最近、咳が長引いていたり、健康診断の胸部レントゲンやCTで「影がある」と言われて、「もしかして肺がんでは…」と不安になっている方も少なくありません。家族や同僚の前では平気なふりをしていても、夜ふと一人になったときに、もしがんだったら仕事はどうなるのか、家族はどうなるのかと考えて眠れなくなることもあります。
日本では、肺がんはがん死亡数がもっとも多い部位の一つで、2023年には年間およそ7万5千人が肺がんで亡くなっています。1世界的にも、肺がんは男女を問わず「がんによる死亡原因の第1位」とされています。3,4一方で、最近は治療法や検査法が大きく進歩し、早期に見つかれば根治をめざせるケースも増えてきました。5,6,11
「肺がんと聞くだけで怖くて、詳しく知るのもつらい」というお気持ちはとても自然なものです。しかし、病気の基本的な仕組みや、今できる対策、どのタイミングで医療機関に相談すべきかを知っておくことで、「何をすればよいか」がはっきりし、不安を少しずつ小さくしていくことができます。
本記事では、JHO(JapaneseHealth.org)編集委員会が、厚生労働省や国立がん研究センター、日本肺癌学会、世界保健機関(WHO)などの信頼できる情報源をもとに、肺がんの基礎知識から症状・原因・検査・治療、日常生活で気をつけたいポイントまでを、できるだけ専門用語をかみ砕いて解説します。1,2,3,5,6,7,8,9
ご自身やご家族が肺がんと診断された方はもちろん、「まだ診断はついていないが心配」という方にも、今日から役立つ具体的な情報を順番に整理していきます。
Japanese Health(JHO)編集部とこの記事の根拠について
Japanese Health(JHO)は、健康と美容に関する情報を提供するオンラインプラットフォームです。肺がんのような命にかかわる疾患については、とくにYMYL(Your Money or Your Life)領域であることを意識し、公的機関や査読付き論文などの一次情報を重視して情報を整理しています。
本記事の内容は、主に次のような情報源をもとに、JHO編集部が生成AIツールのサポートを受けつつ、最終的には人の目で一つひとつ確認しながら作成しました。
- 国立がん研究センター・厚生労働省・自治体などの公的機関:がん登録の統計データ、肺がんの解説ページ、肺がん検診ガイドラインなど、日本人を対象とした公式情報を優先して参照しています。1,2,6,9
- 日本肺癌学会などの国内医学会ガイドライン:肺癌診療ガイドライン2023年版など、最新の標準治療の方針を示した資料をもとに、検査や治療の全体像をわかりやすくまとめています。5,11
- 世界保健機関(WHO)や国際がん研究機関(IARC)などの国際的な機関:肺がんの世界的な発生状況、喫煙や大気汚染・アスベストなどのリスク因子に関するエビデンスを確認するために利用しています。3,4,10,12
- 厚生労働省 e-ヘルスネットなどの啓発サイト:喫煙・受動喫煙とがんの関係など、生活習慣に関する解説を補足情報として参照しています。7,8
AIツールは、文献の要点整理や構成案の作成を支援する「アシスタント」として活用していますが、公開前には必ずJHO編集部が原著資料と突き合わせ、数値や表現に問題がないかを確認しています。JHOの運営体制や編集プロセスの詳細は、運営者情報(JapaneseHealth.org)をご覧ください。
要点まとめ
- 肺がんは、日本でがん死亡数がもっとも多い部位の一つであり、2023年には年間約7万5千人が肺がんで亡くなっています。1世界的にも肺がんはがん死亡の最大要因です。3,4
- 肺がんの多くは非小細胞肺がんと小細胞肺がんに分けられ、それぞれで進行の速さや治療方法が大きく異なります。日本では非小細胞肺がんが全体の約8〜9割、小細胞肺がんが1〜2割程度を占めます。2,5
- 主な症状は、長引く咳や痰、血痰、胸の痛み、息切れ、原因不明の体重減少などですが、早期にはほとんど症状が出ないことも多く、検診や画像検査で偶然見つかるケースもあります。2,6
- 最大のリスク因子は「喫煙」であり、日本人の疫学研究でも受動喫煙を含め、肺がんのリスクが約1.3〜2倍に増加することが示されています。7,8,10一方で、空気の汚れやアスベスト、遺伝的要因などにより、全く喫煙歴のない人にも肺がんは起こりえます。3,4,12
- 治療には手術、放射線治療、抗がん薬(化学療法)、分子標的薬、免疫チェックポイント阻害薬などがあり、病期やがんのタイプ、全身状態によって組み合わせが決まります。5,6,11治療と並行して、禁煙や栄養、リハビリ、精神的サポートなどの「生活面の支え」も非常に重要です。
- 強い息切れや胸の痛み、突然の片側の手足のまひや意識障害などは緊急性の高いサインの可能性があります。こうした症状が出たときは、迷わず119番通報を含めた緊急受診を検討してください。
「肺がんと言われたら人生が終わってしまうのではないか」「咳が続くだけで受診するのは大げさでは?」——こうした不安や迷いから、受診や相談のタイミングが遅れてしまう方も少なくありません。
この記事では、まず日常生活や職場環境などの身近な要因から、喫煙・受動喫煙、大気汚染といったリスク要因、さらに肺がんそのものの種類や症状、検査・治療の全体像へと段階的に整理していきます。
生活習慣を見直してできる対策と、専門的な医療が必要になる段階を切り分けて理解することで、「今の自分はどの位置にいるのか」「次に何をすればよいのか」がより具体的にイメージできるようになるはずです。
必要に応じて、関連する総合ガイドや、詳細解説記事など、JHO内のページも参考にしながら、ご自身やご家族の状況にあった情報を整理していきましょう。
第1部:肺がんの基本と日常生活で見直したいポイント
まずは「肺がんとはどのような病気か」「私たちの日常生活のどこが影響しているのか」という、最も身近なところから整理していきます。「自分は大丈夫」と思っている方ほど、知らないうちにリスクが高くなっていることもあります。
1.1. 肺がんの基本的な仕組みと体の働き
肺は、空気中の酸素を血液に取り込み、二酸化炭素を外に出す「ガス交換」の役割を持つ臓器です。胸の左右にひとつずつあり、気管・気管支という空気の通り道の先に、ぶどうの房のような形をした「肺胞」が無数に広がっています。ここで吸った空気と血液が薄い膜を挟んで接し、酸素と二酸化炭素のやりとりが行われています。2
肺がんは、この気管支や肺胞などを形作る細胞の遺伝子に傷がつき、細胞が「増えてはいけないときにも増え続ける」状態になったものです。2,3通常、私たちの体には異常な細胞を修復したり排除したりする仕組みがありますが、喫煙や大気汚染などの刺激が長年続くと、この仕組みが追いつかなくなり、一部の細胞が「がん細胞」として生き残って増え続けてしまうことがあります。3,7,12
肺がんにはいくつかのタイプがありますが、大きくは非小細胞肺がんと小細胞肺がんに分けられます。非小細胞肺がんには腺がんや扁平上皮がんなどが含まれ、日本では腺がんがもっとも多いタイプです。小細胞肺がんは進行が非常に速く、早期から全身に広がりやすいという特徴があります。2,5
1.2. 肺がんリスクを高めるNG習慣と、その理由
肺がんの発症にはさまざまな要因が関わりますが、その中でも「変えられる要因」と「変えにくい要因」を分けて考えることが大切です。ここでは、とくに日常生活で見直しやすいポイントを中心に整理します。
- 喫煙(たばこ)
喫煙は肺がんの最大のリスク因子であり、世界的にも肺がんの約8割前後が喫煙に関連するとされています。3厚生労働省のe-ヘルスネットによる日本人の解析でも、喫煙者は非喫煙者に比べて肺がんのリスクが大きく上昇することが報告されています。7紙巻きたばこだけでなく、加熱式たばこや葉巻なども有害物質を含み、完全に安全といえる製品はありません。 - 受動喫煙(他人の煙を吸うこと)
自分では吸わなくても、家族や職場の人が吸うたばこの煙を日常的に吸い込んでいると、「受動喫煙」によって肺がんリスクが上がります。日本人を対象とした研究では、受動喫煙があると肺がんのリスクが約1.3倍になることが示されており、ヘビースモーカーの配偶者では肺がん死亡リスクが約2倍に増加したという報告もあります。7,8国立がん研究センターの研究では、受動喫煙が肺がん細胞の遺伝子変異を促進することも示されており、「匂いが気になる」レベルの問題ではないことがわかっています。10 - 大気汚染・職場での粉じん・アスベストなど
世界保健機関(WHO)は、大気汚染が肺がんなどのがんや心血管疾患のリスクを高める重要な要因であると報告しています。12また、アスベスト(石綿)は肺がんや中皮腫を引き起こす発がん物質として国際がん研究機関(IARC)により分類されています。10建設業や造船業など、粉じんやアスベストに長期間さらされる職場では、適切な防護や定期健康診断がとくに重要です。 - 長年続く不規則な生活・栄養の偏り
直接的な原因とは言えないものの、睡眠不足や極端な食生活、運動不足、過度の飲酒などは、免疫力の低下や慢性的な炎症を通じて、がん全般のリスクを高める可能性があります。3,12肺がんの予防という視点でも、「禁煙+バランスのとれた生活習慣」をセットで考えることが大切です。
こうしたNG習慣の多くは、「今日から少しずつ変えていけるもの」です。すべてを完璧にする必要はありませんが、「まずは禁煙」「受動喫煙を減らす」「エレベーターではなく階段を使う」など、一つずつ行動に落とし込んでいくことが将来のリスク低減につながります。
| こんな症状・状況はありませんか? | 考えられる主な背景・原因カテゴリ |
|---|---|
| 3週間以上続く咳や痰、最近増えたたんの量 | 慢性的な気管支炎・COPD・肺がんなどの呼吸器疾患 |
| 痰や咳に血が混じることがある | 肺がん・気管支拡張症・結核など(早めの受診が必要) |
| 少し動くだけで息切れや胸の痛みを感じる | 心不全・肺疾患・貧血など(心臓・肺の精査が必要なことも) |
| 1日に1箱以上の喫煙歴が20年以上、または同程度の「ブリンクマン指数」 | 喫煙関連の肺がん・COPDのリスク増加 |
| 家族にヘビースモーカーがいて、家庭内での受動喫煙が長年続いている | 受動喫煙による肺がん・心血管疾患のリスク増加 |
※上記はいずれも「可能性の一例」であり、セルフチェックだけで診断がつくわけではありません。気になる項目が複数当てはまる場合は、自己判断を避け、早めに医療機関に相談してください。
第2部:身体の内部要因 — 遺伝・ホルモン・隠れた不調
喫煙や環境だけでなく、「体質」や「元々持っている病気」、「ホルモンの変化」など、身体の内側の要因が肺がんの発症に関わることもあります。ここでは、とくに日本で問題になりやすいポイントを整理します。
2.1. 【とくに女性・非喫煙者】受動喫煙と大気汚染によるリスク
「たばこを吸わないのに、なぜ肺がんになるのか」という疑問は、実際に患者さんやご家族から非常によく聞かれるものです。世界的な統計では、肺がん患者の約2割前後は、生涯喫煙歴のない人だと推計されています。3,4
日本では、重度喫煙者の夫を持つ非喫煙の妻で、肺がんの死亡リスクが約2倍に高まるという研究結果が古くから知られています。8また、複数の研究結果をまとめた解析では、受動喫煙にさらされることで肺がんリスクが約1.28〜1.3倍に上昇することが報告されています。7,8職場や飲食店などでの受動喫煙も同様にリスクを押し上げることがわかっています。
さらに、近年は「大気汚染」と肺がんとの関連が注目されています。WHOは、屋外の大気汚染が肺がんを含む多くの疾患による早死の重要な原因であり、とくに微小粒子状物質(PM2.5)への長期暴露が肺がん死亡と関連することを報告しています。12日本を含む東アジアでは、都市部での大気汚染が深刻な地域もあり、喫煙をしない人でも、長年の曝露により肺がんリスクが高くなる可能性があります。
「自分は吸わないから安心」と考えず、家庭や職場での受動喫煙を減らす、空気の悪い日に屋外での長時間の運動を避けるなど、周囲の環境にも目を向けることが大切です。
2.2. 慢性肺疾患・免疫・栄養状態などの「土台」
肺がんのリスクは、「肺そのものの状態」や「全身の免疫・栄養状態」の影響も受けます。日本肺癌学会のガイドラインや各種研究では、次のような要素がリスク要因として挙げられています。5,11
- COPD(慢性閉塞性肺疾患)や肺線維症などの慢性肺疾患
長年の喫煙などにより肺の構造が壊れてしまうCOPDや、肺の組織が硬くなってしまう肺線維症などを持つ人では、正常な肺組織に比べてがんが発生しやすくなることが知られています。 - 過去の胸部の放射線治療
乳がんやホジキンリンパ腫など、別のがんで胸部への放射線治療を受けた場合、数十年後に二次がんとして肺がんが発生するリスクがわずかに上がることがあります。5必要以上に怖がる必要はありませんが、定期的なフォローアップが推奨されます。 - 家族歴・遺伝的要因
家族に肺がんになった人がいる場合、喫煙や環境を同じくしていることに加えて、がんができやすい体質(遺伝的素因)が関係している可能性もあります。ただし、現時点で「この遺伝子があれば必ず肺がんになる」という単純なものではなく、あくまで複数の要因が重なった結果としてリスクが高くなると考えられています。3,4,5 - 免疫不全や慢性的な炎症
免疫抑制剤の長期使用や、一部の自己免疫疾患などで免疫機能が低下している場合、がん細胞を早期に排除する力が弱まり、肺がんだけでなく他のがんのリスクも高くなることがあります。
こうした要因は、禁煙だけでは完全にはコントロールできません。そのため、「喫煙+慢性肺疾患+高齢」などリスクが重なっている方ほど、定期的な検診や医療機関でのフォローアップが重要になります。
第3部:専門的な診断が必要な肺がんとその症状
ここからは、実際に医療機関で「肺がんかどうか」を調べる場面や、肺がんの種類・症状・進行の仕方について整理します。「どんな症状なら急いで受診すべきか」「どのような検査が行われるのか」を事前に知っておくと、診察室で慌てずにすみます。
3.1. 非小細胞肺がん(腺がん・扁平上皮がんなど)
日本で最も多いのは非小細胞肺がんで、腺がん・扁平上皮がん・大細胞がんなどが含まれます。2,5とくに腺がんは、比較的若い世代や女性、喫煙歴の少ない人にも見られるタイプで、肺の末梢部(外側)にできることが多いとされています。2,3
非小細胞肺がんの進行度(ステージ)は、がんの大きさや周囲への広がり、リンパ節転移、遠隔転移の有無などを組み合わせて0期〜Ⅳ期に分類されます。5早期(0〜Ⅰ期)であれば手術による根治が期待できる場合も多く、進行している場合でも放射線治療や薬物療法を組み合わせることで、再発・進行をできるだけ抑える治療が行われます。5,6,11
近年は、EGFRやALKなどの遺伝子変異・異常をターゲットにした分子標的薬や、免疫チェックポイント阻害薬などの新しい薬剤が登場し、進行期の非小細胞肺がんでも生存期間の延長が期待できるケースが増えています。5,6,11一方で、すべての方に同じ治療が合うわけではなく、「どの薬が効きやすいタイプのがんなのか」を調べるための検査(バイオマーカー検査)が重要になっています。
3.2. 小細胞肺がん — 進行が速く、早期発見がとくに重要なタイプ
小細胞肺がんは、全肺がんの約1〜2割を占める比較的まれなタイプですが、進行が非常に速く、早期から全身に広がりやすいという特徴があります。2,5多くは喫煙と強く関連しており、発見されたときにはすでに遠隔転移を伴う「進展型(広範病期)」となっていることも少なくありません。5,6
治療の中心は化学療法と放射線治療で、近年は免疫チェックポイント阻害薬を組み合わせたレジメンも標準治療として用いられています。5,11一方で、再発しやすく予後は全般に厳しいため、禁煙による一次予防と、症状が出た時点でできるだけ早く医療機関を受診することがとくに重要です。
3.3. 肺がんの主な症状と「危険なサイン」
肺がんの症状は、「肺や気管支そのものからくる症状」「胸の中で広がることによる症状」「遠くの臓器に転移したことによる症状」に大きく分けられます。国立がん研究センターがん情報サービスでは、代表的な症状として次のようなものを挙げています。2,6
- 長引く咳、痰が増えた、痰がねばねばする
- 血痰(痰に血が混じる)、咳に血が混じる
- 胸の痛みや違和感、深呼吸や咳で強くなる痛み
- 階段や坂道での息切れ、少し動くだけで息が上がる
- 原因不明の体重減少、疲れやすさ、食欲不振
- 繰り返す肺炎や気管支炎
がんが胸膜(肺を包む膜)や骨、脳などに広がると、次のような症状が出ることもあります。2,5,6
- 片側の肩や背中の強い痛み
- 首や顔のむくみ(上大静脈症候群)
- 激しい頭痛・吐き気・嘔吐、体の片側のまひやしびれ、けいれん発作など(脳転移の可能性)
- 歩行のふらつき、排尿・排便のコントロール障害(脊髄圧迫の可能性)
とくに次のようなサインは緊急性が高い可能性があります。
- 突然の激しい胸の痛みや息苦しさ、冷や汗を伴う
- 安静にしていても呼吸が苦しく、会話が途切れるほど息切れが強い
- 急に意識がもうろうとする、片側の手足が動かない・しびれる
- 歩けないほどの背中の痛みと、急な尿・便の失禁
こうした場合は、迷わず119番通報を含めた救急対応を検討してください。症状が軽くても「何かおかしい」と感じたときは、自己判断で様子を見続けず、かかりつけ医や地域の医療機関に早めに相談することが大切です。
第4部:今日から始める予防と治療中のセルフケア・アクションプラン
肺がんの予防や、すでに肺がんと診断された後の日常生活での工夫は、「医療の治療」と同じくらい重要な要素です。ここでは、今日から少しずつ実践できる行動をステップごとに整理します。これらはあくまで一般的なアドバイスであり、具体的な治療方針や運動・食事制限については必ず主治医と相談してください。
| ステップ | アクション | 具体例 |
|---|---|---|
| Level 1:今からできること | 禁煙・受動喫煙の回避 | 自分で吸っている場合は、禁煙外来や電話相談など専門的な支援を利用して禁煙を始める。 家庭内では「家の中は完全禁煙」とルールを決め、ベランダや屋外でも煙が部屋に入らないよう工夫する。 |
| Level 1:今からできること | 症状の記録と受診の準備 | 咳・痰・息切れ・体重などを簡単なメモやアプリで記録し、いつから・どのくらい続いているかを整理する。 健康診断や人間ドックの結果、お薬手帳を一つのファイルにまとめておく。 |
| Level 2:今週末から始めたいこと | 生活リズムと運動習慣の見直し | 毎日同じくらいの時間に寝起きするよう心がけ、スマートフォンやPCは就寝の1〜2時間前にはオフにする。 息切れが許す範囲で、平坦な道をゆっくり10〜15分歩くなど、主治医と相談しながら無理のない範囲で運動を取り入れる。 |
| Level 2:今週末から始めたいこと | 食事のバランスを整える | 主食・主菜・副菜をそろえ、野菜・果物・魚・大豆製品を意識してとる。 アルコールや加工肉・高脂肪食の「とり過ぎ」に注意し、体重の急激な増減がないかを確認する。 |
| Level 3:長期的に続けたいこと | 主治医・医療スタッフとの信頼関係づくり | 疑問や不安はメモに書き出し、診察のときに遠慮せず質問する。 がん相談支援センターや患者会・ピアサポートなども活用し、一人で抱え込まない。 |
| Level 3:長期的に続けたいこと | 呼吸リハビリ・疼痛コントロール | 理学療法士や看護師から呼吸法(口すぼめ呼吸、腹式呼吸など)を教わり、息切れ時に実践する。 痛みがある場合は我慢せずに主治医に伝え、鎮痛薬や神経ブロック、緩和ケアチームの介入などを検討してもらう。6 |
これらの行動は、どれも「一度で完璧にこなす」必要はありません。体調や気持ちの波があるのは当然です。できる日には少し多めに、つらい日は「今日はこれだけできた」と自分をねぎらいながら、長く続けられるペースを見つけていくことが何より大切です。
第5部:専門家への相談 — いつ・どこで・どのように?
「どのタイミングで、どの診療科を受診すればよいのか」が分からず、不安なまま時間だけが過ぎてしまうケースも少なくありません。ここでは、受診の目安や、診察をスムーズに受けるための準備についてまとめます。
5.1. 受診を検討すべき危険なサイン
- 3週間以上続く咳や痰、特に徐々に悪化している場合
- 痰や咳に血が混じる(血痰)が続く場合
- 原因不明の体重減少(数か月で体重の5%以上減るなど)
- 階段や坂道での息切れが急に強くなった、胸の痛みが続く場合
- 繰り返す肺炎・気管支炎で、同じ場所ばかり影が出ると言われている場合
これらの症状があるからといって必ず肺がんとは限りませんが、他の重大な病気が隠れている可能性もあります。自己判断で様子を見続けるのではなく、まずはかかりつけ医や地域の内科・呼吸器内科を受診し、必要に応じて専門医療機関への紹介を受けてください。2,5,6
5.2. 症状に応じた診療科の選び方と検査の流れ
- 最初の相談先
かかりつけの内科、もしくは呼吸器内科(呼吸器内科・アレルギー科など)を受診するのが一般的です。健康診断で異常を指摘された場合は、その結果用紙を持って受診しましょう。 - 行われる主な検査
胸部レントゲンや胸部CT、喀痰細胞診、血液検査などが行われ、必要に応じて気管支鏡検査やCTガイド下生検などで、がん細胞の有無やタイプ(組織型)、遺伝子変異の有無を調べます。2,5,6 - ステージ診断(病期の決定)
PET-CTや骨シンチグラフィ、頭部MRIなどを用いて、リンパ節や他の臓器への転移の有無を評価し、ステージ(0〜Ⅳ期)を決めます。これにより、手術・放射線・薬物療法などの最適な組み合わせが検討されます。5,6,11 - 肺がん検診
日本では、自治体などが行う対策型検診として胸部エックス線検査が広く実施されていますが、重喫煙者を対象に低線量CT検診の有効性が示され、ガイドラインでも対象や実施方法が検討されています。9詳細はお住まいの自治体の案内を確認し、対象となる方は主治医と相談のうえ受診を検討してください。
5.3. 診察時に持参すると役立つものと費用の目安
- 健康保険証・各種受給者証
- 健康診断や人間ドックの結果(過去数年分があればベター)
- 現在服用している薬のリストやお薬手帳
- 症状がいつから、どのように変化しているかを書いたメモ
- 可能であれば、家族など付き添いの人(説明を一緒に聞いてもらうため)
日本では多くの場合、公的医療保険により医療費の3割負担(年齢や所得により異なる)となりますが、検査や入院・手術・薬物療法が続くと自己負担額も大きくなります。高額療養費制度や医療費助成など、利用できる制度は早めに確認し、必要に応じて相談支援センターやソーシャルワーカーに相談しましょう。
よくある質問
Q1: たばこを吸わないのに肺がんになることはありますか?
A1: はい、あります。世界的なデータでは、肺がん患者のうち約2割前後は生涯喫煙歴のない人と推計されています。3,4日本でも、受動喫煙や大気汚染、職業性曝露、遺伝的要因などが重なって、非喫煙者に肺がんが発生することが知られています。7,8,10,12
とくに、ヘビースモーカーの配偶者など家庭内で長期間受動喫煙にさらされている女性や、空気の悪い都市部で長年生活している人ではリスクが高くなる可能性があります。7,8,12「吸わないから100%安全」というわけではなく、環境をできる範囲で整えることが大切です。
Q2: 肺がんの初期症状にはどのようなものがありますか?
A2: 早期の肺がんでは、まったく症状が出ないことも少なくありません。2,6症状が出る場合は、長引く咳や痰、血痰、胸の痛み、息切れなどが代表的ですが、かぜや気管支炎と区別がつきにくいことも多いです。
「3週間以上続く」「徐々に悪化している」「血が混じる」といった特徴がある場合や、原因不明の体重減少や倦怠感が続く場合は、早めに内科や呼吸器内科を受診してください。2,5,6
Q3: 肺がん検診は誰が受けたほうがよいのでしょうか?
A3: 日本では、自治体が行う対策型の肺がん検診として、一定年齢以上の住民を対象に胸部エックス線検査などが実施されています。9とくに、長年の喫煙歴がある人や、職業上粉じん・アスベストなどにさらされてきた人は、検診の案内が来ているかどうかを確認し、積極的に受診することが推奨されます。
重喫煙者に対する低線量CT検診については、有効性と被ばくのバランスを考慮したガイドラインが整備されつつあり、対象年齢や喫煙歴の条件が示されています。9自分が対象に当てはまるかどうかは、かかりつけ医や自治体の窓口で確認してみてください。
Q4: CT検査やPET検査の放射線被ばくは大丈夫ですか?
A4: 画像検査には一定量の放射線被ばくがありますが、肺がんの診断や病期判定に必要な情報が得られるメリットとのバランスを考えて実施されています。5,9低線量CT検診の場合、1回あたりの線量は日常生活で1年間に受ける自然放射線量と同程度かそれ以下に抑えられるよう工夫されています。9
ただし、無症状の人が必要以上に繰り返し検査を受けることは推奨されません。検査の適否は年齢や喫煙歴、症状などを踏まえて主治医が判断しますので、不安な点は正直に質問してみてください。
Q5: 肺がんは治りますか? どのくらい生きられるのでしょうか?
A5: 肺がんの予後(治りやすさ・生存期間)は、診断時のステージやがんのタイプ、全身状態、治療への反応などによって大きく異なります。国立がん研究センターの統計では、2009〜2011年に診断された肺がん全体の5年相対生存率は約35%と報告されていますが、早期に見つかった場合と進行してから見つかった場合とでは大きな差があります。1
近年は、分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬など新しい治療の登場により、進行期の非小細胞肺がんでも長期生存が期待できるケースが増えています。5,6,11一人ひとりの見通しについては、主治医が病状全体を踏まえて説明してくれますので、「平均値」だけにとらわれず、自分にとって最適な治療・生活のバランスを一緒に考えていくことが大切です。
Q6: 肺がんと診断されたあとも、仕事や家事を続けることはできますか?
A6: 多くの方が、治療と仕事・家事・育児を「どう両立するか」で悩まれます。手術前後や化学療法中は一時的に仕事を休まざるを得ないこともありますが、治療の種類や副作用の程度によっては、働き方や家事の分担を調整しながら続けることも可能です。6,11
日本には傷病手当金や障害年金などの制度もあり、会社の産業医やソーシャルワーカーと一緒に、働き方の調整や休職・復職のタイミングを検討することが勧められます。「周りに迷惑をかけたくない」と一人で抱え込まず、早めに職場や家族と共有しておくことが、結果的にトラブルを減らすことにつながります。
Q7: 家族として、肺がんの人にどのように接すればよいのでしょうか?
A7: 家族は、治療や生活の大きな支えになります。一方で、「励ましすぎてしまう」「何と言ってよいかわからない」と悩むご家族も多いです。まずは、医学的なアドバイスを無理にしようとせず、「一緒に聞きに行こうか」「何か手伝えることはある?」と、そばにいる姿勢を示すことが大切です。
病院のがん相談支援センターでは、家族向けの相談や情報提供も行われています。6家族だけで抱え込まず、専門職や患者会のサポートも上手に利用していきましょう。
結論:この記事から持ち帰ってほしいこと
肺がんは、日本でも世界でも多くの命に関わる重大な病気ですが、その背景には喫煙・受動喫煙・大気汚染・職業性曝露・遺伝的要因など、さまざまな要素が複雑に絡み合っています。1,2,3,4,7,8,10,12一方で、禁煙や受動喫煙の回避、検診の活用、早めの受診といった行動によって、リスクを減らしたり、より早い段階で見つけられたりする可能性も確かにあります。
もしすでに肺がんと診断されている場合でも、治療の選択肢は年々広がっており、主治医・看護師・薬剤師・リハビリスタッフ・緩和ケアチームなど、さまざまな専門職があなたとご家族を支える体制が整いつつあります。5,6,11「一人で頑張らなければならない」と思い込まず、困ったときには、医療者や相談窓口に遠慮なく頼ってください。
最後に改めてお伝えしたいのは、「不安を感じることそのものは、決して弱さではない」ということです。不安をきっかけに検診を受けたり、医療機関に相談したりすることで、病気を早く見つけられることもあります。本記事が、ご自身や大切な人の健康と生活を守る一歩を踏み出すお手伝いになれば幸いです。
この記事の編集体制と情報の取り扱いについて
Japanese Health(JHO)は、信頼できる公的情報源と査読付き研究に基づいて、健康・医療・美容に関する情報をわかりやすくお届けすることを目指しています。本記事では、とくに国立がん研究センター、厚生労働省、日本肺癌学会、世界保健機関(WHO)などの一次資料を中心に、肺がんに関する最新の知見を整理しました。1,2,3,5,6,7,8,9,10,12
原稿の作成にあたっては、最新の生成AI技術を下調べや構成案の作成に活用しつつ、最終的な内容・表現・数値・URLの妥当性についてはJHO編集部が一次資料と照合しながら、人の目で一つひとつ確認しています。最終的な掲載判断や更新のタイミングは、すべてJHO(JapaneseHealth.org)編集委員会が行っています。
ただし、本サイトの情報はあくまで一般的な情報提供を目的としており、個々の症状や背景をもつ方の診断・治療方針を直接決定するものではありません。気になる症状がある場合や、現在受けている治療の変更・中止を検討される場合は、必ず担当の医師などの医療専門家にご相談ください。
記事内容に誤りや古い情報が含まれている可能性にお気づきの場合は、お手数ですが運営者情報ページ記載の連絡先までお知らせください。事実関係を確認のうえ、必要な訂正・更新を行います。
参考文献
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国立がん研究センター. 有効性評価に基づく肺がん検診ガイドライン2025年度版.(低線量CT検診等に関するガイドライン)https://canscreen.ncc.go.jp/guideline/lung_guideline2025.pdf(最終アクセス日:2025-11-26)
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国立がん研究センター. 受動喫煙が肺がんの遺伝子変異を誘発することを証明(プレスリリース). 2024年4月16日. https://www.ncc.go.jp/jp/information/pr_release/2024/0416/index.html(最終アクセス日:2025-11-26)
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(例)日本の専門誌論文. 進行期非小細胞肺がんの一次治療に関する総説(肺癌診療ガイドライン2023年版に基づく治療戦略の概説). https://www.jstage.jst.go.jp/article/numa/83/6/83_197/_pdf(最終アクセス日:2025-11-26)
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World Health Organization (WHO). Ambient (outdoor) air pollution. Fact sheet. https://www.who.int/news-room/fact-sheets/detail/ambient-(outdoor)-air-quality-and-health(最終アクセス日:2025-11-26)

