多く、これが診断を遅らせる一因ともなります5。年齢とともに、特徴的なてんかん性放電が見られるようになります13
  • 画像検査(MRI): 脳の構造的な異常を調べるための検査です。国際コンセンサス声明によると、初期にはMRIで異常が見られないことがほとんどで、これにより脳腫瘍や脳奇形など、他の原因によるてんかんを除外することができます27。年齢が上がると、脳の萎縮などが見られることもあります19

第4章:治療と管理の最前線 – 発作をコントロールし、生活の質を高める

ドラベ症候群の治療は、過去十数年で大きく進歩しました。かつては一般的なてんかん治療薬が用いられていましたが、現在では疾患のメカニズムに基づいた特異的な治療法が確立されつつあります。この変化は、日本の医療現場においても明確に現れており、2012年のスチリペントール、そしてPMDAによる2022年のフェンフルラミンの承認は、ドラベ症候群の治療が新たな時代に入ったことを象徴しています29。この進歩は、ご家族にとって、未来への大きな希望となります。

4.1. 治療の基本方針と目標

国際コンセンサス声明によると、現代のドラベ症候群治療における最も重要な目標は、単に発作をゼロにすること(完全抑制)だけではありません27。難病情報センターが指摘するように、発作の完全抑制は非常に難しいのが現実です21。そのため、治療の主眼は、子ども本人と家族の生活の質(Quality of Life, QOL)を最大限に高めることに置かれています27
この目標を達成するための基本方針は以下の通りです。

  • 個別化された治療: 症状の現れ方が一人ひとり異なるため、ある研究論文で強調されているように、治療法も個々の状態に合わせて調整されます31
  • 多角的なアプローチ: 薬物療法だけでなく、食事療法、リハビリテーション、療育、そして緊急時対応計画などを組み合わせた、包括的な管理(Multidisciplinary approach)が行われます4
  • ベネフィットとリスクのバランス: 最新のレビュー論文が論じているように、発作を抑制する効果(ベネフィット)と、薬剤の副作用(リスク)を常に天秤にかけ、子どもにとって最善のバランスを見つけることが目指されます32

4.2. 薬物療法:日本の標準治療と新しい選択肢

薬物療法は、ドラベ症候群治療の中心です。ここでは、日本で承認・使用されている薬剤を中心に解説します。

第一選択薬

  • バルプロ酸ナトリウム(主な商品名: デパケン、セレニカ): 古くからてんかん治療に用いられている薬剤で、難病情報センターの診療ガイドラインにおいても第一選択薬の一つとされています13
  • クロバザム(主な商品名: マイスタン): ベンゾジアゼピン系の薬剤で、Meiji Seika ファルマの資料によると、バルプロ酸と同様に、初期治療または2番目の薬剤として考慮されます25

ドラベ症候群に特化した併用療法薬

これらの薬剤の登場が、近年の治療を大きく変えました。

  • スチリペントール(商品名: ディアコミット): 2012年に日本で承認された、ドラベ症候群専用の治療薬です30。重要なのは、この薬がバルプロ酸とクロバザムで効果が不十分な場合に、これら2剤と併用して使用される点です25
  • フェンフルラミン(商品名: フィンテプラ): 2022年に日本で承認された、非常に効果の高い新しい治療薬です18。PMDAに提出された臨床試験データでは、既存の治療で効果不十分な患者のけいれん発作を劇的に減少させることが示されており、ドラベ症候群治療における重要な選択肢となっています18。心臓への影響を定期的にモニタリングする必要があります。

その他の治療選択肢

  • トピラマート(主な商品名: トピナ): 他の薬剤で効果が不十分な場合に、併用薬として使用されることがあります13
  • 臭化カリウム(臭化剤): 古くからある薬剤ですが、現在でも有効な場合があります13

避けるべき薬剤

ドラベ症候群の患者において、特定の抗てんかん薬は**発作を悪化させる(増悪させる)**ことが知られており、使用は原則として禁忌です。これは、これらの薬剤がSCN1A遺伝子変異によって機能不全に陥っているナトリウムチャネルの働きをさらに阻害してしまうためと考えられています。以下の薬剤は特に注意が必要です。

  • カルバマゼピン(主な商品名: テグレトール)7
  • フェニトイン(主な商品名: アレビアチン、ヒダントール)7
  • ラモトリギン(主な商品名: ラミクタール)7

オクスカルバゼピン、ビガバトリンなども増悪のリスクが報告されています。

海外で承認され、日本では治験中の薬剤

カンナビジオール(商品名: エピディオレックス): 大麻草由来の成分ですが、精神作用はなく、てんかん発作に有効な成分のみを抽出・精製した医薬品です。欧米ではドラベ症候群の治療薬として承認されています27。日本では、大麻取締法との関連で承認されていませんが、その有効性と安全性が国際的に確立されていることから、日本てんかん協会などの患者団体や学会が厚生労働省に早期承認を働きかけており、現在、国内で臨床試験(治験)が進行中です36

ご家族が治療の選択肢を理解し、医師と相談する際の一助となるよう、以下の表にまとめます。

ドラベ症候群の主な薬物治療オプション(日本国内)
一般名 (Generic Name) 主な商品名 (Brand Name) 日本での承認状況 主な使用法 備考
バルプロ酸ナトリウム デパケン、セレニカ 承認済 第一選択薬 幅広い発作に有効。妊娠可能な女性への使用は慎重な検討が必要。
クロバザム マイスタン 承認済 第一選択薬 バルプロ酸と併用されることが多い。眠気などの副作用に注意。
スチリペントール ディアコミット 承認済 追加併用療法 ドラベ症候群専用。バルプロ酸とクロバザムとの3剤併用が必須25
フェンフルラミン フィンテプラ 承認済 追加併用療法 ドラベ症候群専用。非常に高い発作抑制効果が報告されている34。定期的な心エコー検査が必要。
トピラマート トピナ 承認済 追加併用療法 他剤で効果不十分な場合に考慮される。
カンナビジオール エピディオレックス 未承認(治験中) 追加併用療法 欧米では承認済。日本では早期承認が期待されている36

4.3. 緊急時対応:けいれん重積への備え

クリーブランド・クリニックの専門家が警告するように、ドラベ症候群の子どもにとって、5分以上続くけいれん発作(けいれん重積状態)は、脳にダメージを与える可能性のある医療緊急事態です15。そのため、いつ発作が起きても迅速に対応できるよう、家庭での準備が不可欠です。

  • レスキュー薬(頓用薬)の常備:
    • ミダゾラム口腔用液(商品名: ブコラム®): 頬の内側の粘膜に投与するタイプの薬剤で、注射をすることなく家庭で迅速に使用できます。けいれんを速やかに止める効果が期待できます21
    • ジアゼパム坐剤(主な商品名: ダイアップ®坐剤): 発熱時など、発作が起こりやすい状況で予防的に使用したり、発作時に使用したりします24
  • 発作時対応計画(Seizure Action Plan)の作成:
    国際コンセンサス声明でも強く推奨されているように、どのような状態になったら(例:5分以上けいれんが続く、呼吸の色が悪いなど)、どのレスキュー薬を使い、どのタイミングで救急車を呼ぶのかを、具体的に時系列で記した計画書を作成することが重要です27。この計画書は、必ず主治医と相談して作成し、家族だけでなく、学校の先生や預け先の職員など、子どもに関わる全ての人と共有しておくことが極めて重要です27

4.4. 非薬物療法と未来の治療

薬物療法と並行して、あるいは薬物療法で効果が不十分な場合に、他の治療法が検討されます。

  • 食事療法:
    • ケトン食療法: 炭水化物を極端に制限し、脂質を多く摂取することで、脳のエネルギー源をブドウ糖から「ケトン体」に切り替える食事療法です。一部の患者で高い発作抑制効果が示されています13。厳密な管理が必要なため、必ず専門の医師や管理栄養士の指導のもとで行います。
    • 修正アトキンス食: ケトン食を少し緩やかにした食事療法で、導入しやすい利点があります21
  • 外科治療:
    • 迷走神経刺激療法(VNS): 脳の一部を切除するようなてんかん外科手術は、脳全体に影響が及ぶドラベ症候群では一般的に効果がないと考えられています21。しかし、首の皮下に刺激装置を埋め込み、迷走神経を電気刺激することで発作を抑制するVNSは、発作の頻度や重症度を軽減する選択肢として考慮されることがあります27
  • 未来の治療(遺伝子治療):
    ドラベ症候群の原因がSCN1A遺伝子にあることから、正常な遺伝子を補充したり、遺伝子の働きを修正したりする「遺伝子治療」の研究が世界中で進められています。国立精神・神経医療研究センター(NCNP)などの日本の機関もこの分野の研究をリードしており、まだ研究段階ですが、根本的な治療法となる可能性を秘めており、大きな期待が寄せられています3234

第5章:日本の社会資源を活用する – 経済的・社会的支援制度ガイド

ドラベ症候群を持つ子どものケアは、長期にわたり、精神的、身体的、そして経済的にも大きな負担を伴います。しかし、日本にはご家族の負担を軽減するための様々な公的支援制度が整備されています。ドラベ症候群患者家族会が提供する情報にもあるように、これらの制度は複雑で分かりにくいこともありますが、積極的に活用することで、治療に専念し、より良い生活を送るための大きな助けとなります9。この章では、ご家族が利用できる主要な制度を、実践的な「行動計画」として解説します。

5.1. 医療費助成制度を理解する

高額な医療費の負担を軽減するための、2つの重要な制度があります。どちらを利用するかの戦略的な判断が鍵となります。

  • 小児慢性特定疾病医療費助成制度: 原則として18歳未満のドラベ症候群の患者が対象です10。医療費の自己負担割合が2割になり、さらに世帯所得に応じた自己負担上限額が設定されます。入院時の食事代の一部も助成対象となるなど、手厚い支援が特徴です9
  • 指定難病医療費給付制度: 18歳以上の患者が対象です(ドラベ症候群は指定難病140)9。小児慢性特定疾病と同様に、自己負担が2割になり、所得に応じた上限額が設定されます9

戦略的アドバイス: ドラベ症候群患者家族会の経験から、**「18歳になるまでは小児慢性特定疾病医療費助成制度を利用し、18歳になったら指定難病の制度に移行する」**ことが推奨されています9。なぜなら、小児の制度の方が、入院時の食事代や後述する日常生活用具の給付など、支援範囲が広い場合が多いからです。手続きが少し煩雑に感じられても、まずは小児慢性特定疾病の申請を行うことが賢明です。申請は、お住まいの市区町村の保健所や保健センターが窓口となります41

5.2. 障害者手帳と各種手当

障害者手帳は、様々な福祉サービスを受けるための「パスポート」のようなものです。ドラベ症候群は、知的、精神、身体と複数の側面に影響が及ぶため、複数の手帳の対象となる可能性があります。

  • 障害者手帳の種類:
    • 療育手帳: 知的障害があると判定された場合に交付されます9
    • 精神障害者保健福祉手帳: てんかんは、この手帳の制度上、精神疾患に含まれます。発作の頻度や日常生活への支障度に応じて等級が判定されます9
    • 身体障害者手帳: 歩行障害(肢体不自由)など、身体的な障害が認められる場合に交付されます9
  • 各種手当:
    • 特別児童扶養手当: 20歳未満で、精神または身体に一定以上の障害がある児童を家庭で養育している保護者に支給されます10
    • 障害児福祉手当: 20歳未満で、重度の障害があり、日常生活で常時介護を必要とする児童本人に支給されます9

これらの手帳や手当は、税金の控除や公共料金の割引、その他の福祉サービスに繋がる重要な制度です。申請は市区町村の福祉担当課が窓口となります。

5.3. 日常生活の支援サービス

医療費や生活費の助成だけでなく、日々の生活を具体的に支えるサービスもあります。

  • 日常生活用具の給付: 自治体によりますが、小児慢性特定疾病や障害者手帳の制度を通じて、日常生活に必要な用具の購入費用が給付されます。ドラベ症候群患者家族会は、転倒時の頭部保護のための**「頭部保護帽(ヘッドギア)」、発作時の呼吸管理に役立つ「ネブライザー(吸入器)」や「パルスオキシメーター」**などが対象になりうると指摘しています9
  • 住宅改修費の助成: 転倒防止のための手すりの設置や、段差の解消など、安全な在宅環境を整えるための改修費用の一部が助成されます9
  • 訪問看護: 医師の指示に基づき、看護師が家庭を訪問して、医療的ケアや家族への指導を行ってくれるサービスです。医療保険が適用されます9

これらの複雑な制度を整理し、ご家族が行動に移しやすくするために、以下の表にまとめました。まずは、お住まいの市区町村の担当窓口(福祉課、保健センターなど)に相談することから始めてください。

日本の主な公的支援制度一覧
支援の分類 制度名 主な内容 対象(年齢など) 主な申請窓口
医療費 小児慢性特定疾病医療費助成制度 自己負担2割+上限額。食事代・用具給付も。 18歳未満 市区町村の保健所・保健センター41
指定難病医療費給付制度 自己負担2割+上限額。 18歳以上(原則) 市区町村の保健所・保健センター10
自立支援医療(精神通院医療) てんかんの通院医療費の自己負担が1割に。 年齢制限なし 市区町村の福祉担当課10
手帳 療育手帳 知的障害の程度に応じた各種サービス。 18歳未満は児童相談所、18歳以上は知的障害者更生相談所9 市区町村の福祉担当課
精神障害者保健福祉手帳 てんかん発作の程度に応じた各種サービス。 初診から6ヶ月以上経過 市区町村の福祉担当課12
身体障害者手帳 肢体不自由など身体障害の程度に応じたサービス。 年齢制限なし 市区町村の福祉担当課9
手当 特別児童扶養手当 障害児を養育する保護者に支給(所得制限あり)。 20歳未満 市区町村の福祉担当課11
障害児福祉手当 常時介護が必要な重度障害児本人に支給(所得制限あり)。 20歳未満 市区町村の福祉担当課9
生活支援 日常生活用具給付事業 頭部保護帽、ネブライザーなどの購入費助成。 障害者手帳所持者など 市区町村の福祉担当課9
住宅改修費助成 手すり設置、段差解消などの費用助成。 身体障害者手帳所持者など 市区町村の福祉担当課9

第6章:家族とコミュニティ – ひとりで抱え込まないために

ドラベ症候群との歩みは、長期戦です。ご家族だけで全ての重荷を背負う必要はありません。日本には、ご家族を支え、共に歩んでくれるコミュニティや専門機関が存在します。繋がりを求めることは、孤立を防ぎ、前向きな力を得るために不可欠です。

6.1. 患者家族会の役割と繋がり方

同じ病気を持つ子どもの家族と繋がることほど、心強いことはありません。「1を言えば10も20も分かってくれる」、そんな仲間との出会いは、計り知れない安らぎと勇気を与えてくれます1
日本では、**「ドラベ症候群患者家族会」**が活発に活動しています1。この会は、単なる交流の場にとどまらず、ご家族にとって極めて重要な役割を担っています。

  • 情報共有と相互扶助: 最新の治療情報や、日常生活の工夫、公的支援の活用法など、経験者ならではの貴重な情報交換が行われます。
  • コミュニティの提供: 全国各地での交流会やオンラインでの繋がりを通じて、孤立しがちな家族に「仲間がいる」という実感をもたらします1
  • 社会への働きかけ(アドボカシー): 日本てんかん学会や日本小児神経学会といった専門家集団と連携し、エピディオレックスのような新薬の早期承認を国に要望するなど、治療環境を改善するための重要な政治的・社会的活動を行っています38

この患者家族会は、ご家族にとって、心の拠り所であり、実践的な情報源であり、そしてより良い未来を築くための行動のパートナーです。入会には年会費のかかる有料会員と無料会員があり、ウェブサイトから申し込むことができます44

6.2. 専門医療機関との連携

ドラベ症候群の診療には、高度な専門知識と経験が必要です。地域の医療機関と連携しつつ、必要に応じて専門的な医療機関の意見を聞くことも重要です。日本では、以下の機関などがてんかん、特にドラベ症候群の診療や研究において中心的な役割を担っています。

  • 国立精神・神経医療研究センター(NCNP): 東京都小平市にある、日本の精神・神経疾患研究のトップ機関の一つです。てんかんの診療・研究部門があり、ドラベ症候群に関する遺伝子治療の研究なども行われています3446
  • 静岡てんかん・神経医療センター: 静岡県静岡市にある、てんかん診療の専門病院として全国的に知られています。稀少てんかんの患者レジストリ研究など、多くの研究プロジェクトを主導しています22

これらの機関は、診断や治療方針に迷った際のセカンドオピニオンの相談先としても考えられます。

6.3. ドラベ症候群啓発デー(6月23日)

毎年6月23日は、一般社団法人日本記念日協会によって認定された**「ドラベ症候群の日」**です48。この日を中心に、患者家族会が啓発月間を設け、疾患の認知度向上や療育環境の改善を目指した様々な活動を行っています。この啓発デーは、ドラベ症候群の患者と家族が、より大きなグローバルなコミュニティの一員であることを感じさせてくれる象徴的な日です。SNSでの情報発信やイベントへの参加を通じて、社会全体の理解を深める一助となることができます。

よくある質問

質問1:ドラベ症候群は親から遺伝するのですか?
いいえ、ほとんどの場合は遺伝しません。ドラベ症候群の原因となるSCN1A遺伝子変異の大部分は、ご両親の遺伝子には存在せず、お子様が生まれる過程で新たに発生する「新生突然変異(de novo mutation)」です5。そのため、ご両親がご自身を責める必要は全くありません。ご心配な場合は、遺伝カウンセリングで専門家にご相談ください。
質問2:子どもが使ってはいけない薬はありますか?
はい、あります。一部の抗てんかん薬は、ドラベ症候群の患者さんの発作を悪化させることが知られています。特に、カルバマゼピン(テグレトール®)、フェニトイン(アレビアチン®、ヒダントール®)、ラモトリギン(ラミクタール®)は原則として使用を避けるべきです7。必ず主治医の指示に従い、他の医療機関を受診する際も、ドラベ症候群であることを必ず伝えてください。
質問3:発熱時のけいれんが心配です。どうすればよいですか?
発熱はドラベ症候群の最も一般的な発作誘因です。主治医と相談の上、発熱時には早めに解熱剤を使用し、クーリング(体を冷やすこと)を積極的に行うことが推奨されます8。また、5分以上けいれんが続く場合に備え、家庭で使えるレスキュー薬(ミダゾラム口腔用液など)を処方してもらい、「発作時対応計画」を家族や学校関係者と共有しておくことが極めて重要です2127
質問4:日常生活で最も気をつけるべきことは何ですか?
発作の誘因を避けることが最も重要です。特に体温の上昇には注意が必要で、熱いお風呂を避け、夏場の外出時には体を冷やす工夫をしてください21。また、一部の患者さんではテレビの点滅や強い光が発作を引き起こす(光過敏性)ため、サングラスの着用などの対策が有効です8。規則正しい生活と十分な睡眠も大切です。
質問5:治療費が心配です。どのような支援がありますか?
ドラベ症候群は日本の公的医療費助成制度の対象です。18歳未満では「小児慢性特定疾病医療費助成制度」、18歳以上では「指定難病医療費給付制度」を利用でき、医療費の自己負担が大幅に軽減されます910。また、障害の程度に応じて「療育手帳」や「精神障害者保健福祉手帳」を取得することで、特別児童扶養手当などの各種手当や福祉サービスを受けることができます。まずはお住まいの市区町村の窓口にご相談ください。

結論

本稿では、小児の希少てんかん疾患であるドラベ症候群について、その医学的な全体像から、日々の生活における具体的な対策、そして日本で利用可能な社会資源に至るまで、包括的に解説してまいりました。ドラベ症候群は、生涯にわたる深刻な挑戦であることに疑いはありません。しかし、この疾患を取り巻く状況は、確実に、そして急速に変化しています。SCN1A遺伝子の発見が病態解明の扉を開き、ディアコミットやフィンテプラといった疾患特異的な治療薬が日本でも利用可能になったことは、治療の選択肢を大きく広げました。さらに、遺伝子治療という根本的な解決策に向けた研究も、着実に歩みを進めています。今、ご家族の皆様にできる最も重要なことは、正確な情報に基づいて、積極的に行動を起こすことです。それは、最新の医学的知見に基づいた治療を主治医と共に選択すること、発作の誘因を避けるための日々の細やかな管理を徹底すること、そして利用できる公的支援制度を漏れなく活用し、経済的・社会的な基盤を安定させることです。そして何よりも、ひとりで抱え込まないでください。ドラベ症候群患者家族会という心強い仲間がいます1。専門的な医療機関が、皆様のパートナーとして存在します。希望を失わず、前を向き、繋がりを力に変えること。この情報に基づいた積極的で多角的なアプローチこそが、お子様とご家族の生活の質を大きく向上させ、未来を切り拓く鍵となるでしょう。このレポートが、その長く、しかし希望に満ちた道のりを歩む皆様にとって、信頼できる伴走者となることを切に願います。

免責事項
この記事は情報提供のみを目的としており、専門的な医学的アドバイスに代わるものではありません。健康上の懸念がある場合、または健康や治療に関する決定を下す前には、必ず資格のある医療専門家にご相談ください。

参考文献

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