【妊娠中のたこ】食べても大丈夫?水銀・刺身・食中毒のリスクと安全な食べ方
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【妊娠中のたこ】食べても大丈夫?水銀・刺身・食中毒のリスクと安全な食べ方

「妊娠してから、たこ焼きやたこ飯、たこのカルパッチョを我慢している」「妊娠初期にたこのお刺身を食べてしまって、赤ちゃんへの影響が心配」──そんな不安を抱えている方は少なくありません。

たこは日本の食卓でもお祭りでもよく見かける身近な食材ですが、妊娠中は「水銀は大丈夫?」「生のたこは危険?」「どれくらいの量までなら食べていいの?」といった心配がつきものです。さらに、昔からのことわざや「妊婦はタコを食べると赤ちゃんがぐにゃぐにゃになる」といった根拠のない迷信を耳にして、余計に不安になってしまうこともあります。

本記事では、厚生労働省や自治体の資料、食品成分表などの公的な情報と、国内外の信頼できる文献をもとに、妊娠中のたこの位置づけをわかりやすく整理します。たこの栄養や水銀のリスク、刺身や寿司で食べる場合の注意点、安心して楽しむための目安量、食べてしまったときの対応、受診のタイミングまで、段階的に解説します。

「今、もう食べてしまったけれど大丈夫なのか知りたい」「これから妊娠期間中も、なるべくストレスなくたこ料理を楽しめるか知りたい」という方が、読み終わったときに自分なりの行動方針をはっきりイメージできるようなガイドを目指します。

なお、本記事の情報は一般的なものであり、個々の症状や状況に対する診断・治療方針を直接決めるものではありません。少しでも体調に不安がある場合や、食後に気になる症状が出た場合は、自己判断で様子を見すぎず、早めに産婦人科医などの医療専門職に相談してください。息苦しさや意識障害など命に関わる症状があれば、ためらわずに119番通報を検討しましょう。

Japanese Health(JHO)編集部とこの記事の根拠について

Japanese Health(JHO)は、健康と美容に関する情報を提供するオンラインプラットフォームです。膨大な医学文献や公的ガイドラインを整理し、日常生活で活用しやすい形でお届けすることを目指しています。

本記事は、厚生労働省が公表している「妊婦への魚介類の摂食と水銀に関する注意事項」や魚介類に含まれる水銀に関する情報、自治体の妊産婦向け食育資料、日本食品標準成分表(八訂)などの公的データを中心に、国内外の査読付き論文や専門機関の解説を参考に作成しました1234

原稿の作成にあたっては、AIツールを下調べや構成案づくりのアシスタントとして活用しつつ、最終的な内容の整理・表現・事実確認はJHO編集部が行っています。重要な数値や用語、URLについては、一次情報源となる公的資料と照合しながら、人の目で一つひとつ確認しています。

本記事は、JHO(JapaneseHealth.org)編集委員会が、厚生労働省や日本の専門学会、自治体、査読付き論文などの信頼できる情報に基づいて編集しましたが、個別の診察に代わるものではありません。気になる症状がある場合は、必ず医師などの医療専門家にご相談ください。

JHOの運営ポリシーや編集プロセスの詳細は、運営者情報(JapaneseHealth.org)をご覧ください。

要点まとめ

  • 妊娠中でも、たこは適切な量であれば基本的に食べてよい食材と考えられています。厚生労働省が注意喚起している「水銀濃度が高い魚種」のリストにたこは含まれていません13
  • たこは低脂質・高たんぱくで、ビタミンB12やナイアシン、亜鉛などを含むため、貧血予防やエネルギー代謝の面で妊婦さんにとってメリットのある食品です45
  • 一方で、生のたこや十分に加熱されていないたこは、リステリア菌や腸炎ビブリオ、寄生虫などによる食中毒のリスクがあるため、妊娠中は避け、必ず中までしっかり加熱されたものを選びましょう67
  • 目安として、ゆでだこやたこ焼き・煮物など「しっかり火が通ったたこ料理」を週1〜2回、1回あたりおおよそ80g前後(お刺身なら数切れ〜一人前程度)にとどめ、他の魚介類ともバランスよく食べると安心です13
  • たこを食べたあとに、蕁麻疹、息苦しさ、唇や舌の腫れ、激しい下痢や嘔吐、強い腹痛などが出た場合は、食物アレルギーや食中毒の可能性があります。自己判断で様子を見続けず、早めに医療機関を受診し、呼吸が苦しい・意識がもうろうとするなどの症状があれば119番通報を検討してください。

第1部:妊娠中のたこの基本と日常生活の見直し

最初のステップとして、「そもそもたこはどんな食材なのか」「妊娠中の食卓ではどのように位置づければよいのか」を整理していきます。専門的な病気の話に進む前に、身近な食べ方や量、調理法を振り返ることで、むやみに怖がりすぎずに自分の状況を客観的に見直すことができます。

1.1. たこはどんな食材?栄養と水銀の観点からの基本知識

たこ(まだこなど)は、日本食品標準成分表(八訂)などのデータによると、ゆでた状態100gあたりおよそ70〜90kcalと比較的低カロリーで、たんぱく質が16〜20g前後、脂質は1g前後と少ないのが特徴です45。鶏むね肉などと同程度のたんぱく質を含み、脂質はむしろ少ないため、「脂質は控えたいけれど、しっかりたんぱく質を摂りたい」ときに役立つ食材です。

また、たこにはビタミンB12やナイアシンなどのビタミンB群、亜鉛や銅などのミネラルが含まれています45。ビタミンB12は赤血球の形成や神経の働きに関わり、ナイアシンは糖質・脂質・たんぱく質をエネルギーに変える代謝を助けます。妊娠中は貧血や疲労感に悩む方も多いため、こうした栄養素を含むたこは、全体の食事バランスが整っていることを前提にすればプラスに働く可能性があります。

一方で、多くの方が気にするのが「水銀」です。魚介類には、自然の食物連鎖を通じて微量の水銀が含まれていますが、厚生労働省が妊婦向けにまとめている注意事項では、特に注意が必要な魚介類として、メカジキやクロマグロ、キンメダイなど一部の大型魚や一部のクジラ類が挙げられています13。このリストには、たこやいかなどの軟体動物は含まれておらず、各国の食品安全機関の分類でもたこやいかは「水銀含有量の低いグループ」に位置づけられることが多いと報告されています8

つまり、たこは「水銀の点で特別に避けるべき魚介類」ではなく、むしろ低水銀の部類に入りやすい食材と考えられます。ただし、どの食品でもそうであるように、一度に大量に食べるのではなく、他の魚や肉、豆製品などとバランスをとりながら適量を楽しむことが大切です。

1.2. 妊娠中のたこで気をつけたいNG習慣

「たこ自体が危険」なのではなく、「たこの食べ方」や「量・頻度」が問題になることがあります。妊娠中に避けたい主なNG習慣を整理しておきましょう。

  • 生のたこ(生だこ、十分に加熱されていないカルパッチョなど)を食べる
    妊娠中は免疫力が低下しやすく、リステリア菌や腸炎ビブリオ、アニサキスなどによる食中毒にかかりやすい状態とされています67。生の魚介類はこれらのリスクがあるため、妊娠中は避け、しっかり中まで火の通ったゆでだこや焼き物を選びましょう。
  • 塩分・脂質の多い味付けで頻繁に食べる
    たこ焼きやから揚げ、バター炒めなどはおいしい一方で、ソースやマヨネーズ、油を多く使うレシピが多く、塩分やエネルギーが過剰になりやすいメニューです。妊娠高血圧症候群や体重増加が気になる場合は、頻度や量を控えめにし、ゆでだこや酢の物、サラダなどさっぱりしたメニューも組み合わせると安心です6
  • 一度に大量に食べる・同じ魚介類ばかり続けて食べる
    厚生労働省や自治体は、魚介類全般について「特定の魚だけを偏って大量に食べるのではなく、いろいろな種類をバランスよく」と勧めています136。たこだけに限りませんが、同じ魚介類を毎日大量に食べるような極端な食べ方は避けましょう。
  • 保存状態が悪いもの・半端に残ったものを長時間置いてから食べる
    調理済みのたこ(総菜のたこ唐揚げ、たこ焼き、ゆでだこなど)を常温で長く放置すると、細菌が増えやすくなります。特に夏場や室温が高い環境では、購入後・調理後は早めに食べる、冷蔵庫で保存するなど、基本的な食品衛生に気を配りましょう6
  • たこに触れた手やまな板・包丁をしっかり洗わない
    生のたこや他の魚介類に付着している菌は、手や調理器具を介して他の食材に移ることがあります。生の魚介類を扱った後は、石けんで手をよく洗い、まな板・包丁も洗浄・必要に応じて熱湯消毒を行うことで二次感染を防ぎましょう7
表1:妊娠中のたこのセルフチェックリスト
こんな症状・状況はありませんか? 考えられる主な背景・原因カテゴリ
妊娠初期に、生に近い状態のたこのカルパッチョやたこわさを食べてしまい、不安が続いている 生の魚介類による食中毒リスクへの不安。実際のリスク評価と、今後の食べ方を整理する必要。
たこ焼きやたこの唐揚げが好きで、週に何度もソースやマヨネーズたっぷりで食べている 塩分・脂質・エネルギー過多による体重増加や妊娠高血圧症候群リスクの増加。
たこを食べた直後から、口の中の違和感、唇やまぶたの腫れ、蕁麻疹、強いかゆみが出た 魚介アレルギーや即時型アレルギー反応の可能性。早急な医療機関受診が必要なケースも。
一度にたくさんたこを食べたあと、数時間後に激しい腹痛や下痢、発熱を伴う吐き気が出た 細菌性食中毒や寄生虫感染などの可能性。症状や経過に応じて消化器内科や救急受診を検討。
「たこを食べたら赤ちゃんに悪い」という噂を聞いて、たこだけでなく魚介類全体が怖くなっている 医学的根拠が乏しい迷信による不安。公的機関の情報に基づき、魚介類のメリットと注意点を整理する必要。

第2部:身体の内部要因 — 栄養・ホルモン・隠れた不調とたこの付き合い方

生活習慣や調理法を見直したうえで、次に意識したいのが「妊娠中の体そのものの変化」です。ホルモンバランスや血液量、消化機能など、妊娠期には多くの変化が起こります。たこ自体は低水銀・高たんぱくな食材ですが、妊娠中の体調や既往歴によっては、食べ方や量を慎重に調整したほうがよい場合もあります。

2.1. 【特に女性】ライフステージと妊娠中の魚介類のとり方

厚生労働省の資料では、「魚介類は良質なたんぱく質やDHA・EPA、カルシウムなどを多く含み、妊娠と出産のための栄養バランスのよい食事に欠かせない」とされています13。一方で、一部の大型魚やクジラなどには水銀が比較的多く含まれるため、妊婦については摂取量の目安が示されています。

注意が必要な魚種の例として、メカジキ、クロマグロ、キンメダイ、メバチマグロ、ヨシキリザメなどが挙げられており、「1回約80gとして週1回まで」「週2回まで」といった具体的な目安が示されています13。一方で、サケやアジ、サバ、イワシ、ツナ缶など日常的に食べる機会の多い魚については「特に注意は必要ない」とする自治体の資料もあります3

たこやいかなどの軟体動物は、これら「注意が必要な魚種」のリストに含まれておらず、一般的には水銀の点で特別に制限する必要はないとされています138。ただし、たこに限らずどの魚介類でも、一度に大量に食べたり、同じ種類に偏ったりすることは推奨されません。妊娠中は、魚や肉、卵、大豆製品などさまざまなたんぱく源を組み合わせて、全体のバランスを整えることが大切です。

妊娠初期は、葉酸や鉄分の不足にも注意が必要な時期です29。たこだけで必要量を補うことはできませんが、他の食品と組み合わせることで、貧血予防やエネルギー代謝のサポートに役立つ一品として位置づけることができます。

2.2. たこから得られる栄養と、妊娠中に不足しやすい栄養素

先ほど触れたように、たこには良質なたんぱく質に加え、ビタミンB12やナイアシン、亜鉛などが含まれます4510。これらの栄養素は、妊娠中の以下のようなポイントで役立つと考えられます。

  • ビタミンB12
    赤血球の形成や神経の働きに関わるビタミンで、葉酸とともに貧血予防に重要です510。妊娠中は血液量が増え、貧血になりやすいため、ビタミンB12を含む食材をバランスよく取り入れることが勧められます。
  • ナイアシン(ビタミンB3)
    糖質・脂質・たんぱく質をエネルギーへ変換する代謝を助け、疲れにくい体づくりをサポートします510。妊娠中はエネルギー需要が高まるため、三食の食事から十分なビタミンB群を摂ることが大切です。
  • 亜鉛・銅などのミネラル
    味覚や免疫機能、傷の治りに関わる亜鉛、鉄の利用にも関与する銅など、妊娠中の体づくりに欠かせない微量栄養素も含まれています411

ただし、たこにはコレステロールもある程度含まれているため、脂質異常症の既往がある方や、医師から食事指導を受けている方は、全体の食事と合わせて主治医や管理栄養士と相談しながら調整すると安心です411

また、妊娠中に特に重要とされる葉酸や鉄分、カルシウムなどは、たこだけでは十分に補えません。緑黄色野菜や海藻、乳製品、大豆製品、赤身肉など、他の食品からの摂取も意識していきましょう269

2.3. 塩分・脂質・カロリーと妊娠中のリスク

たこそのものは低脂質・低カロリーですが、調理法や味付けによっては、塩分やエネルギーが高くなることがあります。妊娠高血圧症候群や浮腫が心配な方は、次の点に注意しておくと安心です。

  • たこ焼き、唐揚げ、バター炒めなどは、ソースやマヨネーズ、油を控えめにし、頻度も週1回程度までに抑える。
  • 酢の物やサラダ、野菜と組み合わせた煮物など、塩分を抑えつつ噛みごたえのあるメニューを増やす。
  • 全体の食事で、汁物の塩分や加工食品(ハム・ソーセージなど)からの塩分も合わせて考える。
  • 体重増加や血圧については、妊婦健診ごとに医師や助産師と相談し、「自分にとっての適正体重増加」と食事の方向性を一緒に確認する。

たこだけを「悪者」にする必要はありませんが、「何をどれくらいの頻度で食べているか」をトータルで見直すことで、妊娠中のリスクを減らしやすくなります。

第3部:専門的な診断が必要な状態 — 食中毒・アレルギー・その他の病気

たこは妊娠中でも基本的に食べられる食材ですが、食べ方や体質によっては、医療機関での評価が必要になるケースもあります。この章では、妊娠中のたこに関連しやすい「食中毒」「食物アレルギー」「その他の病気」について整理し、どんな症状が出たら受診を検討すべきかを具体的に見ていきます。

3.1. 生のたこ・十分に加熱されていないたこによる食中毒

妊娠中は、ホルモンバランスの変化や免疫機能の変動により、通常よりも食中毒にかかりやすい状態だとされています6712。生の魚介類には、リステリア菌、腸炎ビブリオ、ノロウイルス、アニサキスなどの細菌や寄生虫が潜んでいる可能性があり、これらは加熱によって死滅します。

たこについても、生だこや表面だけ軽く炙られたもの、保存状態が悪いものを食べた場合、以下のような症状が出ることがあります。

  • 数時間〜数日以内に起こる、吐き気・嘔吐・水のような下痢・腹痛・発熱。
  • アニサキスなどの寄生虫による、突然の激しいみぞおちの痛み。
  • 全身の倦怠感や食欲不振が長引く。

こうした症状が出た場合は、「妊娠中だから我慢しよう」と自己判断で市販薬だけに頼るのではなく、早めに産婦人科や消化器内科、必要に応じて救急外来を受診してください6712。特に、脱水症状(口の渇き、尿の減少、立ちくらみなど)が疑われる場合や、発熱・腹痛が強い場合は注意が必要です。

3.2. 魚介アレルギー・たこアレルギーの可能性

たこを食べたあとに、口の中のかゆみや違和感、唇・まぶた・顔の腫れ、蕁麻疹、息苦しさなどが短時間で現れた場合、魚介アレルギーの可能性があります。アレルギー反応は個人差が大きく、「これまで大丈夫だったのに、妊娠中に初めて症状が出る」というケースもゼロではありません。

アレルギーが疑われる症状として、特に以下のような場合は緊急性が高いとされます。

  • 喉が締め付けられるような感覚、声のかすれ、呼吸困難。
  • 意識がもうろうとする、ぐったりして反応が鈍い。
  • 全身に広がる蕁麻疹や急激な血圧低下が疑われる状態。

これらはアナフィラキシーと呼ばれる重篤なアレルギー反応の可能性があり、躊躇せずに119番通報し、救急車を要請する必要があります。救急要請の際には、「妊娠中であること」「たこを含む魚介類を食べた直後から症状が出たこと」を伝えると、適切な対応につながりやすくなります。

症状が軽度であっても、「たこを食べるといつも口がかゆくなる」「少量でも蕁麻疹が出る」といった場合は、産婦人科やアレルギー専門医に相談し、必要に応じて血液検査や負荷試験などを検討してもらいましょう。

3.3. 妊娠高血圧症候群・妊娠糖尿病など、食事全体との関係

たこ自体が妊娠高血圧症候群や妊娠糖尿病の原因になるわけではありませんが、たこを使った料理の中には塩分や脂質が多いものもあります。たこ焼きや唐揚げ、マヨネーズをたっぷり使ったサラダなどを頻繁に食べていると、塩分・エネルギー過多につながり、結果的に血圧や体重にも影響しうる点には注意が必要です46

また、妊娠糖尿病と診断されている方では、白ご飯や小麦粉、ソースや甘いタレなどに含まれる糖質の量も考慮する必要があります。たこ焼きやたこ飯などの「主食+たこ」のメニューは、たこだけでなく主食全体の量や調味料の糖分も含めて栄養相談を受けると安心です6

妊婦健診で「血圧が高め」「体重増加が急」「血糖値の指摘があった」などの場合は、自己流でたこを完全に禁止にするのではなく、まずは主治医や助産師、管理栄養士に相談し、「どの程度の頻度と量なら自分にとって適切か」を一緒に確認してもらいましょう。

第4部:今日から始める妊娠中のたことの付き合い方アクションプラン

ここまでの内容を踏まえて、「今夜からできること」「今週から意識したいこと」「妊娠期間を通して続けたいこと」をレベル別に整理します。すべてを完璧にこなす必要はありませんが、自分の生活に合いそうなものから少しずつ取り入れていくことで、不安を減らしつつたこ料理との付き合い方を整えることができます。

表2:妊娠中のたこと魚介類の改善アクションプラン
ステップ アクション 具体例
Level 1:今夜からできること たこを食べるときは必ず中まで加熱されたものを選ぶ 生たこのカルパッチョや「レア」に近い炙りたこは避け、ゆでだこを使った酢の物・サラダ・煮物、しっかり火の通ったたこ焼きや炒め物を選ぶ。
Level 2:今週から意識したいこと たこを含め、魚介類の「種類」と「量」のバランスを整える たこを週1〜2回、1回あたり約80g前後を目安にしつつ、他の日はサケやサバ、イワシ、ツナ缶など別の魚種を組み合わせる。たこばかり続けて食べないようにする(妊婦さん以外の家族とも同じメニューにしやすいよう工夫)
Level 3:妊娠期間を通して続けたいこと 全体の食事バランスと体調を定期的に振り返る 妊婦健診での体重・血圧・血液検査の結果をもとに、主治医や助産師と「魚介類の取り方」「塩分・脂質・糖質のバランス」について定期的に相談し、自分に合った食べ方をアップデートしていく。

たこが好きな方ほど、「一切食べない」か「何も気にせず食べるか」の二択になってしまいがちですが、多くの場合はその中間にある「量と頻度を決めて、調理法を工夫しながら楽しむ」選択肢が現実的です。妊娠中はストレスも溜まりやすいため、「大好物を完全に我慢する」ことも精神的な負担になりかねません。主治医から特別な制限が出ていない場合は、自分なりの「安心できるルール」を作りながら、適度に楽しむことも大切です。

第5部:専門家への相談 — いつ・どこで・どのように?

最後に、「どんな症状が出たら受診を考えるべきか」「どの診療科を受診すればよいか」「診察時に何を伝えるとよいか」を整理します。不安な気持ちだけが先行すると、受診のタイミングが遅れてしまったり、逆に必要以上に救急外来を利用してしまったりすることもあります。目安を知っておくことで、落ち着いて判断しやすくなります。

5.1. すぐに受診・救急相談を検討すべき危険なサイン

  • たこを食べた直後〜数時間以内に、息苦しさ、喉の締め付け感、声のかすれ、めまい、意識がもうろうとするなどの症状が出た。
  • 全身に急速に広がる蕁麻疹や、顔・唇・舌の腫れが目立つ。
  • 突然の激しいみぞおちの痛みや、我慢できないほどの腹痛が続く。
  • 繰り返す嘔吐と水のような下痢で、水分がほとんど摂れない状態が続く。
  • 高熱が続き、全身の倦怠感が強い、呼吸が浅く速いなど、明らかに普段と違う様子がある。

これらの症状がある場合は、アレルギー反応や重症の食中毒、その他の急性疾患の可能性があります。夜間や休日であっても、ためらわずに地域の救急相談窓口(#7119など地域の番号)や119番へ連絡し、指示に従ってください。妊娠週数や既往歴、たこを含む魚介類をいつ・どのくらい食べたかを、できる範囲でメモしておくと、診断に役立ちます。

5.2. 症状に応じた診療科の選び方

  • 軽い吐き気や下痢、腹痛が中心の場合
    まずは妊婦健診を受けている産婦人科に相談し、必要に応じて消化器内科や内科への紹介を検討してもらいましょう。
  • 蕁麻疹やかゆみ、軽度の口の違和感などアレルギーが疑われる場合
    産婦人科に加え、アレルギー科や皮膚科に相談することで、今後の食事制限の必要性や検査の方針についてアドバイスが得られます。
  • 高血圧やむくみの悪化が気になる場合
    たこだけの影響とは限らないため、妊婦健診で血圧や尿検査の結果を確認してもらい、必要に応じて内科や周産期センターなどで精査を受けます。

どの診療科を受診するか迷う場合は、まず妊婦健診で通っている産婦人科に電話で相談し、「今の症状でどこに行くべきか」を確認するのがおすすめです。

5.3. 診察時に持参すると役立つものと、伝えたいポイント

  • たこや他の魚介類を「いつ」「どのくらい」「どのような調理法で」食べたかをメモしたもの。
  • 症状が出たタイミングと経過(例:食後2時間で腹痛→4時間後に嘔吐、翌朝になって下痢が始まった、など)。
  • これまでに指摘されたアレルギー歴(甲殻類、魚介類、花粉、薬剤など)。
  • 服用中の薬やサプリメント、お茶・健康食品などの情報。
  • 妊娠週数や妊婦健診で指摘されていること(血圧・体重・血糖など)。

これらをあらかじめ整理しておくことで、限られた診察時間の中でも医師が状況を把握しやすくなり、必要な検査や治療につなげやすくなります。

よくある質問

Q1: 妊娠初期にたこのお刺身やカルパッチョを食べてしまいました。赤ちゃんに影響はありますか?

妊娠中は、生の魚介類によるリステリア菌や腸炎ビブリオ、寄生虫などの食中毒リスクが高くなるため、基本的には生のたこは避けることが勧められます6712。とはいえ、1回食べたからといって必ずしも赤ちゃんに深刻な影響が出るわけではありません。

食後数日間に、激しい腹痛、発熱、嘔吐や水様の下痢、意識障害などの症状がなければ、大きな問題が起きていない可能性が高いと考えられます。ただし、少しでも体調に不安がある場合や、「あのとき食べたせいではないか」と心配が続いている場合は、妊婦健診の際に産婦人科医や助産師に相談し、必要に応じて経過観察や検査の方針を確認してもらいましょう。

今後は、生に近いたこや他の生魚は避け、ゆでだこやしっかり火の通った魚介類を選ぶことで、同じ不安を繰り返さずに済みます。

Q2: 妊娠中でも、たこ焼きやゆでだこのお寿司なら食べても大丈夫ですか?

たこ焼きや、十分に加熱されたゆでだこのお寿司であれば、妊娠中でも基本的には食べて差し支えないとされています138。ただし、以下の点に注意しましょう。

  • たこ自体は低水銀ですが、1回の量はおおよそ80g前後(お寿司なら数貫〜一人前程度)にとどめ、週1〜2回を目安にする。
  • たこ焼きの場合は、ソースやマヨネーズを控えめにし、他のおかずとのバランスをとる。
  • 総菜やテイクアウト品は、長時間常温に置かれたものを避け、できるだけ早めに食べる。

また、お寿司屋さんでは「生だこ」ではなく「ゆでだこ」であることを確認し、心配な場合は注文時に店員さんに尋ねておくと安心です。

Q3: 妊娠中のたこの「食べてもよい量」の目安はどのくらいですか?

厚生労働省の注意事項では、メカジキやクロマグロなど水銀濃度の高い魚について「1回80gを週1回まで」などの目安が示されていますが、たこはこの「注意が必要な魚種」には含まれていません13。そのため、たこに関して特別な上限量は示されていないものの、妊娠中は次のような考え方をすると安心です。

  • ゆでだこやたこ焼きなど、しっかり加熱されたたこを週1〜2回、1回あたり80g前後を目安にする。
  • 同じ週にマグロやメカジキなど水銀に注意が必要な魚を食べた場合は、たこを含め魚介類全体の量をやや控えめにし、翌週に調整する。
  • 「たこを毎日大量に食べる」のではなく、他の魚や肉、大豆製品などとバランスをとる。

具体的な量は体格や活動量、他の持病などによっても変わるため、妊婦健診で主治医や管理栄養士に相談すると、より自分に合った目安を教えてもらえます。

Q4: たこを食べたあとに軽い蕁麻疹が出ました。今後も食べてはいけませんか?

たこを食べたあとに蕁麻疹やかゆみが出た場合、魚介アレルギーの可能性があります。症状が軽くても、今後同じものを食べた際により強い反応が出る可能性もあるため、自己判断で継続するのはおすすめできません。

まずは、妊婦健診を受けている産婦人科やアレルギー科・皮膚科を受診し、「妊娠中であること」「たこを食べたあとにこうした症状が出たこと」「過去のアレルギー歴」などを伝えましょう。医師の指示があるまでは、たこや類似の魚介類(いかなど)を控えめにするか、いったん避けておくと安全です。

息苦しさや顔の腫れ、意識障害を伴うような症状があれば、アナフィラキシーの可能性があるため、すぐに119番通報を検討してください。

Q5: 「妊娠中にたこを食べると赤ちゃんがぐにゃぐにゃになる」という噂を聞きました。本当ですか?

このような噂や迷信は、日本各地に昔から伝わっていますが、科学的な根拠はありません。たこやいかを食べたことで赤ちゃんの形が変わるということはなく、医学的なデータでもそのような関連は示されていません13

むしろ、魚介類全般については、良質なたんぱく質やDHA・EPA、ビタミン・ミネラルを含む「妊娠中にも適切に取り入れたい食品」として、公的な資料でも紹介されています136。ただし、一部の魚種では水銀が問題になるため、種類と量に注意しながらバランスよく食べることが勧められている、というのが現在の科学的な考え方です。

噂だけに振り回されるのではなく、厚生労働省や自治体などの公的な情報を確認しつつ、不安な点は妊婦健診で医師や助産師に相談してみてください。

Q6: たこ以外で、妊娠中に安心して食べやすい魚介類にはどんなものがありますか?

厚生労働省や自治体の資料では、サケ、アジ、サバ、イワシ、サンマ、ツナ缶など、日常的によく食べる魚については「特に注意は必要ない」とされているものが多く、妊娠中でも適切な量であれば安心して取り入れやすいとされています368

たこと同じく水銀が少ないとされるいかなども、しっかり加熱した上で適量を楽しむことができます。一方で、メカジキやクロマグロ、キンメダイなど水銀濃度が高いとされる魚については、妊婦向けに「週1回まで」などの目安が示されているため、資料を参考にしながら食べる頻度や量を調整しましょう13

どの魚介類をどれくらい食べるかは、全体の食事バランスや体重、血圧、血糖値なども関わってきます。妊婦健診での結果をもとに、具体的なメニューや頻度について主治医や管理栄養士に相談するのがおすすめです。

結論:この記事から持ち帰ってほしいこと

妊娠中でも、たこは基本的に「適切な量と食べ方を守れば楽しむことができる食品」です。たこ自体は水銀が高い魚介類には分類されておらず、低脂質・高たんぱくでビタミンB12やナイアシン、亜鉛などを含む、妊婦さんにとってもメリットのある食材といえます145

一方で、妊娠中は生のたこを含む生魚全般による食中毒リスクが高くなること、たこ焼きや唐揚げなど塩分・脂質の多いメニューが体重増加や血圧に影響しうることなど、いくつかの注意点もあります。大切なのは、「たこを完全に怖がって避ける」か「何も気にせず食べ続ける」かの二択ではなく、自分の体調や生活リズムに合わせて現実的なルールを作ることです。

目安として、ゆでだこやしっかり加熱されたたこ料理を週1〜2回、1回あたり80g前後にとどめつつ、他の魚や肉、大豆製品などとバランスよく食べることが推奨されます13。もし食後に気になる症状が出た場合や、過去にアレルギーを指摘されたことがある場合は、自己判断で様子を見すぎず、早めに医療機関に相談してください。

妊娠中の食事は、赤ちゃんのためだけでなく、長く続くあなた自身の健康の土台にもなります。たこを含めた魚介類との上手な付き合い方を身につけながら、「おいしい」と感じる時間も大切にしていきましょう。あなたは一人ではなく、多くの妊婦さんが同じような不安と向き合っています。不安を抱え込まずに、主治医や助産師、周囲のサポートを頼りながら、自分らしいペースで妊娠期間を過ごしていけることを願っています。

この記事の編集体制と情報の取り扱いについて

Japanese Health(JHO)は、信頼できる公的情報源と査読付き研究に基づいて、健康・医療・美容に関する情報をわかりやすくお届けすることを目指しています。本記事では特に、厚生労働省が公表している魚介類と水銀に関する注意事項、日本食品標準成分表(八訂)、自治体の妊産婦向け食育資料、国内外の医学的レビューなどを中心に参照しました1234

原稿の作成プロセスでは、最新のAI技術を活用して文献の収集や要点整理を行ったうえで、JHO編集部が一次資料(ガイドライン・論文・公的サイトなど)と照合しながら、内容・表現・数値・URLの妥当性を人の目で一つひとつ確認しています。最終的な掲載判断や表現の調整はすべてJHO編集部が行っており、特定の医療機関や企業からの広告・スポンサーシップによって内容が左右されることはありません。

ただし、本サイトの情報はあくまで一般的な情報提供を目的としており、個々の症状に対する診断や治療の決定を直接行うものではありません。気になる症状がある場合や、治療の変更を検討される際は、必ず医師などの医療専門家にご相談ください。特に妊娠中は、同じ情報でも週数や持病、生活環境によっておすすめできる行動が異なることがあります。

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免責事項 本記事は情報提供のみを目的としており、専門的な医学的助言や診断、治療に代わるものではありません。健康上の懸念がある場合や、治療内容の変更・中止等を検討される際には、必ず資格のある医療専門家にご相談ください。特に妊娠中は、自己判断で薬やサプリメント、食事制限を行うことが思わぬリスクにつながる場合があります。

参考文献

  1. 厚生労働省. 妊婦への魚介類の摂食と水銀に関する注意事項. 2005年改訂, 2010年一部改正. https://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/iyaku/syoku-anzen/suigin/dl/index-a.pdf(最終アクセス日:2025-11-26)

  2. 食品安全委員会. これからママになるあなたへ — お魚について知っておいてほしいこと. 食品安全委員会パンフレット. https://www.fsc.go.jp/okaasan.data/okaasan20200619.pdf(最終アクセス日:2025-11-26)

  3. 台東区ほか複数自治体. 妊娠中の魚介類に含まれる水銀について. 妊産婦向け食育情報・栄養指導資料. 2023–2024年更新. 例:https://www.city.taito.lg.jp/…/ninshinchunoshokuji.html(最終アクセス日:2025-11-26)

  4. 文部科学省. 日本食品標準成分表2020年版(八訂). たこ(まだこ等)の栄養成分データ. https://fooddb.mext.go.jp/(最終アクセス日:2025-11-26)

  5. Nutrigenceほか. たこ(蛸)の栄養とビタミンB12・ナイアシン含有量に関する解説記事. オンライン栄養情報サイト. 2021年. 例:https://nutrigence.jp/media/kiji.php?n=358(最終アクセス日:2025-11-26)

  6. 厚生労働省 e-ヘルスネット・自治体サイト. 妊娠中の食生活と食中毒・食品由来感染症に関する解説. 2023–2025年更新. 例:https://www.city.taito.lg.jp/…/ninshinchunoshokuji.html(最終アクセス日:2025-11-26)

  7. LuCaレディースクリニックほか. 妊娠中に刺身・寿司を食べる際の注意点. 2023–2025年公開の医療機関解説ページ. 例:https://luca-ladies.com/blog/…(最終アクセス日:2025-11-26)

  8. NSW Food Authority ほか海外の食品安全機関. Seafood and mercury advice for pregnant women(イカ・タコ等は低水銀グループ). 近年のガイドライン・解説ページ. 例:NSW Food Authority. https://www.foodauthority.nsw.gov.au/…/pregnancy(最終アクセス日:2025-11-26)

  9. 厚生労働省. 日本人の食事摂取基準(2020年版). 妊娠期の葉酸・鉄などの推奨量に関する資料. https://www.mhlw.go.jp/…/syokuji_kijyun.html(最終アクセス日:2025-11-26)

  10. All About. 妊娠中にタコやイカを食べると赤ちゃんに異常が出るという迷信の解説. 2024年記事. https://allabout.co.jp/gm/gc/484441/(最終アクセス日:2025-11-26)

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