【医師監修】子宮筋腫と妊娠:リスク、管理、そして健やかなリプロダクティブ・ジャーニーのための包括的ガイド
妊娠

【医師監修】子宮筋腫と妊娠:リスク、管理、そして健やかなリプロダクティブ・ジャーニーのための包括的ガイド

子宮筋腫(子宮平滑筋腫)は、生殖可能年齢にある女性にとって最も一般的な婦人科疾患の一つです。日本産科婦人科学会(JSOG)の報告によると、月経のある女性の4人に1人に見られるとも言われ1、特に30代、40代の女性にとっては決して珍しいものではありません2。そのため、これから妊娠を望む女性や、すでに妊娠している女性が子宮筋腫と診断されたとき、その存在がご自身の健康、そして何よりもお腹の赤ちゃんにどのような影響を及ぼすのか、深い不安を抱くのは当然のことです。
JapaneseHealth.org編集委員会は、こうした不安を抱える女性とそのパートナーに対し、子宮筋腫と妊娠に関する最新かつ包括的な医学的知識を提供することを使命としています。本稿では、妊娠前の受胎能(妊娠する力)への影響から、妊娠中の管理、分娩、そして産後の注意点に至るまで、リプロダクティブ・ジャーニー(妊娠・出産に関わる道のり)の各段階における子宮筋腫の役割を、科学的根拠に基づいて詳細に解説します。
この記事を通じて強調したい中心的な概念は、子宮筋腫の影響は決して一様ではなく、その存在そのものが問題なのではないということです。真に重要なのは、筋腫の「場所、大きさ、数」という三つの要素です2。これらの要素が、個々の女性の症状、不妊のリスク、そして妊娠中の合併症にどのように関わるのかを理解することが、適切な対策を講じ、健やかな妊娠・出産を目指すための第一歩となります。本稿が、皆様がご自身の状態を深く理解し、主治医との対話をより実りあるものにするための一助となることを願っています。

この記事の科学的根拠

この記事は、明示的に引用された最高品質の医学的エビデンスにのみ基づいています。以下は、参照された実際の情報源の一部とその医学的指導との関連性です。

  • 日本産科婦人科学会 (JSOG): 子宮筋腫の診断、治療法、および妊娠中の管理に関する指針は、同学会の診療ガイドラインに基づいています341
  • 米国産科婦人科学会 (ACOG): 子宮筋腫の管理、特に治療選択肢に関する推奨事項は、ACOGが発行したガイドラインを参考にしています936
  • 厚生労働省: 日本国内における子宮筋腫の有病率や疫学データに関する記述は、厚生労働省の公式調査に基づいています12
  • 各種システマティックレビューおよびメタアナリシス: 子宮筋腫が妊孕性や妊娠合併症に与える影響に関する統計的リスクは、複数の研究を統合解析した質の高いエビデンス(例:Pritts EA, et al., 200940; Zepiridis et al., 202247)に基づいています。

要点まとめ

  • 子宮筋腫は生殖年齢の女性に非常に多い良性腫瘍ですが、がん化することはありません5
  • 筋腫の影響は、その「場所、大きさ、数」によって大きく異なり、全ての筋腫が問題となるわけではありません2
  • 子宮の内腔を変形させる粘膜下筋腫は、小さくても不妊や流産、過多月経の主な原因となります2
  • 妊娠を希望し、筋腫が原因で不妊や症状がある場合、子宮を温存する子宮筋腫核出術が標準的な治療法です34
  • 筋腫核出術の既往がある場合、将来の分娩は安全のため予定帝王切開が強く推奨されます2
  • 筋腫合併妊娠では、早産や胎盤異常、産後出血などのリスクが上昇する可能性があるため、慎重な経過観察が必要です86
  • 最も重要なことは、妊娠計画段階で専門医と相談し、ご自身の状況に合わせた個別化された管理計画を立てることです2

第I部:子宮筋腫の基礎知識

妊娠への影響を理解するためには、まず子宮筋腫そのものがどのような疾患であるか、その科学的・臨床的背景を正確に把握することが不可欠です。このセクションでは、子宮筋腫の定義、疫学、分類、そして症状について、医学的な基礎知識を解説します。

第1章:子宮筋腫(子宮平滑筋腫)の定義

病態生理学:子宮筋腫の良性な性質

子宮筋腫は、正式には子宮平滑筋腫(uterine leiomyoma)と呼ばれ、子宮の壁を構成する平滑筋という筋肉組織から発生する良性の腫瘍です3。最も重要な点は、子宮筋腫は「良性」であり、がん(悪性腫瘍)とは全く異なる性質を持つということです5。したがって、筋腫が他の臓器に転移したり、命を脅かすような病気になることは基本的にありません。また、良性である子宮筋腫が悪性化して子宮平滑筋肉腫(がんの一種)になることもないと考えられています3。この点を理解することは、診断に伴う過度な不安を和らげる上で非常に重要です。

疫学と有病率:日本及び世界における現状

子宮筋腫は、生殖年齢の女性において最も頻繁に見られる骨盤内腫瘍です。米国疾病予防管理センター(CDC)のデータなどを基にした報告によれば、その有病率は高く、閉経までに最大で70~80%の女性が罹患すると推定されています8
日本国内のデータに目を向けると、子宮筋腫は性成熟期の女性の20~40%に認められると報告されています12。より具体的には、30代女性の約30%、40代女性の約40%が子宮筋腫を持っていると言われるほど一般的な疾患です3。厚生労働省の2017年度患者調査によれば、子宮筋腫の発生頻度は年齢とともに増加し、40歳代でピークに達することが示されています12

ホルモンの影響と自然史

子宮筋腫の発生と成長は、卵巣から分泌される女性ホルモン、特にエストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)に依存していることが知られています1。このホルモン依存性のため、子宮筋腫は女性ホルモンの分泌が活発な生殖年齢の間に発育し、ホルモンレベルが低下する閉経後には自然と縮小する傾向があります1
ここで、現代社会における一つの重要な医学的・社会的な文脈が浮かび上がります。それは、晩婚化・晩産化という社会全体の傾向と、子宮筋腫の好発年齢との間の密接な関連です。疫学データが示すように、子宮筋腫の有病率や症状は30代後半から40代にかけてピークを迎えます3。一方で、近年、多くの女性がこの年齢層で初めての妊娠を計画するようになっています。さらに、妊娠・出産の回数が少ないことは、子宮筋腫の発生リスクを高める一因とされています10
この結果、年齢に伴う自然な妊孕性(にんようせい:妊娠する力)の低下と、子宮筋腫の発生・増大という二つの課題に同時に直面する女性が増加しているのです。この「二重の課題」は、治療方針の決定に大きな影響を与えます。例えば、筋腫の治療として手術を選択した場合、術後の回復と妊娠許可までに数ヶ月の期間が必要となりますが、この期間が、妊娠を希望する女性にとって非常に貴重な時間となり得るのです38。このため、子宮筋腫の管理は、単なる生物学的な問題としてだけでなく、個々の女性のライフプランや年齢を考慮した、時間的制約のある中で最適な判断を求められる複雑な課題となっています。

第2章:分類と症状

子宮筋腫がもたらす影響を理解する上で最も重要な原則は、「筋腫の存在そのもの」よりも「筋腫がどこにできているか」です。筋腫の臨床的な重要性は、その大きさと同様に、あるいはそれ以上に、発生部位によって大きく左右されます2

「場所」が鍵を握る原則:FIGO分類

子宮筋腫は、その発生部位によって主に3つのタイプに分類されます。この分類は、国際産科婦人科連合(FIGO)によって標準化されています。

  • 粘膜下筋腫(ねんまくかきんしゅ, Submucosal fibroid)
    子宮の内側を覆う子宮内膜のすぐ下に発生し、子宮の内腔(赤ちゃんが育つスペース)に向かって突出するタイプの筋腫です。たとえ小さくても、子宮内膜を変形させるため、過多月経や不正出血といった出血症状を最も強く引き起こす傾向があります。また、受精卵の着床を直接的に妨げるため、不妊症や流産の最も大きな原因となります2
  • 筋層内筋腫(きんそうないきんしゅ, Intramural fibroid)
    子宮の筋肉の壁(子宮筋層)の中に発生する筋腫です。子宮筋腫の中で最も多く、全体の約70%を占めると言われています2。小さい場合は無症状であることが多いですが、大きくなると子宮全体が引き伸ばされ、月経量が増加したり、月経痛が強くなったりします。また、子宮内腔を圧迫・変形させるほど大きくなると、粘膜下筋腫と同様に不妊や流産のリスクを高めることがあります2
  • 漿膜下筋腫(しょうまくかきんしゅ, Subserosal fibroid)
    子宮の外側を覆う漿膜(しょうまく)の下に発生し、子宮の外側に向かって発育するタイプの筋腫です。子宮の内腔には影響を与えにくいため、月経に関する症状や不妊の原因となることは稀です。しかし、非常に大きくなると、隣接する膀胱を圧迫して頻尿を引き起こしたり、直腸を圧迫して便秘や排便痛の原因となることがあります2

臨床症状:無症状から重篤な症状まで

子宮筋腫を持つ女性の多くは無症状で、婦人科検診などで偶然発見されます6。しかし、症状が現れる場合、その内容は多岐にわたります。

  • 不正子宮出血:最も一般的な症状は過多月経(月経血量が異常に多いこと)と過長月経(月経期間が長いこと)です。これにより、慢性的な鉄欠乏性貧血に陥り、動悸、息切れ、めまい、倦怠感などを引き起こすことがあります2
  • 痛みと圧迫感:月経痛(月経困難症)の悪化、月経期以外の骨盤痛や腰痛、下腹部の圧迫感や膨満感などがみられます6
  • 圧迫による症状:筋腫が大きくなることで周囲の臓器を圧迫し、膀胱圧迫による頻尿や排尿困難、直腸圧迫による便秘や排便痛などを引き起こすことがあります6
  • 生殖機能への影響:不妊症や習慣流産(繰り返す流産)の原因となることがあります。これについては第II部で詳述します18

診断方法

子宮筋腫の診断は、通常、以下の段階的なアプローチで行われます。

  • 内診(骨盤内診察):医師が子宮の大きさや硬さ、可動性を評価します。
  • 経腟超音波検査:子宮筋腫の診断における第一選択の画像検査です。プローブを腟内に挿入し、子宮や卵巣の状態を詳細に観察することで、筋腫の有無、位置、大きさ、数などを高い精度で確認できます2
  • MRI検査:超音波検査で診断が困難な場合や、手術を計画する際に、筋腫の位置関係や内部の性状をより詳細に評価するために用いられます。特に、多数の筋腫が存在する場合や、子宮内膜との正確な位置関係を把握する上で非常に有用です17
  • 子宮鏡検査・ソノヒステログラフィー:粘膜下筋腫が疑われる場合に、子宮の内腔を直接観察するために行われます。子宮鏡検査では細いカメラを子宮内に挿入し、ソノヒステログラフィーでは生理食塩水を子宮内に注入しながら超音波検査を行うことで、内腔の変形や突出した筋腫を明確に描出します3
表1:子宮筋腫の分類と臨床的特徴の要約
筋腫のタイプ 位置 主な症状 妊孕性への影響 主な妊娠リスク
粘膜下筋腫 子宮内腔に突出し、子宮内膜を圧迫・変形させる。 過多月経、不正出血、重度の月経痛、貧血。小さくても症状が強い。 高い。 受精卵の着床を直接阻害する。 流産、早産、胎盤位置異常。
筋層内筋腫 子宮の筋層内に存在する。最も一般的なタイプ。 小さい場合は無症状。大きくなると過多月経、月経痛、圧迫症状。 中程度。 子宮内腔を変形させるほど大きい場合に影響。 流産、早産、胎位異常、陣痛異常。
漿膜下筋腫 子宮の外側表面に発生し、腹腔内に突出する。 月経症状は少ない。大きくなると膀胱や直腸への圧迫症状(頻尿、便秘)。 低い。 通常、妊孕性には影響しない。 非常に大きい場合、胎位異常や分娩時の障害となる可能性。

出典: JapaneseHealth.org編集委員会が参考文献2に基づき作成。

第II部:妊娠前の課題:子宮筋腫と妊孕性

このセクションでは、妊娠を計画する段階における子宮筋腫の影響に焦点を当てます。子宮筋腫がどのようにして妊娠の妨げとなるのか、そして妊娠前にどのような治療選択肢が考慮されるのかを、最新の医学的エビデンスに基づいて解説します。

第3章:子宮筋腫が妊娠能力に与える影響

統計的な現実

子宮筋腫が不妊に悩む女性に見つかることは珍しくありません。不妊女性の5~10%に子宮筋腫が認められると報告されています10。しかし、ここで重要なのは、子宮筋腫が不妊の唯一の原因であると特定されるケースは、全体の1~3%程度と比較的少ないという事実です10。この統計は、子宮筋腫が見つかったからといって、必ずしもそれが不妊の直接的な原因とは限らないことを示唆しており、不妊の原因を特定するためには包括的な検査が不可欠であることを物語っています。

妊孕性低下のメカニズム

子宮筋腫が妊娠の成立を妨げるメカニズムは複数提唱されており、主に筋腫の「場所」と「大きさ」に関連しています8

  • 子宮内腔の物理的な変形:粘膜下筋腫や、子宮内腔を圧迫するほど大きな筋層内筋腫は、子宮の内部の形状を歪ませます。この変形により、受精卵が子宮内膜に着床するための平らで安定した環境が損なわれ、着床障害を引き起こします2
  • 卵管の閉塞:筋腫が卵管の入り口(卵管口)付近に発生すると、卵管を物理的に圧迫または閉塞させることがあります。これにより、精子が卵子に到達する経路や、受精卵が子宮へと移動する経路が妨げられます8
  • 子宮内環境の変化:筋腫の存在は、子宮内膜の局所的な環境にも影響を及ぼします。
    • 血流の変化:筋腫が子宮内膜への正常な血液供給を妨げ、着床に必要な内膜の成熟を阻害する可能性があります19
    • 慢性的な炎症:筋腫組織は炎症性サイトカインを放出することがあり、これが子宮内膜の受容能(着床を受け入れる能力)を低下させる一因と考えられています10
    • 子宮収縮の異常:筋腫は子宮の正常な収縮運動を妨げ、精子の上昇や胚の輸送を阻害する可能性があります19
編集委員会の視点:相関関係と因果関係の区別
臨床現場における重要な視点として、「相関関係と因果関係の区別」について考察する必要があります。子宮筋腫と不妊は、ともに年齢とともに有病率が上昇するという共通の特徴を持っています10。そのため、不妊に悩む30代後半から40代の女性に子宮筋腫が見つかることは、統計的に頻繁に起こりうる「相関関係」です。しかし、これは必ずしも筋腫が不妊の「因果関係」にあることを意味しません。
この区別は、治療方針を決定する上で極めて重要です。例えば、不妊の原因が男性因子、排卵障害、あるいは卵管因子など他にあるにもかかわらず、偶然発見された子宮筋腫のみに注目して手術を行ってしまうと、患者は不必要な侵襲を受け、貴重な時間を失うことになりかねません。したがって、医師は子宮筋腫の治療を勧める前に、必ず他の不妊原因を網羅的に検査し、筋腫が妊孕性を妨げている可能性が高いと判断した場合にのみ、介入を検討するという慎重なアプローチを取ります。このプロセスを理解することは、患者が自身の治療計画に納得し、主体的に関わるために不可欠です。

第4章:妊娠前の戦略的マネジメント

子宮筋腫を持つ女性が妊娠を希望する場合、その治療方針は画一的ではなく、個々の状況に応じて慎重に決定されます。治療の要否や方法は、症状の有無と重症度、筋腫のタイプ(位置・大きさ・数)、そして何よりも患者の年齢と妊娠への希望を総合的に考慮して、個別化されるのが大原則です6

経過観察(Watchful Waiting)

筋腫があっても症状がない、あるいは軽微で、かつ筋腫が子宮内腔を変形させていない場合(例えば、小さな筋層内筋腫や漿膜下筋腫)は、必ずしもすぐに治療が必要なわけではありません。この場合、「経過観察」が選択され、3ヶ月から1年ごとの定期的な超音波検査で筋腫の大きさや症状の変化を注意深く見守ります2

外科的治療:子宮筋腫核出術(Myomectomy)

子宮筋腫核出術は、将来の妊娠を望む女性のために、子宮を温存しながら筋腫のみを取り除く手術です6

  • 手術の目的と適応:主な目的は、筋腫による症状(過多月経、疼痛など)の緩和と、妊孕性の改善です。特に、不妊症や反復流産の原因が、他に認められず、子宮内腔を変形させる粘膜下筋腫や大きな筋層内筋腫であると強く疑われる場合に推奨されます。米国生殖医学会(ASRM)のガイドラインでは、粘膜下筋腫の摘出は妊孕性の改善に有効である可能性が高いとされています39。また、日本産科婦人科学会のガイドラインによれば、他に不妊原因がない30代後半の女性で、5cm以上の筋層内・漿膜下筋腫がある場合にも、妊娠前の手術が勧められることがあります17
  • 有効性に関するエビデンス:複数のシステマティックレビューにより、子宮鏡を用いた粘膜下筋腫の核出術が、臨床的妊娠率を改善させることが示唆されています39。一方で、子宮内腔を変形させていない筋層内筋腫に対する核出術の有効性については、エビデンスがまだ十分ではなく、議論が続いています39
  • 主な手術手技:
    • 子宮鏡下筋腫核出術:腟から子宮内に細い内視鏡(子宮鏡)を挿入し、子宮内腔に突出した粘膜下筋腫を電気メスで切除する方法です。腹部に傷ができず、体への負担が最も少なく、術後の回復も早いのが特徴です3
    • 腹腔鏡下(ロボット支援含む)筋腫核出術:腹部に数カ所の小さな穴を開け、そこから腹腔鏡(カメラ)と手術器具を挿入して筋腫を摘出します。筋層内筋腫や漿膜下筋腫が主な対象です。開腹手術に比べて傷が小さく、術後の痛みが少なく、回復が早いため、近年多くの施設で第一選択とされています29
    • 開腹筋腫核出術:下腹部を数cm~10cm程度切開して行う従来の手術法です。筋腫が非常に大きい、数が多い、あるいは癒着が強いなど、腹腔鏡下手術が困難な場合に選択されます29
編集委員会の視点:治療のパラドックス
子宮筋腫核出術は、筋腫による不妊を解決するための主要な治療法ですが、この手術には一つの重要な「治療のパラドックス」が存在します。すなわち、妊娠する能力を改善するために行われるこの手術が、将来の妊娠・分娩に新たな長期的リスクと制約をもたらすという点です。
第一に、手術によって子宮の筋層にメスを入れるため、子宮壁に傷跡(瘢痕)が残ります。この瘢痕組織は、正常な筋層よりも強度が劣るため、将来の妊娠で陣痛が始まった際に、その部分が裂けてしまう「子宮破裂」という、母子ともに極めて危険な状態に陥るリスクがあります。この生命を脅かす合併症を避けるため、日本産科婦人科学会のガイドラインでは、筋層に達する筋腫核出術の既往がある場合、陣痛が来る前の「予定帝王切開」による分娩を強く推奨しています2。つまり、手術を受けることで、将来の分娩方法は帝王切開にほぼ限定されることになります。
第二に、手術後は子宮の傷が十分に治癒するのを待つ必要があり、通常3ヶ月から6ヶ月程度の避妊期間が推奨されます41。この待機期間は、特に年齢的な制約を感じている女性にとって、決して無視できない時間的なロスとなります38
したがって、子宮筋腫核出術を受けるという決断は、単に「筋腫を取り除いて妊娠しやすくする」という単純なものではありません。それは、「妊孕性向上の可能性」と、「将来の帝王切開という分娩様式の制約、および貴重な妊活期間の消費」とを天秤にかける、複雑なトレードオフなのです。このパラドックスを十分に理解し、医師と深く話し合うことが、後悔のない選択をするために不可欠です。

その他の低侵襲治療:UAEとRFA

  • 子宮動脈塞栓術(UAE):カテーテルを用いて筋腫を栄養する血管を塞ぎ、筋腫を「兵糧攻め」にして縮小させる治療法です。症状の改善には有効ですが3、卵巣機能への影響や、その後の妊娠における胎盤の異常などのリスクが懸念されており、ACOGなどのガイドラインでは妊娠を希望する女性には原則として推奨されません9
  • 高周波アブレーション(RFA):針を筋腫に刺し、高周波電流で発生する熱によって筋腫組織を焼灼・壊死させる治療法です。低侵襲ですが、ACOGのガイドラインでは、妊娠への影響に関するデータが限定的であるため、妊娠希望者には慎重なカウンセリングが必要であるとされています9

薬物療法

GnRHアゴニスト/アンタゴニストや低用量ピルなどの薬物療法は、過多月経などの症状を緩和したり、手術前に筋腫を縮小させて出血量を減らす目的で用いられます3。しかし、これらの薬剤は排卵を抑制することで効果を発揮するため、服用中は妊娠することができません。したがって、これらは妊孕性を高めるための治療ではなく、あくまで症状管理や手術の補助療法と位置づけられています14

表2:妊娠希望がある場合の症状性子宮筋腫に対する治療選択肢の比較分析
治療法 主な目的 妊孕性への影響 主な対象 主なリスク・欠点 ガイドライン上の位置づけ
子宮筋腫核出術 筋腫の除去、症状緩和、妊孕性の改善 改善が期待される(特に粘膜下筋腫) 症状があり、筋腫が不妊原因と考えられる女性 手術リスク、術後癒着、子宮破裂リスク(→帝王切開推奨)、再発(15-30%)、術後避妊期間 妊孕性温存の標準的外科治療34
子宮動脈塞栓術 (UAE) 筋腫の縮小、症状緩和 不明/悪影響の懸念 症状が重いが手術を希望せず、妊娠希望がない女性 卵巣機能低下、胎盤異常のリスク、術後疼痛、感染症 妊娠希望者には非推奨9
高周波アブレーション (RFA) 筋腫の焼灼、症状緩和 データ不十分 症状があり、子宮温存を希望する女性 妊娠への安全性が未確立、新しい治療法のため長期データが不足 妊娠希望者には慎重なカウンセリング要9
薬物療法 症状緩和、術前補助 治療中は妊娠不可(排卵抑制のため) 過多月経などの症状が強い女性、術前の貧血改善 更年期様症状の副作用、長期使用不可、中止後の再発 妊孕性改善を目的としない対症療法14
経過観察 変化のモニタリング 直接的な影響はない 無症状または軽症で、筋腫が内腔を変形させていない女性 妊娠中に筋腫が増大・変性する可能性 多くの無症状・軽症例での第一選択6

出典: JapaneseHealth.org編集委員会が参考文献3,6,9,14,34に基づき作成。

第III部:妊娠中の道のり:筋腫合併妊娠の管理

子宮筋腫を持ったまま妊娠が成立した場合、妊娠期間を通じて特別な注意と管理が必要となることがあります。このセクションでは、妊娠中の筋腫の変化、起こりうるリスクと合併症、そしてそれらに対する臨床的な監視とケアについて解説します。

第5章:妊娠中における子宮筋腫の動態

筋腫のサイズ変化の力学

妊娠中はエストロゲンなどの女性ホルモンが非常に高いレベルで維持されるため、従来、子宮筋腫は妊娠中に増大するものと広く考えられてきました。しかし、近年の研究では、その動態は一様ではないことが明らかになっています。実際には、妊娠中に筋腫のサイズが増大するのは約20~30%の症例に過ぎず、多くの筋腫は大きさが変わらないか、一部では縮小することさえ報告されています2。この多様性は、画一的な予測が困難であることを意味し、個々の症例に応じた定期的な超音波検査によるモニタリングの重要性を強調しています。

「赤色変性」と疼痛管理

妊娠中に起こりうる特徴的な合併症の一つに「赤色変性」があります。これは、筋腫が急速に増大しようとする際に、その内部への血液供給が追いつかなくなり、組織が虚血(血流不足)に陥って壊死することで、急性の激しい腹痛や圧痛を引き起こす状態です5
この痛みはプロスタグランジンの放出が関与していると考えられており19、管理は基本的に保存的治療が中心となります。具体的には、安静、十分な水分補給、そしてアセトアミノフェンなどの鎮痛薬が用いられます。痛みが強い場合には、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)が使用されることもありますが、特に妊娠後期での長期使用は胎児への影響があるため、医師の厳重な管理下で慎重に投与されます19。痛みが極めて重度の場合には、入院による管理が必要となることもあります5

第6章:潜在的なリスクと合併症

子宮筋腫合併妊娠は、筋腫がない妊娠と比較していくつかの産科的合併症のリスクが高まることが知られています。そのリスクは、筋腫の「大きさ」「数」「位置」に大きく依存します2

産科リスクの系統的レビュー

  • 妊娠初期:流産のリスクが上昇します。特に、子宮内腔に突出する粘膜下筋腫や、複数の筋腫が存在する場合にそのリスクは高まります8。また、胎盤が筋腫の近くに形成された場合、妊娠初期の性器出血が起こりやすくなるという報告もあります45
  • 妊娠中期・後期:
    • 切迫流産・早産:これは最も注意すべき合併症の一つです。あるメタアナリシス(複数の研究を統合・解析した研究)によれば、子宮筋腫を持つ女性は、持たない女性に比べて妊娠37週未満の早産率が有意に高く(オッズ比 1.66)、そのリスクは妊娠週数が早いほど(34週未満、32週未満など)さらに高まることが示されています247
    • 胎盤の異常:胎盤が正常な位置より低い位置に付着する「前置胎盤」や、妊娠中に胎盤が子宮壁から早期に剥がれてしまう「常位胎盤早期剥離」のリスクが増加します。これらは大量出血の原因となり、母子ともに危険な状態を招きかねません8
    • 胎位異常:子宮内腔が筋腫によって変形していると、胎児が正常な頭位(頭が下になった状態)をとることができず、骨盤位(逆子)や横位になる頻度が高まります18
    • その他のリスク:胎児の発育が遅れる「胎児発育不全(FGR)」や、陣痛開始前に破水してしまう「前期破水」のリスクも指摘されています2
編集委員会の視点:リスクの増幅効果
産科合併症の全体的なリスクは、すべての筋腫合併妊娠で一律に高まるわけではありません。リスクの度合いは、筋腫の持つ特定の特性によって増幅されることが、多くの研究で示唆されています。具体的には、

  1. 直径5cm以上の大きな筋腫2
  2. 複数の筋腫が存在する場合8、そして
  3. 粘膜下筋腫や胎盤の直下に位置する筋腫45

は、最も高い確率で有害な産科的アウトカムと関連しています。
この事実は、リスク評価の個別化がいかに重要であるかを浮き彫りにします。例えば、単一で小さな漿膜下筋腫を持つ妊婦のリスクプロファイルは、複数の大きな筋層内筋腫を持つ妊婦のそれとは全く異なります。医師は、超音波検査で得られたこれらの詳細な情報に基づいて、個々の患者のリスクを層別化し、それに応じた監視計画を立てます。この「リスクの増幅効果」を理解することは、なぜ自分の妊娠が「ハイリスク」と見なされるのか、あるいはなぜ「過度に心配する必要はない」と言われるのかを、患者自身が論理的に把握する上で助けとなります。

第7章:臨床的サーベイランスと保存的治療

標準的な管理方針

子宮筋腫合併妊娠における管理の基本方針は、圧倒的に「保存的治療」と「慎重な経過観察」です18。これには、定期的な超音波検査による筋腫のサイズ変化のモニタリングと、胎児の発育評価が含まれます。

妊娠中の外科手術を避ける根拠

妊娠中、あるいは帝王切開の際に予防的に筋腫を摘出する手術は、原則として強く推奨されず、極めて稀にしか行われません24
その最大の理由は、妊娠中の子宮への血流が劇的に増加しているためです。この状態で子宮にメスを入れると、コントロール困難な大量出血を引き起こすリスクが非常に高く、最悪の場合、母体の救命のために緊急の子宮全摘出術が必要になる可能性があります24。手術が行われるのは、茎(くき)のある漿膜下筋腫が捻じれて激痛が続く(茎捻転)場合や、筋腫が産道を物理的に完全に塞いでいる場合など、ごく限られた状況のみです45

表3:子宮筋腫に関連する主な産科合併症の概要
合併症 リスクの概要 リスクを高める主な筋腫の要因 主な典拠
流産 特に妊娠初期のリスクが上昇。 粘膜下筋腫、複数の筋腫 8
早産 (<37週) リスクが約1.66倍に上昇 (OR 1.66)。より早期の早産ほどリスクは高い。 大きな筋腫 (>5cm)、複数の筋腫、胎盤に接する筋腫 2, 47
常位胎盤早期剥離 リスクが上昇。 胎盤後方の筋腫、大きな筋腫 18
前置胎盤 リスクが上昇。 子宮下部の筋腫、大きな筋腫 8
胎位異常(骨盤位など) リスクが上昇。 子宮内腔の変形、子宮下部の筋腫 18
帝王切開 帝王切開での分娩率が上昇。 胎位異常、陣痛異常、産道閉塞、筋腫核出術の既往 2
産後出血 リスクが上昇。 子宮収縮不全(アトニー) 6

OR: Odds Ratio (オッズ比)。出典: JapaneseHealth.org編集委員会が参考文献2,6,8,18,47に基づき作成。

第IV部:分娩とその後

妊娠の最終段階である陣痛、分娩、そして産褥期においても、子宮筋腫は特有の影響を及ぼす可能性があります。このセクションでは、周産期における注意点と管理について解説します。

第8章:妊娠末期のナビゲーション

陣痛と胎位への影響

妊娠末期になると、筋腫は分娩の進行に直接影響を与えることがあります。前述の通り、子宮内腔を変形させる筋腫は胎位異常(逆子や横位)の原因となり、これが帝王切開の適応となることがあります18
また、筋腫が子宮筋層の正常な構造を妨げることで、陣痛が始まっても子宮が効果的に収縮しない「微弱陣痛」や、収縮が不規則になる「陣痛不全(dystocia)」を引き起こす可能性があります2。これにより分娩が遷延し、母子への負担が増大することがあります。

分娩方法:経腟分娩 vs. 帝王切開

子宮筋腫があっても、多くの場合は経腟分娩が可能です。特に筋腫が小さく、子宮口から離れた位置にある場合は、安全に経腟分娩を達成できることがほとんどです2
しかし、以下のような状況では帝王切開が選択される可能性が高まります:

  • 筋腫が産道を物理的に塞いでいる場合2
  • 胎位異常が分娩開始までに矯正されない場合8
  • 微弱陣痛などにより分娩が進行しない場合2
  • そして最も重要な点として、妊娠前に子宮筋腫核出術の既往がある場合です。前述の通り、子宮破裂のリスクを回避するため、陣痛が発来する前に計画的に帝王切開を行うことが、現在の日本の標準的な診療ガイドラインで強く推奨されています241

第9章:産褥期の留意点

産後出血(Postpartum Hemorrhage, PPH)のリスク

分娩後、子宮は速やかに収縮して胎盤が剥がれた部位からの出血を止めます。しかし、子宮筋腫が存在すると、子宮全体の収縮が妨げられ、弛緩したままになる「子宮弛緩症(uterine atony)」を引き起こすことがあります。これが産後の大量出血(PPH)の主な原因となり、非常に危険な状態に陥る可能性があります6。このリスクがあるため、子宮筋腫を持つ女性には、適切な輸血や子宮収縮薬の準備が整った病院での分娩が強く推奨されます21

産後の筋腫の退縮

一方で、ポジティブな側面もあります。妊娠というホルモン環境が終了すると、多くの筋腫は産褥期から数ヶ月かけて自然に縮小(退縮)していきます11。妊娠中に増大した筋腫も、元の大きさに戻るか、それ以上に小さくなることが期待できます。

第V部:健やかな妊娠への積極的アプローチ:知識と推奨事項の統合

これまでの情報を踏まえ、この最終セクションでは、子宮筋腫と向き合いながら健やかな妊娠を目指すための、実践的かつ前向きなアプローチを提示します。

第10章:妊娠前のコンサルテーション

患者と医師の対話を力に

子宮筋腫と診断され、将来的に妊娠を希望するすべての女性にとって、最も重要な行動は、妊娠を計画する段階で産婦人科医と専門的なコンサルテーションを行うことです。これにより、個々の状況に合わせた最適な管理計画を、事前に、そして主体的に立てることが可能になります2

主治医に尋ねるべき重要な質問

情報に基づいた対話を行うために、以下の質問リストを参考に、ご自身の疑問や懸念を整理しておくことをお勧めします。

  • 診断について:「私の超音波検査やMRIの結果から、筋腫の正確な位置(粘膜下、筋層内、漿膜下)、大きさ、そして数はどのようになっていますか?」
  • 妊孕性への影響について:「私の筋腫は、子宮内腔を変形させていますか?それが不妊の原因となっている可能性はどの程度ありますか?」
  • 治療方針について:「私の年齢と妊娠の希望を考慮すると、現時点では経過観察が妥当でしょうか、それとも妊娠を試みる前に何らかの治療が推奨されますか?」
  • 手術について:「もし手術が推奨される場合、私のケースでは子宮鏡下、腹腔鏡下、開腹手術のどれが最適で、それぞれのメリットとデメリットは何ですか?」
  • 術後の計画について:「手術を受けた場合、妊娠を試み始めるまでに推奨される待機期間はどのくらいですか?また、将来の分娩方法は帝王切開になりますか?」

第11章:意思決定のフレームワーク

個人の目標と医学的エビデンスの統合

複雑な選択肢を整理するために、以下のような簡略化された意思決定の道筋を参考にすることができます。

  • パス1:無症状/子宮内腔を変形させていない筋腫
    • → 多くの場合、経過観察が選択されます。
    • → 医師の指導のもと、妊娠の試みを開始します。
  • パス2:症状がある/子宮内腔を変形させている筋腫
    • → 治療の必要性について医師と相談します。
    • → 将来の妊娠を希望しますか?
      • はい → 子宮筋腫核出術が主要な選択肢となります。
      • いいえ → 子宮筋腫核出術、子宮動脈塞栓術(UAE)、子宮全摘出術など、より幅広い選択肢が考慮されます。

ここで、治療を決定する上でのもう一つの重要な側面、すなわち生活の質(Quality of Life, QOL)の観点について触れておきます。子宮筋腫の治療目的は、単に「妊娠するため」だけではありません。過多月経による重度の貧血や、それに伴う倦怠感、月経時の激しい痛みなどは、女性の日常生活や仕事、精神的な健康に深刻な影響を及ぼします2
あすか製薬が2021年に実施した日本の調査研究では、症状のある未治療の子宮筋腫患者のQOLは著しく低い一方で、治療歴のある患者のQOLは、筋腫がない女性と同程度まで回復することが示されています。特に、貧血はQOLを低下させる重要な要因であることが明らかにされました26。この事実は、治療が妊娠という目標だけでなく、女性自身の健康と幸福を取り戻すための強力な手段であることを示しています。この包括的な視点は、「健やかな妊娠」を目指す上で、まず母体自身が健康であることが基盤となるという、本質的な考え方を裏付けています。

第12章:リソースとサポート

専門機関と患者支援団体

正確な情報と精神的なサポートを得るために、以下のリソースを活用することが推奨されます。

  • 専門学会:日本産科婦人科学会(JSOG)49や米国産科婦人科学会(ACOG)9などのウェブサイトでは、専門家向けの診療ガイドラインが公開されており、標準的な治療方針に関する最も信頼性の高い情報源となります。
  • 患者支援団体:日本には「子宮筋腫・内膜症体験者の会たんぽぽ」5152のような、当事者による自助グループが存在します。こうした団体は、同じ悩みを持つ仲間との情報交換や精神的な支え合いの場を提供しており、孤立感を和らげ、病気と向き合う力を与えてくれます。

結論

子宮筋腫は、妊娠・出産において確かに様々な課題をもたらす可能性があります。しかし、その影響は個々の状況によって大きく異なり、過度に恐れる必要はありません。最も重要なことは、ご自身の状態を正確に把握し、信頼できる主治医と緊密なパートナーシップを築き、情報に基づいた意思決定を主体的に行うことです。
適切な知識、計画的な準備、そして個別化された医療ケアがあれば、子宮筋腫を持つ多くの女性にとって、健やかな妊娠と出産は十分に達成可能な目標です。このレポートが、その道のりを歩む上での確かな羅針盤となることを心から願っています。

よくある質問

質問1:子宮筋腫があると、必ず不妊になりますか?
いいえ、必ずしもそうではありません。不妊に悩む女性の5~10%に筋腫が見られますが、筋腫だけが不妊の原因であるケースは1~3%程度とされています10。筋腫の中でも、子宮内腔を圧迫・変形させる「粘膜下筋腫」が最も不妊に繋がりやすいです2。多くの筋層内筋腫や漿膜下筋腫は、妊孕性に影響を与えません。
質問2:妊娠中に筋腫が見つかりました。手術は必要ですか?
妊娠中の子宮筋腫手術は、大量出血のリスクが非常に高いため、原則として行われません24。管理は、定期的な超音波検査による経過観察が基本となります。筋腫による腹痛(赤色変性など)に対しては、鎮痛薬などを用いた保存的治療が行われます5
質問3:筋腫の手術を受けたら、すぐに妊娠できますか?
いいえ。手術後は子宮の傷が十分に回復するのを待つ必要があり、手術方法にもよりますが、通常3ヶ月から6ヶ月程度の避妊期間が推奨されます41。この待機期間も考慮して、主治医と治療計画を立てることが重要です。
質問4:筋腫の手術を受けると、自然分娩はできなくなりますか?
はい、その可能性が非常に高いです。子宮筋層に達する筋腫核出術を受けた場合、陣痛による子宮破裂のリスクを避けるため、日本産科婦人科学会のガイドラインでは予定帝王切開での分娩が強く推奨されています241。これは母子の安全を守るための重要な予防策です。
質問5:子宮筋腫は遺伝しますか?
子宮筋腫には家族集積性があることが知られており、母親や姉妹に筋腫がある場合、発症リスクが高まる可能性があります。しかし、特定の遺伝子が原因というわけではなく、複数の遺伝的要因と環境要因が複雑に関与していると考えられています10
免責事項
本記事は情報提供のみを目的としており、専門的な医学的助言に代わるものではありません。健康に関する懸念がある場合、またはご自身の健康や治療に関する決定を下す前には、必ず資格のある医療専門家にご相談ください。

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