【妊娠中の痔と便秘】つらい痛みを和らげるための食物繊維が豊富な食品8選と生活改善ガイド
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【妊娠中の痔と便秘】つらい痛みを和らげるための食物繊維が豊富な食品8選と生活改善ガイド

妊娠してから、排便のたびに肛門まわりがヒリヒリ痛んだり、血が混じったり、「いぼのようなもの」が触れるようになって驚いた…という声は少なくありません。恥ずかしくて誰にも相談できず、「お腹の赤ちゃんに影響がないか」「出産までこのまま我慢するしかないのか」と不安を抱えたまま過ごしている方も多いでしょう。

妊娠中は子宮が大きくなることで骨盤内の静脈が圧迫され、さらにホルモンの影響で便秘になりやすくなります。その結果、痔(痔核・裂肛など)が起こりやすく、妊娠後期から産後にかけて症状が強くなるケースも報告されています。国内外の研究では、妊娠後期〜産後1か月のあいだに痔の症状を経験する妊婦さんが6割以上にのぼったとするデータもあります7,8

つらい痔の症状を和らげ、悪化を防ぐためには、医療機関での治療とあわせて、排便をスムーズにする日常生活の工夫が重要です。とくに、野菜・果物・いも類などに含まれる食物繊維は、便をやわらかく保ち、便秘の予防・改善に役立つことが分かっています1,2,9,10。妊婦さんの場合、日本の食事摂取基準では1日18g以上の食物繊維摂取が目標とされています3,7

この記事では、妊娠中の痔と便秘が起こる仕組みをやさしく解説しながら、食物繊維をはじめとする栄養・生活習慣のポイント、そして妊婦さんでも取り入れやすい「食物繊維が豊富な食品8選」の具体的な活用法を詳しくご紹介します。あわせて、「こんな症状があれば早めに受診した方がよい」といった目安も整理しますので、ご自身やご家族の状態を振り返るヒントとして活用してください。

Japanese Health(JHO)編集部とこの記事の根拠について

Japanese Health(JHO)は、健康と美容に関する公的情報や査読付き論文などをもとに、日本に暮らす方々の日常に役立つ形で情報を整理してお届けするオンラインプラットフォームです。本記事では、とくに妊娠中の痔と便秘、食物繊維のとり方に焦点を当てています。

内容の作成にあたっては、以下のような一次情報源を中心に参照し、JHO編集部がAIツールのサポートを受けつつ、最終的には人の目で原著資料を確認しながら構成・記述を行っています。

  • 厚生労働省や関連機関の資料:e-ヘルスネット「食物繊維の必要性と健康」「食物繊維」、日本人の食事摂取基準(2020年版)、妊産婦のための食生活指針など1,2,3,4
  • 医療機関・公的病院の情報:妊婦さん向けの栄養指導資料や、便秘・痔の保存的治療に関する解説5,9,10
  • 専門学会・専門誌の文献:日本大腸肛門病学会の肛門疾患診療ガイドラインや、「妊娠・分娩と痔疾患」に関する論文など6,7

AIツールは文献の整理や構成案の作成といったアシスタントとして活用していますが、公開前には必ずJHO編集部が原著にあたって、事実関係・数値・URLなどを一つひとつ確認します。

JHOの運営ポリシーや編集プロセスの詳細は、JHO(JapaneseHealth.org)編集委員会の紹介ページをご覧ください。

要点まとめ

  • 妊娠中は子宮の圧迫やホルモンの影響で便秘になりやすく、その結果として痔(痔核・裂肛など)を発症・悪化しやすくなります6,7
  • 日本人女性の食物繊維摂取量は目標量に届いていないことが多く、妊婦では1日18g以上を目安に野菜・果物・いも類・海藻などを増やすことが推奨されています3,4,7
  • りんご、バナナ、洋ナシ、干しプルーン、サツマイモ、パプリカ、きゅうり、ブロッコリーなどは、妊娠中でも取り入れやすい食物繊維源であり、便をやわらかく保つのに役立ちます1,2,5,9,10
  • 食物繊維だけでなく、水分摂取、適度な運動、排便習慣の見直し、長時間同じ姿勢を避けることも、痔の予防・悪化防止に重要です6,8,9
  • 出血量が多い・激しい痛みやしこりが突然あらわれた・便の色が黒いなどの「警告サイン」がある場合は、自己判断せず早めに医師に相談することが大切です6,7,8
  • 本記事は一般的な情報提供を目的としており、診断や治療の決定を直接行うものではありません。気になる症状がある場合は、必ず医療機関で相談しましょう。

第1部:妊娠中の痔と便秘の基本と日常生活の見直し

まずは、「なぜ妊娠すると痔や便秘が増えるのか」という基本的な仕組みと、今日から見直しやすい生活習慣について整理します。専門用語をできるだけ避けながら、妊娠中のからだの変化とお尻のトラブルの関係をイメージしやすいように説明していきます。

1.1. 妊娠中に痔が起こりやすいメカニズム

痔は、肛門まわりの血管や粘膜に負担がかかることで起こる病気の総称です。代表的なものとして、肛門の内側の静脈がふくらむ「痔核(いぼ痔)」、肛門の皮膚が切れてしまう「裂肛(切れ痔)」などがあります6

妊娠中に痔が増える主な理由は、次の3つです。

  • 子宮が大きくなり、骨盤内の静脈が圧迫される:妊娠の進行とともに子宮が大きくなり、骨盤の中で血管を圧迫します。その結果、肛門まわりの静脈に血液がたまりやすくなり、いぼ痔ができやすい状態になります6,7
  • ホルモンの変化で腸の動きがゆっくりになる:妊娠すると黄体ホルモン(プロゲステロン)が増え、腸の動きが全体的にゆるやかになります。そのため便が腸内に長くとどまり、水分が吸収されて硬くなりやすく、便秘につながります5,7,9
  • いきみやすくなる・座る時間が増える:お腹の重さや疲れやすさから運動量が減り、座りっぱなし・立ちっぱなしの時間が長くなりがちです。また、硬い便を出そうとして強くいきむことで、肛門まわりの血管へさらに負担がかかります6,8

こうした要因が重なる妊娠後期〜産後1か月のあいだは、とくに痔の発症・悪化が多いことが報告されています7,8。一時的なものだからと我慢しすぎず、早めに生活習慣を整え、必要なときは医師に相談することが大切です。

1.2. 症状を悪化させやすいNG習慣と、その理由

妊娠中の痔や便秘を悪化させてしまう「NG習慣」は、日常生活の中にひそんでいます。代表的なものを具体的な場面とともに見てみましょう。

  • 食物繊維の少ない食事:パンや麺類、肉中心で、野菜・海藻・豆類・果物が少ない食事は、便のかさが減って硬くなりやすく、便秘の原因になります1,2,9,10
  • 水分不足:忙しさやトイレが近くなる不安から水分を控えてしまうと、便の水分量が減り、硬くなってしまいます。妊娠中も、体調に応じて1.5〜2L/日程度の水分をこまめにとることが推奨されています4,5,9
  • トイレでスマホ・読書をしながら長居する:便座に長時間座っていると、知らないうちに肛門まわりの血管に負担がかかり、いぼ痔の悪化につながります6,8
  • 便意を我慢する:仕事中や外出先で「あとでまとめて行けばいい」と我慢し続けると、腸にとどまる時間が長くなり、ますます便が硬くなってしまいます。
  • 強くいきむ:硬い便を出そうとして息を止めて強くいきむと、肛門まわりの静脈が急にふくらみ、痔核が悪化したり、裂肛を起こしやすくなります6,7

これらの習慣は、一度に全部やめようとすると負担が大きくなります。「朝食に果物を1品追加する」「トイレではスマホを持ち込まない」など、できそうなところから少しずつ変えていくことがポイントです。

表1:妊娠中の痔・便秘セルフチェックリスト
こんな症状・状況はありませんか? 考えられる主な背景・原因カテゴリ
1週間に3回未満しか便が出ず、コロコロした硬い便が多い 食物繊維不足、水分不足、腸の動きの低下など1,2,3,5,9
排便のたびに強くいきまないと出ない、トイレに10分以上こもってしまう 排便習慣の乱れ、痔核の悪化リスク、骨盤底筋への負担6,8
肛門まわりに「ふくらみ」「しこり」が触れ、痛みや出血を伴う 痔核(いぼ痔)、裂肛など肛門疾患の可能性6,7
立ち仕事・座り仕事が多く、1時間以上同じ姿勢でいることが多い 骨盤内静脈のうっ血、下半身の血流低下による痔のリスク増加6,7,8
お腹が張るのが怖くて水分や野菜を控えている 便秘の悪化、痔の症状増悪につながる可能性3,4,5,9

第2部:身体の内部要因 — 栄養・ホルモン・隠れた不調

生活習慣を見直しても便秘や痔がなかなか良くならない場合、その背景には栄養バランスやホルモン変化、慢性的な疾患など、身体の内側にある要因が関わっていることがあります。この部では、とくに妊娠期特有のポイントを整理します。

2.1. 妊娠期のホルモンバランスと痔・便秘の関係

妊娠中は、赤ちゃんの成長を支えるために多くのホルモンが変化します。その中でも、便秘や痔に関連する代表的なポイントは次のとおりです。

  • 黄体ホルモン(プロゲステロン)の増加:子宮の収縮をおさえ、妊娠を維持するために重要なホルモンですが、同時に腸管の筋肉もゆるめてしまうため、腸の動きが低下し、便秘を起こしやすくなります5,7,9
  • 血液量の増加と血管の変化:妊娠が進むと血液量が増え、血管が拡張しやすくなります。骨盤内の静脈に血液がたまりやすくなることで、肛門まわりの血管もうっ血し、いぼ痔ができやすくなります6,7
  • 体重増加・腹圧の上昇:赤ちゃんの成長とともに体重が増え、腹圧も高くなります。その結果、排便時のいきみが強くなりやすく、痔の症状が悪化しやすくなります6,7

こうした変化は「妊娠が順調に進んでいるサイン」でもありますが、お尻や腸には負担となります。だからこそ、食物繊維や水分、適度な運動などのセルフケアが重要なのです。

2.2. 妊娠中に必要な食物繊維量と、バランスのよいとり方

食物繊維とは、人の消化酵素では消化されずに大腸まで届く成分の総称で、便通を整えたり血糖値や血中コレステロールの上昇を抑えたりする働きがあります1,2。厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2020年版)」では、18〜49歳女性に対して1日18g以上の食物繊維摂取が目標とされており、妊婦についても同様の目標量が示されています3,7

しかし、国の調査では日本人女性の平均摂取量はこの目標値に届いていないことが報告されており、多くの人が食物繊維不足とされています4,7。妊娠中は便秘になりやすいため、意識的に以下のような食品を組み合わせることが大切です。

  • 野菜:1日350gを目安に、葉物野菜・根菜・きのこ・海藻をバランスよく4,5,13
  • 果物:りんご・バナナ・洋ナシ・柑橘類などを1〜2品/日程度1,2,5
  • いも類・豆類:サツマイモ、ジャガイモ、大豆製品(納豆・豆腐など)4,5,9
  • 穀類:玄米や雑穀、全粒粉パンなど精製度の低い穀物を一部取り入れる1,2,9,10

食物繊維には、水に溶ける「水溶性」と、水に溶けない「不溶性」があり、便秘の改善には両方をバランスよくとることが重要です1,2,9,10。水溶性食物繊維は便に水分を含ませてやわらかくし、不溶性食物繊維は便のかさを増やして腸を刺激します。どちらか一方だけを極端に増やすのではなく、「野菜・果物・海藻・豆・いも」をセットでとるイメージを持つとよいでしょう。

2.3. 貧血・妊娠糖尿病など、他の合併症との関わり

妊娠中は貧血や妊娠糖尿病など、ほかの合併症にも注意が必要です。鉄分や葉酸などを補うために肉類・サプリメントをとる場面も増えますが、その一方で食物繊維や水分が不足して便秘が悪化してしまうこともあります3,4,11

鉄剤を内服している場合、便が黒く硬くなりやすく、痔の痛みや出血が増えることがあります。この場合、自己判断で薬を中止するのではなく、「鉄剤を飲むと便秘がつらい」「痔が悪化している」と産科の医師に率直に相談し、下剤や整腸剤の調整などを検討してもらうことが大切です。

また、妊娠糖尿病がある方は甘いお菓子やジュースを控える一方で、果物のとり方にも工夫が必要になります。果物は食物繊維源として有用ですが、量や時間帯に気をつけながら、主治医や管理栄養士と相談して取り入れると安心です。

第3部:専門的な診断が必要な疾患

「痔だと思っていたら別の病気だった」「市販薬を塗り続けていたら症状が悪化していた」というケースも少なくありません。この部では、妊娠中でも早めに医師に相談した方がよい状態や、痔以外の可能性について整理します。

3.1. 痔核・裂肛・血栓性外痔核など、お尻の代表的な病気

肛門まわりの主な病気には、次のようなものがあります6,8

  • 痔核(いぼ痔):肛門の内側または外側の静脈がふくらんだ状態で、いきみや長時間の座位、妊娠・出産などがきっかけとなります。出血や脱出(いぼが外に出る)、違和感・痛みなどが主な症状です。
  • 裂肛(切れ痔):硬い便が通ることで肛門の皮膚が切れてしまう状態です。排便時の鋭い痛みと、トイレットペーパーにつく少量の鮮やかな血が特徴です。再発をくり返すと慢性化し、排便がますます怖くなって便秘が悪化する悪循環に陥ることもあります。
  • 血栓性外痔核:肛門の外側の静脈に血のかたまり(血栓)ができ、突然痛みとしこりが出るタイプです。妊娠中や出産直後に起こりやすいとされ、強い痛みで歩くのもつらくなることがあります。

これらはいずれも、早めに適切な治療と生活指導を受けることで、多くの場合はコントロールが可能です6,8。自己判断で市販薬だけに頼るのではなく、「もしかして痔かも」と感じた段階で、産科の先生や肛門科・消化器外科に相談することをおすすめします。

3.2. 「痔だと思っていたら別の病気」—見逃したくないサイン

肛門からの出血は痔であることが多いものの、なかには大腸ポリープや大腸がん、炎症性腸疾患など、より重い病気が隠れていることもあります。とくに次のような場合は、「痔だから大丈夫」と決めつけず、早めに医師の診察を受けましょう6,8

  • 便に混ざる血の量が多い、便器が真っ赤になるような出血が続く
  • サラサラした鮮血ではなく、黒っぽいタール状の便が出る
  • 急に体重が減った、強い倦怠感が続くなど、全身の症状を伴う
  • お腹が張ってガスや便が出ない、激しい腹痛がある
  • 痔の薬を1〜2週間使ってもまったく改善が見られない、むしろ悪化している

妊娠中は、レントゲンなど一部の検査に制限があるものの、便潜血検査や超音波・内視鏡検査などを組み合わせて必要な範囲で評価が行われます。検査の必要性や安全性については、産科医や専門医が妊娠週数や症状の程度をふまえて判断しますので、不安な点は遠慮なく質問して構いません。

第4部:今日から始める改善アクションプラン — 食物繊維が豊富な食品8選

ここからは、妊娠中の痔と便秘対策として今日から取り入れやすい具体的なアクションを、「今夜から」「今週末から」「長期的に続ける」の3つのレベルに分けて整理します。特に、妊婦さんでも使いやすい食物繊維が豊富な食品8種類を、実際のメニュー例とともに紹介します。

表2:改善アクションプランとおすすめ食品
ステップ アクション 具体例(食物繊維が豊富な食品8選を含む)
Level 1:今夜からできること 便をやわらかくし、いきみを減らす ・夕食にブロッコリーや他の緑黄色野菜を1皿追加する
・食後のデザートをケーキからりんご洋ナシに変える
・就寝前までに水や麦茶などで合計1.5〜2L/日を目安にこまめに水分をとる3,4,5,9
Level 2:今週末から試したいこと 腸の動きを整える生活リズムづくり ・朝食にバナナ+ヨーグルト+オートミールを組み合わせた「朝の腸活ボウル」を取り入れる
・ランチやおやつに干しプルーンを5〜10粒程度、よく噛んで食べる(食べ過ぎには注意)
・週末にサツマイモの蒸かし芋・スープを作り置きし、平日の副菜や間食に活用する1,2,5,9,10
Level 3:長期的に続けたいこと 痔の再発・悪化を防ぐライフスタイルづくり ・毎食、「主食+主菜+副菜」に食物繊維が多い副菜を必ず1品つける習慣をつくる(根菜・海藻・豆・きのこなど)
・サラダにはパプリカきゅうりを追加し、色と食感のバランスを楽しむ
・1日合計20〜30分程度の散歩やマタニティヨガを取り入れ、長時間の座りっぱなし・立ちっぱなしを避ける4,5,9,10

4.1. 妊婦さんにおすすめの食物繊維が豊富な食品8選

ここでは、とくに妊婦さんでも取り入れやすく、痔や便秘対策に役立つ8つの食材を、特徴と注意点を含めて紹介します。実際の摂取量やアレルギーの有無などは個々の体質によって異なるため、気になる点がある場合は主治医や管理栄養士に相談してください。

1)りんご — 皮ごと食べたい「整腸フルーツ」

りんごには、水溶性食物繊維のペクチンと不溶性食物繊維の両方がバランスよく含まれています。ペクチンは便に水分を含ませてやわらかくし、不溶性食物繊維は便のかさを増やしながら腸の動きを促してくれます1,2。皮の部分にも食物繊維が多く含まれるため、農薬などが気になる場合はよく洗い、可能であれば皮ごと食べると効率よく摂取できます。

朝食のヨーグルトに角切りりんごを加えたり、薄切りにしてシナモンをふりかけて温めると、冷えが気になる妊婦さんでも食べやすくなります。

2)バナナ — 手軽に食べられる「お通じサポートフルーツ」

バナナは、水溶性・不溶性の両方の食物繊維を含み、さらに腸内環境を整える働きが期待されるオリゴ糖も含まれています1,2,9。熟したバナナは比較的消化がよく、間食としても取り入れやすい食材です。

ただし、糖質が比較的多いため、妊娠糖尿病や血糖値を指摘されている方は、量やタイミングについて主治医と相談しながら活用しましょう。目安としては1日1本程度を目標に、朝食やおやつに分けて食べるとよいでしょう。

3)洋ナシ — 便をやわらかく保つ味方

洋ナシは、水溶性食物繊維を多く含む果物の一つで、1個あたりの食物繊維量も比較的多いとされています1,2。ジューシーでやわらかい果肉は、つわりが落ち着いた妊娠中期以降のスイーツ代わりにもぴったりです。

そのまま食べるほか、小さく切ってヨーグルトやサラダに加えたり、コンポートにして温かいデザートとして楽しむのもおすすめです。冷えが気になる方は、生のものだけでなく温かいメニューも取り入れてバランスをとりましょう。

4)干しプルーン — 使い方次第で頼れる「自然の潤滑油」

干しプルーンには、食物繊維に加えてソルビトールと呼ばれる糖アルコールが含まれており、便に水分を引き寄せてやわらかくする働きが期待されています1,2,9,10。そのため、昔から便秘対策の食品として親しまれてきました。

ただし、一度に多く食べると下痢や腹痛、血糖値上昇につながることがあります。一般的には1日5〜10個程度を目安とし、水やヨーグルトと一緒にとると、より腸にやさしく働きかけてくれます。妊娠糖尿病や血糖コントロールが必要な方は、医師に相談のうえ量を調整してください。

5)サツマイモ — 昔ながらの「お腹にやさしいおやつ」

サツマイモは、不溶性食物繊維が豊富で、便のかさを増やしながら腸を刺激し、排便を促す働きがあります1,2,9,10。さらに、ビタミンCやカリウムなども含まれており、妊娠中の栄養補給にも役立つ食材です。

おすすめは、ふかし芋や焼き芋など、油を使わないシンプルな調理法です。小さめのサツマイモを1本(約100g)程度を目安に、主食の一部として取り入れたり、間食としてお茶と一緒に少量ずつ食べると血糖値の急上昇も抑えやすくなります。食べ過ぎるとガスがたまりやすくなるため、体調を見ながら量を調整しましょう。

6)パプリカ — 食感も彩りも楽しめる「サラダの名脇役」

パプリカは、水分と食物繊維のバランスがよく、ビタミンCやカロテノイドも豊富な野菜です1,2,4,5。生のままでも、軽く炒めたり蒸したりしても食べやすく、サラダやマリネ、炒め物などさまざまな料理に使えます。

妊娠中は生ものによる食中毒リスクも気になるところですが、パプリカは軽く加熱するだけでも食感が残り、彩りもよくなります。きゅうりやトマト、ブロッコリーなどと組み合わせた「カラフルサラダ」は、見た目にも楽しく、食欲が落ちやすい時期にもおすすめです。

7)きゅうり — 水分補給も兼ねた「しゃきしゃき野菜」

きゅうりは水分が多く、食物繊維量が極端に多いわけではありませんが、サラダや漬物として量をとりやすいのが特徴です1,2。水分と少量の食物繊維を一緒にとることで、便をやわらかく保つ助けになります。

妊娠中は塩分のとり過ぎによるむくみも気になるため、漬物は薄味を心がけるか、浅漬けを少量楽しむ程度にとどめると安心です。サラダにする際は、パプリカや海藻、豆類など食物繊維が多い食材と組み合わせると、全体のバランスがよくなります。

8)ブロッコリー — 妊婦さんの味方となる「緑の小さな房」

ブロッコリーは、不溶性食物繊維が豊富で、妊娠中に特に重要とされる葉酸やビタミンCも多く含む野菜です1,2,4,5,13。小房に分けてゆでたり電子レンジで加熱したりするだけで、サラダ・付け合わせ・スープなどに応用できます。

よく噛んで食べることで満腹感も得られやすく、体重増加が気になる妊婦さんのおかずとしても相性が良い食材です。硬さが気になる場合は、少し長めにゆでてポタージュにするなど、食べやすい形にアレンジしてみましょう。

4.2. 食物繊維を増やすときの注意点

食物繊維は便秘や痔の予防に役立つ一方で、急に大量に増やすとお腹が張ったり、ガスがたまって苦しくなることがあります1,2,9,10。次のポイントに気をつけながら、少しずつ増やしていきましょう。

  • 今の食生活から、毎日「野菜のおかず+果物1品」を追加するイメージで始める
  • 水分摂取も同時に増やす(食物繊維だけ増やして水分が足りないと、便が逆に硬くなることがあります)1,2,9
  • 干しプルーンやサツマイモなど糖質の多い食品は、主食やおやつとしての量を調整しながら取り入れる
  • お腹の張りや痛みが強いときは無理をせず、その日は量を控えめにする

妊娠中は個人差が大きいため、「この量なら自分の体調に合う」というバランスを、少しずつ確かめながら探していくことが大切です。

第5部:専門家への相談 — いつ・どこで・どのように?

セルフケアだけでは限界がある場合や、「もしかして痔以外の病気かも」と不安なときには、早めに医療機関へ相談することが何より大切です。この部では、受診の目安や診療科の選び方、診察時に役立つ情報のまとめ方について解説します。

5.1. 受診を検討すべき危険なサイン

  • 排便のたびに多量の鮮血が出る、便器が真っ赤になるような出血が続く
  • 突然強い痛みと大きなしこりが肛門まわりにあらわれ、触れただけで激痛が走る
  • 発熱や悪寒、強い倦怠感を伴う肛門まわりの腫れ・痛みがある
  • 黒っぽいタール状の便が出る、便が細くなったり形が変わったりしている
  • 痔の薬を数日〜1週間使用してもまったく改善がみられない、むしろ悪化している
  • 便秘と下痢をくり返し、体重減少や食欲低下が続いている

これらの症状がある場合は、妊娠週数にかかわらず、できるだけ早く産科医や肛門科・消化器内科に相談してください。出血が多く、めまいやふらつきが強い場合、また激しい腹痛を伴う場合は、ためらわずに救急外来の受診や119番通報も検討しましょう。

5.2. 症状に応じた診療科の選び方

  • まず相談しやすいのは産科(婦人科):妊婦健診でかかっている産科は、妊娠週数や薬の影響をふまえて、痔の治療や薬の選択についてアドバイスしてくれます。必要に応じて、肛門科や消化器外科への紹介状を出してもらえることもあります6,7
  • 肛門科・消化器外科:専門的な診断や、保存的治療・外科的治療の選択について詳しく相談したい場合に適しています。妊娠中の手術は慎重な検討が必要ですが、重症例では妊娠中期に手術が行われることもあります6,7,10
  • 消化器内科:便秘や下痢をくり返す、腹痛や体重減少があるなど、腸全体の病気が疑われる場合に適しています。

どの診療科を受診すべきか迷うときは、まず妊婦健診でかかっている産科に「痔や便秘がつらい」「出血が不安」と伝え、相談してみるのがおすすめです。

5.3. 診察時に持参すると役立つものと費用の目安

  • 症状のメモ:いつから、どのようなタイミングで、どのくらいの痛み・出血があるかを簡単にメモしておくと、診察がスムーズです。
  • 排便の記録:1日の排便回数、便の硬さ(コロコロ/普通/やわらかい)、いきみの程度などを数日分メモしておくと、薬や生活指導の参考になります。
  • お薬手帳:鉄剤や便秘薬、サプリメントなど、現在使用中の薬・健康食品を一覧で確認できるようにしておきましょう。

痔の診察では、問診に加えて肛門の視診・触診、必要に応じて指診や内視鏡検査が行われます。費用は医療機関や検査内容によって異なりますが、日本の公的医療保険が適用される場合、自己負担は原則3割となります。妊婦健診とは別枠の診療になることもあるため、事前に医療機関へ問い合わせておくと安心です。

よくある質問

Q1: 妊娠中に痔になってしまいました。出産すれば自然に治りますか?

A1: 妊娠後期から産後にかけて痔の症状が強くなる方は多く、出産後に子宮の大きさやホルモンバランスが落ち着くにつれて、自然に軽快するケースも少なくありません6,7,8。ただし、便秘が続いている場合や、いきむ習慣がそのままになっていると、症状が残ったり再発しやすくなります。

「どうせ出産すれば治る」と放置してしまうと、裂肛が慢性化したり、大きないぼ痔になってしまうこともあります。妊娠中から食物繊維・水分・適度な運動を心がけ、必要に応じて医師に相談しながら早めに対策を始めることが大切です。

Q2: 妊娠中でも市販の痔の薬(軟膏・座薬)を使っても大丈夫ですか?

A2: 一般的に、外用薬(塗り薬や座薬)は全身への影響が少ないとされていますが、妊娠中の薬の使用については、自己判断ではなく医師や薬剤師に相談することが推奨されています6,7。成分によっては妊娠中の使用経験が少ないものもあり、妊娠週数や症状の程度に応じて使い方を調整する必要があります。

すでに市販薬を使用していて、かゆみや発疹などの異常が出た場合、あるいは1週間ほど使っても改善が見られない場合は、使用を中止し、必ず医療機関を受診してください。出血が多い場合はすぐに相談しましょう。

Q3: 食物繊維サプリや便秘薬を使っても赤ちゃんに影響はありませんか?

A3: 食物繊維サプリ(難消化性デキストリンなど)や一部の便秘薬は、妊娠中でも比較的安全に使われることがありますが、その種類や量によって安全性は異なります3,5,9,10。とくに、腸を強く刺激するタイプの下剤は、腹痛を伴いやすく、妊娠中には推奨されない場合もあります。

現在使用を検討しているサプリ・便秘薬がある場合は、パッケージを持参して、妊婦健診の際に医師や助産師に相談してみましょう。すでに飲み始めている場合も、「いつからどのくらい使っているか」を伝えると、より適切なアドバイスが受けやすくなります。

Q4: 痔があると、普通分娩は難しくなりますか?

A4: 痔があっても、多くの方は通常どおり経腟分娩(普通分娩)が可能です6,7。出産時のいきみで一時的に症状が悪化したり、新たに痔ができてしまうことはありますが、多くは産後に徐々に落ち着いていきます。

ただし、非常に大きな痔核や、激しい痛みを伴う血栓性外痔核がある場合には、事前に産科医と肛門科医が連携して対応を検討することがあります。妊娠中に強い痛みや出血がある場合は、早めに相談しておくことで、出産時の安心にもつながります。

Q5: 「食物繊維をとるといい」と聞きますが、どのくらいを目標にすればよいですか?

A5: 日本人の食事摂取基準(2020年版)では、18〜49歳女性の食物繊維の目標量を1日18g以上としています3,7。妊婦についても同様の目標量が示されており、多くの日本人女性はこの値に届いていないと報告されています4,7

具体的には、「1日350gの野菜(うち120gは緑黄色野菜)+果物1〜2皿+いも類・豆類・海藻類」を意識することで、目標量に近づきやすくなります4,5,13。ただし、急に大量に増やすとお腹が張ることもあるため、数日〜数週間かけて少しずつ増やしていくことが大切です。

Q6: つらいときは、トイレで強くいきんでも大丈夫ですか?

A6: 強くいきむことは、痔の悪化の大きな原因の一つです6,8。とくに硬い便を無理に出そうとするいきみは、肛門まわりの静脈を急にふくらませ、いぼ痔や裂肛を悪化させてしまいます。

「どうしても出ない」と感じるときは、いきみを一度やめて深呼吸をし、数分後に改めてトイレに行くなど、からだを落ち着かせる工夫をしてみてください。それでも出にくい状態が続く場合は、無理をせず、産科や肛門科に相談して軟便剤や浣腸などの適切な方法を検討してもらいましょう。

Q7: 妊娠中でも、ウォーキングやマタニティヨガは痔に効果がありますか?

A7: 妊娠経過に問題がなく、主治医から運動制限が出ていない場合、軽いウォーキングやマタニティヨガは、腸の動きを整えたり、下半身の血流を良くしたりするのに役立ちます4,5,9,10。その結果、便秘や痔の症状が和らぐことも期待できます。

ただし、息が上がるほど激しい運動や、長時間の立ちっぱなしは負担になることがあります。妊娠週数や体調に合わせて、「少し息が弾む程度の散歩を20〜30分」「マタニティ向けに安全性が確認されたヨガプログラム」などを選び、無理のない範囲で続けることが大切です。

Q8: 痔からの出血と、妊娠のトラブルによる出血はどう見分ければよいですか?

A8: 痔からの出血は、通常、便やトイレットペーパーに付着する鮮やかな赤い血であることが多く、痛みやいぼ状のふくらみを伴うことがよくあります6,8。一方、膣からの出血は、生理に似た出血や茶色いおりもの、腹痛や張りを伴うことがあります。

しかし、実際には自分で見分けるのが難しいケースも多く、「肛門からか膣からか分からない」「お腹の張りもある」といった症状がある場合は、迷わず産科を受診してください。妊娠初期や中期・後期にかかわらず、出血に気づいたら早めに相談することが安心につながります。

結論:この記事から持ち帰ってほしいこと

妊娠中の痔や便秘は、多くの妊婦さんが経験する悩みであり、「自分だけがつらいわけではない」ことをまずは知っておいてください。子宮の圧迫やホルモンの変化など、妊娠に伴う体の変化が大きく関わっているため、完全に防ぐことは難しいものの、食物繊維や水分、適度な運動、排便習慣の工夫によって症状を軽くできる可能性は十分にあります。

りんご・バナナ・洋ナシ・干しプルーン・サツマイモ・パプリカ・きゅうり・ブロッコリーといった身近な食品を上手に取り入れながら、1日18g以上の食物繊維摂取を目指し、便をやわらかく保つことが大切です1,2,3,4,5,9,10,13。同時に、強くいきまない・トイレに長居しない・長時間同じ姿勢を避けるといった「お尻に優しい生活」を心がけましょう。

そして何より重要なのは、つらさを一人で抱え込まないことです。妊婦健診の場で「実は痔がつらくて…」と口に出すのは勇気が要るかもしれませんが、産科医や助産師は同じ悩みを抱える妊婦さんをたくさん見てきています。少し勇気を出して相談することで、適切な薬や治療、生活の工夫を一緒に考えてもらうことができます。

この記事が、妊娠中のお尻の悩みを「誰にも言えない恥ずかしい問題」から、「きちんと向き合えば改善が期待できる、ケアすべき大切なサイン」として捉え直すきっかけになれば幸いです。

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Japanese Health(JHO)は、信頼できる公的情報源と査読付き研究に基づいて、健康・医療・美容に関する情報をわかりやすくお届けすることを目指しています。本記事では、厚生労働省のe-ヘルスネット、日本人の食事摂取基準、妊産婦のための食生活指針、日本大腸肛門病学会のガイドラインなどを主な情報源として、妊娠中の痔と便秘、食物繊維摂取に関する内容を整理しました1,2,3,4,6,7,10,13

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参考文献

  1. 厚生労働省 e-ヘルスネット. 食物繊維の必要性と健康. 2021年更新. https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/food/e-05-001.html(最終アクセス日:2025-11-26)

  2. 厚生労働省 e-ヘルスネット. 食物繊維. https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/dictionary/food/ye-016.html(最終アクセス日:2025-11-26)

  3. 厚生労働省. 日本人の食事摂取基準(2020年版) 2 対象特性 2-1 妊婦・授乳婦. https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/000586574.pdf(最終アクセス日:2025-11-26)

  4. 厚生労働省. 妊娠前からはじめる妊産婦のための食生活指針. 2021年. https://www.cfa.go.jp/…/20230401_policies_boshihoken_shokuji_02.pdf(最終アクセス日:2025-11-26)

  5. 中東遠総合医療センター 栄養科. 妊婦さんに必要な栄養素について. https://www.chutoen-hp.shizuoka.jp/media/hg_eiyou2.pdf(最終アクセス日:2025-11-26)

  6. 日本大腸肛門病学会. 肛門疾患(痔核・痔瘻・裂肛)・直腸脱診療ガイドライン 2020年版. 2020年. https://www.coloproctology.gr.jp/…/koumonshikkan_guideline2020.pdf(最終アクセス日:2025-11-26)

  7. 高野 正博. 妊娠・分娩と痔疾患. 日本大腸肛門病学会雑誌. 1990;43(6):1077-1082. https://www.jstage.jst.go.jp/article/jcoloproctology1967/43/6/43_6_1077(最終アクセス日:2025-11-26)

  8. ボラギノール公式サイト. 出産前後で、特に痔になりやすい時期っていつ?. https://www.borraginol.com/borralab/know/situation/situation003.html(最終アクセス日:2025-11-26)

  9. 東京日帰り手術クリニック. 妊娠中の痔、どうしたらいい?つらい痛み・出血への対処法と予防法. 2025年. https://www.tokyo-daysurgery.com/column/hemorrhoids-during-pregnancy/(最終アクセス日:2025-11-26)

  10. 医療法人や病院サイト等. 便秘と食物繊維に関する解説ページ(例:便秘改善のための食事や、水溶性・不溶性食物繊維の働きに関する記事). https://soujinkai.or.jp/himawariNaiHifu/constipation-food/(最終アクセス日:2025-11-26)

  11. 富士製薬工業. 妊娠前から授乳期までの食生活について. https://www.fujipharma.jp/patients/preconception/pregnancy/(最終アクセス日:2025-11-26)

  12. 国立保健医療科学院 生活習慣病予防研究部. 食生活の10のポイント|妊娠前からはじめる妊産婦のための食生活. https://www.nibn.go.jp/eiken/ninsanpu/point.html(最終アクセス日:2025-11-26)

  13. 厚生労働省. 日本人の食事摂取基準(2025年版)の策定ポイント. https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/001396865.pdf(最終アクセス日:2025-11-26)

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