妊娠糖尿病の食事療法完全ガイド:日本公式ガイドラインに基づく血糖コントロール術
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妊娠糖尿病の食事療法完全ガイド:日本公式ガイドラインに基づく血糖コントロール術

妊娠糖尿病(GDM)と診断されることは、多くの妊婦さんにとって不安な経験かもしれません。しかし、これは決して個人の責任ではありません。妊娠中のホルモンの変化によって引き起こされる一般的な状態であり、適切な知識とツールがあれば、効果的に管理することが可能です。JapaneseHealth.org(JHO)編集委員会は、日本の主要な医療ガイドラインと最新の研究に基づき、この包括的なガイドを作成しました。本稿の目的は、非難ではなく力を与えること、制限ではなく賢明な管理方法を提示することです。赤ちゃんの健やかな成長に必要なエネルギーを安定的に供給しながら、ご自身の健康を守るための、科学的根拠に基づいた実践的な食事戦略を共に学んでいきましょう。これは単なる食事療法ではなく、ご自身とご家族の将来の健康への投資となる生涯にわたる健康習慣を学ぶ機会でもあります。1

この記事の科学的根拠

この記事は、入力された研究報告書で明示的に引用されている最高品質の医学的根拠にのみ基づいています。以下は、提示された医学的ガイダンスに直接関連する実際の情報源の一部です。

  • 日本糖尿病学会: 本記事における血糖管理目標、食事療法の基本原則、および合併症のリスクに関する記述は、同学会の公式診療ガイドラインに基づいています。2
  • 日本産科婦人科学会: 妊娠糖尿病の定義、母子への影響、および一般的な管理方針に関する情報は、同学会が提供する市民向けおよび専門家向けの情報に基づいています。3
  • 国際糖尿病・妊娠研究グループ(IADPSG): 本記事で採用されている診断基準は、世界的に認められたIADPSGの基準に準拠しており、日本の現行ガイドラインでも採用されています。4

要点まとめ

  • 妊娠糖尿病(GDM)は、個人のせいではなく、妊娠中のホルモンが原因で起こる一般的な状態です。
  • 食事療法の目標は、炭水化物を断つことではなく、「賢く管理する」ことです。適切な量、タイミング、組み合わせが鍵となります。
  • 「分割食(食事を5~6回に分ける)」「ベジファースト(野菜から食べる)」「低GI食品の選択」が血糖コントロールの3つの強力な戦略です。
  • 赤ちゃんの成長には安定したエネルギー供給が不可欠です。適切な食事管理は、急激な血糖値の上昇を防ぎ、母子双方の健康を守ります。
  • GDMの管理を通じて得られる健康習慣は、将来の2型糖尿病リスクを低減させる生涯の財産となります。1

第1部:妊娠糖尿病(GDM)の臨床的枠組みを理解する

GDMの食事管理を始める前に、その診断基準と管理目標を正確に理解することが不可欠です。これらの基準は、すべての食事療法の推奨事項の根幹をなすものであり、安全かつ効果的な介入計画の第一歩となります。

1.1. 診断基準と管理目標:日本の公式見解

日本の臨床ガイドラインは、最新の科学的証拠に基づき、GDMの診断と管理を国際基準と整合させています。

診断基準

現在、日本のGDM診断は、国際糖尿病・妊娠研究グループ(IADPSG)の基準に準拠した75g経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)に基づいて行われます。以下の基準のうち、1つでも満たした場合にGDMと診断されます。4

  • 空腹時血糖値: 92 mg/dL 以上
  • 1時間後血糖値: 180 mg/dL 以上
  • 2時間後血糖値: 153 mg/dL 以上

このより厳格な診断基準の採用は、臨床現場に大きな変化をもたらしました。以前の基準では見逃されていた可能性のある、軽度の高血糖でも胎児巨大症(macrosomia)などのリスクを伴う妊婦を特定できるようになったのです。5 この変更により、GDMの診断率は研究によっては約3%から12%へと大幅に増加し6、診断される症例数は4倍に増えたとの報告もあります。7 これにより、インスリン療法が必ずしも第一選択とならない軽症例が急増し、効果的で実践的な食事療法の重要性がかつてなく高まっています。

「妊娠時に診断された明らかな糖尿病」との違い

GDMと、より重篤な「妊娠時に診断された明らかな糖尿病」を区別することは極めて重要です。後者は、空腹時血糖値が126 mg/dL以上、またはHbA1cが6.5%以上など、より高い基準で診断されます。4 この状態は胎児の先天異常リスクを伴うため、より積極的な治療介入が必要です。7

血糖コントロールの目標

GDM管理の主な目的は、血糖値を可能な限り正常範囲に近づけ、母子への合併症を防ぐことです。血糖自己測定(SMBG)による日々の管理が中心となり、以下の目標が設定されています。4

  • 空腹時血糖値: 95 mg/dL 未満
  • 食後1時間血糖値: 140 mg/dL 未満
  • 食後2時間血糖値: 120 mg/dL 未満
  • HbA1c(補助指標): 6.5%未満、理想的には低血糖を起こさない範囲で6.0-6.2%未満を目指します。2
表1:日本におけるGDMの診断基準と管理目標
区分 項目/指標 閾値/目標値
A: 診断基準 (75g OGTT)
注: 1項目以上で診断
空腹時 (Fasting) ≥ 92 mg/dL
1時間値 (1-hour) ≥ 180 mg/dL
2時間値 (2-hour) ≥ 153 mg/dL
B: 血糖コントロール目標 (SMBG & HbA1c) 空腹時 (Fasting) < 95 mg/dL
食後1時間 (1-hour postprandial) < 140 mg/dL
食後2時間 (2-hour postprandial) < 120 mg/dL
HbA1c < 6.5% (理想 < 6.2%)

1.2. 食事療法の基本原則:カロリー、バランス、体重管理

食事療法の土台は、胎児の成長に必要なエネルギーを確保しつつ、母体の血糖安定性を維持することです。

1日のエネルギー必要量の計算

日本の標準的な方法は、妊娠時期と母体の体格を考慮した計算式に基づきます。4

  1. 標準体重(kg)の計算: 身長(m) × 身長(m) × 228
  2. 基礎エネルギー必要量の計算: 標準体重 × 30 kcal(身体活動量に応じて25~35 kcal/kgで調整)9
  3. 妊娠時期に応じた付加エネルギー(非肥満者、BMI < 25の場合):
    • 妊娠初期: +50 kcal
    • 妊娠中期: +250 kcal
    • 妊娠後期: +450 kcal4

注意点: 肥満(BMI ≥ 25)の妊婦さんの場合、体重増加を管理するため、通常はエネルギーを付加する必要はありません。4

「バランスの取れた食事」モデル(主食・主菜・副菜)

これは日本の栄養指導の根幹であり、GDMにおいて特に重要です。毎食、以下の3つを揃えることを目指します。8

  • 主食 (Shushoku): 炭水化物の供給源(例: ご飯、パン、麺類)
  • 主菜 (Shusai): たんぱく質の供給源(例: 魚、肉、卵、大豆製品)
  • 副菜 (Fukusai): ビタミン、ミネラル、食物繊維の供給源(例: 野菜、海藻、きのこ類)

このモデルは栄養バランスを整え、糖の吸収を緩やかにし、必要な栄養素を過不足なく摂取するのに役立ちます。

妊娠中の推奨体重増加量

体重増加の目標は、妊娠前のBMIに応じて設定されます。体重増加が少なすぎても多すぎても母子双方にリスクが伴います。10

  • 低体重 (BMI < 18.5): 12~15 kg
  • 普通体重 (BMI 18.5~24.9): 10~13 kg
  • 過体重 (BMI 25.0~29.9): 7~10 kg
  • 肥満 (BMI ≥ 30.0): 個別対応、最大5kgを目安に

第2部:血糖値を最適化するための高度な食事戦略

ここでは、食後の急激な血糖上昇を積極的に管理するための具体的なテクニックを掘り下げます。これらはGDM患者さんにとって核となる「実践方法」です。

2.1. 「分割食」(ぶんかつしょく)の実践

分割食は、GDM管理において最も効果的で広く推奨されている戦略の一つです。

概念

1日の総カロリーと炭水化物量を3回の大きな食事で摂る代わりに、5~6回のより小さな食事(例: 3回の主食+2~3回の補食)に分けます。2 この目的は、一度に大量のブドウ糖が血中に流入するのを防ぎ、食後の血糖値のピークを低く抑えることです。より安定したエネルギー供給を維持することで、母体のインスリン分泌への負担を軽減します。

応用方法

一般的な戦略として、主食の炭水化物の一部を食事から取り分け、2~3時間後に計画的な補食として摂取する方法があります。例えば、昼食に食べるご飯を半量にし、残りの半量をおにぎりにして、午後の補食として無糖ヨーグルトと一緒に食べるなどです。11 これは血糖コントロールだけでなく、食事間の過度な空腹感を防ぎ、次の食事での食べ過ぎを防ぐ効果もあります。

補食の内容

補食は栄養計画全体の重要な一部です。小さなおにぎり、無糖ヨーグルト、バナナ1本、ナッツ類、牛乳1杯など、エネルギーと栄養素を補給できるものが適しています。9 1回の補食の目標カロリーは、約80~200 kcalが目安です。

【重要】炭水化物を恐れないでください

GDMの診断は炭水化物への恐怖心を引き起こしがちですが、極端な制限は危険です。ブドウ糖は胎児にとって主要なエネルギー源です。2 母親からの供給が不足すると、母体は脂肪を燃焼してケトン体という代替エネルギーを作り出す「飢餓ケトーシス」状態に陥る可能性があります。ケトーシスが胎児の発育に与えるリスクについては議論がありますが、持続的なケトーシスは避けるべきとされています。2 ある研究では、GDM診断後に食事を変更した患者で炭水化物摂取量が著しく低下し、尿中ケトン体の陽性率が高くなったことが示されています。12

したがって、分割食やベジファーストといった戦略は、炭水化物を排除するためのものではありません。これらは、必要な炭水化物の代謝的影響を管理するための洗練されたツールです。「賢く炭水化物を食べる」方法であり、「炭水化物を避ける」方法ではないことを理解することが、母子双方の健康にとって極めて重要です。

2.2. 「ベジファースト」(野菜から先に食べる)の原則

食べる順番を工夫するだけで、血糖コントロールに大きな影響を与えることができるシンプルな戦略です。

概念

食物繊維が豊富な食品(野菜、海藻、きのこ類)やたんぱく質が豊富な食品を、炭水化物(ご飯、パンなど)の前に食べる方法です。これにより、糖の消化・吸収が遅くなり、食後の血糖値の上昇が緩やかになります。13

生理学的根拠

水溶性食物繊維は胃の中でゲル状になり、物理的に胃の内容物の排出を遅らせます。また、たんぱく質はインスリン分泌を促進し、消化を遅らせるホルモン(GLP-1など)の放出を刺激します。これらの相乗効果が、食後の血糖カーブをなだらかにするのです。

実践的な食事の順序

和食における推奨される食べ順は以下の通りです。13

  1. 最初に: 副菜(サラダ、野菜スープ、おひたし、海藻類)
  2. 次に: 主菜(焼き魚、蒸し鶏、豆腐などのたんぱく質)
  3. 最後に: 主食(ご飯、パンなどの炭水化物)

2.3. グリセミックインデックス(GI)と食物繊維の活用

炭水化物の「種類」を選ぶことは、量やタイミングを管理することと同じくらい重要です。

グリセミックインデックス (GI)

GI値は、炭水化物を含む食品が血糖値をどれだけ速く上昇させるかを示す指標です。急激な血糖上昇を防ぐため、GI値が低い(55以下)食品の選択が推奨されます。9

  • 高GI食品(控えるべき例): 白米、食パン、コーンフレーク、菓子類、フライドポテト9
  • 低GI食品(推奨される例): 玄米、ライ麦パン、豆腐、無糖ヨーグルト、ほとんどの果物や野菜9

食物繊維

食物繊維は血糖コントロールに不可欠です。糖の吸収を遅らせるだけでなく、満腹感を高め、体重管理にも役立ちます。日本の成人女性の食物繊維摂取目標は、1日あたり18~20g以上です。2 豊富な食品には、全粒穀物(白米を玄米や雑穀米に)、野菜(1日350g目標)、きのこ、海藻、豆類などがあります。8

第3部:日本の食文化に合わせた詳細な栄養指導

ここでは、抽象的な原則から具体的な食品へと焦点を移し、各食品群から何を選ぶべきかについて、文化的に適したアドバイスを提供します。

3.1. 炭水化物(主食)

ご飯

ご飯は日本の食生活の中心ですが、白米は高GI食品です。食物繊維を増やし、GI値を下げるために、玄米、麦ご飯、雑穀米などを白米に混ぜるか、置き換えることが強く推奨されます。9 これらは血糖コントロールを助けるだけでなく、ビタミンやミネラルも豊富に含みます。

パンと麺類

これらの食品は、ご飯に比べて咀嚼回数が少なく速く食べがちで、血糖値が急上昇しやすい傾向があります。また、塩分や脂質が隠れていることもあります。14 選ぶ場合は、食パンよりも全粒粉やライ麦のパンを、うどんよりも蕎麦を選びましょう。重要なのは、常にたっぷりの野菜やたんぱく質と組み合わせることです。14 ラーメンやパスタなどの単品料理は、炭水化物に偏りがちなので避けるのが賢明です。9

芋類とでんぷん質の多い野菜

さつまいも、じゃがいも、かぼちゃは炭水化物が多く、単なる野菜としてではなく主食の一部として考えるべきです。カレーや煮物などでじゃがいもを食べる場合は、ご飯の量を減らすなどの調整が必要です。15

ここで「さつまいものパラドックス」について詳しく見てみましょう。さつまいもは炭水化物が多い16一方で、GI値が55と低く、食物繊維が豊富です。17 さらに、調理後に冷やすことで「レジスタントスターチ(難消化性でんぷん)」が増加し、食物繊維のように働いて血糖応答をさらに穏やかにします。18 これは、調理法や量を適切に管理すれば、さつまいもが白米やじゃがいもよりも優れた選択肢になりうることを示しています。

3.2. たんぱく質と脂質(主菜)

たんぱく質と健康的な脂質は、満腹感をもたらし、糖の吸収を遅らせる上で重要な役割を果たします。

たんぱく質源

脂肪の少ない高品質なたんぱく質を重視します。青魚(サバ、イワシなど)、皮なしの鶏肉(特に胸肉やささみ)、豚肉や牛肉の赤身、卵、大豆製品(豆腐、納豆)などが推奨されます。8

脂質

魚や植物油由来の不飽和脂肪酸を優先し、脂肪の多い肉やバター、加工食品に含まれる飽和脂肪酸は控えましょう。調理法も重要で、揚げるよりも焼く、蒸す、茹でる方法が望ましいです。8

3.3. 果物:管理された甘み

果物はビタミンや食物繊維が豊富ですが、天然の糖分も含むため、管理された摂取が必要です。

量の制限

1日の果物摂取量は、約80 kcal(日本の食品交換表の1単位に相当)または150~200g程度に制限することが明確なガイドラインとして示されています。19 これは、例えば中サイズのりんご1個、または小さなバナナ1本に相当します。

タイミングと種類

血糖値の急上昇を避けるため、果物は空腹時ではなく、食事と一緒か、分割食の計画的な補食として摂るのが最適です。11 シロップ漬けの缶詰やジュースは避け、新鮮な生の果物を選びましょう。15

3.4. 乳製品

牛乳や乳製品は、カルシウムとたんぱく質の優れた供給源です。

二重の効果

牛乳やヨーグルトには乳糖(糖質)が含まれますが、同時にたんぱく質(ホエイとカゼイン)も豊富です。研究によると、このたんぱく質成分は、特に炭水化物と一緒に摂取した場合、糖の吸収を遅らせ、インスリン関連ホルモンを刺激して食後の血糖ピークを低く抑える効果(セカンドミール効果)が示されています。20

推奨

無糖の牛乳やヨーグルトは、食事の一部や計画的な補食として有益に取り入れることができます。12

第4部:実践計画:現実的な食事プランと日常生活での対応

理論を具体的な行動計画に移し、患者さんが直面する日常的な課題に対処します。

4.1. 日本向けGDM食事プラン(1日のモデル例)

すべての原則(分割食、バランス、量、食品選択)を組み合わせた1日の具体例は、アドバイスをより達成可能なものにします。日本の食文化に基づいたプランは、より実践的で有用です。21

表2:GDM向け1日の食事プラン例(約1800-2000 kcal)
食事 時間 メニュー例
朝食 7:30 主食: 雑穀米 (100g). 主菜: 焼き鮭 (1切れ), 卵焼き (1個分). 副菜: 豆腐とわかめの味噌汁, ほうれん草のおひたし.
午前補食 10:30 無糖ヨーグルト (100g) とアーモンド数粒.
昼食 12:30 主食: ざる蕎麦 (半人前). 主菜: 豚しゃぶサラダ. 副菜: ひじきの煮物.
午後補食 15:30 小さな焼き芋 (冷ましたもの, 約70g) または小さなりんご1個.
夕食 18:30 主食: ご飯なし、またはごく少量 (50g). 主菜: 鶏そぼろと豆腐の炒め物. 副菜: ノンオイルドレッシングの大きな野菜サラダ, きのこのスープ.
夜間補食 21:30 低脂肪乳 1杯.

4.2. 外食環境の乗りこなし方:現代日本の現実

GDMの管理は家庭内だけで完結しません。挑戦的な環境で賢い選択をするための戦略が不可欠です。

コンビニエンスストア(コンビニ)での選択

現代の日本社会において「コンビニを避けなさい」という助言は非現実的です。鍵は、ご飯の多い弁当に頼るのではなく、単品の惣菜を自分で組み合わせることです。22 以下のチェックリストは、忙しい中でもバランスの取れた食事を選ぶための思考モデルを提供します。

表3:「コンビニGDMミール」チェックリスト
ステップ カテゴリー 推奨される選択肢
1. たんぱく質を選ぶ (主菜) 1品選ぶ サラダチキン, 焼き魚 (サバ/鮭), ゆで卵, 豆腐, 納豆.
2. 食物繊維を選ぶ (副菜) 1〜2品選ぶ パックのグリーンサラダ, 海藻サラダ, 野菜の惣菜 (おひたし, きんぴらごぼう), おでんの大根/こんにゃく.
3. 炭水化物を選ぶ (主食) – 慎重に 1品を少量 小さな雑穀米おにぎり, 小さな蕎麦, または全粒粉のサンドイッチ (具材を確認).
4. 飲み物を選ぶ   無糖のお茶 (麦茶, ウーロン茶), 水.

外食 (Eating Out)

バランスと管理がしやすい食事形式を選ぶことが戦略となります。23

  • 定食を優先する: 定食は本来「主食・主菜・副菜」のバランスモデルに従っています。野菜やたんぱく質を先に食べやすく、ご飯の量を調整しやすいです。
  • 単品料理を避ける: ラーメン、丼物、パスタなどは炭水化物に偏りがちで、バランスのコントロールが困難です。
  • 実践的なヒント: 「ご飯少なめ」で注文する。ドレッシングは別添えにしてもらう。食後に10~15分歩くことで血糖値の安定化を助けます。

よくある質問

妊娠糖尿病と診断されたら、炭水化物を完全にやめるべきですか?
いいえ、絶対にやめるべきではありません。炭水化物から作られるブドウ糖は、お腹の赤ちゃんにとって最も重要なエネルギー源です。2 問題は炭水化物そのものではなく、一度に大量に摂取することによる血糖値の急上昇です。目標は「炭水化物を断つ」ことではなく、分割食や低GI食品の選択などを通じて「炭水化物を賢く管理し、安定的に供給する」ことです。12
「ベジファースト」は本当に効果がありますか?
はい、非常に効果的な戦略です。食事の最初に野菜やきのこ、海藻などの食物繊維が豊富なものを食べることで、後から食べる炭水化物の消化・吸収が緩やかになり、食後の血糖値の急上昇を抑えることができます。13 これは多くの研究で裏付けられている、シンプルで実践しやすい方法です。
果物は糖分が多いと聞きますが、食べても良いのでしょうか?
はい、管理された量であれば食べても問題ありません。果物はビタミンや食物繊維の重要な供給源です。ただし、果糖も含まれるため、1日の摂取量を150~200g程度(例えば、りんご中1個)に抑えることが推奨されます。19 また、血糖値の急上昇を避けるため、空腹時ではなく、食事の一部として、または計画的な補食として摂るのが良いでしょう。11
出産後、妊娠糖尿病は治りますか?
ほとんどの場合、出産後に胎盤が排出されると血糖値は正常に戻ります。しかし、GDMを経験した女性は、将来的に2型糖尿病を発症するリスクが有意に高いことが知られています。1 そのため、出産後も定期的な検診を受け、妊娠中に身につけた健康的な食生活や運動習慣を続けることが、長期的な健康を守る上で非常に重要です。母乳育児も、母子双方の糖尿病リスクを低減させる効果が報告されています。1

結論

妊娠糖尿病の診断は、不安をもたらすかもしれませんが、それは同時に自身の健康と向き合い、赤ちゃんのために最善を尽くす機会でもあります。本記事で紹介した食事戦略―バランスの取れた食事、分割食、ベジファースト、賢い食品選択―は、科学的根拠に基づいた、実践可能で効果的なツールです。目標は完璧であることではなく、一歩一歩着実に進むことです。これらの習慣は、健康な妊娠期間をサポートするだけでなく、出産後のご自身の健康、そしてご家族全体の未来を守るための貴重な財産となります。あなたは一人ではありません。医療専門家と協力し、正しい知識を力に変えて、この大切な時期を乗り越えていきましょう。

免責事項
この記事は情報提供のみを目的としており、専門的な医学的アドバイスに代わるものではありません。健康上の懸念がある場合や、ご自身の健康や治療に関する決定を下す前には、必ず資格のある医療専門家にご相談ください。

参考文献

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  10. こども家庭庁. 妊娠前からはじめる妊産婦のための食生活指針. [引用日: 2025年6月21日]. Available from: https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/a29a9bee-4d29-482d-a63b-5f9cb8ea0aa2/aaaf2a82/20230401_policies_boshihoken_shokuji_02.pdf
  11. ファストドクター. 妊娠糖尿病は治る?糖尿病合併妊娠との違いや胎児への影響を…. [引用日: 2025年6月21日]. Available from: https://fastdoctor.jp/columns/dm-gestational-diabetes
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