肝臓がん(主に肝細胞がん)が「転移した」「もう治療が難しいと言われた」——その瞬間から、頭の中は不安でいっぱいになりやすいものです。とくにご家族は、「余命はどれくらい?」「最期は苦しいの?」「何が起きたら救急?」と、答えの出にくい問いに直面します。
先に結論を言うと、転移=すぐに何日という単純な話ではありません。生存期間は、がんの広がりだけでなく、肝機能(肝硬変の程度)や体力(活動度)、治療の選択肢、合併症で大きく変わります。一方で、統計としては、米国のAmerican Cancer Society(米国がん協会)がまとめたデータでは、遠隔転移(Distant)の5年相対生存率は3%と報告されています2。ただし、これは集団の統計であり、個々の経過を言い当てるものではありません。
日本の状況として、国立がん研究センター(がん情報サービス)の統計では、肝臓がん(肝および肝内胆管)の診断数は2021年に34,675例、死亡数は2023年に22,908人と示されています1。この数字からも、肝臓がんが決して珍しくない病気であることが分かります。
この記事では、転移の基本、予後(生存期間)の考え方、終末期に起こりやすい身体の変化(いわゆる「最期のサイン」)、そして本人・家族が準備できることを、専門用語をかみ砕いて整理します。怖がらせるのではなく、現実を正確に知り、支える側が「次に何をすればよいか」を具体化することが目的です。
Japanese Health(JHO)編集部とこの記事の根拠について
Japanese Health(JHO)は、健康と美容に関する情報を提供するオンラインプラットフォームです。膨大な医学文献や公的ガイドラインを整理し、日常生活で活用しやすい形でお届けすることを目指しています。
本記事の内容は、国立がん研究センター(がん情報サービス)や日本の学会資料、米国国立がん研究所(NCI)、海外のがん関連機関の一次情報に基づき、JHO編集部が整理しました178。
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要点まとめ
- 肝臓がんの転移は、肺・リンパ節・骨などに起こり得ます。国立がん研究センター(がん情報サービス)でも、肝細胞がんは肺やリンパ節、副腎、脳、骨などへ転移することがあると説明されています4。
- 生存期間(予後)は「転移の有無」だけでなく、肝機能・体力・合併症・治療反応で大きく変わります。統計は参考になりますが、個人の経過を確定できません12。
- 米国の統計では、遠隔転移(Distant)の5年相対生存率は3%と報告されていますが、これは集団データです2。焦点は「数字当て」より、苦痛を減らす準備に置くほうが現実的です。
- 緩和ケアは「最期だけ」のものではなく、国立がん研究センター(がん情報サービス)でも「がんと診断されたときから」症状や気持ちを支えるケアとして説明されています7。
- 最期が近い時期には、眠気の増加、食欲低下、混乱(せん妄)、呼吸の変化、手足の冷えなどが起こり得ます。海外のがん関連機関や医療機関は、こうした変化が「必ず全員に起こるわけではない」としつつ、対応の工夫を示しています91011。
「何が起こるのか分からない」ことが、いちばん強い恐怖になりやすいものです。ここでは、転移性肝臓がんの基本、予後の考え方、終末期に起こりやすい身体の変化、家族ができる具体的な関わり方まで、順番に整理します。
まずは「転移とは何か」「なぜ症状が強くなるのか(肝機能低下や合併症)」を理解し、そのうえで「治療の選択肢」「緩和ケアの使い方」「救急受診が必要なサイン」を明確にします。
必要に応じて、JHO内の総合ガイドも活用してください。公的情報源に基づく説明を、生活者向けに整理することがJHOの役割です。
「迷惑をかけたくない」「我慢してしまう」気持ちは自然ですが、肝臓がんでは合併症が急に悪化することもあります。早めにチームへ相談し、苦痛を減らす準備をすることは、本人にとっても家族にとっても大切な選択です78。
第1部:肝臓がんの転移とは?まず知っておきたい基本
転移の意味を正しく知ることは、恐怖を少しだけ「対策可能な不安」に変える第一歩です。ここでは、転移の定義、よくある転移先、そして「症状がなぜ強くなりやすいのか」を、できるだけ分かりやすく説明します。
1.1. 転移とは何か(肝内再発と肝外転移の違い)
「転移」とは、がん細胞が血液やリンパの流れに乗って、別の場所に移動し、そこで増えることです。肝細胞がんは、肝臓の中で再発・多発しやすいことが特徴で、国立がん研究センター(がん情報サービス)でも、肝切除後の再発の多くが肝内で起きると説明されています4。
一方で、肝臓の外に広がる「肝外転移」も起こります。国立がん研究センター(がん情報サービス)は、肝細胞がんが肺やリンパ節、副腎、脳、骨などに転移することがあると記載しています4。転移先によって、出やすい症状(息切れ、骨の痛み、神経症状など)が変わります。
また、肝臓がんは「がんそのもの」だけでなく、背景にあるB型肝炎・C型肝炎の持続感染、肝硬変などの影響を強く受けます。国立がん研究センターの解説でも、主な原因としてB型・C型肝炎ウイルスの持続感染が挙げられています3。つまり、同じ「転移」でも、肝機能の残り方によって体の反応が大きく異なります。
1.2. 「悪化させてしまう」行動と、やりがちな誤解
終末期の情報を読むと、「これをすれば良くなる」「これをすると悪化する」と単純化した情報に出会うことがあります。しかし、転移性肝臓がんでは、自己判断での断薬・民間療法への全面依存がかえって危険になり得ます。国立がん研究センター(がん情報サービス)は、緩和ケアを含む支援が「診断時から」受けられると説明しており、つらい症状を我慢しないことが重要です7。
- サプリや健康食品を自己判断で追加する:肝機能が低下していると、成分の代謝が難しくなる場合があります。必ず主治医・薬剤師に相談してください。
- 食べられないのに無理に食べさせる:終末期の食欲低下は自然な変化で、無理に増やすことが本人の苦痛になることがあります。NCI(米国国立がん研究所)は、終末期のケアが痛みや息苦しさ、吐き気などの症状をコントロールすることを目的に含むと説明しています8。
- 「迷惑をかけたくない」から相談を遅らせる:肝臓がんでは腹水感染や出血など、急変し得る合併症があります。早めの連絡が安全につながります。
| こんな症状・状況はありませんか? | 考えられる主な背景・原因カテゴリ |
|---|---|
| お腹が張って苦しい、体重が急に増える/減る、足がむくむ | 腹水・浮腫、低栄養、肝機能低下(肝硬変の進行) |
| 皮膚や白目が黄色い、かゆみが強い、尿が濃い | 黄疸、胆汁うっ滞、肝機能低下 |
| 昼夜逆転、ぼんやりする、会話がかみ合わない、性格が急に変わる | 肝性脳症、せん妄、感染、薬の影響、脱水 |
| 息切れ、横になると苦しい、呼吸が不規則 | 肺転移、胸水、貧血、感染、不安、終末期の呼吸変化 |
| 背中・腰・肋骨などの強い痛み、動くと悪化する痛み | 骨転移、神経圧迫、筋力低下 |
| 吐き気、食べられない、飲み込みにくい、口が乾く | 消化管症状、薬剤、副作用、終末期の食欲低下 |
第2部:身体の内部要因 — 肝機能低下と合併症が「つらさ」を作る
転移性肝臓がんのつらさは、「がんが広がること」だけでなく、肝臓がうまく働けなくなること(肝機能低下)や、腹水・感染・出血・意識障害などの合併症が重なって強くなります。症状を「本人の気合い」や「食べ方の問題」にしてしまうと、必要な支援が遅れます。
2.1. 肝臓が弱ると何が起きる?(黄疸・腹水・意識の変化)
肝臓は、栄養の代謝、胆汁の産生、毒素の処理、血液の凝固に関わる物質の合成など、体の要の臓器です。国立がん研究センターは、肝がんは進行するまで症状が出にくい一方、進行すると全身状態に影響が出ることを説明しています3。
たとえば、胆汁の流れが滞ると黄疸(皮膚・白目が黄色い)やかゆみが出やすくなります。血液中の老廃物処理が追いつかないと、眠気が強くなったり、会話がかみ合わない意識の変化が出ることがあります。これらは本人の性格や努力の問題ではなく、身体の変化として起き得るものです。
2.2. 食欲低下・低栄養・筋力低下(「食べない」の背景)
終末期には、食欲が落ち、少量で満腹になり、味が変わり、飲み込みづらくなることがあります。これは多くのがんで起こり得る変化で、MSKCC(メモリアル・スローン・ケタリング)が、進行がんで起こり得る食事・消化の問題(食欲低下、早期満腹、味覚変化、口渇、嚥下困難、吐き気など)を整理しています13。
ここで大切なのは、食べられないことを責めないことです。家族の「食べてほしい」は愛情ですが、本人にとっては苦痛になる場合があります。NCIは、終末期のケアが吐き気、便秘、息苦しさなどの症状を和らげることを含むと説明しており、無理に「量」を追うより、苦痛を減らす工夫(口腔ケア、少量頻回、好みを尊重)が現実的です8。
2.3. せん妄(混乱・不穏)と「肝性脳症」の区別は難しい
終末期には、せん妄(急に混乱する、見当識が崩れる、幻覚、夜間の不穏など)が起こりやすくなります。日本サイコオンコロジー学会等が公表している「がん患者におけるせん妄ガイドライン」でも、せん妄は身体的異常や薬剤などを背景に急性に起こる意識障害であり、過活動型・低活動型などがあると説明されています12。
肝臓がんの場合、肝機能低下による意識変化(肝性脳症)と、感染・脱水・薬剤の影響によるせん妄が重なることもあります。家族だけで原因を当てるのは困難なので、「いつから」「どんな様子」「薬の変更」「発熱」「便秘」「眠れない」などをメモして医療者に共有することが役立ちます。
2.4. 痛み・息苦しさは「我慢」より「早めの相談」が基本
痛みや息苦しさは、転移(骨や肺)や腹水、貧血、感染、不安など複数の要因で起こります。NCIは、終末期に用いられる治療や薬で痛みや息苦しさ、吐き気、便秘などをコントロールできること、在宅でも施設でも支援があることを説明しています8。
「強い薬は最期を早めるのでは」と心配されることがありますが、実際には、医療者は呼吸や意識の状態を見ながら慎重に調整します。つらさが増してからでは調整に時間がかかるため、痛み止めが効かない/息がしんどいと感じた時点で、早めに相談するのが安全です。
第3部:専門的な診断が必要な段階 — 予後(生存期間)と終末期の見通し
転移が見つかったとき、多くの人がまず「あとどれくらい生きられるのか」を知りたくなります。ただ、肝臓がんでは、がんの広がりに加えて肝機能が大きく影響するため、余命を正確に言い切ることは難しいのが現実です。ここでは、予後の見方と、治療と緩和ケアの位置づけを整理します。
3.1. 「ステージ」だけで決まらない:BCLCなど予後分類の考え方
肝細胞がんの治療方針では、がんの広がり(腫瘍の数・大きさ、血管侵襲、転移)に加え、肝機能や体力(Performance Status)が重視されます。海外ではBarcelona Clinic Liver Cancer(BCLC)分類が広く用いられ、BCLCの枠組みでは、歴史的にBCLC D(終末期)で中央値が約3か月と示されることがあります6。
ただし、このような数字は「平均的な見積もり」であり、治療の進歩や、本人の肝機能・合併症・サポート体制で変わり得ます。国立がん研究センター(がん情報サービス)も、生存率などの統計は「すべての人に当てはまる値ではない」と繰り返し注意喚起しています1。数字を「宣告」と受け止めるより、いま困っている症状を減らす方向へ視点を移すことが、本人の生活の質に直結します。
3.2. 転移があっても「できる治療」は残ることがある
転移があっても、肝機能や全身状態によっては、薬物療法(分子標的薬、免疫療法など)や、症状緩和を目的とした放射線治療、腹水への対応などが選択肢になります。治療の選択は、本人の体の条件と希望で変わります。
国立がん研究センター(がん情報サービス)は、肝細胞がんの治療として手術、局所療法、塞栓療法、薬物療法などを整理し、再発や転移を含め状況に応じて方針を検討する流れを示しています4。また、日本肝臓学会は肝細胞癌診療ガイドライン(最新版の公開情報を含む)を提示しています5。実際の適応は個別なので、主治医と「何を優先するか(延命、痛みの軽減、自宅で過ごす等)」を言語化して相談することが重要です。
3.3. 緩和ケアは「治療をやめること」ではない
「緩和ケア=もう終わり」と誤解されがちですが、国立がん研究センター(がん情報サービス)は、緩和ケアをがんと診断されたときから、痛みや息苦しさ、気持ちの落ち込みなどに対応するケアとして説明しています7。つまり、抗がん治療と並行して受けることもあります。
NCI(米国国立がん研究所)も、終末期に受けるケアや治療が、痛み、便秘、吐き気、息苦しさなどの症状をコントロールし、本人と家族の心理・社会的課題も支えると説明しています8。肝臓がんでは、腹水、かゆみ、意識の変化など、がん特有のつらさが出やすいため、早い段階からの緩和ケア相談が有益です。
3.4. 「最期が近いとき」に起こりやすい変化(いわゆる“死の兆候”)
ここは最もつらいテーマですが、知っておくと「驚き」と「後悔」を減らせます。大前提として、以下の変化は全員に起こるわけではなく、順番も期間も人によって違います。American Cancer Society(米国がん協会)は、最期が近づくにつれ弱くなり、眠る時間が増え、混乱が出ることがある一方、全員が同じ経過を辿るわけではないとしています9。
(1)眠気が増え、反応が小さくなる
眠っている時間が増え、声かけへの反応が弱くなることがあります。意識がはっきりしないように見えても、そばにいて声をかけることが安心につながる場合があります。American Cancer Societyは、終末期の段階での変化として、活動性の低下や意識の変化が起こり得ると説明しています9。
(2)食欲・飲水が減る
食べる量が減り、水分も少なくなります。これは体が自然に「省エネ」に向かう変化の一部として起こり得ます。MSKCCは進行がんで食欲低下や早期満腹、口渇、嚥下困難などが起こり得ると整理しています13。無理に食べさせるより、口腔の保湿や本人が欲しがる少量を尊重する方針が一般的です。
(3)呼吸が不規則になる(止まるように見えることもある)
呼吸が浅くなったり、速くなったり遅くなったり、数秒止まるように見えることがあります。Cancer Research UKは、最期が近い時期に呼吸が不規則・騒がしくなることがあり、数秒呼吸が止まることもある(チェーン・ストークス呼吸)と説明しています10。枕で上体を少し起こす、体を横向きにするなどの体位調整が役立つ場合があります10。
(4)痰がゴロゴロする「死前喘鳴(しぜんぜんめい)」のような音
のどに唾液や痰がたまって、ゴロゴロ音が聞こえることがあります。音が大きくても、本人が必ずしも強い苦痛を感じているとは限りません。NHSも、最期の時間帯に起こり得る身体変化として、食欲や呼吸の変化などを案内しています11。体位調整や口の中を湿らせるケアを、医療者と相談しながら行います。
(5)手足が冷たくなる、皮膚がまだらになる
血流が末端に届きにくくなり、手足が冷たくなったり、皮膚が斑(まだら)に見えることがあります。Cancer Research UKは、最期が近い時期にこうした変化が起こり得ることを説明しています10。電気毛布など強い熱源は避け、薄手の毛布で調整するなど、過度に熱くしない工夫が一般的です。
(6)混乱・興奮(せん妄)が出ることがある
夜間に落ち着かなくなる、見当違いの発言をする、怒りっぽくなるなどが起こり得ます。せん妄は「本人の人格」ではなく、身体状態や薬剤などで起こることがあり、日本のせん妄ガイドラインでも病態として説明されています12。まずは安全確保(転倒防止)と、医療者への早めの連絡が重要です。
(7)排泄のコントロールが難しくなる
体力低下や意識の変化で、尿や便のコントロールが難しくなることがあります。これは恥ずかしいことでも、介護の失敗でもありません。介護用具や訪問看護の支援を使い、清潔と快適さを優先します。
大切なこと:いつ亡くなるかは予測できない
これらの変化があっても、何日・何時間で亡くなるかを外側から断定することは困難です。American Cancer Societyも、最期に何が起こるかを正確に知るのは難しいとしつつ、変化への備えを提案しています9。分からないまま一人で抱えず、主治医や緩和ケア、訪問看護へ「いま起きていること」を共有してください。
第4部:今日から始める改善アクションプラン(本人と家族のために)
転移性肝臓がんでは、「治すための努力」だけでなく、苦痛を減らし、望む時間を守る準備が大切です。ここでは、今日からできる行動をレベル別に整理します。ポイントは、本人の気持ちを尊重しながら、家族の負担が一人に集中しない仕組みを作ることです。
| ステップ | アクション | 具体例 |
|---|---|---|
| Level 1:今日からできること | 症状を「見える化」し、連絡先を整える | 痛み・息苦しさ・食事量・尿量・意識の変化をメモ。病院の時間外連絡先、訪問看護の連絡方法、救急(119)の判断基準を家族で共有する78。 |
| Level 2:今週中に進めたいこと | 緩和ケア(または在宅支援)につなぐ | 主治医に「緩和ケア相談」を依頼。痛み、吐き気、便秘、かゆみ、腹水、せん妄などのつらさを具体的に伝える。国立がん研究センター(がん情報サービス)は緩和ケアが診断時から受けられる支援であると説明している7。 |
| Level 3:中長期(できる範囲で) | 「本人の希望」を言葉にして共有する | どこで過ごしたいか(自宅、病院、施設)、何を優先したいか(痛みの少なさ、会話できる時間、家族と過ごす等)を話し合う。NCIは終末期ケアが本人と家族の心理・社会的課題も支えると説明している8。 |
| Level 4:介護負担を減らす仕組み | 「1人介護」を避ける | 訪問看護、訪問診療、ケアマネジャー等と連携し、夜間対応やレスパイト(休息)を計画。国立がん研究センターは、人生の最終段階の療養生活の実態を調査し、単純な良し悪しではなく状況に応じた支援の重要性を示している14。 |
家族ができる最も大きな支援は、「正解の介護」を完璧にすることではなく、本人の苦痛が増えたときに、早くチームにつなぐことです。終末期のケアは医療だけでなく、心理・社会面の支援を含むとNCIは説明しています8。遠慮せず、支援を使うことは「甘え」ではありません。
第5部:専門家への相談 — いつ・どこで・どのように?
転移性肝臓がんでは、状態が日単位・週単位で変化することがあります。「様子を見る」が安全な場面と、急いで相談すべき場面を分けて考えることが重要です。
5.1. 受診を検討すべき危険なサイン
- 意識が急におかしい(呼びかけに反応しない、急な混乱・興奮、けいれん)
- 大量の吐血・下血、真っ黒い便(消化管出血の可能性)
- 息が苦しくて会話が難しい、唇が紫、呼吸が明らかに苦しそう
- 強い痛みが急に出た/痛み止めが効かない
- 発熱や悪寒があり、ぐったりしている(感染の可能性)
- お腹が急に張って激痛、吐き気が強い(腹水や腸の問題など)
これらがあるときは、迷わず医療機関へ連絡してください。夜間・休日に不安が強い場合も、病院の時間外窓口や訪問看護に相談し、必要なら救急(119)を検討します。大切なのは「迷惑をかけないこと」より、本人の安全と苦痛の軽減です。
5.2. 症状に応じた診療科の選び方
- 治療方針・検査・薬物療法の相談:消化器内科(肝臓専門)、腫瘍内科
- 痛み・息苦しさ・不眠・不安・せん妄:緩和ケア科(または緩和ケアチーム)7
- 在宅療養の調整:訪問診療、訪問看護、地域連携室
- 骨の強い痛み・神経症状:整形外科や放射線治療科(主治医経由で紹介されることが多い)
「どこに相談すべきか分からない」ときは、まず主治医(外来の窓口)に連絡し、「症状の優先順位」と「どの支援につなぐか」を相談するのが現実的です。国立がん研究センター(がん情報サービス)は緩和ケアが診断時からの支援であることを示しています7。
5.3. 診察時に持参すると役立つものと費用の目安
- 症状メモ:痛み(場所・強さ・時間帯)、呼吸、食事量、便・尿、意識の変化、発熱
- 服薬情報:お薬手帳、サプリ・健康食品の一覧
- 希望の整理:本人が優先したいこと(痛みを減らしたい、自宅で過ごしたい、会話できる時間を保ちたい等)
費用は医療保険の自己負担割合や高額療養費制度の利用状況で変わります。具体的な金額は病院の相談窓口(医療ソーシャルワーカー)に確認すると、家計の不安を減らしやすくなります。
よくある質問
Q1: 肝臓がんが転移しても、治療はもうできないのでしょうか?
Q2: 余命(生存期間)はどのくらいですか?数字で知りたいです。
Q3: 食べられない日が続きます。無理に食べさせた方がいいですか?
Q4: 呼吸が不規則で、時々止まるように見えます。苦しいのでしょうか?
Q5: 急に混乱して暴れたり、逆にぼんやりして会話できません。どうすれば?
Q6: 緩和ケアはいつから受けるべきですか?
Q7: 在宅と入院、どちらが良いのでしょうか?
結論:この記事から持ち帰ってほしいこと
肝臓がんの転移は、確かに厳しい局面を意味することがあります。しかし、国立がん研究センター(がん情報サービス)が示すように、転移や再発の状況でも治療やケアは個別に検討され、緩和ケアも診断時から活用できる支援です47。
生存期間の統計は参考になりますが、本人の未来を確定するものではありません2。大切なのは、痛み、息苦しさ、混乱、食欲低下などの「いまのつらさ」を早めにチームへ共有し、本人の希望に沿った時間を守ることです8。
家族もまた、ひとりで背負う必要はありません。支援を使うことは、本人の尊厳を守り、家族の後悔を減らすための現実的な選択です。
この記事の編集体制と情報の取り扱いについて
Japanese Health(JHO)は、信頼できる公的情報源と査読付き研究に基づいて、健康・医療・美容に関する情報をわかりやすくお届けすることを目指しています。
本記事は、国立がん研究センター(がん情報サービス)や日本の学会情報、NCI(米国国立がん研究所)、海外のがん関連機関などの一次資料を参照し、JHO編集部が内容・表現・数値・URLの妥当性を確認しながら作成しました158。運営者情報はこちらをご参照ください。
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参考文献
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