【管理栄養士・産婦人科医監修】妊婦のプルーン摂取｜いつから？1日何個まで？効果と胎児へのリスクを徹底解説

妊婦に嬉しい！科学的根拠に基づくプルーンの健康効果

プルーンには、妊娠中のマイナートラブルを和らげ、母体と赤ちゃんの健康をサポートする栄養素が豊富に含まれています。

最大の悩み「便秘」への強力な効果

妊娠中の便秘は、ホルモンバランスの変化や子宮による腸の圧迫、また処方される鉄剤の影響など、様々な要因で起こります⁴。プルーンがこの問題に有効なのは、主に2つのメカニズムによります。
第一に、豊富な食物繊維です。ドライプルーン100gには7.1gもの食物繊維が含まれています⁵。これには、便のかさを増やして腸を刺激する「不溶性食物繊維」と、便を柔らかくして滑りを良くする「水溶性食物繊維」がバランス良く含まれており、便通を総合的にサポートします⁶。
第二に、ソルビトールという糖アルコールです。プルーンにはこの成分が天然に多く含まれており⁵、腸内で水分を引き寄せて便を柔らかくする働きがあります。この作用は穏やかな下剤としても知られています¹。

貧血予防のサポート役として

妊娠中は、胎児へ酸素を送るために血液量が大幅に増え、鉄欠乏性貧血になりやすくなります。厚生労働省は、妊娠中期・後期には1日あたり9.5mgの鉄分を追加で摂取することを推奨しています⁷。
ドライプルーンには100gあたり1.1mgの鉄分が含まれていますが⁵、これだけで1日の必要量を満たすことは困難です。あくまで貧血予防の「サポート役」と位置づけましょう⁸。
また、プルーンに含まれる鉄は、肉や魚に含まれる「ヘム鉄」に比べて吸収率が低い「非ヘム鉄」です。吸収率を高めるために、ビタミンCが豊富な果物（イチゴ、キウイなど）や野菜（パプリカ、ブロッコリーなど）と一緒に摂ることをお勧めします⁸。注意点として、乾燥させたプルーン自体にはビタミンCはほとんど含まれていません⁵。

母親と胎児の骨の健康をサポート

胎児の骨格形成には多くのカルシウムが必要とされ、母親の骨から移行します。プルーンは、骨の健康に重要な栄養素を含んでいます。
動物実験では、妊娠中のマウスにプラム抽出物を与えたところ、生まれた子マウスの骨形成が促進されたという報告があります⁹。また、人間を対象とした研究では、閉経後の女性がプルーンを毎日摂取することで骨密度の維持に役立つ可能性が示唆されています¹⁰。これは、プルーンに豊富なビタミンK（骨の形成を助ける）やカリウム、マグネシウムといったミネラルが複合的に働くためと考えられています⁵。

その他の期待される効果：むくみ・血圧・免疫

• むくみ・血圧のケア: プルーンに豊富なカリウム（100gあたり730mg）は、体内の余分なナトリウムを排出し、むくみの解消や血圧を正常に保つ働きを助けます⁵。
• 免疫力の維持: プルーンに含まれるβ-カロテンは、体内で必要に応じてビタミンAに変換され、皮膚や粘膜の健康を保ち、免疫機能をサポートします¹¹。
• 早産リスクの低減との関連: ノルウェーの大規模な追跡調査では、プルーンを含む乾燥果物を摂取していた妊婦は、自然早産のリスクが低いという関連性が報告されています。これは果物の持つ抗菌作用やプレバイオティクス効果による可能性が考察されています¹²。
• 総合的な健康効果: プルーンの抗酸化作用、抗炎症作用、認知機能や心血管リスク因子への好影響をまとめたシステマティックレビューも発表されており、その多面的な健康効果が科学的に注目されています¹³。

【最重要】知っておくべきリスクと安全な食べ方

プルーンは多くのメリットを持つ一方で、特に妊娠中は、その食べ方に注意が必要です。

胎児への重大な影響：ポリフェノールと「動脈管早期収縮」のリスク

動脈管とは？ なぜ重要？

「動脈管」とは、お腹の中にいる赤ちゃんの心臓にある、特別な血管のことです。胎児は肺で呼吸をしていないため、この動脈管が肺への血流を迂回させ、全身に酸素を送る重要な役割を担っています。この血管は、通常、生まれてから自然に閉じるようにできています。
しかし、何らかの原因で生まれる前にこの動脈管が狭くなったり、閉じたりしてしまうのが「動脈管早期収縮」です。これが起こると、胎児の心臓に大きな負担がかかり、心不全や、最悪の場合、胎児水腫や死亡に至ることもあります¹⁴。

なぜプルーンが関係するの？

動脈管を開いた状態に保っているのは、「プロスタグランジン」という体内物質です。一部のポリフェノールには、このプロスタグランジンの働きを抑える作用（非ステロイド性抗炎症薬（NSAIDs）に似た作用）があることが知られています¹⁴。
プルーンには、アントシアニンなどのポリフェノールが豊富に含まれています。そのため、妊娠後期にプルーンを大量に食べ続けると、この作用によって動脈管が収縮してしまうリスクが高まるのではないか、と考えられているのです。
実際に、日本国内でも、毎日プルーンを食べていた妊婦から生まれた赤ちゃんに動脈管早期収縮が疑われた症例が産婦人科の学会で報告されています¹⁵, ¹⁶。これはプルーンに限らず、ルイボスティーやベリー類、カカオなど、ポリフェノールを豊富に含む他の食品でも同様の注意が日本の専門家から呼びかけられています¹⁷, ¹⁸。
重要なのは、「過剰摂取」を避けることです。 後述する適量を守っていれば、過度に心配する必要はありません。

食べ過ぎによる一般的な副作用

• 下痢: プルーンに含まれるソルビトールと食物繊維は、摂りすぎるとお腹が緩くなり、下痢を引き起こすことがあります¹⁹。
• カロリー・糖質の過剰摂取: 元の記事には「カロリーゼロ」という記述がありましたが、これは完全な誤りです。ドライプルーンは栄養が凝縮されている分、カロリーと糖質も高めです（100gあたり211kcal、糖質55.2g）⁵。手軽に食べられるため、つい食べ過ぎてしまいがちですが、妊娠中の急激な体重増加や妊娠糖尿病のリスクを避けるためにも、摂取量には注意が必要です。

【結論】管理栄養士が推奨する安全な摂取量とタイミング

以上の科学的根拠とリスクを総合的に判断し、JAPANESEHEALTH.ORGでは以下の摂取量を目安として推奨します。

重要な考え方: プルーンは「薬」ではなく「食品」です。便秘の症状が改善されたら、毎日必ず食べ続ける必要はありません。ご自身の体調とよく相談し、量を調整することが最も賢明な付き合い方です。

日本の妊婦さんのための実践ガイド

プルーンの選び方：生・ドライ・ジュースの違い

• ドライプルーン: 栄養価が最も凝縮されており、便秘解消効果を期待するなら第一選択。食物繊維、ソルビトール、ミネラルが豊富です。日本ではカリフォルニア産のものが主流です²⁰。購入時はオイルコーティングなし、砂糖・保存料無添加のものを選びましょう¹⁹。
• 生プルーン（プラム）: 日本で「プラム」というと一般的に生のスモモを指します²¹。葉酸やビタミンCは生の方が多いですが²²、便秘解消効果はドライに劣ります。旬の時期（7〜9月）に楽しむのが良いでしょう。
• プルーンジュース: 手軽ですが、濃縮還元タイプは糖分が多く、食物繊維が取り除かれている場合も。ストレートタイプを選び、飲み過ぎに注意しましょう。

また、厚生労働省の「妊産婦のための食事バランスガイド」では、果物の摂取目安を1日200g程度（SV換算で2SV）と定めています²³。プルーンの摂取も、この全体的な果物摂取量の一部として考えるべきであり、プルーンだけでこの量を満たそうとすべきではありません²⁴。

栄養を最大限に活かす食べ合わせ

• ヨーグルトと一緒に: ヨーグルトの乳酸菌とプルーンの食物繊維で、相乗的な腸活効果が期待できます。
• ビタミンC豊富な食品と: 鉄分の吸収率を上げるため、イチゴ、キウイ、柑橘類、パプリカ、ブロッコリーなどと一緒に摂りましょう⁸。
• コーヒー・緑茶とは時間を空けて: これらの飲料に含まれるタンニンは鉄の吸収を妨げます¹¹。プルーンを食べる前後30分〜1時間は避けましょう。

よくある質問 (FAQ)

結論：かかりつけ医と相談しながら賢く取り入れよう

プルーンは、妊娠中のつらい便秘を解消し、必要な栄養素を補給する上で非常に有用な食品です。しかし、どんな食品にも「適量」があり、特に妊娠中は、その恩恵とリスクを正しく理解することが不可欠です。

• 便秘解消には大きな効果が期待できる。
• 妊娠後期は、胎児への影響を考慮し、1日1〜2粒程度に控えるのが安全。
• ご自身の体調に合わせて量を調整し、他の食品ともバランス良く組み合わせることが大切。

この記事で提供した情報を参考にしつつ、最終的にはご自身の体調を最もよく知るかかりつけの産婦人科医や管理栄養士に相談しながら、プルーンを食生活に賢く取り入れてください。