【科学的根拠に基づく】乳房の痛みの原因と危険なサインのすべて。乳がんとの関係と病院へ行くべき症状を徹底解説
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【科学的根拠に基づく】乳房の痛みの原因と危険なサインのすべて。乳がんとの関係と病院へ行くべき症状を徹底解説

乳房に「チクチク」とした痛みや、ズキズキとした張りを感じると、「もしかして乳がんではないか?」と、多くの方が強い不安に駆られます。そのお気持ちは、非常によく分かります。しかし、まず知っていただきたい最も重要な事実は、乳房の痛みが単独の症状である場合、それが乳がんの兆候であることは極めて稀であるということです13。実際に、乳房の痛みを訴えて医療機関を受診する方の9割以上は、がんとは関係のない良性の原因によるものです13。この記事は、JapaneseHealth.org編集部が、日本の主要な医学ガイドラインや最新の研究結果に基づき、乳房の痛みに関するあらゆる疑問や不安を解消するために作成しました。痛みの種類とその原因、自分でできる対処法、そして絶対に見逃してはならない「危険なサイン」まで、専門的な知見を分かりやすく解説します。

この記事の科学的根拠

この記事は、入力された研究報告書に明示的に引用されている、最高品質の医学的根拠にのみ基づいています。以下は、参照された実際の情報源と、提示された医学的ガイダンスとの直接的な関連性を含むリストです。

  • 日本乳癌学会 (JBCS): この記事における乳腺症の定義、乳がんの症状、および日本の診療ガイドラインに関する指針は、同学会が発行する「患者さんのための乳癌診療ガイドライン」に基づいています12
  • 国立がん研究センター (NCCJ): 日本国内の乳がんの統計データ(罹患率など)、症状、および一般的な情報に関する記述は、同センターが提供するがん情報サービスのデータを基にしています34
  • American Cancer Society (ACS): 乳房の痛みの一般的な原因、症状の分類、および炎症性乳がんに関する解説の多くは、米国対がん協会が公開している情報を参考にしています56
  • PubMed/PMC (米国国立医学図書館): 疼痛管理、各種治療法の有効性、および乳房痛(Mastalgia)の系統的レビューに関する医学的詳細の多くは、PubMedおよびPMCに掲載された査読済み学術論文に基づいています78
  • 厚生労働省 (MHLW): 日本におけるがん検診の受診率に関するデータは、厚生労働省の統計情報を引用しています9

要点まとめ

  • 乳房の痛みの9割以上は、ホルモンバランスの変化や良性の乳腺疾患が原因であり、乳がんが直接の原因であることは稀です13
  • 痛みは「周期的」と「非周期的」に大別され、原因を特定する上で重要な手がかりとなります。生理前に悪化する痛みは周期的なものがほとんどです10
  • しこり、皮膚のひきつれ・くぼみ、乳頭からの異常な分泌物など、痛みに加えて他の「危険なサイン」がある場合は、速やかに専門医の診察を受ける必要があります11
  • 特に、乳房全体が急に赤く腫れ、熱感を伴う場合は、進行の速い「炎症性乳がん」の可能性があり、直ちに乳腺外科を受診すべきです6
  • 痛みの緩和には、サポート力の高いブラジャーの着用や、市販の消炎鎮痛薬(特に塗り薬)が有効とされています。一方、サプリメントの効果には確固たる科学的根拠がありません7
  • 日本で乳房の症状を相談する際は、第一選択として「乳腺外科」を受診することが推奨されます12

はじめに:乳房の痛みの9割以上は「がん」ではありません

乳房に痛みを感じると、多くの方が深刻な病気、特に乳がんを心配されます。しかし、医学的な観点から見ると、痛みだけが症状である場合、その背景にがんが隠れている可能性は非常に低いのです。複数の研究が示しているように、乳房の痛みを主訴としてクリニックを訪れる女性のうち、実際に乳がんと診断されるのは1%から7%程度に過ぎません7。初期の乳がんの多くは、痛みではなく「しこり」として発見されることがほとんどです5。この事実を知ることは、不必要な不安を和らげるための第一歩です。本稿では、その上で、どのような痛みがなぜ起こるのか、そしてどのような場合に注意が必要なのかを科学的根拠に基づいて詳しく解説していきます。

あなたの痛みはどのタイプ?周期的な痛みと非周期的な痛み

乳房の痛みを理解する上で、まず自分の痛みが「周期的」か「非周期的」かを見極めることが非常に重要です。これは、医師が診断を下す際の最も基本的な分類であり、原因を探る大きな手がかりとなります。

表1:周期的な痛みと非周期的な痛みの比較
特徴 周期的乳房痛 (Cyclical Mastalgia) 非周期的乳房痛 (Non-cyclical Mastalgia)
関連性 月経周期と密接に関連 月経周期とは無関係
原因 主にホルモンバランスの変動(エストロゲン、プロゲステロン)5 嚢胞、感染症、外傷、乳腺以外の原因など解剖学的な要因が多い10
痛みの時期 排卵後から生理前にかけて悪化し、生理開始と共に軽快する10 持続的または断続的にいつでも起こる
痛みの性質 鈍い痛み、重苦しさ、張り、圧痛。「チクチク」と感じることも13 鋭い痛み、焼けるような痛み、刺すような痛み13
場所 両側に多く、特に乳房の上外側。脇の下に広がることも7 片側に多く、特定の場所に限局していることが多い5
頻度 最も一般的(乳房痛全体の約3分の2)10 比較的少ない(乳房痛全体の約3分の1)7

また、これらとは別に、痛みが実際には乳腺組織からではなく、胸壁の筋肉や肋骨の軟骨(肋軟骨炎など)から来ている「乳腺外の痛み(Extramammary Pain)」の可能性も考慮されます7

【原因別】よくある乳房の痛みの正体

痛みの大部分は、生命を脅かすことのない良性の原因から生じます。ここでは、その代表的なものを詳しく見ていきましょう。

原因1:ホルモンバランスの変化(生理・妊娠・更年期)

これが乳房痛の最大の原因です14。女性の体は、一生を通じてホルモンの波に影響を受け続けます。

  • 月経周期とPMS(月経前症候群): 生理前になると、女性ホルモンであるエストロゲンとプロゲステロンの分泌が活発になります。これにより、乳腺の組織(乳管や小葉)が発達・増殖し、水分を保持してむくんだ状態になります10。この物理的な変化が、胸の張りや「チクチク」とした痛み、圧痛を引き起こすのです。これは病的な状態ではなく、正常な生理現象の一部です。
  • 妊娠と授乳: 妊娠初期にはホルモンが急激に増加するため、乳房の張りや痛みは最も早い妊娠のサインの一つです15。出産後は、母乳が作られることによる張りや、乳管が詰まることによる乳腺炎が痛みの原因となることがあります5
  • ホルモン剤の使用: 経口避妊薬(ピル)や更年期障害に対するホルモン補充療法(HRT)は、体内のホルモンレベルに直接作用するため、周期的な乳房痛と同様の症状を引き起こすことがあります5

原因2:乳腺症など良性の変化

「乳腺症」という言葉を聞いたことがあるかもしれません。これは日本人女性にとって非常に関わりの深い状態です。

  • 乳腺症 (Mastopathy / Fibrocystic Changes): 日本乳癌学会によると、乳腺症は特定の病気を指す診断名ではなく、ホルモンバランスの乱れによって生じる乳腺の様々な良性変化の総称です16。30代から40代の女性に最も多く見られ、痛みや張り、小さなしこり(嚢胞や線維化)などを引き起こします。最も重要な点は、乳腺症は病気ではなく、それ自体が乳がんのリスクを直接高めるものではないということです17。症状は月経周期に伴って変動し、閉経すると自然に治まることがほとんどです。多くの場合、がんではないことを確認した上での「安心」が最良の治療となります18
  • 嚢胞 (Cyst): 液体がたまった袋状のしこりで、非常によく見られます。大きくなると周囲の組織を圧迫して、局所的な痛みを引き起こすことがあります10
  • 線維腺腫 (Fibroadenoma): 若い女性に最も多い良性のしこりです。通常は痛みを伴いませんが、サイズによっては違和感の原因となることがあります3

原因3:乳腺炎などの感染症

乳腺炎は、乳腺組織が炎症を起こした状態で、多くは細菌感染を伴います5。授乳期に起こる「うっ滞性乳腺炎」がよく知られていますが、授乳期でなくても発症することがあります。痛み、赤み、熱感、腫れといった典型的な炎症の兆候が見られ、しばしば発熱を伴います。抗生物質による治療が必要となるため、これらの症状がある場合は医療機関を受診してください。

原因4:生活習慣や下着の問題

見過ごされがちですが、日常生活の中に痛みの原因が潜んでいることも少なくありません。

  • サイズの合わないブラジャー: 特にサポート力の低いブラジャーは、乳房を支えるクーパー靭帯に負担をかけ、一日中、あるいは運動時に鈍い痛みを引き起こす一般的な原因です519
  • 食事やストレス: カフェインや脂肪の多い食事が乳房痛に関連するという報告もありますが、科学的な証拠はまだ一貫しておらず、十分ではありません7。しかし、精神的なストレスがホルモンバランスに影響を与え、痛みを増強させる可能性は指摘されています13

危険なサインを見逃さないで!病院へ行くべき症状チェックリスト

ここまで、乳房の痛みの多くが良性であることを強調してきましたが、ごく稀に重大な病気のサインである可能性もゼロではありません。特に、痛み以外の症状を伴う場合は注意が必要です。以下の「危険なサイン(レッドフラグ)」に一つでも当てはまる場合は、自己判断せず、速やかに乳腺外科を受診してください。

  • 新しいしこりや硬い部分: 乳房や脇の下に、これまでなかったしこりや硬い部分を触れる場合。特に、月経が終わっても消えないものは注意が必要です1
  • 皮膚の変化(くぼみ、ひきつれ): 皮膚の一部がえくぼのようにへこんだり、ひきつれたりする場合。これは、皮膚の下にある腫瘍が組織を引っ張っているサインかもしれません11
  • 皮膚の変化(赤み、腫れ、ただれ): 皮膚が赤くなったり、厚く硬くなったり、オレンジの皮のように毛穴が目立つ(peau d’orange)状態になったりする場合6
  • 乳頭の変化: これまで正常だった乳頭が陥没したり、向きが変わったりする場合。また、乳頭や乳輪にただれや湿疹ができて治らない場合も注意が必要です116
  • 乳頭からの異常な分泌物: 授乳期でもないのに、乳頭から分泌物が出ること。特に、血液が混じったもの(血性)や、透明な漿液性の分泌物が、片方の乳房の特定の乳管から自然に出てくる場合は、精密検査が必要です20
  • 乳房の形や大きさの変化: 左右の乳房の形や大きさに明らかな変化が見られる場合6
  • 持続的で局所的な痛み: 月経周期とは関係なく、特定の場所だけが持続的に痛む場合5

【最重要】痛み・赤み・腫れを伴う「炎症性乳がん」とは

数ある乳がんの中でも、特に注意が必要なのが「炎症性乳がん(Inflammatory Breast Cancer, IBC)」です。これは非常に稀(全乳がんの1~5%)ですが、進行が極めて速く、非常に悪性度が高いがんです6。IBCの最大の問題点は、その症状が一般的な乳腺炎と酷似しているため、診断が遅れがちになることです。
IBCの典型的な症状は以下の通りです621

  • 明確なしこりを触れないことが多い。
  • 乳房の広範囲(3分の1以上)が赤く腫れあがり、熱っぽく感じる。
  • 皮膚が厚くなり、オレンジの皮(peau d’orange)のように見える。
  • 痛みやかゆみを伴うことがある。
  • 症状が数週間から数ヶ月という短期間で急速に進行する。

この症状の類似性から、最初は乳腺炎と診断され、抗生物質が処方されることがあります。しかし、ここが運命の分かれ道です。もし、抗生物質を7日から10日間服用しても症状が明らかに改善しない場合は、決して自己判断で様子を見続けず、直ちに再度医師の診察を受けてください6。これは、IBCの可能性を否定するための、命を守る上で極めて重要な行動指針です。

痛みを和らげるために自分でできること【エビデンスに基づく対処法】

がんではないと分かっても、痛みが日常生活の質を下げることは事実です。ここでは、科学的根拠に基づいたセルフケアの方法をご紹介します。

  1. サポート力の高いブラジャーを着用する: これは最も基本的かつ効果的な対策の一つです。専門家は、日中はフィット感の良いサポートブラを、夜間や痛みが強い時はソフトなスポーツブラを着用することを推奨しています19。乳房の揺れを抑えることで、クーパー靭帯への負担が軽減され、痛みが和らぎます。
  2. 温める(温罨法): 痛む部分を温かいタオルやカイロで温めると、血行が良くなり、筋肉の緊張がほぐれて痛みが緩和されることがあります22
  3. 市販の消炎鎮痛薬を使用する: 痛みが中程度以上の場合、アセトアミノフェンや、イブプロフェン、ナプロキセンなどの非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)の内服が有効です15
  4. 消炎鎮痛薬の塗り薬(外用薬)を試す: 多くのガイドラインでは、内服薬よりも先に、ジクロフェナクなどのNSAIDsを含有するゲルやクリームを試すことが推奨されています7。これは、有効成分が直接痛む場所に作用し、内服薬に比べて胃腸障害などの全身性の副作用が少ないためです。

サプリメントに関する注意点

月見草オイル(Evening Primrose Oil)やビタミンEなどのサプリメントが乳房痛に良いという話を聞いたことがあるかもしれません。しかし、現時点では、これらのサプリメントが痛みを和らげるという確固たる科学的証拠は確立されていません7。複数の信頼性の高い研究で、その効果は偽薬(プラセボ)と大差ないことが示されており、英国では乳房痛に対する月見草オイルの医薬品としての認可が取り消されています8。不確かな情報に頼る前に、まずは上記のエビデンスに基づいた対策を試すことが重要です。

日本での受診ガイド:何科に行けばいい?費用は?

いざ病院へ行こうと決めたとき、次に浮かぶのが「何科に行けばいいのか?」「費用はどれくらいかかるのか?」という現実的な疑問です。日本の医療システムに即して解説します。

どの診療科を受診すべきか?

乳房に関する症状で医療機関を受診する場合、第一選択は「乳腺外科(にゅうせんげか)」です12。乳腺外科は、乳房の病気の診断から治療までを専門とする科です。産婦人科でも初期の診察は可能ですが、マンモグラフィなどの専門的な検査機器がない場合も多く、最終的に乳腺外科へ紹介されることが一般的です12。迷った場合は、事前に電話で「乳腺の診察が可能か」を確認すると良いでしょう23

日本の乳がんの現状と検診の重要性

日本において、乳がんは女性が最もかかりやすいがんであり、9人に1人が一生のうちに罹患すると言われています4。罹患率は30代後半から上昇し始め、40代後半から60代にかけてピークを迎えます4

表2:日本人女性の年齢階級別乳がん罹患率(2021年データ)
年齢階級 罹患率(人口10万人あたり)
35-39歳 86.8
40-44歳 147.2
45-49歳 199.8
50-54歳 230.1
55-59歳 246.7
60-64歳 256.6
65-69歳 267.0
出典: 国立がん研究センターがん情報サービス「がん統計」4

このように罹患率が高いにもかかわらず、日本の乳がん検診(40歳以上対象)の受診率は2022年時点で約47.4%と、欧米諸国(70%以上)に比べて低い水準にとどまっています249。このことは、定期的な検診だけでなく、日頃から自分の乳房の状態に関心を持つ「ブレスト・アウェアネス」と、異常を感じた際に速やかに受診することの重要性を浮き彫りにしています。

費用と健康保険の適用

費用に関する心配は、受診をためらう大きな理由の一つです。日本の健康保険制度では、以下のようなルールになっています。

  • 症状がある場合(保険診療): 痛み、しこりなど、何らかの自覚症状があって受診する場合は、健康保険が適用される「保険診療」となります。診察、超音波検査、マンモグラフィ、さらには必要に応じて行われる生検(組織検査)まで、費用の自己負担は原則3割です25
  • 症状がない場合(自費診療): 特に症状はなく、健康診断として検査を受けたい場合は、保険適用外の「自費診療」となります。ただし、多くの自治体では安価な費用で受けられる「市民検診」の制度があります25
表3:日本における乳腺外科受診の費用目安
状況 診療区分 自己負担額(3割負担)の目安
症状があり受診
(痛み、しこり等)
保険診療 診察+超音波+マンモグラフィ:約3,500円~9,000円
(生検が必要な場合は追加で約1,000円~4,000円)
症状がなく検診目的で受診 自費診療 / 市民検診 自費の場合:約7,000円~20,000円
市民検診の場合:無料~約3,000円
注:費用は医療機関により異なります。あくまで一般的な目安です。26

よくある質問

Q1: 乳房の痛みは、常に乳がんのサインですか?
A1: いいえ、極めて稀です。乳房の痛みの9割以上は、ホルモンバランスの変化や乳腺症といった良性の原因によるものです5。初期の乳がんは痛みを伴わないことの方がはるかに多いです。ただし、痛みが持続する場合や、しこりなど他の症状を伴う場合は、必ず専門医に相談してください。
Q2: 「乳腺症」と診断されました。治療は必要ですか?
A2: 乳腺症は病気ではなく、体質的な変化と捉えられています。そのため、それ自体を「治療」するというよりは、症状を和らげる対症療法が中心となります。最も重要なのは、医師の診察によって「がんではない」ことを確認し、安心することです18。痛みが強い場合は、痛み止めの処方や生活習慣の指導が行われることがあります。定期的な経過観察は推奨されます。
Q3: 自分で乳房をチェック(自己検診)するのはいつ、どのように行えばよいですか?
A3: 自己検診は、月に1回、生理が終わってから1週間後くらいの乳房が最も柔らかい時期に行うのが最適です。鏡の前で乳房の形、皮膚、乳頭の変化を目で見て確認し、その後、指の腹を使って、乳房全体と脇の下を優しく、しかし少し圧をかけるようにして、しこりや硬い部分がないかを触って確かめます。入浴時に石鹸の泡がついた手で行うと、滑りが良くなり分かりやすいです。
Q4: 授乳中に胸が痛くなりました。どうすればよいですか?
A4: 授乳中の痛みは、母乳が溜まって張っていることや、乳管が詰まる「うっ滞性乳腺炎」が原因のことが多いです。乳房が赤く腫れて熱を持ち、発熱がある場合は乳腺炎の可能性が高いので、産婦人科または乳腺外科を受診してください27。抗生物質による治療が必要になる場合があります。

結論

乳房の痛みは、多くの女性が経験する非常に一般的な症状であり、そのほとんどは心配のない良性のものです。しかし、その痛みは体からの重要なサインでもあります。この記事を通じてお伝えしたかった最も大切なことは、不必要な不安を抱えず、しかし警戒を怠らない、というバランスの取れた知識を持つことです。
あなたの体を守るために、以下の3点を心に留めてください。

  1. 痛みの多くは良性であると理解し、冷静になること。特に月経周期と連動する痛みは、ホルモンの影響である可能性が高いです。
  2. しこりや皮膚の変化など、「危険なサイン」を見逃さないこと。特に、急激な赤みや腫れを伴う炎症性乳がんの症状は、知識として知っておくことが早期発見に繋がります。
  3. どんなに些細なことでも、不安や疑問があれば、決してためらわずに専門家(乳腺外科)に相談すること。専門家による「大丈夫ですよ」という一言が、何よりの安心材料になります。

ご自身の体の変化に日頃から関心を寄せ、定期的な自己検診と自治体が推奨する乳がん検診を実践することが、未来のあなた自身を守るための最も確実な方法です。

免責事項
本記事は情報提供のみを目的としており、専門的な医学的アドバイスを構成するものではありません。健康上の懸念がある場合、またはご自身の健康や治療に関する決定を下す前には、必ず資格のある医療専門家にご相談ください。

参考文献

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