腸重積症は、本来は乳幼児に多い病気として知られていますが、実は成人にも起こることがあり、その多くでポリープや腫瘍など何らかの「しこり」が原因となっています。成人例は全腸重積症のおよそ5〜10%程度とされ、頻度としてはまれですが、がんなど重大な病気が隠れていることもあるため、適切な検査と治療がとても重要です。1
一方で、成人の腸重積症は、子どものような「突然の激しい泣き」「イチゴゼリー状の血便」といった典型的なサインが出ないことも多く、「なんとなくお腹が痛い」「便通が不安定」といったあいまいな症状が、数週間から数か月かけて続くケースも少なくありません。29
本記事では、日本および海外の信頼できるガイドライン・論文にもとづき、成人の腸重積症の「原因」「症状」「検査・診断」「治療法」「受診のタイミング」について、できるだけ専門用語をかみ砕いて解説します。読み進めることで、「自分や家族の症状はどの程度緊急なのか」「どの診療科を受診すべきか」「手術後の生活で気をつけたいこと」が具体的にイメージできるようになることを目指しています。
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- 厚生労働省・自治体・公的研究機関:腸重積症の疫学調査や症例定義に関する資料など、日本人向けの公式情報を優先して参照しています。8
- 国内外の医学会ガイドライン・査読付き論文:日本の消化器外科関連誌に掲載された成人腸重積症の臨床研究や、世界の系統的レビュー・メタアナリシスなど、科学的に検証されたエビデンスをもとに要点を整理しています。123456
- 教育機関・医療機関・学会による患者向け解説:消化器内科・内視鏡学会・地域医療機関などが公開している解説ページを参考に、日本の生活者にとってわかりやすい表現に言い換えています。910
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要点まとめ
- 成人の腸重積症は、全腸重積症の5〜10%と比較的まれですが、多くの場合で腫瘍やポリープなどの「器質的病変」が原因となります。13
- 子どもの腸重積症と異なり、成人では「なんとなく続く腹痛」「お腹の張り」「ときどき起こる嘔吐や下痢・血便」など、非特異的で慢性的な症状が多く、自己判断で様子を見るうちに発見が遅れることがあります。279
- 診断にはCT検査がもっとも有用とされており、近年の研究では成人腸重積症に対する診断正確度が約80%前後と報告されています。超音波検査や内視鏡検査も、原因病変の特定に役立ちます。457
- 成人では、およそ60〜70%で何らかの腫瘍が関与し、その中で悪性腫瘍(がん)の割合は腸の部位によって約20〜50%と報告されています。そのため、単なる「一時的な腸閉塞」ではなく、原因となる病変を含めた評価と治療が重要です。36
- 激しい腹痛が続く、吐いても楽にならない、血の混じった便が出る、お腹が異常に張っている、意識がぼんやりする――といった症状がある場合は、119番通報や救急外来受診を含め、早急な医療機関受診が必要です。7910
成人の腸重積症は、「お腹の調子が悪い」「便秘や下痢が続く」といった、誰にでも起こり得る症状から始まることが少なくありません。一方で、その裏に大腸がんや小腸腫瘍など、放置すると命に関わる病気が隠れていることもあります。
この記事では、まず日常生活の中で気づきやすいサインや、よくある勘違いを整理したうえで、腫瘍・炎症・術後の腸の癒着など、体の内部で起きている可能性のある原因を一つずつ丁寧に説明していきます。
そのうえで、CTや超音波、内視鏡などの検査で何がわかるのか、どのような場合に手術が必要になるのか、逆に慌てなくてよいケースはあるのかについても、実際の研究データをもとに解説します。2345
必要に応じて、関連する総合ガイドや、詳細解説記事など、JHO内の関連記事に自然な文脈で橋渡しを行います。
この記事を読み進めることで、「自分の状態をどのように理解し、いつどこで誰に相談すべきか」が具体的にイメージできるようになることを目指します。
第1部:成人の腸重積症の基本と日常生活で気づきやすいサイン
最初のセクションでは、腸重積症とはどのような状態か、成人の腸重積症に特有の「気づきにくいサイン」や、つい見過ごしてしまいがちなポイントについて整理します。専門的な話に入る前に、「自分の体の中で何が起きているのか」のイメージを持っておきましょう。
1.1. 腸重積症とは?――望遠鏡のように腸が入り込むイメージ
腸重積(ちょうじゅうせき)とは、腸の一部(口側の腸管)が、そのすぐ先にある腸(肛門側の腸管)の中へ「するっと」入り込んでしまい、望遠鏡を縮めたときのように腸が重なり合ってしまう状態を指します。1
入り込んだ部分は外側から締め付けられるため、その部分の血流が悪くなり、放置すると壊死(組織が死んでしまうこと)や穿孔(腸に穴があくこと)を起こす危険があります。
小児の腸重積症では、原因がはっきりしない「特発性」が多い一方で、成人の場合はポリープ、腫瘍(良性・悪性)、憩室、術後の縫合部など、「目に見える器質的な病変」が先端(先進部)になって重積を引き起こしていることがほとんどです。23
国内外の報告では、成人腸重積症は全腸重積症の5〜10%程度とされており、乳幼児と比べると頻度自体はかなり少ないものの、原因として腫瘍が関与する割合が高い点が特徴です。136
1.2. 「なんとなくお腹が変」から始まることも――見過ごしがちな症状とNG行動
成人の腸重積症は、子どものような「突然の激しい泣き」「典型的なイチゴゼリー状の血便」などが必ずしも現れません。むしろ、次のような、仕事や家事を何とか続けてしまえる程度の症状が、何日も何週間も続くケースが目立ちます。2910
- おへそ周り〜みぞおち、右下腹部などの間欠的な腹痛(痛みと楽な時間をくり返す)
- お腹の張りやゴロゴロする感じが続く
- 食欲不振やむかつき・吐き気が続く、時々嘔吐する
- いつもと違う軟便や下痢、逆に便秘をくり返す
- ティッシュにつく程度の血便がときどき見られる
こうした症状は、過敏性腸症候群や一時的な胃腸炎、ストレス性の胃腸不調でも起こり得るため、「忙しいから」「疲れのせいだろう」と自己判断してしまいがちです。しかし、成人腸重積症では、こうした非特異的な症状が長期に続いたのちに、腫瘍性病変などが見つかるケースも報告されています。23
特に注意したい「NG行動」は次のようなものです。
- 市販の胃薬や整腸剤、鎮痛薬だけで長期間やり過ごしてしまう
- 便秘と思い込み、市販の下剤を自己判断で増量してしまう
- 「忙しいから」と健康診断や大腸内視鏡検査を先延ばしにし続ける
- 血便を「痔だろう」と決めつけ、医療機関で相談しない
こうした行動が直接腸重積症を「引き起こす」わけではありませんが、発見を遅らせる要因となり得ます。「いつもと違う腹痛が続く」「便の状態が数週間以上おかしい」「一度良くなっても何度もぶり返す」と感じたら、忙しい時期であっても一度医療機関で相談することをおすすめします。
| こんな症状・状況はありませんか? | 考えられる主な背景・原因カテゴリ |
|---|---|
| 波のように強い腹痛が来たり治まったりをくり返す | 腸の一部が入り込んだり戻ったりすることで起こる間欠的な腸閉塞状態の可能性 |
| お腹が張りやすく、ガスや便が出にくい感じが続く | 腸の狭窄や閉塞により内容物の通過が悪くなっている可能性 |
| ときどき血の混じった便や黒っぽい便が出る | 腸重積やポリープ・腫瘍などによる消化管出血のサインの一つ |
| 体重がゆっくり減ってきている、疲れやすい | 長期の消化吸収障害や、背後にある腸の腫瘍性病変など |
第2部:身体の内部要因 — 腫瘍・炎症・術後変化など
第2部では、成人の腸重積症の背景にある「身体の内部要因」、特に腫瘍性病変や炎症性疾患、過去の手術の影響などについて解説します。「なぜ成人で腸重積が起こるのか?」という疑問に、できるだけデータを交えてお答えします。
2.1. 成人腸重積症と年齢・性別・既往歴
日本の成人腸重積症の症例報告をまとめると、患者さんの平均年齢は60〜70歳台であることが多く、男女比ではやや男性に多い傾向が報告されています。23
もちろん40代やそれ以下で発症することもあり、「年齢が若いから安心」とは言い切れません。
既往歴としては、次のような背景を持つ方に腸重積症が見つかるケースがあります。
- 大腸ポリープや大腸がん、小腸腫瘍などの既往・経過観察中
- 過去に腸の手術(虫垂炎、大腸がん、小腸切除など)を受けたことがある
- クローン病や潰瘍性大腸炎など、炎症性腸疾患の診断がある
- 他臓器のがん(肺がん、悪性リンパ腫など)からの転移が小腸に生じた例も報告されています。36
ただし、これらの背景がない人にも腸重積症が起こることはあります。「既往歴がない=腸重積症ではない」と決めつけてよいわけではありません。症状と検査の組み合わせで総合的に判断することが重要です。
2.2. 腫瘍やポリープなどの器質的病変――悪性腫瘍との関係
成人腸重積症の大きな特徴は、その多くが腫瘍性病変に関連していることです。海外のレビューでは、成人腸重積症の約65%で何らかの腫瘍が関与し、そのうち良性腫瘍と悪性腫瘍の割合は腸の部位により異なると報告されています。3
最新の系統的レビュー・メタアナリシスでは、成人腸重積症のうち悪性腫瘍が占める割合は、小腸型で約22%、回盲部型で約37%、大腸型で約47%と推計されています。6
つまり特に大腸に起こる腸重積症では、およそ2人に1人の割合で悪性腫瘍が背景に存在する可能性があるということになります。
日本の救急病院で成人腸重積症21例を検討した報告でも、原因疾患の約半数が大腸がんであり、多くが早期〜中等度進行がん(ステージ0〜II)で発見されていました。2
これは裏を返せば、「腸重積症という形で見つかったからこそ、比較的早い段階の大腸がんを切除できた」という例も少なくないことを示しています。
良性腫瘍(脂肪腫、腺腫性ポリープなど)や憩室、メッケル憩室、術後の吻合部の隆起などが先進部となることもありますが、検査の段階では良性・悪性を完全に見極めるのが難しいケースも多く、「腫瘍がある限りは、基本的に手術で切除して病理検査を行う」という方針が一般的です。134
2.3. 特発性・機能的な要因が疑われるケース
一部の成人腸重積症では、詳しく検査しても明らかな腫瘍やポリープが見つからず、「特発性(とくはつせい)」と分類されることがあります。24
この場合、腸の動き(蠕動運動)の異常や、腸の固定が弱いといった解剖学的な特徴が関与している可能性が指摘されていますが、原因がはっきり分からないことも少なくありません。
特発性の腸重積症では、経過の中で自然に重積が解除されてしまい、CTや超音波で「一時的に重なっていた跡」だけが確認される場合もあります。このようなケースでも、背後に小さな病変が隠れていないかを確認するため、内視鏡検査などによるフォローが検討されることがあります。
第3部:専門的な診断が必要な疾患としての成人腸重積症
第3部では、成人の腸重積症がどのように診断されるのか、どの検査が得意なのか、また「危険なサイン」と「様子を見てよい可能性のあるサイン」の違いについて解説します。
3.1. 成人腸重積症の典型的な症状と「よくある勘違い」
成人腸重積症の症状としてよく挙げられるのは、腹痛・嘔吐・お腹の張り・血便などですが、その現れ方には個人差が大きく、いわゆる「三徴候」がすべてそろうとは限りません。23910
代表的な症状と、よくある勘違いを整理すると次のようになります。
- 間欠的な腹痛:数分〜数十分おきにギューッと締め付けられるような痛みが来て、しばらくすると落ち着く——このような「波のある」痛みは、腸が重なったり戻ったりすることで起きている可能性があります。「胃けいれん」や「生理痛」と勘違いされることもあります。
- 嘔吐・吐き気:食事のあとに吐き気が強く、時間がたつと落ち着く、というパターンをくり返す場合、腸管の通過障害が関係していることがあります。単なる食あたりや飲み過ぎと思い込んでしまうケースもあります。
- 血便・黒色便:トイレットペーパーや便に血が混じる場合、「痔だろう」と自己判断されがちですが、腸重積や腫瘍による出血でも同様の症状が出ることがあります。特に、赤ワイン色や黒〜タール状の便は、消化管内の出血が疑われるサインです。
- 慢性的な腹部膨満感・体重減少:はっきりした痛みはなくても、お腹の張りや食欲不振が続き、体重がじわじわ減ってくる場合、腸重積症やその原因となる腫瘍が背景にあることもあります。
こうした症状は、過敏性腸症候群、機能性ディスペプシア、単純な便秘、ストレス性の胃腸障害でも見られるため、「話しづらい」「恥ずかしい」と感じて一人で抱え込んでしまう方も少なくありません。しかし、数週間〜数か月にわたり同じような症状が続く、あるいは一度良くなっても何度もぶり返す場合には、早めに医療機関で相談することが大切です。
3.2. 診断に用いられる検査――超音波・CT・内視鏡
成人の腸重積症の診断には、腹部超音波検査とCT検査が非常に有用であることが、多くの研究で示されています。2457
超音波検査では、「target sign(標的サイン)」や「multiple concentric ring sign(同心円状のリング)」と呼ばれる特徴的な画像が見られることがあります。7
CT検査は、腸の重なり具合や血流の状態だけでなく、原因となっている腫瘍やポリープの位置・大きさを評価するのに非常に優れています。近年の系統的レビューでは、成人腸重積症に対するCTの診断正確度は77.8%、超音波は49.2%、大腸内視鏡は52.6%と報告されており、特にCTが中心的な役割を担っていることが分かります。45
必要に応じて、次のような検査が組み合わされます。
- 腹部超音波検査:放射線被ばくがなく、ベッドサイドでも行いやすい検査。重積部の層状構造や血流の有無を確認します。
- CT検査:腸管の重なりと先進部病変の評価に有用で、多くの成人症例で診断の決め手となっています。
- 大腸内視鏡検査・小腸内視鏡検査:原因となるポリープや腫瘍を直接観察し、必要に応じて生検(組織を少し採取して顕微鏡で見る検査)を行います。
- 造影検査(注腸造影など):小児では非観血的整復を兼ねてよく行われますが、成人では腫瘍性病変のリスクを考慮して慎重に適応が検討されます。37
3.3. 緊急受診が必要な「赤信号」と、早めの受診が望ましい「黄信号」
成人腸重積症の中には、比較的ゆっくり進行し待機的手術が可能なケースもあれば、腸管壊死や穿孔を起こす前に緊急手術が必要なケースもあります。次のような症状は、特に注意すべき「赤信号」です。23710
- 突然の強い腹痛が持続し、体勢を変えても楽にならない
- お腹がパンパンに張っている、ガスや便がまったく出ない
- 何度も嘔吐し、水分すら保てない
- 鮮やかな赤い血や暗赤色の大量の血便が出る
- 冷や汗、ふらつき、意識がもうろうとする、脈が速いなどショックの兆候がある
- 38℃以上の発熱と強い腹痛が同時に続く
これらの症状がある場合は、自己判断で様子を見ずに、119番通報や救急外来の受診を検討してください。一方で、痛みが軽度〜中等度であっても、数日〜数週間にわたり同じ症状が続く場合は、「黄信号」と考え、できるだけ早めに消化器内科や消化器外科で相談することが大切です。
第4部:今日からできるセルフチェックと受診準備アクションプラン
腸重積症そのものを、自宅でのセルフケアだけで治すことはできません。しかし、症状を見逃さないようにし、診察の際に必要な情報を整理しておくことで、診断や治療がスムーズに進みやすくなります。このセクションでは、「今日からできること」「今週中にやっておきたいこと」「治療後に続けたいこと」をレベル別に整理します。
| ステップ | アクション | 具体例 |
|---|---|---|
| Level 1:今日からできるセルフチェック | 症状と生活の記録を始める | 腹痛が起きた時間帯・部位・痛みの強さ、便の状態(色・形・血の有無)、食事内容、体重をノートやスマホに記録する。 |
| Level 2:数日以内に検討したいこと | 消化器内科・消化器外科への受診予約 | かかりつけ医や近隣の医療機関に連絡し、「腹痛や血便が続いているので消化器の専門の先生に相談したい」と伝える。紹介状が必要な場合は事前に相談する。 |
| Level 3:受診までに準備しておきたいこと | 持病・内服薬・検査結果の整理 | これまでの病歴、現在飲んでいる薬、お薬手帳、過去の内視鏡検査や健診結果のコピーなどを一つのファイルにまとめておく。 |
| Level 4:治療後・手術後に続けたいこと | 定期的なフォローと生活習慣の見直し | 医療機関から指示されたタイミングで外来受診し、再発の有無や他のポリープの有無をチェックする。バランスの良い食事、適度な運動、禁煙なども、長期的な腸の健康に役立つ。 |
なお、腹痛や嘔吐が急激に悪化した場合や、血便が急に増えた場合は、上のアクションプランに関係なくただちに救急受診を優先してください。自宅での様子見よりも、「命に関わる状態ではないか」を早く確認することが何より大切です。
第5部:専門家への相談 — いつ・どこで・どのように?
最後に、「どのタイミングで」「どの診療科に」「何を準備して」受診すればよいのかを整理します。特に日本では、仕事や家庭の事情から受診を後回しにしがちな方も多いため、実際の生活をイメージしながら読んでみてください。
5.1. 受診を検討すべき危険なサイン
- 強い腹痛が数時間以上続き、体勢を変えてもほとんど楽にならない
- おならや便がまったく出ない状態が続き、お腹がどんどん張ってくる
- 何度も吐いてしまい、水分さえほとんど飲めない
- 鮮紅色〜暗赤色の血便が繰り返し出る、真っ黒いタール状の便が出る
- 冷や汗、ふらつき、息切れ、脈が速い、顔色が悪いなど、全身状態が明らかに悪い
- 発熱と強い腹痛が同時に続く
これらの症状がある場合は、「すぐに医療機関を受診すべき警告症状」と考え、夜間や休日であっても救急外来の受診や119番通報を検討してください。救急外来では、腹部X線やCT検査により、腸閉塞や腸重積症の有無を評価してもらうことができます。
5.2. 症状に応じた診療科の選び方
- まず相談しやすい窓口:かかりつけの内科、総合内科、地域のクリニックなど。
- 腹痛・便通異常が続く場合:消化器内科、胃腸科。
- 腫瘍性病変が疑われる、手術が必要と言われた場合:消化器外科、一般外科。
- 激しい腹痛や嘔吐、血便が急に増えた場合:救急科、救命救急センター。
どの診療科に行けばよいか迷ったときは、まず近くの内科・総合診療科に相談し、必要に応じて消化器内科や消化器外科に紹介してもらう流れも一般的です。紹介状があると、専門医での検査・治療がスムーズに進むことが多いでしょう。
5.3. 診察時に持参すると役立つものと費用の目安
- お薬手帳・現在服用している薬のリスト:血液サラサラの薬などを飲んでいる場合、検査や手術の計画に影響することがあります。
- 症状メモ・腹痛日誌・便の写真:いつ・どこが・どのくらい痛いのか、どのような便がどの頻度で出ているかをメモしておくと、診察が具体的になります。
- 過去の検査結果:大腸内視鏡検査、CT検査、バリウム検査、人間ドックの結果などがあれば持参しましょう。
検査や治療にかかる費用は、保険の種類、医療機関の規模、検査の内容によって大きく変わります。一般的には、保険診療(3割負担)で行う腹部CT検査や内視鏡検査は、数千円〜1万円台程度が一つの目安となることが多いですが、正確な金額は事前に医療機関の窓口で確認してください。手術や入院が必要な場合は、高額療養費制度など、公的なサポートについても病院の相談窓口で説明を受けることができます。
よくある質問
Q1: 成人の腸重積症は、子どもの腸重積症とどう違うのですか?
A1: 大きな違いは、「原因」と「症状の出方」です。小児の腸重積症は、多くが原因不明の特発性で、突然の激しい泣き・嘔吐・イチゴゼリー状の血便など、典型的な症状を示すことが多いとされています。78
一方、成人の腸重積症では、ポリープや腫瘍などの器質的病変が先進部となることがほとんどで、悪性腫瘍(がん)が背景にある割合も高いと報告されています。36
症状も「なんとなく続く腹痛」「便通異常」「軽い血便」など非特異的なものが多く、発見まで時間がかかることがあります。
Q2: 成人の腸重積症になったら、必ずがん(悪性腫瘍)があるのでしょうか?
A2: 「必ず」ではありませんが、悪性腫瘍が隠れている可能性は無視できません。研究によって幅がありますが、成人腸重積症全体のうち、悪性腫瘍が関与する割合はおおよそ20〜50%と報告されています。特に大腸型では約半数近くが悪性腫瘍と関連していたという報告もあります。36
良性のポリープや脂肪腫、憩室などが原因となっている例も少なくありませんが、検査だけで良性・悪性を完全に言い切れないこともあるため、手術で切除して病理検査で確かめる方針が一般的です。124
Q3: 成人の腸重積症は、自然に治ることもありますか?
A3: 一部には、自然に重積が解除されるケースも報告されています。特に特発性や腸の可動性が高いことが関係していると考えられる症例では、画像検査の時点では重積が解除されていることもあります。24
しかし、「自然に戻ったから問題なし」とは限りません。背後にポリープや腫瘍などの病変があれば、再び腸重積を起こす可能性があるからです。症状が改善しても、一度は消化器内科・外科で原因病変がないかを確認してもらうことをおすすめします。
Q4: 成人の場合も、子どものように注腸による整復で治せますか?
A4: 小児では、空気や造影剤を用いた注腸による整復が第一選択となることが多く、多くの症例で手術を行わずに治療できます。78
一方、成人の腸重積症では、先進部に腫瘍性病変が存在することが多いことから、原則として手術による腸切除が標準治療とされています。134
理由は、腫瘍を含めて切除しなければ根本的な解決にならないこと、整復操作によって腫瘍細胞が周囲に散らばるリスクを避けたいことなどです。
Q5: 手術を受けた後、普段の生活や食事で気をつけることはありますか?
A5: 手術の内容や切除した腸の長さによって個人差はありますが、一般的には次のような点に注意します。
- 術後早期は、医療チームの指示にしたがって、流動食→軟らかい食事→通常の食事へと段階的に戻していく
- 急に食べ過ぎない、よく噛んで食べる、脂っこいものやアルコールは医師の指示に応じて控えめにする
- 便秘や下痢が続く場合は、自己判断で市販薬を増やさず、外来で相談する
- 定期的な内視鏡検査や画像検査の指示があれば、忘れずに受ける
職場復帰や運動再開のタイミングは、手術の規模や体力により大きく異なります。無理をせず、担当医や看護師と相談しながら段階的に活動量を増やしていきましょう。
Q6: ロタウイルスワクチンで腸重積症が問題になったと聞きましたが、成人にも関係がありますか?
A6: ロタウイルスワクチンと腸重積症の関係は、主に乳幼児を対象とした議論です。日本小児救急医学会のガイドラインや厚生労働省の資料では、ロタウイルスワクチン接種後の腸重積症リスクについて慎重に検討されていますが、いずれも「乳幼児」を対象としたデータです。78
成人の腸重積症は、ワクチンではなく腫瘍やポリープなどの器質的病変が主な原因であり、ロタウイルスワクチン接種との関連は通常考えません。成人で腸重積症が疑われる場合は、年齢に応じた原因(腫瘍性病変など)を中心に評価することになります。
Q7: 高齢の家族が腸重積症かもしれないと心配です。どのように声をかければよいですか?
A7: 高齢の方は、痛みや不快感を「年のせい」と我慢してしまうことが少なくありません。「最近、お腹の調子はどう?」「ご飯はおいしく食べられている?」といった、日常会話に近い形で様子を尋ねることが第一歩です。
「トイレの回数や便の色が前と違う」「体重が知らないうちに減ってきた」などの変化がある場合は、一緒にかかりつけ医や消化器内科を受診することを提案してみてください。強い痛みや嘔吐、血便がある場合は、ためらわず救急受診を検討しましょう。
結論:この記事から持ち帰ってほしいこと
成人の腸重積症は、頻度としてはまれですが、背景に腫瘍やポリープなどの器質的病変、とくに悪性腫瘍が隠れていることが少なくない疾患です。一方で、症状は「なんとなく続く腹痛や便通異常」といった非特異的なものが多く、忙しい日常生活の中では見過ごされがちです。1236
この記事では、成人腸重積症のメカニズム、原因、症状、検査・診断、治療法、受診の目安について、国内外の公的資料や論文にもとづきながら整理しました。もし、ここで紹介した症状やサインに思い当たる点があれば、一人で抱え込まず、まずは身近な医療機関で相談してみてください。
「自分が今どの段階にいるのか」「すぐに救急受診が必要なのか」「数日以内に専門医を受診すべきなのか」を判断することは簡単ではありません。だからこそ、迷ったときは早めに専門家に相談し、「命に関わる状態ではないか」を確認したうえで、自分らしい生活を続けていくための選択肢を一緒に考えてもらうことが大切です。あなたは一人ではなく、相談できる医療者や家族、支える仕組みがあります。
この記事の編集体制と情報の取り扱いについて
Japanese Health(JHO)は、信頼できる公的情報源と査読付き研究に基づいて、健康・医療・美容に関する情報をわかりやすくお届けすることを目指しています。
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