【科学的根拠に基づく】顔のかゆみ、その原因は?皮膚科専門医が教える効果的な対策法を徹底解説
皮膚科疾患

【科学的根拠に基づく】顔のかゆみ、その原因は?皮膚科専門医が教える効果的な対策法を徹底解説

顔のかゆみは、単なる不快な感覚ではありません。それは、生活の質(QOL)を著しく低下させる可能性のある、複雑な医学的症状です。このかゆみは睡眠や集中力を妨げ、精神的な健康にも影響を及ぼすことがあります9。社会活動における困難を引き起こし、うつ病の罹患率を高めることさえ報告されています10。本記事は、最新の科学的根拠と日本皮膚科学会の診療ガイドラインに基づき、皆様がかゆみの根本原因を理解し、長期的な解決策を見出すための一助となる、包括的な手引きです。
かゆみを些細な悩み事としてではなく、深刻な医学的問題として捉えることが、効果的な治療法を見つけるための第一歩です。日本皮膚科学会によるガイドラインは、第一線の専門家たちによって編纂されており、最高水準の治療基準を示すものです。これにより、治療法が効果的であると同時に安全であることが保証されます11。盤石な科学的根拠に基づき、体系的に問題に取り組むことで、私たちはかゆみの悪循環から抜け出し、健やかな皮膚を取り戻し、生活の質を向上させる道筋を見つけることができるのです。

この記事の科学的根拠

この記事は、提供された研究報告書に明示的に引用されている最高品質の医学的根拠にのみ基づいています。以下は、参照された実際の情報源と、提示された医学的指導との直接的な関連性を含むリストです。

  • 日本皮膚科学会 各種診療ガイドライン: 本記事におけるアトピー性皮膚炎611、接触皮膚炎7、蕁麻疹8の診断、治療、管理に関する主要な推奨事項は、同学会が発行した各診療ガイドラインに準拠しています。これらは日本の臨床現場における標準治療の基盤です。
  • 国際的な医学研究論文: かゆみの神経生物学的機序18、アトピー性皮膚炎の病態生理19、全身性疾患に伴うそう痒症9など、より深い科学的理解を提供するために、PubMed Central (PMC)などで公開されている査読付き学術論文を情報源としています。

要点まとめ

  • 顔のかゆみの主な原因は、乾燥、汗、物理的刺激、紫外線、そして花粉やハウスダストなどのアレルゲンです。これらは皮膚のバリア機能を低下させ、かゆみを引き起こします。
  • かゆみの背景には、アトピー性皮膚炎、接触皮膚炎(かぶれ)、蕁麻疹(じんましん)などの皮膚疾患が隠れていることが多く、それぞれ治療法が異なるため正確な診断が不可欠です。
  • 治療の基本は、皮膚のバリア機能を回復させる「スキンケア」、炎症を抑える「抗炎症外用薬」、そして原因物質を避ける「原因除去」の三本柱です。
  • 市販薬(OTC医薬品)は症状と使用部位に応じて慎重に選ぶべきです。特に顔には、効果が穏やかなステロイド薬から試すことが推奨されます。1週間以上改善しない場合は、速やかに皮膚科専門医を受診してください。

なぜ顔はかゆくなるのか?一般的な原因と「かゆみ」のメカニズム

顔のかゆみに効果的に対処するためには、まず日常生活に潜む原因と、かゆみという感覚の背後にある複雑な生物学的仕組みを理解することが重要です。

日常生活に潜む5大原因

顔の皮膚は非常にデリケートで、常に外部環境に晒されているため、様々な要因の影響を受けやすい部位です。以下に、顔のかゆみを引き起こす最も一般的な5つの原因を挙げます。

  • 乾燥: 最も一般的な原因です。皮膚の水分や脂質が不足すると、皮膚のバリア機能が低下し、外部からの刺激に対して脆弱になります12。この状態は、空気が乾燥する秋や冬、あるいはエアコンの効いた環境に長時間いる場合に特に悪化します12
  • : 汗に含まれる塩分やアンモニアは、皮膚への刺激物として作用することがあります13。汗を長時間皮膚の上に放置すると、かゆみを引き起こすだけでなく、汗腺が詰まって「あせも」の原因となることもあります14
  • 物理的刺激: タオル、衣類、マスク、さらには髪の毛による摩擦も、特に皮膚のバリア機能が弱っている時にはかゆみの原因となり得ます12。掻く行為自体が深刻な物理的刺激となり、かゆみを悪化させる悪循環を生み出します。
  • 紫外線: 日光への曝露は、炎症を引き起こし、既存のかゆみを悪化させる直接的な刺激因子です12
  • アレルゲン: 花粉、ハウスダスト、環境中の特定の化学物質などが顔の皮膚に付着し、アレルギー反応を引き起こすことがあります13。特に春に多く見られる花粉皮膚炎がその典型例です14

かゆみの科学:皮膚で何が起きているのか

かゆみという感覚は、単純な現象ではありません。それは、免疫細胞、神経、そして化学伝達物質が関与する、皮膚内で起こる一連の複雑な生化学反応の結果です。
かゆみと掻破の悪循環: これは、慢性的な皮膚疾患を理解する上で中心的な概念です。最初のかゆみが掻くという行為を誘発します。掻くことは、痛みの信号を活性化させ、一時的にかゆみの信号を上回るため、一見するとかゆみが和らいだように感じられます。しかし、この掻く行為そのものが皮膚のバリア機能をさらに破壊します16。この破壊が炎症を引き起こし、さらなるかゆみ誘発物質の放出につながり、より激しく、より広範囲のかゆみへと発展する、断ち切り難い悪循環を形成するのです17
主要な伝達物質 – ヒスタミンとその先へ: すべてのかゆみが同じではないという発見は、医学における重要な進歩の一つです。これにより、なぜある種のかゆみには特定の薬が効き、他の種類のかゆみには無効なのかが説明できます。

  • ヒスタミン: これは「古典的」なかゆみ伝達物質で、蕁麻疹や虫刺されのような急性のアレルギー反応において、肥満細胞から放出されます。ヒスタミンは、赤み、腫れ、かゆみといったおなじみの症状を引き起こします8。抗ヒスタミン薬は、この物質の作用を阻害することで効果を発揮します。
  • 非ヒスタミン経路: 特にアトピー性皮膚炎のような慢性疾患における多くのかゆみは、主にヒスタミンによって引き起こされるわけではありません。これが、多くのアトピー性皮膚炎患者が内服の抗ヒスタミン薬だけでは十分な改善を得られない理由です。他の「犯人」には以下のようなものがあります。
    • サイトカイン: TSLPやインターロイキン31(IL-31)といった重要な「かゆみ信号」は、アトピー性皮膚炎に特徴的です。これらは炎症過程で放出され、かゆみを引き起こす知覚神経線維を直接活性化する能力があります18
    • プロテアーゼ: 肥満細胞から放出される酵素が、神経上のPAR-2受容体を活性化させ、ヒスタミンとは無関係のかゆみ感覚を引き起こすことがあります19
    • 神経ペプチド: 神経自体も「神経原性炎症」を引き起こす物質を放出し、かゆみの悪循環を維持・増幅させることがあります17

現代医学では、かゆみは痛みや触覚と同様に、専用の神経線維(C線維)によって脳へ伝達される独立した感覚であることが特定されています18。ヒスタミン性のかゆみと非ヒスタミン性のかゆみの信号伝達経路の違いを明確に理解することが、個々の疾患に対して適切な治療法を選択する鍵となります。


症状から探る、かゆみの背景にある皮膚疾患【専門ガイドラインに基づく解説】

このセクションは本記事の核心部分であり、顔のかゆみを引き起こす最も一般的な皮膚疾患について、臨床ガイドラインに基づいた深い分析を提供します。効果的な治療とは、漠然と「かゆみを治療する」のではなく、かゆみの原因となっている根本的な疾患を治療することです。

アトピー性皮膚炎

疾患概要: アトピー性皮膚炎は、激しいそう痒(かゆみ)と湿疹を特徴とする、慢性的かつ再発性の炎症性皮膚疾患です。多くは幼少期に発症しますが、成人期まで続くこともあります6。日本におけるアトピー性皮膚炎の患者数は増加傾向にあります21
診断基準(日本皮膚科学会ガイドラインより): 診断は3つの基本項目に基づきます。1) そう痒、2) 特徴的な皮疹と分布(顔では額、目の周り、口の周りなど)、そして 3) 慢性的・反復性の経過です6。アトピー素因(家族歴や既往歴)も参考にされます6
病態生理: 角層の異常やバリアー機能異常といった皮膚の脆弱性をもたらす遺伝的要因と、様々な刺激に対する過剰な免疫反応が組み合わさって発症します16
治療目標: 症状がない、またはあっても軽微で、日常生活に支障がなく、薬物療法をあまり必要としない状態に到達し、それを維持することです11
ガイドラインに基づく治療戦略:

  1. スキンケア: 治療における絶対的な基盤です。皮膚バリアを修復し維持するため、優しい洗浄と日々の保湿が必須となります16
  2. 抗炎症外用薬: 急な悪化(フレア)をコントロールするための中心的な治療法です。
    • ステロイド外用薬: 第一選択薬です。重要なのは、ステロイドの強さのランク(最強から最弱まで)を理解することです。原則として、炎症を迅速に抑えるのに十分な強さのランクを使用し、その後、徐々に使用量とランクを下げていきます(ステップダウン)24。顔には通常、「ミディアム」または「ウィーク」クラスのものが使用されます24。正確な塗布量を測るための実用的な方法として、フィンガーティップユニット(FTU)が推奨されています24
    • タクロリムス軟膏(プロトピック®): ステロイドの代替または補完として重要な選択肢です。特に顔のようなデリケートな部位に適しており、皮膚萎縮のリスクがないためです16。使用初期に灼熱感やほてりを感じることがありますが、皮膚が改善するにつれて軽減していきます16
    • デルゴシチニブ軟膏(コレクチム®): 炎症をコントロールするための、新しい非ステロイド性のJAK阻害外用薬です11
  3. プロアクティブ療法: 近年のガイドラインにおける重要な概念です。一度寛解状態になり、見た目には皮膚が治ったように見えても、頻繁に再発する部位に定期的(例:週2~3回)にタクロリムス軟膏などを塗布し続けます。目的は、症状が出てから治療するのではなく、将来の再燃そのものを予防することです11
  4. 全身療法(重症例向け): かゆみを抑えるために経口抗ヒスタミン薬が使用されることがあります16。中等症から重症の患者には、生物学的製剤や経口JAK阻害薬といった新しい全身療法が飛躍的な進歩をもたらしています11

接触皮膚炎(かぶれ)

疾患概要: 皮膚が刺激物質やアレルギー物質と接触することで生じる湿疹の一種です7
顔における一般的な原因(JDAガイドラインより): 化粧品(スキンケア製品、メイクアップ)、香水、防腐剤、染髪剤(PPD)、金属(眼鏡フレームのニッケル)、そして空気中のアレルゲンなどが挙げられます7
診断: 診断の鍵は、詳細な病歴聴取と、原因アレルゲンを特定するためのパッチテストです7
治療: 特定された原因物質との接触を避けること(原因除去)が、治療の絶対的な基本です7。急性の増悪に対しては、ステロイド外用薬を用いて炎症をコントロールします7

蕁麻疹と血管性浮腫

疾患概要: 一過性で、かゆみを伴う膨疹(蚊に刺されたような盛り上がり)が特徴で、通常24時間以内に跡形もなく消退します8。この腫れが皮膚のより深い層で起こり、唇やまぶたなどが腫れ上がる場合、それを血管性浮腫と呼びます8
病態生理: 主に肥満細胞からのヒスタミン放出によって引き起こされるプロセスです8
治療(JDAガイドラインより): 第二世代の経口抗ヒスタミン薬を定期的に服用し、発作を予防することが治療の主体です8。外用薬は症状緩和(冷却など)のための補助的な役割に過ぎず、中心的な治療法ではありません8。通常の蕁麻疹に対してステロイドは第一選択とはなりません。
アトピー性皮膚炎・接触皮膚炎と蕁麻疹の治療戦略におけるこの明確な違いは、「治療は症状そのものではなく、その根底にある病態生理を標的としなければならない」という重要な医学的原則を示しています。

その他の皮膚疾患

  • 花粉皮膚炎: 皮膚に付着した花粉に対するアレルギー反応で、特に春季に顔や首などの露出部に赤みとかゆみを引き起こします14。しばしばアトピー性皮膚炎に合併します31。管理には、アレルゲンへの曝露を避けること(マスク、眼鏡の着用、帰宅後の洗顔)と、アトピー性皮膚炎に準じた治療が含まれます14
  • 脂漏性皮膚炎: Tゾーン、眉、鼻翼の両側など、皮脂の多い部位に影響します。皮膚の常在菌であるマラセチア属真菌に対する炎症反応が原因とされています。症状には、脂っぽい鱗屑、赤み、かゆみなどがあります14

今日からできる!顔のかゆみを抑える徹底セルフケア

日々の正しいスキンケアと生活習慣を実践することは、かゆみをコントロールし、より健康な肌を築くために不可欠な要素です。

正しいスキンケアの基本:洗顔と保湿

  • 優しい洗顔:
    • お湯の温度はぬるま湯(約32~34℃)にし、熱いお湯は皮脂を取り過ぎてしまうため避けます12
    • 低刺激性の洗顔料(敏感肌用)を使用し、しっかりと泡立て、その泡で顔を包み込むように洗います。指で直接こすらず、摩擦を最小限に抑えましょう12
    • 洗顔料のすすぎ残しは刺激の原因になるため、丁寧に洗い流します15
    • 柔らかいタオルで優しく水分を吸い取るように拭き、絶対にこすらないでください12
  • 効果的な保湿:
    • 洗顔後はすぐに(理想は5分以内に)保湿剤を塗り、水分を「閉じ込める」ことが重要です12
    • 「与える」と「守る」の原則を適用します。まず化粧水で水分を補給し、その後、乳液やクリームで「蓋」をして水分の蒸発を防ぎます12
    • 注目すべき主な成分は、皮膚バリアを補うセラミドや、保湿と抗炎症作用を持つヘパリン類似物質です14
    • こすらずに、手のひらで優しく押さえるようにしてなじませます12

生活習慣の見直しで、かゆみにくい肌へ

  • 睡眠: 十分な質の良い睡眠を心がけましょう。睡眠不足は皮膚バリアの修復・再生機能を低下させます12。規則正しい睡眠スケジュールを確立し、就寝前のカフェインや電子機器の使用を避けるなど、良い睡眠衛生を実践しましょう12
  • 食事: ビタミンやタンパク質が豊富な、バランスの取れた食事が皮膚の健康に不可欠です12。香辛料の多い食事やアルコールは血管を拡張させ、かゆみを悪化させる可能性があるため、避けるか控えめにしましょう15
  • ストレス管理: ストレスはかゆみを悪化させる既知の要因です6。軽い運動やストレッチ、趣味の時間など、自分に合ったストレス軽減法を取り入れましょう12
  • 環境整備: 加湿器を使用して、室内の湿度を50~60%程度に保ちましょう12。窓を閉める、空気清浄機を使用する、寝具をこまめに洗濯するなどして、花粉やほこりといった既知のアレルゲンとの接触を最小限に抑えましょう15

市販薬(OTC医薬品)の上手な選び方と使い方

このセクションは、薬局で適切な製品を選ぶための実用的なガイドです。安全性と適合性に重点を置いて解説します。

ステロイド外用薬:ランクと部位別の選び方

ランクの理解: ステロイドは5段階の強さに分類されますが、市販薬として入手可能なのは「ウィーク」「ミディアム」「ストロング」の3段階です33
顔への使用は安全第一: 顔の皮膚は薄く、薬の吸収率が高い部位です。そのため、顔に使用する場合は、まず「ウィーク」ランクのステロイドから始めるべきです。「ミディアム」ランクは炎症の強い部分に短期間使用することができますが、「ストロング」ランクは医師の指示がない限り、顔への使用は通常避けるべきです25
使用上の注意: 使用は短期間(例:5~7日)に限定してください。改善が見られない、あるいは悪化するようであれば使用を中止し、医師の診察を受けてください。傷のある部位、感染している部位(にきびなど)、目の周りへの塗布は避けてください33

非ステロイド系・その他のかゆみ止め

  • 非ステロイド性抗炎症薬: ウフェナマートやグリチルレチン酸などの成分は、ステロイドを含まずに炎症を和らげます33
  • 抗ヒスタミン外用薬: ジフェンヒドラミンは、ヒスタミンが関与するかゆみに対して迅速な効果が期待できます38
  • 局所麻酔薬: リドカインは、皮膚を麻痺させることで、かゆみの感覚を素早く遮断します38
  • その他の成分: クロタミトンは効果的な鎮痒成分です33。アラントインは組織の修復を助けます33
  • 経口抗ヒスタミン薬: 広範囲のかゆみや蕁麻疹には、市販の内服薬が有効な場合があります40

適切な市販薬を選ぶには、ご自身の症状を理解することが求められます。以下の表は、複雑な成分情報を実用的な意思決定ツールに変え、皆様が自信を持ってご自身のニーズに最も合った製品を選べるよう設計されています。

症状・目的 成分カテゴリー 主な有効成分 製品例 特徴・使いどころ
湿疹・赤み・炎症 弱いステロイド プレドニゾロン吉草酸エステル酢酸エステル コートf MD軟膏 顔の軽度の湿疹に対する標準的な選択。敏感肌にも比較的安全33
ステロイドは避けたい 非ステロイド性抗炎症 ウフェナマート, ジフェンヒドラミン キュアレア 敏感な肌への穏やかな抗炎症作用。目の周りにも使用可能37
とにかくかゆみを止めたい 抗ヒスタミン/局所麻酔 ジフェンヒドラミン, リドカイン メンソレータム カユピットb 急性のかゆみに対する即効性。非ステロイド38
乾燥によるかゆみ 保湿 + かゆみ止め ヘパリン類似物質, クロタミトン, 尿素 HPクリーム, メンソレータムADクリーム 皮膚バリアを修復しつつ、乾燥によるかゆみを鎮める41

専門医への相談:受診のタイミングと専門的治療

セルフケアや市販薬の使用は重要なステップですが、専門的な医療介入が必要な場合もあります。

皮膚科を受診すべきサイン

以下のいずれかの兆候が見られる場合は、皮膚科医の診察を受けることを検討してください。

  • かゆみが非常に激しい、広範囲にわたる、または睡眠や日常生活を妨げる場合。
  • 市販薬を適切に使用しても1週間以内に改善が見られない場合33
  • 発疹部位から液体が浸み出ている、かさぶたができている、または感染の兆候(例:膿)がある場合42
  • 原因が不明で、発疹が繰り返し再発する場合。
  • 発熱や倦怠感など、皮膚以外の症状を伴う場合42
  • アトピー性皮膚炎や接触皮膚炎など、確定診断が必要な特定の疾患が疑われる場合14

専門的な検査と治療法

診断: 皮膚科医は、詳細な病歴聴取、臨床診察、そして原因物質を特定するための血液検査やパッチテストなどの専門的な検査を行い、正確な診断を下します27
処方薬: 医師は、より強力なステロイド外用薬、カルシニューリン阻害薬、JAK阻害薬などを処方することができます11
先進的な治療法: 重症で難治性の症例に対しては、以下のような選択肢があります。

  • 光線療法: 紫外線を用いて炎症やかゆみを治療します14
  • アレルゲン免疫療法: 花粉やダニアレルギーに対して舌下免疫療法などを行い、皮膚症状の改善も期待できます45
  • 生物学的製剤/全身性JAK阻害薬: 特定の免疫経路を標的とする注射薬や内服薬で、体の内側から炎症をコントロールします11

全身の病気が隠れている可能性

概念: 専門家が常に念頭に置く重要な点として、明らかな発疹を伴わない持続的で広範囲のかゆみ(pruritus sine materia)は、内科的な疾患の兆候である可能性があるということが挙げられます9。この可能性を認識することは、責任ある医療情報提供の一環です。
潜在的な疾患: 以下は、かゆみを引き起こす可能性のある主な疾患群のリストです。この情報は自己診断のためではなく、原因不明の症状に対して医学的評価がいかに重要であるかを強調するためのものです。

  • 慢性腎臓病9
  • 肝・胆道疾患9
  • 内分泌疾患(甲状腺疾患、糖尿病など)9
  • 血液疾患(鉄欠乏、真性多血症など)9
  • 悪性腫瘍(リンパ腫など)9

主要なメッセージ: これらは比較的稀な原因であるため、過度に心配する必要はありません。しかし、かゆみが持続的で重度、かつ原因不明である場合は、潜在的な健康問題を排除するために、総合的な医学的検査が不可欠です9

よくある質問

顔のかゆみに市販のステロイドを使っても大丈夫ですか?
はい、短期間であれば使用可能です。ただし、顔の皮膚は薄くデリケートなため、市販薬の中でも最も効果が穏やかな「ウィーク」ランクのステロイドを選ぶことが重要です25。5~7日程度使用しても改善しない、または悪化するようであれば、使用を中止して速やかに皮膚科専門医に相談してください33
アトピー性皮膚炎と診断されました。薬を塗って良くなったらやめてもいいですか?
自己判断で完全に中止するのは推奨されません。近年のアトピー性皮膚炎治療では「プロアクティブ療法」という考え方が主流です。これは、見た目が綺麗になった後も、再発しやすい部位に週に2~3回程度、タクロリムス軟膏などを塗り続けることで、良い状態を維持し、再燃を防ぐ治療法です11。治療の中止や変更については、必ず主治医と相談してください。
かゆみの原因がよくわかりません。どうすればいいですか?
かゆみの原因は多岐にわたるため、自己判断は難しい場合があります。特に、化粧品や金属などによる接触皮膚炎(かぶれ)が疑われる場合は、原因物質を特定するための「パッチテスト」という専門的な検査が必要です7。市販薬を試しても改善しない場合や、原因不明のかゆみが続く場合は、皮膚科専門医を受診し、正確な診断を受けることを強くお勧めします。

結論

顔のかゆみを管理することは、単一の解決策に頼るのではなく、体系的なプロセスです。それは原因の特定から始まり、次に三つの柱からなるアプローチへと続きます。1) 皮膚バリアを強化するための日々の丁寧なスキンケア、2) 刺激因子を最小限に抑えるための賢明な生活習慣の調整、そして 3) 安全な市販薬の選択から始め、必要なときには専門的な医療を求める、適切な薬物療法の実践です。
顔のかゆみは多くの悩みや苦痛を引き起こすことがありますが、正しい知識を持ち、皮膚科専門医と積極的に協力することで、大幅な改善と状態のコントロールが可能です。これを、ご自身が最も積極的な役割を担う、皮膚の健康を取り戻すための旅路と捉えてください。

免責事項
この記事は情報提供のみを目的としており、専門的な医学的アドバイスを構成するものではありません。健康に関する懸念がある場合、またはご自身の健康や治療に関する決定を下す前には、必ず資格のある医療専門家にご相談ください。

参考文献

  1. 東京都の皮膚科・専門医一覧 – 東京ドクターズ. [インターネット]. [引用日: 2025年7月9日]. Available from: https://tokyo-doctors.com/clinicList/p-hifuka-senmoni/
  2. 福山 國太郎 皮膚科部長がBest Doctors in Japan™に認定されました – 関西労災病院. [インターネット]. [引用日: 2025年7月9日]. Available from: https://www.kansaih.johas.go.jp/whatsnew/41624.html
  3. 皮膚科部長の柳原医師がベストドクターズに選出されました – 真生会富山病院. [インターネット]. [引用日: 2025年7月9日]. Available from: https://www.shinseikai.jp/info/detail0389.html
  4. 日本皮膚科学会皮膚科専門医のクリニック・病院一覧 – ドクターズ・ファイル. [インターネット]. [引用日: 2025年7月9日]. Available from: https://doctorsfile.jp/search/ft16/
  5. 専門医を検索する – 公益社団法人日本皮膚科学会. [インターネット]. [引用日: 2025年7月9日]. Available from: https://www.dermatol.or.jp/modules/spMap/doctors?pref=13&sp=1&words=
  6. アトピー性皮膚炎診療ガイドライン 2021. 日本アレルギー学会. [インターネット]. [引用日: 2025年7月9日]. Available from: https://www.jsaweb.jp/huge/atopic_gl2021.pdf
  7. 接触皮膚炎診療ガイドライン 2020. 公益社団法人日本皮膚科学会. [インターネット]. [引用日: 2025年7月9日]. Available from: https://www.dermatol.or.jp/uploads/uploads/files/guideline/130_523contact_dermatitis2020.pdf
  8. 蕁麻疹診療ガイドライン 2018. 公益社団法人日本皮膚科学会. [インターネット]. [引用日: 2025年7月9日]. Available from: https://www.dermatol.or.jp/uploads/uploads/files/guideline/urticaria_GL2018.pdf
  9. Jędrowiak N, Garcovich S, Szepietowski JC, et al. Pruritus in Systemic Diseases: A Review of Etiological Factors and New Treatment Modalities. PMC. [インターネット]. 2016. [引用日: 2025年7月9日]. Available from: https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC4512616/
  10. Kini SP, DeLong LK, Veledar E, et al. A comprehensive conceptual model of the experience of chronic itch in adults. PMC. [インターネット]. 2018. [引用日: 2025年7月9日]. Available from: https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC6161822/
  11. 日本皮膚科学会「アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2024」が公表. [インターネット]. [引用日: 2025年7月9日]. Available from: https://www.mihara-cln.com/column/%E6%97%A5%E6%9C%AC%E7%9A%AE%E8%86%9A%E7%A7%91%E5%AD%A6%E4%BC%9A%E3%80%8C%E3%82%A2%E3%83%88%E3%83%94%E3%83%BC%E6%80%A7%E7%9A%AE%E8%86%9A%E7%82%8E%E8%A8%BA%E7%99%82%E3%82%AC%E3%82%A4%E3%83%89%E3%83%A9/
  12. 顔のかゆみ、ストレスが原因?原因・対処法・セルフケア・病院目安を解説. [インターネット]. [引用日: 2025年7月9日]. Available from: https://asitano.jp/article/33502
  13. 顔がかゆい原因は?正しいスキンケア方法とかゆみの対処法をご紹介 – ユースキン製薬. [インターネット]. [引用日: 2025年7月9日]. Available from: https://www.yuskin.co.jp/hadaiku/detail.html?pdid=155
  14. 【顔の痒み】顔のかゆみを引き起こす病気5選|正しい対策と適切な…. [インターネット]. [引用日: 2025年7月9日]. Available from: https://hifuka.or.jp/blog/itchy-face/
  15. 花粉で顔がかゆい!原因や対策方法・スキンケアのポイントを解説 – ディセンシア. [インターネット]. [引用日: 2025年7月9日]. Available from: https://www.decencia.co.jp/topics/column/00484/
  16. 日本皮膚科学会アトピー性皮膚炎診療ガイドライン. [インターネット]. [引用日: 2025年7月9日]. Available from: https://www.kyudai-derm.org/part/atopy/pdf/atopy2008.pdf
  17. How to Sleep Better With Chronic Hives – Health Central. [インターネット]. [引用日: 2025年7月9日]. Available from: https://www.healthcentral.com/condition/chronic-hives/sleeping-better-with-chronic-hives
  18. Dong X, Dong X. Peripheral and Central Mechanisms of Itch. PMC. [インターネット]. 2018. [引用日: 2025年7月9日]. Available from: https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC6022762/
  19. Hashimoto T, Nattkemper LA, Kim HS, et al. Molecular and cellular mechanisms of itch and pain in atopic dermatitis and implications for novel therapeutics. PMC. [インターネット]. 2022. [引用日: 2025年7月9日]. Available from: https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC9082890/
  20. Understanding itch: An update on mediators and mechanisms of pruritus. [インターネット]. [引用日: 2025年7月9日]. Available from: https://ijdvl.com/understanding-itch-an-update-on-mediators-and-mechanisms-of-pruritus/
  21. データで見るアトピー性皮膚炎. [インターネット]. [引用日: 2025年7月9日]. Available from: https://atopic-dermatitis.jp/adult/learn/data.html
  22. アッヴィ、アトピー性皮膚炎に関する疾患情報の提供を目的としたインスタグラム公式アカウントを開設. [インターネット]. [引用日: 2025年7月9日]. Available from: https://www.abbvie.co.jp/content/dam/abbvie-com2/japan/documents/press-release/2022_0425.pdf
  23. アレルギーについて | アトピー性皮膚炎. [インターネット]. [引用日: 2025年7月9日]. Available from: https://allergyportal.jp/knowledge/atopic-dermatitis/
  24. 『アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2021』が描く新しい治療戦略 – CAI認定機構. [インターネット]. [引用日: 2025年7月9日]. Available from: https://caiweb.jp/2022/08/31/atopyguidelines2021/
  25. 市販で買えるステロイドの強さは?市販でおすすめのステロイドをランキング形式で紹介. [インターネット]. [引用日: 2025年7月9日]. Available from: https://chibanaika-clinic.com/2025/04/suteroido/
  26. アレルギー科の海外論文・最新ニュースアーカイブ – ケアネット. [インターネット]. [引用日: 2025年7月9日]. Available from: https://www.carenet.com/allerg/archive/news
  27. 接触皮膚炎(かぶれ) – 巣鴨千石皮ふ科. [インターネット]. [引用日: 2025年7月9日]. Available from: https://sugamo-sengoku-hifu.jp/symptoms/contact-dermatitis.html
  28. 蕁麻疹診療ガイドライン – 公益社団法人日本皮膚科学会. [インターネット]. [引用日: 2025年7月9日]. Available from: https://www.dermatol.or.jp/uploads/uploads/files/guideline/1372913324_1.pdf
  29. 蕁麻疹(じんましん)はストレスから?蕁麻疹の原因や薬・治し方について解説 | ひまわり医院(内科・皮膚科). [インターネット]. [引用日: 2025年7月9日]. Available from: https://soujinkai.or.jp/himawariNaiHifu/hives/
  30. 春のしつこい肌荒れは「花粉皮膚炎」かもしれません。皮膚科専門医に相談を. [インターネット]. [引用日: 2025年7月9日]. Available from: https://uwajima-hifuka.com/blog/archives/1071
  31. 花粉症の皮膚症状とその治療 (Pharma Medica 38巻4号). [インターネット]. [引用日: 2025年7月9日]. Available from: https://webview.isho.jp/journal/detail/abs/10.34449/J0001.38.04_0033-0036
  32. アトピー性皮膚炎診療ガイドライン 2024. [インターネット]. [引用日: 2025年7月9日]. Available from: https://www.dermatol.or.jp/uploads/uploads/files/guideline/ADGL2024.pdf
  33. 顔に使えるステロイドの市販薬はある?購入時の注意点や使い方を解説 – ファミリードクター. [インターネット]. [引用日: 2025年7月9日]. Available from: https://www.family-dr.jp/?column=38165
  34. 市販で購入できるステロイド外用薬|強さの違いや選び方を紹介 – ミナカラ. [インターネット]. [引用日: 2025年7月9日]. Available from: https://minacolor.com/articles/7957
  35. ステロイドについて|かゆみに速効|ライオン株式会社. [インターネット]. [引用日: 2025年7月9日]. Available from: https://method.lion.co.jp/steroid/
  36. 【強さ一覧】ステロイド軟膏のランク早見表|弱い・中等度・強いの使い分けと副作用を徹底解説. [インターネット]. [引用日: 2025年7月9日]. Available from: https://uchikara-clinic.com/media/steroid/
  37. キュアレア3つのポイント – 小林製薬. [インターネット]. [引用日: 2025年7月9日]. Available from: https://www.kobayashi.co.jp/brand/cure/product/
  38. メンソレータム カユピットb | ロート製薬: 商品情報サイト. [インターネット]. [引用日: 2025年7月9日]. Available from: https://jp.rohto.com/kayupit/cream/
  39. 【薬剤師が解説】顔のかゆみにおすすめ湿疹薬は?症状別に紹介 – EPARKくすりの窓口. [インターネット]. [引用日: 2025年7月9日]. Available from: https://www.kusurinomadoguchi.com/column/articles/facial-eczema-pickup/
  40. アレルギール錠 – 第一三共ヘルスケア. [インターネット]. [引用日: 2025年7月9日]. Available from: https://www.daiichisankyo-hc.co.jp/products/details/allergiel_tab/
  41. 【薬剤師が解説】乾燥の予防とかゆみに効果がある市販薬5選【2022年】 – EPARKくすりの窓口. [インターネット]. [引用日: 2025年7月9日]. Available from: https://www.kusurinomadoguchi.com/column/articles/dry-skin-pickup/
  42. B.医療関係者の皆様へ. [インターネット]. [引用日: 2025年7月9日]. Available from: https://www.mhlw.go.jp/topics/2006/11/dl/tp1122-1a19.pdf
  43. かゆみ – 17. 皮膚の病気 – MSDマニュアル家庭版. [インターネット]. [引用日: 2025年7月9日]. Available from: https://www.msdmanuals.com/ja-jp/home/17-%E7%9A%AE%E8%86%9A%E3%81%AE%E7%97%85%E6%B0%97/%E3%81%8B%E3%82%86%E3%81%BF%E3%81%A8%E7%9A%AE%E8%86%9A%E7%82%8E/%E3%81%8B%E3%82%86%E3%81%BF
  44. 知識と 治療・セルフケア – 厚生労働省. [インターネット]. [引用日: 2025年7月9日]. Available from: https://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/kenkou/ryumachi/kafun/dl/ippan-qa_a.pdf
  45. 見つけよう! あなたに合った 治療法. [インターネット]. [引用日: 2025年7月9日]. Available from: https://www.torii.co.jp/iyakuDB/data/material/slit_pt.pdf
  46. アトピー性皮膚炎とダニ舌下免疫療法について | 府中市東府中の小児科・アレルギー科. [インターネット]. [引用日: 2025年7月9日]. Available from: https://inoue-kodomo-clinic.jp/sp/allergy33.html
  47. 【子どものアレルギー性鼻炎・喘息に】舌下免疫療法で根本治療をめざそう! | しだ小児科クリニック院長のブログ. [インターネット]. [引用日: 2025年7月9日]. Available from: https://shida-kids.com/blog/2019/11/18/slit-basic/
  48. Garcovich S, Maixner W, Coghill RC, et al. Diagnosis and Management of Chronic Pruritus: An Expert Consensus Review. PMC. [インターネット]. 2017. [引用日: 2025年7月9日]. Available from: https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC5286757/
  49. Table: かゆみの主な原因と特徴-MSDマニュアル家庭版. [インターネット]. [引用日: 2025年7月9日]. Available from: https://www.msdmanuals.com/ja-jp/home/multimedia/table/%E3%81%8B%E3%82%86%E3%81%BF%E3%81%AE%E4%B8%BB%E3%81%AA%E5%8E%9F%E5%9B%A0%E3%81%A8%E7%89%B9%E5%BE%B4
この記事はお役に立ちましたか?
はいいいえ