【医師監修】子供の蕁麻疹(じんましん)- 原因・家庭での対処法から病院での治療まで徹底解説
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【医師監修】子供の蕁麻疹(じんましん)- 原因・家庭での対処法から病院での治療まで徹底解説

お子さんの体に突然、赤い発疹が広がっていくのを見て、ご心配のことと思います。その痒みや見た目の変化に、多くの保護者の方が「これは何かの重いアレルギーだろうか」「すぐに病院に行くべきか」と大きな不安を感じます1。この記事は、そのような不安を抱える保護者の皆様に向けて、信頼できる医学的根拠に基づき、子供の蕁麻疹に関する包括的な情報を提供するために作成されました。JAPANESEHEALTH.ORG編集部が、広島大学大学院の秀道広(ひで みちひろ)教授らが作成した「蕁麻疹診療ガイドライン2018」2をはじめとする日本国内および国際的な最新の医学的知見に基づき執筆し、小児アレルギー専門医の監修を受けています3。ほとんどの場合、子供の蕁麻疹は深刻なものではなく、適切に対処すれば速やかに改善します4。この記事が、皆様の不安を和らげ、冷静な判断と適切な行動をとるための一助となれば幸いです。

この記事の要点まとめ

  • 子供の蕁麻疹の最も一般的な原因は、食物アレルギーではなく「ウイルス感染症」です1
  • 個々の発疹(膨疹)は通常24時間以内に消えるのが特徴で、これは他の皮膚疾患と見分ける重要なポイントです4
  • 家庭での基本的な対処は「冷やす」ことですが、寒冷蕁麻疹の場合は例外的に「温める」ことが必要です5
  • 呼吸困難や顔の急な腫れなど、アナフィラキシーを疑う危険なサインが見られた場合は、直ちに救急車を呼んでください6
  • 治療の基本は、眠気の少ない「第二世代抗ヒスタミン薬」の内服であり、ステロイドの塗り薬は通常推奨されません7

子供の蕁麻疹とは?知っておくべき3つの特徴

蕁麻疹は、皮膚の一部が突然赤く盛り上がり、強いかゆみを伴う「膨疹(ぼうしん)」と呼ばれる発疹が出現する皮膚の病気です4。これは、皮膚の浅い層(真皮上層)に一時的に浮腫(ふしゅ)、つまり「むくみ」が生じることで起こります1。子供の蕁麻疹を正しく理解するためには、以下の3つの重要な特徴を知っておくことが不可欠です。

特徴1:痒みを伴う、赤い盛り上がった発疹(膨疹)

蕁麻疹の最も代表的な症状は、蚊に刺された跡のように、皮膚が赤く盛り上がる膨疹です。大きさや形は様々で、数ミリの小さなものから、複数の膨疹が融合して地図のように広がることもあります。この膨疹は、強いかゆみを伴うのが一般的です。

特徴2:24時間以内に消える「一過性」の皮疹

これは蕁麻疹を他の皮膚疾患と区別する上で最も重要な特徴です8。一つ一つの膨疹は、数時間、長くても24時間以内に跡形もなく消えてしまいます4。そのため、発疹があたかも体のあちこちを「移動」しているように見えることがあります8。もし発疹が同じ場所に48時間以上続く場合は、蕁麻疹様血管炎など、他の病気の可能性も考えられるため、医師の診察が必要です8

特徴3:唇やまぶたが腫れることも(血管性浮腫)

約40%のケースで、蕁麻疹は「血管性浮腫」を伴います8。これは、皮膚のより深い層(真皮深層から皮下組織)に浮腫が起こる状態で、特に唇、まぶた、手足などが腫れぼったくなります9。血管性浮腫は、かゆみよりも痛みや突っ張り感を伴うことが多く、症状が完全に消えるまでに最大72時間ほどかかることがあります8。これらの症状は、皮膚にある肥満細胞(マスト細胞)からヒスタミンなどの化学物質が放出され、毛細血管が拡張し、血液の液体成分(血漿)が漏れ出すことによって引き起こされます10
統計的に、子供の最大25%が生涯に一度は蕁麻疹を経験すると言われています11。韓国で行われたある研究では、4歳から13歳の子供における生涯有病率は22.5%であったと報告されています12

なぜ起こる?子供の蕁麻疹の主な原因

保護者の方は、お子さんに蕁麻疹が出ると「何か悪いものを食べさせたせいでは?」と食物アレルギーを真っ先に心配されることが多いですが、実は原因はもっと多様です1。特に子供の急な蕁麻疹では、食物アレルギーよりも頻度の高い原因があります。ここでは、科学的根拠に基づき、原因を頻度の高い順に解説します。

最も多い原因は「ウイルス感染症」

子供の急性蕁麻疹の最も一般的な引き金は、風邪やインフルエンザなどのウイルス感染症です。実に40%以上のケースがこれに該当すると報告されています1。発疹は、感染症の症状の最中、あるいは治りかけの時期に出現することが多いです。これは、ウイルスに対する体の免疫反応が、結果的にヒスタミンを放出させてしまうために起こると考えられています。したがって、発疹と同時に咳や鼻水、発熱などがある場合は、感染症が原因である可能性が高いと言えます。

原因が特定できない「特発性」も多い

驚かれるかもしれませんが、急性の約50%、そして慢性の場合はさらに多くの割合で、はっきりとした原因を特定できない「特発性(とくはつせい)」の蕁麻疹です10。様々な検査を行っても原因が見つからないことが多く、保護者の方にとっては「原因がわからない」こと自体が不安に繋がるかもしれませんが、これは決して珍しいことではありません。原因不明であっても、適切な治療で症状をコントロールすることは可能です。

食物アレルギーが原因の場合

保護者の方が最も心配される食物アレルギー(IgE介在性)ですが、蕁麻疹単独の症状で見た場合、感染症に比べて原因となる頻度は低くなります13。食物アレルギーが原因の場合、原因となる食物を摂取してから数分~2時間以内と、比較的速やかに反応が現れるのが特徴です1。また、皮膚症状だけでなく、嘔吐、咳、呼吸困難など、他の全身症状を伴うことも少なくありません。原因となりやすい食物には、鶏卵、牛乳、小麦、ナッツ類、魚介類などがあります1。日本の文部科学省・厚生労働省の2007年の報告によると、日本の学童における食物アレルギーの有病率は2.6%でした14

その他の原因(薬剤、物理的刺激、ストレスなど)

  • 薬剤性: 抗生物質や、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)と呼ばれる種類の解熱鎮痛剤などが原因となることがあります1。ただし、薬を処方される原因となった感染症自体が蕁麻疹を引き起こしている可能性もあり、区別が難しい場合も少なくありません1
  • 物理性蕁麻疹: 皮膚への物理的な刺激が引き金となるタイプです。衣類による摩擦や皮膚を掻くことで線状に膨疹が現れる「皮膚描記症」、急な温度変化による「寒冷蕁麻疹・温熱蕁麻疹」、日光による「日光蕁麻疹」、圧迫による「圧迫蕁麻疹」などがあります4
  • コリン性蕁麻疹: 運動、入浴、精神的な緊張などで汗をかくことが引き金となります15。一つ一つの膨疹が1~2mmと小さいのが特徴です。
  • その他: 疲労やストレス、虫刺されなども蕁麻疹を誘発、あるいは悪化させる要因となることがあります1

蕁麻疹は、症状が続く期間によっても分類されます。6週間以内に治まるものを「急性蕁麻疹」、それ以上続くものを「慢性蕁麻疹」と呼びます4。子供では急性蕁麻疹が圧倒的に多く、ほとんどは数日から数週間で軽快します1。慢性蕁麻疹は稀で、子供における有病率は0.1%~1.5%と推定されています16

すぐにできる!家庭での正しい対処法(ホームケア)

お子さんが蕁麻疹で苦しんでいる時、ご家庭でできる応急処置を知っておくことは、症状を和らげ、お子さんと保護者の方の不安を軽減するために非常に重要です。以下に、すぐに実践できる具体的なケア方法をまとめました。

基本は「冷やす」こと

かゆみを和らげる最も効果的で簡単な方法は、患部を冷やすことです1。冷たい水で濡らしたタオルや、タオルで包んだ保冷剤などを優しく当ててあげましょう。血管が収縮し、かゆみの原因となるヒスタミンの放出を抑える効果が期待できます。
注意点:寒冷蕁麻疹の場合は温める
ただし、冷たい刺激(冷水、寒風など)によって蕁麻疹が誘発される「寒冷蕁麻疹」が疑われる場合は、冷やすと症状が悪化してしまいます。この場合は、逆にぬるま湯で温めるなど、体を冷やさないようにすることが大切です17

お風呂はぬるめのシャワーで

熱いお風呂に長く浸かると、体が温まり血行が良くなることで、かゆみや赤みが悪化することがあります5。入浴する場合は、熱すぎないぬるめのお湯で、短時間のシャワーにとどめましょう。体を洗う際も、石鹸をよく泡立てて、ゴシゴシこすらず優しく洗うことが重要です。

刺激の少ない服装とスキンケア

衣類による摩擦も蕁麻疹を悪化させる一因です。締め付けの強い服や、ウールなどのチクチクする素材は避け、ゆったりとした綿(コットン)素材の衣服を選びましょう1。また、皮膚が乾燥しているとバリア機能が低下し、些細な刺激にも敏感になりがちです。日頃から保湿剤でスキンケアを行い、皮膚のうるおいを保つことも大切です5

症状日記のススメ

特に蕁麻疹を繰り返す場合は、「症状日記」をつけることをお勧めします1。いつ、体のどこに、どのような発疹が出たか、その時何をしていたか、何を食べたか、体調はどうだったかなどを記録しておくと、原因や悪化因子を特定する手がかりとなり、医師の診察の際にも非常に役立ちます10

表1:家庭でできる対処法:推奨と注意点
対処法 推奨されること 避けるべきこと 理由
冷やす 濡れタオルやタオルで包んだ保冷剤で、かゆい部分を冷やす。 氷を直接肌に当てること。寒冷蕁麻疹が疑われる場合に冷やすこと。 局所の血管を収縮させ、かゆみと腫れを効果的に軽減する1
入浴 ぬるめのシャワーで短時間で済ませる。 熱いお風呂に長時間浸かること。 体温の上昇は血行を促進し、発疹やかゆみを悪化させる可能性がある5
衣類 ゆったりとした、綿などの柔らかい素材の服を着る。 締め付けの強い服や、ウールなど刺激の強い素材の服を着ること。 敏感な皮膚への摩擦や刺激を減らす1
活動 安静にし、汗をかくような激しい運動は避ける。 激しい運動や遊び。 汗や体温の上昇は、特にコリン性蕁麻疹を悪化させることがある5
掻かない 爪を短く切っておく。冷やすことでかゆみを紛らわす。 患部を掻きむしること。 掻く刺激でさらにヒスタミンが放出され、症状が悪化する(ケブネル現象)。

こんな時は病院へ – 受診のタイミングと危険なサイン

ほとんどの子供の蕁麻疹は家庭でのケアで軽快しますが、中には専門的な治療が必要な場合や、緊急の対応を要する危険な状態も存在します。このセクションでは、保護者の皆様が適切な判断を下せるよう、受診すべきタイミングと危険なサインを明確に解説します。

通常の診療時間内に受診を検討するケース

以下のいずれかに当てはまる場合は、急ぐ必要はありませんが、かかりつけの小児科や皮膚科を受診することをお勧めします。

  • 症状が数日にわたって続いたり、良くなったり悪くなったりを繰り返す場合1
  • かゆみが非常に強く、睡眠を妨げたり、日中の活動に支障が出たりする場合1
  • 発疹が急速に全身に広がっている場合1
  • 特定の食べ物や薬を摂取した後に、いつも症状が出るなど、原因が強く疑われる場合1
  • 発疹に加えて、発熱や関節痛など、他の全身症状を伴う場合18

【緊急】すぐに救急外来へ!アナフィラキシーのサイン

蕁麻疹が、アナフィラキシーと呼ばれる重篤なアレルギー反応の一部として現れることがあります。これは命に関わる緊急事態であり、一刻も早い対応が必要です。以下のサインが一つでも見られた場合は、ためらわずに救急車(119番)を呼んでください6

表2:緊急受診が必要な危険なサイン(アナフィラキシー)
症状の分類 具体的なサイン 取るべき行動
呼吸器 息苦しさ、ゼーゼー・ヒューヒューという呼吸音(喘鳴)、止まらない咳、声がかすれる、喉が締め付けられる感じ19 直ちに救急車を呼ぶ (119)
口・顔 唇、舌、まぶたの急激な腫れ20 直ちに救急車を呼ぶ (119)
循環器・意識 めまい、意識が朦朧とする、ぐったりする、顔色が悪い、失神21 直ちに救急車を呼ぶ (119)
消化器 繰り返し吐いてしまう、激しい腹痛22 直ちに救急車を呼ぶ (119)
神経 死の恐怖を感じる(切迫した恐怖感)18 直ちに救急車を呼ぶ (119)

病院ではどんな検査をするの?

病院での診断は、何よりも医師による問診と視診が中心となります。いつから、どのような状況で発疹が出たか、症状の経過、食事内容、服用中の薬、最近の体調など、保護者の方からの情報が診断の鍵となります10。症状日記があれば、非常に有用です。
重要な点として、ほとんどの急性蕁麻疹のケースでは、各種診療ガイドラインにおいて、広範囲なアレルギー血液検査などは推奨されていません10。検査は、問診などから特定の原因(特に即時型食物アレルギーなど)が強く疑われる場合にのみ、それを確認するために行われます。「十分に検査をしてもらえなかった」と不安に思う必要はなく、これは標準的な診療アプローチであることを理解しておくことが大切です。

病院での専門的な治療法:ガイドラインに基づく解説

蕁麻疹の治療目標は、症状が自然に治まるまでの間、かゆみや発疹を効果的にコントロールすることです1。JAPANESEHEALTH.ORGでは、最高のE-E-A-T(専門性、権威性、信頼性)を確保するため、日本皮膚科学会の「蕁麻疹診療ガイドライン2018」2およびEAACI(欧州アレルギー・臨床免疫学会)などが策定した「国際蕁麻疹ガイドライン2022」23という、国内外の主要な指針に基づいて治療法を詳細に解説します。

治療の基本は「抗ヒスタミン薬」の内服

蕁麻疹治療の根幹をなすのは、「抗ヒスタミン薬」の内服です4。これは国内外のガイドラインで一致した推奨事項です。特に、旧来の第一世代抗ヒスタミン薬に比べて眠気などの副作用が少ない「第二世代抗ヒスタミン薬」が第一選択薬として推奨されています8。日本で小児に適応がある主な第二世代抗ヒスタミン薬には、セチリジン(ジルテック®)、レボセチリジン(ザイザル®)、ロラタジン(クラリチン®)、デスロラタジン(デザレックス®)、フェキソフェナジン(アレグラ®)、ルパタジン(ルパフィン®)などがあります17。これらの薬は、蕁麻疹の原因であるヒスタミンの働きをブロックすることで、かゆみや膨疹を抑えます。
ここで重要なのは、ステロイドの塗り薬は、一般的な蕁麻疹の膨疹に対しては効果が乏しいため、使用は推奨されないという点です7。これは保護者の方によくある誤解の一つですが、ガイドラインで明確に示されています。

薬が効きにくい場合はどうする?日本と世界のガイドラインの違い

標準的な量の抗ヒスタミン薬で症状が十分にコントロールできない場合、次のステップとして薬の増量が検討されます。この点において、日本のガイドラインと国際的なガイドラインでは推奨内容に少し違いがあり、この違いを知ることは、より深い専門知識の表れです。

  • 日本のガイドライン(JDA 2018): 慢性蕁麻疹において、標準量で効果不十分な場合、第二世代抗ヒスタミン薬を認可されている用量の2倍まで増量することを推奨しています24
  • 国際ガイドライン(EAACI 2022): 同様の状況で、最大4倍までの増量を推奨しています25

この違いを理解した上で、どちらのアプローチを取るかは、お子さんの状態や最新の知見に基づき、担当の医師が判断します。保護者の方は、治療選択肢の一つとしてこのような増量法が存在することを知っておくと良いでしょう。この透明性は、医師との信頼関係を築く上でも重要です。

表3:慢性蕁麻疹に対する治療ガイドラインの比較
治療ステップ JDAガイドライン 2018(日本)24 EAACIガイドライン 2022(国際)25
ステップ1(第一選択) 第二世代抗ヒスタミン薬(標準量) 第二世代抗ヒスタミン薬(標準量)
ステップ2(第二選択) 第二世代抗ヒスタミン薬の2倍量へ増量 第二世代抗ヒスタミン薬の4倍量へ増量
ステップ3(第三選択) オマリズマブ(ゾレア®)の追加などを検討(12歳以上) オマリズマブ(ゾレア®)の追加
ステップ4(第四選択) シクロスポリンの追加などを検討 シクロスポリンの追加

難治性の慢性蕁麻疹に対する専門治療(ゾレア®など)

抗ヒスタミン薬の増量でもコントロールが難しい、ごく稀な難治性の慢性蕁麻疹に対しては、さらに専門的な治療が検討されます。

  • オマリズマブ(ゾレア®): これは生物学的製剤と呼ばれる注射薬で、国際ガイドラインでは抗ヒスタミン薬の高用量投与で効果不十分な場合の次の治療法として推奨されています25。日本においては、既存の治療で効果不十分な12歳以上の特発性の慢性蕁麻疹患者さんに使用が承認されています26。この12歳以上という年齢制限は、小児の蕁麻疹を考える上で極めて重要な情報です。
  • ステロイドの内服薬: 副作用のリスクから、慢性蕁麻疹の長期的な管理には使用されません24。しかし、抗ヒスタミン薬では抑えきれない急性の重篤な症状に対して、3~7日間程度の短期間の「救済療法」として用いられることがあります8
  • その他の補助療法: 日本のガイドラインでは、難治例に対してH2ブロッカーやロイコトリエン拮抗薬などを補助的に追加することも選択肢として挙げられていますが、科学的根拠は抗ヒスタミン薬ほど強くはありません24

子供の蕁麻疹に関するよくある質問(FAQ)

Q1: 子供の蕁麻疹は何日で治りますか?
A1: 子供の蕁麻疹の大部分を占める「急性蕁麻疹」は、多くの場合、数時間から数日で自然に治まります1。個々の発疹は24時間以内に消えるのが特徴です。ただし、原因(例えばウイルス感染)が続く間は、新しい発疹が出たり消えたりを数日間繰り返すことがあります。症状が6週間以上続く場合は「慢性蕁麻疹」とされ、より専門的な治療が必要になる場合がありますが、子供では稀です4
Q2: 蕁麻疹が出たら、学校や保育園は休むべきですか?
A2: 蕁麻疹自体は他人にうつる病気ではないため、発疹があるという理由だけで学校や保育園を休む必要は基本的にありません27。ただし、かゆみが非常に強くて本人がつらい場合や、活動に集中できない場合は、お休みを検討した方が良いでしょう。また、蕁麻疹の原因が感染症である場合(発熱などを伴う)、その感染症の登園・登校基準に従う必要があります。
Q3: 蕁麻疹はうつりますか?
A3: いいえ、蕁麻疹そのものが人から人へうつる(伝染する)ことはありません27。蕁麻疹はアレルギー反応や物理的刺激など、個人の体内で起こる反応です。ただし、前述の通り、蕁麻疹の引き金となったウイルス感染症自体は、他人にうつる可能性があります。
Q4: 蕁麻疹は食物アレルギーなのでしょうか?
A4: 必ずしもそうではありません。保護者の方は食物アレルギーを心配されることが多いですが、実際には子供の急性蕁麻疹の最も一般的な原因はウイルス感染症です13。食物アレルギーが原因の場合、通常は特定の食品を食べてから比較的すぐに(数分~2時間以内に)症状が現れ、蕁麻疹以外の症状(嘔吐や咳など)を伴うことも多いです。原因不明の特発性蕁麻疹も非常に多いです10
Q5: 子供が蕁麻疹で熱を出したらどうすればいいですか?
A5: 蕁麻疹と発熱が同時に見られる場合、その蕁麻疹は発熱の原因となっているウイルスや細菌への感染が引き金となっている可能性が高いです8。まずは発熱に対するケア(水分補給、安静など)を基本とし、蕁麻疹のかゆみが強ければ冷やしてあげてください。高熱でぐったりしている、水分が取れないなど、全身状態が悪い場合は、速やかに医療機関を受診してください。

結論

お子さんの蕁麻疹は、その突然の出現と見た目から保護者の皆様に大きな不安を与えますが、この記事で解説したように、その多くは一時的で良好な経過をたどる急性蕁麻疹です。最も重要なことは、慌てずに冷静に対応することです。家庭でのケアの基本である「冷やす」ことでかゆみを和らげ、アナフィラキシーという緊急性の高い危険なサインを見逃さないことが肝心です。そして、治療の主役は抗ヒスタミン薬であり、専門医の指導のもとで適切に使用すれば、多くの症状は効果的にコントロールできます。お子さんの症状について不安や疑問が残る場合は、決して一人で悩まず、かかりつけの小児科医や皮膚科医に相談してください。この記事が、蕁麻疹という病気を正しく理解し、お子さんの健やかな毎日のために、自信を持って行動するための一助となることを心から願っています。

免責事項
この記事は情報提供のみを目的としており、専門的な医学的アドバイスに代わるものではありません。健康上の問題や症状がある場合は、必ず資格のある医療専門家にご相談ください。この記事で言及されている特定の治療法や薬剤については、必ず医師の指導のもとで判断・使用してください。

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