【家族ががんと診断されたとき】大切な人を支える14の具体的なサポートと心構え
がん・腫瘍疾患

【家族ががんと診断されたとき】大切な人を支える14の具体的なサポートと心構え

家族や大切な人が「がん」と告げられた瞬間、多くの人が「頭が真っ白になった」「何をしてあげればいいのかわからない」と感じます。誰にも相談できず、「自分がしっかりしなきゃ」と気持ちだけが空回りしてしまう方も少なくありません。

一方で、国立がん研究センターの調査や「がん情報サービス」では、患者さんにとって家族の存在そのものが治療と生活を支える大きな力であることが繰り返し示されています。

本記事では、日本の「がん情報サービス」や厚生労働省の資料、海外のがん専門機関の情報をもとに、家族として何ができるのか、何をしない方が良いのかを、14のポイントに分けてわかりやすく解説します。日常生活の関わり方から、つらいときの声かけ、終末期や看取りに向き合う場面まで、段階ごとに整理してご紹介します。

一人で抱え込む必要はありません。この記事を読み進めながら、「今の自分にできる一歩」を一緒に探していきましょう。

Japanese Health(JHO)編集部とこの記事の根拠について

Japanese Health(JHO)は、健康と美容に関する情報を提供するオンラインプラットフォームです。膨大な医学文献や公的ガイドラインを整理し、日常生活で活用しやすい形でお届けすることを目指しています。

本記事の内容は、主に次のような一次情報源に基づき、JHO編集部が生成AIツールのサポートを受けつつ、最終的には人の目で一つひとつ確認しながら作成しています。

  • 国立がん研究センター・厚生労働省などの公的機関「がん情報サービス」や、がん相談支援センターの体制に関する資料、家族支援外来の情報など、日本の実情に即した公式情報を参照しています。
  • 日本の専門学会・NPOなど:がん患者・家族支援団体や家族ケアに関する解説記事など、家族の心理的・社会的負担に焦点を当てた資料を利用しています。
  • 海外の公的ながん専門機関:米国国立がん研究所(NCI)、Macmillan Cancer Support、Cancer Councilなどの、家族やケアギバー向けガイドを参考にし、国際的な知見も踏まえて整理しています。

本記事は、これらの公的情報源や査読付き論文などをもとにJHO編集部が構成し、日本に暮らす読者の生活実感に沿うように再構成したものです。私たちの運営ポリシーや編集プロセスの詳細は、運営者情報(JapaneseHealth.org)をご覧ください。

要点まとめ

  • 家族ががんと診断されたとき、「どう声をかけるか」よりも「そばにいて話を聴くこと」が患者さんの安心感につながります。
  • 無理に前向きな言葉や「絶対治るよ」といった根拠のない希望を押しつけるのではなく、事実を共有しながら一緒に悩み考える姿勢が大切です。
  • 治療や生活の情報を勝手に周囲へ広めず、本人のプライバシーと選択を尊重することが信頼関係の土台になります。
  • 家事・通院の付き添い・経済面の調整など、具体的な行動で支えることは、励ましの言葉以上に患者さんの負担軽減につながります。
  • 看取りやその後の生活の準備を含め、つらい話題もタイミングを見て話し合うことは、患者さん自身の尊厳を守るうえで重要です。
  • サポートする家族も「第二の患者」と言われるほど心身の負担が大きく、がん相談支援センターや家族ケア外来などの支援を利用することが推奨されています。
  • 涙や怒り、悲しみなどの感情は自然な反応であり、家族自身が悲しみを表現し、支援を求めることも大切なセルフケアです。

第1部:がんと診断された家族を支えるための基本姿勢

まず押さえておきたいのは、「完璧な家族」である必要はない、ということです。がん情報サービスでは、家族は第二の患者とも表現され、戸惑いや不安、怒りなどさまざまな感情が湧くのはごく自然な反応だと説明されています。

ここでは、がんと告げられた直後から日常生活の中まで、一貫して大切にしたい「基本的なメカニズム(こころの動き)と関わり方」のポイントを整理します。

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1.1. 告知直後のこころの仕組みと「希望の伝え方」

家族ががんと診断されたとき、多くの人は「否認→怒り→混乱→あきらめ→受容」といった段階を行き来しながら、少しずつ現実を受け止めていくと言われています。

この時期、周囲の家族はつい「大丈夫、すぐ治るよ」「そんなに心配しなくていいよ」と前向きな言葉をかけたくなります。しかし、根拠のない「大丈夫」は、本人が不安や恐怖を感じているときには、かえって孤独感を深めてしまうことがあります。海外の家族向けガイドでも、現実を隠したり、むやみに希望を強調しすぎたりしないことが繰り返し推奨されています。

日本のがん情報サービスでも、病状や治療方針については、本人を交えたうえで医療者から正確な情報を得ることが大切だとされています。 「つらいね」「怖いよね」と本人の感情を認めたうえで、「一緒に主治医の先生に聞いてみよう」「わからないことはメモしておこう」と、不安を共有しながら情報を取りに行く姿勢が、安心感と信頼につながります。

どうしても告知内容をそのまま伝えるのが難しいと感じる場合は、がん相談支援センターや医療者に「家族としてどう伝えたらよいか」相談する方法もあります。

1.2. 「普通の生活」をできる範囲で続けることの意味

がんになったからといって、すべての日常が急に「病気中心」になる必要はありません。むしろ、国立がん研究センターや各種家族支援団体は、体調が許す範囲で、これまで通りの生活や趣味を続けることがQOL(生活の質)向上につながるとしています。

例えば次のような関わり方が考えられます。

  • 体調の良い日に、短時間でも一緒に買い物や散歩に出る
  • これまで通り、家族でテレビを見ながら他愛もない話をする
  • 料理や洗濯などを一緒に行い、「やってもらう側」だけにしない

「もう病人だから休んでいて」と全てを取り上げてしまうと、本人は「役割を失った」と感じ、自己肯定感が下がってしまうことがあります。できることはお願いし、難しい部分は家族がサポートする――そのバランスを一緒に探していくことが大切です。

1.3. 情報とプライバシーの扱い方:本人の「ペース」を尊重する

がんの情報はインターネットやSNSで簡単に共有できる一方、病名やステージ、予後といったデリケートな情報は、本人のプライバシーに深く関わります。Macmillan Cancer Supportなどのガイドでは、誰に・どこまで話すかは本人と話し合って決めることが推奨されています。

日本の「がん情報サービス」でも、家族が勝手に職場や友人、SNSなどで病状を広めることで、本人が傷つくケースが紹介されています。 「誰にどこまで話してほしい?」と率直に確認し、以下のようなルールを一緒に決めておくと安心です。

  • 職場には病名まで伝えるか、「通院のための配慮が必要」というレベルにとどめるか
  • 親戚や友人にはどの範囲まで共有するか
  • SNSには病気のことを書かない、あるいは匿名で書く場合のルールを決める

情報は本人と家族を支える「力」である一方、扱い方を誤ると本人を追い詰める要因にもなります。迷ったときは、がん相談支援センターや医療ソーシャルワーカーに相談しながら、安全な情報の共有方法を選んでいきましょう。

表1:家族としてのセルフチェックリスト
こんな行動をしていませんか? 背景にある気持ちと見直したいポイント
「大丈夫、絶対治る」と繰り返し言ってしまう 励ましたい気持ちの表れだが、本人の不安を否定してしまうことも。
「不安だよね」と気持ちを受け止めたうえで、「一緒に医師に聞こう」と現実的な希望につなげる。
本人に相談せず、病名やステージを周囲に話している 心配から周りの助けを求めているが、プライバシー侵害になり得る。
まずは本人と「誰にどこまで話すか」を話し合う。
「元気出して」「頑張って」とだけ声をかけてしまう 何か言わなければと焦っている状態。
ときには、黙ってそばに座り、話したいときに話を聴くことも大切。

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第2部:日常生活と治療を支える具体的なサポート

ここからは、14のポイントのうち、特に生活面とコミュニケーション面で家族ができるサポートを中心に解説します。がんの種類や治療法によって症状や負担はさまざまですが、共通して役立つ考え方や工夫があります。

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2.1. 質問しながら支える:「命令」ではなく「提案」として

海外の家族向けガイドでは、患者さんの自立を尊重しながら支えるために、「何々しなさい」ではなく、「一緒にこうしてみない?」と提案の形で関わることが推奨されています。

例えば、

  • 「薬は飲んだ?」→「薬の時間、一緒に確認してもいい?」
  • 「散歩に行った方がいいよ」→「気分転換に少し外の空気吸いに行かない?」
  • 「病院に電話しなきゃダメでしょ」→「心配だから、今日の症状を一緒に看護師さんに相談してみない?」

このような「問いかけ・提案」の形は、相手の主体性を尊重しつつ、必要な治療や生活上の工夫につなげるのに役立ちます。がん情報サービスでも、治療方針の選択においては「ご本人が何を大切にしたいか」を軸に考えることが繰り返し強調されています。

2.2. 「してはいけない」NG行動とその代わりにできること

家族を思う気持ちが強いほど、次のようなNG行動をとってしまうことがあります。

  • 本人に内緒で検査結果を聞き、真実を隠し続ける
  • 本人の意思を聞かずに、治療方針を家族だけで決めてしまう
  • つらい気持ちを「弱音」と決めつけ、「もっと頑張らないと」と励ましすぎる

これらは短期的には本人を守っているように見えても、信頼関係の崩れや、本人の「自分の人生を自分で選ぶ権利」を奪うことになりかねません。国立がん研究センターは、治療法の選択は「ご本人の生き方に直接関わるもの」であると明記し、本人の価値観を尊重した意思決定支援の重要性を強調しています。

代わりに、次のような関わりを意識してみましょう。

  • 「本当の病状を知りたいかどうか」を本人に確認したうえで、医師と一緒に話を聴く
  • 治療の選択肢やメリット・デメリットを、メモを取りながら一緒に整理する
  • どうしても決められないときは、「一度家族で話し合ってから返事したい」と医療者に伝える

2.3. 「聴く力」と「笑顔」の効果:感情を受け止めるコミュニケーション

多くのがん家族向け冊子やガイドは、「患者さんの話をさえぎらずに聴くこと」を最も大切なサポートとして挙げています。 うまく励まそうとしなくてもかまいません。次のような姿勢が、相手の安心につながります。

  • スマートフォンやテレビから目を離し、相手の方を向いて話を聴く
  • 「そうなんだ」「そう感じたんだね」と気持ちを言い換えて返す
  • 沈黙があっても、無理に話題を変えずに一緒にその時間を過ごす

また、適度なユーモアや笑いも、大切な「薬」になり得ます。海外のがん支援団体の資料では、一緒に笑うことがストレス軽減や気分の改善に役立つとされています。 無理に明るく振る舞う必要はありませんが、懐かしいテレビ番組を一緒に見る、昔話をする、おいしいものを少しだけ一緒に楽しむなど、その人らしい笑顔が戻る瞬間を増やしていけると良いでしょう。

2.4. 行動で支える:家事・通院・お金・子育ての分担

がん治療は長期にわたることが多く、通院・検査・副作用・仕事や家事の調整・経済的不安など、生活全体に影響します。がん情報サービスや家族支援サイトは、家族の具体的なサポートとして次のような例を挙げています。

  • 通院の付き添い:診察内容をメモし、本人が聞きそびれたことを代わりに質問する
  • 家事の分担:体調が悪い日には掃除や洗濯を引き受け、体調が良い日は一緒に行う
  • 子育ての支援:自治体のファミリーサポートセンターや一時保育などの制度を活用する
  • 仕事・お金の相談:ソーシャルワーカーやがん相談支援センターで、休職制度や医療費助成、傷病手当金などについて情報を得る

すべてを一人の家族が抱え込む必要はありません。親族や友人、職場、地域の支援制度をうまく組み合わせることで、「支える側」が倒れないための仕組みを作ることができます。

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第3部:病状が進行したとき・終末期に向き合うために

がんが進行したり、再発したりすると、治療の目的が「完治」から「症状を和らげ、生活の質を保つこと」へと移っていくことがあります。この段階で、家族は「延命治療をどこまで望むのか」「どこでどのように過ごしたいのか」といった難しいテーマに向き合うことになります。

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3.1. 治療の選択と「ご本人の価値観」を尊重する話し合い

国立がん研究センターの家族向け情報では、進行・再発時の治療選択において、「ご本人が何を大切にしたいか」を最優先に考えることが繰り返し強調されています。

例えば、次のような価値観があり得ます。

  • できる限り長く延命したい
  • 副作用が強い治療より、痛みやつらさを抑えることを優先したい
  • 最期まで自宅で過ごしたい/病院で過ごしたい
  • 家族にこれだけは伝えておきたいことがある

こうした希望は、時間をかけて何度も揺れ動くものです。一度決めたからといって変えてはいけないわけではありません。迷ったときは、主治医や緩和ケアチーム、がん相談支援センター、家族ケア外来などに相談しながら、家族だけで抱え込まずに決めていくことが勧められています。

3.2. 緩和ケア・在宅療養・家族ケア外来を活用する

緩和ケアは、「最期のときだけのケア」ではなく、がんと診断された時点から痛みや不安を和らげるために利用できるケアです。厚生労働省や国立がん研究センターは、治療の早い段階から緩和ケアチームに相談することを推奨しています。

また、国立がん研究センター中央病院には、「家族・遺族ケア外来」が設置されており、闘病を支える家族や、亡くなった後の遺族のこころのケアに専門的に取り組んでいます。 自宅での療養や看取りを希望する場合は、在宅医療や訪問看護、地域包括支援センターなどと連携しながら、自分たちのペースに合った支援を組み立てていくことが大切です。

3.3. 「その後」を話し合うタイミングと配慮

終末期が近づくと、遺産や相続、葬儀、家族の生活のことなど、いわゆる「人生のしまい方」について話し合う必要が出てきます。NCIの「When Someone You Love Has Advanced Cancer」などのガイドは、これらの話題を避け続けるより、ご本人の体調と気持ちを尊重しながら、少しずつ話し合うことを勧めています。

ただし、まだ治療の選択肢が十分にあり、ご本人が前向きに治療に取り組んでいる段階で、過度に「死後」の話ばかりをすることは負担になり得ます。タイミングが難しいと感じるときは、医療チームやがん相談支援センターのスタッフに「どのように切り出せばよいか」相談するのも一つの方法です。

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第4部:今日からできる14のサポートアクションプラン

ここまでの内容を踏まえて、家族が今日から実践できる14の具体的な行動を、レベル別に整理しました。すべてを完璧に行う必要はありません。「今の自分にできそうなこと」から1つずつ選んで試してみてください。

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表2:14のサポートアクションプラン
レベル アクション 具体例
Level 1:今日からできること 1. 根拠のない「大丈夫」ではなく、気持ちを聴く 「怖いよね」「不安だよね」と気持ちを言葉にしてから、「一緒に主治医に聞いてみよう」と現実的な希望につなげる。
2. 「命令」ではなく「提案」の言い方に変える 「薬飲んだ?」ではなく、「薬の時間、一緒に確認してもいい?」と声をかける。
3. SNSや周囲への情報共有ルールを一緒に決める 「誰にどこまで話してほしい?」と本人に確認し、職場・友人・親族・SNSなどのルールを書き出す。
4. 日常の会話で「がんの話だけ」にならないようにする 体調を確認したら、趣味やテレビ、家族の話など、これまでと同じ話題も意識的に挟む。
Level 2:今週から試したいこと 5. 通院に付き添い、診察内容をメモする 診察前に聞きたいことを一緒に紙に書き出し、診察中はメモ係に徹する。
6. 家事・子育ての役割分担を家族会議で決める 「誰が・いつ・何をするか」をホワイトボードやカレンダーに書き出す。必要に応じて親族や地域サービスも含めて検討する。
7. がん相談支援センターや公的相談窓口を一度利用してみる 最寄りのがん診療連携拠点病院や自治体の相談窓口を調べ、電話や対面で「何から相談すればよいか」から聞いてみる。
8. 「やってみたいことリスト(バケットリスト)」を一緒に作る 行ってみたい場所、食べたいもの、会いたい人など、規模に関係なく書き出し、体調に合わせて少しずつ実行する。
Level 3:中長期的に取り組むこと 9. 治療方針・緩和ケア・在宅療養について家族で話し合う 「どこで過ごしたいか」「何を大切にしたいか」を、ご本人の気持ちを尊重しながら何度も話し合う。
10. 法的な手続き(遺言・相続・医療・介護の意思表示)を整理する 専門家や公的相談窓口に相談しながら、必要な書類の作成や情報の整理を少しずつ進める。
11. 家族自身のケアプランを作る 週に一度は自分の趣味の時間を確保する、友人やカウンセラーに話を聴いてもらう日を決めるなど、「支える側のケア」を意識的に計画する。
12. がん患者会・家族会・ピアサポートに参加する 同じ立場の人同士が語り合える場に参加し、「自分だけではない」と感じられる環境を持つ。
Level 4:感情と向き合うための行動 13. スキンシップやアイコンタクトを大切にする 手を握る、背中をさする、そばに座って静かに過ごすなど、言葉にならない思いを非言語的に伝える。
14. 自分自身の悲しみ・怒り・不安を誰かに話す 「泣いてはいけない」と我慢しすぎず、信頼できる人や相談窓口で感情を言葉にする。必要に応じて心療内科や精神科、臨床心理士など専門家の支援も検討する。

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第5部:専門家への相談 — いつ・どこで・どのように?

「この程度で相談していいのかな」「忙しそうな医師にこんなこと聞いていいのかな」と遠慮しているうちに、家族も本人も追い詰められてしまうことがあります。国やがん専門機関の資料では、気になることがあれば早めに相談することが繰り返し勧められています。

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5.1. すぐに受診・相談したい危険なサイン

  • 強い痛み、息苦しさ、出血など、明らかにこれまでと異なる症状が突然出現した
  • 意識がぼんやりして会話がかみ合わない、呼びかけに反応しにくい
  • 急激な体重減少や極端な食欲不振が続いている
  • 自傷や自殺をほのめかす発言がある、死にたい気持ちを繰り返し訴える

上記に当てはまる場合は、ためらわずに主治医や救急外来に連絡し、必要に応じて119番通報を検討してください。がんの種類や治療内容によって緊急度は異なるため、「迷ったら連絡する」くらいの気持ちで構いません。

5.2. 相談内容に応じた窓口・診療科の選び方

  • 病状・治療に関する質問:主治医、担当看護師、がん相談支援センター
  • 痛みやつらさ、生活の質に関する悩み:緩和ケアチーム、がん相談支援センター
  • 仕事・お金・制度に関する悩み:医療ソーシャルワーカー、ハローワーク、自治体の相談窓口
  • こころの不調や家族のメンタルヘルス:心療内科・精神科、家族・遺族ケア外来、臨床心理士など

具体的な窓口は、がん診療連携拠点病院や自治体のホームページ、「がん情報サービス」のサイトから調べることができます。

5.3. 診察・相談時に役立つ準備と費用の目安

  • 症状や気になることを箇条書きにしたメモ
  • 服用中の薬やサプリメントのリスト、お薬手帳
  • 治療や検査のスケジュールを書き込んだカレンダー
  • 仕事や家計の状況がわかる資料(就業規則、保険の内容など)

診察時間は限られているため、事前の準備が質問の質と満足度を大きく左右します。医療費や制度の詳細は、健康保険組合や市区町村の窓口、がん相談支援センターで個別に確認しましょう。

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よくある質問

Q1: 家族ががんと診断されたとき、最初に何をすればよいですか?

A1: まずは自分の気持ちも含めて「動揺しているのが当たり前」だと認めることから始めてみてください。そのうえで、主治医の話を家族と一緒に聴く日を決め、聞きたいことをメモにしておくと安心です。国立がん研究センターの「家族ががんになったとき」では、病状を正確に把握し、疑問は遠慮せず質問することが勧められています。

Q2: 本人には病名やステージをどこまで伝えるべきでしょうか?

A2: 一律の正解はありません。「どこまで知りたいか」は人によって大きく異なります。まずは本人に「病気のこと、どの程度まで知っておきたい?」と尋ね、希望を尊重しましょう。医師やがん相談支援センターに「家族としてどう伝えればよいか」相談することもできます。

Q3: 周りの友人や職場にどこまで話していいのか迷います。

A3: 病名やステージなどは、本人のプライバシーに深く関わる情報です。まずは本人と、「職場にはどこまで伝えるか」「友人や親戚にはどう説明するか」「SNSには書くかどうか」を話し合いましょう。Macmillanなどのガイドでも、情報の共有範囲は本人と相談して決めることが推奨されています。

Q4: 食欲が落ちていてほとんど食べられません。無理にでも食べさせた方がいいですか?

A4: 食欲低下には、治療の副作用や病状などさまざまな原因が考えられます。無理に大量に食べさせようとすると、かえってつらさが増すこともあります。小さな量でも好きなものを一緒に食べる、冷たいもの・柔らかいものなど本人が楽な形を探すなど、工夫しながら、必ず主治医や栄養サポートチームに相談してください。

Q5: 「頑張って」という言葉は言わない方がいいのでしょうか?

A5: 「頑張って」は良かれと思って使う言葉ですが、本人がすでに十分頑張っていると感じているときには重く響くことがあります。代わりに「いつも本当に頑張っているね」「つらいときは頼ってね」「一緒に考えよう」といった、気持ちを認める言葉や寄り添う表現を意識してみてください。

Q6: 家族が「もう治療はしたくない」と言うとき、どう受け止めればよいですか?

A6: その言葉の裏には、「つらい副作用に耐える自信がない」「家族にこれ以上迷惑をかけたくない」など、さまざまな思いが隠れていることがあります。まずは「どうしてそう思うのか」を責めずに聴き、そのうえで主治医や緩和ケアチームと一緒に、治療の選択肢や生活の質について話し合う場を作りましょう。

Q7: 子どもにはどのように説明すればよいでしょうか?

A7: 子どもの年齢によって理解できる範囲は異なりますが、NCIや海外のガイドでは、事実を年齢に合った言葉で、少しずつ説明することが推奨されています。 「お父さんの体の中に病気があって、病院で治療している」「だから前より疲れやすくなっている」といった具体的な説明に加え、「あなたのせいではない」というメッセージを必ず伝えましょう。日本では、がん相談支援センターや小児科で、子どもへの伝え方を一緒に考えてくれることもあります。

Q8: 介護や付き添いで疲れ切ってしまいました。自分が弱いのでしょうか?

A8: いいえ、弱いわけではありません。厚生労働省や各種調査では、がん患者を支える家族は「第二の患者」となるほど心身の負担が大きいことが指摘されています。 家族自身の睡眠不足やストレスは、結果的に患者さんのケアにも影響します。「限界だ」と感じる前に、がん相談支援センター、家族・遺族ケア外来、地域の介護・家事支援サービスなど、利用できる支援を積極的に頼ってください。

Q9: 最期のときに後悔しないために、今からできることはありますか?

A9: 「あのときこうしていれば」と思う場面は誰にでもありますが、多くの遺族の声を集めた冊子では、「もっと話をしておけばよかった」「気持ちを言葉にしておけばよかった」という振り返りが多く聞かれます。 今日からできることとして、 ①感謝していること、②謝りたいと思っていること、③相手の大切にしてきたことを言葉にして伝える、などがあります。タイミングが難しい場合は、手紙やメモにして渡す方法もあります。

Q10: インターネット情報が多すぎて、何を信じてよいかわかりません。

A10: 健康情報は玉石混交で、誤った情報に振り回されると不安が増してしまいます。がん情報サービス(国立がん研究センター)、厚生労働省、主要ながん専門機関(NCI、Cancer Councilなど)のサイトは、公的で信頼性の高い情報源として推奨されています。 不安な情報を見つけたときは、一人で判断せずに、主治医やがん相談支援センターに「この情報はどう考えればよいか」と質問するようにしましょう。

結論:この記事から持ち帰ってほしいこと

家族ががんと診断されたとき、「正しい答え」を探し続けて自分を責めてしまう方は少なくありません。しかし、公的機関や専門家の資料を見ても、すべての家庭に共通する完璧な関わり方は存在しないことがわかります。

大切なのは、「相手を思う気持ち」と「一緒に考えようとする姿勢」、そして「必要なときに専門家や支援制度を頼る勇気」です。

  • つらい気持ちを否定せず、まずは聴くこと
  • 根拠のない希望ではなく、現実的な情報と支援につなげること
  • 治療や生活の選択は、ご本人の価値観を尊重しながら一緒に考えること
  • 支える家族自身も「第二の患者」として、自分の心と体をケアすること

今日からできる小さな一歩で構いません。この記事が、あなたと大切な人が、がんとともに生きる日々を少しでも「自分たちらしく」過ごすためのヒントになれば幸いです。

この記事の編集体制と情報の取り扱いについて

Japanese Health(JHO)は、信頼できる公的情報源と査読付き研究に基づいて、健康・医療・美容に関する情報をわかりやすくお届けすることを目指しています。本記事は、国立がん研究センター「がん情報サービス」、厚生労働省の資料、国内外のがん専門機関の家族支援ガイドなどをもとに作成しました。

原稿の作成にあたっては、最新のAI技術を活用して文献の整理や構成案の作成を行ったうえで、JHO編集部が一次資料(ガイドライン・論文・公的サイトなど)と照合しながら、内容・表現・数値・URLの妥当性を人の目で一つひとつ確認しています。最終的な掲載判断はすべてJHO編集部が行っています。

ただし、本サイトの情報はあくまで一般的な情報提供を目的としており、個々の症状に対する診断や治療の決定を直接行うものではありません。気になる症状がある場合や、治療の変更を検討される際は、必ず医師などの医療専門家にご相談ください。

記事内容に誤りや古い情報が含まれている可能性にお気づきの場合は、お手数ですが運営者情報ページ記載の連絡先までお知らせください。事実関係を確認のうえ、必要な訂正・更新を行います。

免責事項 本記事は情報提供のみを目的としており、専門的な医学的助言や診断、治療に代わるものではありません。健康上の懸念がある場合や、治療内容の変更・中止等を検討される際には、必ず資格のある医療専門家にご相談ください。

参考文献

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  2. 国立がん研究センター がん情報サービス. 家族ががんになったときに知っておきたいこと. https://ganjoho.jp/public/support/family/fam/fam01.html(最終アクセス日:2025-11-26)
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