【帝王切開で生まれた赤ちゃんの咳】呼吸器疾患のサインと受診の目安|家庭でできるケア
小児科

【帝王切開で生まれた赤ちゃんの咳】呼吸器疾患のサインと受診の目安|家庭でできるケア

帝王切開で生まれた赤ちゃんの「咳」や「呼吸の音」が気になり、「これって病気のサイン?」「様子を見て大丈夫?」と不安になる方は少なくありません。特に新生児〜乳児期は、呼吸の通り道が細く、鼻づまりや軽い炎症でも呼吸が苦しそうに見えたり、咳が長引いたりしやすい時期です。

一方で、研究では帝王切開(特に計画帝王切開)で出生した赤ちゃんは、乳児期の重い上気道感染・下気道感染で入院するリスクがわずかに上がる可能性が示されています。英国の2つの出生コホート研究では、計画帝王切開は乳児期の下気道感染(lower respiratory tract infection: LRTI)入院のハザード比が1.10〜1.39と報告され、上気道感染(upper respiratory tract infection: URTI)入院もわずかに増える傾向が示されました。1

また、小児期の健康影響をまとめた系統的レビュー(Pediatrics)では、帝王切開出生は小児期の呼吸器感染のリスク上昇(オッズ比1.30)と関連する結果が報告されています。2

ただし、これは「帝王切開=必ず呼吸器が弱い」という意味ではありません。多くの赤ちゃんは問題なく成長します。大切なのは、咳の“音”だけで判断せず、呼吸の様子(速さ・苦しさ・胸のへこみ・顔色)や哺乳、元気の有無をセットで見て、危険なサインがあれば早めに相談することです。医療機関に迷うときは、厚生労働省が案内する小児救急電話相談「#8000」の活用も選択肢になります。9

Japanese Health(JHO)編集部とこの記事の根拠について

Japanese Health(JHO)は、健康と美容に関する情報を提供するオンラインプラットフォームです。膨大な医学文献や公的ガイドラインを整理し、日常生活で活用しやすい形でお届けすることを目指しています。

本記事の内容は、以下のような一次情報源に基づいて、JHO編集部がAIツールのサポートを受けつつ、最終的には人の目で一つひとつ確認しながら作成しています。

  • 厚生労働省・自治体・公的研究機関:感染症情報や相談窓口(#8000)など、日本人向けの公式情報を優先して参照しています。79
  • 国内外の医学会ガイドライン・査読付き論文:帝王切開と乳児期の呼吸器感染の関連を扱ったコホート研究や、系統的レビューなどのエビデンスをもとに要点を整理しています。12
  • 教育機関・医療機関・NPOによる一次資料:新生児の呼吸障害(TTNなど)や受診の目安について、大学機関や公的ガイド、国際機関の情報を参考にしています。35

AIツールは、文献の要約や構成案作成の「アシスタント」として活用していますが、公開前には必ずJHO編集部が原著資料と照合し、重要な記述を一つひとつ確認しながら、事実関係・数値・URLの妥当性を検証しています。

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要点まとめ

  • 英国の出生コホート研究では、計画帝王切開は乳児期のLRTI入院リスクが中等度に上昇(調整ハザード比1.10〜1.39)し、URTI入院もわずかに増える傾向が示されました。1
  • Pediatricsの系統的レビューでは、帝王切開出生は小児期の呼吸器感染リスク上昇(オッズ比1.30)と関連する結果が報告されています。2
  • 新生児期は、肺に残った「肺液」の吸収が遅れることで新生児一過性多呼吸(TTN)が起こることがあり、陣痛前の帝王切開は誘因の一つとして挙げられています。34
  • 咳の「音」だけで病名を決めるのは危険です。医療者でも咳音の表現や解釈にはばらつきがあるため、呼吸の苦しさ・顔色・哺乳・元気など全体像で判断し、迷えば相談が安全です。13
  • 受診を急ぐサイン(胸がへこむ、ゼーゼーが強い、息が速い、顔色が悪い、飲めない、無呼吸など)を先に押さえると、家庭での観察が落ち着いてできます。5612
  • 感染予防は「手洗い・換気・近距離接触の回避・体調不良者との距離」などの基本が有効で、乳児はRSウイルスなどで重症化することがあります。811
  • 迷ったときは、厚生労働省が案内する#8000(小児救急電話相談)や、緊急時は119を活用してください。910

第1部:帝王切開で生まれた赤ちゃんの呼吸の特徴と、まず見直したい日常ポイント

咳を「病名当てクイズ」にしないことが第一歩です。赤ちゃんは少しの鼻水でも息がしづらくなり、咳のような仕草(むせる、痰を出そうとする)を見せます。ここでは、帝王切開出生と関係しやすい呼吸の話題を整理しつつ、家庭で整えられる環境を確認します。

1.1. 基本的なメカニズム・体の仕組み(新生児〜乳児の呼吸を“絵”で理解する)

新生児の肺は、出生直後に「液体で満たされた状態」から「空気で満たされた状態」に切り替わります。浜松医科大学の解説では、胎児の肺胞を満たしていた肺液(肺水)は、産道通過時の胸郭圧迫による排出や、呼吸開始後の吸収によって減っていくとされています。3

この切り替えがうまくいかず肺液の吸収が遅れると、新生児一過性多呼吸(TTN)のように「呼吸が速い」「呼吸が苦しそう」に見えることがあります。浜松医科大学によると、TTNでは出生直後から多呼吸がみられ、呼吸数が1分間に80〜120回程度になることがあり、多くは24時間以内に改善する一方、数日続く場合もあります。3

TTNの誘因として、浜松医科大学は「陣痛発来前に行われた帝王切開」などを挙げています。3また、日本周産期・新生児医学系のJ-STAGE掲載論文でも、正期産で最も経験する一過性多呼吸のリスク因子として「陣痛発来以前の帝王切開」が一般的に指摘されていると述べられています。4

さらに、帝王切開と乳児期の呼吸器感染を扱った英国のコホート研究では、計画帝王切開の影響が「分娩が起こらず、妊娠週数が自然経過より早くなる」ことなどを介して強まる可能性が議論されています。1つまり、呼吸の“スタート”が少し違う可能性がある、という理解が実務的です。

1.2. 悪化させてしまうNG習慣(家庭で減らせる“呼吸の敵”)

咳やゼーゼーを悪化させやすい要因は、「感染」「刺激」「乾燥」「煙」「過密」です。呼吸器ウイルスの予防としてCDCは、換気、手洗い、体調不良者との距離確保などの基本的対策を挙げています。11

  • 受動喫煙(たばこの煙):気道の炎症を強め、咳・喘鳴(ぜんめい)を悪化させやすい刺激です。家庭内・車内は「完全禁煙」が現実的な目標です(感染予防の基本行動とあわせて環境刺激を減らす考え方)。11
  • 乾燥:鼻や喉の粘膜が乾くと、痰がからみやすくなり、むせや咳が増えることがあります。換気と同時に、過度な乾燥を避ける工夫(加湿、濡れタオルなど)を検討します(感染予防の基本行動の一部として“環境を整える”)。11
  • 体調不良者との密接な接触:乳児はRSウイルスなどで重症化することがあり、同居家族の症状があるときは距離・マスク・手洗いの徹底が重要です。811
  • 受診の先延ばし:「迷惑をかけたくない」「夜間は我慢」といった気持ちが日本では起こりやすいものです。しかし、赤ちゃんの呼吸は急に悪化することがあります。迷うときは#8000に相談し、緊急性が高ければ119を検討してください。910
表1:咳と呼吸のセルフチェック(家庭で見るべきポイント)
こんな咳・呼吸の様子はありませんか? 考えられる主な背景・次にすること(目安)
鼻水が多く、咳というより「むせる」「痰がからむ」/眠りは取れている 鼻づまりによる不快感の可能性。東京都の子ども医療ガイドでも、呼吸苦や哺乳不良がなければ落ち着いて観察しつつ、悪化サインがないか確認する考え方が示されています。5
「ゼーゼー」「ヒューヒュー」する音が強い/息を吐くたびに聞こえる 気道が狭くなっているサインのことがあります(細気管支炎、喘鳴など)。日本小児科学会の「こどもの救急」でも、喘鳴(ぜーぜー)を重要なチェック項目として提示しています。6
犬が吠えるような咳(オットセイのような咳)+息を吸うときにヒュッという音(吸気性喘鳴) クループ(喉頭周囲の腫れ)など上気道が狭くなる状態を疑う場面があります。東京都の子ども医療ガイドは、呼吸が苦しそう・声が出しにくい等のサインに注意するよう示しています。5
咳が出る前に「急にむせた」「急に咳き込んだ」/誤嚥・異物の可能性がある 気道異物は緊急性が高いことがあります。日本小児科学会「こどもの救急」も、呼吸状態の悪化サインを重視しています。6
咳の有無にかかわらず、胸やお腹が大きく上下し、肋骨の間がへこむ/顔色が悪い 呼吸困難の可能性。東京都の子ども医療ガイドは、陥没呼吸や顔色不良などのサインを受診判断で重視しています。5
生まれてすぐ〜数日以内で呼吸が速い(1分間80回以上に見える)/帝王切開で出生 TTNの可能性。浜松医科大学はTTNで出生直後から多呼吸(80〜120回/分)を示し、多くは24時間以内に改善すると解説しています。3

第2部:身体の内部要因 — 月齢ごとのリスクと、免疫・感染の考え方

生活環境を整えても咳が続く場合、背景に「月齢特有の呼吸器の弱さ」や、特定の感染症(RSウイルス、百日咳など)、あるいは治療が必要な状態が隠れていることがあります。ここでは、月齢ごとの注意点と、予防の基本を整理します。

2.1. 【乳児】月齢による呼吸器の特徴と注意点

新生児期(生後0〜数日)は、呼吸の“立ち上がり”の時期です。帝王切開(特に陣痛前)では肺液の排出・吸収が遅れ、TTNの誘因になり得ると浜松医科大学が説明しています。3TTNは多くが自然に改善しますが、酸素投与や鼻CPAP、場合によっては人工呼吸管理が必要になることもあるため、病院での評価が重要です。3

生後1〜6か月は、ウイルス性の下気道感染(細気管支炎など)で呼吸が苦しくなりやすい時期です。国立健康危機管理研究機構(JIHS)の解説では、RSウイルスは乳児で重症化しやすく、咳や喘鳴が出たり、呼吸困難を伴うことがあるとされています。8

生後2か月未満では、発熱や呼吸の異常がある場合に早めの受診が推奨されることが多く、WHOの小児病院ケア(Pocket Book)でも乳児の「咳・呼吸困難」に対して危険サインを重視しています。12

2.2. 免疫と予防:母乳・ワクチン・日常の感染対策

予防で最も現実的に効くのは「基本対策の積み重ね」です。CDCは呼吸器ウイルスの予防として、手洗い、換気、体調不良者との接触回避、必要に応じたマスクなどを挙げています。11

RSウイルス対策として、JIHSは「2歳までにほぼ全員が感染し得る」こと、乳児で咳や喘鳴が出て重症化する場合があることを示し、周囲の大人の体調管理や衛生が重要になる文脈を提供しています。8

百日咳(Pertussis)は、ワクチン接種前の乳児ほど重症化しやすい感染症の一つです。厚生労働省は、百日咳の症状として「発作性のけいれん性の咳」「咳き込み後の嘔吐」などを挙げ、乳児期の重症化リスクを踏まえた予防(予防接種を含む)を案内しています。7

母乳栄養は、乳児の感染症予防に関して多くの国際機関が重要性を述べています。UNICEFは肺炎などの重症感染症の予防に関連して、母乳育児を含む基本的対策の重要性を示しています。15ただし、母乳が難しい場合でも「できる範囲での感染対策」「受診判断の早期化」で守れる部分は大きいので、自己責任で抱え込まず医療者に相談してください。

第3部:専門的な診断が必要な疾患(咳の“音”から疑うより、危険サインから考える)

咳の種類はヒントになりますが、咳だけで病名は決められません。実際に、医療者であっても咳音の表現や解釈にはばらつきがあることが報告されています。13このセクションでは、代表的な疾患を「どんなサインで疑うか」「何が危険か」という順番で整理します。

3.1. 新生児一過性多呼吸(TTN):生まれてすぐの“呼吸が速い”

ポイントは「生後すぐから速い呼吸」「帝王切開(陣痛前)」「多くは短期間で改善」です。浜松医科大学はTTNを、胎児肺液の吸収遅延で起こる多呼吸を主徴とする呼吸障害と説明し、出生直後から多呼吸(80〜120回/分)がみられること、24時間以内に改善することが多い一方で数日持続する場合もあるとしています。3

治療としては酸素投与が基本で、高濃度酸素が必要な場合は鼻CPAPや人工呼吸器管理を行うことがある、と浜松医科大学は述べています。3「咳」よりも「呼吸が速い・苦しそう」が前面に出ることが多い点が実務上の特徴です。

3.2. 細気管支炎(RSウイルスなど):ゼーゼー+哺乳低下に注意

赤ちゃんのゼーゼー(喘鳴)は、“気道が細い乳児”ほど重く見えやすいサインです。JIHSはRSウイルス感染で咳や喘鳴が出たり、呼吸困難を伴うことがあると解説しています。8

日本小児科学会の「こどもの救急」も、喘鳴(ぜーぜー)を重要なチェック項目として提示しており、呼吸状態の悪化が疑われる場合は受診判断を前倒しにする考え方が実務的です。6

3.3. クループ(急性喉頭気管支炎など):犬が吠えるような咳+息を吸うと苦しい

クループは“のど(上気道)が腫れて狭くなる”状態で、夜間に悪化して見えることがあります。東京都の子ども医療ガイドは、咳だけでなく「呼吸が苦しそう」「陥没呼吸」「顔色不良」などのサインに注意し、受診の目安を示しています。5

息を吸うときに「ヒュッ」という音(吸気性喘鳴)が目立つ、唾が飲み込みにくい、声が出しにくい、などがある場合は、夜間でも相談・受診を検討してください(迷う場合は#8000)。59

3.4. 百日咳:激しい咳き込み・嘔吐・乳児の無呼吸に注意

百日咳は、ワクチン接種前の乳児ほど重症化し得る感染症です。厚生労働省は、百日咳の症状として発作性のけいれん性の咳や咳き込み後の嘔吐などを挙げています。7

「咳が止まらない」「顔が赤くなる/紫っぽい」「息継ぎが苦しそう」「無呼吸のように見える」などがあれば、夜間でも受診や救急要請の判断が必要になることがあります。東京都の子ども医療ガイドやFDMAの案内も、呼吸の異常を緊急性判断の重要ポイントとして扱っています。510

3.5. 肺炎など:咳+呼吸困難+全身状態(ぐったり・飲めない)で判断する

肺炎は「咳」よりも「呼吸が苦しい」「呼吸が速い」「胸がへこむ」「元気がない」「飲めない」など全身状態が重要です。WHOの小児病院ケア(Pocket Book)は、咳や呼吸困難の評価で「胸の陥没」「呼吸数」「全身状態」などの危険サインを重視しています。12

3.6. 気道異物:突然の咳き込みは“時間が勝負”のことがある

それまで元気だったのに、急にむせて激しく咳き込む場合、気道異物の可能性を考える必要があります。日本小児科学会「こどもの救急」は、呼吸状態の悪化サインをチェック項目として提示しています。6窒息が疑われるときは119を検討してください。10

第4部:今日から始める改善アクションプラン(観察・ケア・相談の順番を決める)

赤ちゃんの咳で最もつらいのは、「何を見ればいいか分からない」「どこまで様子を見るべきか迷う」ことです。ここでは、今夜からできる観察ポイントと、悪化時に備えた準備を“順番”で示します。

表2:改善アクションプラン(咳・呼吸が気になるときの行動手順)
ステップ アクション 具体例(何をどう見る/どうする)
Level 1:今この瞬間に確認 危険サインの有無を先にチェック 胸や肋骨の間がへこむ(陥没呼吸)、鼻の穴が広がる、唇が紫っぽい、息が止まるように見える、ぐったりして反応が弱い、哺乳できない——これらがあれば夜間でも受診・救急の判断が必要です。東京都の子ども医療ガイドは、呼吸困難や顔色不良などのサインを重視しています。5緊急性が高い場合は119を検討してください。10
Level 2:今夜〜24時間 呼吸と哺乳を“数字と事実”で記録 呼吸数(1分間に何回か)、咳の頻度(何分おきか)、哺乳量、尿の回数、体温、眠れているかをメモします。TTNが疑われる新生児では呼吸数80〜120回/分が目安になり得ると浜松医科大学は述べています。3記録は受診時に強い武器になります。
Level 3:同日〜数日 感染対策+環境調整(刺激を減らす) 手洗い・換気・体調不良者との距離確保など、CDCが示す基本的対策を徹底します。11乳児はRSウイルスで咳・喘鳴・呼吸困難が出ることがあるため、家族の体調管理も重要です。8
Level 4:迷ったら早めに相談 #8000や医療機関に連絡 「様子見か受診か」を一人で抱えないことが安全です。厚生労働省は小児救急電話相談(#8000)を案内しています。9夜間・休日の判断に活用してください。
Level 5:受診・救急の準備 必要物品をまとめる FDMA(消防庁)の救急受診案内では、救急車要請時などに備え、マイナンバーカード/保険証・診察券等に加え、乳幼児では母子健康手帳、紙おむつ、ほ乳瓶、タオルなどを用意しておくと便利としています。10

第5部:専門家への相談 — いつ・どこで・どのように?

赤ちゃんの咳は「受診のタイミング」が最難関です。ここでは、危険サイン、受診先の考え方、受診時に伝えるべき情報を整理します。

5.1. 受診を検討すべき危険なサイン

  • 呼吸が苦しそう:胸や肋骨の間がへこむ(陥没呼吸)、鼻翼呼吸、うめき声のような呼吸音。東京都の子ども医療ガイドは呼吸困難サインを重視しています。5
  • 顔色が悪い:唇や顔が紫っぽい(チアノーゼ)/ぐったりして反応が弱い。緊急性が高いサインになり得ます。5
  • 哺乳できない・吐いてしまう:飲めないと脱水や低血糖のリスクが上がります。WHOの小児ケアでも全身状態の悪化を重視します。12
  • ゼーゼーが強い/息を吐くたびに聞こえる:RSウイルスなどの下気道感染で重症化する場合があります。8
  • 生後早期の異常:出生直後から呼吸が速い、帝王切開で出生、呼吸数が80回/分以上に見えるなどはTTNの可能性があり、医療評価が重要です。3
  • 無呼吸のように見える/意識がはっきりしない:迷わず救急要請を検討します(119)。10

5.2. 症状に応じた診療科の選び方

  • 基本は小児科:咳、発熱、喘鳴、哺乳不良などは小児科が入口です(自治体の案内や小児救急相談も活用)。59
  • 夜間・休日で迷う:#8000に相談し、受診の必要性や受診先の案内を受けます。9
  • 緊急性が高い:呼吸困難・チアノーゼ・無呼吸・ぐったりなどは119を検討します。FDMAの案内も救急要請時の準備を示しています。10

5.3. 診察時に持参すると役立つものと、伝えるべき情報

  • 持参物:保険証・診察券、母子健康手帳、おむつ、タオル等。FDMAは乳幼児で母子健康手帳等を用意することを挙げています。10
  • 伝える情報:いつから、どんな咳か(乾いた咳/痰がからむ/犬吠様/連続して止まらない等)、呼吸数、胸のへこみの有無、哺乳量、尿回数、発熱、家族の風邪症状、保育園などの集団生活、既往(早産、心疾患など)。WHOの小児ケアが示す「全身状態」と「呼吸所見」を意識して整理すると、診察が早く進みます。12
  • 可能なら動画:咳や呼吸音は診察室で再現できないことが多いため、短時間の動画は状況共有に役立ちます(ただし撮影より安全確保を優先)。

よくある質問

Q1: 帝王切開で生まれた赤ちゃんは、必ず呼吸器が弱いのですか?

必ず弱い、ということではありません。ただし研究では、帝王切開(特に計画帝王切開)出生が乳児期の重い呼吸器感染入院リスクと関連する可能性が示されています。英国コホート研究では計画帝王切開のLRTI入院ハザード比が1.10〜1.39と報告されました。1

また、Pediatricsの系統的レビューでも呼吸器感染リスク上昇(オッズ比1.30)との関連が報告されています。2いずれも「確率の話」であり、個々の赤ちゃんの将来を決めるものではありません。危険サインを知り、早めに相談できる体制を作ることが現実的な対策です。9

Q2: 咳はないのに呼吸が速いのですが、受診した方がいいですか?

新生児期(生後すぐ)で呼吸が速い場合、TTNのように「肺液の吸収が遅れる」状態が関係することがあります。浜松医科大学はTTNで呼吸数が80〜120回/分程度になることがあるとしています。3

呼吸が速いことに加えて、胸がへこむ、顔色が悪い、飲めない、ぐったりなどがあれば緊急性が高い可能性があります。WHOの小児ケアも危険サインを重視しています。12

Q3: 夜だけ咳き込むのは、病気のサインですか?

夜間は鼻水が喉に流れやすく、咳が目立つことがあります。NHSは子どものかぜ・咳について、経過の中で咳が続くことがある一方、呼吸困難や全身状態の悪化があれば受診を促しています。14

夜間の咳に「ゼーゼー」「呼吸が苦しそう」「眠れないほどの咳」などが加わる場合は、迷わず相談・受診を検討してください。東京都の子ども医療ガイドの受診目安も参考になります。5

Q4: ゼーゼー(喘鳴)が聞こえます。様子見でいいですか?

乳児の喘鳴は、RSウイルスなどによる細気管支炎で強く出ることがあります。JIHSはRSウイルス感染で咳や喘鳴、呼吸困難を伴うことがあると解説しています。8

喘鳴に加えて「胸がへこむ」「哺乳できない」「顔色が悪い」などがあれば受診を急ぐべきサインです。日本小児科学会「こどもの救急」も喘鳴を重要項目として扱っています。6

Q5: 百日咳の咳は、どんな特徴がありますか?

厚生労働省は百日咳の症状として、発作性のけいれん性の咳や咳き込み後の嘔吐などを挙げています。7

乳児では重症化しやすいため、「咳が止まらない」「無呼吸のように見える」「顔色が悪い」などがあれば夜間でも受診・救急の判断が必要になることがあります。510

Q6: 咳の音を聞けば病名が分かりますか?

咳の音は「ヒント」にはなりますが、病名を確定するものではありません。咳音の表現や解釈には医療者の間でもばらつきがあることが報告されています。13

咳の音よりも、呼吸の苦しさ、胸のへこみ、顔色、哺乳、元気など「危険サイン」を優先して判断し、迷う場合は#8000などに相談するのが安全です。9

Q7: 受診や救急搬送に備えて、何を準備しておけばいいですか?

FDMA(消防庁)の案内では、救急要請時などに備えてマイナンバーカードや保険証・診察券等を準備し、乳幼児の場合は母子健康手帳、紙おむつ、ほ乳瓶、タオルなどを用意すると便利としています。10

さらに、発症時刻、体温、呼吸数、哺乳量、尿回数、咳の動画(可能なら)をまとめておくと、受診時の説明が正確になります。WHOの小児ケアでも全身状態と呼吸所見が重要とされています。12

Q8: 家庭でできる感染予防は何が効果的ですか?

CDCは、換気、手洗い、体調不良者との距離確保などの基本的対策を呼吸器ウイルス予防として挙げています。11

乳児はRSウイルスで重症化することがあり、周囲の大人が症状のあるときは接触を減らし、衛生を徹底することが重要です。8

結論:この記事から持ち帰ってほしいこと

帝王切開で生まれた赤ちゃんの咳は、「音」だけで判断せず、呼吸の苦しさ・顔色・哺乳・元気とセットで評価することが安全です。計画帝王切開では乳児期の呼吸器感染入院リスクが中等度に上がる可能性が示されており、予防と早期相談の価値は高いといえます。12

新生児期の「呼吸が速い」はTTNなどが関係することがあり、帝王切開(陣痛前)が誘因の一つとして挙げられています。34危険サインがあれば受診を先延ばしにせず、迷うときは#8000、緊急時は119というルートを確保しておくと安心です。910

この記事の編集体制と情報の取り扱いについて

Japanese Health(JHO)は、信頼できる公的情報源と査読付き研究に基づいて、健康・医療・美容に関する情報をわかりやすくお届けすることを目指しています。

本記事の原稿は、最新のAI技術を活用して下調べと構成案を作成したうえで、JHO編集部が一次資料(ガイドライン・論文・公的サイトなど)と照合しながら、内容・表現・数値・URLの妥当性を人の目で一つひとつ確認しています。最終的な掲載判断はすべてJHO編集部が行っています。

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参考文献

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  2. Keag OE, Norman JE, Stock SJ(ほか). Consequences of Caesarean Section—A Systematic Review and Meta-Analysis. Pediatrics. 2020. https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC7662709/(最終アクセス日:2025-12-23)

  3. 国立大学法人 浜松医科大学(地域周産期医療学講座). 新生児一過性多呼吸(TTN:Transient tachypnea of the newborn). https://www.hama-med.ac.jp/education/fac-med/dept/reg-neonatal-perinatal-med/disease/ttn.html(最終アクセス日:2025-12-23)

  4. 當山真紀 ほか. 一般市中病院における単胎正期産児の新生児呼吸障害のリスク因子(PDF). 2021. https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjspnm/57/2/57_263/_pdf/-char/en(最終アクセス日:2025-12-23)

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  6. 公益社団法人 日本小児科学会(こどもの救急). 咳、喘鳴(ぜーぜー・ひゅーひゅー). https://kodomo-qq.jp/en/search/46(最終アクセス日:2025-12-23)

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  9. 厚生労働省. 子どもの症状は#8000(小児救急電話相談). https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000125962.html(最終アクセス日:2025-12-23)

  10. 消防庁(FDMA). 救急受診ガイド(PDF). https://www.fdma.go.jp/publication/portal/items/portal002_japanese.pdf(最終アクセス日:2025-12-23)

  11. CDC(Centers for Disease Control and Prevention). Preventing Respiratory Viruses. https://www.cdc.gov/respiratory-viruses/prevention/index.html(最終アクセス日:2025-12-23)

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  13. Smith J, et al. The description of cough sounds by healthcare professionals. 2006. https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC1413549/(最終アクセス日:2025-12-23)

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