【子宮筋腫のサイン】見逃したくない7つの症状と受診の目安
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【子宮筋腫のサイン】見逃したくない7つの症状と受診の目安

「最近、生理の出血量が増えた気がする」「トイレがやけに近い」「お腹だけぽっこりしてきた」——そんな小さな変化に気づきながらも、忙しさや恥ずかしさから婦人科を後回しにしていないでしょうか。

子宮筋腫(しきゅうきんしゅ)は、子宮の筋肉にできる良性の腫瘍で、がんとは異なる病気です。厚生労働省や日本の専門学会の情報によると、30歳以上の女性の2〜3割前後に子宮筋腫がみられると言われており123、決して珍しい病気ではありません。多くは命に関わるものではありませんが、月経や妊娠、日常生活の質(QOL)に影響することがあります。

本記事では、日本の公的機関やガイドライン、海外の信頼できる医療情報をもとに、子宮筋腫でよく見られる「7つのサイン」に焦点を当てて解説します。症状の背景にどのようなメカニズムがあるのか、どのような検査・治療が行われるのか、そして「どのタイミングで婦人科を受診すればよいのか」を具体的に整理していきます。

ここで紹介する7つのサインは、子宮筋腫に特徴的な症状ではありますが、すべてが子宮筋腫だけに見られるものではありません。一方で、「年齢のせい」「体質だから」と我慢してしまうと、貧血や妊娠・出産への影響など、後から困ることもあります。自分のからだの状態を客観的に振り返り、必要なときに適切な医療につながるための「整理された知識」として、気楽な気持ちで読み進めてみてください。

Japanese Health(JHO)編集部とこの記事の根拠について

Japanese Health(JHO)は、健康と美容に関する情報を提供するオンラインプラットフォームです。厚生労働省や日本の専門学会、海外の公的機関などが公開している一次情報を整理し、日本に暮らす人が日常生活で活用しやすい形でお届けすることを目指しています。

本記事の内容は、厚生労働省「女性特有の健康課題」に関する情報1、公益社団法人日本婦人科腫瘍学会や日本産科婦人科学会による子宮筋腫の解説23、日本産科婦人科学会の婦人科診療ガイドライン6、さらにMayo ClinicやNHSなど海外の公的医療機関の情報78910にもとづき、JHO編集部がAIツールのサポートを受けながら整理・執筆しています。

  • 厚生労働省・自治体・公的研究機関:e-ヘルスネットや「女性特有の健康課題」に関する解説、統計資料など、日本人向けの公式情報を優先して参照しています。
  • 国内外の医学会ガイドライン・査読付き論文:日本産科婦人科学会のガイドラインや、子宮筋腫の疫学・治療に関するレビュー論文611など、科学的に検証されたエビデンスをもとに要点を整理しています。
  • 医療機関・NPOによる一次資料:日本の病院やクリニックが公開している子宮筋腫の診療情報を、日常生活の具体的なイメージに落とし込む際の参考としています4

AIツールは文献の要約や構成案作成の「アシスタント」として活用していますが、公開前には必ずJHO編集部が原著資料と照合し、重要な記述を一つひとつ確認しながら、事実関係・数値・URLの妥当性を検証しています。

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要点まとめ

  • 子宮筋腫は子宮の筋肉にできる良性腫瘍で、30歳以上の女性の2〜3割前後にみられる、ごく身近な病気です12311
  • 多くは無症状ですが、「生理の出血量が多い」「生理が長引く」「貧血」「お腹の張り」「頻尿・便秘」「腰痛」「性交時の痛み」といった症状が現れることがあります12479
  • 本記事で取り上げる7つのサイン(過多月経、頻尿、お腹の張りやふくらみ、性交痛、月経が長引く、ひどい便秘、腰痛)は、子宮筋腫の典型的な症状ですが、別の病気でも起こりうるため、自己判断は禁物です。
  • 診断は内診や経膣超音波検査が基本で、必要に応じてMRIなどを行います。症状が軽い・小さい筋腫は定期的な経過観察、生活に支障がある場合は薬物療法や手術などを検討します3468
  • 生活習慣だけで筋腫そのものを「消す」ことは難しいものの、鉄分を意識した食事や月経・症状の記録は、貧血の予防や診察時の情報整理に役立ちます。
  • 「どの程度の症状なら受診した方がよいのか分からない」という不安に対して、危険なサインや受診のタイミング、診察時に準備しておくとよい情報を具体的に解説します。

第1部:子宮筋腫の基礎知識と日常で気づきやすい変化

まずは、「子宮筋腫とはどのような病気か」「どんなときに『おかしいかも?』と気づきやすいのか」を整理します。専門用語をできるだけ避け、日常生活のイメージと結びつけながら説明していきます。

1.1. 子宮筋腫とは? できる場所と種類

子宮筋腫は、子宮の壁(筋層)を構成する平滑筋という筋肉組織から発生する良性の腫瘍です23。がんのように周囲へしみ込むように広がったり、全身に転移したりするものではなく、基本的には「こぶ」のように周囲の組織を押しのけながらゆっくり大きくなっていきます。

発生する場所によって、次の3つに大きく分けられます23

  • 粘膜下筋腫:子宮の内側(子宮腔)に向かって突出するタイプ。小さくても出血が多くなりやすく、過多月経や不正出血、不妊の原因になりやすいとされています。
  • 筋層内筋腫:子宮の筋肉の中にできるタイプ。最も頻度が高く、ある程度大きくなると月経量の増加や月経痛、圧迫感などが出てくることがあります。
  • 漿膜下筋腫:子宮の外側に向かって育つタイプ。月経症状は出にくい一方で、大きくなると膀胱や直腸を圧迫し、頻尿や便秘、腰痛などの原因になることがあります24

子宮筋腫は一つだけの場合もあれば、大小さまざまな筋腫が複数できることもあります。厚生労働省や日本の学会の資料では、30代~40代の女性に多く、閉経に近づくと女性ホルモンが減ることで自然に小さくなることも多いと説明されています12511

1.2. 見逃したくない7つのサインとセルフチェック

子宮筋腫があっても、まったく症状が出ない人も少なくありません。一方で、日本婦人科腫瘍学会や日本産科婦人科学会の解説、海外の公的医療機関の情報を総合すると237910、次のような症状がある場合は、子宮筋腫を含む婦人科疾患が隠れている可能性があります。

本記事では、特に次の「7つのサイン」に注目して解説します。

  • サイン1:生理の出血量が明らかに増え、レバーのような血の塊が多く出る(過多月経)
    ナプキンやタンポンを1〜2時間ごとに替えないと間に合わない、夜用を重ねても漏れてしまう、レバー状の塊がたくさん出るといった状態は、粘膜下筋腫などによる過多月経の典型例として説明されています239
  • サイン2:トイレに行く回数が急に増えた(頻尿)
    特に水分摂取量が変わっていないのに、日中や夜間のトイレが極端に増えた場合、大きくなった筋腫が膀胱を圧迫している可能性があります24
  • サイン3:お腹だけがぽっこり出てきた、下腹部にしこりのようなふくらみを感じる
    体重が大きく変わっていないのにお腹だけ前に出てきたように感じる場合、子宮全体が筋腫で大きくなっていることがあります210
  • サイン4:性行為のときに痛みを感じる、出血する(性交痛・性交後出血)
    子宮頸部付近や子宮の内側に筋腫があると、挿入時の圧迫で痛みや出血が起こることがあります147。子宮頸がんなど別の病気でも起こるため、必ず婦人科で原因を確認することが大切です。
  • サイン5:生理がだらだらと長引き、1週間以上続く(月経過長)
    いつもの生理より明らかに長く続く、終わったと思ったらすぐまた少量の出血がだらだら続く、といった場合も粘膜下筋腫などで説明されることがあります236
  • サイン6:ひどい便秘が続く、いきまないと出にくい
    子宮の後ろ側に大きな筋腫があると直腸を圧迫し、便が通りにくくなることがあります2410。食物繊維を増やしても改善しない頑固な便秘は、単なる生活習慣だけの問題とは限りません。
  • サイン7:腰の重だるさや痛みが続く
    骨盤内で大きくなった子宮筋腫が周囲の神経や骨盤の構造に負担をかけることで、慢性的な腰痛や骨盤周囲の鈍い痛みとして感じられることがあります125

これらのサインは、子宮内膜症や子宮腺筋症、子宮体がんなど、別の婦人科疾患でも起こり得る症状です15。一つひとつの症状だけでは原因を断定できないため、「どの症状が」「いつから」「どのくらいの強さで」続いているかを整理することが、診断の第一歩になります。

表1:セルフチェックリスト(子宮筋腫が疑われる7つのサイン)
こんな症状・状況はありませんか? 考えられる主な背景・原因カテゴリ
生理の出血量が明らかに増え、レバーのような血の塊が多く出る/貧血と言われた 粘膜下・筋層内筋腫による過多月経・月経過長、鉄欠乏性貧血
トイレが近くなり、少量しか出ないのに何度も行きたくなる 漿膜下筋腫などによる膀胱圧迫、尿路系の不調
体重は変わらないのに下腹部だけぽっこりふくらんできた 子宮全体の腫大(多発筋腫など)、腹部腫瘤
性行為のときに強い痛みがある/性交後に出血する 子宮筋腫(特に粘膜下・頸部付近)、子宮内膜症、子宮頸がんなど
生理が1週間以上続く、終わったと思ってもすぐ少量出血が再開する 粘膜下筋腫、子宮内膜ポリープ、ホルモンバランスの変化など
慢性的な便秘で、いきまないと出にくい・残便感が強い 子宮後方の筋腫による直腸圧迫、他の消化管の病気
腰の重だるさや鈍い痛みが続き、市販薬だけでは改善しない 子宮筋腫や子宮内膜症など婦人科疾患による骨盤内の圧迫・炎症

一つでも当てはまるからといって、必ずしも子宮筋腫とは限りませんが、「複数のサインがいくつも重なっている」「最近急に悪化してきた」という場合は、早めに婦人科で相談することをおすすめします。

第2部:身体の内部要因 — ホルモン・貧血・ライフステージ

生活習慣だけで説明しきれない症状の背景には、女性ホルモンや加齢、妊娠・出産歴など、からだの内部要因が関わっています。この部では、子宮筋腫とホルモンの関係、貧血やライフステージとのつながりを整理します。

2.1. 【特に30〜40代】ライフステージと女性ホルモンの関係

子宮筋腫は、女性ホルモン(特にエストロゲン)の影響を受けて大きくなることが知られています12611。一般に、次のような傾向があります。

  • 好発年齢:日本の資料や国際的な疫学研究によると、子宮筋腫は35〜40歳前後で頻度が高まり、40代でピークを迎えると報告されています511
  • 閉経との関係:閉経後は卵巣からのホルモン分泌が減るため、多くの筋腫は徐々に小さくなります12
  • 月経が早く始まった人:海外の研究では、初経年齢が早いほど子宮筋腫のリスクが高い傾向が報告されています11
  • 妊娠・出産歴:妊娠・出産を経験した人は、そうでない人と比べて子宮筋腫のリスクがやや低いとする報告もありますが、個人差が大きく、一概には言えません11

内閣府の男女共同参画白書では、子宮筋腫や子宮内膜症が「働き盛りの女性」に多く、痛みや貧血によって仕事のパフォーマンスが低下したり、将来の妊娠に影響したりする可能性があることが指摘されています5。月経トラブルを「仕方ない」と我慢し続けるのではなく、キャリアやライフプランと合わせて早めに相談することが大切です。

2.2. 栄養不足・隠れた欠乏状態(特に鉄欠乏性貧血)

過多月経や月経過長が続くと、知らないうちに鉄分が失われ「鉄欠乏性貧血」になることがあります。厚生労働省は、子宮筋腫の症状として「過多月経、不正出血、貧血、頻尿、腰痛など」が挙げられると説明しています1

鉄欠乏性貧血の代表的な症状は次の通りです。

  • 少し動いただけで息切れがする、動悸がする
  • 疲れやすい、だるさが抜けない
  • めまい・立ちくらみが多い
  • 顔色が悪い、爪が割れやすい、抜け毛が増えた気がする

貧血を「体力がないだけ」と捉えて我慢し続けると、仕事や家事・育児、学業に影響するだけでなく、妊娠中の合併症リスクにもつながる可能性があります15。健康診断でヘモグロビン値の低下を指摘されたことがある方や、「昔から貧血気味」と感じている方は、月経の様子と合わせて婦人科で相談してみるとよいでしょう。

2.3. 子宮筋腫のリスク要因と「よくある誤解」

世界規模の疫学研究では、子宮筋腫の発症には年齢・ホルモン・人種・家族歴・肥満など複数の要因が関わると報告されています11。一方で、「これをすれば必ず予防できる」「このサプリを飲めば小さくなる」といった明確な生活習慣上の予防法は確立していません。

よくある誤解として、次のようなものがあります。

  • 誤解1:「ストレスのせいで子宮筋腫になった」
    ストレスがホルモンバランスに影響する可能性は否定できませんが、「ストレスだけが直接の原因」と証明されたわけではありません。ただし、ストレスで体調が乱れると月経痛や出血がつらく感じやすくなることはあります。
  • 誤解2:「冷え性だから子宮筋腫ができた」
    冷えと子宮筋腫の因果関係を直接示す科学的な証拠は限定的です。一方で、冷えによる血流低下が月経痛を強く感じさせることはあり得るため、からだを冷やしすぎない工夫は痛みのコントロールに役立つことがあります。
  • 誤解3:「運動をすれば子宮筋腫は小さくなる」
    適度な運動はホルモンバランスや体重管理に良い影響を与えますが、すでにできた筋腫そのものを直接小さくする効果は確認されていません。運動はあくまで全身の健康維持・ストレス対策と考えましょう。

生活習慣は「筋腫をゼロにする魔法のスイッチ」ではありませんが、貧血の悪化を防いだり、痛みやだるさと付き合いやすくしたりするうえで大切な土台になります。第4部では、今日からできる具体的なアクションを整理します。

第3部:専門的な診断が必要な疾患としての子宮筋腫

セルフチェックだけでは、子宮筋腫かどうか、他の病気なのかを正確に見分けることはできません。この部では、婦人科で行われる主な検査と、子宮筋腫以外に考えられる代表的な病気について解説します。

3.1. 子宮筋腫が疑われるときの検査と診断の流れ

日本産科婦人科学会のガイドラインや病院の解説によると、子宮筋腫が疑われる場合の診断は次のようなステップで行われることが一般的です346

  • 問診:月経の状態(周期・出血量・期間)、痛みの程度、妊娠歴、不妊の有無、家族歴などを確認します。ナプキン使用枚数や血の塊の有無など、具体的な情報があると診断の助けになります。
  • 内診:膣から指や器具を用いて子宮や卵巣の大きさ・形・位置を確認します。子宮が全体的に大きくなっているか、しこりのようなものが触れるかなどを評価します。
  • 経膣超音波検査:膣内に細いプローブ(超音波の機械)を入れて、子宮や卵巣の様子を画像で確認します。筋腫の位置・大きさ・数の把握に非常に有用です。
  • MRI検査:筋腫が大きい場合や手術を検討するとき、子宮肉腫(まれながら悪性の腫瘍)の可能性を慎重に評価したいときなどに行われます26
  • その他の検査:貧血の有無を調べる血液検査、子宮頸がん検診、必要に応じて子宮内膜の検査などが追加されることもあります。

ガイドラインでは、無症状で筋腫がそれほど大きくない場合、定期的な経過観察を推奨する一方、過多月経や月経困難症、圧迫症状などが生活に支障をきたしている場合には、薬物療法や手術などを検討する方針が示されています6

3.2. 子宮筋腫以外に考えられる病気と「赤信号」のサイン

第1部で挙げた7つのサインは、子宮筋腫に限らず、さまざまな婦人科疾患で見られる症状です。厚生労働省や専門学会の資料では、以下のような病気との鑑別が重要だとされています15

  • 子宮内膜症:子宮の内側を覆う内膜に似た組織が子宮の外側や卵巣、骨盤内に生じる病気で、強い月経痛や慢性的な骨盤痛、性交痛などが特徴です。
  • 子宮腺筋症:子宮内膜が子宮の筋層内に入り込む病気で、子宮筋腫と同じく30〜40代の女性に多く、強い月経痛や過多月経の原因となります8
  • 子宮内膜ポリープ:子宮内膜にできるポリープ(ポッと飛び出した小さな塊)で、不正出血や月経異常の原因になります。
  • 子宮体がん:特に閉経後の不正出血は、子宮体がんなど悪性疾患のサインである場合があります。少量の出血でも必ず婦人科を受診することが重要です1

次のような症状がある場合は、「すぐに」または「早めに」受診が必要な赤信号のサインとされています。

  • 今までに経験したことがないほどの激しい下腹部痛・腰痛(筋腫の茎がねじれるなどの緊急状態の可能性)24
  • 短時間でナプキンがあふれるほどの大量出血、めまい・意識が遠のく感じがある
  • 閉経後の出血、妊娠の可能性がある時期の出血
  • 発熱を伴う強い下腹部痛やおりものの悪臭など、感染を疑う症状

これらの症状がある場合は、時間外や休日であっても救急外来や救急相談窓口(#7119など)、緊急性が高ければ119番への連絡を検討してください。迷ったときは、「心配しすぎかな」と遠慮するよりも、まずは医療機関や相談窓口に問い合わせることが大切です。

第4部:今日から始める改善アクションプラン

原因が何であれ、「今の自分の状態を把握すること」と「受診したときに説明しやすくすること」は、すぐに始められて確実に役立つ行動です。この部では、今日から・今月から実践できるアクションプランをレベル別に整理します。

表2:子宮筋腫が気になる人の改善アクションプラン
ステップ アクション 具体例
Level 1:今夜からできること 月経と症状を簡単にメモし始める スマホのメモアプリやカレンダーに「生理開始日・終了日・出血量の印象・痛みの強さ・飲んだ薬」などを記録する。ナプキン何枚分か、夜間に何度替えたかもメモしておく。
Level 1:今夜からできること 貧血対策を意識した食事をとる レバー・赤身肉・魚・大豆製品・ほうれん草など鉄分を多く含む食品を意識して取り入れ、ビタミンC(野菜や果物)と一緒に摂るようにする。自己判断でサプリを増やしすぎず、必要なら医師に相談する。
Level 2:今週からできること 仕事や予定の調整を事前に考える 「生理2〜3日目は特に出血が多い」「腰痛が強い日がある」など、パターンが分かってきたら、可能な範囲で大事な会議・長時間の外出・重い荷物運びなどを避けるようにスケジューリングしてみる。
Level 2:今週からできること 受診先候補のリストアップ 自宅や職場の近くで、婦人科・産婦人科を標榜している医療機関をいくつかピックアップし、診療時間・女性医師の有無・オンライン予約の可否などを調べておく。
Level 3:今月からできること 「いつ受診するか」の目安を自分なりに決めておく 「次の生理までに同じくらいの出血量が続いたら行く」「ナプキンの交換回数がさらに増えたらすぐ行く」など、具体的な行動基準を書き出しておくと、迷ったときに決断しやすくなる。
Level 3:今月からできること 生活習慣を整えて症状悪化を防ぐ 睡眠時間の確保、過度なダイエットを避ける、喫煙習慣があれば禁煙を検討するなど、全身の健康状態を整えることで、貧血や体調不良の悪化を防ぎやすくする。

これらのアクションは、子宮筋腫そのものを小さくする「治療」ではありませんが、「症状を可視化する」「診察時に説明しやすくする」「からだの負担を減らす」という意味で、とても大きな価値があります。準備が整っているほど、医師と一緒に具体的な治療方針を決めやすくなります。

第5部:専門家への相談 — いつ・どこで・どのように?

最後に、「どのタイミングで受診を考えるべきか」「どの診療科を選べばよいか」「診察の際に役立つ準備」について整理します。日本の医療制度では、子宮筋腫は主に婦人科・産婦人科で診療されています。

5.1. 受診を検討すべき危険なサイン

  • ナプキン(夜用)を1時間ごとに交換しても追いつかないほどの大量出血がある/血の塊が次々に出てくる
  • めまい・息切れ・動悸が強く、立っていられない、意識が遠のく感じがする
  • 突然、今までに経験したことのない激しい下腹部痛・腰痛に襲われた(特に片側が強く痛む場合)24
  • 妊娠の可能性がある時期の出血、閉経後の出血がある1
  • 発熱や悪寒、悪臭のあるおりものを伴う強い下腹部痛が続く

これらの症状がある場合は、時間外や休日であっても、救急外来や救急相談窓口(各自治体の#7119など)への相談を検討してください。緊急性が高いと判断される場合は、ためらわずに119番へ連絡し、指示に従いましょう。

5.2. 症状に応じた診療科の選び方

  • 基本は婦人科・産婦人科へ:月経異常、骨盤痛、性交痛、お腹の張りなど、子宮や卵巣が関わりそうな症状は、まず婦人科・産婦人科が基本の窓口になります。
  • 内科との連携が役立つ場合:強い貧血や高血圧・糖尿病など、他の持病を抱えている場合は、内科と連携しながら治療方針を決めることもあります。
  • 妊娠を希望している場合:不妊治療も視野に入れる場合は、生殖医療専門のクリニックや不妊外来と連携して方針を検討することがあります610

自治体や職場の子宮がん検診などで「子宮筋腫を疑う」と言われた場合は、そのときに指定された医療機関や、紹介された婦人科で精密検査を受けるのがスムーズです。

5.3. 診察時に持参すると役立つものと費用の目安

  • 月経・症状の記録:第4部で紹介したメモ(生理の日付・出血量・痛み・ナプキンの枚数など)は、医師が状況を把握するうえで非常に役立ちます。
  • お薬手帳:市販薬も含め、普段飲んでいる薬やサプリメントの情報をまとめておきましょう。他の病気で飲んでいる薬との相互作用を確認するためにも重要です。
  • 健康診断結果:過去の血液検査(ヘモグロビン値など)や婦人科検診の結果があれば持参すると、変化の経過を追いやすくなります。
  • 保険証・医療証:日本では多くの場合、子宮筋腫の診察・検査・治療は健康保険の対象となります。自己負担は通常3割ですが、検査内容や治療方法によって金額は変わります。

「受診したら必ず手術になるのでは?」と不安に思う方もいますが、ガイドラインでは、無症状または症状が軽い小さな筋腫は定期的な経過観察を基本とし、症状の程度や年齢、妊娠希望の有無を踏まえて、薬物療法・子宮筋腫核出術(筋腫だけを取る手術)・子宮全摘出術などを個別に検討するとされています67810

よくある質問

Q1: 子宮筋腫はがんになりますか?

A1: 子宮筋腫は「良性腫瘍」に分類され、がん(悪性腫瘍)とは性質が異なります。日本婦人科腫瘍学会や厚生労働省の資料でも、子宮筋腫そのものががんに変化するケースは非常にまれとされています12

ただし、ごく少数ですが、子宮肉腫という別の悪性腫瘍が子宮筋腫に似た形で見つかる場合があります26。急に筋腫が大きくなった、閉経後も増大し続けるなどの変化がある場合は、画像検査(MRIなど)を含めて慎重な評価が行われますので、定期的な受診が安心につながります。

Q2: 生理が重いだけでも子宮筋腫の可能性はありますか?

A2: 過多月経や月経が長引く(1週間以上続く)といった症状は、子宮筋腫でよくみられるサインの一つです1239。特に、レバーのような血の塊が多く出る・夜間も何度もナプキンを替えなければいけない・貧血を指摘されたことがある、といった場合は、婦人科でのチェックをおすすめします。

一方で、ホルモンバランスの変動や子宮内膜症、子宮腺筋症など、子宮筋腫以外の原因でも生理が重くなることがあります15。自己判断せず、「生理が昔より明らかにしんどくなった」と感じた段階で相談することが大切です。

Q3: 子宮筋腫があっても妊娠できますか?

A3: 子宮筋腫があっても、自然妊娠・出産に至る方はたくさんいます。筋腫の位置・大きさ・数によって、妊娠への影響の度合いは大きく異なります23610

子宮の内側に飛び出す粘膜下筋腫は、着床の妨げになったり、流産・早産のリスクを高めたりする可能性があるため、妊娠を希望する場合には手術(子宮鏡下筋腫摘出術など)を検討することがあります6。一方、子宮の外側にある漿膜下筋腫は、かなり大きくなるまで妊娠に大きな影響を与えないこともあります。

妊娠を考えている場合は、「妊娠を希望している」と必ず医師に伝えたうえで、妊娠前にどこまで治療しておいた方がよいか、一緒に相談していきましょう。

Q4: 子宮筋腫を放置するとどうなりますか?

A4: 無症状で小さい筋腫の場合、放置というより「定期的な経過観察」が標準的な対応とされています36。一方で、過多月経による貧血、頻尿や便秘などの圧迫症状、激しい月経痛などがある場合は、我慢を続けることで生活の質が大きく低下したり、妊娠・出産への影響が出たりすることがあります24510

「大きくなる前に必ず手術をしなければならない」というわけではありませんが、「症状がどの程度か」「年齢・妊娠希望があるか」によって適切なタイミングは変わります。症状が気になる場合は、一度婦人科で現在の状態を評価してもらい、治療の必要性やタイミングを一緒に考えてもらうのがおすすめです。

Q5: どのくらいの大きさになったら手術が必要ですか?

A5: ガイドラインでは、「大きさだけ」で一律に手術を決めることは推奨されていません6。一般的には、5〜6cm以上の筋腫や、多発していて子宮全体が大きくなっているケースで手術を検討することが多いものの、「症状の強さ」「貧血の有無」「妊娠を希望するか」「年齢」などを総合的に考えて方針が決められます。

例えば、強い過多月経がある場合は、レボノルゲストレル放出子宮内システム(LNG-IUS)やホルモン療法、トラネキサム酸などの薬物療法が選択されることもあります68。手術以外の選択肢も含めて、自分に合った方法を医師と相談していきましょう。

Q6: 生活習慣で子宮筋腫を小さくできますか?

A6: 現時点で、「特定の食事や運動で子宮筋腫そのものが小さくなる」と明確に示した科学的根拠は限られています11。一方で、肥満や高血圧などが筋腫のリスクと関連する可能性を示す研究もあり、適正体重の維持やバランスの良い食事、適度な運動は全身の健康のために推奨されています11

生活習慣が直接筋腫を「消す」わけではありませんが、貧血や疲れやすさの改善、手術や治療に耐える体力づくりという意味で非常に重要です。自己流の極端なダイエットやサプリの過剰摂取は逆効果になり得るため、必要に応じて医師や管理栄養士に相談しましょう。

Q7: 更年期になれば、子宮筋腫は自然に小さくなりますか?

A7: 子宮筋腫は女性ホルモンの影響で大きくなるため、閉経後は多くの場合、徐々に縮小していきます125。そのため、閉経が近い年齢で症状が軽い場合、「閉経まで経過観察して様子を見る」という選択が取られることもあります6

ただし、閉経後も筋腫が急に大きくなったり、新たな症状(出血や痛み)が出てきたりする場合は、子宮肉腫など別の病気が隠れている可能性もゼロではありません。閉経後の変化は「年のせい」と決めつけず、必ず婦人科で確認してもらいましょう。

結論:この記事から持ち帰ってほしいこと

子宮筋腫は、多くの女性が一度は耳にするほど身近な病気です。多くの場合は良性であり、適切に経過観察・治療を行えば、仕事や家庭生活、妊娠・出産と両立しながら付き合っていくことが可能です。

一方で、「生理の出血量が急に増えた」「トイレが極端に近い」「お腹の張りや腰痛が続く」といった7つのサインは、子宮筋腫を含む婦人科疾患のサインである可能性があります。自己判断で我慢を続けるのではなく、月経や症状を記録し、信頼できる婦人科に相談することが、自分のからだを守る第一歩です。

本記事が、子宮筋腫に関する不安を少しでも言語化し、「どのタイミングで、どこに相談すればよいか」を考えるきっかけになれば幸いです。あなたは一人ではありません。同じような悩みを抱えながら、医療者と一緒に解決策を見つけている人がたくさんいます。気になるサインがある方は、ぜひ一度、婦人科のドアをたたいてみてください。

この記事の編集体制と情報の取り扱いについて

Japanese Health(JHO)は、信頼できる公的情報源と査読付き研究に基づいて、健康・医療・美容に関する情報をわかりやすくお届けすることを目指しています。本記事では、子宮筋腫に関する厚生労働省の資料、日本産科婦人科学会のガイドライン、国内外の公的医療機関の情報などを一次ソースとして利用しました12356791011

原稿の作成にあたっては、最新のAI技術を活用して下調べと構成案を作成したうえで、JHO編集部が一次資料(ガイドライン・論文・公的サイトなど)と照合しながら、内容・表現・数値・URLの妥当性を人の目で一つひとつ確認しています。最終的な掲載判断はすべてJHO編集部が行っています。

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