【抜け毛・薄毛が気になる】考えられる原因と今すぐできる対策・受診の目安を解説
皮膚科疾患

【抜け毛・薄毛が気になる】考えられる原因と今すぐできる対策・受診の目安を解説

最近、シャンプーのたびに排水口にたまる髪の量が増えた気がする、枕カバーに抜け毛が目立つ、前よりも地肌が透けて見える――そんな不安を抱えていませんか。髪は見た目の印象だけでなく、「健康状態のバロメーター」ともいわれるため、抜け毛が増えると年齢に関係なく大きなストレスになります。

ただし、毎日ある程度の本数が抜けるのは「正常なヘアサイクル(毛周期)」の一部です。一般的には1日あたり50〜100本前後の抜け毛であれば、生理的な範囲とされています4。一方で、明らかにそれ以上抜けている、特定の部位だけ極端に薄くなる、円形の脱毛斑ができるなどの場合には、男性型および女性型脱毛症(AGA/FAGA)や円形脱毛症など、治療が必要な「脱毛症」が隠れている可能性があります1

本記事では、日本皮膚科学会の診療ガイドラインや国内外の研究論文などの信頼できる情報に基づき、抜け毛・薄毛の代表的な原因と種類、セルフケアでできること、医療機関に相談すべきサイン、診察時のポイントまで、できるだけ具体的に整理して解説します124。日常生活の見直しから専門的な治療まで「何から始めればよいか」をイメージできるようにすることがゴールです。

なお、本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の診断や治療を直接指示するものではありません。気になる症状がある場合は、自己判断で治療薬を購入したり中止したりせず、必ず医療機関で医師の診察を受けてください。

Japanese Health(JHO)編集部とこの記事の根拠について

Japanese Health(JHO)は、健康と美容に関する情報を提供するオンラインプラットフォームです。膨大な医学文献や公的ガイドラインを整理し、日常生活で活用しやすい形でお届けすることを目指しています。

本記事の内容は、以下のような一次情報源に基づいて、JHO編集部がAIツールのサポートを受けつつ、最終的には人の目で一つひとつ確認しながら作成しています。

  • 厚生労働省・自治体・公的研究機関:医薬品情報や生活習慣に関する資料、統計資料など、日本人向けの公式情報を優先して参照しています6
  • 日本皮膚科学会などの医学会ガイドライン:男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン2017年版、円形脱毛症診療ガイドライン2024など、脱毛症に関する診療ガイドラインをもとに、検査や治療の位置づけを整理しています12
  • 国内外の査読付き論文・専門機関の解説:脱毛症の病態や治療選択肢に関する最新の総説論文や、海外の専門機関による解説も参考にし、エビデンスの強さを考慮しながら要点をまとめています45

AIツールは、文献の要約や構成案作成の「アシスタント」として活用していますが、公開前には必ずJHO編集部が原著資料と照合し、重要な記述を一つひとつ確認しながら、事実関係・数値・URLの妥当性を検証しています。

本記事は、JHO(JapaneseHealth.org)編集委員会が、厚生労働省や日本の専門学会、査読付き論文などの信頼できる情報に基づいて作成しました。私たちの運営ポリシーや編集プロセスの詳細は、同ページをご覧ください。

要点まとめ

  • 1日に50〜100本程度の抜け毛は生理的範囲とされますが、それを明らかに超える場合や、特定の部位だけが薄くなる場合は脱毛症が隠れている可能性があります4
  • 日本人男性では、20代で約10%、30代で約20%、40代で約30%、50代以降で40%以上がAGA(男性型脱毛症)を発症すると報告されており、決して珍しい病気ではありません3
  • 抜け毛・薄毛の原因は、遺伝・ホルモン・自己免疫・栄養状態・薬の副作用・皮膚疾患・ストレスなど多岐にわたり、原因によって対処法や治療法が大きく異なります127
  • 生活習慣の見直し(睡眠・食事・喫煙・飲酒・髪の扱い方)だけで改善するケースもあれば、医療機関での薬物療法や光線療法など専門的な治療が必要となるケースもあります12
  • 円形脱毛症や急激な大量の抜け毛、発熱・体重変化・関節痛など全身症状を伴う場合は、自己判断せず皮膚科などで早めに相談することが大切です24
  • 個人輸入によるAGA治療薬の入手は、品質や安全性の面で大きなリスクがあると厚生労働省も注意喚起しており、必ず医療機関を通じて適切に処方を受けることが推奨されます6

第1部:抜け毛・薄毛の基本と日常生活の見直し

最初に押さえておきたいのは、「どこまでが正常な抜け毛で、どこからが要注意なのか」という基準と、髪が生え変わるリズム(ヘアサイクル)の基本です。いきなり難しい病名を心配する前に、多くの方に当てはまる「生活習慣やヘアケアの影響」を整理することで、自分の状態を冷静に振り返りやすくなります。

1.1. 毛髪とヘアサイクルの基本

髪の毛は、ずっと同じものが生え続けているわけではなく、「成長期」「退行期」「休止期」というヘアサイクルを繰り返しています4。成長期の毛は数年かけて伸び続け、その後退行期を経て休止期になると、自然に抜け落ち、新しい毛にバトンタッチされます。

健康な頭皮でも、毎日50〜100本前後の髪が自然に抜け落ちるのは、このサイクルが正常に回っている証拠です4。一方で、何らかの理由で成長期が極端に短くなったり、多くの毛が一度に休止期へ移行したりすると、短く細い毛ばかりが抜けていく、短期間で全体のボリュームが落ちる、といった変化が起こります17

また、男性型脱毛症(AGA)や女性型脱毛症(FAGA)では、特定の部位(生え際・頭頂部など)の毛が徐々に細く短くなっていくのが特徴とされ、日本皮膚科学会のガイドラインでも「進行性であること」が重要なポイントとして示されています1

1.2. 抜け毛を悪化させやすいNG習慣

生活習慣やヘアケアの仕方によって、頭皮の負担が大きくなり、本来持っている髪の力を弱めてしまうことがあります。以下のような行動は、多くの人が「ついやってしまいがち」な一方で、抜け毛や髪のダメージを増やす要因となりやすいとされています78

  • 強い力でのブラッシングやタオルドライ:濡れた髪はキューティクルが開いて傷つきやすく、ゴシゴシこするような拭き方は切れ毛・抜け毛の原因になります。
  • きついポニーテールやお団子、エクステの多用:長期間、髪を強く引っ張るスタイルは「牽引性脱毛症」を引き起こし、特に生え際の毛が薄くなりやすくなります1
  • 高温のドライヤーやヘアアイロンの過度な使用:高温で髪表面のタンパク質がダメージを受けると、ハリ・コシが失われ、切れやすくなります。
  • 過度なカラーリング・ブリーチ・パーマ:薬剤による刺激は頭皮環境を悪化させ、毛髪自体のダメージも蓄積します。
  • 睡眠不足・不規則な生活:頭皮への血流低下やホルモンバランスの乱れにつながり、ヘアサイクルに悪影響を及ぼすとされています38
  • 極端なダイエットや偏った食事:タンパク質・鉄・亜鉛などの不足は、髪の成長に必要な材料を奪ってしまいます7
  • 喫煙・過度の飲酒:血行悪化やホルモンバランスへの影響を通じて薄毛リスクを高める可能性が指摘されています38

これらの習慣は、原因が必ずしも「それだけ」というわけではありませんが、抜け毛が気になり始めた段階で見直すことで、頭皮環境を整え、今後の進行を緩やかにする一助になると考えられています。

表1:セルフチェックリスト(抜け毛・薄毛の気づき方)
こんな症状・状況はありませんか? 考えられる主な背景・原因カテゴリ
シャンプーやブラッシングのたびに、いつもより明らかに多くの髪が抜ける 休止期脱毛症、ストレス・体調不良、薬の副作用 など
生え際が少しずつ後退してきた、つむじ周りの地肌が目立ってきた 男性型脱毛症(AGA)、女性型脱毛症(FAGA) など13
円形または楕円形の「地肌がつるっと見える」脱毛斑ができた 円形脱毛症、自己免疫性の脱毛症 など24
頭皮のかゆみ・赤み・フケが強く、かきむしると抜け毛が増える 脂漏性皮膚炎、接触皮膚炎、真菌感染症 など
突然ごっそりと抜けて、一気にボリュームが減った 急性休止期脱毛症、重度のストレス・高熱・出産後など7

第2部:身体の内部要因 — 栄養・ホルモン・隠れた不調

生活習慣をある程度整えても抜け毛が続く場合、その背景にはホルモンバランスの変化や栄養不足、慢性的な疾患など、身体の内側の問題が関わっていることがあります。特に女性や高齢者、持病を抱えている方では、抜け毛が「からだのサイン」として現れることも少なくありません。

2.1. 【特に女性】ライフステージとホルモンバランス

女性の場合、月経・妊娠・出産・授乳・更年期といったライフステージの変化に伴い、女性ホルモンの分泌量が大きく変動します。この変化がヘアサイクルに影響し、「びまん性脱毛(頭全体が均一に薄くなるタイプ)」や出産後の一時的な大量脱毛(分娩後脱毛)として現れることがあります17

また、加齢とともに女性ホルモンの保護作用が弱まることで、頭頂部を中心に全体的にボリュームが減っていく「女性型脱毛症(FAGA)」が目立ってくる場合もあります。男性型脱毛症と同様に進行性の脱毛症であり、日本皮膚科学会のガイドラインでも、外用ミノキシジルなどが治療選択肢として挙げられています1

月経不順が続いている、急激な体重変化がある、多毛やニキビなど他の症状を伴う場合には、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)などのホルモン疾患が関わっている可能性もあるため、婦人科での相談も検討しましょう。

2.2. 栄養不足・隠れた欠乏状態

髪の主成分はケラチンというタンパク質であり、その合成にはタンパク質に加え、鉄・亜鉛・ビタミンB群など、さまざまな栄養素が必要です7。極端な糖質制限や単品ダイエット、忙しさによる偏食が続くと、体重が大きく減っていなくても、髪に必要な栄養が不足してしまうことがあります。

特に女性では、月経による慢性的な出血や、妊娠・出産・授乳を通じて鉄が不足しやすく、鉄欠乏性貧血や「かくれ貧血」が休止期脱毛症の一因になると指摘されています7。爪が割れやすい、階段で息切れしやすい、顔色が悪いと指摘されるなどの症状がある場合は、内科や婦人科での採血検査を検討しましょう。

自己判断でサプリメントを多量に摂取するのではなく、必要に応じて医療機関で血液検査を受け、実際の不足状況に応じて補うことが安全です。

2.3. 甲状腺・自己免疫疾患などの全身性の病気

甲状腺ホルモンは全身の代謝をコントロールしており、その分泌が多すぎても少なすぎても、髪や皮膚の状態に影響します。甲状腺機能亢進症・低下症では、抜け毛や髪のパサつきのほか、動悸・体重変化・寒がり/暑がり・むくみなどが同時に見られることがあります1

また、膠原病(こうげんびょう)や自己免疫性肝炎など、自己免疫疾患の一部でも、全身症状の一つとして脱毛が現れることが知られています45。関節痛や発熱、発疹、強い倦怠感などを伴う場合は、皮膚科だけでなく膠原病内科・リウマチ科など専門診療科への紹介が検討されます。

「髪だけの問題」と思っていたら、実は全身の病気が隠れていたというケースもあるため、気になる症状は遠慮せず医師に伝えることが大切です。

第3部:専門的な診断が必要な脱毛症

ここからは、セルフケアだけでは対応が難しく、医学的な診断や治療が必要となる代表的な脱毛症について整理します。特に、男性型および女性型脱毛症(AGA/FAGA)と円形脱毛症は、頻度も高く、ガイドラインに基づく治療選択肢が整備されているため、早期に専門家へ相談することで対応の幅が広がります12

3.1. 男性型および女性型脱毛症(AGA/FAGA)

AGA(男性型脱毛症)は、主に思春期以降の男性に見られる進行性の脱毛症で、額の生え際や頭頂部から徐々に毛が細く短くなり、最終的には地肌が目立つようになるのが特徴です13。日本皮膚科学会のガイドラインによると、日本人男性のAGA有病率は20代で約10%、30代で約20%、40代で約30%、50代以降で40%以上と報告されており、年齢とともに増加します3

原因としては、遺伝的な体質と男性ホルモン(テストステロン)から変換されるジヒドロテストステロン(DHT)が関与し、特定の部位の毛包がDHTの影響を受けやすい体質の人では、ヘアサイクルの成長期が短縮してしまうと考えられています1

女性のFAGAでは、頭頂部を中心に全体的なボリューム低下が目立つ「びまん性」の薄毛が多く、前頭部の生え際は保たれやすいなど、男性とはパターンが少し異なります1。閉経前後のホルモンバランスの変化や、遺伝的要因、加齢などが複合的に関わっているとされます。

治療については、日本皮膚科学会ガイドライン2017年版で、男性AGAに対する内服フィナステリド/デュタステリドや外用ミノキシジル、女性のFAGAに対する外用ミノキシジルなどの推奨度がまとめられています1。いずれも医師の診断のもとで、効果と副作用を慎重に評価しながら継続することが重要です。

3.2. 円形脱毛症(単発型〜全頭・汎発型)

円形脱毛症は、自己免疫の関与が示唆される脱毛症で、コインのような円形または楕円形の脱毛斑が突然現れるのが特徴です24。単発の小さな脱毛斑のみで自然に再発毛する場合もあれば、多発したり、頭全体(全頭脱毛)、まつげ・眉毛・体毛まで含めて全身に及ぶ汎発性脱毛症へと進行する場合もあります2

日本皮膚科学会の円形脱毛症診療ガイドライン2024では、病型(単発型・多発型・全頭型・汎発型)や重症度に応じて、外用ステロイド、局所免疫療法、光線療法(エキシマライトなど)、JAK阻害薬を含む全身療法などの選択肢が整理されています25。小児例では自然経過で改善するケースもある一方、重症例では長期的なフォローと心理的支援が重要とされています。

円形脱毛症そのものは命に関わる病気ではありませんが、見た目の変化により学校・職場・家庭生活の中で大きな心理的負担を抱えることが多く、必要に応じてカウンセリングやサポートグループなどの支援を利用することも大切です45

3.3. 休止期脱毛症・薬剤性脱毛症など

高熱を伴う感染症や大きな手術、急激なストレス、急なダイエットなどの数カ月後に、全体的な抜け毛が一気に増えるタイプを「休止期脱毛症」と呼びます7。多くは原因となった出来事から時間が経過し、ヘアサイクルが回復するにつれて自然に改善していきますが、背景に貧血や甲状腺疾患などが隠れている場合には、その治療が優先されます。

また、抗がん剤の多くは、急速に分裂する細胞を標的とするため、毛母細胞もダメージを受け、一時的に全身の毛が抜けることがあります4。治療終了後、数カ月〜1年程度かけて髪が再び生えてくるのが一般的ですが、毛質や色が変化することもあり、医療用ウィッグなどを活用しながら生活の質を保つサポートが重要です。

その他、一部の降圧薬・抗うつ薬・ホルモン剤などに脱毛の副作用が報告されているものもあります。自己判断で中止すると病気そのものが悪化する危険があるため、気になる場合は必ず処方医に相談し、代替薬の検討などを行ってもらいましょう。

第4部:今日から始める改善アクションプラン

原因が何であれ、「抜け毛が気になり始めた今このタイミング」でできることは少なくありません。ここでは、今夜からできる簡単な工夫から、数カ月かけて取り組む生活習慣の見直し、医療機関への相談まで、レベル別にアクションを整理します。

表2:改善アクションプラン
ステップ アクション 具体例
Level 1:今夜からできること 頭皮への負担を減らす・睡眠を整える 熱すぎないお湯で優しく洗う/濡れた髪をゴシゴシ拭かない/就寝1〜2時間前にスマホを手放し、同じ時間に寝る習慣を意識する など
Level 2:今週から始めること 食事とストレス対策の見直し 毎食に「タンパク源+彩りのある野菜」を必ず1品入れる/アルコールや喫煙の回数を減らす/週に数回、軽い有酸素運動やストレッチの時間を確保する など78
Level 3:1〜3カ月かけて取り組むこと ヘアスタイル・ヘアケアの見直し きついポニーテールやエクステをやめる/カラーやパーマの頻度を減らす/自分の頭皮に合ったシャンプーを皮膚科や美容師と相談する など1
Level 4:専門家への相談 原因を特定して適切な治療方針を立てる 抜け毛や薄毛の写真、いつ頃から増えたかのメモ、内服薬リストを持参し、皮膚科・専門クリニック・必要に応じて内科や婦人科を受診する

市販の育毛剤やサプリメントは、「頭皮環境を整える」目的で使われることが多い一方、医学的に十分な効果が証明されているものは限られています1。特に、AGA治療薬(フィナステリドなど)を個人輸入で入手することは、厚生労働省も安全性の観点から注意喚起しており、成分量や品質が不明な製品による健康被害が報告されています6。必ず医療機関を通じて正規品を処方してもらいましょう。

第5部:専門家への相談 — いつ・どこで・どのように?

「どのくらい抜けたら病院に行くべきか」「何科を受診したらよいのか」が分からず、受診が遅れてしまう方も多くいます。ここでは、受診の目安となる危険なサインと、症状に応じた診療科の選び方、診察を有効にするための準備について整理します。

5.1. 受診を検討すべき危険なサイン

  • 数週間〜数カ月で抜け毛が急激に増え、手ぐしやシャンプーだけでごっそり抜ける
  • 円形または不規則な形の脱毛斑がいくつもでき、徐々に広がっている
  • 頭皮に強い赤み・腫れ・痛み・かさぶた・膿などがあり、かゆみや痛みを伴う
  • 体重の急激な増減、動悸、息切れ、むくみ、発熱、関節痛など、全身症状を伴う
  • 眉毛・まつげ・体毛まで抜けてきた、爪に凹凸や変形が出てきた
  • 子どもに急な脱毛が見られる、あるいは円形脱毛斑が増えている
  • 抜け毛や見た目の変化によって、学校や仕事、家庭生活に大きな支障が出ている

これらのサインがある場合は、できるだけ早く皮膚科や専門クリニックに相談することが勧められます。意識がもうろうとする、激しい頭痛・麻痺・けいれんなど、生命に関わる症状を伴う場合は、119番通報を含めた救急対応が必要です。

5.2. 症状に応じた診療科の選び方

  • 生え際や頭頂部の薄毛が徐々に進行している場合:まずは皮膚科、あるいはAGA・FAGA治療を行っている専門クリニックへ。
  • 円形の脱毛斑がある場合:皮膚科での診断と、ガイドラインに沿った治療の検討が重要です。
  • 疲れやすさ・体重変化・動悸などを伴う場合:内科で甲状腺や貧血など全身状態を評価してもらい、必要に応じて皮膚科とも連携します。
  • 月経不順・不妊・多毛など女性ホルモンの症状を伴う場合:婦人科でのホルモン検査や治療が優先されることがあります。
  • 強い不安や抑うつ症状、対人関係のつらさが前面に出ている場合:心療内科・精神科でのカウンセリングや治療も並行して検討されます。

5.3. 診察時に持参すると役立つものと費用の目安

  • 抜け毛・薄毛の写真:同じ角度・同じ照明で撮影した写真を数カ月分並べると、進行具合が客観的に分かりやすくなります。
  • 症状メモ:いつ頃から気になっているか/増えたタイミング/併発している症状(かゆみ・痛み・全身症状など)をメモしておくと診察がスムーズです。
  • お薬手帳・サプリメント一覧:処方薬のほか、市販薬・健康食品も含めて、実際に飲んでいるものを一覧にして持参しましょう。
  • 家族の脱毛歴:父母・祖父母などの薄毛の有無や時期も、AGAなどの診断の参考になります3
  • 費用の目安:保険診療の範囲内であれば、初診料・再診料+必要な血液検査などが一般的ですが、AGA治療薬や一部の治療は自由診療となることもあります。具体的な金額は医療機関ごとに異なるため、事前にホームページや電話で確認しておくと安心です。

よくある質問

Q1: 1日にどのくらい抜けたら「抜けすぎ」と考えるべきですか?

A1: 個人差はありますが、一般的には1日に50〜100本程度までの抜け毛であれば生理的な範囲とされています4。ただし、正確に本数を数えるのは現実的ではないため、「以前と比べて明らかに増えたかどうか」「数週間〜数カ月続いているか」「地肌が透けて見える部位が増えてきたか」などの変化が目安になります。

短く細い毛ばかりが抜けている、円形の脱毛斑がある、まつげ・眉毛・体毛まで抜けてきた、といった場合は、単なる生理的な抜け毛を超えている可能性があるため、早めに皮膚科で相談しましょう12

Q2: シャンプーやドライヤーが原因でハゲることはありますか?

A2: シャンプーそのものが直接「脱毛症の原因」になることは一般的にはありませんが、洗い方や乾かし方によって髪と頭皮に負担がかかり、切れ毛や枝毛、頭皮トラブルを通じて抜け毛が増えたように感じることはあります7

熱すぎるお湯や強い力でゴシゴシ洗うこと、濡れた髪をタオルで激しくこすることは避け、指の腹で泡を転がすように優しく洗い、ドライヤーは髪から20cm程度離して動かしながら使うのが基本です。フケやかゆみ、赤みが強い場合は、市販シャンプーを次々に変える前に皮膚科で頭皮の状態を確認してもらうと安心です。

Q3: 帽子やヘルメットをよくかぶると薄毛になりますか?

A3: 一般的な生活の範囲で帽子やヘルメットをかぶることが、直接AGAなどの脱毛症の原因になるという明確なエビデンスはありません1。ただし、長時間汗がこもる環境が続くと、頭皮のムレやかゆみ、皮膚炎を通じて抜け毛を悪化させる可能性はあります。

仕事や趣味で長時間ヘルメットを着用する場合でも、帰宅後に汗や皮脂を丁寧に洗い流し、頭皮を清潔に保つこと、サイズの合ったものを選んで過度な圧迫を避けることが大切です。頭皮の赤みやかゆみが続く場合は皮膚科に相談しましょう。

Q4: ストレスだけで髪は抜けますか?

A4: 強い精神的ストレスや身体的ストレス(大きな手術・高熱を伴う感染症など)は、ヘアサイクルを乱し、数カ月後に「休止期脱毛症」として一時的な大量脱毛を引き起こすことがあるとされています47。また、ストレスは睡眠・食欲・生活習慣にも影響し、間接的に頭皮環境を悪化させる要因にもなります。

とはいえ、ストレスだけが単独で全ての脱毛を説明できるわけではなく、遺伝・ホルモン・栄養状態・皮膚疾患など、さまざまな要因が組み合わさっていることが多いと考えられています15。抜け毛をきっかけにストレスが増えてしまう悪循環も起こりやすいため、一人で抱え込まず、家族や友人、必要に応じて専門家に相談することが大切です。

Q5: 女性でもAGAのような薄毛になりますか?

A5: 女性にも、頭頂部を中心に全体的なボリュームが減っていく「女性型脱毛症(FAGA)」があり、日本皮膚科学会のガイドラインでも男性型・女性型脱毛症としてまとめて扱われています1。閉経前後のホルモンバランスの変化や遺伝、加齢などが関与すると考えられています。

女性の場合、びまん性に薄くなるため、気づきにくかったり、「年齢のせい」とあきらめてしまったりすることも少なくありません。頭頂部の分け目が広がって見える、髪を束ねたときのボリュームが明らかに減った、といった変化が気になる場合は、早めに皮膚科や女性の薄毛治療を扱うクリニックで相談してみるとよいでしょう。

Q6: 市販の育毛サプリやシャンプーだけで治せますか?

A6: 市販の育毛シャンプーやサプリメントは、頭皮環境を整えたり、不足しがちな栄養素を補ったりする目的で利用されることが多いものの、AGAや円形脱毛症などの「病気としての脱毛症」を根本的に治す効果が十分に証明されているものは限られています17

特に、AGAに関しては、ガイドラインで推奨されているのはフィナステリド/デュタステリドなどの医薬品や外用ミノキシジルなどであり、サプリメントのみで進行を止めることは難しいとされています13。サプリメントを試す場合でも、過度な期待を持ちすぎず、生活習慣の見直しや必要に応じた医療機関での治療と組み合わせることが現実的です。

Q7: どのタイミングでAGA治療を始めるのがよいですか?

A7: AGAは「進行性の脱毛症」であり、何も対策をしないまま時間が経つほど、毛髪のミニチュア化が進み、治療しても元の状態まで戻りにくくなるとされています13。そのため、日本皮膚科学会のガイドラインでも、適切な診断のもとで早期に治療を開始することの重要性が示されています。

「最近、生え際が後退してきた気がする」「つむじ周りの地肌が以前より目立つ」と感じた時点で一度皮膚科や専門クリニックに相談し、写真記録などをもとに経過を追いながら、治療を始めるかどうかを話し合うのがおすすめです。

結論:この記事から持ち帰ってほしいこと

抜け毛や薄毛は、年齢や性別にかかわらず、多くの人が一度は悩むとても身近な問題です。一方で、その背景には、生活習慣・ホルモン・栄養状態・自己免疫・薬の副作用など、多くの要因が複雑に絡み合っており、「自分を責めるべき原因」ではありません。

本記事では、日常生活で見直せるポイントから、AGAや円形脱毛症など専門的な診断が必要な病気、医療機関に相談すべき危険なサイン、診察時の準備までを幅広くご紹介しました。まずは無理のない範囲で生活習慣とヘアケアを整え、そのうえで気になる症状が続く場合は、早めに皮膚科などの専門家に相談してみてください。

あなたと同じような悩みを抱えている人は決して少なくありません。一人で抱え込まず、家族や友人、医療者、必要に応じてカウンセラーやサポート団体の力も借りながら、自分のペースで対策を進めていきましょう。

この記事の編集体制と情報の取り扱いについて

Japanese Health(JHO)は、信頼できる公的情報源と査読付き研究に基づいて、健康・医療・美容に関する情報をわかりやすくお届けすることを目指しています。特に、抜け毛・薄毛・脱毛症に関する情報は、生活の質や心理的負担に直結するテーマであるため、最新のガイドラインやレビューを確認しながら、慎重に内容を構成しています125

本記事の原稿は、最新のAI技術を活用して下調べと構成案を作成したうえで、JHO編集部が一次資料(ガイドライン・論文・公的サイトなど)と照合しながら、内容・表現・数値・URLの妥当性を人の目で一つひとつ確認しています。最終的な掲載判断はすべてJHO編集部が行っています。

ただし、本サイトの情報はあくまで一般的な情報提供を目的としており、個々の症状に対する診断や治療の決定を直接行うものではありません。気になる症状がある場合や、治療の変更を検討される際は、必ず医師などの医療専門家にご相談ください。

記事内容に誤りや古い情報が含まれている可能性にお気づきの場合は、お手数ですが運営者情報ページ記載の連絡先までお知らせください。事実関係を確認のうえ、必要な訂正・更新を行います。

免責事項 本記事は情報提供のみを目的としており、専門的な医学的助言や診断、治療に代わるものではありません。健康上の懸念がある場合や、治療内容の変更・中止等を検討される際には、必ず資格のある医療専門家にご相談ください。

参考文献

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  2. 大山 学ほか, 日本皮膚科学会ガイドライン委員会. 円形脱毛症診療ガイドライン2024. 日本皮膚科学会雑誌. 2024. https://www.jstage.jst.go.jp/article/dermatol/134/10/134_2491/_article/-char/ja/(最終アクセス日:2025-11-26)

  3. 芦田クリニックほか. AGAは発症したら終わり?急激に進行する?主な原因や治療法. 2025年記事. 日本皮膚科学会ガイドラインのデータに基づく日本人男性のAGA発症率の解説. https://ashitano.clinic/aga-beginning-not-end/(最終アクセス日:2025-11-26)

  4. Cleveland Clinic. Alopecia Areata. 2023. パッチ状脱毛症の症状・原因・治療に関する解説. https://my.clevelandclinic.org/health/diseases/12423-alopecia-areata(最終アクセス日:2025-11-26)

  5. Sibbald C, et al. Alopecia Areata: An Updated Review for 2023. Dermatology and Therapy. 2023; 13(4). 免疫学的機序と治療選択肢の最新レビュー. https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC10291119/(最終アクセス日:2025-11-26)

  6. 厚生労働省. プロペシア(PROPECIA)(男性型脱毛症用薬)に関する注意事項について. 厚生労働省公式サイト. フィナステリドの安全性に関する注意喚起. https://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/iyaku/kojinyunyu/050609-1a.html(最終アクセス日:2025-11-26)

  7. ランブット公式コラム. 抜け毛の主な原因は大きく9つ!意外と知らない抜け毛の話. 2022. 日本皮膚科学会ガイドラインを引用しつつ、抜け毛の原因と生活習慣との関係を解説. https://ranmu.jp/column/post-6737/(最終アクセス日:2025-11-26)

  8. AGAヘアクリニック. AGA(男性型脱毛症)とは? 原因や治療薬、治療法まで徹底解説. 日本人男性における年代別AGA発症率と生活習慣との関連を解説. https://agahairclinic.or.jp/aga/(最終アクセス日:2025-11-26)

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