【授乳をやめるタイミングが遅い?】長期授乳のメリットとデメリット・卒乳の進め方ガイド
小児科

【授乳をやめるタイミングが遅い?】長期授乳のメリットとデメリット・卒乳の進め方ガイド

「もう2歳なのにまだおっぱいを欲しがる」「保育園や仕事復帰もあるし、そろそろやめた方がいいのかな」「周りから“まだ授乳しているの?”と言われて恥ずかしい」――そんなモヤモヤや不安を抱えながら、授乳を続けている方は少なくありません。

一方で、世界保健機関(WHO)は「生後6か月までは完全母乳、その後も2歳またはそれ以降まで母乳育児を続けること」を推奨しており、長く授乳を続けること自体は、母子ともに多くのメリットがあるとされています1。日本の厚生労働省「授乳・離乳の支援ガイド」でも、卒乳・断乳の時期は一律に決めず、母子の状態や家庭の事情に応じて決めるべきとしています2

では、「卒乳が遅い」「長期授乳」と言われる状態には、どのような心理的・身体的な影響があるのでしょうか。また、母子ともにできるだけ負担の少ない形で卒乳・断乳を進めるには、どんなステップが考えられるでしょうか。

本記事では、日本の公的機関や専門家の情報、世界のガイドラインや研究論文をもとに、長期授乳のメリットとリスク、母子の心の影響、やさしい卒乳の進め方を丁寧に解説します。今まさに「やめるべきか、もう少し続けるべきか」と揺れている方が、自分と子どもにとって納得できる選択を考えるための材料として活用していただければ幸いです。

Japanese Health(JHO)編集部とこの記事の根拠について

Japanese Health(JHO)は、健康と美容に関する情報を提供するオンラインプラットフォームです。膨大な医学文献や公的ガイドラインを整理し、日常生活で活用しやすい形でお届けすることを目指しています。

本記事の内容は、以下のような一次情報源に基づいて、JHO編集部がAIツールのサポートを受けつつ、最終的には人の目で一つひとつ確認しながら作成しています。

  • 厚生労働省・自治体・公的研究機関:授乳・離乳の支援ガイド、卒乳時期とむし歯の関係、統計資料など、日本人向けの公式情報を優先して参照しています。
  • 国内外の医学会ガイドライン・査読付き論文:世界保健機関(WHO)、小児科学関連の研究、母乳育児と虫歯・精神的健康に関する研究などのエビデンスをもとに要点を整理しています。
  • 教育機関・医療機関・NPOによる一次資料:日本の母乳育児支援団体(例:NPO法人日本ラクテーション・コンサルタント協会など)の情報を、実際の育児場面の解説として利用します。

AIツールは、文献の要約や構成案作成の「アシスタント」として活用していますが、公開前には必ずJHO編集部が原著資料と照合し、重要な記述を一つひとつ確認しながら、事実関係・数値・URLの妥当性を検証しています。

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要点まとめ

  • WHOは「生後6か月までは完全母乳、その後も離乳食と並行して2歳またはそれ以降まで授乳を続ける」ことを推奨しており、長く授乳を続けること自体は、世界的には珍しいことではありません1
  • 厚生労働省の「授乳・離乳の支援ガイド」では、卒乳の時期を一律に決めず、子どもの発達や家庭の状況、母親の希望などを尊重することが重要とされています2
  • 一方で、日本では1〜1歳半ごろに卒乳する家庭が多く、この平均より授乳期間が長いと「遅いのでは」と不安を抱きやすくなります。夜間の頻回授乳が続くと、母親の睡眠不足や虫歯リスクの上昇など、現実的な負担も増えます3
  • 遅い卒乳そのものが「子どもの甘え過ぎ」「自立を妨げる」などと断定できる科学的根拠は乏しく、むしろ母子の愛着形成や発達に良い影響を示す研究もあります。ただし、母親が強いストレスや罪悪感を抱えたまま授乳を続ける状態は、心身の負担になります4
  • 卒乳・断乳は「一気にやめる」よりも、授乳回数や時間を段階的に減らし、抱っこや言葉がけなど他のスキンシップと組み合わせながら進めることで、母子ともに負担を減らすことができます。
  • 産後〜卒乳の時期はホルモン変化が大きく、一部の人では「断乳後うつ(post-weaning depression)」のような気分の落ち込みが起こることも報告されています。気分の低下や不安が続く場合は、我慢せず医療機関や相談窓口に早めに相談しましょう5

第1部:授乳と卒乳・断乳の基本を整理する

まずは、「長期授乳」や「卒乳が遅い」とは何を指すのか、そして日本と世界のガイドラインでは授乳期間をどのように捉えているのかを整理しておきましょう。「いつまで授乳するのが正解か」という問いに、医学的な「正解」はありません。大切なのは、母子の健康と生活のバランスを見ながら選ぶことです。

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1.1. 授乳のメカニズムと「卒乳」「断乳」という考え方

授乳は、母乳を分泌する乳腺と、ホルモンを分泌する脳(視床下部・下垂体)が連動して行われます。赤ちゃんが乳首を吸うと、その刺激が脳に伝わり、プロラクチンというホルモンが母乳の産生を促し、オキシトシンというホルモンが乳腺を収縮させて乳汁を押し出します。この仕組みによって、授乳中の母親はリラックスしやすく、赤ちゃんとの一体感・安心感を感じやすくなります。

日本では、授乳を終えるタイミングに関して「卒乳」と「断乳」という言葉がよく使われます。厚生労働省の支援ガイドでは、「卒乳」=子ども主体で自然に母乳を欲しがらなくなるまで授乳を続けること、一方で一般的に「断乳」は大人の都合で計画的に授乳をやめることと説明されることが多く、どちらが正しい・誤りというものではありません2

重要なのは、「どの言葉を使うか」よりも、母子双方が過度なストレスを感じずに、その家族に合ったペースで授乳を終えられるかどうかです。仕事復帰や体調、きょうだいの育児など、現実的な事情から断乳を選ぶ人もいれば、子どもが自然に離れるまで待つ人もいます。

1.2. 日本と世界のガイドラインが示す授乳期間の目安

授乳期間について、各機関の見解を簡単に整理すると、次のようになります。

  • 世界保健機関(WHO):生後6か月までは完全母乳、その後も離乳食と並行して2歳またはそれ以降まで授乳を続けることを推奨1
  • 日本の厚生労働省「授乳・離乳の支援ガイド」:離乳開始後も、子どもが欲しがる・離乳の進行状況に応じて授乳を続けるとし、乳汁を終了する時期は子どもの成長・家庭環境によって個人差が大きいため、一律には決められないとしています2
  • 日本の実態:厚生労働省の資料などでは、1〜1歳半ごろに卒乳する家庭が多いこと、1歳半で授乳を続けている家庭は2〜3割程度であることが報告されています3

つまり、「2歳を過ぎても授乳している=医学的に問題がある」というわけではありません。一方で、日本では1〜1歳半で卒乳する家庭が多いため、2歳以降も授乳していると「うちだけ遅れているのでは」と不安になりやすい環境があるとも言えます。

1.3. どこからが『長期授乳』『卒乳が遅い』と言われるのか

研究や統計の世界でも、「○歳を過ぎたら長期授乳」という明確な定義はありません。ただし、疫学研究の多くは以下のような分類で分析していることが多くなっています。

  • 〜6か月、6〜12か月、12〜18か月、18〜24か月、24か月以上…といった区分で母乳期間を比較する
  • 特に、12か月以降・18か月以降の母乳継続と虫歯リスク、睡眠パターンなどを検討する研究が増えている6

実生活では、「卒乳が遅いかどうか」は次のようなポイントで考えると整理しやすくなります。

  • 子どもが1歳を過ぎても夜中に頻回授乳が続き、母子ともに睡眠不足になっていないか
  • 離乳食や幼児食がなかなか進まず、ほとんどを母乳でまかなっている状態が続いていないか
  • 母親が「本当はそろそろやめたい」と感じているのに、罪悪感やプレッシャーでやめられずに苦しい状態になっていないか

これらが当てはまる場合、「授乳期間が長い」こと自体よりも、生活リズムや心身のバランスが崩れていることが問題になっている可能性があります。次の章以降で、その影響をもう少し細かく見ていきます。

表1:今の授乳スタイルを振り返るセルフチェック
こんな授乳・卒乳状況はありませんか? 考えられる主な背景・原因カテゴリ
夜中に2〜3時間おきに授乳しており、母子ともにぐっすり眠れない 睡眠リズムの乱れ、授乳以外の寝かしつけ手段が少ない
離乳食はあまり食べず、お腹が空くとすぐおっぱいを求める 食事リズムの未確立、母乳への安心感が強い、食事環境の工夫不足
2歳を過ぎても外出先で頻繁に「おっぱい!」と要求されて困る 不安や緊張時のセルフケアが授乳に偏っている、親子ともに「落ち着く儀式」として定着
本当はやめたいのに、「やめたらかわいそう」「周りに責められそう」で決断できない 母親の罪悪感・プレッシャー、周囲の価値観、情報の多さによる混乱

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第2部:長期授乳が母子の体と心に与える影響

長く授乳を続けることは、免疫・栄養・愛着形成の面で多くのメリットがあります。一方で、夜間授乳の継続や、母乳への依存度が高い状態が続くと、虫歯リスクや睡眠不足、母親の心身への負担など、注意すべきポイントも出てきます。この章では、「メリットを生かしつつ、どこに注意すればよいか」という視点で整理していきます。

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2.1. 母乳がもたらす長期的なメリット

WHOや多くの研究では、母乳育児が感染症リスクの低下、将来の肥満や糖尿病リスクの低下、母親の乳がん・卵巣がんリスク低下など、多くの健康上のメリットをもたらすと報告されています1,7。2歳以降も授乳を続ける地域では、2歳半〜7歳ごろまで授乳が自然に続くケースも少なくありません7

心理面では、母乳育児は母子のスキンシップや安心感を高め、愛着形成を支える重要な時間と考えられています。ある研究では、母乳育児の継続や母子の密接な関わりが、2歳児の運動・視覚発達や自律行動の成熟と関連していたと報告されています4

つまり、「長く授乳を続ける=子どもの自立を妨げる」というシンプルな図式は、科学的には支持されていません。大切なのは、母子の生活全体のバランスです。

2.2. 夜間授乳と虫歯リスクの関係

母乳そのものは、栄養・免疫面で優れた食品ですが、歯が生え始め、離乳食が進んだ後も夜間の頻回授乳が続くと、虫歯(早期幼児う蝕:ECC)のリスクが高まる可能性が指摘されています。近年のメタ解析では、12か月を超える授乳や夜間授乳の継続が、虫歯リスクの上昇と関連するとする報告があります6,8,9

日本の厚生労働省が提供する情報でも、1〜1歳半ごろは卒乳の検討が増える時期であり、とくに就寝中の授乳は、唾液分泌の低下と相まって虫歯発生のリスクとなると注意喚起されています3。歯科・小児歯科の現場でも、夜間授乳の継続や仕上げ磨き不足が、むし歯リスクを高める生活習慣として挙げられています10,11

とはいえ、「母乳だから虫歯になる」という単純な話ではありません。虫歯の発生には、砂糖を含むおやつ・飲み物の摂取頻度、口腔ケアの習慣、家族からの虫歯菌の感染など、多くの要因が関わります。母乳育児を途中でやめるのではなく、 ・夜間授乳を徐々に減らす ・就寝前の歯磨き・仕上げ磨きを習慣化する ・ジュースや甘いお菓子の頻度を見直すといった工夫で、長期授乳と歯の健康を両立させることが可能です。

2.3. 母親の睡眠・体力・メンタルへの影響

長期間の授乳、とくに夜間の頻回授乳は、母親の睡眠不足や慢性的な疲労につながりやすくなります。睡眠不足が続くと、体力だけでなく、気分の落ち込み、不安感、集中力の低下など、メンタル面にも影響を与えることが知られています12

授乳中は、プロラクチンやオキシトシンといったホルモンが分泌され、心身を落ち着かせる働きがありますが、授乳回数が減る・卒乳するタイミングで、これらのホルモンが急に変動することも、気分の変化に影響すると考えられています。いくつかの研究や支援団体の報告では、授乳終了後に気分の落ち込みや不安、涙もろさなどが強くなる「断乳後うつ(post-weaning depression)」が一定数存在することが指摘されています5,13,14

また、授乳中のストレスやうつ症状が、オキシトシンの反応性と関連していたとする研究もあり、母乳育児とメンタルヘルスは双方向に影響しあうことが示唆されています15。つまり、

  • ストレスが強いと授乳がつらく感じやすくなる
  • 授乳の継続や終了に伴うホルモン変化が、気分に影響する

という、複雑な関係があると考えられます。「授乳しているのに幸せを感じられない」「やめたら急に気分が落ち込んだ」と感じたとしても、それはあなたの性格の問題ではなく、体の変化が関わっている可能性があるということを知っておくことが大切です。

2.4. 子どもの心と自立への影響

「2歳を過ぎて授乳していると、自立できないのでは?」「甘やかしすぎでは?」という声を耳にすることがあります。しかし、現時点で、長期授乳そのものが子どもの自立や発達を妨げるという強いエビデンスはありません。むしろ、母子の密接な関わりと適切なサポートが、運動発達や視覚の成熟、自律行動に良い影響を与えたとする報告もあります4

一方で、次のような状態が続く場合には、「授乳期間の長さ」よりも授乳以外の関わりの不足や、生活のメリハリのつけにくさが問題になっている可能性があります。

  • 不安になるたびに授乳で落ち着こうとし、他の遊びや言葉でのコミュニケーションに移りにくい
  • 保育園や外出先ではおっぱいがないと落ち着かず、活動に参加できない
  • 離乳食や幼児食を「おっぱいの前座」のように感じており、食事に興味が向きにくい

この場合、「授乳か、授乳しないか」の二択ではなく、「授乳に頼り過ぎない安心の与え方を増やしていく」ことが鍵になります。抱っこやスキンシップ、遊び・絵本・言葉で気持ちを受け止めることを意識していくことで、少しずつ「おっぱい以外でも安心できる経験」を増やしていけます。

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第3部:こんなときは専門家に相談を — 卒乳が難しい背景にあるもの

多くの場合、卒乳・断乳は家庭の工夫と時間の経過で自然に進んでいきます。しかし、中には母子の健康や発達の観点から、医療・専門職への相談が望ましいケースもあります。この章では、「どんなサインがあるときに相談を考えた方がよいか」を整理します。

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3.1. 母親の心身の不調が強いとき

次のような状態が続いている場合、卒乳のタイミングに関わらず、産科・心療内科・精神科などへの相談を検討してよいサインです。

  • ほとんど眠れず、日中も強い眠気と疲労で動けない
  • 授乳のたびに強い不安や嫌悪感、自己嫌悪に襲われる
  • 何をしても楽しく感じられず、涙が止まらない日が続く
  • 「自分なんていない方がいい」といった思いが浮かんでしまう

産後〜授乳期は、エストロゲンやプロゲステロン、プロラクチン、オキシトシンなどのホルモンが大きく変動し、それ自体が気分の不安定さや睡眠トラブルにつながることが知られています12,13,18。そこに育児の疲れや孤立感が重なると、産後うつや断乳後うつのような状態になることもあります。

「授乳をやめれば楽になるのでは」と考えて急に断乳することで、ホルモンの変化がさらに急激になり、かえって気分が不安定になるケースも報告されています5,14。辛いときは、一人で「授乳を続けるか・やめるか」を抱え込まず、自治体の保健センター、助産師外来、産婦人科、小児科、メンタルヘルスの専門機関などに早めに相談しましょう。

3.2. 子どもの発達や食事が心配なとき

次のような場合は、小児科や小児発達外来、栄養相談など、子どもの側からのチェックも検討すると安心です。

  • 1歳半〜2歳を過ぎても、ほとんど母乳でしか栄養を摂っていない
  • 体重増加が乏しい、または急激に増え過ぎている
  • 固形物を極端に嫌がる、飲み込みが極端に苦手など、食べ方そのものに強い困難がある
  • 虫歯が多く、治療やケアが追いつかない

これらは必ずしも「長期授乳のせい」ではなく、もともとの発達特性や嚥下の問題、生活リズム、食事内容といった複数の要因が関わっていることが多いと考えられます。必要に応じて歯科や小児歯科でのチェックも組み合わせると良いでしょう。

3.3. 家族や職場との板挟みでつらいとき

日本では、祖父母世代から「1歳になったらおっぱいはやめるもの」「職場復帰の前にきっちり断乳すべき」といった価値観を押し付けられ、母親が板挟みになるケースもあります。また、夜間授乳や搾乳で睡眠が削られる一方、日中は仕事や家事で休めず、心身ともに追い詰められてしまう人もいます。

こうした場合、卒乳のテクニックだけでなく、家族やパートナーと役割を話し合うこと、職場の制度(時短勤務・在宅勤務・休暇)を確認することも重要です。自治体の子育て相談、保健師、両立支援窓口などを活用し、「授乳を続けるか・やめるか」を自分だけに委ねない工夫も検討してみてください。

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第4部:今日から始める「やさしい卒乳」アクションプラン

ここからは、母子の負担をできるだけ減らしながら卒乳・断乳を進めていくための具体的なステップを紹介します。すべてを一度にやろうとするととても大変なので、「今夜から」「今週から」「数か月かけて」と、レベル別に考えるのがおすすめです。

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表2:卒乳アクションプラン(例)
ステップ アクション 具体例
Level 1:今夜からできること 授乳以外の「安心ルーティン」を1つ増やす 寝る前に同じ絵本を読む・同じ歌を歌う・30秒抱きしめて「おやすみの儀式」をつくる
Level 2:1〜2週間かけて取り組むこと 昼間の授乳回数を1回ずつ減らす おやつや水分、お散歩・遊びで気をそらし、決めた時間帯の授乳を「今日はナシ」にする
Level 3:1〜3か月かけて進めること 夜間授乳の回数を減らし、最後は「寝かしつけだけ」に絞る 最初の一度だけ授乳し、その後起きたときは抱っこやトントン、パートナーの対応に切り替えていく
Level 4:卒乳・断乳の最終ステップ 「いつまでにやめるか」の目安を親子で共有する 子どもの言葉がわかるようであれば、「○月のお誕生日頃には、おっぱいバイバイしようね」と話していく

4.1. 授乳記録をつけて「やめやすい授乳」から減らす

まず1週間ほど、授乳のタイミングをメモに取ってみましょう。「子どもが本当にお腹が空いている授乳」と「なんとなく寂しくてくっつきたい授乳」をなんとなく区別できるようになると、「最初に減らす授乳」が見えやすくなります。

  • 遊びの途中で少しだけ飲んですぐ離れるような授乳
  • 食事の直後なのに「なんとなく」欲しがる授乳

こうした「なくても困らなさそう」な授乳から、抱っこやおやつ・遊びなど別の方法に切り替えていくと、母子ともに負担が少なく済みます。

4.2. 夜間授乳は回数と時間を少しずつ減らす

虫歯リスクや母親の睡眠の観点からは、歯が生え、離乳食が進んできたら、少しずつ夜間授乳の回数を減らしていくことが推奨されています3,10,11。いきなり「今日から一切授乳なし」にするのは負担が大きいため、次のような段階を踏むのがおすすめです。

  • 寝る前の授乳以外の「夜間のつなぎ授乳」を1回ずつ減らす
  • 一度の授乳時間を短くし、徐々に「くわえるだけ→抱っこやトントン」に置き換える
  • パートナーに夜間の対応を交代してもらい、「おっぱいが見えない状況」をつくる

子どもにとっても、母親にとっても、「ゆっくりペースを変えていく方が楽」というケースが多いです。数日でうまくいかなくても、「この1か月で少し減ったかな?」という長い目線で見ると、変化が見えやすくなります。

4.3. 子どもの気持ちに言葉を添える

1歳半〜2歳ごろになると、子どもは言葉の理解が進んできています。「もうおっぱいはやめなさい」と一方的に伝えるよりも、「おっぱいはもうすぐバイバイだけど、その代わりにいっぱい抱っこしようね」といった形で、代わりの安心を約束する言葉がけが効果的です。

泣いて求めてきたときも、「飲ませる・拒否する」の二択ではなく、

  • 「今はおっぱいはおやすみだけど、ママの腕まくらでぎゅーしようね」
  • 「おっぱいの代わりに、お水とお布団とママのハグでねんねしようね」

といったように、気持ちを受け止めつつ、別の選択肢を提示することがポイントです。

4.4. 母親自身のケアも「卒乳準備」の一部

卒乳は子どもだけでなく、母親にとっても大きな節目です。「もう赤ちゃんじゃなくなるようで寂しい」「母乳をあげていない自分は母親として劣っているのでは」と感じる人も少なくありません。

そうした気持ちを抱くのは、とても自然なことです。信頼できる友人やパートナー、支援者に気持ちを話すことは、それだけで大きな支えになります。自治体の母親学級・両親学級、オンラインのピアサポートグループなども活用してみるとよいでしょう。

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第5部:受診の目安と相談先 — 一人で抱え込まないために

最後に、「どのようなサインがあれば医療機関や専門家に相談した方がよいか」「どの診療科・窓口を選べばよいか」をまとめます。授乳や卒乳にまつわる悩みは、恥ずかしいことでも、甘えでもありません。早めに相談することで、母子ともに楽になることがたくさんあります。

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5.1. すぐに相談・受診を検討したいサイン

  • 母親がほとんど眠れない・食べられない状態が続いている
  • 強い気分の落ち込みや不安、涙が止まらない状態が2週間以上続く
  • 子どもがほとんど母乳しか口にせず、体重増加が乏しい・極端に細い/太い
  • 子どもに多数の虫歯があり、痛みや食事の困難が出ている
  • 授乳中や卒乳前後に、母親が自分や子どもを傷つけてしまいそうな衝動に悩んでいる

これらのサインがある場合は、産婦人科、小児科、小児歯科、心療内科・精神科など、状況に合った医療機関への相談を早めに検討しましょう。緊急性が高いと感じる場合や、自分や子どもの安全が心配な場合には、ためらわず119番や救急相談窓口を利用してください。

5.2. 症状に応じた相談先の選び方

  • 母乳量や乳房トラブルで困っている:産婦人科、助産師外来、母乳外来など。
  • 子どもの体重や発達、離乳食の進み具合が心配:小児科、小児発達外来、栄養相談(保健センターなど)。
  • 虫歯や歯並びが心配、夜間授乳と歯の関係を相談したい:小児歯科、歯科。
  • 気分の落ち込みや不安、イライラがつらい:産婦人科(産後うつの相談も対応しているところもあります)、心療内科・精神科、自治体のメンタルヘルス相談窓口など。

5.3. 相談時に伝えておくと役立つ情報

  • 授乳の回数・時間帯(簡単なメモでOK)
  • 子どもの成長曲線(母子健康手帳)
  • 離乳食・幼児食で食べているものの例
  • 母親自身の睡眠時間や気分の変化(「いつごろから」「どんなタイミングで」つらくなるか)

こうした情報があると、医師や助産師、歯科医師、心理職などが、状況をより具体的にイメージしやすくなり、卒乳のペースやサポートの方向性を一緒に考えやすくなります。

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よくある質問

Q1: 2歳を過ぎても母乳を飲んでいるのはおかしいですか?

A1: 世界保健機関(WHO)は、生後6か月までは完全母乳、その後も2歳またはそれ以降まで授乳を続けることを推奨しており、2歳を過ぎて授乳を続けること自体は異常でも恥ずかしいことでもありません1。日本では1〜1歳半ごろに卒乳する家庭が多いため目立ちやすいだけで、科学的に「2歳を過ぎたら必ずやめるべき」というラインはありません。

ただし、夜間の頻回授乳で母子ともに極端な睡眠不足になっている、虫歯が増えてきている、母親が「本当はやめたいのにやめられなくてつらい」と感じている場合は、卒乳のステップを少しずつ考え始めてもよいサインです。

Q2: 長く授乳を続けると、子どもの自立が遅れますか?

A2: 現時点で、「長期授乳そのものが子どもの自立や発達を妨げる」とする強い科学的根拠はありません。むしろ、母子の密接な関わりや適度な母乳育児が、運動発達や視覚の成熟、自律行動に良い影響を与えたとする研究もあります4

一方で、「不安を感じるたびに授乳だけで落ち着こうとする」「授乳以外の遊びや対話の時間が少ない」といった場合には、授乳期間の長さよりも、関わりのバランスが課題になっている可能性があります。抱っこ・言葉・遊び・絵本など、授乳以外の安心の形を増やしていくことが、自立への土台づくりにつながります。

Q3: 夜間授乳を続けていると、必ず虫歯になりますか?

A3: 「夜間授乳=必ず虫歯になる」というわけではありませんが、歯が生え始めた後も夜間の頻回授乳が続くと、虫歯リスクが高くなると報告されています6,8,9,11。寝ている間は唾液の量が減るため、母乳やミルクに含まれる糖分が歯に長く残りやすくなることが理由の一つです。

虫歯リスクを下げるには、就寝前の仕上げ磨き・フロス、砂糖を含むおやつや飲み物の見直し、夜間授乳の回数を徐々に減らすなどの工夫が有効です。心配な場合は、小児歯科で早めにチェックしてもらうと安心です。

Q4: 断乳したら急に気分が落ち込んできました。これも異常ですか?

A4: 授乳をやめた後に、一時的に気分が落ち込んだり、涙もろくなったりすることは珍しくありません。プロラクチンやオキシトシンといった授乳に関わるホルモンが減少することで、気分に影響が出ると考えられています5,13,14

ただし、2週間以上強い落ち込みが続く、何をしても楽しくない、自分や子どもを傷つけてしまいそうで怖いといった状態がある場合は、産後うつや断乳後うつの可能性も含めて、産婦人科や心療内科・精神科などに早めに相談してみてください。あなた一人の「気の持ちよう」の問題ではなく、ホルモンや環境が影響している可能性があります。

Q5: 保育園入園までに必ず卒乳しなければいけませんか?

A5: 多くの保育園では、日中はコップやマグ、お箸やスプーンでの飲食を基本とするため、「園では母乳なし」で過ごすケースが一般的です。しかし、保育園に通いながら自宅では授乳を続ける家庭もあります。園によって方針が異なるため、まずは入園予定の園に確認してみると良いでしょう。

入園前に完全に卒乳できなくても、「昼間は食事とおやつで栄養をとり、夜だけ授乳する」「休日だけ授乳する」といった段階的な形も可能です。仕事・生活リズムとのバランスを見ながら、無理のないペースを話し合っていきましょう。

Q6: 母乳が好きで、こちらも卒乳が寂しくてやめられません。

A6: 母乳育児の時間を心地よく感じ、「終わりが近づくと寂しい」と思うのはとても自然なことです。その気持ちは、大切にしてかまいません。ただし、母親の体力や睡眠、仕事・家事との両立、子どもの歯や食事の状況も同時に見ていく必要があります。

「完全にゼロにする」のではなく、まずは夜間授乳を減らす、回数を減らすなど、生活への負担を軽くする方向で調整しつつ、「卒乳の時期はまたあらためて考える」という段階も選べます。信頼できる助産師や保健師に気持ちを話しながら、一緒にペースを決めていくのもおすすめです。

結論:この記事から持ち帰ってほしいこと

授乳をいつまで続けるか、いつ卒乳・断乳するかに「唯一の正解」はありません。世界保健機関や日本のガイドラインは、母乳育児を2歳またはそれ以降まで続けることのメリットを認めつつ、卒乳の時期は子どもの発達や家庭の事情、母親の気持ちを尊重して決めるべきとしています。

一方で、夜間の頻回授乳が続くことで虫歯リスクや睡眠不足が高まったり、母親の心身の負担が大きくなったりすることもあります。「卒乳が遅いこと」が問題なのではなく、今の授乳スタイルが母子にとってつらくなっていないかを丁寧に振り返ることが大切です。

今日からできる小さなステップとして、授乳の記録をつけて「減らしやすい授乳」を見つけること、夜間授乳を一回ずつ減らしていくこと、授乳以外のスキンシップや安心の形を増やしていくことから始めてみてください。そして、気分の落ち込みや不安が強いとき、子どもの発達や歯の状態が気になるときは、一人で抱え込まず専門家に相談してかまいません。

授乳も卒乳も、母子が安心して歩んでいくためのプロセスです。自分と子どものペースを大切にしながら、必要な情報やサポートを上手に使っていきましょう。

この記事の編集体制と情報の取り扱いについて

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参考文献

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