【医師監修】繰り返す顎ニキビの治し方と原因の全て:JDAガイドラインと科学的根拠に基づく完全ガイド
皮膚科疾患

【医師監修】繰り返す顎ニキビの治し方と原因の全て:JDAガイドラインと科学的根拠に基づく完全ガイド

顎やフェイスラインに繰り返し現れる、治りにくいニキビに悩まされていませんか?「大人ニキビ」の代表格ともいえる「顎ニキビ」は、特に成人女性にとって深刻な問題です。多くの女性が「スキンケアは念入りにしているはずなのに、なぜ顎にだけニキビができてしまうのだろう」と、深い悩みと自信の喪失を感じています。1 日本皮膚科学会(JDA)の調査によれば、尋常性痤瘡(いわゆる「ニキビ」)は日本人の90%以上が一生に一度は経験する最も一般的な皮膚疾患の一つです。4 かつては「青春のシンボル」と軽視されがちでしたが、現代医学では、これは明確な「慢性炎症性疾患」と定義されています。3 特に顎周りの大人ニキビは、放置するとQOL(生活の質)を著しく低下させるだけでなく、クレーターのような瘢痕(はんこん)や色素沈着といった、生涯にわたる傷跡を残すリスクが高いことが指摘されています。1 この記事では、JapaneseHealth.org編集部が、日本の皮膚科診療の指針である「尋常性痤瘡・酒皶治療ガイドライン2023」3 および、国際的な基準である米国皮膚科学会(AAD)の最新ガイドライン7 を基に、顎ニキビの根本原因から、保険診療で受けられる標準治療、さらには最新の高度な治療選択肢まで、科学的根拠に基づいた情報を包括的かつ深く掘り下げて解説します。

この記事の科学的根拠

本記事は、下記に示す最高品質の医学的エビデンスにのみ基づいて構成されています。提示される医学的ガイダンスは、すべて引用元の研究報告書で明確に言及されている実際の情報源に基づいています。

  • 日本皮膚科学会(JDA): 本記事における保険診療の推奨事項(アダパレン、過酸化ベンゾイル、アゼライン酸、抗生物質の使用など)は、同学会が発行した「尋常性痤瘡・酒皶治療ガイドライン2023」に準拠しています。3 本ガイドラインの作成には、虎の門病院の林伸和(はやし のぶかず)医師や明和病院の黒川一郎(くろかわ いちろう)医師など、日本の痤瘡研究を牽引する専門家が深く関与しています。3
  • 米国皮膚科学会(AAD): スピロノラクトンや経口避妊薬といったホルモン治療に関する国際的な視点や、重症例に対する治療選択肢については、同学会が発行した「Guidelines of care for the management of acne vulgaris 2024」を重要な補足情報として参照しています。79

この記事の要点まとめ

  • 顎ニキビは、ホルモンバランスの乱れ、ストレス、そして「肌の乾燥」という3つの要因が複雑に絡み合って発生する、成人女性に特有の皮膚疾患です。
  • 治療の第一選択は、皮膚科で受けられる保険適用の医薬品(ディフェリンゲル、ベピオゲル、エピデュオゲルなど)です。これらは科学的根拠に基づき、最も効果的かつ安全とされています。
  • 顎周りは乾燥しやすいため、「ノンコメドジェニックテスト済み」と表示された製品での「保湿」が、皮脂の過剰分泌を抑え、バリア機能を回復させる鍵となります。
  • 治りにくい場合は、ホルモンバランスに直接アプローチする経口避妊薬やスピロノラクトンといった選択肢もありますが、専門医による慎重な判断と厳格な管理が必要です。
  • 自己判断でのケアには限界があります。根本的な改善と傷跡を防ぐためには、必ず皮膚科専門医に相談し、自分に合った治療計画を立てることが不可欠です。

なぜ顎にだけ?大人ニキビの隠された根本原因を科学的に解明

顎ニキビがなぜこれほどまでにしつこく、特定の場所に集中するのか。その答えは、単純な「皮脂の多さ」や「不衛生」ではありません。最新の皮膚科学研究は、ホルモン、神経、そして皮膚自体の機能が織りなす、より深いレベルでのメカニズムを明らかにしています。

ホルモンの三角関係:アンドロゲン、皮脂、そして炎症の連鎖

成人女性の顎ニキビの根底には、多くの場合、ホルモンバランスの微妙な乱れが存在します。これは全身の血中濃度が異常値を示すとは限らず、むしろ皮膚局所での問題が中心となります。

  • アンドロゲン受容体の感受性: 男性ホルモンであるアンドロゲンは、皮脂腺を刺激し、皮脂(セバム)の産生を増加させる主要な要因です。12 顎やフェイスラインの皮脂腺にあるアンドロゲン受容体は、他の部位よりも感受性が高いことが知られています。13 これにより、血中のホルモン値が正常範囲内であっても、このエリアの皮脂腺は過剰に反応し、大量の皮脂を分泌してしまうのです。
  • 皮膚における局所的なホルモン変換: 皮膚は受動的な臓器ではなく、複雑な酵素システムを持つ代謝器官でもあります。特に「5α-リダクターゼ」という酵素は、副腎由来の弱いアンドロゲン(DHEA-Sなど)を、テストステロンの5~10倍も強力なジヒドロテストステロン(DHT)に変換します。12 顎周辺の皮膚でこの酵素の活性が高いことが、大人ニキビの重要な引き金と考えられています。
  • 生理周期によるホルモン変動: 月経前の黄体期には、プロゲステロン(黄体ホルモン)が増加し、エストロゲン(卵胞ホルモン)が減少します。プロゲステロンは皮脂分泌を促進し、炎症を助長する作用がある一方、エストロゲンには皮脂分泌を抑制する働きがあります。12 この相対的なバランスの崩れが、生理前にニキビが悪化する大きな理由です。ある研究では、ニキビを持つ女性はそうでない女性に比べ、血中アンドロゲン濃度が約2倍高いという報告もあります。17

「脳-皮膚相関」の証明:ストレスが顎ニキビとして可視化されるメカニズム

「ストレスでニキビができる」という経験則は、もはや単なる言い伝えではありません。「脳-皮膚相関(Brain-Skin Axis)」という概念を通じて、その生化学的な経路が明確に証明されています。

  • HPA系の活性化とCRH: 睡眠不足や精神的なプレッシャーなどのストレスに晒されると、脳の視床下部から副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン(CRH)が分泌されます。14 これが引き金となり、最終的にストレスホルモンであるコルチゾールが産生されます。
  • CRHの皮膚への直接作用: 驚くべきことに、皮膚自体もCRHを産生し、そのための受容体を持っています。東京薬科大学の佐藤隆教授らの研究によれば、皮膚で産生されたCRHは、皮脂腺に直接作用して脂質の産生(lipogenesis)を促進するだけでなく、男性ホルモンの産生を促す酵素の活性も高めることが科学的に証明されています。1812 これこそが、過労や不安な日々が続くと、顎ニキビが急激に悪化する直接的なメカニズムなのです。

見過ごされがちな真実:「インナードライ」とバリア機能の破綻

顎ニキビを語る上で最も重要な要素の一つが、皮膚バリア機能の低下、いわゆる「インナードライ」の状態です。

  • 顎の解剖学的特徴: 顎の皮膚は、皮脂腺の密度が高い一方で、汗腺が少ないという特徴があります。これにより、皮脂は分泌されやすいのに、水分は蒸散しやすく、乾燥しやすいという矛盾した状態に陥りがちです。2
  • 乾燥と皮脂過剰の悪循環: 皮膚が乾燥し、バリア機能が低下すると、肌は水分を保持できなくなります。この水分不足を補おうとして、皮膚は防御反応としてさらに多くの皮脂を分泌します。これが悪循環の始まりです。乾燥による角質の剥がれは毛穴を詰まらせ、過剰な皮脂はニキビの原因菌であるキューティバクテリウム・アクネス(C. acnes)の絶好の栄養源となり、炎症を引き起こします。2
  • 角化異常(ターンオーバーの乱れ): 乾燥した肌では、正常なターンオーバー(肌の生まれ変わり)が滞ります。古い角質細胞がうまく剥がれ落ちずに表面に蓄積し、角質層が厚く硬くなる「角化異常(Hyperkeratinization)」を引き起こします。11 これが毛穴の詰まりをさらに深刻化させるのです。日本の研究では、生理前にニキビが悪化しやすい女性は、顔の特定部位に「部分乾燥状態」が顕著に見られることが解明されています。21

顎ニキビ治療の完全戦略:自宅ケアから専門治療までの全ステップ

顎ニキビの治療は、一つの方法だけで解決するものではありません。日々のセルフケアから、皮膚科での専門的な治療まで、段階的かつ総合的にアプローチすることが成功の鍵です。ここでは、科学的根拠に基づいた治療法を、ご自身でできることから順に解説します。

ステップ1:全ての基本となる自宅でのセルフケアと生活習慣の改善

専門的な治療を始める前に、あるいは治療効果を最大限に引き出すために、日々の生活習慣を見直すことは不可欠です。

  • 正しい洗顔: 日本皮膚科学会(JDA)のガイドラインでも、1日2回の洗顔が推奨されています。3 重要なのは「優しさ」です。洗浄力の強いスクラブ入り製品は避け、低刺激性の洗顔料をよく泡立て、泡で顔を撫でるように洗いましょう。ゴシゴシ洗いはバリア機能を破壊し、ニキビを悪化させるだけです。14
  • 徹底した保湿: 顎ニキビケアの核心とも言えるのが保湿です。「ノンコメドジェニックテスト済み」と記載された、毛穴を詰まらせにくい製品を選びましょう。1 油分の少ないジェルやローションタイプがおすすめです。セラミドやヒアルロン酸など、肌のバリア機能をサポートする成分が含まれていると、さらに効果的です。2
  • 紫外線対策: 紫外線は、炎症を悪化させる活性酸素を発生させるだけでなく、角化を促進して毛穴を詰まりやすくします。20 天候に関わらず毎日、日焼け止めを使用することは、ニキビケアの必須項目です。14
  • 食生活の見直し: JDAのガイドラインでは、特定の食品を全患者に一律で制限することは推奨されていません(推奨度C2)。3 しかし、血糖値を急激に上げる高GI食品(砂糖、菓子パン、白米など)や一部の乳製品(特にスキムミルク)が、一部の人のニキビを悪化させる可能性が指摘されています。15 極端な食事制限ではなく、バランスの取れた食事を心がけ、野菜や豆類などから食物繊維を十分に摂取することが推奨されます。24
  • 生活習慣の改善: 1日7時間以上の質の良い睡眠は、ホルモンバランスを整え、肌の修復プロセスを助けます。15 ヨガや瞑想、趣味の時間を持つなど、自分なりのストレス管理法を見つけることも重要です。14 また、頬杖をつく、顔を頻繁に触る、マスクが擦れるといった物理的な刺激も、顎ニキビの大きな原因となるため、意識的に避けるようにしましょう。19

ステップ2:皮膚科での保険診療 – 治療のゴールドスタンダード

セルフケアで改善が見られない場合、次のステップは皮膚科専門医による保険診療です。これらは科学的根拠に裏付けられた「第一選択」であり、治療の基本となります。

外用薬(塗り薬)

現在のニキビ治療は外用薬が中心です。JDAガイドライン2023で推奨されている主要な薬剤は以下の通りです。

  • レチノイド(アダパレン、商品名: ディフェリンゲル): 炎症のあるニキビ(赤ニキビ)と、炎症のないニキビ(白ニキビ・黒ニキビ)の両方に「強く推奨」(推奨度A)されています。毛穴の詰まり(微小面皰)の形成を防ぎ、ニキビの根本原因にアプローチします。3
  • 過酸化ベンゾイル(BPO、商品名: ベピオゲル): こちらも「強く推奨」(推奨度A)される薬剤です。強力な殺菌作用でC. acnesを減らし、角質を柔らかくする効果もあります。BPOの最も重要な役割は、薬剤耐性菌の出現を防ぐことであり、抗生物質との併用が原則とされています。3
  • 配合剤(アダパレン/BPO: エピデュオゲル、クリンダマイシン/BPO: デュアック配合ゲル): 異なる作用を持つ成分を組み合わせた薬剤で、JDAから「強く推奨」(推奨度A)されています。複数の原因に同時にアプローチできるため効果が高く、利便性から現在の治療の主流となっています。3
  • アゼライン酸(商品名: スキノレンクリーム): JDAガイドライン2023で新たに「推奨」(推奨度B)された重要な選択肢です。抗菌、抗炎症、角化正常化という多角的な作用を持ち、レチノイドやBPOに刺激を感じる方や、妊娠中・授乳中の方にも使いやすい薬剤です。3
  • 外用抗菌薬(クリンダマイシン: ダラシンTゲル、ナジフロキサシン: アクアチムなど): 赤ニキビの炎症を抑えるために使用されます(推奨度B)。耐性菌のリスクを減らすため、必ずBPOと併用することがJDAにより強く勧められています。6

内服薬(飲み薬)

  • 内服抗菌薬(ドキシサイクリン: ビブラマイシン、ミノサイクリン: ミノマイシンなど): 中等症から重症のニキビに対して「強く推奨」(推奨度A)されるテトラサイクリン系の抗生物質です。治療期間は3〜4ヶ月以内を目安とし、漫然と長期使用すべきではありません。効果維持と耐性菌防止のため、BPOなどの外用薬との併用が必須です。625
  • 漢方薬: JDAガイドラインでは、十味敗毒湯(じゅうみはいどくとう)や荊芥連翹湯(けいがいれんぎょうとう)などが「選択肢の一つとして考慮」(推奨度C1)されています。3 標準治療で効果が不十分な場合や、体質改善を目指す場合に用いられることがあります。
表1: JDAガイドライン2023に基づく顎ニキビの保険診療選択肢のまとめ36
薬剤の種類 一般名(代表的な商品名) JDA推奨度 主な作用
外用薬(配合剤含む) アダパレン / BPO (エピデュオゲル) A 角化正常化 + 殺菌・耐性菌予防
クリンダマイシン / BPO (デュアック配合ゲル) A 抗菌 + 殺菌・耐性菌予防
アダパレン (ディフェリンゲル) A 角化正常化(毛穴の詰まり改善)
アゼライン酸 (スキノレンクリーム) B 抗菌・抗炎症・角化正常化
内服薬 ドキシサイクリン, ミノサイクリン A 抗菌・抗炎症(中等症〜重症例)
漢方薬 (十味敗毒湯など) C1 体質改善(選択肢の一つ)

ステップ3:難治性ニキビへの高度な選択肢 – ホルモン治療と自費診療

標準的な保険診療で十分な効果が得られない、または再発を繰り返す難治性の顎ニキビに対しては、より専門的なアプローチが検討されます。これらの治療は、専門医による慎重な判断と管理の下で行われる必要があります。

ホルモン治療:根本原因に直接アプローチする

特に成人女性の顎ニキビに対して、ホルモンの影響を直接コントロールする治療法です。

  • 経口避妊薬(OCPs, ピル): 一部のピルには、アンドロゲンの作用を抑える効果があり、ニキビ治療薬として有効性が認められています。JDAガイドラインでは「選択肢の一つとして考慮」(推奨度C1)とされていますが、3 AADガイドラインではより明確な選択肢として位置づけられています。9 処方には産婦人科医との連携や、血栓症などのリスク評価が不可欠です。
  • スピロノラクトン: 本来は利尿薬ですが、アンドロゲンの受容体をブロックすることで、皮脂の分泌を強力に抑制します。32 JDAではこれも「推奨度C1」ですが、6 AADでは条件付きで推奨されています。9 日本ではニキビ治療目的での使用は保険適用外(自費診療)であり、月経不順や高カリウム血症などの副作用管理のため、定期的な医師の診察が必要です。
  • イソトレチノイン内服薬: 最も強力なニキビ治療薬とされ、重症・難治性のニキビに対してJDA、AADともに強く推奨しています(JDAでは推奨度A)。627 皮脂腺を強力に縮小させ、ニキビのあらゆる原因に作用しますが、催奇形性(胎児への影響)という極めて重大な副作用があるため、特に女性患者に対しては、治療中および治療後一定期間の厳格な避妊が絶対条件となります。専門医による厳密なリスク管理プログラムの下でのみ使用が許されます。
表2: 女性のホルモン性ニキビ治療に関するJDAとAADの推奨度の比較
治療法 JDA 2023 推奨度36 AAD 2024 推奨度923 JHO編集部による注釈
経口避妊薬 (OCPs) C1 (選択肢の一つ) 推奨 (Recommended) 日米で推奨度に差がある。日本では産婦人科ガイドライン遵守が前提。
スピロノラクトン C1 (選択肢の一つ) 条件付き推奨 (Conditional Rec.) 日本では保険適用外。副作用モニタリングが必須。
イソトレチノイン A (重症・難治例) 強く推奨 (Strong Rec.) 最も効果的だがリスク管理が最重要。専門医の指導が絶対条件。

自費診療:治療効果を高め、肌質を改善する

保険診療と並行して、または治療後のメンテナンスとして、より高い審美的な改善を目指すための選択肢です。

  • ケミカルピーリング: グリコール酸やサリチル酸を用いて古い角質を除去し、毛穴の詰まりを解消します。JDAでは補助的治療として「推奨度C1」に位置づけられています。6
  • 面皰圧出(めんぽうあっしゅつ): 専門の器具を使い、毛穴に詰まった皮脂(コメド)を衛生的に除去する処置です。ニキビの悪化を防ぎ、炎症後の色素沈着や瘢痕のリスクを低減します。14
  • ステロイド局所注射: 大きく腫れて痛みを伴う炎症性のニキビ(嚢腫・結節)に対して、少量のステロイドを直接注射します。24〜48時間以内に炎症を劇的に抑え、瘢痕化を防ぐ効果が期待できます。8
  • 光線療法(LED治療): 特定の波長の光を照射する治療法です。特に青色光(415nm付近)にはC. acnesを殺菌する効果が、赤色光には抗炎症作用があるとされています。14
  • イオン導入: 微弱な電流を用いて、ビタミンC誘導体などの有効成分を肌の深層部まで浸透させ、ニキビ跡の色素沈着改善や全体的な肌質の向上をサポートします。14

よくある質問(FAQ)

治療を始めてからどれくらいで効果が出ますか?
効果の現れ方には個人差がありますが、一般的に保険適用の外用薬(ディフェリンゲルやベピオゲルなど)を使用した場合、目に見える改善が感じられるまでには最低でも2〜3ヶ月はかかります。ニキビ治療は根気が必要なため、すぐに効果が出なくても諦めずに、医師の指示通りに治療を続けることが非常に重要です。28
ニキビがあるときに化粧(メイク)はしてもいいですか?
はい、メイクをすること自体は問題ありません。ただし、製品選びが重要です。「ノンコメドジェニックテスト済み」の表示がある、油分の少ないファンデーションやコンシーラーを選びましょう。17 また、一日の終わりには必ずクレンジングでメイクを完全に落とし、肌を清潔に保つことが必須です。
保険診療と自費診療の違いは何ですか?どちらを選ぶべきですか?
「保険診療」は、国が定めた病気の治療法で、費用の一部(通常3割)を自己負担します。JDAガイドラインで推奨される基本的な治療がこれにあたります。3 一方、「自費診療」は、保険適用外のより審美的な目的(ニキビ跡の改善など)や最新の治療法で、費用は全額自己負担となります。32 まずは保険診療でニキビという「病気」をしっかりと治療し、その上で必要に応じて自費診療を組み合わせるのが一般的な考え方です。
なぜストレスで顎ニキビが悪化するのですか?
ストレスを感じると、脳からCRHというホルモンが分泌されます。このCRHは、皮脂腺を直接刺激して皮脂の分泌を増やすだけでなく、男性ホルモンの産生も促進することが科学的に証明されています。18 つまり、ストレスは精神的な問題だけでなく、ホルモンバランスを介して物理的にニキビを悪化させる直接的な原因となるのです。

結論:顎ニキビからの解放に向けた、あなたへのメッセージ

繰り返す顎ニキビとの闘いは、孤独で、終わりが見えないように感じられるかもしれません。しかし、本記事で解説したように、顎ニキビは単なる肌トラブルではなく、ホルモン、ストレス、生活習慣、そして皮膚のバリア機能が複雑に絡み合った「病気」であり、その原因と治療法は科学的に解明されつつあります。重要なのは、自己流のケアに固執したり、誤った情報に惑わされたりせず、正しい知識に基づいて行動することです。
あなたのゴールは、皮膚科専門医という頼れるパートナーと共に、科学的根拠に基づいた治療計画を立て、それを根気強く続けることです。保険診療で受けられる標準治療は、あなたの悩みを解決するための強力な武器となります。それに加え、日々の丁寧な保湿や紫外線対策、バランスの取れた生活習慣が、治療効果を支え、再発を防ぐための土台を築きます。どうか一人で悩まず、今日から専門家への相談という第一歩を踏み出してください。正しいアプローチを続ければ、必ず健やかで美しい肌を取り戻すことができます。

免責事項
本記事は情報提供のみを目的としており、専門的な医学的アドバイスに代わるものではありません。健康に関する懸念や治療に関する決定を下す前には、必ず資格のある医療専門家にご相談ください。

参考文献

  1. あごニキビ(顎ニキビ)ができる原因とは?顔にできるニキビの原因を部位別に解説!. 花房皮膚科; [引用日: 2025年6月23日]. Available from: https://minoh-hanafusa-hifuka.jp/blog/clinicblog/606/
  2. あごニキビの原因、治し方や繰り返さないためのケア方法は?. エスエス製薬; [引用日: 2025年6月23日]. Available from: https://www.ssp.co.jp/hythiol/troublenavi/acne/uzone.html
  3. 日本皮膚科学会ガイドライン. 尋常性痤瘡・酒皶治療ガイドライン 2023. 公益社団法人日本皮膚科学会; [引用日: 2025年6月23日]. Available from: https://www.dermatol.or.jp/uploads/uploads/files/guideline/zasou2023.pdf
  4. 林伸和, 赤松浩彦, 岩月啓氏, et al. 本邦における尋常性痤瘡のアンケートによる疫学的調査成績. 日本皮膚科学会雑誌. 2008;118(7):1373-1383. [引用日: 2025年6月23日]. Available from: https://cir.nii.ac.jp/crid/1390001205738698112
  5. 痤瘡. 今日の臨床サポート; [引用日: 2025年6月23日]. Available from: https://clinicalsup.jp/jpoc/contentpage.aspx?diseaseid=504
  6. 尋常性痤瘡・酒皶治療ガイドライン2023. Mindsガイドラインライブラリ; [引用日: 2025年6月23日]. Available from: https://minds.jcqhc.or.jp/summary/c00827/
  7. Kutlu Ö, Karadağ AS. American Academy of Dermatology Acne Guidelines of Care versus Modern Skincare Trends. SKIN The Journal of Cutaneous Medicine. 2024;8(2):s345. [引用日: 2025年6月23日]. Available from: https://skin.dermsquared.com/skin/article/view/3405
  8. American Academy of Dermatology issues updated guidelines for the management of acne. American Academy of Dermatology; 2024. [引用日: 2025年6月23日]. Available from: https://www.aad.org/news/updated-guidelines-acne-management
  9. Smith M. AAD Releases Updated Guidelines for the Management of Acne Vulgaris. Dermatology Times; 2024. [引用日: 2025年6月23日]. Available from: https://www.dermatologytimes.com/view/aad-releases-updated-guidelines-for-the-management-of-acne-vulgaris
  10. AAD Guidelines for Management of Acne Vulgaris. PcMED Project; 2024. [引用日: 2025年6月23日]. Available from: https://pcmedproject.com/dermatology/aad-guidelines-acne-vulgaris/
  11. 顎(あご)ニキビの原因と治し方、ケアは?|ニキビ一緒に治そうProject. マルホ; [引用日: 2025年6月23日]. Available from: https://www.maruho.co.jp/kanja/nikibi/tag/tag_11.html
  12. Elsaie ML. Hormonal treatment of acne vulgaris: an update. Clin Cosmet Investig Dermatol. 2016;9:241-248. Published 2016 Sep 2. doi:10.2147/CCID.S114830. Available from: https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC5015761/
  13. Bagatin E, Freitas THP, Rivitti-Machado MC, et al. Adult female acne: a guide to clinical practice. An Bras Dermatol. 2019;94(1):62-75. doi:10.1590/abd1806-4841.20198203. Available from: https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC6360964/
  14. 繰り返す「顎(あご)ニキビ」!その原因と対策、美容皮膚科での治療法について. タカミクリニック; [引用日: 2025年6月23日]. Available from: https://takamiclinic.or.jp/doctorscolumn/acne/139074/
  15. 顎ニキビが繰り返す原因と治し方~皮膚科医が教える治療とスキンケア. 大垣クリニック; [引用日: 2025年6月23日]. Available from: https://oogaki.or.jp/hifuka/acne/chin-acne-recurring/
  16. 顎ニキビの繰り返しを止める最もシンプルな方法【独自アンケート結果公開】. 株式会社KINS; [引用日: 2025年6月23日]. Available from: https://corporate.yourkins.com/kins_labo/894/
  17. ニキビに関するよくあるご質問. 「いいお肌.jp」; [引用日: 2025年6月23日]. Available from: https://www.e-ohada.jp/html/page4.html
  18. なぜストレスでニキビが増えるのか?毛包内の研究で科学的に証明!【東京薬科大学・佐藤教授】. Wellulu; [引用日: 2025年6月23日]. Available from: https://wellulu.com/beauty/skin_care/6975/
  19. ニキビがあごにできる原因は?皮膚科医が教える原因と対策. 大垣クリニック; [引用日: 2025年6月23日]. Available from: https://oogaki.or.jp/hifuka/acne/chin-acne-causes-treatment/
  20. 顎(あご)にニキビができやすいのはなぜ?原因と予防対策. 資生堂; [引用日: 2025年6月23日]. Available from: https://www.shiseido.co.jp/ihada-lab/article/ih10.html
  21. 大人ニキビ※ 1 の発生要因のひとつが、 肌水分量の部分的な減少であることを新たに解明. 株式会社ナリス化粧品; 2013. [引用日: 2025年6月23日]. Available from: https://www.chem-t.com/fax/images/tmp_file2_1372905755.pdf
  22. 顎にきびの原因と対処法は?できやすい人の特徴とケア方法. クラシエ; [引用日: 2025年6月23日]. Available from: https://www.kracie.co.jp/ph/yokuinin/acne/acne04.html
  23. Acne Vulgaris: Treatment Guidelines from the AAD. AAFP; 2017. [引用日: 2025年6月23日]. Available from: https://www.aafp.org/pubs/afp/issues/2017/0601/p740.html
  24. 顎(あご)ニキビの原因は胃腸に?改善に向けた対策5つ。. 摩耶堂製薬; [引用日: 2025年6月23日]. Available from: https://www.mayado.jp/library/acne/agonikibi-ichou.html?page=2
  25. Oge’ LK, Broussard A, Marshall MD. Acne Vulgaris: Diagnosis and Treatment. Am Fam Physician. 2019 Oct 15;100(8):475-484. Available from: https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK459173/
  26. AAD Issues Updated Acne Treatment Guidelines. The Dermatology Digest; 2024. [引用日: 2025年6月23日]. Available from: https://thedermdigest.com/aad-issues-updated-acne-treatment-guidelines/
  27. Titus S, Hodge J. Diagnosis and Treatment of Acne. Am Fam Physician. 2012 Oct 15;86(8):734-40. Available from: https://www.aafp.org/pubs/afp/issues/2012/1015/p734.html
  28. Management of acne vulgaris: summary of NICE guidance. BMJ. 2021;374:n1800. Published 2021 Jul 29. doi:10.1136/bmj.n1800. Available from: https://www.bmj.com/content/374/bmj.n1800
  29. 尋常性痤瘡・酒皶治療ガイドライン2023. J-Stage; [引用日: 2025年6月23日]. Available from: https://www.jstage.jst.go.jp/article/dermatol/133/3/133_407/_article/-char/ja/
  30. 尋常性痤瘡・酒皶治療ガイドライン2023. CiNii Research; [引用日: 2025年6月23日]. Available from: https://cir.nii.ac.jp/crid/1390295491694013440
  31. 第7回 日本痤瘡研究会学術大会 記録集. 日本痤瘡研究会; 2018. [引用日: 2025年6月23日]. Available from: https://zasou.org/report/report_zasou_20180805.pdf
  32. ホルモンとニキビ治療. 相澤皮フ科クリニック; [引用日: 2025年6月23日]. Available from: https://aizawa-hifuka.jp/hormones/
  33. 【悩んでいる人必見】しぶとい顎のニキビはこう治す!皮膚科医が徹底解説. YouTube; [引用日: 2025年6月23日]. Available from: https://www.youtube.com/watch?v=k6GYyq9646U&pp=0gcJCdgAo7VqN5tD
この記事はお役に立ちましたか?
はいいいえ