【女性の肺がん】なぜ増えている?原因・症状・治療と予防法をわかりやすく解説
がん・腫瘍疾患

【女性の肺がん】なぜ増えている?原因・症状・治療と予防法をわかりやすく解説

「肺がん」と聞くと、まず「たくさんタバコを吸う中高年男性の病気」というイメージを持つ方が多いかもしれません。 しかし実際には、日本でも世界でも、タバコをほとんど吸ったことがない女性の肺がんが増えていることが指摘されています1

国立がん研究センターの統計によると、日本で2021年に新たに診断された肺がんは12万4,531例で、そのうち約4万1,782例が女性でした1。 2023年のがん死亡数では、女性の死因として肺がんは「大腸がんに次いで第2位」の位置を占めています2,3。 一方で、肺がん患者の中には生涯で一度も喫煙したことがない、もしくは非常に少ない女性も少なくありません。

「タバコを吸っていないのに、なぜ肺がんになるの?」「自分や家族は大丈夫なのだろうか」「どんな症状が出たら病院へ行くべき?」―― こうした不安を抱えたまま、誰にも相談できずにいる方も多いのではないでしょうか。

本記事では、厚生労働省や国立がん研究センター、日本肺癌学会、世界保健機関(WHO)などの信頼できる情報をもとに、女性の肺がんについて、 原因・リスク要因、女性に特徴的な症状の出方、検査・治療の選択肢、日常生活でできる予防・再発予防のポイントまで、段階的に解説します1,4,5

「自分は次に何をしたらいいのか」「どのタイミングで、どこを受診すればよいのか」がイメージできるようになることを目指して整理しています。 ご自身だけでなく、ご家族や身近な女性の健康を守るための知識としても、ぜひ最後までお読みください。

Japanese Health(JHO)編集部とこの記事の根拠について

Japanese Health(JHO)は、健康と美容に関する情報を提供するオンラインプラットフォームです。 膨大な医学文献や公的ガイドラインを整理し、日常生活で活用しやすい形でお届けすることを目指しています。

本記事の内容は、国立がん研究センター「がん情報サービス」や厚生労働省の統計資料、日本肺癌学会の診療ガイドライン、 世界保健機関(WHO)のファクトシートなどの一次情報源に基づいて、JHO編集部がAIツールのサポートを受けつつ、 最終的には人の目で一つひとつ確認しながら作成しています1,2,4,5

  • 厚生労働省・自治体・公的研究機関: 人口動態統計や全国がん登録、受動喫煙・大気汚染に関する報告書など、日本人向けの公式情報を優先して参照しています2,3
  • 国内外の医学会ガイドライン・査読付き論文: 日本肺癌学会「肺癌診療ガイドライン」、肺がん検診に関するエビデンスレポート、WHOや国際がん研究機関(IARC)の評価、 HPVや大気汚染と肺がんの関連を扱ったシステマティックレビューなどをもとに、要点を整理しています4,5,6,7,8,9,10
  • 教育機関・医療機関・患者向け資料: がん相談支援センター向け資料や患者団体のファクトシートなども参考にしつつ、日本の医療制度や受診の流れに即した形で説明しています3,11

AIツールは、文献の要約や構成案作成の「アシスタント」として活用していますが、公開前には必ずJHO編集部が原著資料と照合し、 重要な記述を一つひとつ確認しながら、事実関係・数値・URLの妥当性を検証しています。

私たちの運営ポリシーや編集プロセスの詳細は、 運営者情報(JapaneseHealth.org) をご覧ください。

要点まとめ

  • 日本では、肺がんは女性のがん死亡原因として第2位であり、2023年には2万2,000人以上の女性が肺がんで亡くなっています1,2,3
  • 喫煙は依然として最大のリスク要因ですが、肺がん全体の約10〜25%は生涯非喫煙者に発生し、その多くが女性とされています5,11
  • 女性・非喫煙者の肺がんでは、肺の末梢にできる腺がんが多く、遺伝子変異(EGFR変異など)を標的とした分子標的薬が効果を発揮するケースも少なくありません4,7,8
  • 受動喫煙や大気汚染、職業性曝露(アスベストなど)、ラドンガス、一部のウイルス感染(HPVなど)が女性の肺がんリスクを高める可能性が報告されています3,5,6,9,10
  • 初期の肺がんは自覚症状が乏しく、咳・息切れ・疲れやすさ・胸や背中の痛みなど「よくある症状」と紛れやすいため、 一定の年齢やリスクがある場合には検診やCT検査による早期発見が重要です3,4
  • 治療は、病期やがんの種類、遺伝子変異、全身状態などを踏まえ、手術・放射線治療・薬物療法(化学療法・分子標的薬・免疫チェックポイント阻害薬など)を組み合わせて行われます4,5。 女性は同じ病期でも男性より5年生存率が高いという報告もあります1
  • 禁煙・受動喫煙の回避・室内の換気やラドン対策・大気汚染の強い日の外出行動の工夫など、生活習慣や環境の見直しによってリスクを下げることが可能です3,5,6,10,11

第1部:女性の肺がんの基本と日常生活で見直したいポイント

ここでは、肺がんそのものの基本的な仕組みと、まず最初に見直しやすい「生活習慣・環境要因」についてお話しします。 専門的な病気の話に入る前に、多くの人に共通しやすい部分を整理することで、ご自身の生活を客観的に振り返りやすくなります。

1.1. 肺と肺がんの基本的なメカニズム

肺は、胸の左右にあるスポンジのような臓器で、吸い込んだ空気から酸素を取り込み、二酸化炭素を排出する役割を担っています。 気管から枝分かれした気管支の先には、ぶどうの房のように無数の「肺胞(はいほう)」があり、 その薄い膜を通して血液とガス交換が行われます。

肺がんとは、肺や気管支の細胞の遺伝子に傷が重なり、細胞がコントロール不能に増え続けるようになった状態です。 大きくは「非小細胞肺がん(腺がん・扁平上皮がんなど)」と「小細胞肺がん」に分けられ、 日本人女性では腺がんがもっとも多いタイプです1,4。 腺がんは肺の外側(末梢)にできやすく、長いあいだ自覚症状が乏しいことも少なくありません。

日本の統計では、肺がんの5年相対生存率は全体で34.9%ですが、男性29.5%に対して女性は46.8%と高く、 同じ肺がんでも女性のほうが治療により長く生存できる傾向が示されています1。 これは、女性に腺がんが多いことや、EGFR変異などの標的になりやすい遺伝子異常が比較的多いことなどが関係していると考えられています4,7,8

1.2. 喫煙・受動喫煙・家庭内の煙 ― もっとも身近で大きなリスク

肺がんの最大の原因は、今も昔もタバコです。 世界保健機関(WHO)は、肺がんの多くは喫煙によって引き起こされており、受動喫煙も明らかなリスク要因であるとしています5。 日本の研究でも、非喫煙者と比べて喫煙者の肺がんリスクは数倍以上に高くなることが示されています3,4

一方で、「自分は吸っていないが、家族のタバコの煙を日常的に吸っている」といった受動喫煙も、特に女性にとって重要な問題です。 家庭内や職場での受動喫煙は、肺がんだけでなく心筋梗塞や脳卒中など、多くの病気のリスクを高めることが知られています3,5。 日本でも、受動喫煙を防ぐために健康増進法が改正され、飲食店や職場での対策が進められてきましたが、 実際には「自宅では今も家族が室内で喫煙している」というケースも少なくありません。

また、加熱式タバコや電子タバコについても、「紙巻きタバコより安全」と思われがちですが、 完全な安全性は証明されておらず、発がん性物質や細胞にダメージを与える物質が含まれることが報告されています5。 「種類を変えれば安心」ではなく、「タバコの煙やエアロゾルそのものから距離をとる」ことが大切です。

1.3. 大気汚染・ラドン・室内の空気環境

近年、喫煙しない人の肺がん増加の背景に、外の空気の汚れ(大気汚染)や室内の空気環境が関わっていることが明らかになってきました。 国際がん研究機関(IARC)は、屋外大気汚染と粒子状物質(PM2.5など)をヒトに対する発がん性(グループ1)と分類しています6,10,13,14。 つまり、レベルは違うものの、喫煙と同じ「がんを引き起こすことが十分に証明された要因」に含まれるということです。

さらに、土壌や岩石から自然に発生するラドンという放射性ガスは、住宅の床下や基礎部分の隙間から屋内に入り込み、 長期間高濃度にさらされると肺がんリスクを高めることが知られています。 世界的にも、ラドンは喫煙に次ぐ肺がんのリスク要因とされています5,11

日本は欧米と比べるとラドン濃度が低いとされますが、地域や住宅構造によって差があり、 地下室や換気の悪い空間では濃度が高くなる場合もあります。 また、調理時の油煙やお香、ストーブによる室内汚染も、長期的には肺への負担となる可能性があります5,10

表1:女性の肺がんリスクに関わるセルフチェックリスト
こんな状況はありませんか? 考えられる主な背景・原因カテゴリ
家族が毎日室内で喫煙しており、換気が不十分な部屋で一緒に過ごすことが多い 受動喫煙(家庭内)、慢性的なタバコ煙への曝露
都市部の幹線道路沿いに住んでおり、窓を開けると排気ガスのにおいが強い 大気汚染(PM2.5・ディーゼル排気など)
換気扇を使わずに高温で揚げ物調理をすることが多く、キッチンが煙で白くなる 室内の微粒子・油煙による気道刺激
古い木造住宅や地下室を頻繁に利用するが、換気がほとんどできていない ラドンガスやカビなど、室内空気環境の問題
職場で溶接・粉じん・アスベストなどに触れる機会があるが、防護具が十分でない 職業性曝露(アスベスト・シリカ粉じんなど)

第2部:身体の内部要因 ― 遺伝子・ホルモン・「女性ならでは」の背景

生活習慣や環境要因を見直しても、すべての肺がんを防げるわけではありません。 特に女性・非喫煙者の肺がんでは、遺伝的な素因や女性ホルモン、ウイルス感染など、身体の内側の要因が関わっている可能性が指摘されています4,7,8,9

2.1. 【特に女性】非喫煙者肺がんとEGFR変異

東アジアの女性では、喫煙歴のほとんどない肺腺がん患者さんにEGFR(上皮成長因子受容体)という遺伝子の変異が多く見つかることが数多く報告されています4,7,8。 国際共同研究FLCCA(Female Lung Cancer Consortium in Asia)では、東アジアの非喫煙女性998人の肺腺がんと、 4,544人の非喫煙女性対照群を解析し、EGFR変異を持つ肺腺がんの発症に関わる遺伝子多型(ポリジェニックリスクスコア)が示されています8

こうした遺伝子変異は、生まれつきの体質(生殖細胞系列変異)だけでなく、喫煙・大気汚染・ホルモン環境・ウイルス感染などさまざまな要因が重なって起こると考えられています4,7,8,10。 そのため、「家系に肺がんの人が多い」「喫煙歴がないのに若くして肺がんになった家族がいる」場合は、 体質的な感受性が高い可能性もあり、早めに医療機関で相談することが重要です。

一方で、EGFR変異が見つかった肺がんでは、EGFRチロシンキナーゼ阻害薬と呼ばれる分子標的薬が高い効果を示すことが多く、 進行・再発肺がんでも長期間病勢を抑えられるケースがあります4。 診断時に腫瘍の分子検査(バイオマーカー検査)が行われるのは、その人に合った治療薬を選ぶためでもあります。

2.2. 女性ホルモンとライフステージの影響

女性は、月経・妊娠・出産・更年期といったライフステージに伴い、エストロゲンやプロゲステロンなどのホルモンが大きく変動します。 一部の研究では、エストロゲン受容体が肺がん細胞の増殖に関与する可能性が示されており、 ホルモン環境が女性の肺がんリスクに影響しているのではないかと考えられています4,7。 ただし、現在のところ「特定のホルモン療法が肺がんリスクを確実に上げる/下げる」といった明確な結論には至っていません。

妊娠・授乳中に肺がんが見つかるケースもあり、母体と胎児の安全をどう両立するか、治療方針の検討が非常に難しくなることがあります。 このような場合は、呼吸器内科や腫瘍内科だけでなく、産婦人科とも連携しながら、妊娠の時期や病期に応じた慎重な判断が行われます。 妊娠の可能性がある場合や妊活中の方は、治療薬の影響について必ず主治医と相談してください。

2.3. ウイルス(HPVなど)と肺がんの関係

子宮頸がんの原因としてよく知られているヒトパピローマウイルス(HPV)について、肺がんとの関連を調べた研究も増えています。 国際的なメタアナリシスでは、肺がん組織の約2〜3割からHPV DNAが検出されたという報告や、 非喫煙女性やアジア人でHPV陽性率が高い可能性が示されています9

ただし、現時点ではHPVがどの程度肺がんの原因となっているのか、因果関係やメカニズムはまだ完全にはわかっていません9。 HPVワクチンは、子宮頸がんなどHPV関連がんの予防には強い効果が証明されていますが、 肺がん予防を目的として接種を勧めるガイドラインは現状ありません。

重要なのは、「ウイルスだけが原因」「ワクチンさえ打てば肺がんにならない」と考えず、 喫煙・受動喫煙・大気汚染・職業曝露など、他のリスク要因と合わせて総合的に対策することです。

2.4. 慢性肺疾患・結核後の瘢痕など

慢性閉塞性肺疾患(COPD)や間質性肺炎、過去の結核治療による肺の瘢痕(きずあと)など、 もともと肺にダメージが蓄積している人は、肺がんのリスクが高くなることが知られています3,4。 長引く咳や息切れを「持病だから」と決めつけてしまうと、肺がんの発見が遅れることもあります。

こうした持病がある場合は、定期的に受診し、画像検査(胸部X線やCT検査など)で変化がないかチェックしてもらうことが大切です。 症状に普段と違う変化があったり、急に体重が減ってきたりしたときには、早めに主治医へ相談しましょう。

第3部:女性に多い肺がんのタイプと症状・診断の流れ

ここからは、実際に肺がんが疑われる場合の症状の特徴や、どのような検査で診断されるのか、 女性に多いタイプの肺がんについて詳しく見ていきます。 「単なる風邪」や「年齢のせい」と思ってしまいがちな症状の中に、肺がんのサインが隠れていることもあります。

3.1. 女性に多い「肺腺がん」と、男性に多い「扁平上皮がん」

非小細胞肺がんの中でも、肺腺がんは女性および非喫煙者に多いタイプで、肺の外側の細い気道や肺胞近くにできやすいとされています1,4,7。 一方、扁平上皮がんは太い気管支の内側にできやすく、喫煙者・男性に多いとされるタイプです3,4

扁平上皮がんは気道の内側に盛り上がるように増殖し、血痰や持続する激しい咳としてあらわれやすいのに対し、 腺がんは肺の末梢にできるため、小さいうちは自覚症状がほとんどないことも少なくありません。 そのため、「女性・非喫煙者の肺がんは見つかったときには進行していた」というケースも多く報告されています4,7,8,11

3.2. 小細胞肺がん ― 進行が非常に速いタイプ

小細胞肺がんは、全肺がんの約10〜15%程度を占めるとされるタイプで、細胞が小さく増殖スピードが速いのが特徴です4,5。 喫煙との関連が非常に強く、女性にも発生しますが、特に重喫煙者で多いとされています。 進行が速い一方で、化学療法や放射線治療に比較的よく反応するため、診断・治療のタイミングが予後に大きく影響します。

小細胞肺がんは早期に脳や骨、肝臓などへ転移しやすく、急に息切れが強くなる、咳が増える、体重減少や全身のだるさが急速に進むといった症状が出ることがあります。 喫煙歴のある方でこのような変化がある場合は、早めに呼吸器内科やがん専門医に相談することが重要です。

3.3. 女性の肺がんに多い症状の出方と「見逃されがちなサイン」

女性の肺がんでは、次のような症状が見られることがあります4,5

  • 長引く咳(2〜3週間以上続く、あるいは徐々に悪化している)
  • 痰に血が混じる、赤茶色の痰が出る
  • 階段や坂道で息切れしやすくなった、会話中に息が続かない
  • 胸の痛みや圧迫感、肩や背中の痛み
  • 原因不明の体重減少や食欲不振、極端な疲れやすさ
  • 骨の痛み(腰・背中・肋骨など)、頭痛やめまい、ふらつき など

こうした症状は、更年期症状、肩こり・腰痛、ストレスや過労と勘違いされることも多く、 特に家事・育児・仕事を抱える女性は「自分の体調は後回し」になりがちです。 しかし、「いつもの疲れと違う」「風邪薬を飲んでも治らない咳が続く」と感じたときは、一度胸部の検査を受ける価値があります。

とくに次のような場合は、速やかな受診が望まれます。

  • 血の混じった痰が出る、真っ赤な痰が出た
  • 息苦しさや胸の痛みが急に強くなった
  • 数週間〜数カ月で急激に体重が減っている
  • 夜間も続く強い咳や胸痛で眠れない

上記のうち、息ができないほどの呼吸困難や激しい胸痛、止まらない咳と大量の血痰がある場合は、 ためらわずに119番を含めた救急受診も検討してください。

3.4. 診断の流れ ― 検診から精密検査・病期判定まで

日本では、市区町村や職場で胸部X線検査を用いた肺がん検診が行われていますが、 小さな腫瘍や肺の外側にできた腫瘍は見つかりにくいこともあります3,4。 高リスク群(長期喫煙者など)では、低線量CTによる検診が肺がん死亡を減らす効果があると報告されており、 日本肺癌学会の「肺がん検診ガイドライン」でもエビデンスが整理されています3,4

肺がんが疑われる場合、一般的には次のような流れで診断が進みます。

  • 問診・診察:症状、喫煙歴、家族歴、職業歴、受動喫煙・大気汚染曝露などを詳しく確認
  • 画像検査:胸部X線、胸部CT、必要に応じてPET/CTやMRIなどで腫瘍の位置や大きさ、転移の有無を評価
  • 気管支鏡検査や針生検:腫瘍の一部を採取し、顕微鏡でがんの種類を判定
  • 分子検査(バイオマーカー検査):EGFR、ALK、ROS1、PD-L1など、治療薬選択に関わる遺伝子・タンパクを調べる
  • 病期(ステージ)判定:がんの広がり具合に応じてI〜IV期などに分類

これらの情報を総合して、「手術が可能か」「放射線治療を組み合わせるか」「薬物療法を中心とするか」など、 一人ひとりに合わせた治療方針が検討されます4,5

第4部:今日から始める女性の肺がん予防・再発予防アクションプラン

肺がんは「完全に防げるがん」ではありませんが、リスクを下げることができる部分は少なくありません。 また、一度肺がんと診断された後も、治療の効果を高め、再発や別の病気を防ぐために日常生活でできる工夫があります。 ここでは、今夜から・今週末から・長期的に取り組めるアクションをレベル別に整理します。

表2:女性の肺がん予防・再発予防アクションプラン
ステップ アクション 具体例
Level 1:今夜からできること タバコの煙・油煙・大気汚染から距離をとる 室内は完全禁煙にする、調理時は必ず換気扇を回す・窓を開ける、 PM2.5が高い日は窓を締め切り、外出時はマスクやルート選びを工夫する など。
Level 2:今週〜数カ月以内に取り組みたいこと 検診・受診のスケジュールを整える 市区町村や職場の胸部X線検診の案内を確認する、喫煙歴が長い場合は主治医に低線量CT検診について相談する、 気になる症状がある場合は早めに呼吸器内科やがん専門医へ予約を入れる。
Level 3:長期的に続けたいこと 禁煙・運動・食生活・ストレスケア 禁煙外来やオンライン禁煙プログラムを利用する、週に2〜3回の軽い有酸素運動を日課にする、 野菜・果物・魚を中心としたバランスのよい食事を心がける、ストレスが強いときは一人で抱え込まず専門家や相談窓口を利用する。
Level 4:治療中・治療後のセルフマネジメント 症状と副作用の記録・相談 咳や息切れ、痛み、吐き気、食欲不振などの程度を「日誌」に記録し、外来時に医師・看護師・薬剤師へ共有する。 疲れや気分の落ち込みが続く場合は、がん相談支援センターや心の専門家への相談も検討する。

4.1. 禁煙・受動喫煙対策は「何歳からでも遅くない」

喫煙をやめることで、心筋梗塞や脳卒中など多くの病気のリスクが下がることが知られていますが、 肺がんについても、禁煙後の年数が長くなるほどリスクが徐々に低下することが報告されています3,5,11。 すでに長年喫煙してきた方でも、「今さら遅い」とあきらめる必要はありません。

家族に喫煙者がいる場合は、「健康のために室内は完全禁煙にしたい」「子どもや孫のためにも協力してほしい」と、 具体的なお願いとして伝えることが大切です。 感情的になりすぎず、「一緒に禁煙外来を受診してみない?」と提案するのも一つの方法です。

4.2. 食事・運動・休養 ― 体力を守り、治療に備える

肺がんそのものを食事だけで防いだり治したりすることはできませんが、 体力や免疫力を保つことは、治療の耐性や回復力を高めるうえで非常に重要です5

  • 主食・主菜・副菜をそろえたバランスのよい食事を心がける
  • やせすぎ・急激な体重減少を放置しない(必要なら栄養補助食品も検討)
  • 激しい運動ではなく、息が少し上がる程度のウォーキングなどを継続する
  • 睡眠時間を確保し、生活リズムを整える

すでに治療中の方は、主治医や管理栄養士、リハビリスタッフと相談しながら、 「今の自分の体にとって無理のない範囲」で取り組むことが大切です。

4.3. 女性肺がん患者さんと家族の心のケア

肺がんと診断されたとき、多くの方が「どうして自分が」「家族に迷惑をかけてしまうのでは」と大きなショックを受けます。 特に「タバコを吸っていないのに肺がんになった」女性では、「原因がわからず納得できない」という気持ちが強くなりやすいこともあります。

大切なのは、一人で抱え込まないことです。 日本各地にはがん相談支援センターがあり、無料で看護師やソーシャルワーカーに相談できます。 仕事や育児、介護との両立、経済的な不安なども含めて話すことができます。

ご家族としては、「励まさなければ」と考えすぎる必要はありません。 「今日はどんな気分?」「今一番つらいことは何?」と、相手のペースで話を聴くことが何よりの支えになります。 必要に応じて、カウンセラーや精神腫瘍科医など心の専門家に相談することも選択肢に入れてください。

第5部:専門家への相談 ― いつ・どこで・どのように?

「どのタイミングで病院に行けばいいのか」「何科を受診すればよいのか」がわからず、 受診を先延ばしにしてしまう方は少なくありません。 ここでは、危険なサインの目安や診療科の選び方、受診前に準備しておくと役立つ情報を整理します。

5.1. 受診を検討すべき危険なサイン

  • 咳が2〜3週間以上続き、徐々に悪化している
  • 痰に血が混じる、赤茶色・錆色の痰が出る
  • 息切れが急に強くなった、階段を上がるのが以前より明らかにつらい
  • 胸の痛みや圧迫感が続く、体を動かすと悪化する
  • 理由のわからない体重減少(数カ月で数kg以上)や極端な疲れやすさ
  • 骨の痛みや頭痛・めまい・しびれなどが続く

これらの症状があるからといって、必ず肺がんというわけではありません。 しかし、「いつもの風邪と違う」「何となくおかしい状態が続いている」と感じたら、 一度医療機関で相談する価値があります。 特に、喫煙歴・受動喫煙・大気汚染の曝露・職業性曝露・家族歴などのリスクを複数持っている場合は、早めの受診が推奨されます3,4,5

5.2. 症状に応じた診療科の選び方

  • まず相談しやすいのは「かかりつけ医」や「総合内科」です。 咳や息切れ、胸の違和感などを伝え、必要に応じて胸部X線や専門医への紹介を受けます。
  • より専門的な評価が必要な場合は、呼吸器内科呼吸器外科がん専門病院への紹介が行われます。
  • すでに「肺がんの疑い」「肺がん」と説明されている場合は、がん診療連携拠点病院など、肺がん診療の経験が豊富な施設の受診が推奨されます。

受診先に迷う場合は、お住まいの地域のがん相談支援センターに問い合わせると、 近隣で肺がん診療の実績がある病院や相談窓口を教えてもらうことができます。

5.3. 診察時に持参すると役立つものと費用の目安

  • 症状メモ:いつから・どのような症状が・どのくらいの頻度で起きているか、 どんなときに悪化・軽減するかを書いておくと、限られた診察時間でも症状を伝えやすくなります。
  • 既往歴・服薬中の薬のリスト:持病や、現在飲んでいる薬・サプリメントの種類と量を整理しておきましょう。
  • 健康保険証・医療証・お薬手帳:検査や治療費の負担を減らすためにも、保険証類は忘れずに持参します。
  • 過去の検診結果:胸部X線やCT検査の結果があれば、コピーを持参すると比較がしやすくなります。

費用は、検査の内容や保険の自己負担割合によって大きく変わりますが、 日本では公的医療保険により、標準的な検査・治療は自己負担3割(高額療養費制度の対象)で受けることができます。 詳細な費用については、受診する医療機関の窓口やソーシャルワーカーに相談してみてください。

よくある質問

Q1: タバコを吸わない女性でも肺がんになりますか?

A1: なります。世界のデータでは、肺がん全体の10〜25%が生涯非喫煙者に発生しており、その多くが女性とされています5,11。 東アジアでは特に、非喫煙女性の肺腺がんが多いことが報告されています7,8

原因としては、受動喫煙・大気汚染・ラドン・職業性曝露・遺伝的素因・ウイルス感染(HPVなど)など複数の要因が組み合わさっていると考えられています3,5,6,9,10,11。 「吸っていないから安心」とは考えず、長引く咳や息切れなどの症状があれば、早めに医療機関で相談しましょう。

Q2: どんな症状が続いたら肺がんを疑って受診すべきですか?

A2: 代表的なサインは、2〜3週間以上続く咳、血の混じった痰、息切れの悪化、原因不明の体重減少や強い倦怠感、胸や背中の痛みなどです4,5

これらの症状は他の病気でも起こり得ますが、「いつもの風邪と違う」「市販薬で良くならない」と感じる場合は、早めに受診することが大切です。 息が苦しい、胸が締め付けられるように痛い、大量の血痰が出るなどの急激な症状があれば、救急受診も検討してください。

Q3: 女性の肺がんでは、どの治療が一般的ですか?

A3: 治療は性別だけで決まるわけではありませんが、女性・非喫煙者に多い肺腺がんでは、 病期や遺伝子変異の有無に応じて、手術・放射線治療・化学療法・分子標的薬・免疫チェックポイント阻害薬などを組み合わせて行うのが一般的です4,5

特にEGFR変異やALK再構成などがある場合は、それらを標的とする分子標的薬が高い効果を示すことがあり、 進行例でも長期間病勢を抑えられるケースがあります4,7,8。 どの治療が自分に合うかは、腫瘍の性質・全身状態・他の病気の有無などによって異なるため、主治医とよく相談してください。

Q4: CT検診を受ければ、肺がんは早期に必ず見つかりますか?

A4: 低線量CT検診は、胸部X線よりも小さい肺がんの発見に優れており、高リスク群では肺がん死亡を減らす効果が報告されています3,4。 しかし、すべての肺がんを完全に見つけられるわけではなく、偽陽性(がんではないのに異常と出る)や過剰診断の問題もあります。

現在の日本のガイドラインでは、長期・重喫煙者など一定の条件を満たす人でCT検診の有用性が示されており、 非喫煙者全員にCT検診を勧める段階には至っていません3,4。 自分が対象になるかどうかは、年齢・喫煙歴・他のリスク要因などを踏まえて主治医と相談することが大切です。

Q5: HPVワクチンで肺がんも予防できますか?

A5: 現時点で、HPVワクチンが肺がん予防に有効であると示した確立したエビデンスはありません。 一部の研究では、肺がん組織からHPV DNAが検出される割合が一定程度あることや、非喫煙女性でHPVとの関連が示唆されているものの、 因果関係や予防効果はまだ明確ではありません9

HPVワクチンは、子宮頸がんや一部の頭頸部がんなどを予防する目的で推奨されています。 肺がんについては、現時点では喫煙・受動喫煙・大気汚染・ラドンなどへの対策が中心となります3,5,6,10,11

Q6: 肺がんと言われたら、仕事や育児はあきらめるべきでしょうか?

A6: 必ずしもそうとは限りません。 治療方法や病期、仕事や家族の状況によって、どの程度のペースで働けるか・家事や育児を続けられるかは大きく変わります。 近年は、分子標的薬や免疫療法などにより、長期にわたって病勢をコントロールしながら生活を続けている方も少なくありません4,5,7,8

仕事や育児との両立については、主治医だけでなく、がん相談支援センターのソーシャルワーカーに相談すると、 休職・復職支援制度や傷病手当金、介護・育児支援サービスなどの情報を一緒に整理してもらえます。

Q7: 家族に肺がんの人が多いのですが、何歳から検診を受けるべきですか?

A7: 家族に肺がんの方が複数いる場合、遺伝的な素因や生活習慣・環境の共通性が関わっている可能性があります3,4,7,8。 しかし、「家族歴がある人は何歳から必ずCT検査」というような一律の基準は、現時点では確立していません。

喫煙歴・受動喫煙・職業性曝露など他のリスク要因も含め、まずはかかりつけ医や呼吸器内科でリスク評価を受けることをおすすめします。 そのうえで、年齢やリスクに応じて、胸部X線検診やCT検査の頻度について個別に検討されるのが一般的です。

Q8: 女性の肺がんは、男性より治りやすいのですか?

A8: 「治りやすい」と言い切ることはできませんが、統計的には同じ肺がんでも女性のほうが5年生存率が高いという結果が示されています1。 これは、女性に腺がんが多いこと、EGFR変異など分子標的薬が効きやすいタイプが多いことなどが背景にあると考えられています4,7,8

ただし、個々の予後は病期・がんの性質・全身状態・他の病気の有無などによって大きく異なります。 統計はあくまで目安と捉え、主治医と自分自身の状況に基づいて治療方針を相談することが大切です。

結論:この記事から持ち帰ってほしいこと

女性の肺がんは、決してまれな病気ではありません。 日本では、肺がんは女性のがん死亡原因として第2位であり、喫煙女性だけでなく非喫煙女性にも少なからず発生していることがわかっています1,2,3,5,11

喫煙・受動喫煙・大気汚染・ラドン・職業性曝露・遺伝的素因・ウイルス感染など、多くの要因が複雑に絡み合っているため、 「これさえしておけば絶対に防げる」という単純な答えはありません。 しかし、禁煙や受動喫煙対策、室内外の空気環境の改善、検診や早期受診といった一つひとつの行動が、リスクを確実に下げることにつながります3,5,6,10,11

もし今、長引く咳や息切れ、胸の痛み、体重減少など気になる症状がある場合は、「忙しいから」「まだ我慢できるから」と先延ばしにせず、 一度医療機関で相談してみてください。 そして、肺がんと診断されたとしても、それは人生のすべてが終わることを意味しません。 治療の選択肢は年々広がっており、多くの方が治療と日常生活を両立しながら過ごしています1,4,5,7,8

Japanese Health(JHO)編集部は、厚生労働省や日本の専門学会、国際的な公的機関の情報をもとに、 これからも女性の健康に役立つ知識をわかりやすくお届けしていきます。 心配なときは、一人で悩まず、家族や友人、医療者、相談窓口に頼ってください。

この記事の編集体制と情報の取り扱いについて

Japanese Health(JHO)は、信頼できる公的情報源と査読付き研究に基づいて、健康・医療・美容に関する情報をわかりやすくお届けすることを目指しています。

本記事の原稿は、最新のAI技術を活用して下調べと構成案を作成したうえで、 JHO編集部が一次資料(ガイドライン・論文・公的サイトなど)と照合しながら、 内容・表現・数値・URLの妥当性を人の目で一つひとつ確認しています。 最終的な掲載判断はすべてJHO編集部が行っています。

ただし、本サイトの情報はあくまで一般的な情報提供を目的としており、 個々の症状に対する診断や治療の決定を直接行うものではありません。 気になる症状がある場合や、治療の変更を検討される際は、必ず医師などの医療専門家にご相談ください。

記事内容に誤りや古い情報が含まれている可能性にお気づきの場合は、 お手数ですが 運営者情報ページ 記載の連絡先までお知らせください。 事実関係を確認のうえ、必要な訂正・更新を行います。

免責事項 本記事は情報提供のみを目的としており、専門的な医学的助言や診断、治療に代わるものではありません。 健康上の懸念がある場合や、治療内容の変更・中止等を検討される際には、必ず資格のある医療専門家にご相談ください。

参考文献

  1. 国立がん研究センター がん情報サービス. . 2025年更新. https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/stat/cancer/12_lung.html (最終アクセス日:2025-11-26)

  2. 国立がん研究センター がん情報サービス. 最新がん統計. 2025年更新. https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/stat/summary.html (最終アクセス日:2025-11-26)

  3. 国立がん研究センター がん対策研究所; がん検診委員会. 肺がん検診エビデンスレポート 2024年度版. 2025年3月31日. https://canscreen.ncc.go.jp/guideline/lung_report2024.pdf (最終アクセス日:2025-11-26)

  4. 日本肺癌学会. 肺癌診療ガイドライン 2023年版. 2023. Mindsガイドラインライブラリ. https://minds.jcqhc.or.jp/summary/c00837/ (最終アクセス日:2025-11-26)

  5. World Health Organization. Lung cancer – fact sheet. 2023. https://www.who.int/news-room/fact-sheets/detail/lung-cancer (最終アクセス日:2025-11-26)

  6. International Agency for Research on Cancer (IARC). Outdoor air pollution a leading environmental cause of cancer deaths. Press Release No.221. 2013. https://www.iarc.who.int/wp-content/uploads/2018/07/pr221_E.pdf (最終アクセス日:2025-11-26)

  7. 国立がん研究センター ほか. 日本・東アジア非喫煙女性肺腺がんにおけるEGFR変異と遺伝的素因に関する研究(FLCCA関連報告). 国立研究開発法人 量子科学技術研究開発機構ニュースリリース. 2024年. https://www.isct.ac.jp/ja/news/gr2jbxgllvbk (最終アクセス日:2025-11-26)

  8. Sequeira T, et al. HPV and Lung Cancer: A Systematic Review. Cancers (Basel). 2024;16(19):3325. https://www.mdpi.com/2072-6694/16/19/3325 (最終アクセス日:2025-11-26)

  9. Turner MC, et al. Outdoor air pollution and cancer: An overview of the current evidence and public health recommendations. CA Cancer J Clin. 2020. https://acsjournals.onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.3322/caac.21632 (最終アクセス日:2025-11-26)

  10. Lung Cancer Research Foundation. Lung Cancer Facts. 2025. https://www.lungcancerresearchfoundation.org/wp-content/uploads/7-LungCancerFactSheet.pdf (最終アクセス日:2025-11-26)

  11. 国立がん研究センター がん対策情報センター. 肺がん患者数の年次推移、生存率、死亡率の統計データ. 教えて! がんのコト. 2025年. https://oshiete-gan.jp/lung/about/statistic/ (最終アクセス日:2025-11-26)

この記事はお役に立ちましたか?
はいいいえ